【突撃!隣のゲーム部屋】八九

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解説

カード解説

これは遠い記憶の欠片。日本での、彼らの物語の前日譚。
二度目に目覚めた世界は、かつてとあまりに違っていた。
けれど、様変わりした日常も、一つの形であって──
「はぁ……やっぱめんどくせー……」

心銃解説:勝利への路-アポカリプス・ロード-

消えてしまったセーブデータ。
でも、ここには確かにデータがあったんだ。そう思いながら、コンティニューの文字を押した。
ニューゲームには、なり得ない。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. 上様の期待

──日本で八九が召銃された、翌日のこと。

葛城輝彦葛城輝彦(かつらぎてるひこ)、並びに貴銃士八九!
上様のお招きねきねき……お招きに与り、
馳せ参じた次第でございますッ!
従者ようこそおいでくださいました。
どうぞ、こちらへ。
葛城輝彦ははーッ! ありがたき幸せーッ!!
八九…………。
八九はぁ……なんでわざわざ、
俺たちがここまで来なきゃいけねぇんだ?
めんどくせぇ……。
葛城輝彦ななな!? 何をおっしゃいますか!
他でもない、上様からのお招きですぞ!?
葛城輝彦本来ならば拝謁どころか、同じ空間にいることさえ
叶わぬ身の私たちが! 小生の親族は皆、
葛城家始まって以来の名誉だと感涙に咽び泣いております!
葛城輝彦ああっ!
あまりの高揚に震えが……!
手に人と書いて、飲みこまねば……も、もう1回!
八九いやいや……気負いすぎ。
上様っつっても、ただの人間だろ?
んな構えることねぇって。
八九顔見せてテキトーにちわーって挨拶して
終わりにしようぜ……。
葛城輝彦い、いいいけません!
下手をすると、小生の首が飛んでいまいます!
八九殿! 後生ですから、この通り!!
八九うおっ……土下座とかやめろよ!
……はぁ、めんどくせーな。
わーったよ、ちゃんとやるって。
八九…………はぁ。
さっさと終わらせて、ゲームしてぇ……。

その後、八九と葛城は従者の後に続いて
いくつもの部屋を通り過ぎていくが、
一向に将軍の部屋につく気配がない。

八九(おいおい……どんだけ歩かせる気だよ……)
従者……到着いたしました。
上様方は、こちらの奥にいらっしゃいます。
従者──上様、イエヤス様。
貴銃士八九様と、そのマスター葛城少佐を
お連れいたしました。
イエヤスうむ、案内ご苦労。入ってくれ。
従者はっ!

八九やっとかよ……ん?
イエヤス久方ぶりだな、八九。
……と言っても、直接話すのは初めてか。
八九お前は……レジスタンスの……。
イエヤス…………。
八九ハッ、偉くなったもんだな。
昔は地下でコソコソ隠れてた奴が、
将軍に呼び覚まされてるとか……驚いたぜ。
葛城輝彦は、八九殿!? なんという無礼を……!!
申し訳ございません! 申し訳ございません!
イエヤスふっ……よい。
むしろ安心した。
八九いや、安心って……。意味わかんねぇ。
俺の経歴は知ってるんだろ?
イエヤス無論、知っているとも。
革命戦争のあと、日本に返還された俺は、
上様に再び貴銃士として呼び覚まされ──
イエヤスそして、色々と教えを受けた。
……これまでの日本の歴史や、
八九式と名付けられた小銃に関しても、な。
八九……!
イエヤス上様は、貴銃士としての八九の力を
借りたいと思っておられる。
イエヤス確かに君は、元世界帝の貴銃士だ。
だが……この国で作られ、人々の相棒となり、
親しまれてきた名誉ある制式銃でもある。
イエヤス故に……日本を共に守る同士となるのであれば、
桜國幕府は君を歓迎したい。
……どうだろうか?
八九…………。
上様貴銃士八九、そしてそのマスター、葛城よ。
──日ノ本を頼むぞ。

