あけましておめでとう!
貴銃士番付を勝ち抜いたのは三者三様の一流貴銃士たち。
ペンシルヴァニアは異様に鋭い勘で勝ち上がった天才肌。
弟分たちやマスターにすごいすごいといわれて嬉しい。
番付を勝ち上がるコツ?
息を吐き集中し、風に耳を澄ませ自然に意識を溶かす。それで自ずと答えが出る。
……参考になったか? ならない? そうか……。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──士官学校がクリスマス休暇に入って間もない頃。
ペンシルヴァニア | せっかくの休みだから狩りにでも行きたいところだが…… 冬眠している動物を起こすのもな。 |
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ペンシルヴァニア | ケンタッキーにもあまり外に出るなと言われたし…… クリスマスくらいは、何か作りながら寮で過ごすか。 |
ペンシルヴァニア | あとは……何を作るかだな。 〇〇には世話になっているし、 何か喜んでもらえるものがいい……。 |
恭遠 | …………。 |
ペンシルヴァニア | Hi、恭遠。 難しい顔をしてどうしたんだ? |
恭遠 | ああ、ペンシルヴァニアか。 実は、森の管理小屋の老朽化が深刻らしくてな。 |
恭遠 | 今年の積雪で倒壊する可能性もあって早急に対策が必要なんだが、 これからだと業者の手配も間に合わない。 どうするのがいいか、職員会議でも結論が出なかったんだ。 |
恭遠 | 年明けの訓練でもあの小屋を拠点にしようと思っていたから、 計画も練り直しだな……。 |
ペンシルヴァニア | 小屋……。 |
ペンシルヴァニア | (そうだ…… 心地よい小屋を作れば、〇〇も喜ぶかもしれないな) |
ペンシルヴァニア | ……恭遠。俺にリフォームを任せてくれないか? |
恭遠 | ……! その手があったか! 君さえいいなら頼んでもいいかい? ペンシルヴァニア。 |
ペンシルヴァニア | ああ、もちろんだ。 |
恭遠に小屋の場所を教えてもらい、
ペンシルヴァニアは早速森の小屋へ向かった。
傷んでいる箇所の解体作業を始めてしばらく──。
──ガサガサッ
ペンシルヴァニア | ……! なんだ、マークスか。 冬眠しきれていない熊かと思ったぞ……。 森で何をしてるんだ? |
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マークス | マスターのためにハーブを探していた。 ……あんたこそ、こんなとこで何をしているんだ? |
ペンシルヴァニア | この小屋のリフォームさ。 ここを快適な山小屋にして…… 〇〇がくつろげる場所にしようと思うんだ。 |
マークス | 何っ!? さてはあんた……この小屋でマスターを独り占めする気だな。 そんなこと許さねぇ……! |
ペンシルヴァニア | 別に、独占する気はない……。 ただ、〇〇のために何か作ろうと思っていた時、 恭遠に山小屋の修理を任されたんだ。 |
ペンシルヴァニア | ずっと寮にいるのも退屈だろうし、 ここも使って〇〇の休暇が楽しくなればいいと……。 もちろん、他の貴銃士にも教えるつもりだ。 |
マークス | ……マスターのためにやってる、ってことだな。 なら、俺も手伝う。何をすればいい? |
ペンシルヴァニア | 本当か……! 助かるよ。 それじゃあ、まずは解体を手伝ってくれ。 その後で木を切ろう。 |
マークス | おう。 |
ペンシルヴァニアとマークスは、
作業をするうちに息が合っていき、
あっという間に解体を終えて材料の木の伐採に取り掛かった。
ペンシルヴァニア | Timber! (倒れるぞ!) |
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マークス | 了解。 |
大きな音を立てて、
ペンシルヴァニアが意図していた通りの方向に木が倒れる。
ペンシルヴァニア | マークス……すごいな。 のこぎりの使い方がたった数時間で格段に上達した。 |
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マークス | ふっ……すべてはマスターのためだからな! |
──それから数日。
小屋のリフォーム作業は順調に進んでいた。
同時に、ペンシルヴァニアとマークスが一緒にいることが増える。
