貴銃士たちとマスターは、ヴァンパイア伝説を巡るホラーツアーへ!
人の感情に関心を抱くようになったエルメは、ツアー中にもさまざまな学びを得ていく。
変化がもたらす変化、その先に何があるかは未知数。
貴銃士って、マスターの薔薇の傷を介して何かしらのエネルギーを
得ているのかな。
ある種一心同体で一体化した命……ヴァンパイアと共通点があるかもしれないね?
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
エルメ | ……ジグ、ちょっと。 |
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ジーグブルート | ……あ? んだよ。 てめぇと話す気分じゃねぇ。じゃあな。 |
エルメ | …………。 |
エルメ | ……在坂、ジグは何か嫌なことでもあったの? それとも、俺にお説教されるような心当たりでもあるのかな。 |
在坂 | 在坂の知る限りでは、特になかったと思う。 機嫌も、さっきまでは普通だったはずだ。 |
エルメ | うーん……原因がよくわからないな。 短時間で急激に感情と態度が変化するのは、 ジグには珍しくないことだけれど。 |
在坂 | ……エルメに声をかけられたことが変化の要因だと在坂は思う。 直前に在坂と話していた時はいつも通りだったからだ。 |
エルメ | 俺に対して思うところがあるか、 俺の声のかけかたが何か気に触ったのか……。 どういう理由なんだろうね。 |
在坂 | ……エルメは、ジーグブルートのことを知りたいのか? それならば1番いいのは、相手をよく観察することだ。 |
在坂 | 在坂はよく人間を観察している。 話すのもいいのだろうが、観察ではまた違った気づきが得られる。 |
エルメ | ドライゼの観察はいつもしているけれど、 ジグを観察したことはなかった……かも。 いい案だね、早速やってみるよ。 |
在坂 | ならば、在坂も行こう。 |
エルメと在坂は、
ジーグブルートの尾行と観察を始めた。
ジーグブルート | ……? |
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在坂 | 隠れろ。 |
気配を感じたらしいジーグブルートが振り返る。
間一髪のところでエルメと在坂は物陰に隠れた。
ジーグブルート | (なんだ? 妙な視線を感じた気がしたが……誰もいねぇな) |
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在坂 | ……危ないところだった。 |
エルメ | さすがだね。俺たちの尾行に反応した。 確信には至っていないみたいだけれど……。 |
エルメ | ……おや。 ジグって、顎を撫でる癖があるんだね。 今まで気づかなかったよ。 |
エルメ | 状況と表情からして……釈然としないことがある時のものかな。 ほら、今も首をかしげながらやっている。 |
在坂 | 観察していると、そういう発見がある。 |
エルメ | なるほど、これは面白いね。 |
ジーグブルート | …………。 |
エルメ | さっきから妙に周囲を気にしているし、 どんどん人気のないところに向かって行っているね。 |
エルメ | 俺に対して過剰な拒絶反応を示したのは、 やっぱり何かやましいことがあるからだったのかな。 |
在坂 | ……こうやって見ていればいずれわかるはずだ。 |
ジーグブルートは、人気のない裏庭の片隅に腰を下ろすと、
ポケットから取り出した穀物を撒く。
すると、小鳥が1匹、また1匹と飛んできた。
ジーグブルート | おいおい、そんなに慌てて食うな。 喉に詰まっちまうぞ。 |
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ジーグブルート | おらそこ、喧嘩すんな。 まだまだたくさんあるってのに。 |
エルメ | ……ジグには、こんな一面もあるんだね。 |
エルメ | (よく知っているつもりだったけれど…… 意外と、まだ知らない部分もたくさんあるのかもしれないな) |
在坂 | そろそろ引き上げた方がいいだろう。 観察のしすぎはよくないと、在坂は知っている。 |
──その日の放課後。
エルメ | ジグ。今朝君の機嫌が悪かった理由がわかったよ。 |
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ジーグブルート | あ? |
エルメ | 授業中、鳥に会えなくて寂しかったんだね。 そうだろ? |
ジーグブルート | んなわけねーだろ!! つーか、なんで鳥のこと知ってんだ、ふざけんな!! |
エルメ | 違うの? じゃあ、どうしてだか教えてくれない? |
ジーグブルート | ……それだよ! |
ジーグブルート | 今まで俺が何してようが、 てめぇの気に食わねぇこと以外ならどうでもよくて、 さらっと流してただろ。 |
ジーグブルート | それが最近なんだ? なんで?どうして?ってガキみてぇにしつこく聞きやがって……! |
ジーグブルート | うぜぇんだよ。 無駄に話しかけてくんな! |
エルメ | やっぱり俺に腹を立てていたんだ。 |
在坂 | 在坂の仮説は正しかった。 |
エルメ | そのようだね。俺もまだまだだなぁ。 |
ホラーツアーに参加したエルメと〇〇は、
ヴァンパイアだったという伝説がある
ヘインズビー男爵の屋敷跡を探索していた。
エルメ | 今のところ、目立った危険はなさそうだね。 ところで……なぜヴァンパイアは血を吸うんだろう? |
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主人公 | 【消化しやすいのかな】 →エルメ「進化の過程で、 栄養を吸収しやすい食品がすなわち血液になっていった…… ということかな。面白い考えだ。」 【美味しいのかな】 →エルメ「嗜好にはなかなか抗いがたいんだろうね。 人は自らの満足のためなら時に酷く残虐にもなれる……。 いや、残虐非道によって満足する人もいるね。」 |
エルメ | ヴァンパイアは人間とは別種の生物なのか、 人間が変異したものなのかも興味深いよ。 |
しばらく歩いていたエルメと〇〇は、
やがて、大きな扉を見つけた。
エルメ | 入ってみようか。 |
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扉の向こうは、大きな広間だった。
豪華な装飾が施されたダンスホールのようだ。