八九(まさか、俺のことを、なぁ……)
葛城輝彦…………。
八九(銃なんてのは、人に使われるもんだ。
俺が何を考えてよーが、命令されれば拒めない……)
八九(貴銃士だからって、それは変わらない)
葛城輝彦…………。
八九(……ん? そういえばコイツ、静かだな……)
葛城輝彦……くっ……ふっ……。
八九(な、泣いてる!)
葛城輝彦小生は……小生は、深く、強く、感動しました……ッ!
八九殿にかけられたあのお言葉……ッ!
なんと、慈悲深く……ッ! くううぅぅッ!!!
葛城輝彦小生はッ! お2人のためならば
喜んで命を捧げる覚悟でありますッ!
ずびっ──!!
八九はぁ……? 何をそんな感動してんだよ……
マジで変なヤツだな、コイツ……。
八九はぁ……やっぱ目覚めるんじゃなかったぜ。
だりぃ……。

Ep2. 先輩は絶対なのである

八九が日本で召銃されてから、
少し経った頃──。

未だ在坂と邑田とまともに会話をしていない八九は、
どこか彼らのことを恐れていた。

八九ふぁ~……。
あー、ねみぃ……やる気出ねぇ……。
八九昨日結局寝たの4時だったからな……。
昨日じゃなくて今日じゃねぇか、ふぁ~~……。
邑田──八九よ。
八九は、はいぃっ!?
八九あの……何か……?
邑田本日は、よき蒼空が広がっておるからのう。
そなたにも声をかけてみたくなったのだ。
在坂在坂は、昼食は弁当がいいのではないかと思う。
外で食べることを提案する。
邑田おお……それならば、食事のみならず眺めも楽しめるな。
実によき考えじゃ。
……八九。そなたも、共にどうじゃ?
八九は、はぁ……。
邑田となれば、次の関心は弁当の中身じゃな。
八九よ、そなたの好きなにぎり飯の具は?
八九……は?
在坂八九は知っているか。
在坂は……梅も鮭もタラコもおかかも、
全部美味しいと知っている。
邑田うむうむ。
在坂はなんでも食べるよき銃じゃな。
邑田わしは、つなまよ一択じゃ。
八九お、俺は……醤油つけて焼いたやつ、かな……。
在坂醤油つけて焼く……?
在坂はそれを知らない。
邑田わしもじゃ。はて……気になるのう、在坂。
八九(なんだ、この中身空っぽの会話は……)
八九(はぁ……? まさか、いつもこの調子なのか?
そういや最初も昼メシの話してたな……。
食うことが好きなのかもしれねぇ)
八九(ま、とりあえず、
思ってたほどおっかない奴らじゃなさそう……か)
八九……そんじゃ、2人で食堂にでも行ってくれよ。
俺は眠いからパス。部屋で休ませてもら──
邑田──!

次の瞬間──八九の頬を邑田の拳が掠めて、
背後の壁にめり込んだ。

八九ひぃぃっ……!?
邑田──ふぅ、危なかったのう。
そなたの後ろに、油虫がおったぞ。
八九…………。
油虫……?
在坂油虫は、1匹見かけたら30匹は潜んでいるらしい。
在坂は、急ぎ害虫駆除を実行するべきだと考える。
八九……あ、ゴ〇ブ〇のことか……。
邑田油虫の駆除と清掃の徹底を周知せねばな。
八九。その役目、そなたに任せてよいか?
八九……あ、ああ。やっとくやっとく。
邑田うむ。頼んだぞ。
八九(はー……なんだよ、ビビらせやがって……)
八九(ゴ〇ブ〇とかどーでもいーし……サボろ。
部屋に戻ってゲームすっぞ……!)

八九よっし! あと一息でクリアだ!
集中しろ……全集中!! よし、行くぜ!!
邑田──八九!
八九うおっ!?
八九い、いきなり入ってくるんじゃねぇよ!
せめてノックぐらい──
邑田ほう……?
人との契とを易々と破っておいて、その言い草……
覚悟はできておるのじゃろうな?
八九えっ……? あ、ああ!
例の黒い害虫のことか……。
邑田その顔……そなた、すっかり忘れていたようじゃな。
八九い、いやいや!
ゲームがひと段落ついたらしようと思っ──

