士官学校に来て間もない頃のこと──。
絶対高貴に目覚められずにいたシャスポーは自分の過去と向き合うための旅に出る。
弔いの地で得た答えを胸に、フランスを守る貴銃士は、輝きを手にするのだった。
僕が絶対高貴になれないのは過去に原因があると思っていた。
僕の高貴への道筋は、あの夜に君が示していてくれたのにね。
光をくれた君に心からの感謝を。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
シャスポー | ……恭遠教官、少しいいでしょうか。 |
---|---|
恭遠 | ああ、シャスポーか。 どうしたんだ? |
シャスポー | その……個人的に、伺いたいことがあって。 あなたならきっと、よくご存知だと思うんです。 ……絶対高貴について。 |
恭遠 | 絶対高貴、か。俺は貴銃士ではないから、 あくまで『近くで見てきた者として』の話になるけど構わないか? |
シャスポー | ええ、大丈夫です。 |
シャスポー | 僕はまだ……絶対高貴に至れていません。 士官学校へ来て、時折目にしているのに…… どうすればあの力を使えるのか、よくわからないんです。 |
シャスポー | 絶対高貴とは、本質的にはどういうものなんでしょうか。 どうすれば目覚められるのか…… 恭遠教官は、どう思われますか? |
恭遠 | うーん、そうだなぁ……。 絶対高貴や絶対非道にはまだまだ謎が多いから、 こういう現象だ!と断言はできないね。 |
恭遠 | ただ、絶対高貴に目覚めた貴銃士たちの話ならできる。 彼らに共通していたのは……確たる信念があったことだろうか。 |
恭遠 | 絶対的でブレない、その貴銃士にとって大事で譲れないもの。 それがあると、比較的早く目覚めていたように思うよ。 |
恭遠 | 逆に、周囲のことを気にしてしまう性格だったり、 信念を定める途中にあったりした貴銃士たちは、 目覚めるまでに苦労していたかな。 |
シャスポー | ……レジスタンスにいた別の僕は、どちらでしたか? |
恭遠 | レジスタンスにいたシャスポーは……苦労していたね。 高い性能への自負と、ドライゼへの対抗心、 いち早く絶対高貴に目覚められない焦り……。 |
恭遠 | いろいろな要因が重なった末に……。 ………………。 |
恭遠 | でも、最終的には努力が実って、 美しい大輪の花を咲かせた。 |
恭遠 | 君ならきっと大丈夫だ、シャスポー。 焦らずにゆっくり、自分の絶対高貴を見つけていけばいい。 |
シャスポー | ……はい。 |
その夜──……シャスポーは自室で、
自分の本体である銃を手にし、ぎゅっと握りしめる。
シャスポー | ──絶対高貴。 |
---|---|
シャスポー | (……駄目か。それはそうだよな。 口にしただけでなれるような簡単なものではないだろうし) |
シャスポー | はぁ……。 |
シャスポーはベッドに座り、傍らに銃を置く。
その銃床に点々と散っているのは、黒い血の染みだ。
シャスポー | Péché……。 |
---|---|
シャスポー | (この血も、罪も……消えることはない) |
シャスポー | もう誰も、何も、信じない! |
---|---|
シャスポー | ……解放ス、ル……! |
シャスポー | ……ウゥ、僕ガ……全テ……ッ! |
シャスポー | …………。 |
---|
──シャスポーが士官学校に来て数週間。
アウトレイジャーの出没もなく、平穏な日々が続いていたが……。
グラース | ふっ……お前、こんなこと紙に書いてないで、 直接言えばいいじゃないか。 |
---|---|
シャスポー | ……っ、おい、返せ! 人のものを覗き見るなんて悪趣味にも程がある……! |
主人公 | 【一体何事?】 【どうして喧嘩に……?】 |
タバティエール | 〇〇ちゃん……あいつらがすまねぇな。 ちょっとした手違いがあって……。 |
マークス | 俺がシャスポーの手帳を拾ったんだ。 だが、返そうとして、間違えてグラースに渡してしまった。 |
グラース | おっ、ちょいどいいところに来たな。 見てみろよ、〇〇。 |
グラース | こいつ、手帳にお前への感謝の気持ちを綴ってるんだぜ。 どうせならもっと情熱的な愛の詩でも書けば──…… |
