【この空をいつまでも】カトラリー

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解説

カード解説

人と貴銃士の決定的な違い──人はいずれ必ず死ぬことを知り、悲嘆するカトラリー。
それでも前を向き、今を楽しもうと決めた。
肉体が死を迎えたとしても、残る者たちの記憶の中で、人は生き続けるのだから。

心銃解説:傘越しに見上げた虹

本当の本当は、いつか離れ離れになる日が来るのはすごく嫌だし、悲しいし寂しいよ。
でもその時のことを考えてばかりいないで、楽しい今を過ごすって決めたんだ。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

 

Ep1. 仲良くなりたい!

カトラリーが園芸部に入ったばかりの頃──。

コリンよーし、やっと花壇の準備ができたな。
今日はいよいよ種まきだ!
園芸部員1種ちっちゃ!
どこにまいたのかわかんなくなりそー……!
コリンみんな、種もらったか~?
もらってない人がいたら挙手な!
カトラリーあっ……。
カトラリー(僕、種もらってないけど……。
う、うまく話しかけられない……)
園芸部員2どうかしましたか?
カトラリーう、ううん……なんでもない……。
カトラリー(はぁ……せっかく話しかけてくれたのに、
会話できなかった……)
カトラリー(だって、僕が発言して変な空気になたりしたら
恥ずかしいし居心地サイアクになるし。
でも、もうちょっと話せるようになりたい……)
カトラリー(そうだ! この種が育ったら、
勇気を出して僕から皆に話しかけてみよう……!
いつ目が出てくれるか、今から楽しみ!)

──翌日。
カトラリーが花壇の様子を見に行くと、
種をまいた場所にマークスがハーブの苗を植えていた。

コリンう、うわああああ!! か、花壇が……!
カトラリーちょ、ちょっとマークス!
何してんの!?
マークス何って、ハーブを植えている。
この種類は温室ではなく露地?に植えるのがいいと
本に書いてあったんだ。
カトラリーもう! ハーブとか薬草の研究に熱心なのはいいけど、
ここは園芸部の花壇なの!
カトラリーしかも、昨日種をまいたばっかりなんだよ!
その上にハーブの苗なんて植えたら、
芽が出なくなっちゃうよ、やめて!! 違うとこでやって!
マークスちょっ……うわ、背中を押すな……!
コリンカトラリーさん……!
花壇を守ってくれてありがとうございます。
カトラリーべ、別に……。僕がムカついただけだし。
勘違いしないで。
園芸部員1そ、そうですよね……。
カトラリー(あ、今の流れでもっと話せたかもしれないのに……!
惜しいことしちゃった! 僕のバカ……!)
カトラリー(で、でも、花壇を守れたし、よかったよね?)