エルメ | これは……ナイトに選ばれたことを思い出すな。 一緒に踊ったあのダンス、覚えている? |
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主人公 | 【たぶん身体が覚えてるはず】 【あれだけ特訓したからもちろん】 |
エルメ | いいね。やってみようか。 |
エルメと〇〇はポジションをとり、
かつてペアを組んで踊ったパソ・ド・ブレを踊り始めた。
最初は少し迷いのあったステップだが、
少しずつ滑かに、軽やかに動きだす。
エルメ | ブランクがあっても意外と覚えているものだね。 頭で考えて思い出しているというよりも、 身体が自然と動く感じだ。 |
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主人公 | 【最後はバッチリ決まったね】 【これなら合格点?】 |
エルメ | 最後はナイトにふさわしいダンスだったよ。 ……ふふ、不思議だね。 |
エルメ | 俺とマスターは、貴銃士と人間だ。 まったく違う存在なのに、 ダンスしている間は相手と一体化しているような感じがする。 |
エルメ | ……ああ、わかった。 |
エルメ | ヴァンパイアも同じなのかもしれないね。 血を吸うことで、相手の命と一体化する。 |
エルメ | ……それなら、魅力的かもしれないね。 |
主人公 | 【エルメ……?】 【(目が赤く光ったような……)】 |
エルメ | おっと、時間を浪費してしまったね。 そろそろ戻ろうか。 |
エルメや〇〇たちがツアーから帰ってくると、
談話室はハロウィンパーティーのため飾り付けがされていた。
エルメ | これは……? |
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ドライゼ | ああ、2人とも帰ったのか。 |
エルメ | さっきね。 荷解きをしたら俺たちも手伝おうか。 |
ドライゼ | ああ、頼む。 俺はキッチンで準備を進めていよう。 |
ドライゼ | …………。 |
主人公 | 【どうかした?】 【何か気になることが?】 |
ドライゼ | いや……ハロウィンとはこういうものなのかと思ってな。 |
主人公 | 【ドイツ支部ではやらなかった?】 【ドイツのハロウィンは盛り上がる?】 |
エルメ | ほとんど……かな。 前線近くの基地にいたから、というより、 ドイツではハロウィンがそこまで盛り上がらないから。 |
ドライゼ | そうだな……秋から冬にかけての行事といえば、 11月11日から始まるケルンのカーニバルの方だろう。 春のイースター前まで続く、大規模なお祭りだ。 |
ドライゼ | 以前、アウトレイジャー討伐任務でケルンに向かっていた時、 ちょうどカーニバルのシーズンで……。 |
ドライゼ | どうした? 目的地に着くにはまだ早すぎるだろう。 |
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ドイツ軍兵士 | それが、通行止めでして……。 |
エルメ | おや。何かの事故か事件なら、 地元警察と連携をとる必要があるね。 |
ドイツ軍兵士 | いえ、そうではなく……カーニバルです。 |
エルメ | カーニバル? |
仮装した観客たち | Alaaf! |
道には仮装したカーニバルの参加者が溢れていた。
ドイツ軍兵士2 | 自分はケルンの出身なのに、失念しており申し訳ございません。 今は特に盛り上がるタイミングですよ。 ほら、山車(だし)がきました。 |
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大きな山車には、王子、農夫、乙女の仮装をした人が乗っている。
ドイツ軍兵士2 | あの山車がカーニバルの目玉なんです。 Prinz、Bauer、Jungfrauは主役級で、 あの山車に乗れるのは栄誉なんですよ。 |
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エルメ | 君がどうしてソワソワしているんだい? |
ドイツ軍兵士2 | は、申し訳ございません……。 |
ドライゼ | 出身地の祭りなのだ。高揚もするだろう。 |
ドライゼ | 親世界帝派の抑え込みは長期的に取り組むべき重要な任務だが、 かといって、守るべき市民の楽しみに水を差すわけにはいかん。 |
ドライゼ | 山車が通り過ぎるのを待ちつつ、周辺の警戒にあたろう。 この賑わいを襲撃される可能性もある。 |
エルメ | 了解。 |
ドライゼとエルメが軍用車を降りると、
周囲の観客が2人に気づいて歓声をあげた。
仮装した観客たち | ドライゼ様……!? 貴銃士様だ! |
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仮装した観客たち | みんな、担げ担げ~! |
エルメ | え? |
ドライゼ | う、うお……!? |
エルメとドライゼは、あっという間に山車の上に乗せられた。
王子、農夫、乙女の仮装をした演者に囲まれる。
農夫の仮装をした人 | これはこれは、貴銃士様!! |
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乙女の仮装をした人 | この袋をどうぞ。一緒に投げましょう! |
ドライゼ | これは……? |
王子の仮装をした人 | おもちゃと袋が入っています。 いきますよ……そーれ! |
エルメとドライゼは、言われるがままに袋を投げる。
すると、子供たちが一斉に歓声をあげた。
子供 | やったー! ぼく、とったよ! |
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ドライゼ | す、すごい熱気だな……。 |
エルメ | …………。 |
ドライゼ | なんというか……とにかく、街をあげての大パレードでな。 内線の緊張が続くミュンヘンとはまったく異なる光景だった。 |
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ドライゼ | いつか、ミュンヘンでもあのような祭りができれば……。 |
エルメ | ああ、そうだね。 |
ドライゼ | すまん、ハロウィンパーティーの支度だったな。 ……頑張ろう。 |
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