主人公 | 【人のものを勝手に見るのは駄目だ】 【シャスポーに返して】 |
グラース | はぁ……なんだよ、真面目なやつ。 わかったわかった、返せばいいんだろ。 |
シャスポー | 最初からそうしろ! まったく……! |
シャスポー | だいたい、マークス! 君も君だよ。 僕とこいつを間違えるなんてあんまりだろう。 |
マークス | ……だが、あんたらはよく似てて、後ろ姿だとよくわからない。 それに、フランスでは入れ替わっていたから余計にややこしい。 |
シャスポー | あれは……やむにやまれぬ事情があったからじゃないか! 今はもう忘れてくれ。僕がこんな野蛮で デリカシーのないやつと混同されるなんて耐え難い。 |
グラース | ああ……!? |
グラース | フン、よく言うぜ。 その野蛮でデリカシーのないお優しい弟が、 お前の暴走を止めてやったのになぁ!? |
シャスポー | ……ッ! |
タバティエール | おいおい、グラース、シャスポー。 そのあたりでやめとけって。 |
シャスポー&グラース | …………。 |
ラッセル | ……皆、大変だ! 近隣の街で、アウトレイジャー出没の一報が入った。 緊急出動だ! |
──アウトレイジャーの討伐がなんとか終わったあと、
士官学校に戻ったシャスポーは、
〇〇の治療を受けていた。
主人公 | 【大丈夫……?】 【痛いところはない?】 |
---|---|
シャスポー | うん……ありがとう。 ……ごめんね、〇〇……。 |
シャスポー | …………。 |
アウトレイジャー | 殺ス……! |
---|---|
グラース | くそ……数が多いな。 絶対非道で一気に片付けるぞ! |
マークス | おい、その力を使いすぎるな。 マスターの負担が大きいんだぞ! |
ジョージ | オレもいるから大丈夫だって、マークス! 絶対高貴でも攻撃するし、傷もバッチリ治すぜ☆ |
主人公 | 【ありがとう、2人とも!】 【早く終わらせよう!】 |
ジョージ | よーし、いっくぜー! 絶対高貴! |
マークス&グラース | 絶対非道! |
アウトレイジャーたち | グァァァ……! |
アウトレイジャーたち | ウゥゥ……。 |
シャスポー | まだあんなに……! 僕も戦闘に加わる! |
タバティエール | 待て、シャスポー。 俺たちは周囲に被害が広がらないようにサポートだ。 絶対高貴ナシじゃ、連中を倒せないからな。 |
シャスポー | ……っ、僕は……二軍のお前とは違う……! 戦いの中でなら、絶対高貴に目覚められるはず……。 |
シャスポーは、近くにいたアウトレイジャーに向かっていく。
銃を手に、集中力を高めるが……。
シャスポー | (絶対高貴! 来い、絶対高貴だ……!) |
---|---|
グラース | おい、シャスポー! お前は下がってろ! |
アウトレイジャー | 殺ス……。 |
シャスポー | (──僕はなぜ、あの時アウトレイジャーになったんだろう) |
シャスポー | (それは……怒りと絶望に呑まれてしまったからだ。 そして……僕がシャスポー銃の名から逃れていたせいだ) |
シャスポー | (グラースを演じることで、自分の罪から目を背けていた。 だから──堕ちてしまったんだ。 逃げるなんて、高貴な行いではないから) |
シャスポー | (だけど、今は違う。 僕は『シャスポー』として、自分の罪と向き合って──) |
シャスポー | (……。 僕は本当に、向き合っている……か?) |
アウトレイジャー | ウ、ウゥゥ……。 |
シャスポーは、手にしている銃を見る。
シャスポー | ……!? |
---|---|
シャスポー | 赤い……手も、銃も、赤く染まって…… これは……血……? |
アウトレイジャー | 死、ヲ……! |
シャスポー | ……ッ! |
シャスポー | (結局、僕は絶対高貴になれなかった……。 〇〇に治療でたくさん力を使わせて、 ろくに役に立てなくて……最低だ) |
---|
──数日後。
マークス | おい、緊急任務だ。 何人か行けるやつはいるか? |
---|---|
グラース | ……僕が行ってやるよ。 |
シャスポー | …………。 |
シャスポー | 〇〇、突然ごめんね。 |
---|---|
