これは遠い記憶の欠片。オーストリアでの、彼らの物語の前日譚。
かつて悪役だったバッドボーイ……ベルガーは鎖に繋がれて、二つの両極端な運命と出会う。
「お前の名前は、 『アルパチーノ』だ!」
ヘンタイに捕まってさぁ!!
なんか飯もないしさぁ!!
もうなんかあれだ。あれあれ。
あれだぜアルパチーノ。
……踊るしかなくね~!!!??
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
これは〇〇たちが
オーストリアを訪れる前──
ベルガーが、貴銃士として目覚めた頃の話。
ベルガーが目をさますと、そこは薄暗い檻の中だった。
檻の外には、妙に存在感のある少年と
複数の着飾った人間らがベルガーを見ていた。
ベルガー | ああ? な、ここぉ……。 ってか、オマエら……誰? |
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カール | 待っていたぞ。 暇つぶし──いや。 元世界帝軍の貴銃士、ベルガー! |
ベルガー | ……? てめぇのその顔と声、どっかで……。 |
ベルガー | あぁー! 思い出した! レジスタンスの中にいたヤツだろ! ゴミだゴミ! ひゃははっ、殺してやるよ! |
少年が敵であることに気づき
思わず身を乗り出すベルガーだが、
手枷と足枷が邪魔をする。
ベルガー | って、んだよコレぇッ!? 動かねーんだけど! |
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ベルガー | ああっ!? うっぜぇ! ってか、なんでオリなんかに閉じ込められてんだよ!? どーなってんだよ、オイ!! |
カール | はっはっは。元気いっぱいだねー。 イレーネの戦いの途中で斃れ、 銃に戻った君は知らんだろうが……。 |
カール | 世界帝──かつての君のマスターは レジスタンスに打ち倒され、 裁判を受けたのち、処刑された。 |
ベルガー | はぁ? ……どゆこと? |
カール | 混乱するのも無理はない。 あの武力で世界を支配した男が── |
ベルガー | サイバン? ショケイ? んだそれぇ? |
カール | …………。 |
カール | ……ああいや、つまり、世界帝はもう死んだんだよ。 君たちは、僕らレジスランスに負けてしまったのさ。 |
ベルガー | はぁ~~~!? なぁーに寝ぼけたこと言ってんだブァーカ!! 俺らが負けたぁ? んなわけねーだろ! |
ベルガー | テキトーなこと言ってんじゃねーよ!! ふざけんな、こっから出せ! 俺を誰だと思ってんだ、ベルガー様だぞオラァ!! |
檻と手枷がこすれ、金属音が鳴り響く。
だがカールは涼しい表情のまま、首を横に振った。
カール | まぁまぁ、落ち着け。 君にとっても悪い話じゃないぞ。 |
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ベルガー | てめぇら全員ムカつくんだよそのツラァ!! うっぜーーー! |
ベルガー | くそ! クソクソクソクソ!! クソクソクソクソ!! マジ……ぶっ殺す!!! |
ベルガー | んぁ……? なんだ、この声……。 力……? 欲しいに決まってんだろうがァァ!!! |
カール | ……!? |
貴族たち | ひぃぃぃぃっ!! |
絶対非道の力で檻を吹き飛ばし、
ベルガーは怖気づいた人間たちを横目に
颯爽と駆け出す。
ベルガー | おお!? ワケわかんねーけど……おもしれー! ヒャッハー! オラ、どけどけどけーっ!!! |
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カール | ……ほー。 これは期待以上の成果だよ。 |
ベルガー | あ? ──っ! |
カールの放った銃弾は、
寸分の狂いなくベルガーの心臓を撃ち抜いた。
ベルガー | ……あるぇ? 俺、何してたんだっけ……。 |
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ベルガー | ……ん? フンフン…… なんか、うまそうな匂い……? |
ベルガー | おおぉぉぉっ!? |
ベルガー | バーガー、ポテト、コーラ…… んでもって漫画に、ゲームまで!? サイコーのラインナップじゃねぇか! |
カール | やあ、ベルガー。昨日はすまなかった。 君に対して、もてなしの気持ちが足りなかったようだ。 |