その時、つかつかと部屋に入ってきた在坂が、
ゲームの電源コードを引き抜いた。

八九ギャーーーッ!!!
在坂八九は約束を破った。
約束を破るのはよくない。
八九あああ……! ひでぇ、ひでぇよ……
昨日から寝る間も惜しんでずっとやってたのに……!
八九何しやがんだこのサイコパス野郎!
鬼畜! 外道めー!
在坂……邑田。八九はまったくはんせいしていないようだ。
邑田八九……そなた……
ちと歯を食いしばってもらおうかの……。
八九ヒッ! ま、待ってくれ……!
血祭りだけは勘弁してくれっ……!
邑田問答無用。
八九げごぶふぉぁぁァァっ!!??
邑田そなたの足りん頭でも理解できるよう
よーく躾けておかぬとなぁ……?
八九わ、わかっ……ごめんなさいっ! わかりましだぁ!
今すぐ行ってぎます、のでッ……ッ! ガハァッ!!
八九(ちくしょう……
やっぱめちゃくちゃ怖いじゃねぇかー!!!)

 

Ep3. 手紙の行方

八九あと、もうちょっと……!
あっ、てめぇっ! 逃げんじゃねー!
八九回り込んで、と……。
よし、これで……っしゃ! クリアだ!
八九ふぅ……いやー、このゲーム、思ったよりよかったな。
背景のグラフィックもなかなか……
ベルギーの街中をモデルにしたって話だったか……。
八九ベルギー……KB、エースタル……。

自衛軍兵士1へぇ……。
ベルギーがまた貴銃士を召銃したらしいな。
自衛軍兵士2ああ。
あの国は今、世界連合の仲間入りに熱心らしいからな。
自衛軍兵士1ベルギーのKBエースタル社の銃は、
ドイツのKK社と並んで、世界帝のお気に入りだったから、
今のままじゃ肩身が狭かったんだろ。
自衛軍兵士2今いつ貴銃士は確か……ファル、ミカエル……。
それと、もう1人新しいのが加わるのか。
八九……!

八九……あれって、あいつらなのかなぁ……。

???「君もピアノに興味があるの?」
???「嬉しいな。
ここには、粗野な輩が多すぎるものだから……」

八九でも、俺は日本から出れねーし……
もしあいつらだとして、いまさら会うのもな……。
あいつらにも都合があるかもしんねーし……。
八九…………。
八九──そうだ。
手紙……でも、書いてみるか。
八九ついでに、ベルガーにも……いや、それはきめぇな。
あいつの頭じゃ、字もまともに読めねーだろうし。
まずはミカエルに出せば十分だ。
八九じゃ、さっそく便箋を用意しねーと。
……せっかくだし、和紙の便箋とかいいかもな。
どっかで調達してくるか……!

八九──で、この手紙なんだけどよ。
届けてもらえるよう頼めるか。
葛城輝彦なるほど……承知いたしました!
さっそく郵政の者に確認しましょう。

──後日。

八九……葛城?
珍しいじゃねぇか……んな暗い顔して。
葛城輝彦八九殿……。
お預かりしていた手紙なのですが……
小生の力不足で……実に、申し訳なく……。
八九あー……そういうことね。
ふーん……。
八九ま、当然っちゃあ、当然だよなぁ。
元世界帝の貴銃士同士が
連絡を取り合おうなんてよ……。
葛城輝彦…………。
やはり、もう一度別の方法で──
八九いいって、もう。
暇つぶし程度だったからよ。気にすんな。

そう言って、八九は葛城から
受け取った手紙を──そっとポケットにしまう。

葛城輝彦…………。

葛城は一礼すると、踵を返し立ち去った。

八九…………。
八九……はぁ……。
在坂今のため息はフジヤマ級だ。
八九おわぁっ!?
在坂八九、何を転んでいる?
甘蕉の皮でも踏んづけたか?
八九いや、お前がいきなり出てくるからビビッたんだよ!
気配が全っ然なかったぞ……。
ゴーストじゃあるまいし、やめてくれよな。
在坂……在坂には、八九は元気がないように見える。
八九なっ……!?
ちげ……んなことねーよ……。
在坂…………。
八九んなことねぇって!
もう、どっか行けよ!
在坂…………。
在坂……在坂ははーとぶれいくした。
八九のせいだ。邑田に言いつける。
八九あっ……ちょっ、待て!
悪かったって! 悪かったから邑田には言うなー!

