解説

カード解説

貴銃士は考える鉄である。人のように振る舞うが故に、恐れ惑い、判断を謝る者も見る。
彼らは愛しくも愚かである。硝煙と血の香り溢れる戦場で、その振る舞いは無為だ。
我らは考える鉄である。惑わず進み執行せよ。

心銃解説:Denkendes Eisen

俺たちは考える鉄だ。
情を捨てろ。それは邪魔だ。
捨てずにいた男はどうなった?
そう。だから俺は鉄であるべきで──それが、我らが誇りの在処。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. 放浪の賜物

エルメ…………。
グラース……ん?
グラースなんだ、あいつ?
教室の入口にぼーっとつっ立って、邪魔だな。
タバティエールあれはドイツのエルメだな。
何か考え事でもしてるんじゃないか?
タバティエール……って、おい。妙なこと考えるなよ。
士官学校では面倒ごとは避けようぜ。
グラース心配すんなって。
ちょっと挨拶してやるだけだよ!
タバティエールあ……おい!

グラースやあ、エルメ!
エルメん……? ああ、何か?
グラースドイツの軍人さんは、
物思いにふける立ち姿も威風堂々としていらっしゃる。
グラースまるでドアの前で立ちはだかる門番のようで、実に頼もしいよ。
──Dégage(どきやがれ)!
タバティエールおい、グラース。
エルメ……ふぅん。
ご丁寧に、ありがとう。
グラース……ははっ!
どういたしまして。
エルメでは、俺からはこう返しておこうかな。
──Ferme ta gueule.(汚い口を塞いでろ)
グラースなっ……!?
グラースお、お前!
僕をバカにしやがったな……!?
タバティエール最初に喧嘩を売ったのはお前だろうが。
あんな言葉、いきなり人に言うもんじゃないぞ。
やり返されても自業自得ってやつだ。
グラース……っ。
──フン!
シャスポーへぇ……。
エルメ、君、フランス語がわかるのかい?
エルメうん。
昔、フランスにもいたことがあるから、ある程度は。
シャスポーフランス『にも』?
エルメ俺は、完成までに紆余曲折あって……
『機材06』だった頃から、
色んな開発チームを渡り歩いてたんだ。
エルメ最初は、ドイツのマザー社。
ドイツが敗戦して、次はフランスに。
それからスペインに移って──。
エルメ最終的にはドイツのKK社へ。
……って感じで、かなり放浪してきたんだ。
そのたびに、いろんな名前に変わりながらね。
タバティエールへぇ。そいつは大変だったな。
それじゃあ、スペイン語もわかるのか?
エルメネイティブほどではないだろうけど、
まあまあわかると思うよ。
貴銃士になってからも、少し勉強したしね。
シャスポー君に、そんな特技があったとは驚いたな。
君の知性の欠片くらいでも、
グラースに分けてやってほしいよ。
エルメふふ、彼に分けたら
せっかくの知性も台無しになりそうだ。
グラースなんだと!
エルメそれじゃあ、俺はこれで。
あ、そうそう……。
グラースな、なんだよ……。
エルメAdieu. Espèce d’idiot.(※)
グラース……ッ!!!
シャスポー……ふふっ。
グラースこ、この僕に対して、
な、な、な……なんだとぉ!?
僕は馬鹿じゃねぇ! おい!!
タバティエール撃たれなかっただけマシじゃないか?
この世とのお別れにならずに済んだだろ。
グラース……う、うるせぇ!
あいつ、絶対許さねぇからな~~~!

