あけましておめでとう!
貴銃士番付を勝ち抜いたのは三者三様の一流貴銃士たち。
ライク・ツーはモデルの件を聞いた瞬間「絶対勝つ」と誓い、有言実行。
なお実際の言動の50倍くらい喜んでいる。
世界のミヤノ…やっぱオーラってか、作品やショー全体から滲み出る雰囲気からして違うんだわ。
美ってこういうこと言うんだな。
あ? 限界オタク? なんだそれ?
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──年末の士官学校にて。
十手 | うぅ……今日も寒いなぁ。 こんな日は日本の風呂が恋しいよ……。 |
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十手 | ちょいと熱いくらいのお湯にザブンと浸かって…… ああ、ゆずなんかが浮かんでいたら最高だなぁ! |
十手 | しかし……英吉利もかなり冷えるのに、 なんで寮には湯船がないんだろうなぁ……。 |
ライク・ツー | ……ああ、いた。 十手のおっさん、ちょっと来い。 |
十手 | どうしたんだい、ライク・ツー君。 |
ライク・ツー | いいから、ちょっと手伝え。 |
十手 | む……? 手伝い……? |
ライク・ツーについていった十手は、
正門前に配送業者のトラックが停まっていることに気づいた。
ライク・ツー | わりぃ、待たせたな。 |
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配達員 | 大丈夫ですよ。重いから気をつけて。 こちらに受け取りのサインをお願いします。 |
ライク・ツー | おう。 |
サインを終えると、下ろしてあったひときわ大きな荷物を残し、
配達業者は去っていった。
十手 | ライク・ツー君、これは一体なんだい? かなりの大きさだが……。 |
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ライク・ツー | び……健康のために注文したバスタブだ。 薪でお湯が沸かせて、最大4人くらい入れる。 |
十手 | おおお……! |
ライク・ツー | 衛生面はシャワーでクリアできるけどよ、 お湯に浸かった方が血行が良くなって、 疲れも取れるし身体にもいいって聞いてな。 |
十手 | そう……! そうなんだよ! |
十手 | 近頃俺もずっと思ってたんだ、湯船に浸かりたいってね……! やっぱりこういう寒い時期には、 しゃわーだけじゃあ物足りないだろう!? |
ライク・ツー | お、おう……。そこまで食いつくんなら話は早い。 バスタブ運ぶの手伝うってんなら、 十手のおっさんにも貸してやるぜ? どうだ。 |
十手 | ほ、本当かい!? もちろん、乗った! |
ライク・ツー | よし、交渉成立だな。 んじゃ、こいつをプールサイドまで運ぼうぜ。 |
十手 | 合点承知の助! 熱々の風呂のためならたとえ火の中水の中だっ! |
十手 | よいしょ……よいしょ……。 |
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ライク・ツー | そっち、足元段差あるから気をつけろよ。 |
十手 | おっと、ありがとう、ライク・ツー君。 |
十手 | そういえば、この湯船はどうしたんだい? こんな大きな買い物、それなりの値段がしそうだが……。 |
ライク・ツー | ふつーに職業体験の金を貯めて買っただけ。 |
十手 | ライク・ツー君は堅実で偉いな……! 俺は気になるものがあるとついなんやかんや買ってしまってねぇ。 |
ライク・ツー | 本当に欲しいもんとか必要なもんなら、 別にちまちま買ってもいいんじゃねぇの? |
十手 | へへっ、そう言ってもらえるとなんだか心強いよ! |
ライク・ツー | ここら辺でいいか。 下ろすぞ。せーのっ。 |
十手 | よっこいしょっと……! |
十手 | ここなら排水を気にしなくていいし、 露天風呂みたいで風情もあるね! |
ライク・ツー | よーし、早速お湯溜めるか。 ほら、十手のおっさんの分の水着。 |
十手 | 水着? お風呂なのにかい? |
ライク・ツー | こんな場所で全裸はねぇだろ……! |
十手 | そ、それもそうか……。 |
十手が火をおこし、ライク・ツーはプールサイドの水道から
ホースで水を引っ張ってきて、湯船にお湯を張っていく。
十手 | うんうん、いい感じだ! |
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ライク・ツー | 入浴剤は今回はなしで……入るか! |
ライク・ツー | ふぅ……ほぐれる……! ほら、十手も入れば? |
十手 | ではお邪魔して……っと! |
十手 | くぅ~~……身体の芯から温まる~~! 湯船、それも露天だなんて最高だ! |
在坂 | …………。 十手とライク・ツーは何をしている? |