Ep4. 憩いの場への闖入者

八九が日本で召銃されてから、しばらくが経った頃──。

八九ここ、いけるか?
……よっしゃ! ボーナスポイントゲット!
通信の相手さすが豊田(ほうだ)氏!
どんどん前進といきましょうぞ~!
八九だなっ!
これなら、次の敵も……。
邑田──暗い部屋じゃのう。
八九ほあっ!?
在坂在坂は、八九の部屋を見学に来た。
邑田そなた……このような明かりだけで、
ちゃんと見えているのか?
八九てか、勝手に入ってきてんじゃねぇ!
お前ら、何……って、ああ!?
八九負けそ……と、とにかく早く出てけ……!
在坂在坂は、この機械が気になる。
邑田ふむ……この光は何を表しているのだ、八九?
八九いや、今はそれどころじゃ……って、やめろ!
変なとこ触るんじゃねぇぞ!
邑田確かに、それどころではないようだのう。
推察するに、この棒は体力を示しているのだろう?
もう、残りがあまりないではないか。
在坂八九は、危ないのか?
邑田うむ。今の八九では体力がもたぬ。
ここは画面奥にある角の方に身を潜め、
遠距離攻撃に転じた方が──
八九……! う、うるせぇ……!
集中できねぇだろーが!
通信の相手あのう、豊田氏~。
後ろでしゃべっているのは誰ですか?
通信の相手いやぁ、ずいぶんと的確な指示をされてるなと思いまして~。
八九た、ただの知り合いだ!
気にしないでくれ!
八九お前ら……頼むから、余計なこと言うなよ!
邑田うむ、わかっておる。わしらに任せよ。
……こほん。
邑田夕飯できたわよ~あっくん!
あら? まーた、げーむばっかりしてー! もうっ!
通信の相手おっ? 母上に呼ばれておりますぞ豊田氏~。
八九いや、お前も乗るなっつーの!
大体、誰だあっくんて!?
在坂在坂は呼ばれたので、行くべきだと判断する。
八九いや、お前があっくんなのかよ!?
いい加減にしろ……!

Ep5. オタクに交流は難しい

──八九が士官学校に来て、
しばらく経ったある日のこと。

八九……っし! これなら、ぜってーいける!
今日こそあのラスボスを倒す……!
八九この間もいい線いってたんだけどなー……
惜しかったぜ。
けど、今のこの装備なら──

──コンコン

八九……ノック? ノックするってことは邑田じゃねーな。
ったく誰だよ!
主人公【お邪魔します】
【ちょっといいかな】
八九……えっ! マ、マスター!?
どうした、なんか用か?
主人公【ゲームをやってみたくなって】
八九は? お前が?
ゲームに興味あったのか!?
主人公【八九が好きなものだから気になった】
【あまりやったことがないから興味がある】
八九そ、そうかよ……。
八九(士官候補生ってのは、室内でゲームするより、
訓練とかで体動かす方が好きな陽キャ連中だと思ってたが……
〇〇は興味あんのか。意外だな)
八九(けど……興味を持ってもらえるのは……
なんか、こう……悪い気はしねぇ)
八九……え、っと、とりあえず、入れよ。

八九2人なら……対戦ゲームでもしてみるか。
お前がこっちのコントローラーな。
八九……んで、どうする?
初心者相手モードで手加減してやろうか?
主人公【大丈夫!】
【本気でやろう!】
八九へぇ、大した自信だな。
……よし。それじゃ、始めるぞ。

八九はい、俺の勝ち~。
完全勝利だな。ぷぷっ、ざまぁ。
主人公【…………】
八九(あ、ヤベ……ついボコボコにしちまった)
八九(やっぱ俺とこいつじゃ、
熟練度もテンションが違いすぎんだよ……)
主人公【さっきの技を教えてほしい】
【もう1回勝負しよう!】
八九は? いや……無理すんなよ。
そもそも、お前はこんなことしてるヒマないだろ?
八九俺と違って偉い立場なんだから、
ゲームなんかしてねぇで、他のやるべきことしろよ。
ほら、もう帰れ。
主人公【……迷惑だったかな】
【……嫌じゃなければ、また遊ぼう】
八九…………。
八九(最後のあれは……さすがに言い過ぎたな……)
八九次会ったときに、ちゃんと謝ってみるか?
いや、でも……俺の言ったことなんて
気にしてないかもしれないし……。
八九…………。っだーもう!
これだから付き合いってのは面倒なんだ!
くそっ!

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