己の力を示そうと躍起になる『成功作』に忍び寄るのは魔の手。
救いを求め掴んだ手は地獄への片道切符だった。
多くを失いつつジーグブルートは立ち上がる。
……いつの日か復讐を果たすことを夢見て。
俺を理解してくれる奴がいて迂闊にも舞い上がっちまったのが馬鹿だったんだ。
俺はもう惑わされねぇ。次に奴の顔を見る日が来たら…赤く染めてやるさ。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──ある日のこと。
ジーグブルートがキッチンへ入ると、
エルメが金属製のトレイに手をつけていた。
ジーグブルート | ……おい。何やってんだ? |
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エルメ | 何って、見ての通りだよ。 金属製のトレイが冷たくて、 こうして手をつけていると気持ちがいいんだ。 |
エルメ | 俺たちは鉄だしね。ジグもそうだろう、触ってみなよ。 |
ジーグブルート | ……ずっと思ってたけど、 俺はほぼプラスチックだから鉄じゃねぇぞ。 |
エルメ | ……!! |
〇〇がエルメに呼ばれて教室へ入ると、
そこにはエルメの他にドライゼ、ジーグブルートがいた。
エルメ | 急に呼び出してごめんね。来てくれてありがとう。 |
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主人公 | 【ドイツ銃の会議?】 【なんの集まり?】 |
エルメ | 実は、ジグのことで判明したことがあってね……。 これまでにジグに注意しても聞かなかったのは、 そもそも俺たちの注意の仕方が間違っていたんだ。 |
エルメ | 「冷徹であれ」という教えが響かないのは、 彼がプラスチックだからだったんだよ。 |
ドライゼ | プラスチックか……たしかに鉄とプラスチックでは……。 |
ジーグブルート | はっ、バカバカしいぜ! 鉄だろうがプラスチックだろうが、銃は銃だ! |
ドライゼ | 素材が変われば銃の機能だって変わってくる。 これはしっかりとプラスチックと鉄の違いを調べてみるべきだな。 |
ジーグブルート | チッ! 勝手にしろ! |
エルメ | じゃあ、まずは秤に乗せて重さを測ってみようか。 |
エルメ | ──ジグの銃はおよそ3000グラム。 俺の銃は……4400グラムだ。とても軽いんだね。 |
ドライゼ | ふむ。戦場で機敏に動き回れるのはそのためか。 |
エルメ | ジグが怒りっぽいのも、何か関係があるのかな。 耐熱性はどう? |
ジーグブルート | うぐっ! |
主人公 | 【今、変な声が……】 →ジーグブルート「気のせいだろ。俺にはなんも聞こえなかったぜ。」 【どうしたの?】 →ジーグブルート「いや、なんでもねぇ。ちょっと喉がおかしくなっただけだ。」 |
ジーグブルート | ほら、さっさと続けろよ。 こんなくだらねぇことに時間を割くだけ無駄だろうが。 |
ドライゼ | では、続けようか。 化学の教科書によると、 強化プラスチックは耐熱温度が200度ほど。鉄は1500度だ。 |
エルメ | なるほど……通りで我慢がきかないわけだね。 |
ジーグブルート | 俺のことばっか言ってるが、 お前らだって鉄だけじゃなくてステンレスとか混ざってるだろ! |
主人公 | 【まあまあ】 【落ち着いて】 |
エルメ | そうだよ、ジグの新たな事実が知れてよかったじゃないか。 これからも相互理解を深めていこうね。 |
ジーグブルート | ああ、わかり合えねぇことがわかったぜ。 |
──〇〇はジーグブルートたちと共に任務中、
野営地で休憩していた。
スプリングフィールド | 〇〇さん、お疲れ様です。 あ、あの……疲れている時には甘いものがいいと思って、 シャルル兄さんとホットココアを作ったんです。 |
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主人公 | 【ありがとう】 【美味しそう!】 |