ペンシルヴァニア | 行こう、マークス。 |
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マークス | ああ! |
ライク・ツー | ……あいつら、あんなに仲良かったっけ。 ま、犬みてぇなやつだし、 動物に好かれるペンシルヴァニアならお手の物ってことか。 |
十手 | ははは……そういえばペンシルヴァニア君は、 狼を見つけてきたこともあったね。 |
──それからしばらく経ったある日。
〇〇は、マークスの案内で森の中を進んでいた。
主人公 | 【見せたいものって?】 【この先に何が……?】 |
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マークス | すまない、マスター。 驚かせたいから、着くまで秘密だ。 |
ペンシルヴァニア | Hi……〇〇。よく来てくれたな。 見てくれ……俺とマークスでリフォームした小屋だ。 |
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主人公 | 【すごい!】 →ペンシルヴァニア「はは……ありがとう。 気に入ってもらえると、俺たちとしても嬉しいよ。」 【この立派な小屋を2人で!?】 →ペンシルヴァニア「ああ。最初は俺1人でやろうとしていたんだが…… マークスが手伝ってくれたおかげで 思っていたよりずっと早くリフォームが終わったんだ。」 |
マークス | ほら、マスター、見てくれ! ここの手すりは、俺が色を塗ったんだ。 使っている木も、俺たちで切ったんだぞ。 |
マークス | こっちのBBQスペースは、 ペンシルヴァニアが設計して新しく作ったんだ。 これでマスターと美味い飯が食べられる……! |
ペンシルヴァニア | ああ。 マークス……せっかくだから軽食でも作るか。 食器の用意を頼めるか? |
マークス | わかった! |
マークスは食器の準備をしつつ、
〇〇に小屋内の説明をする。
マークス | ほら、マスター。梁ってやつを見てくれ。 ハンモックが吊り下げられるようにしてあるんだ。 寝心地がいいから、マスターにも使ってみてほしい! |
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マークス | それから、サンルームみたいなところもあるんだ。 ペンシルヴァニアが、星を見ながら眠れていいだろうって。 今日は夜も晴れだから、きっと綺麗に星が見えるぞ。 |
ペンシルヴァニア | ……よし、あとは焼くだけだな。 マークス── |
マークス | なら俺はお茶を入れる! |
ペンシルヴァニア | 助かるよ。 ……っと、ミトンはどこだったかな……。 |
マークス | 戸棚の中だ。取って来る! |
マークス | ペンシルヴァニア、これだろ? |
ペンシルヴァニア | ありがとう。偉いな、マークス。 |
主人公 | 【(マークスが貴銃士と仲良くしてる……!)】 【(仲良くというか、手懐けられてる……?)】 |
素直にペンシルヴァニアの言うことを聞き、
俊敏に動き回るマークスを見て、〇〇は
微笑ましいような複雑な気持ちになるのだった。
ペンシルヴァニア | ……はぁ。 |
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シャスポー | ……どうしたんだい、これ見よがしにため息なんてついて。 |
ペンシルヴァニア | ん……? すまない、ため息が出ていたか。 |
シャスポー | ふぅん……無意識にため息が漏れるなんて、 よほど悩んでいるみたいだね。 僕が聞いてあげても構わないけど? |
ペンシルヴァニア | 俺は……言葉で伝えるのが、あまり上手くない。 そのせいで勘違いさせてしまったみたいで…… 相手を傷付けてしまったと思う。 |
シャスポー | (ケンタッキーにあれだけ突っかかれても あまり気にしてないみたいだし、 対人関係の悩みとは無縁だと思っていたけど……) |
シャスポー | (ペンシルヴァニアも、案外普通に悩んだりするんだな。 ハロウィンの時は行き詰まってた僕を助けてくれたし、 ここは真面目に僕なりのアドバイスをするか……) |
シャスポー | ……僕に、いい案がある。 |
ペンシルヴァニア | 本当か……! |
シャスポー | 言葉で伝えるのが苦手だと言っていたけれど…… 言葉を伝える手段は、何も話すことだけじゃない。 文章にしたっていいんだ。 |