※ボイスでは「お馬鹿さん」と言っている。

Ep2. 完成度へのこだわり

エルメ……うん、いい出来だ。
ジョージん~、いい匂いがする!
Hey! そのコーヒー、エルメが淹れたのか!?
エルメうん、ちょっと頭をすっきりさせたくてね。
君もコーヒーを飲むの?
ジョージおう!
淹れたてのコーヒーって美味いよな~!
ま、オレは面倒だからインスタントが多いけど!
エルメ……せっかく飲むなら、完璧なものの方がいい。
俺のを分けるから、君も豆を挽くところから
コーヒーを淹れてみたらどうだい?
ジョージおっ、たまにはそういうのもいいな!
Thanks!
さっそくやってみるよ。
ジョージふんふふふ~ん♪
まずはこれに豆を入れてっと……。
エルメ……うん、ここまでは悪くない。
少し仕草が雑だけど。
ジョージチャラチャチャッチャ~♪
エルメ……ん?
…………。
ジョージこんな感じか~?
よーし、完成!
それじゃあ、早速いっただっきまー……
エルメなんという、不完全な……!

エルメはジョージのカップを奪い取ると、
中身をシンクに流してしまう。

ジョージえっ……あーっ!?
何するんだ! せっかく作ったのに!
エルメあ……つい。
君の淹れ方があまりに悲惨で。
ジョージそうかぁ?
ちゃんとコーヒーの色してたしOKだと思うんだけど。
エルメ……雑すぎる……。
これは見過ごせないな。
エルメいいかい?
コーヒーは淹れ方によって、完成度が大きく変わるんだ。
エルメ君がきちんと理論を押さえて
完璧にコーヒーを淹れられるようにする。いいね?
ジョージお、おおーっ!
エルメまずは豆を中細挽きにする。
使う豆の量は適量があって、
計量用のスプーンを使えば問題ないだろう。
エルメ抽出の際は、まず、中央に少量のお湯を注ぎ、
全体がお湯を含むようにして蒸らす。
すると……ほら。
ジョージおお~! モコモコ膨らんできた!
エルメ豆が膨らむのは、炭酸ガスが放出されるからだ。
蒸らす工程でこうしてガスを抜くことで、
よりコーヒーの成分を引き出すことができる。
エルメお湯の温度は95度くらい。
中央に小さく円を描くようにして、
3回に分けて少しずつお湯を注ぐ。
エルメ抽出が終わった後は、
温めておいたカップにコーヒーを注ぎ入れる。
これで完成だ。
ジョージ色々こだわってるんだな~。
見てる分には楽しいけど、
毎回こんなことすんの面倒じゃないか?
エルメ面倒、か……。
それは、俺にとっては大した障壁にはならないね。
だって、俺自身も面倒な銃だし。
ジョージそうなのか?
完璧主義ってカンジだけど、
別にそんな面倒臭いヤツだとは思わないぞ?
エルメふふ。性格じゃなくて、銃の構造の話だよ。
エルメ俺の銃は、性能がいい分、構造がちょっと複雑でね。
扱いには色々と注意が必要なんだ。
掃除もこまめにしないといけないし。
エルメそれを面倒だと言う人も多いけれど、
完璧を求めて作られた俺の性能ゆえだから、
そこの手間は惜しむべきではないと思うよ。
エルメだから、良いもののためには、俺も手間を惜しまない。
時間がかかろうと、より完璧な仕上がりになるなら、
ひと手間かける方を迷いなく選ぶね。
ジョージふんふん。エルメってすげーな!
そもそも知識がねーと、
ひと手間とか工夫とかもできないと思うし!
エルメ確かにそうかもね。
……それはそうと、コーヒーを飲んでみて。
そろそろ飲みやすい温度になっていると思うよ。
ジョージお、そうだった!
いただきまーす!
ジョージんん……うまい!
エルメそう。ならよかった。
実を言うと、俺は味に疎いんだけど……
完璧な淹れ方をした方が、やっぱり美味しく──
ジョージ違いはよくわかんねぇけど!
エルメは……?
ジョージオレ、インスタントでも
いっつも「うまい!」って思うもんなー。
ジョージいつものコーヒーとはまたちょっと違ってて、
こっちも美味い!
ありがとな、エルメ!
エルメ…………。
ど、どういたしまして……。

 