主人公 | 【大丈夫だよ】 【何か大切な話?】 |
シャスポー | ……改めて、君に伝えたい事があって来たんだ。 |
シャスポー | 僕はフランスにいた頃、 カトリーヌを救えず、アウトレイジャーになった。 |
シャスポー | そんな僕を見捨てずに召銃してくれて、本当にありがとう。 |
シャスポー | 君の期待に応えられないまま、 こんなことを聞くのはすごく心苦しいんだけど……。 |
シャスポー | その……僕を銃に戻すことって、できるのかな……? |
主人公 | 【どういうこと……?】 【戻すって、どうしてそんな……!】 |
シャスポー | ……〇〇、どうか誤解しないでほしい。 優しい君は自分を責めてしまうかもしれないけど、 君は何も悪くないよ。これは僕の問題なんだ。 |
シャスポー | 僕は……絶対高貴になれない。 僕の内面に問題があるからだ。 |
シャスポー | 絶対高貴になれない僕は、 アウトレイジャーとの戦闘ではまるで役に立てない。 |
シャスポー | そして、このまま足を引っ張り続けることを、 誰よりも僕自身が……僕のプライドが許さないんだ。 |
シャスポー | 役に立てないまま、君の貴銃士を名乗って、 ここで安穩と暮らすなんて……僕には耐えられないよ。 |
主人公 | 【気持ちを打ち明けてくれてありがとう】 →シャスポー「そんな……君にお礼を言われるようなことなんて、 何もないんだ。 本当に……こんな僕で、ごめんね。」 【気づいてあげられなくてごめん】 →シャスポー「〇〇……。 ううん、君は悪くないんだよ。本当に。 すべては僕の至らなさのせいだ。」 |
シャスポー | それで、銃に戻せるか、なんだけど……。 |
主人公 | 【でも、銃に戻すことはできない】 【急いで役に立とうとしなくていいんだよ】 |
主人公 | 【焦らずにできることから始めよう】 |
シャスポー | ……〇〇……。 ありがとう……。 |
──翌日。
タバティエール | 〇〇ちゃん、大変だ……! シャスポーがいなくなった! |
---|---|
主人公 | 【えっ……!?】 【どういうこと!?】 |
タバティエール | 先に食堂か教室に行ってるのかと思ったが、どこにもいない。 寮の部屋を改めてよく見てみたら、机の上にこれがあったんだ。 |
タバティエールが差し出したのは、
『〇〇へ』と書かれている封筒だった。
『親愛なる〇〇へ。
昨日は僕の話を聞いてくれてありがとう。
そして、心配をかけてばかりでごめんね』
『君がかけてくれた言葉は、どれも本当に嬉しかったよ。
でも、いつまでも君に甘えていちゃだめだと思ったんだ』
『君ならきっと、どんな僕でも許してくれるんだろうね。
だけど、僕は本当は許されちゃいけないんだ』
『それなのに僕はフランスにいた頃、楽な方に逃げた。
シャスポー銃の名と歴史から逃げて、
罪から目を背けていたんだ』
『そんな卑劣で罪深い行いを精算しないままでは、
僕は胸を張って君のそばにはいられない。
このままじゃ前に進めないし、絶対高貴にもなれないと思う』
『君は、できることから始めようって言ってくれたね。
今の僕にできることは何か、よくよく考えてみたんだ』
『いきなり絶対高貴になろうとするんじゃなくて、
僕の心につかえていることを1つ1つ解消していく……
まずは、そこから始めることにするよ』
『そのためにしばらく、士官学校を離れることにします。
いつか必ず帰るから、どうか待っていてください』
タバティエール | よかった……自棄を起こしたわけではなさそうだな。 けど、『血の一週間』のことは、 何もあいつが悪いわけじゃないのに……。 |
---|---|
タバティエール | それでも、あいつの心に、 深く強く染み付いちまってるんだな……。 |
主人公 | 【血の一週間……】 【フランスでも少し話していたっけ】 |
タバティエール | ああ……あいつの銃床にある血痕は、 『血の一週間』でついたものらしい。 |
タバティエール | フランス人同士が戦い、大勢のパリ市民が散った…… あの忌まわしい事件のな。 |
タバティエール | シャスポーはあの事件に自分が使われて、 守るべきフランス人の命を多く奪う結果になったことを、 ひどく気にしていた。 |