カール | ということで、それらは君のために用意させたものだ。 存分に食べ、好きなだけゆっくりするといい。 |
ベルガー | は? 昨日? なんだっけぇ? もぐっ! ぶわぁ! このバーガー、うめー! こっちのポテトもバリうめー!!! |
カール | 君が寝ていた間に、世の中は様変わりしていてね。 たとえば、その美味しい食べ物。 |
カール | それは普通だったら、 まじめに働かないと食べられないものだよ。 |
ベルガー | はぁ? 働くとかありえねぇ~。 そのへんのヤツを殴って奪う! もぐっ!! |
カール | 清々しいほどに、野蛮だなー。 ならば、ここでおとなしく暮らしていてもらおう。 それで異存ないね? |
ベルガー | ……このマンガ、パラ読みでもめっちゃおもしれー!! アルパチーノってやつ、 マジかっけーじゃん!! |
カール | その漫画、全部で50巻あるぞ。 続きを読みたいか? |
ベルガー | おう!! 読みてぇ!!! |
カール | 君がこの檻の中で大人しく生活すると約束してくれるなら、 続巻もすぐに手配しよう。 |
カール | 加えて、今後も漫画とゲームは、定期的に提供する。 食事も君が望むものを、 すべてこちらで用意するつもりだ。 |
ベルガー | マジで!? めっちゃいいじゃん! お前サイコーだな!!! じゃあ俺、ずっとここにいるわ! |
カール | はっはっは……! これからよろしく頼むよ、ベルガー。 |
ベルガーが召銃されてから、
しばらくが経った頃──
平穏だったはずの場内で、
突如、銃声と爆音が響き渡った。
貴族 | きゃああああっ!? |
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兵士 | また奴の仕業だ! おい、急いで追うぞ! |
ベルガー | くっそ……! 話がちげぇじゃねえか……!! |
ぐーぐーと鳴る腹をさすりながら、
ベルガーは走り続ける。
足枷が擦れて痛みが生じても、
立ち止まるわけにはいかなかった。
ベルガー | はぁ……はぁ……今度こそ……っ! ……くっ! |
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不意のめまいにふらついた身体を支えようと
とっさに壁に手をついた、その瞬間──
──ガコン!
ベルガー | ……は? |
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触れた壁の一部が押し込まれると、
どこからともなく振り子のように
巨大なハンマーがベルガーへ襲い掛かってくる。
ベルガー | おおっ……!? ちょ、待──っ!! |
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ベルガー | ぐはあっ!!!! |
ローレンツ | ふっ……青年は見事、証明してみせた。 かのモルモットが20分の1の確率でそのトラップに 引っかかるという仮説を! |
ベルガー | あぐ……て、てめぇ……!? |
ローレンツ | それは、対Mr.ベルガー用に 城の中を改造して設置したトラップの1つだよ。 意識をぎりぎり保てる程度に殺傷能力を調整した。 |
ローレンツ | すべて、俺の自慢のトラップばかりだ。 是非とも、他の場所のトラップも 実証してみてもらいたい! |
ベルガー | わ、ワケわかんねぇ……! クッソ……あんな不気味ヤローに 捕まってたま、っか……! |
ローレンツ | そうしてまだ逃げようとする諦めの悪さも、 想定済みさ。つまり……。 |
ベルガー | 痛ってえええっ! |
ベルガーの足を激痛が襲う。
足先を板型のネズミ捕りの罠が挟んでいたのだ。
ローレンツ | 壁を気にするあまり、足元の確認はおろそかになる。 こちらもしっかりと証明されたな。 |
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ローレンツ | ああ、ちなみに目的はあくまでMr,ベルガーであるため、 ネズミ用のチーズは置いていない。 |
ベルガー | クソ……とことん、邪魔しやがって……! マジで意味わかんねー……! |
ローレンツ | ふむ……まだ走れるのか。 だが、そちらも── |
ベルガー | あががががっ! |
踏み込んだ絨毯の下から、電気が流れ込む。
三度目の罠にはついに力尽き、ベルガーは
その場に倒れ伏すが……電気は体内を巡り続ける。
ベルガー | ……あがが……!! しびび……!!! しびびびびれれれれ……!! |