Ep3. 因縁の銃

ファル──偵察は進んでいますか?
エルメああ。予想通り、アウトレイジャーの数は、
そこまで多くなさそうだね。
ファルこちらも同様です。
しかし、あちこちに散らばっているのが面倒ですね。
やるなら一気に片付けたいものですが。
ファル彼ら、まともな意思疎通が図れないとはいえ、
戦闘できる以上、物音や人には反応するんですよね?
それなら──。
エルメ……どこかに爆薬を仕掛けて、
それを囮にアウトレイジャーを集める?
ファルええ、それがいいと思います。
ふふっ……あなたとは意外に、気が合いますね。
エルメうん……確かにそうかもね。

エルメさてと。作戦はこれで問題ないかな?
ファルええ、万全です。
エルメそれはよかった。
しかし……まさか、君と一緒に戦う日が来るとはね。
エルメファル。
君がドイツ軍で先に採用されていたら……
俺は存在していなかったかもしれない。
ファル…………。
仮定の話をしたところで、無益でしょう。
現にあなたは、こうして私の目の前にいる。
エルメああ。だけどふと、考えてしまったんだ。
僕はある意味で君に恩があり……
だけど同時に、君は俺の驚異でもあったんだ、って。
エルメだから、君と組んで戦うというのは、
不思議な感じがするよ。
なんだか因縁じみているというか……。
ファルそうですか?
因縁なんて……人間の考えたこじつけです。
私たちに、そういったものは無縁では?
エルメ……!
エルメ……ははっ。そうだね、君の言う通りだ。
俺は貴銃士、考える鉄。
なのにいつの間にか、毒されていたみたいだ。
エルメ……うん。
やっぱり君とは、仲良くやれそうな気がするよ。
ファルおかしなことを言いますねぇ。
銃が仲良くなっても、なんの意味もないでしょう。
エルメそうだね、ふふっ……。
エルメそれじゃあ、
そろそろ『銃』の仕事に取り掛かろうか。
ファルええ。
武器としての本領発揮と参りましょう。

Ep4. 魅惑のカリーヴルスト

エルメ(ん? あれは……)
ジーグブルートおい、まだかよ。
ゴーストもうすぐ、できる……。
ジーグブルートはぁ? 遅すぎねーか?
お前、ちゃんと手動かしてんのかよ。
ゴースト…………。
エルメ何を作ってるんだい?
ゴーストジグがヴルストを持ってきた……から、
カリーヴルストでも作ろう、と思って……。
エルメああ、どいつの大衆食の定番だね。
ザワークラウトで野菜が摂れるし、
マッシュポテトは炭水化物。
エルメファストフードとはいえ、
栄養バランス的には悪くない。
だからこそ人々に親しまれているのかな。
ジーグブルート御託はどうでもいい。
俺は腹が減ってんだよ。
さっさと皿に盛れ。
ゴーストはい……できた。これでいい、だろ。
ジーグブルートおう、美味そうじゃねぇか。
エルメ……待って。
カリーヴルスト単体で食べる気?
ゴーストそれは……。
ジーグブルートカリーヴルストなんだからよ、
カリーヴルストがありゃ十分だろうが。
エルメまったく……ジグは本当にお馬鹿さんだね。
付け合せはただの飾りじゃないんだよ。
意味があって、一緒に食べる文化が根付いているんだ。
エルメ……仕方ない。俺も手伝うから、
ヴルストが冷めないうちに用意するよ。
エルメまずはザワークラウト。
冷蔵庫に入っているから持ってきて、ゴースト。
ゴーストあ、ああ……わかった。
ジーグブルートはぁ? どうでもいいから、
さっさと作って食わせろよ……。
エルメ文句言ってないで、ジグはパンを切る。
マッシュポテトを作る時間はないから、
炭水化物はパンで代用しよう。
エルメところで……ジグがヴルストを持ってきたと言っていたけど、
どこで入手したんだい?
ジーグブルートあ? ドライゼの野郎が
部屋にしこたま溜め込んでたのをかっぱらってきた。
エルメ……えっ。
ゴースト何しと……してるんだ、あんた……。
ドライゼジーグブルート! どこにいる!?
ゴーストあーあ……。
ジーグブルートけっ。
だからさっさと食って証拠隠滅したかったのによ……!
エルメはぁ……。
本当に、救いようのないお馬鹿さんだね……。

