追悼式典に向かう途中で貴銃士たちが迷い込んだのは、1960年代のベルリン。
そこでエルメは、かつての自分の持ち主と対峙する。
明かされる過去と決意。エルメの呪縛を解いたのは、彼の最期の言葉だった。
哀れな人間だと思っていたけれどそれは一面的な見方だった。
「素直になろう」──ああ。そうしてみたら、世界が広がった気がするよ。
新しい自分も悪くない。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
素直になろう。
君を眺めていると、胸の内に
感情の存在を感じるってこと。
《──X月X日X曜日
昼休憩開始から約5分後、食堂に現れる。
歩様が軽快で上機嫌。理由は不明のため、本人に確認する》
エルメ | ──やあ、〇〇。 |
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エルメ | ひとつ聞きたいんだけど…… 何かいいことでもあった? |
主人公 | 【よくわかったね!】 →エルメ「君を見ていればすぐにわかったよ。 見るからにうきうきしている感じだっただろう?」 【大したことではないけど……】 →エルメ「でも、何かいいことがあったのは間違いないんだね。 なら、教えてよ。 君のことをもっと知りたいんだ。」 |
主人公 | 【ランチのナゲットがチーズ入りなんだ】 |
主人公 | 【しかも1個増量中!】 |
エルメ | ……ん……なるほど……? ええと、つまり、昼食が君のお気に入りのメニューだってこと? |
《理由は確認したが、理解し難い。
好物はわかりやすく上機嫌になる理由になり得るのだろうか。
俺には存在しない機微だ》
《ともかく、チーズナゲットが気に入っていることはわかった。
今後、何かの参考になるかもしれない》
エルメ | ……ねぇ、よかったら俺も付き合ってもいい? |
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主人公 | 【もちろん、一緒に食べよう】 【うん、エルメは何を食べる?】 |
エルメ | 俺はいいんだ。 あの席が空いているよ、行こうか。 |
エルメ | さあ、どうぞ召し上がれ。 俺のことは気にせず……ね? |
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主人公 | 【う、うん……】 【じっと見られてると食べづらい……】 |
エルメ | ふふ、遠慮なく食べて。 好きなメニューなんでしょう? |
やや気まずいながらも昼食を食べ始める〇〇。
エルメはその様子をしばらく見ていたが、
やがて、ふと思いついたことを声に出してみる。
エルメ | ねぇ……それ、俺にも1つもらえるかな? |
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主人公 | 【食べないんじゃ……?】 【エルメ用のプレートをもらってこようか?】 |
エルメ | 全部はいらないんだ。 ただ、君があまりにも嬉しそうに食べてるから気になって、 俺も少し食べてみたくなっただけ。 |
主人公 | 【うぐ……わ、かった……】 【味わって食べてね……】 |
エルメ | うん、ありがとう。 |
エルメ | (ふぅん……これが、〇〇の好きな味なんだ。 濃厚でジューシーだってことはわかる) |
エルメ | (……ふむ) |
エルメ | ……あっ! |
エルメは、〇〇の背後に視線を向けて、
驚いた顔をしてみせる。
〇〇が咄嗟に振り返った隙に、
エルメは素早く残り1つのナゲットを隠した。
何もなかったことに怪訝な顔をしつつ、ランチプレートへ
視線を戻した〇〇は、ナゲットがなくなっており、
エルメがもぐもぐしていることに気づく。
主人公 | 【自分のチキンナゲットが……!】 【エルメ、食べたの……!?】 |
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エルメ | ……ん? ああ、ごめんね。 俺も気に入ったから、つい。 |
主人公 | 【ひどい!】 →エルメ「(ああ、これはちょっと怒るんだ。 貴銃士にかなり甘いけれど、好物に関しては別なのか…… それとも、勝手に取られたことか、不意打ちが不満なのか)」 【そんなぁ……!】 →エルメ「(わかりやすく落胆したね。 それでも俺に対して攻撃性を見せないのは、 油断した自分の責だと思っているから? 他の理由が?)」 |
じっと〇〇を観察していたエルメは、
かなりのショックを受けている様子を見て、
次の動きについて考え始める。
エルメ | (さて、どうしようかな。 行動の選択肢はいくつもある) |
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エルメ | (このまま隠しておくか、食べたのは嘘だと明かすか。 軽く謝るだけか、真摯に謝罪するか、 意外な行動で意表をついた場合はどうなるか試すか……) |
エルメ | (おそらく最も無難なのは、事実を明かした上で謝ること。 実害がなく、謝罪も伴えば、これまでの〇〇の 言動からしてあまり引きずることなく許しを得られるだろう) |
エルメ | (でも、そういう言動はもう予想がついている……。 なら、せっかく試している以上、最後の選択肢が最適かな) |
エルメ | ねぇ、レタスの下を見てごらん。 食べたなんて嘘。ただ隠しただけだよ。 |
主人公 | 【自分のチキンナゲット……!】 【食べ物で遊ばない!】 |
エルメ | 騙してごめんね。 ほら、これは君のだよ。あーん。 |
エルメは、ピックで刺したチキンナゲットを差し出す。
〇〇の顔が困惑に染まるが、
「ほら」と促されると、ぱくっと口に入れる。
エルメ | ……どう? おいしい? |
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主人公 | 【おいしい!】 【おいしいけどこれはちょっと恥ずかしい】 |
エルメ | ふふ。 |
《俺の意外な行動に意識が向いたのか、
怒りや落胆といった負の感情は消えた。
どの程度までこういう風に許容されるのか興味が湧く》
主人公 | 【……その手帳は?】 【さっきから、何か書いてるけど……】 |
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エルメ | ああ、ちょっとね。 俺にとって重要なことを書き留めているんだ。 |
主人公 | 【自分に手伝えることがあったら言って】 |
エルメ | ……! |
エルメ | ふ……ははは! まさかそんな反応をされるとは、本当予想外だな。 |
エメリヒ | ふ……それでいいんだ。 素直に、なろう……。 俺は死ぬ前に……やっと素直になれて、よか……。 |
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《──素直になろう。認めよう。
マスターを眺めるうちに浮かぶ、この感情の存在を》
《無用な感情などない、冷たい鉄であれ──
それこそが貴銃士、銃としてのあり方だと思っていた。
そうでなければ無様な破滅が待っていると、警戒を怠らなかった》
《だが……ことはそう単純ではない。
人という、複雑な感情を持った存在が関わるならなおさら……。
反例を示した者たちに敬意を表し、認めるべきだろう》
《事実として存在する事象を黙殺するのは、
愚かな固執とも言えるのだから……》
エルメ | 協力よろしくね、〇〇。 |
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