これは遠い記憶の欠片。オーストリアでの、彼らの物語の前日譚。
皇帝の右腕を自負するローレンツは、かつての運命との出会いに思いを馳せつつ、知識の世界に耽溺する。
「読書の供に、音楽とコーヒーは必須だよ」
青年は歓喜した。必ず、かの絶世独立の王の力にならなければならなぬと決意した!
俺が呼ばれた意味はあまりに自明だが、求めるならば証明しよう。いざ、証明開始!
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
これは、〇〇たちが
オーストリアを訪れる前──
ローレンツが、貴銃士として目覚めたばかりの頃の話。
ローレンツ | ……青年がおもむろに目を開くと、 まばゆい光が彼を照らし出していた。 そんな彼の前に現れたのは、1人の少年であった……。 |
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ローレンツが真っ先に認識したのは、
1人の少年と、その後ろに控える人々だった。
仕立てのいい服装や、部屋の調度品からして、
彼らは只者ではなさそうだと、
ローレンツは瞬時に判断する。
ローレンツ | (ふむ……) |
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??? | やぁ。 無事に目覚めたようだねー。 |
??? | さっそく説明に入ろうか? 色々聞きたいこともあるだろう。 |
ローレンツ | ……いいや。その必要はない。 なぜなら、俺が呼ばれることはわかっていたからだ。 |
ローレンツ | 特別なローレンツ・ライフルは、 特別な貴銃士として目覚め、歓迎されるもの……。 |
ローレンツ | そして俺は紛れもなく、 官営工場で作られた特別で優秀なローレンツライフルだ。 |
ローレンツ | ……そう。 仮説はこの場をもって証明されたのだ! |
??? | ……? 何も証明されていないが……? |
ローレンツ | さて、諸君。 俺は──んん!? |
話を続けようとしたローレンツは、
少年が手にしている銃を見て、ハッとする。
ローレンツ | そそ、その銃は! |
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ローレンツ | サンゴで施された美しい意匠、 そして、プルス・ウルトラの文字……! |
ローレンツ | あっ、貴方様はもしや、 カール5世陛下のピストルではありませんか!? |
カール | ああ、そうだ。 |
ローレンツ | ……っ! そうとは知らず、先程はとんだご無礼を……。 どうか何卒、ご容赦ください……! |
カール | ま、別に構わんさ。 さて……本題に戻るがね。 |
カール | 単刀直入に聞く。 ──君は、絶対高貴になれるか? |
ローレンツ | 絶対高貴……! |
カール | …………。 |
ローレンツ | ──小さな体躯に幼い声。しかしその見た目に反し、 偉大で荘厳な歴史を秘めた、 かの銃の化身である少年は重々しく告げた。 |
ローレンツ | 『絶対高貴』という言葉を……。 |
カール | うん、うん。 |
ローレンツ | 『絶対高貴』……青年はその言葉を、 何度も頭の中で反芻した。 しかし──。 |
カール | しかし……? |
ローレンツ | 残念なことに青年は、 『絶対高貴』という単語について……。 |
ローレンツ | まったくの無知であったのだ……!!! |
カール | ……!! |
ローレンツ | なんという悲劇。 青年は憧れと尊敬を抱いた偉大な少年の力になれぬと、 嘆くしかなかったのである……。 |
カール | なんだ、そうだったのか。 使えないねー、君は。 |
ローレンツ | はうぁっ……! 誠に、申し訳ございません!! |
カール | ああ、いや「使えないんだね」の間違いさ。 それにしても、なかなか愉快だなー君は。 ははっ! |
ローレンツ | さすがはカール様……! 寛大なお方でいらっしゃる。 ですがどうぞ、ご安心を。 |
ローレンツ | 官営工場製の優れた俺は、 すぐにでも絶対高貴とやらに目覚めてみせましょう! |
カール | うむ! なら期待していよう。 |
ローレンツ | はい! さて、そうと決まれば…… さっそく仮説を立てて、検証を進めなければ。 |
ローレンツ | まずは情報収集を…… 絶対高貴とはどのような状態なのかの 定義づけを行わなければ……。 |
ブツブツと呟きながら退室しようとするローレンツを、
カールが制止する。
カール | まぁ、待て。 君には、別にやってもらいたいことがあるんだ。 |
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ローレンツ | それは…… 絶対高貴の研究より、優先されるものなのですか? |
カール | もちろんだとも! 『優秀』な君を見込んで、任せたい案件があってねー。 |