タバティエール | あいつ自身がやりたくてやったことじゃあないのに……。 不器用で真っ直ぐで、責任感が強いやつなんだよ。 まったく……。 |
主人公 | 【心配ではあるけど……】 【必ず帰ると書いてあるから……】 |
主人公 | 【信じて待つことにしよう】 |
タバティエール | 〇〇ちゃん……。 |
タバティエール | ……そうだな。 あいつも、1人でゆっくり考える時間が必要なんだろう。 |
タバティエール | 世話の焼ける奴だけど…… よろしく頼むよ、〇〇ちゃん。 |
男性 | ……おや、あなたは……? |
---|---|
シャスポー | 突然すみません。 僕は……貴銃士のシャスポーといいます。 |
男性 | ええ、お姿は遠くから見たことがありますが……。 貴銃士様がお1人で、なぜここへ……? |
シャスポー | ……急なお願いで申し訳ないけれど、 どうかここで、あなたの仕事を手伝わせていただきたいんです。 |
男性 | え、ええ……? それは構いませんよ。 でも……いいんですか? |
シャスポー | はい、僕自身が、どうしてもやりたいんです。 僕は……ここでやるべきことがあるので。 |
シャスポー | それと……騒ぎにはしたくありませんから、 僕のことは内密にしていただけませんか? |
男性 | それはもちろん。 ここは静かな眠りの場所ですからね。 さ、どうぞ中へお入りください。 |
──シャスポーが手紙を残し消息を絶ってから、
1か月が経過した。
グラース | シャスポーのやつ、のんびりバカンスとは優雅なもんだな。 ま、僕は口うるさいやつがいなくて快適だけど。 |
---|---|
グラース | タバティエールも暇ができてよかったじゃねぇか。 ……辛気臭い顔してんなよ。 |
タバティエール | ……辛気臭い顔、してたかねぇ。 |
グラース | 自覚なしかよ。 暇で余計なこと考えるんなら、僕の従者に任命してやるぜ。 |
タバティエール | 悪いな。今はそういう気分じゃ──…… |
グラース | チッ、『今は』だと? 今どころかずっとじゃねぇか、鬱陶しい! |
グラース | あいつは戻るって言ってんだ。 1人で羽根を伸ばしてるんだろうし、心配するだけ無駄だっての。 |
主人公 | 【そうかもしれないけど……】 【便りがないから心配で】 |
グラース | あー、もう、揃いも揃って! |
グラース | タバティエールも〇〇も、 そんなにあいつが心配なら探しに行けよ! |
主人公 | 【探したけど見つからなかった】 【どこに行ったか全然わからないんだ】 |
タバティエール | ああ……イギリスにはいないのかもしれないな。 フランスのどこかなんだろうが……フランスも広い。 身を潜めてるなら、そう簡単には見つからないだろうな。 |
グラース | なんだ、もう探してたのか。 |
主人公 | 【思い詰めていないか心配だ】 →タバティエール「そう……俺もそれが心配なんだ。 あいつは1人で考え込むと、どんどん暗い方に行っちまいそうで。」 【タバティエール、一緒に探しに行く?】 →タバティエール「〇〇ちゃん……! そうだな、一度会って無事を確かめたい。」 |
ラッセル | ああ、〇〇君! ここにいたのか。 レザール家のテオドール氏から手紙が届いている。 何かの要請なら日程を調整するから、確認してくれないか? |
〇〇は急いで手紙を確認する。
そこには、シャスポーはどうやら
ペール=ラシェーズ墓地にいるらしいと書いてあった。
タバティエール | あそこか……! 俺としたことが、なんで今まで思いつかなかったのか……。 |
---|---|
ラッセル | ペール=ラシェーズ…… 世界で最も有名な墓地の1つだと言われているな。 |
タバティエール | ああ。フランスの偉人の墓がたくさんあるし、 戦争の記念碑もある。 |
タバティエール | そして……あそこは、血の一週間の終盤が繰り広げられた地。 パリ・コミューン、最後の地だ。 |
パリのペール=ラシェーズ墓地に向かった
〇〇とタバティエールは、
ある壁の前で佇むシャスポーを見つけて駆け寄った。
シャスポー | …………! |
---|---|
シャスポー | どうして、君たちがここに……? |
タバティエール | 実は、テオドールから連絡があってな。 |