──翌日。
カトラリーが花壇に行くと、また別の苗が植えられていた。

カトラリー今度は何!?
邑田む? わしらの芋畑じゃ。
収穫するのが今から楽しみじゃのう♪
在坂左側が在坂の紅あずさ。右側が邑田の紅ほのかだ。
芋を収穫できたら、また焼き芋の会をしたい。
邑田あれは誠に楽しい会であった。
それにしても、ちょうどよい場所に空いておる花壇があって
本当によかったのう。
カトラリー何もないわけないでしょ!
マークスも! 邑田も! 在坂も!
ここは園芸部の花壇なのになんで勝手に植えるの!?
カトラリーみんなで頑張って土を作って、やっと種をまいたのに……!
園芸部のみんなが頑張ってたのを台無しにして、ひどいよ!!
カトラリーこれから芽を出そうって時に掻き回される花だって
かわいそうだし!
それに僕も、同じ貴銃士ってだけで肩身が狭くなっちゃうよ!
カトラリーせ、せっかく、園芸部のみんなと仲良くなる
チャンスだったのに……っ! う、うぅぅ~っ!
コリン──肩身が狭くなるなんて、そんなことありえません!
カトラリーえっ……?
コリンカトラリーさんが頑張ってくれているのを、
僕たちみんな知ってますから。
園芸部員1僕、カトラリーさんが誰よりも先に来て、
備品の補充をしてくれているのを見たことがあります!
いつも作業しやすくしてくれて、ありがとうございます。
園芸部員2私も、温室や花壇でよくカトラリーさんを見かけます。
花が病気になっていないか、害虫がついていないか、
こまめにチェックしてくださってますよね。
園芸部員2カトラリーさんも花が大好きなんだって伝わってきて、
すごく嬉しく思ってたんです……!
コリン僕、カトラリーさんと仲良くしたいと思ってて……
僕だけじゃなくて、園芸部のみんなもそうだと思います。
カトラリーさんも同じように思ってくださって嬉しいです!
カトラリー……! みんな……。
邑田ほう……そなたはよき仲間を得たようじゃな。
知らなんだとはいえ、大切な場所を荒らしてしもうてすまぬ。
在坂在坂も、すまなかったと思う。花壇はちゃんともとに戻そう。
それから、在坂はできれば芋を植えていい場所を教えてほしい。
カトラリーその……僕もカッとなって言い過ぎちゃって、ごめん。
芋の苗を植えたいなら、あっちの空いてるところを使うといいよ。
ただ、自分で耕さなきゃいけないけど……。
コリンお2人の芋の苗は一応外来種なので、
あちこちに広がらないようにした方がいいですね。
邑田おお、心得た。
在坂畑を耕す人員が2人では足りないと在坂は思う。
邑田、八九を呼びに行こう。
邑田うむ、そうじゃな。
あやつも焼き芋は好んで食うておるし、手伝いを嫌とは言うまい。
では、わしらはこの辺で失礼する。邪魔したな。

こうしてカトラリーと園芸部員たちは、
花壇を守ることに成功し、絆が深まったのだった──。

Ep2. 強力な助っ人

──紫陽花フェスタを数日後に控えた、ある日の夜。

カトラリーうーん……何がいいかなあ……。
カトラリー(オーナーさんの話を聞いて、今を大切にしたいって思って……。
まずは、いつもお礼をちゃんと言えてないから、
〇〇や十手にお礼をって考えたけど……)
カトラリー(せっかくだから特別な贈り物とかできたらいいよね!
何なら喜んでもらえるかな?)
カトラリー紫陽花フェスタの日にしたいから、紫陽花関連のもの……?
うーん、どうしよう……思いつかない……。
ミカエル……その図鑑の、綺麗な花だね。
これって食べられるのかい?
カトラリー紫陽花は毒があるから食べられないんだって。
でも、確かに綺麗だよね。
紫陽花をイメージしたお菓子とかあるみたいだし……。
カトラリー(そうだ! 紫陽花を食べるのは難しくても、
モチーフにした料理とかお菓子を作るとか、楽しいかも!)
カトラリー(お礼を言いたい人たちを集めて、ミニパーティーを開く!
うわぁ、すっごくいいアイディア思いついちゃった!
そうと決まれば、さっそくレシピを考えなくっちゃだよね)

──翌日から、カトラリーは図書館でレシピを調べ、
必要な材料を用意し始めた。


そして迎えた、紫陽花フェスタ前日の夜。
準備のため、カトラリーが寮のキッチンへ向かうと、
そこには電気がついていて、既に人影があった。

カトラリー……2人とも、何してるの?
タバティエールよう、カトラリーくん。
何って、料理するのさ。
時間がある時には結構入り浸ってるもんでね。
カトラリーへぇ……そうなんだ。
2人とも、料理上手だもんね。
ジーグブルートけど、お前がここに来るのは珍しいな。
腹でも減ってんのか?
カトラリーううん。僕も料理を作りに来たんだ。
明日の紫陽花フェスタで、
お世話になった人たちに作りたいものがあって……。

カトラリーは、調べた内容が書いてあるノートを2人に見せた。

ジーグブルートへぇ……きっちり調べてあるな。
タバティエールこいつは随分と手が込んでるな……!
カトラリーあ、ありがと。
見た目も味も良さそうなレシピを厳選してみたんだ。
ジーグブルートけどよ、お前、料理はできんのか?
普段からフレンチでも作ってるやつならともかく、
こんだけ繊細なのをこの量作るのは難しいと思うぜ。
カトラリーあ……。
タバティエール確かに、どれもこれも時間がかかりそうだな。
俺たちも手伝おうか?
カトラリーだ、大丈夫! これくらい自分でできるし……!
2人ともそれぞれやることあるんでしょ!
僕に構わなくていいから、そっちで作業して!
タバティエールへいへい、了解。
ま、何か困ったことがありゃあ声かけてくれよ。