ローレンツ | ……! |
カール | 僕には、信頼のおける直属の部下が必要なのさ。 そのために君を召銃させたと言っても過言ではない。 |
ローレンツ | ……! そうだったのですか……。 なんたる光栄……! |
ローレンツ | 不肖ローレンツ、粉骨砕身お仕えいたします! どうぞ俺になんなりとお任せください。 |
カール | ……はは、それは頼もしい。 ならば早速、君への任務を伝えるとしよう。 |
カールからベルガーのことを託され、
ローレンツは早速、ベルガーのもとへと出向いた。
ローレンツ | ──失礼するぞ、Mr.ベルガー。 |
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ベルガー | ギャハハッ!! アヒャハハハハ!! |
ローレンツ | (う……! なんと下品な笑い声なんだ……) |
ローレンツが牢の中を覗き込むと、
ポテトチップスとコークを貪りながら寝そべり、
漫画を読んでいるベルガーの姿が見えた。
ローレンツ | これは……非常にだらしない……。 |
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ベルガー | うひゃひゃ、やっぱコレおもしれー! ……んぁ? ポテチもうなくなっちまった! |
ベルガー | ……お? お前アレか? 俺の新しい召使いだろ! 新しいポテチとコーク持ってこい。5秒でな! |
ローレンツ | この俺が、召使いだと……。 そんなわけがないだろう。 |
ローレンツ | 俺は、ローレンツ。 オーストリア帝国初の国産ライフルの貴銃士だ。 そして── |
ローレンツ | 光栄にもカール様『直属』の 『信頼』のおける『優秀』な部下として、 君のもとへやってき── |
ベルガー | ぶひゃひゃっひゃひゃひゃ! |
ローレンツ | 君! 漫画を読むのをやめたまえ! 人の話を聞け! |
ベルガー | はぁ? なんだよおめー、まだいたのかよ。 ポテチとコーク持ってこいつっただろーが! |
ローレンツ | …………。 |
ローレンツ | 聞いていなかったようだからもう1度言ってやろう。 俺は君の召使いなどではなく、 官営工場製の優秀な貴銃士ローレンツだ。 |
ローレンツ | ……それから、菓子や炭酸飲料ばかり摂取するなど、 実に愚かしいことだぞ。 食事というのはバランスよく……むむっ!? |
ローレンツ | な、なんだ、その書物についた汚れは……。 まさか君、菓子を食べて油まみれになった手で、 そのまま書物を読んでいるというのか……!? |
ベルガー | あ? 別に、読めりゃいーだろ。 |
ローレンツ | ……! 本はデリケートなのだぞ。 もっと丁寧に扱いたまえ! まったく……なんとおぞましい……。 |
ベルガー | つーか、なんだっけ、お前。 モーレツ? |
ローレンツ | ……違う、ローレンツだ。 |
ベルガー | ロンレーツ、てめぇ、 召使いじゃねぇなら何しに来たんだよ。 暇なら差し入れくらい持ってこいっつーの! |
ローレンツ | はぁ……全然わかっていないじゃないか……。 |
ローレンツ | まぁいい。 なぜ俺がここに足を運んだか、教えてやろう。 俺は、君の研究のために赴いたのだ! |
ベルガー | はぁ? ケンキュー? |
ローレンツ | 我々は、絶対非道について知りたいと願っている。 ならば、絶対非道を使える貴銃士を研究するのは、 証明するまでもない当然の帰結と言えよう。 |
ベルガー | フーン。 俺は漫画読んどくから邪魔すんじゃねーぞ。 |
ローレンツ | 何を言っている。 君が怠惰に漫画を読んでいるだけでは、 研究が一向に進まないじゃないか。 |
ローレンツ | 絶対非道を発動してみるとか、 その時の感覚について伝えるとか── |
ベルガー | はぁ~? なんで俺がんなメンドーなことしなきゃなんねーんだよ! |
ベルガー | けど……そーだな~~、 「ベルガー様、力を貸してください~」って 土下座して毎日コーク持ってくんならいいぜ? |
ベルガー | ま、1秒で気が変わっちまうかもしんねーけどな~! あひゃひゃひゃっ! |
ローレンツ | ……! ……かの青年は、ここまで傍若無人な生物が 世界には存在したのかと、頭を抱えた……。 |
ローレンツ | 人としての知性や理性を持たず、 ただ豚のように菓子とジュースを口にするだけの、 囚われし者……。 |
ローレンツ | ……そうか! |
ローレンツ | つまり君は、貴銃士というよりも…… 絶対高貴・非道について解き明かすために存在する、 実験用の生命体というわけだな……! |
ローレンツ | 言うなればラット…… いや、それにしては大きいから、 さしずめモルモットといったところか。 |
ベルガー | てめぇブツブツうるせーぞ! きもちわりー奴だな~。黙ってろ! |
ローレンツ | ああ、すっきりしたぞ。 Mr.ベルガーは今後、実験体として扱うとしよう。 |