スプリングフィールド | ふふ、そう言ってもらえてよかったです。 |
シャルルヴィル | あと、ジーグブルートさんのもあるんだけど……。 隅っこで何か作業してるみたいなんだよね。 |
シャルルヴィルの示した方向を見ると、
ジーグブルートは何か作業をしているようだった。
スプリングフィールド | 集中しているみたいだし、話しかけちゃ悪いかなって……。 |
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シャルルヴィル | 〇〇が渡せば、 ジーグブルートさんも受け取ってくれると思うんだよね。 一緒に行ってくれる? |
シャルルヴィルの提案に〇〇は頷く。
2人と共にホットココアを持っていくと、
ジーグブルートは銃のメンテナンスをしていた。
ジーグブルート | ……ん? どうしたお前ら。 |
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シャルルヴィル | ホットココアを作ったから、 ジグさんにも飲んでほしいなって思って。 |
ジーグブルート | Danke. 手が離せねぇから、あとで飲む。 そこに置いとけ。 |
〇〇がジーグブルートの手元を見ると、
マガジンを横に2つならべ、くっつけていた。
スプリングフィールド | あの……何をしているんですか? |
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ジーグブルート | 明日は森だからな。ジャングルスタイルで行く。 |
シャルルヴィル | ジャングルスタイル……って、何? |
ジーグブルート | 俺の銃──DG36のマガジンには、側面に突起があるんだが、 これをマガジン同士で連結できる。 |
スプリングフィールド | えっと……それがどんな効果があるんでしょうか……? |
ジーグブルート | 現代銃は弾切れになる前にマガジンを交換するだろ。 それがサッとできるって話だ。 |
ジーグブルート | つまりだな……マガジンを交換するときは、 まず「マガジンを外す」次に、 「腰や胸のマガジンホルダーを開けて取り出す」。 |
ジーグブルート | そして「マガジンを取り付ける」という工程がある。 だがマガジンを連結しておけば、 横にスライドして新しいマガジンを入れれば完了ってワケだ。 |
ジーグブルート | ……と、説明だけじゃよくわかんねぇって顔してんな。 |
スプリングフィールド | その……手早くできるっていうのはわかったんですけど……。 |
シャルルヴィル | ボクたちの銃にはマガジンがないから、 イメージがわかないというか……。 どれぐらい効率がいいやり方なのか、想像がつかないんだよね。 |
ジーグブルート | 仕方ねぇな、特別に見せてやる。こんな感じだ。 |
ジーグブルートは〇〇たちに再度説明をしながら、
実際にジャングルスタイルでの交換をやってみせる。
ジーグブルート | 通常だと、銃からマガジンを外して、 ポケットから新しいの取り出して、また入れる、だろ。 |
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ジーグブルート | ジャングルスタイルは、銃から外して、 隣のをすぐ入れる、終わり。 |
シャルルヴィル | へぇ~本当にあっという間だ! すごい! |
スプリングフィールド | とっても勉強になりました。ありがとうございます! |
ジーグブルート | ……ったく、これくらいで礼とか言うんじゃねーよ。 |
ジーグブルートはややぬるくなったココアを飲むのだった。
──ある日の談話室。
ジーグブルート | (今日のコーヒーはコクがあって、 それでいて後味が爽やかな酸味があるな。 これに合う菓子は──) |
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ベルガー | おっ! いーモン発見~っ! |
ジーグブルート | ……ん? |
──グイッ!