主人公 | 【どうしても会いたくて来てしまった】 |
シャスポー | ……〇〇……! ごめんね、絶対高貴に関してはなんの進展もないし、 書くことがまとまらなくて手紙も出せなかった……。 |
シャスポー | そのせいで余計に心配させてしまったかな……。 はぁ……本当に、僕って……。 |
シャスポー | …………。 ……〇〇は、この壁を知ってる? 『連盟兵の壁』と呼ばれているところなんだ。 |
シャスポー | 1871年5月28日…… ここで、パリ・コミューンの連盟兵147人が銃殺された。 |
シャスポー | 使われた銃は──僕、シャスポー銃だ。 |
タバティエール | ……シャスポー……。 |
シャスポー | パリで起きた大きな悲劇を悼む人々が、 100年以上経った今もたくさんいて、 ここを訪れて、美しい花々を手向けるんだ。 |
シャスポー | 今日は、花を手向けに来た老夫婦と、 少しだけ話をしたんだ。 |
老紳士 | あなたは……もしや、貴銃士シャスポー様では? 今はイギリスの士官学校にいらっしゃると思っていましたが、 ここで一体何を……? |
---|---|
シャスポー | 僕は……自分が犯した罪と向き合いたくて、 ここにやってきました。 |
老紳士 | なんという高貴なお心をお持ちで……! さすがは貴銃士様だ。 |
シャスポー | ……そんなことはありません。 |
シャスポー | 僕は長い間、自分の罪から逃げていたんです。 だから……僕は今も、絶対高貴になれない。 その資格がないんです。 |
老紳士 | 絶対高貴……。 それがあなたにとってどれほど大切なものなのか、 知る由もないですが……。 |
老紳士 | あなたがフランスを思う気持ちは本物だ。 私たちにはそれだけで十分ですよ。 |
シャスポー | えっ……? |
老婦人 | シャスポーさん。 歴史の重みを、あなただけが背負う必要なんてないわ。 |
老婦人 | 銃口や砲口を天に向ければ、礼砲や弔銃になる。 狩り人が生き物を狩れば、命をつなぐ糧たる食料を得る。 人が人に向ければ……悲劇を生む。 |
老婦人 | 銃口がどこを向くかは、銃でなく人が決めるものよ。 罪はあなたではなく、人にこそある……私はそう思うわ。 |
老婦人 | だから人は、悲劇の場所をこうして残し、 後世まで語り継いで、忘れないようにするのではないかしら。 同じ悲劇を繰り返さないための戒めとして……。 |
老紳士 | ええ。あなたの心がけは本当に立派なものです。 しかし……我々にはどうも、 贖罪があなたのすべきことだと思えないのですよ。 |
シャスポー | …………! |
シャスポー | それを聞いて、〇〇の言葉を思い出したんだ。 |
---|---|
シャスポー | 君は、僕がアウトレイジャー化した時に 『シャスポーは、フランスを守る銃だ!』って言ってくれたよね。 |
シャスポー | あの言葉を思い出して、ハッとしたよ。 僕はもう、答えをもらっていたんだって。 |
シャスポー | 罪がないと言われても、僕はきっと贖罪をやめきれない。 でも、それだけに囚われいちゃいけないよね。 僕がこうして貴銃士として目覚めた理由は別にあるんだから。 |
シャスポー | 〇〇は……僕の存在を望んでくれた。 フランスを守る貴銃士として……。 |
シャスポー | 随分遠回りをしてしまったけれど……僕は強くなりたい。 そう思えるようになったんだ。 たとえ、絶対高貴になれないとしても……。 |
主人公 | 【シャスポーなら強くなれる】 【一緒に強くなろう】 |
かすかに震えるシャスポーの手を、
〇〇はそっと握った。
シャスポー | それと……タバティエール、すまない。 お前の姿勢は正しかった。 |
---|---|
タバティエール | シャスポー? |
シャスポー | 絶対高貴になって戦うことだけが、貴銃士の在り方じゃない。 その時その場でできる限りを尽くし、人々を守る。 それができるお前を……僕は、尊敬する。 |
タバティエール | ……! シャスポー……。 |
シャスポー | できもしないことを高望みして、 勝手に落ち込んだって仕方がない。 僕は今持てる最大限の力で、〇〇や皆を助けるよ。 |
主人公 | 【頼もしいよ】 【頼りにしてるよ、シャスポー】 |
──パァン!