ローレンツ | さて……まずは基本的な数値の測定からか? となると、必要な器具は……。 |
ベルガー | ま、無視しときゃいっか! 次の巻はぁ~っと……。 |
ローレンツが実験のために
ベルガーの元に通うようになってから、
しばらく経ったころ……。
ベルガー | ぶひゃひゃ、あひゃっひゃっひゃ! すっげ~なコイツ、つえ~~~! |
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ローレンツ | なぁ、モルモット。 ……君は、外に出たいとは思わないのか? |
ベルガー | んぁ? 外に出たらなんか面白いことでもあんのか? |
ベルガー | ここにいりゃあ、下僕その1がマンガ持ってきてよぉ、 下僕その2がコークやらなんやら運んでくるだろ~。 |
ベルガー | ふぁ~、ねみ……。 昼寝でもすっかな~。 |
ローレンツ | (俺は一刻も早く、絶対非道の研究を進め…… カール様の期待に応えたいというのに) |
ローレンツ | (当の本人がこの調子で実験に協力する気がなく、 脱走のために絶対非道を使おうともしない。 これでは何もできないではないか……) |
思案するローレンツとは逆に
ベルガーは横になり、漫画を広げたまま
すやすやと居眠りを始めてしまう。
ローレンツ | (……やはり、このままではいけない) |
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ローレンツ | (協力する気がないのならば…… 力ずくで協力させるまでだ……!) |
ローレンツ | フッ……フフフフフ……!! |
ローレンツ | 見ていろ、モルモットよ。 この俺に間違いはないのだ! フフフフフ……!! |
──その夜。
ローレンツ | ……っと。 よし、ここに置こう。ふぅ……。 |
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ベルガー | ぐー……ぴー……。 すかっ………………ぐー……ぴー……。 |
ローレンツ | (よく眠っている……ではまずは、 『絶対非道はどのような条件で発動するのか』 という検証から始めよう……) |
ローレンツ | ストローグル博士の実験を参考に……。 |
ローレンツはブツブツと呟きながら、
機材から伸びたコードの先端にあるパッドを
ベルガーに貼り付ける。
ローレンツ | では……実験、開始。 |
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ベルガー | ッ!!! うががががッ!? |
ローレンツ | ふむ……電気は問題なく流れたようだな。 |
ベルガー | な……なんら!? んぁ!? あっ!! てめぇ!!! |
ベルガー | おいこらクソメガネ! いきなり何しやがる! 死ぬかと思っただろうがっ! |
ローレンツ | おお、そうか。それはよかった! どうだ? 絶対非道を発動したくなったか? ほら、早く使え。 |
ベルガー | あ? んなわけねーだろバーーカ! いきなりビリビリさせて絶対非道使えとか 意味わかんねぇこと言ってんじゃねーぞ! |
ローレンツ | そうか……では絶対非道を発動したくなるまで、 死なない程度に電流を強くしていくとしよう。 |
ベルガー | は……!? |
──数日後。
静かにうなだれるベルガーに向かって、
ローレンツは新作のポテトチップスを差し出す。
ベルガーは反射的に受け取るが、それと同時に──
ベルガー | ……うぎゃああああっ!? |
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ベルガー | …………。 |
ローレンツ | これもだめか……。 電気ショックを伴いながら報酬を受けた場合の、 新たな反応が見られると思ったのだが……。 |
あれから日常的に強力な電気ショックを
与え続けられたベルガーは、
痛みへの反応が鈍くなってしまっていた。そして──
ローレンツ | おい、Mr,ベルガー。 おーい。おーい? |
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ベルガー | …………。 |
ローレンツ | (絶対非道の兆しがないばかりか…… 表情の起伏すら乏しくなってしまったな) |
ローレンツ | (このままでは実験が進展しない。 ふむ……どうしたものか。 これではカール様の期待に応えられない……!) |
ローレンツ | ──というわけでして。 どうしたらよいでしょうか、カール様。 |
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カール | なるほどね……はっはっはっ! まぁ、アプローチの仕方が よくなかったんじゃないかなー。 |
カール | ベルガーが絶対非道を使いたくないのは、 なぜだと思う? |
