主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──クリスマスが迫る、ある日のベルギーにて。
シャルロット | うーん……どうしましょう。 クリスマスには子供たちのために、 何か楽しい催し物を開いてあげたいものだけれど……。 |
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マチルダ | シャルロットは、 子供の頃のクリスマスで何が記憶に残っているんだ? |
シャルロット | そうね……クリスマスのミサかしら。 キャンドルがたくさん灯された教会で、 オルガンの音色と聖歌隊の賛美歌を聞くの。 |
シャルロット | そして、家に帰ったらクリスマスの特別な食事よね。 それからもちろんプレゼントも楽しみだったわ。 |
マチルダ | 手本のようなクリスマスの過ごし方だな。 子供たちが夢見るのも、きっとそういうものだろう。 |
シャルロット | ただ、クリスマスは施設の職員の数も少なくなるから、 みんなを連れて教会に行くと、目が行き届かないかもしれないわ。 せっかくのクリスマスに迷子を出してはいけないし……。 |
シャルロット | ……そうだわ! 施設でミサをすればいいのよ! ピアノを喜んで弾いてくれそうな方…… わたくしたち、覚えがあるでしょう? |
マチルダ | ……! なるほどな。 早速打診してみるとしよう。 |
ミカエル | ベルギーから、僕へ依頼の手紙? |
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恭遠 | ああ。だが、政府からの公的な依頼ではなく、 シルヴァスター産業開発大臣補佐──マチルダさんからの 個人的な頼みのようだね。 |
恭遠 | ベルギーにある児童福祉施設で、 君にクリスマスリサイタルをお願いしたいそうだ。 |
ミカエル | そう……ピアノを弾けばいいんだね。 それなら構わないよ。 |
カトラリー | ミカエルがリサイタルを開くなら、僕も行くよ。 ねぇ、一緒に行ってもいいでしょ? |
ミカエル | カトラリーがそうしたいのなら。 |
カトラリー | やった……! ファルにも一応、行くかどうか聞いといてあげよう。 |
しかしファルは、チーズとワインを手配済みのため
ベルギー行きを辞退。
ミカエルとカトラリーの2人でベルギーに行くことになった。
──クリスマスリサイタル当日。
幻想的に飾りつけられたステージで、
ミカエルは見事な演奏を披露する。
ミカエル | ~~♪ |
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カトラリー | すっごく綺麗な曲……。 舞台もキラキラしてて……ああ、本物の天使の音色だ……。 |
シャルロット | …………。 |
カトラリー | ……シャルロット? ちゃんと聴いてる? |
シャルロット | え……? ええ、とても素敵な演奏ね。 |
カトラリー | (せっかくミカエルがピアノを弾いてるのに、 ぼーっとしちゃってなんなの……?) |
ミカエルの独奏2曲が終わり、
子供たちが賛美歌を歌う3曲目の準備が始まる。
マチルダ | すまない、遅くなった……! まだリサイタル中だったな、よかった。 |
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シャルロット | あなた、急に忙しいから来れるかわからないなんて言って…… も、もう来ないと思っていたわ! 無理して突然来られても困るもの! |
マチルダ | ……? 来ない方がよかったか? |
カトラリー | はぁ……なんだ、そういうこと。 シャルロット、素直に嬉しいって言えば? マチルダが来るの、ずっと待ってたんでしょ。 |
シャルロット | ……っ!? わ、わたくしは別に……っ! |
ミカエル | ……ああ、君だったんだね。 演奏中、ずっと落ち着かない音を感じて気になっていたんだ。 |
ミカエル | でも今は、高揚と落ち着きが混ざる音になっている…… クリスマスにはふさわしいかもしれない。 |
シャルロット | ……っ、寄ってたかって、 そういうことを言うのはよろしくないのではなくって……!? |
マチルダ | ははっ! |
子供たちが準備を終え、
ミカエルの伴奏で賛美歌の伴奏(※原文ママ)が始まる。
賛美歌の歌唱が終わっても、ミカエルがオリジナルで後奏を加え
壮大な雰囲気の曲を奏でることしばらく。
最後の和音が綺麗に鳴り響き、演奏が終了した。
すると──なぜか外からも、大きな拍手が聞こえてくる。
カトラリー | わっ、窓の外見てよ! 人がたくさん集まってる……! |
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カトラリー | ふふっ、ミカエルの演奏が素晴らしかったから、 みんな聴きに来たんだね、きっと。 |
ミカエル | そう……みんな、外で聴いていないで、 中に入って好きなだけ聴けばいいのにね。 |
ミカエルは、聴衆を呼び込もうと窓を開けた。
ミカエル | きみたち── |