カトラリーよーし、紫陽花模様の飾り寿司から作ってみようかな?
小さいノリマキを作って、それをいくつも重ねて、
大きなノリで巻いて……簡単そう!
カトラリーええっと、具材をカットして……。
カトラリーいたぁっ!
うぅ……っ、指切っちゃった……。
先にスメシ?ってのから作ろうかな……。
カトラリー……って、うわあああ、落っことした……!
ううう、何この匂い! ビネガー? 目にしみる~っ!
タバティエール&ジーグブルート…………。
カトラリー(ど、どうしよう。全然うまくできない……。
こんなんじゃ、贈り物として用意できないよ……!)
ジーグブルート初めて見る作り方だな。
おもしれぇ……おい、俺に貸してみろ。
タバティエールどれどれ……。
レシピ、もう1回ちゃんと見せてもらっていいか?
カトラリー……っ! な、なんで……?
タバティエールお礼だから1人で作りたい気持ちもわかるぜ。
でも、見てるだけってのももどかしくてさ。
遠慮せず頼ってくれよ。な?
ジーグブルート作業を手分けしたからって、お前の感謝の気持ちが減るわけでも、
伝わらねぇわけでもないだろ?
カトラリーう、うん……!

タバティエールとジーグブルートは手際よく調理を始める。
カトラリーも2人の的確なアドバイスのもと手伝いをし、
あっという間に紫陽花模様の飾り寿司ができあがった。

カトラリーわぁ……! すっごく綺麗……!
あ、あの……僕のレシピ、ちょっとわかりにくかったよね……。
作ってくれて、ありがとう……。
タバティエールいや、カトラリーくんが細かく手順を書いてくれてたからこそ、
短時間で調理できたんだ。
ジーグブルートお前がもうちょっと料理に慣れたら、
これくらいパパッと自分でも作れるようになると思うぜ。
カトラリーほ、本当……!?
あのさ……実は、これ以外も作りたいのがいっぱいあって……。
でも、うまくできる自信がなくて……だから、あの……。
カトラリーい、一緒に……一緒に作ってほしい!
ジーグブルートよし、それでいい。
ちょうどスイーツを作りたいと思ってたんだ。
手伝ってやるぜ。
タバティエールそれじゃあ俺は料理の方を担当しようかねぇ。
3人で協力すれば、フルコースだって余裕で作れるさ。
カトラリーう、うん……そうだよね!
2人ともありがとう……! 僕も頑張る……!

──こうして3人で力を合わせ、
見事な紫陽花モチーフのフルコースが完成したのだった。

Ep3. 手を繋いで

──紫陽花フェスタが無事終わり、少し経った頃。

カトラリーミカエル……! どこにいるの?
カトラリー花でも見てるのかと思ったけど、
ここにもいないか……。
どこ行っちゃったんだろう。

士官学校内をあちこち見て回っていたカトラリーは、
メモリアルウォールの前に人がいることに気づいた。

カトラリー(生徒でも教官でもないよね。
誰なんだろう……?)
女性……今年もこの日が来てしまったわね。
私……だんだんあの子の輪郭がぼやけていく気がして……。
あの時の悲しみも少しずつ和らいできて、それが悲しいの。
女性声や体温、手や頬の感覚……
あの子の記憶が薄れていくくらいなら、
悲しみのどん底だろうと、そこに留まっていたかった……。
男性ああ……わかるよ。
記憶も悲しみも、当時のままの強さで永遠に保つことはできない。
でもきっと、あの子だって私たちがずっと嘆いているのは嫌さ。
男性私たちが前を向いて歩いて行くことを、
あの子も笑顔で見ていてくれるはずだよ。
女性そうね……。
優しい子だから……。
カトラリー(あの人たち……革命戦争で子供が死んじゃったんだ。
子供でも、死んじゃって会えなくなって何年も経つと、
だんだん記憶が薄れていくんだ……)
カトラリー(……それって、人に限った話じゃない、かも?
僕……銃だった頃の前の持ち主のことをどれだけ覚えてる?)
カトラリー(銃を通じて伝わってきた、あいつの感情、想い……。
どんな風に響いてたっけ……?
もしかしたら、もう、僕の思い込みになっちゃってるかも……)
カトラリー(どうしよう、怖い……)
カトラリー(僕も、大事な人を忘れちゃうの……?)