ローレンツ | 使いたくない理由……? な、なるほど。うーん……うーむ……? |
カール | これはあくまでも、一例だが…… 彼が絶対非道で大暴れした時、 マスターの薔薇の傷跡が深くなってしまってね。 |
カール | そういったことを気にする貴銃士もいるだろう、 ということだ。 |
ローレンツ | ……! |
カール | まあ、もっとも、 彼にそんな殊勝さがあるとは到底思えないがねー。 はっはっは! まあそんな感じで、色々理由を考えて── |
ローレンツ | (絶対非道と薔薇の傷跡の関連性……。 それが本当なら、彼は絶対非道になれないのではなく、 ……なりたくない?) |
ローレンツ | (彼は、マスターを蝕む己の力に苦しんでいて…… だからあの無気力状態も、 俺を諦めさせるために、わざと演技を……?) |
ローレンツ | ……Mr.ベルガー! もう、心がないフリをする必要はない! |
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ベルガーの心をほぐすように、
ローレンツは、これまでで一番強い電気ショックを
彼に浴びせる。
ベルガー | ……! いでぇ! いでぇよ! もうやめてくれって……! |
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ローレンツ | おお……反応が! やはり今までのは演技だったのだな! |
ベルガー | なんでこんな……嫌だ…… もう、本当にやめてくれ……ううっ……。 |
ローレンツ | おお……涙を流すほど嫌なのに、 マスターのために我慢しているのか……? ならば── |
ベルガー | は!? 何やってんだ!? |
ローレンツは、ベルガーに貼っていたパッドを
いくつか剥がすと、自分の身体へと貼り付ける。
ローレンツ | ……っ! 俺も君の罪を共に背負おう。 君と同じ、痛みと苦しみを分かち合おう。 ともに苦難を乗り越えよう。 |
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ローレンツ | 君は俺の大事な──モルモットだからな! |
ベルガー | ひっ……! 意味わかんねぇよ、やめろ……! |
ローレンツ | ふっ……嬉しいくせに悪態かい? 君は本当に素直じゃないな……! |
ローレンツ | さぁ、今日も実験を開始しよう! |
ベルガー | ぎゃあああっ! |
──時は流れ、これは〇〇が
オーストリアに滞在していた時の話。
ローレンツ | ……やれやれ。 まさか朝からこんな時間まで 公務が詰め込まれるとは……。 |
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主人公 | 【お疲れ様】 【大変そうだね】 |
ローレンツ | ああ。カール様のためとはいえ、 大事な読書の時間に支障が出るのは困りものだな。 |
ローレンツは軽く溜め息をつきながら、
コーヒーを淹れるために湯を沸かし、
レコードプレーヤーへ手を伸ばす。
ローレンツ | 今日の音楽は…… そうだな、これにしよう。 |
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レコードが回り、クラシック音楽が流れ出す。
ローレンツ | うむ、いい音だ……。 |
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満足気に頷きながら、ローレンツは手慣れた様子で
カップにコーヒーを注ぎいれた。
ローレンツ | ついでに君の分も淹れておいた。 飲むといい。 |
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主人公 | 【ありがとう】 【いただきます】 |
ローレンツ | ああ。 俺はこれから読書の時間に入る。 君は好きに過ごすといいだろう。 |
ローレンツ | 君も何か興味深い本があれば、 コーヒーを飲みつつ読み進めてはどうだ? |
ローレンツ | ちなみに俺は、 1日最低5時間は読書をすると決めている。 |
ローレンツ | その時間に気にいった本を読み返すこともあれば、 新しい本を熟読することもある。 |
ローレンツ | そして読書の供に、 素晴らしい音楽とコーヒーは必須なのだよ。 |
主人公 | 【今日読む本は?】 |
ローレンツ | これは、 『正しいモルモットのしつけ方』というものだ。 |
ローレンツ | モルモットの生態や学習能力、 効率的な躾の仕方、健康を保つための食事……。 |
ローレンツ | 様々な観察や実験に基づいた、 実に興味深い内容がまとめられている。 なかなか読みごたえも実用性も十分だ。 |
主人公 | 【…………】 【モルモット……】 |
〇〇は、ベルガーと自分自身のことを
一瞬考えてしまったが、意識的に思考をストップする。
