春爛漫の桜の下、迷い込んだ不思議な空間。
スプリングフィールドは、少し危険で優しい友人達と、自らの心の重石に別れを告げる。
過去や恐れの幻に怯えるのはもう終わり。
もう、大切なものがちゃんとあるから。
悪友、っていうんでしょうか。
二人が教えてくれるのは、多分常識的には少しワルい事なんですよね。
でも、それに僕は救われた。
……本当に、救われたんです。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──チェリーブロッサム・フェスティバルの少し前のこと。
〇〇とアメリカの貴銃士4人は、
ハイキングに出かけていた。
ペンシルヴァニア | ……いい風だ。 この辺りは景色がいいな。 |
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主人公 | 【綺麗だね!】 【気持ちがいいね!】 |
ケンタッキー | ほんとっすね! マスターも一緒なんでなおさらっす! |
ジョージ | Yeah! ってことで、ちょっと休憩~。ふぅ。 |
ケンタッキー | ……ジョージ、なんか荷物でかくね? 余計なモンいろいろ持ってきたんじゃねぇだろうな。 |
ジョージ | 余計なもんじゃないぜ! オレのリュックの中身は8割くらいランチボックスだからな☆ |
ジョージ | ほら! |
ジョージは、背負っている大きなリュックを開いて見せる。
中には大きなバスケットが2つ入っていた。
ケンタッキー | デカッ! 多すぎだろ! |
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ジョージ | え~っ? そうかぁ? いっぱいあった方がHappyじゃん? |
ケンタッキー | そりゃまあ、足りないよりは多めの方がいいかもしれねぇけど。 5人分にしちゃ多いだろ、どう見ても。 |
ジョージ | No problem! 歩き回るし、スプリングも最近はよく食べるしな☆ |
スプリングフィールド | えっ……!? |
スプリングフィールド | す、すみません……! 皆さんからいろんな美味しいものを教えてもらって…… 気づいたら、結構たくさん食べてしまってて……。 |
スプリングフィールド | 自分でもちょっと食べすぎかなとは思ってたんです……。 |
ケンタッキー | スーちゃん……! |
ジョージ | それ、すっげーHappyだな☆ |
ケンタッキー | おう! スーちゃんがいろんな美味いモンを知って、 もりもり食べるようになって、俺も嬉しいぜ! |
ペンシルヴァニア | ああ……。 もしかしたら、成長期というやつなのかもしれないな。 スプリング、いっぱい食べて、楽しく元気に過ごすといい。 |
スプリングフィールド | は……はい! |
主人公 | 【それじゃあ、お昼にしようか】 【早速今日ももりもり食べよう】 |
レジャーシートを広げて敷き、
ジョージがリュックから取り出したバスケットを置く。
ケンタッキーとスプリングフィールドが開けようとした時──
スプリングフィールド | わぁっ!? |
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突然、音もなく現れた影が、バスケットの持ち手を鷲掴みにする。
そして、あっという間に飛び去った。
ペンシルヴァニア | ……っ、しまった! |
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ケンタッキー | あいつを晩メシにしてやる! |
ペンシルヴァニアとケンタッキーが素早く銃を構える。
ジョージ | Hey! 待て待て!! 今撃って当たったら、ランチボックスごと落ちるって! |
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ケンタッキー | あ~っ、確かにそうだけど、どうするよ? |
スプリングフィールド | とりあえず、追いかけないと……! |
5人は大急ぎで鳥を追跡する。
ジョージ | あの鳥がどっかにランチボックスを置くとこを狙って、 パッと取り返すか……!? |
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ケンタッキー | 木の高いとこに置かれたら手が出せねぇぞ。 撃って、ランチボックスをキャッチするのがいいんじゃねぇか? |
ジョージ | でもさ、よく考えたらあいつも腹ペコなのかもしれないだろ? 撃つのがかわいそうな気がしてきた……! |
ケンタッキー | 撃つのは俺だからいいだろ!? そもそもジョージだと当たんねぇし! |
ジョージ | オレだって10発くらい撃てば当たるかもしれないだろー!? |
ペンシルヴァニア | 落ち着け、2人とも。 ランチボックスを取り戻す方法は何かあるはずだ。 |
やいやいと言い合いをするケンタッキーとジョージ。
それを仲裁しようとするペンシルヴァニアと〇〇。
一方スプリングフィールドは鳥の追跡に集中する。
スプリングフィールド | ぜぇ、はぁ……! ま、待って……! |
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スプリングフィールドが息を切らせながら
鳥の真下あたりに追いついた時、
別の鳥がやって来て、空中でバスケットの奪い合いをはじめた。
鳥 | ギャギャッ! |
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奪い合いの末に、鳥がバスケットを取り落としてしまう。
スプリングフィールド | お昼ごはんーーっ!! |
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スプリングフィールドが決死のスライディングで
なんとかバスケットをキャッチした。
スプリングフィールド | や、やった! |