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ローレンツ | かわいそうなモルモット……。 こんなにボロボロになってもなお、 懸命に逃げようとするとは……。 |
ベルガー | じぇんぶぶぶぶぶ…… おおおめーのトラップのせいだろーがぁぁ……!! ひぐぐぐぅぅぅ……!! |
ローレンツ | ……! モルモット……涙を流しているのか? これは想定外だ。苦しいことで涙を流せるとは……。 |
ローレンツ | 君をそんな気持ちにさせるとは、慚愧に堪えない。 そう……君は俺の大事なモルモットなのだ。 |
ローレンツ | ──よし、俺も君と一緒に罠にかかってあげよう。 これで君は、1人じゃない……! ともに苦難を乗り越えるぞ!! |
ベルガー | なんでだよ!? |
ローレンツは迷わず
電気ショックが仕込まれた絨毯に飛び込む。
ローレンツ | ばばばばばば!! |
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ベルガー | おれ、おまえ、嫌いいいぃぃぃぃ!! |
ベルガー | …………。 |
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ローレンツ | 8分6秒。ふむ。5秒差だが『Mr.ベルガーが絶対非道で 脱走してから捕まるまでの時間は、約8分』という仮説は、 正しいと証明されたな。 |
ベルガー | はっぷん……? |
ローレンツ | わからないのか? つまり俺は、君が脱走するよう 誘導した後……ありとあらゆるルートを計算して、 捕まるまでの時間を8分と仮定したのだ。 |
ローレンツ | 今日の午後2時ごろは、警備が薄くなる。 だからといって、くれぐれも脱走を図ったりしないように。 |
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ベルガー | あれも全部、ワナだったってことかよ!? |
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ローレンツ | そんなに構えないでくれ。 俺たちは同じ国の仲間なんだ。 怯える必要も、怖がる必要もどこにもない。 |
ベルガー | は、はぁ!? んなわけねーだろバカが……! よ、寄ってくんじゃねぇ……! |
ローレンツが近づくと、
ベルガーの身体が無意識にガタガタと震えだす。
ローレンツ | ん? 震えているじゃないか。 もっと優しく言えばいいのか? 怖がらなくていいぞ~モルモット1号♪ |
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ベルガー | キモッ!!! |
──ベルガーの脱走騒動から、数日後。
ベルガー | はぁ……ハラ、減った……。 |
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ローレンツの管理により、
脱出防止のためベルガーはご飯の量を減らされ、
常に空腹の状態にさせられていた。
ベルガー | あの野郎……。 |
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ローレンツ | 大変だしつらいと思うが、これも実験だ。 我慢してくれたまえ。 |
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ベルガー | メシ食って元気になったら、 ぜってぇアイツの頭吹っ飛ばしてやる……! |
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意気込むベルガーとは裏腹に
空腹を訴える腹の音は
とても弱々しいものだった。
ベルガー | うぅ……爪、いてぇ……。 |
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逃げ出そうと檻や床を引っ掻いたことで、
ベルガーの爪は割れ、出血していた。
ベルガー | ……も……しぬ……。 |
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空腹でぼやける視界。
そのまま意識が遠のきかけるが──
突然、どこからか物音がし始める。
何者かの甲高い鳴き声と、
カシャンカシャンと檻を揺らすような音……。