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ミカエルの信者1 | ミカエル様!! ミカエル様の演奏がまた聴けるなんて……! 最高のクリスマスプレゼントをありがとうございます……! |
ミカエルの信者2 | 私たちからも、ミカエル様にプレゼントがあるんです! 受け取ってください……!! |
ミカエル | そう……ありがとう。 |
街の人 | 今のピアノ、素敵だったわ! これでも食べて、良いクリスマスをすごしてね! |
集まった人々が、次々にミカエルへプレゼントを渡していく。
カトラリー | うわーっ!? た、大変!! ミカエルがプレゼントに埋もれてる……っ! ちょっと、プレゼント、ストップ、ストーップ!! |
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シャルロット | すごいプレゼントの数ね……。 |
カトラリー | こんなにたくさん、士官学校に持って帰れないよ……! それに、食べ物とかは持って帰ったところで消費しきれないし! |
ミカエル | それなら、ここにいるみんなでわければいい。 |
子供1 | ……いいの? |
ミカエル | いいよ。僕はピアノを弾きに来ただけだから。 その薔薇だけ、もらっておこうかな。 |
子供たち | わぁ~い!! |
大喜びでプレゼントを開ける子供たち。
その傍らで、胸元に薔薇の花を挿したミカエルは、
満足するまで演奏を続けるのだった。
ベルギーでのクリスマスリサイタルから数日後、
ミカエルは士官学校へと帰還した。
主人公 | 【おかえり】 【お疲れ様】 |
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ミカエル | おや……? 随分と賑やかだね。 〇〇、門の前にいる人たちはなんだい? |
主人公 | 【グラースのファンだよ】 【たぶんグラースを待ってる】 |
〇〇は、
クリスマスマーケットでグラースたちがコンサートをし、
その影響で増えたファンが正門に集まってくるのだと話した。
ミカエル | ふぅん……僕のピアノ愛好家みたいな感じということかな。 |
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──翌日、談話室にて。
シャルルヴィル | 今日もグラースのファンがたくさん集まってたね。 コンサート効果はすごいなぁ。 |
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ジョージ | なー! おまえすごいよ、グラース! |
グラース | ハッ、僕の美声を聴けば老若男女が夢中になる。 当然だろ? |
ミカエル | …………。 ねぇ、僕にもきみの歌声を聴かせておくれ。 |
グラース | ああ、そういやお前はベルギーに行ってていなかったんだっけ。 いいぜ? 僕が知ってる歌曲を弾くって言うんなら歌ってやる。 |
ミカエル | ふむ……これはどうかな。 |
ミカエルが曲を弾き始めると、
頷いたグラースは高らかに歌い始めた。
ジョージ | Wow! グラース、もっと上手くなってないか!? |
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シャルルヴィル | うんうん、ミカエルのピアノと息もぴったりでかっこいい! |
ミカエル | うん……きみの歌声は素敵だね。 |
グラース | お前、僕の魅力がわかるなんて見込みがあるな! 気に入ったぜ! |
グラース | そうだ、街にストリートピアノが設置されてる広場があるんだ。 一緒に行って、セッションしねぇか? 僕のファンに聴かせてやろうぜ! |
ミカエル | リサイタルだね。いいよ。 |
ミカエルはグラースと共に街の広場へと向かい、
早速ピアノの前へと座り準備を始める。
グラースのファン1 | きゃ~っ! やっぱりグラース様よ! ストリートピアノの前にいるってことは、 ミニコンサートをしてくださるのかしら? |
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グラースのファン2 | また素敵な歌声が聴けるなんて……! 今日は何を歌うのか楽しみ!! |
グラース | よーし、観客は十分。 おい、ミカエル。僕の魅力を最大限に引き出すような曲を頼むぜ。 |
ミカエル | ……落ち着かない音がするな。 きみは、誰かを待っているのかい? |
グラース | え? 別に待ってはいねぇけど。 僕を待ってるレディなら、最前列にいるぜ? この後デートする予定なんだ。 |
ミカエル | ……ふぅん、そう。 じゃあ、始めようか。 |
グラース | 皆、おまたせ。 今日は特別にミカエルの伴奏付きで披露するよ。 存分に楽しんでいってね? |
グラース | ~~♪ ~~~♪ |
グラースのファン1 | はぁ……今日も素敵な歌声……うっとりしちゃう。 |
グラースのファン2 | 本当……目も耳も幸せ……。 でも……あのピアノを弾いている方──ミカエル様だったっけ? 素敵だと思わない? |