ベルガーがジーグブルートの左耳のピアスを引っ張った。
ジーグブルート | ぐああああああっ!? |
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ジーグブルート | 痛ってーだろうが……! 耳が千切れたらどうしてくれんだ! |
ジーグブルートが反撃し、ベルガーを殴り飛ばす。
ベルガーが派手に倒れ込んだ。
ベルガー | ふぎゃあああっ! |
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ベルガー | なにすんだよ! 壊れたらどーすんだ! |
ジーグブルート | それはこっちの台詞だ! このクソウサギ!! |
ローレンツ | すまないな、Mr.ジーグブルート。 モルモット1号は、君のピアスが気になったようだ。 |
ローレンツ | ところで、そのピアスは何のデザインなのだ? |
ジーグブルート | あ? これか? キャリングハンドルのモチーフのピアスだ。 |
ローレンツ | ほう、キャリングハンドル……。 モルモット1号にもあるが、俺の銃にはない部分だな。 何をもってピアスにそれを選んだのか、実に興味深いな。 |
ジーグブルート | 俺のキャリングハンドルの特徴は、 他の銃より大型で、スコープが内蔵されている。 |
ジーグブルート | 銃本体を持ち運ぶ際に、 ここを持って移動すると壊れにくいのも利点だ。 |
ローレンツ | なるほど、取っ手なのか。 |
ベルガー | あひゃひゃひゃ! だったらやっぱり引っ張るトコじゃねーか! |
ベルガー | ってコトは、俺が正しい! 引っ張っても文句は言えねーよなあ! |
ベルガーは懲りずにジーグブルートに近寄り、
ピアスを引っ張ろうとする。
ジーグブルート | てめえ、性懲りもなく触んじゃねえ! |
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ベルガー | ふぎゃあああっ! |
ジーグブルート | こいつ、さっき殴られたことをもう忘れてんのか? |
ローレンツ | その通り! モルモット1号は記憶力が悪い。 だが、自分の興味がある物に関しては忘れないのだ。 |
ジーグブルート | は? ってことは……。 |
ローレンツ | 取っ手だと認識したそのピアスを、何度も引っ張りに来るだろう。 |
ジーグブルート | んだよ、それ。最悪じゃねえか!! |
〇〇はジーグブルートたちと共に、
任務で街へとやって来ていた。
ジーグブルート | (おっ、あそこの青果店にある果物……質が良さそうだな。 緊急の任務でもねーし、少し抜けて見に行くか……?) |
---|---|
エルメ | ──ジグ。マスターの許可なしにどこへ行こうとしているのかな? |
ジーグブルート | んだよ、俺がいつ抜けると言った? |
エルメ | いつも抜けるなんて言わずに、勝手に消えてるだろ。 今日は俺が一緒だからね。 しっかり監視して、お前の思い通りにはさせないよ。 |
エルメ | 〇〇、ジグが迷惑をかけたらすぐに言うんだよ。 兄である俺が、きちんと躾をし直すからね。 |
主人公 | 【弟といえば……】 【エルメの兄弟がそろってるね】 |
エルメ | そういえば……今日の任務はジグの他に、 ゴーストもいたはずだよね。 どこに行ったのかな? ジグ、知ってる? |
??? | ……に……る。 |
ジーグブルート | あ? 初めからいなくねーか? |
エルメ | 出発する時は人数確認をしたから、いたと思うんだけれども。 困ったな……。 |
ゴースト | 俺はここに……いる。 どっか行ったりなんてしてない。 |
エルメ | おや、いたんだね。 ごめんね、気づかなくて。 |
ジーグブルート | 相変わらず存在感の薄いやつだな。 |
ゴースト | くそ……。 こんな冷たい奴らが兄弟だなんて……! |
主人公 | 【エルメと似てないよね】 【3人兄弟っぽくないよね】 |
エルメ | ゴーストとジグは直接の弟じゃないんだ。 俺の兄弟はまだいっぱいいるんだけど、 前の戦いでは世界帝軍で活躍していたからね……。 |
エルメ | DG3を小型化したDKK33は、 世界帝軍ではホクサイと呼ばれていたんだ。 |