──その日の夜。
カトラリーは〇〇の部屋を訪れた。

主人公【どうしたの?】
【どうぞ、入って】
カトラリー……あの、急に来てごめん……。
その、なんていうか、僕ね……。

〇〇はカトラリーが泣きそうなことに気づいて、
お茶を飲みながら話そうと提案した。

カトラリーありがとう……このハーブティー、いい匂いだね。
落ち着く優しい匂いがする……。
主人公【気に入った?】
→カトラリー「うん。
温まったし、美味しい。」

【マークスが作ってくれたんだ】

→カトラリー「へぇ、マークスが……?
なんか意外だね。こんなホッとするものも作れるんだ。」

ハーブティーを飲んで一息ついたカトラリーは、
昼間の出来事を話し始めた。

カトラリー……あのね、昼間にミカエルを探してた時に、
メモリアルウォールで悲しそうな顔をしている人たちがいたんだ。
その人たちの話が聞こえちゃって……。
カトラリー死んで会えなくなっちゃった人のことは、
長い時間が経つと忘れちゃうんだって思って……。
どうしようって考えてたら、ぐるぐるしてきて……!
カトラリーねぇ。僕、忘れたくない……!
カトラリー未来を怖がって、今を大事にしないのはやめるって言ったよね。
もちろん、その言葉は嘘にしないようにしたいよ。
カトラリーでも、怖いのは怖いんだ。
〇〇のことを忘れるのなんて、絶対やだ。
カトラリーだから、僕がずっと君を覚えていられるように……
〇〇とたくさん過ごしたい。
どんなに頑張ったって忘れられないくらいに刻みつけたい。
カトラリーねぇ、僕の名前を呼んで。
カトラリーって呼んで?
主人公【カトラリー】
【何回でも呼ぶよ、カトラリー】
カトラリー……っ!
カトラリーあと……手、握ってほしい……。
カトラリーあったかい……。
〇〇の手と、体温……。

カトラリーはぽろりと涙を流しつつ、
ぎゅっと手を握りしめる。

〇〇は気分を明るくしようと、
紫陽花フェスタについて語りかけた。

カトラリー……紫陽花フェスタ。
そうだね……園芸部のみんなと紫陽花の手入れをして……。
カトラリーシャスポーさんと一緒にガイドブックを作って……。
ベルガーがカタツムリを飼ってたのには驚いたけど……。
主人公【白い紫陽花も綺麗だった】
【いろんな紫陽花があったね】
カトラリーうん……! どれもすごく綺麗だった。
同じ紫陽花でも、土壌によって色が違うのも面白いよね。
来年は、ミョウバンありとなしで僕も育ててみたいな。
カトラリー……って、来年の話になっちゃった。
紫陽花フェスタの思い出話をしてたのに、脱線しちゃったね。
主人公【未来の楽しい話もいいと思うよ】
【話したいことを話せばいいよ】
主人公【今度の休日、一緒に何をしたい?】
カトラリーえ? えっと……。
〇〇が一緒に遊んでくれるってこと!?
カトラリーそれじゃあ……えっと、えっと……!
僕ね、新しくできたレストランに行ってみたいかも!
シャスポーさんが、ケーキが美味しいって教えてくれたんだ。
カトラリーあっ、でもミカエルと新しい花の苗を見に、
お花屋さんに行きたいねって言ってたし、
久しぶりに釣りにも行きたいんだった……!
カトラリーどうしよう、〇〇としたいことが
いっぱい浮かんできて、決められない……!
主人公【ゆっくり考えよう】
【時間はいっぱいあるよ】
カトラリーじゃ、じゃあ……僕が予定を決めるまで、
このまま手を繋いでいてね。
約束だからね……!

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