ローレンツ | ん……? なに、本の内容が難しそうだからと言って、 敬遠することはない。 |
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ローレンツ | 読書はよいものだ。 読むだけで先人の知恵や思想、 努力の結果を知ることができるのだから。 |
ローレンツ | 新たな知恵を取り入れるための資料としても、 斬新な発想を得るためのきっかけとしても 活用することができる……。 |
ローレンツ | よって一つのものに囚われず、 様々な書物を読んで情報を取り入れることは 非情に有用なのだ。 |
ローレンツ | まぁ、俺の場合、 知識を蓄えること自体が好きというのが一番だがな。 |
ローレンツ | うむ。 やはり美味しいコーヒーは、 読書との相性が最高だな。 |
──ローレンツが士官学校を訪れるようになってからのこと。
ローレンツ | ああ、会いたかったぞ、モルモット2号……! |
---|---|
主人公 | 【久しぶり】 【(その呼び方はちょっと……)】 |
ローレンツ | 公務の間を縫って、 なんとかこちらへ来ることができた。 本当はもっと頻繁に来れるといいのだがな……。 |
ローレンツ | オーストリアには今、君たちのように 俺の好奇心を刺激してくれるモルモットがいない。 日々の張り合いがなく、退屈で仕方がないのだ……。 |
ローレンツ | 今日時間を作って士官学校を訪れたのも、 君たちにやってみたいことがあったからなのだよ。 |
主人公 | 【また、酷いことを……?】 【危険なものは困る】 |
ローレンツ | 安心したまえ。 肉体や精神に害があるような実験をする気はない。 |
ローレンツ | 今回は……俺のモルモットたちは、 どんな刺激を与えられたら一番喜ぶのか、 という実験だからな。 |
ローレンツ | では、さっそくモルモット1号に会いに行くとしよう! |
ローレンツ | ……まさか、Mr.ベルガーが自室にいないとは。 |
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ローレンツ | 彼ならば、アルパチーノやテキサス1号と 部屋でのんびり過ごしているとばかり……。 |
主人公 | 【他に心当たりは?】 |
ローレンツ | そうだな。俺の仮説では…… 彼は食堂で食事をしていると見た! 今は昼過ぎだしな。早速向かうとしよう。 |
ローレンツ | ……証明ならず、か。 やはりモルモット1号の思考を 完璧に解明するのはまだ難しいな。 |
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ローレンツ | となると、次に立てる仮説は……ん? |
ベルガー | げぇっ! |
ローレンツ | おお、久しいな、モルモット1号! |
ベルガー | ちょ、近寄んじゃねーよ、バーカバーカ!!! |
ベルガー | つーかお前もはやく逃げろよ! |
主人公 | 【大丈夫】 【今回は贈り物を持ってきてくれたらしい】 |
ベルガー | は? ……マジ? |
ローレンツ | モルモット2号の言う通りだ。 その証拠に──これを見たまえ! |
ローレンツが差し出したのは、
黒っぽい液体が入った瓶だった。
ベルガー | んん? コークじゃねぇか! なんだお前、意外といいヤツだったんだな! |
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ベルガー | んじゃ、いっただっきまーす! |
コークを見てあっさりと心を許したベルガーは、
ほとんど奪うようにボトルを受け取り、
一気に飲み干そうとした。しかし──
ベルガー | ぶはあっ!! |
---|
飲んだ直後、思い切り噴き出してしまう。
主人公 | 【……!?】 |
---|---|
ベルガー | ゲホッ、ゲホッ……なんだこれ!? 甘くなくて、苦ぇのにしゅわしゅわしてて…… クッソマジぃ! |
ベルガー | てめぇ、何飲ませやがった!? |
ローレンツ | ん? 正式名称は知らないが…… それはこの俺が特別に手ずから作った、 コーヒー炭酸飲料だ。 |
ベルガー | はぁ!? コークじゃねぇのかよ! やっぱお前は悪魔だ! このクソメガネ! もう二度とだまされねーかんな! |
ローレンツ | ……? なぜ1号はあんなに怒っているんだ? いつも飲んでいるものより上質な飲み物のはずだが。 |
ローレンツ | 炭酸が喉に心地よく細やかになるように工夫し、 使用したコーヒーもアイス向きの上質なものだ。 それを、不味いなどと評して……。 |
ローレンツ | まさか調合を間違え……いや、やはり美味だ。 君も飲んでみるか? |
主人公 | 【……遠慮します】 【ローレンツが飲んだ方がいい】 |
ローレンツ | ……そうか? では、遠慮なく。 |
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