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スプリングフィールド | (……って、あれ? 転んだはずなのに、身体が痛くない……?) |
スプリングフィールド | (地面が柔らかくて……少し、温かいような?) |
不思議に思ったスプリングフィールドが下を見ようとした時、
脇腹のあたりに硬く冷たいものが押し当てられる。
??? | ……邪魔だ。撃つ。 |
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スプリングフィールド | え……っ!? うわぁぁっ! ごごご、ごめんなさい!! |
バスケットの落下地点でスナイダーが倒れていたことに、
スプリングフィールドはそこでようやく気づいたのだった。
ケンタッキー | ──つまりこういうことか? |
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ケンタッキー | 1人で携帯食も持たずに山に来て、 腹が減って倒れるとか……お前、馬鹿だろ! スーちゃんが見つけなかったらどうなってたと思ってんだ。 |
スナイダー | ……フン。 |
主人公 | 【ここで発見されなかったら危なかったよ】 【ちゃんと栄養を取ろう】 |
スナイダー | うるさい奴らだ。 |
ジョージ | そう言うなって、スナイダー。 腹減ってたんだろ? 一緒にサンドイッチ食べようぜ! |
スナイダー | ……はぁ。パンだけ寄越せ。 |
ジョージ | ええ~っ! それもう、サンドイッチじゃないじゃん!? まあ、無理に食えとは言わないけどさ。 |
ジョージ | みんなは何から食べる? オレはピーナッツバター&ジェリー! |
ケンタッキー | 俺はBLT! |
ペンシルヴァニア | 俺もBLTにしよう。 |
ケンタッキー | はぁ!? 真似すんなよ! |
ケンタッキー | マスターはどれにします? 自分、サーブするっすよ! |
主人公 | 【じゃあ、たまごで】 【ツナにしようかな】 |
ケンタッキー | ッス! |
ケンタッキー | ん……? 横の、アルミでぐるぐる巻になってるやつは? |
スプリングフィールド | あ、それは僕のなんだ。 ナットーっていう日本の具材で、匂いが独特だから、 匂い移りしないように包んでみたんだ。 |
スプリングフィールドが包みを剥がすと、
独特な匂いがもわんと広がる。
茶色い粘ついた粒々を見て、ケンタッキーはぎょっとした。
ケンタッキー | それが……ナットー?? |
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スプリングフィールド | うん。在坂さんに教えてもらったんだ。 普通はお米と一緒に食べるらしいんだけど…… チーズとマスタードと一緒にトーストするのもいいって。 |
スプリングフィールド | 最初は見た目にびっくりしたんだけど、 ハマると結構美味しいんだ。 |
スナイダー | …………。 |
スプリングフィールド | あ、スナイダーさんも食べますか? |
スナイダー | ……いらん。近寄るな。 |
スナイダーは、納豆の匂いから逃げるように距離を取った。
スプリングフィールド | (お友達を増やしたいし、 スナイダーさんとももう少し打ち解けられたらと思ってたけど、 難しそう、かな……) |
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チェリーブロッサム・フェスティバル当日。
貴銃士特別クラスの一同は、
見回りの合間に屋台での飲食を楽しんでいた。
スプリングフィールド | すみません。 たこ焼き6個入りを1つ、お願いします。 |
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店主 | あいよっ! |
スプリングフィールド | (わぁ……いい匂い。 あそこのベンチに座って食べよう) |
スプリングフィールドが近くのベンチへ向かい、
腰を下ろそうとした時だった。
邑田 | ──待て。座るでない。 |
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在坂 | ああ。スプリングフィールドは座ってはいけない。 |
スプリングフィールド | えっ……!? |
スプリングフィールド | (そ……そうだよね。 僕よりもお2人が座るべきだから……) |
スプリングフィールド | すみません! 僕は立っていますから……! |
邑田 | うむ、それでよし。 少し待っておれ。 |
邑田は手にしたティッシュで、
スプリングフィールドが座ろうとしていたベンチを拭いた。
邑田 | ほれ、もう座ってよいぞ。 |
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スプリングフィールド | え……? あの……? |
在坂 | 白いベンチにマヨネーズ。 邑田と在坂でなかったら見逃すところだった。 |
邑田 | まったく。汚した者が綺麗にしてから去るべきであろうに。 危うくスプリングフィールドの白い服が汚れるところじゃ。 |
邑田 | 何をぼーっとしておる? 早う座れ。 |
スプリングフィールド | えっ……? あ、ありがとうございます……? |
ベンチに座ったスプリングフィールドは、
買ってきたたこ焼きを取り出して腿の上に置いた。
それを、邑田がパッと取り上げてしまう。
邑田 | スプリングフィールドよ……なんじゃ、これは。 |
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スプリングフィールド | え……あ……、た、たこ焼きです……。 |
邑田 | それは知っておる。 わしは、そなたにこれはそぐわぬと言いたいのじゃ。 |
スプリングフィールド | ご、ごめんなさい……! |
邑田 | 謝ることはない。 ほれ、そなたはこちらを食べよ。 |
スプリングフィールド | は、はい……。 |
邑田から代わりに渡されたパックには──
たこ焼きがずらりと10個入っていた。