ライク・ツー&十手 | 在坂!? 在坂君!? |
在坂 | ライク・ツーと十手がこっそり風呂に入っている……。 在坂も露天風呂に入りたい。 |
八九 | おーい、在坂。 もう芋焼けるぞ。こんなとこで何し── |
八九 | ──って、なんだこれ!? 風呂じゃねぇか!? |
邑田 | かようなところに風呂とは……。 士官学校も捨てたものではないのう。ほっほっほ。 |
ライク・ツー | うーわ、見つかっちまった……。 日本の奴らにはバスタブセンサーでも付いてんのか? |
十手 | はははっ、やっぱりみんな、熱々のお風呂に飢えていたんだね。 |
──ある朝の寮にて。
ライク・ツー | おーい、十手。入るぞ。 |
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ライク・ツー | この前借りた本── |
ライク・ツー | ……えっ!? |
ライク・ツーが十手の部屋に入ると、
十手とカトラリーが一緒に眠っていた。
十手 | ん……? あれ、ライク・ツー君……どうしたんだい? |
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ライク・ツー | どうしたはこっちのセリフだっての! 何で一緒に寝てんだよ、お前ら。 |
十手 | ……え? |
カトラリー | なに……朝からうるさいなぁ……。 |
十手 | ああーっ、これにはちゃあんとわけがあって……! |
十手 | 昨夜カトラリー君が……その、まあいろいろとあって 寝付けなくなったらしくてね。 俺を訪ねてきてくれたんだ。 |
ライク・ツー | (……そういえばこいつ、 時々うなされてるとか聞いたことあるな) |
カトラリー | ……ミカエルが全然起きなかったんだもん。 十手なら起きるかと思って。 |
十手 | 俺も眠りは深い方なんだが、昨日はまだ起きていてよかったよ。 それで、寝台横で話をしているうちに、 俺も眠くなってつい横になってしまったんだな……。 |
ライク・ツー | はぁ……そういうことか。 事情はわかったけど、消灯後の部屋の移動は原則禁止だ。 あんまりふらふら出歩いてると怒られんぞ。 |
十手 | うーん……しかし、眠れないままではつらいだろう? 安眠できる何かいい方法があるといいんだがなぁ。 |
十手 | そういえばマークス君は、〇〇君のために 安眠効果のあるハーブティーを作っていたよね。 あれを少しわけてもらおうか。 |
カトラリー | ……僕、お茶なんて自分で淹れたことないよ。 十手ならそういうの得意でしょ? 夜持ってきてよ。 |
ライク・ツー | それじゃ意味ねぇだろうが。 |
十手 | うーん……カトラリー君だけでできるもの……。 |
十手&カトラリー | …………。 |
ライク・ツー | ……安眠効果のあるアロマキャンドルでも作れば? |
十手 | あろまと、きゃんどる……ええと……? いい匂いのするロウソクってことで合っているかな。 それはいい案だね! |
ライク・ツー | おい、カトラリー。 お前、火くらい自分でつけられるだろ? ガキじゃねぇんだから。 |
カトラリー | 馬鹿にしないで! それくらいできるに決まってるでしょ。 |
十手 | うんうん。 それじゃあ今度、あろまきゃんどるを作るとしようか! |
──数日後。
カトラリー | ──で、なんであんたまでいるわけ? |
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ライク・ツー | あ? 俺の発案なんだから別にいいだろうが。 それに俺は俺で、バスタイム用のキャンドルが欲しいんだよ。 |
十手 | みんなで作る方がきっと楽しいよ、カトラリー君。 それに、一番作り方に詳しいのはライク・ツー君だろうしね。 |
ライク・ツー | んじゃやるぞ。 まず、蜜蝋を湯煎で溶かす。 |
カトラリー | ふぅん、案外簡単に溶けるんだね。 サラサラになったけど、どうするの? |
ライク・ツー | こっちのキャリアオイルを混ぜる。 蜜蝋だけだと固いし、 燃えやすくするにも役立つって本に書いてあったぜ。 |
ライク・ツー | とりあえず、ホホバオイルを用意しといた。 |
カトラリー | よくわかんないけど、入れてみるよ。 分量は……適当でいいのかな。 |
十手 | 最後が香り付けだね! マークス君が、安眠にはらべんだぁがいいと言っていたから、 その香油を買ってみたよ。 |
ライク・ツー | エッセンシャルオイルは使いすぎ注意な。 あとは、オレンジとブレンドするのもいいと思うぜ。 |
カトラリー | 少しずつ両方入れて……わ、いい匂い! 甘いけど爽やかで……2つ混ぜるとバランスがいいね。 |
十手 | 本当だね。 すっきりしているけれど、なんとも落ち着くいい匂いだ! |
十手 | さて、あとは型に入れて冷ましたら固まって完成だね。 |
ライク・ツー | それと、これも入れるぞ。 |