グラースのファン3 | ……あなたもそう思います? グラース様とは違う、ミステリアスで美しいお姿……。 ピアノを弾いている姿がなんとも神々しくて……はぁ……。 |
ミカエル | ~~♪ |
ストリートピアノでのコンサートから数日後。
シャルルヴィル | あれ? グラースがここにいるなんて珍しいね? 今日はデートじゃないの? |
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グラース | うるせぇな、僕がどこにいようが勝手だろ! |
主人公 | 【どうかした?】 【何か嫌なことでもあった?】 |
グラース | ……この前、広場で歌っただろ? あの日から、僕のファンがミカエルの信者になって、 次々とデートがキャンセルになってんだよ……! |
グラース | くそっ! ミカエルとコンサートなんてするんじゃなかったぜ! |
ミカエルたちが、有名デザイナー・ミヤノが手掛ける
新コレクションのイメージモデルになってしばらく。
カトラリー | えへへへ……。見て見て、ミカエル! 頼んでたイメージブックがやっと届いたんだ。 いい出来だから、観賞用と保管用の2冊買って正解だったよ! |
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ミカエル | そう……ふふ、よかったね。 |
八九 | (生意気なガキってイメージだったけど…… カトラリー、意外と話がわかる奴かもしれねぇな……) |
カトラリー | 他にもブロマイドでしょ、ポスターと、ポストカード! いつものミカエルは天使だけど、 この衣装だと神々しさがもっと強くて、僕すごく気に入ったよ。 |
カトラリー | 部屋に飾りたいんだけど、 画鋲を使ったら穴が空いちゃうよね。 折り目も付けたくないのに穴はもっとヤダ……。 |
カトラリー | 何か、綺麗に飾るいい方法ないかなぁ。 |
ミカエル | …………。 |
八九 | (ん? なんか、こっち見てる……? いや、気のせい……だよな。自意識過剰恥ず……) |
ミカエル | ねぇ……きみはどう思う? |
八九 | ォワッ、俺……!? そうだな……ブロマイドとかなら、 ワイヤーネットにクリップで挟むとか……。 |
カトラリー | ワイヤーネット? 何それ。 |
八九 | こう、四角い編み編みの金網で……って、 説明するより、実際見に行った方が早いな。 俺も買い物あるし、購買行くか? |
カトラリー | ……! うん! ねぇ、ミカエルも一緒に行こうよ! |
八九 | ミカエルが購買……興味あんのか? |
ミカエル | 購買で流れている曲は好きだから、かまわないよ。 歩くことは脳を刺激して、 良質なインスピレーションにもつながるしね。 |
無事目当てのものを購入し、3人は談話室へと戻った。
カトラリー | 購買、隅々までよく見てみたら、 案外おしゃれなものもあるんだね。 洒落たクリップがあってよかったよ。 |
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八九 | じゃ、あとはそれで適当に飾り付けろよ。 俺はゲームしに戻るわ。 |
カトラリー | えっ!? ちょっと待ってよ! 最後まで手伝ってくれるんじゃないの!? |
八九 | へっ? |
カトラリー | 途中で放り出すのってよくないでしょ、普通に考えて。 最後まで責任持ちなよね! |
八九 | いや、図々しいな……! ミカエル、お前からもなんか言ってくれよ! |
ミカエル | 飾りつけは、僕の領分ではないけれど…… 八九、きみなら綺麗にできるのではないかな。 カトラリーを手伝ってあげて。 |
八九 | …………はぁ。しゃーねぇな……。 |
カトラリー | ねぇ、ミカエル。 僕が上手に飾りつけできるように、ピアノを弾いてくれる? |
ミカエル | もちろん。リクエストがあれば聞こう。 |
八九 | んじゃ、落ち着いたちょい明るめの曲で……。 |
カトラリー | ちょ、僕がリクエストしたかったのに……! |
ミカエルのピアノ演奏をBGMに、
2人は飾り付けを始めた。
カトラリー | このブロマイドはどうしようかな……。 端から並べていくだけだとなんだか味気ないし……。 |
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八九 | ブロマイドをメインにして、周りを飾ればいいんじゃねぇの? ミカエルが引き立ってよさそうだろ。 |
カトラリー | ……本当だ! ミカエルがもっと天使みたいに見える……! |
八九 | …………。 |
カトラリー | ……ぼんやりして何? |
八九 | いや…… ミカエルのピアノ聴いてると、なんか落ち着くなと思って。 |
カトラリー | ……! 八九も、ミカエルのファンなんだ? |
カトラリー | わかるよ、僕もミカエルのピアノを聞くと、 心がすーっと楽になって落ち着いて、 どんな夜でも眠れそうなんだ。 |
カトラリー | ミカエルってすごいよね……! |
ミカエル | カトラリーのリズムが、柔らかくて温かくなった……。 仲良くなれたのかな。ふふ……。 |
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