スプリングフィールド | たこ焼きが、6個から10個に増えてる……!? |
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邑田 | たくさん食わねば大きくなれんぞ。 |
在坂 | そうだ。在坂はすでに20個食べている。 |
邑田 | うむ、在坂はさすがじゃのう。 |
スプリングフィールド | 20個も!? |
スプリングフィールド | ……ふふっ。 邑田さん、在坂さん……ありがとうございます。 |
スプリングフィールド | (こんなに優しい友達ができて……幸せだな) |
チェリーブロッサム・フェスティバルの後。
スプリングフィールドと〇〇は、
思い出話に花を咲かせていた。
主人公 | 【屋台、美味しいものがいっぱいだったね】 →スプリングフィールド「はい……! 桜の花も、とても綺麗でしたね。」 【またああいうイベントに行きたいね】 →スプリングフィールド「そうですね。 綺麗で、美味しくて、楽しくて……素敵な思い出ができました。」 |
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主人公 | 【スプリングは何が一番気に入った?】 【スプリング的ベストグルメは?】 |
スプリングフィールド | うーん……そうですね……。 一番美味しかったのは……。 |
ベルガー | りんご飴だろ! |
邑田 | たこ焼きじゃろう! |
ベルガー | あぁ!? 引っ込んでろよ青丸! |
邑田 | 黙るのはおぬしじゃ、この駄獣! 割り込むでないわ! |
ベルガー | おめーが割り込んできたんだろ! |
邑田 | いいや、おぬしじゃ。 聞き分けの悪い阿呆には仕置が必要かえ? |
ベルガー | か……かかってこいよ! |
邑田 | 上等じゃ。 |
邑田はそう言うより早く殴りかかる。
撃たないあたり多少は手加減しているし、下手に介入すると
危険なので〇〇は成り行きを見守った。
スプリングフィールド | ちょ……おふたりとも……!? |
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スプリングフィールド | (さっきのって……もしかして……?) |
ベルガー | いっでぇ!! クソ! ハチノスにしてやる!! |
邑田 | ほう? どちらが上か、教え直してやらねばならんか。 鳥頭は世話が焼けることよ。 |
恭遠 | ……君たち! 銃を下ろしなさい!! |
恭遠 | 私闘は禁止だと何度も言っているだろう!? 銃まで持ち出したら校則違反どころじゃないぞ……! |
恭遠 | ……邑田、ベルガー。 校舎内での発砲は極めて危険な行為だ。 ここでしばらく反省していなさい。 |
---|---|
ベルガー | ハンセーな、ハンセー。 んじゃ、オヤスミ。 |
邑田 | ほっほっほ。此度の在坂からの差し入れは何であろうか。 わしは鮭ほぐしの握り飯の気分じゃが、 在坂が持ってきてくれるのであればなんでも楽しみじゃ。 |
恭遠 | 君たち……! |
恭遠 | 今回は、差し入れを禁止する! 水と携帯食は置いておくから、それで我慢するように! |
ベルガー&邑田 | ……っ!! |
そして迎えた、真夜中。
ベルガー | うー……。 コークが飲みてぇ……もっと味のあるモンが食いてぇ……。 |
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邑田 | 在坂に会えぬとは……なんという仕打ちじゃ……。 |
2人が項垂れていると、
扉が静かに開き、フードを被った人物が懲罰房に入ってきた。
ベルガー&邑田 | ……!! |
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??? | お2人とも、大丈夫ですか? |
邑田 | スプリングフィールド、そなた……! |
ベルガー | んぇっ? スプリングフィールドぉ? |
スプリングフィールド | あっ、お静かに……! 恭遠教官に内緒で、こっそり忍び込んだので。 |
スプリングフィールドは慌ててしーっと人差し指を立てる。
スプリングフィールド | あの……昼間は僕が質問に答えなかったせいで 喧嘩になってしまったみたいで、すみません……。 |
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ベルガー&邑田 | ……? |
スプリングフィールド | お2人とも、チェリーブロッサム・フェスティバルで、 僕と一緒に食べたものを『一番美味しい』の 候補として挙げてくださったんですよね。 |
ベルガー&邑田 | ……! |
スプリングフィールド | ……とても嬉しかったです。 |
スプリングフィールド | でも、どっちもとても美味しかったので、 僕にはどっちが一番かなんて決められません……。 |
スプリングフィールド | ……差し入れ、ベルガーさんにはチーズサンドで、 邑田さんにはツナサンドです。 コークと鮭のおにぎりじゃなくてごめんなさい。 |
邑田 | そなたが謝ることなどない。 わしは嬉しいぞ。 |
ベルガー | チーズ! チーズ!! |
スプリングフィールド | 今日はこれだけですけど…… ここを出られたらまた、美味しいもの食べましょうね。 |
邑田 | ほっほっほ。 うむ、そうじゃな。 |
懲罰房の外では、スプリングフィールドについてきた
ケンタッキーが、ドアの隙間から3人の様子を見守っていた。
ケンタッキー | (懲罰房に侵入したいから手伝ってほしいって言われた時は びっくりしたけど……スーちゃんが楽しそうでよかったぜ) |
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ケンタッキー | (つーかスーちゃん、禁止されてるのに差し入れしたいとか、 なかなかロックだな……!) |
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