シャスポー | この時期ならちょうど、グリーティングカードがあるから、 渡す口実には困らないだろう? |
シャスポー | 新年のお祝いと君の思いを、 素直にしたためてその人に渡してみたらどうだい? |
ペンシルヴァニア | そうか……そういう手もあるな。 ありがとう。 |
ペンシルヴァニア | 早速書いてみようと思うが…… カードも、上手く書けるか少し心配だ……。 |
シャスポー | それなら、僕も一緒に書こうか。 〇〇宛のカードを書こうと思っていたところだから、 僕としてはまったく構わないよ。 |
シャスポー | カードを勧めた手前、 君が悲惨なメッセージを送ったら寝覚めが悪いしね。 最後まできっちり見届けるよ。 |
ペンシルヴァニア | ありがとう……本当に助かる。 |
シャスポー | それじゃあ、勘違いについてもう少し詳しく教えてくれないかい? 内容次第で書くことも変わるだろうからね。 |
ペンシルヴァニア | ああ……お菓子を食べないかと誘われたんだが…… その後に別の人とBBQの予定があったから断ったんだ。 |
ペンシルヴァニア | 肉の後に食べたいと思って、 「夕方くらいに」と伝えた。 |
ペンシルヴァニア | だが……夕方にまた誘ってもらえたのに、 まだその時は腹がいっぱいで、また断ってしまって…… 悲しませてしまったんだ。 |
シャスポー | (なるほど。誰かがペンシルヴァニアに好意を寄せて、 勇気を出してデートに誘ってみたが、断られたのか……) |
ペンシルヴァニア | もう誘ってくれないかもしれない……。 |
シャスポー | いいや、大丈夫だ。 僕に任せてくれ。 |
シャスポー | ふふ……君も案外隅に置けないね。相手を焦らすなんて。 ……よし、挨拶のあとの本題はこう切り出したらどうかな。 |
シャスポー | 『あの時は、君の誘いが嬉しかったのに、 なんだか気恥ずかしくて断ってしまいすまない』 |
シャスポー | 『でも本当は僕も、君と一緒に時間を過ごしたいと思っている。 俺にもう一度チャンスを与えてほしい』ってね。 |
ペンシルヴァニア | ……それでいいのか……? |
シャスポー | ああ、間違いないよ。 でも、そのまんまはだめだ。 こういう意図のことを君なりの言葉で書いてみて。 |
シャスポーのアドバイスに従い、
ペンシルヴァニアは一生懸命カードを書き上げる。
ペンシルヴァニア | できた……が、本当にこれでいいんだろうか……? |
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シャスポー | なぜ? よく書けていると思うけれど。 さあ、早速渡しに行こう。 こういうのは時間が経つとこじれてしまうこともあるから。 |
シャスポー | 不安なら、僕も途中までついていくよ。 さっきも言ったけど、最後まで見届けるつもりだからね。 |
ペンシルヴァニアとともに、
シャスポーは寮の中を進んでいく。
シャスポー | (ペンシルヴァニアに想いを寄せているのはどんな人なのか…… あまり褒められたことじゃないけど、かなり興味深いな) |
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主人公 | 【ちょっとめずらしい2人組だね】 【2人でどこかにお出かけ?】 |
シャスポー | やあ、〇〇。偶然だね。 タバティエールがパイを焼いているから、 あとで一緒にティータイムにしない? |
ペンシルヴァニア | ……ティータイムの件なんだが…… マスター、この前は本当にすまなかった。 |
シャスポー | …………え? |
ペンシルヴァニア | その、口では上手く伝えられないと思って、 シャスポーに助けてもらいながらカードを書いたんだ。 よかったら── |
シャスポー | ちょっと待った!!! |
ペンシルヴァニア | シャスポー……どうした? |
シャスポー | 相手は〇〇だったのか!? そのカードは渡したら駄目だ! |
ペンシルヴァニア | どうしてだ……? さっきまで応援してくれていたのに……。 |
シャスポー | そうだけど……相手が〇〇だと、 かなり想定が違うからまた誤解を招くことになる……! |
ペンシルヴァニア | よくわからないが…… 文章で伝えるというのも、難しいものなんだな……。 |
ケンタッキー | おい、ペンシルヴァニア! 俺と勝負しろ!! |