エルメ | 以前、ドイツ軍にあった別の個体で召銃できるか試したけれど、 応えなかったんだよね。 |
ジーグブルート | 俺に恐れをなしたんじゃねえか。 |
ゴースト | …………。 |
主人公 | 【どうしてそう思うの?】 【恐れる理由が?】 |
ジーグブルート | ドイツ軍が制式採用する銃を決める際、 トライアルに参加したのは、 DKK33、DKK50、BelgerOAUGの3種類の銃だ。 |
ジーグブルート | 勝ち残って制式採用されたのは、DKK50。 DKK50はそのあとDG36と名前を変えた。 つまり、最後に勝ち残ったのは俺ってわけだ。 |
エルメ | DKK33は俺の直径の弟だから、 ジグに比べたら問題児じゃないと思うな。 |
ゴースト | ……ぷっ、ふふ……。 |
エルメ | ん? どうしたのゴースト。 |
ゴースト | いや、なんでも。 |
ゴースト | (ホクサイ──あいつに比べたら、 ジーグブルートなんて可愛い気がするわ……) |
──ある日、マークスの育てているハーブ園にて。
マークス | うわあああっ!? |
---|---|
主人公 | 【どうした!】 【何があったの?】 |
マークス | マスター! ジーグブルート! た、助けてくれ! 俺のハーブ園が……! あの木にミツバチがたくさん固まってる……! |
ジーグブルート | あー……言ってることはなんとなくわかるが、 お前のハーブ園は大丈夫だから、ちと落ち着け。 |
マークス | 落ち着いてられるか! こんなにミツバチがいたら、 俺の育てたハーブが荒らされる……! |
ジーグブルート | 俺の話を聞いてたか? このミツバチは何もしねえよ。 分蜂つって、引っ越し中のハチだ。 |
ジーグブルート | ピンチどころかチャンスだぜ。 巣箱を置いときゃ、養蜂ができる。 |
マークス | 巣箱? ハチを飼うのか? |
ジーグブルート | ああ、ハチミツが取れるだろ。 ドイツはハチミツの消費量が世界一と言われているくらいだしな。 養蜂も盛んなんだぜ。 |
ジーグブルート | ミツバチはハチミツだけじゃなく、蜜ロウもとれる。 色んな恵みを与えてくれるから、 ヨーロッパ近辺では大切にされている昆虫だ。 |
主人公 | 【イギリスでも大事にしてるよ】 【ミツバチは家族同然】 |
ジーグブルート | 確かイギリスでは、家族の誰かが結婚したり死んだりした場合、 ミツバチに報告するっていう風習があるらしいな。 |
マークス | そんな伝統があるのか! |
マークス | そ、それじゃあ……ますたーがこいつらの飼い主になったら、 ハチを家族にしないといけないのか……。 ということは、俺にとってもハチが家族に……くっ! |
マークス | おい、ジーグブルート。 俺もマスターも養蜂の仕方がわからない。 |
ジーグブルート | まあ、そうだろうな。 |
マークス | よって、ハチの飼い主になることは辞退する。 ハチをどうしても飼いたいのなら、お前が飼い主になれ。 |
ジーグブルート | 言われなくても、そのつもりだっての。 ありがたく、こいつらの飼い主になってやるぜ。 |
ジーグブルート | ここで養蜂ができるなんて思ってもなかったからな、 せっかくのチャンス、逃す気はねえ。 |
ジーグブルート | 秋になったら、美味しいハチミツが採れるだろうな。 ドイツの黒いハチミツもいいが、この辺りは花が多いから どんな味になるのか楽しみだな。 |
マークス | 黒いハチミツ……? ハチミツは黄金色だろう? |
ジーグブルート | ハチミツはミツバチが採って来た花や樹木の種類によって、 色も味も変わるんだ。 黒いハチミツは針葉樹の樹木から採れた蜜で色が濃いんだぜ。 |
ジーグブルート | さすがにあの黒いハチミツと同じ味はなんねーだろうが、 ここで採れたハチミツで、 ドイツ流のハチミツケーキを作ってやる。気長に待ってろ。 |
主人公 | 【楽しみだ!】 【ありがとう、待ってる!】 |
ジーグブルート | ……巣箱を作ったら、こいつらに俺のマスターだと、 〇〇を紹介してやるよ。 |
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