Ep5. 謎の情熱ダンサー

エルメ──それじゃあ、ドライゼ。
いただきます。
ドライゼ……ああ。
エルメそうだ、乾杯もしておこう。
〇〇はオレンジのソーダだね。
今日はドライゼの奢りだから、どんどん食べるといい。
主人公【自分まで申し訳ない】
【本当にいいの?】
ドライゼ気にするな。実技訓練体力三番勝負の敗者が
勝者に食事をおごると決めたのは俺とエルメだ。
正々堂々と競って破れた以上、文句はない。
エルメさすがドライゼ、潔いね。
ドライゼそれに、勝ち誇ったエルメの面を眺めながら
食事をするより、あなたが同席してくれた方が、
俺としても気が休まるというものだ。
エルメだそうだよ。
お金のことなら心配要らない。
俺たちはドイツ支部で役職についてるからね。

ドライゼ……うまい。
ビールもヴルストも種類が多くて飽きないな。
いくらでも腹に入りそうだ。
エルメ俺には細かな違いはよくわからないけど……
ドライゼは食べ比べ飲み比べができて楽しそうだね。
ドライゼん……?
エルメ、ジョッキが空だぞ。
エルメドライゼこそ。
そろそろ次を頼んだ方がいいんじゃないかい?
主人公【ほ、ほどほどにした方が……】
【そんなに飲んで大丈夫?】
エルメこれくらい平気だよ。
エルメ……あれ。お店の奥は舞台になってるんだ。
ちょうどパフォーマンスが始まるみたいだね。
あの格好は……フラメンコかな。
ドライゼ……行くとしよう。
主人公【……!?】

ドライゼ混ぜてくれ。
ダンサーえ……?

演奏者もダンサーも店の客も、
突然の乱入に困惑の表情を浮かべる。
しかし──。

ドライゼオ・レィ!!
ダンサーああ! なんて激しい情熱なの!
踊りが止まらないわっ!!

ドライゼが華麗にフラメンコを踊り始めると、
店内は一気に盛り上がりを見せた。

客の男性1なんだあの兄ちゃん!
ただもんじゃねぇな!
客の男性2ヒュ~! いいぞいいぞー!
主人公【止めた方がいいのかな……】
【プロのダンサーみたいだ……】
エルメふふ、今回も楽しそうに踊ってるね。
エルメそれにしても……ぷふっ。
面白い歌詞だな……。
主人公【歌詞……?】
【なんて言ってる?】
エルメ「筋骨隆々の乱入者よ、
ああ素晴らしき軽やかなステップだ。
俺たちの仲間にならないか?」だって。
エルメフラメンコって、曲はある程度定番があるんだけど、
歌詞はその日その場の即興で
適当なことを歌うことも多いんだ。
エルメ今回は、ドライゼへ向けた熱烈な勧誘ソングだね。
客の女性お兄さん、スペイン語がわかるんだ。
歌詞を聞き取れるなんてすごい!
エルメそれはどうも。
主人公【……!】
エルメなに、マスターまでそんなに驚いた顔をして。
俺が昔、スペインにいた時期もあるって話は、
したことがなかったっけ?
エルメああ、そういえば、
俺のコードネームの由来もスペイン語なんだよ。
エルメDG3の参考になった「シトメ・ライフル」のシトメ、
スペイン語で鉄を意味する「hierro」……
これを合わせてイエロメ、エルメってね。
主人公【そうだったんだ】
【教えてくれてありがとう】
エルメどういたしまして。
エルメ……ん?
客の男性1おおーいっ! 兄ちゃん、どうした!?
ドライゼ…………。
エルメまさか、踊り狂ったあげく舞台上で寝るとは。
いやぁ、相変わらずドライゼの酒癖は面白いね。
ははっ!
エルメさてと。十分堪能したことだし、
困った酔っぱらいを抱えて帰ろうか。

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