カトラリー | ……ドライフラワー? |
ライク・ツー | おう。マークスが干してたやつをパクってきた。 これも入れると一気におしゃれになるし、 香り的にもいいと思うぜ。 |
カトラリー | わぁ……やるじゃん、ライク・ツー。 |
十手 | (か、勝手に取ってよかったんだろうか……) |
──数時間後。
カトラリー | で……できた! |
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完成したアロマキャンドルは、外側にドライフラワーが
見えてとても華やかな出来栄えだった。
十手 | ちゃんと燃えてくれるだろうか……試してみようか。 電気を消して、っと……。 |
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カトラリー | 火、つけるよ。 |
カトラリー | わぁ……綺麗! それに、いい香りがふわっと……! |
十手 | 大成功だね! 初めてとは思えないよ! |
ライク・ツー | 思ってたよりいい感じだな。 |
ライク・ツー | (っし、これでバスタイムがもっと充実する……!) |
新年に行われた『一流を決めろ! 貴銃士番付チェック』で勝利し
有名デザイナー・ミヤノが手掛ける新コレクションの
イメージモデルに任命されたライク・ツーたち3人の貴銃士。
後日、そのコレクションがお披露目されるファッションショーに、
3人と〇〇の4人が招待された。
ライク・ツー | さすが、かなりの人出だな。 |
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ミカエル | ……ねぇ。僕はもう帰ろうと思うんだ。 構わないよね、〇〇。 |
主人公 | 【まだ帰らないでほしい】 【ファッションショーはこれからだよ】 |
観客1 | あれ見て、貴銃士様よ! |
観客2 | わ、本当だ! スタイルいいなぁ……! |
観客3 | こっち向いてくださーい? |
ライク・ツー | はぁ……騒がしくなってきたな。 |
ミヤノ | はは……すみません。今回は皆さん目当てに、 普段は大物セレブも数多く足を運んでくださっているんです。 メディアの注目度も高まっているので、ご覧の通りで。 |
ライク・ツー | ま、ショーが注目されるのはいいことなんじゃねぇの? |
ミヤノ | ありがとうございます。 さ、皆さんはVIP席へどうぞ。 |
ミヤノが〇〇たちを案内したのは、
ショーが見やすい最前列の席だった。
定刻に始まったショーでは、
ミヤノがデザインした、和と貴銃士をモチーフにしながら、
現代的でもあり、独創性あふれるファッションが披露されていく。
ライク・ツー | (……っ! すごい……! 衣装だけじゃなくて、舞台演出も、モデルも抜群にいいし……!) |
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ミカエル | ふふ……いいね。 輝きのフォルティシモ……。 |
ペンシルヴァニア | ……すぅ……。 |
ライク・ツー | ……おい、起きろよ……! つーか、よくこのすげぇコレクションを前に眠れるな……! |
ペンシルヴァニア | すまない。暗闇と大きな音で、なんだか眠く……。 |
ペンシルヴァニア | …………。 |
ライク・ツー | だから寝んなっ!!! |
ミヤノ | 皆さんのおかげでショーは大盛況でした! 本当にありがとうございます、我がミューズたち……! |
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ライク・ツー | こっちこそ、いいもん見せてもらって感謝してる。 なんていうか……静と動が感じられるいいショーだった。 |
ライク・ツー | 地味とか派手とか、そんな単純なものじゃなくて、 ぱっと見地味に見えるやつこそ布地にめちゃくちゃ凝った刺繍が 施されてたり、ラメとかスパンコールで光を活かしてて…… |
ライク・ツー | 一歩間違えば破綻しそうな華やかさを、絶妙なバランスで トータルコーディネートとして完成してるセンス、 マジですごかった……! |
ライク・ツー | そう、だから地味と派手じゃなくて静と動なんだな。 十手のおっさんが言ってたワビサビとかにも通じるやつ? とにかく、最高だっ──……。 |
ライク・ツー | (……あ) |
ペンシルヴァニア | …………。 |
ミカエル | ふむ……ほとばしる熱……アパッシオナート……。 燃え上がるようないい曲ができそうな響きだ。 |
ライク・ツー | ……お、お前らはまともに感想言えねぇだろうから、 俺が3人分言ってやっただけだからな。 ほら、さっさと士官学校に帰るぞ! |
ペンシルヴァニア | ふ……ああ、帰るとするか。 |
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