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ペンシルヴァニア | はは……ケンタッキーは元気だな。 今年初の勝負か……何をするんだ? |
ケンタッキー | 羽根突きだ! |
ペンシルヴァニア | 羽根突き? |
十手 | 羽根突きってのは、日本の正月定番の遊びなんだ。 『厄を跳ねる』っていう意味もあってね。 ムクロジの実に羽をつけた羽根を、羽子板で打ち合うんだ。 |
十手 | ムクロジは無患子──『子が患わ無い』と書くもんで、 子供の健康を祈願する意味もあるみたいだよ。 なんとも洒落が感じられていいだろう? |
ペンシルヴァニア | なるほどな……新年がいい年になるよう願いを込めた、 特別な遊びということか。 |
十手 | そういうことだ! やり方は、こっちで言う……ばどみんとん、だったかな。 あれに近い感じだから、わかりやすいと思うよ。 |
十手 | ちなみに、羽根を落としてしまった方は 墨で顔に落書きをするんだ。 |
ケンタッキー | げっ……それは聞いてないぞ! |
スプリングフィールド | ケンタッキー…… 勝つつもりなら、あんまり気にしなくていいんじゃないかな? |
ケンタッキー | うっ……そりゃあそうだけど。 ってことでペンシルヴァニア、勝負だ! |
ペンシルヴァニア | ああ、わかった。 |
十手 | ケ、ケンタッキー君……? その羽子板は……? |
ケンタッキー | ヘヘッ、イカしてるだろ!? 俺用にデコったんだ。 |
ケンタッキー | ペンシルヴァニア、お前はこっちな。 物足りなきゃあとで自分のセンスでデコれ。 |
ペンシルヴァニア | これはこれで……素材が感じられて気に入ったよ。 |
ケンタッキー | 5回勝負な! スーちゃんと十手、審判頼むぜ!! |
---|---|
スプリングフィールド | うん。 それじゃあ──はじめっ! |
ケンタッキー | いくぜ──オラッ!!! |
ペンシルヴァニア | ……おっと。 |
ケンタッキー | やるじゃねぇか……あっ! |
スプリングフィールド | ケンタッキー…… 羽子板のデコレーションの凹凸のせいで、 上手く羽根が飛ばないんじゃ……? |
ケンタッキー | そ、そんなことねーって……。 ほら、さっさと顔に落書きしやがれ! |
ペンシルヴァニア | 落書き……何を書けばいいんだ……? |
十手 | 目の周りに丸とか、頬にバッテンとか、 なんでもペンシルヴァニア君の書きたいようにすればいいよ。 |
ペンシルヴァニア | そうか……。 |
ペンシルヴァニアは遠慮がちに、
ケンタッキーの額に丸を描いた。
ケンタッキー | くっ……次は負けねぇからな!!! |
---|
──コンッ、コンッ、コンッ
十手 | お、今回は長く続いてるね! 元々、なるべく落とさないように続けるものだそうだから、 これこそ本来の羽根突きって感じでほっとするよ。 |
---|---|
ケンタッキー | うわっ!!! |
スプリングフィールド | あ……惜しかったね、ケンタッキー。 |
ペンシルヴァニア | ……それじゃあ……。 |
ケンタッキー | くっそぉぉぉ……! |
──その後もケンタッキーは自作の派手羽子板で奮闘するが、
ペンシルヴァニアが先に3ゲームを奪取して勝利を収めた。
ケンタッキー | ちくしょおぉぉぉぉ!!! 新年早々負けかよ!!! |
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スプリングフィールド | ふふっ、ケンタッキーの顔……。 |
ケンタッキー | あー! スーちゃん笑ったなーっ!! |
十手 | はははっ、笑う門には福来たる! それに、落書きには魔除けの意味があるから、 悪いことでもないんだぞ? |
ケンタッキー | それなら、魔除けでスーちゃんにも落書きだーっ!! |
スプリングフィールド | うわぁっ……! |
ペンシルヴァニア | はは……! ケンタッキー、魔除けなら、俺にも落書きしてくれ。 |
ケンタッキー | ……! 言ったな? やっぱナシはナシだぞ? 落書きしまくってやるぜ!! |
──楽しそうな声に誘われて出てきた貴銃士たちも加わり、
羽根突き大会で新年の士官学校に笑い声が響くのだった。
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