タバティエール | 今のは……銃声!? |
---|---|
連合軍フランス支部兵士 | ……〇〇候補生、タバティエール殿! アウトレイジャーです! 至急応援を願います! |
シャスポー | 大変だ……! 僕も行くよ。 急ごう、〇〇! |
兵士の案内で向かった先には、
複数のアウトレイジャーと対峙する兵士たちと、
逃げ惑う人々の姿があった。
アウトレイジャー | 殺ス……殲滅、スル……! |
---|---|
市民女性 | きゃああああ!! |
タバティエール | 皆、落ち着いて避難を! 兵士が誘導してくれてるから、指示に従って、慌てず確実にな。 大丈夫、俺たち貴銃士もついてるぜ。 |
市民男性 | 貴銃士様……!? |
シャスポー | ええ。僕たちが来たからには、もう大丈夫ですよ! |
タバティエールとシャスポーの登場によって、
人々の酷いパニック状態は落ち着き、避難が進む。
──その時だった。
少女 | きゃっ! |
---|---|
アウトレイジャー | 殺……ス……! |
足がもつれて転んだ少女にアウトレイジャーが気づき、
ゆっくりと銃口を向ける。
シャスポー | ……ッ! |
---|---|
シャスポー | (肉壁になればなんとかあの子を救えるか……? でも、僕が倒れたあとにあの子もやられてしまう。 共倒れになって守れないなら意味がない……!) |
シャスポー | (貴銃士である僕がやられたら、パニックも酷くなる。 だけど、このままじゃあの子が……! どうすれば……!?) |
主人公 | 【あの子を助けて!】 |
シャスポー | ……マスター! |
駆け出したシャスポーは、
少女を庇うように前に立つ。
シャスポー | (僕にできることはなんだってやってやる! 絶対高貴が使えなくても、皆を守るためにできることを── ただの銃弾でも、多少の足止めにはなるはず!) |
---|---|
シャスポー | 僕の前で、誰も傷つけさせたりしない……! |
シャスポー | ……! この力は、まさか……!? |
シャスポー | 絶対高貴……! |
アウトレイジャー | ……グゥ……ッ!? |
眩い光に戦いたように、アウトレイジャーの動きが止まる。
シャスポー | 考えなくてもわかる。 僕がすべきことは、ここにある……! この心から……力が溢れ出てくるから。 |
---|---|
シャスポー | ……心銃! |
アウトレイジャー | グァァ……!! |
少女 | ママー! |
心銃によってアウトレイジャーは消滅し、
シャスポーが救った少女は、母親にぎゅっと抱きしめられる。
少女の母親 | 貴銃士様……! 本当に……ありがとうございました……っ! |
---|---|
シャスポー | お礼なんて……その子が無事でよかったよ。 |
少し離れたところから見守っていた人々が、
シャスポーへ大きな拍手と歓声を送った。
タバティエール | ……やったな、シャスポー。 |
---|---|
シャスポー | ああ……。なんとかなって、本当によかった。 |
連合軍フランス支部兵士 | このたびはアウトレイジャー討伐へのご協力、 誠にありがとうございました! |
連合軍フランス支部兵士 | 被害状況と周辺の警戒についてですが──……。 |
タバティエール | ああ、それなら──……。 |
タバティエールが今後の動きについて兵士と話している間、
〇〇は戦闘中に軽い怪我をした
シャスポーの治療を行う。
主人公 | 【おめでとう】 【シャスポーが皆を救った】 |
---|---|
シャスポー | そんな……結果だけ見れば僕が今回の功労者みたいだけど、 僕も、救われた側だよ。 |
シャスポー | 絶対高貴に目覚められて…… 僕も、救われた。 |
シャスポー | 〇〇……君のおかげだ。 |
主人公 | 【自分の?】 |
シャスポー | うん。迷っていた僕の背中を、君の声が押してくれた。 君がいたから、僕は勇敢に戦えた。 臆病な自分と決別できたんだ。 |
シャスポー | 〇〇が、また僕を救ってくれたね。 君は……僕の救世主みたいだ。 |
シャスポー | ねぇ……〇〇。 僕の誓いを受け取ってくれる? |
主人公 | 【それがシャスポーの願いなら】 【謹んで受け取るよ】 |
シャスポー | ありがとう。 ……〇〇……親愛なる僕のマスター。 |
シャスポーは膝をついて、
うやうやしく〇〇の手を取る。
シャスポー | あなたに、永遠の忠誠を。 |
---|
薔薇の傷が刻まれた手の甲に、
シャスポーの唇がそっと触れたのだった。
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