ベルガー | んだぁ……? |
---|---|
ネズミ | チュー……チュー……! |
重い瞼をこじ開けてみると、どこからか入り込んだ
1匹のネズミが、運悪く檻にしっぽを絡めてしまい
……宙ぶらりんになって、暴れていた。
ベルガー | ──肉だッ!! |
---|
極度の空腹状態にあったベルガーは、
本能的にネズミをつかんだ。
ベルガー | おっしゃ! これでやっと…… ん!? |
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意気揚々とネズミを引き寄せたが、
愛らしい瞳と、ぱちりと視線がぶつかってしまう。
ベルガー | ……っんだよ、その目は……。 俺はなぁ……くっ! |
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ネズミ | チュー……。 |
ベルガー | ……はぁ。 もう絡まったりすんなよ。 |
掴んでいたネズミをそっと放す。
ネズミは、ベルガーをちたちと見上げたあと、
一声鳴いて逃げていった。
ベルガー | …………。 |
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──翌日。
気絶に近い睡眠状態だったベルガーは、
鼻孔をくすぐる小麦とチーズの香りに目を覚ます。
ベルガー | ……なんか……。 うまそーな、匂い……? |
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ベルガー | ん……? お、おおおっ!? |
ベルガーの眼前には、一口サイズの
小さなパンのかけらとチーズのかけらが落ちていた。
驚きながら視線を動かすと、
檻の陰から昨日のネズミが
そっとこちらを窺っていることに気づく。
ベルガー | これ……お前が? |
---|---|
ベルガー | もしかして…… 昨日、俺がお前を助けたと思って、 礼をしに来たのか……? |
ネズミ | チュー! |
ベルガー | お、お前ってやつは……!! |
涙を滲ませながら、
小さなパンのかけらとチーズを口へと放り込む。
空腹を満たすには、圧倒的に足りないが……。
ベルガー | なんだ……こんなクズみてーな パンとチーズが、こんなにうまいわけねぇ……のに ……グスッ!! |
---|
噛みしめるベルガーに、
小さなネズミがそっと寄り添った。
──さらにその次の日。
ベルガー | おっ、またパンとチーズを 持ってきてくれたのか? ありがとよ……! |
---|---|
ベルガー | ………。 なぁ、今日は一緒に食おーぜ。 |
チーズのカケラを渡すと、ネズミは心なしか
嬉しそうに鳴いてそれを受け取り、
ベルガーと一緒に食事をし始める。
ベルガー | …………。 あのよ。 |
---|---|
ベルガー | あん時……お前が初めてココに来た時。 ホントはお前を食っちまおうとしてたんだ。 ……ごめんな。 |
ベルガー | けど、俺はもう二度とお前を食おうだなんて考えねぇ。 なんたって── |
ベルガー | 俺とお前は、トモダチだからだ!! |
ネズミ | ……チュー……! |
ベルガー | でな、ダチなのにネズミって呼ぶのはヘンだろぉ? だから俺、お前の名前を考えたんだ! |
ベルガー | お前の名前は『アルパチーノ』だ。 俺の好きな漫画に出てくるヒットマンなんだぜ! へへっ、どうだ? |
するとネズミ──改めアルパチーノは、
ベルガーの足元から駆け上がり、
なんだか嬉しそうに首元へじゃれついてきた。
ベルガー | うひゃひゃ、それくすぐってーよ! うくくっ、おいやめろって……! |
---|
──この日から、二人は親友になったのだった。
ローレンツ | 今日の実験は、これで終わりとしよう。 |
---|---|
ベルガー | はぁ……。 …………。 |
ベルガー | アルパチーノ、いるか……? |
ささやくようなその声に応え、
どこからともなく現れたアルパチーノが
迷わずベルガーに走り寄ってきた。
ベルガー | お~! 今日も元気だったか~! |
---|---|
ベルガー | ……うひゃひゃ! |
ベルガー | 何すんだ、くすぐってーよ! おい! |
ベルガー | あ、こら! ひゃはは! カワイイやつ~! |
ベルガー | はぁ~……! やっぱお前、サイコーだわぁ……。 |
??? | ──ふむ。最近やけにおとなしいと思ったら、 そういうことだったのか。 |
ベルガー | はぁ!? なっ……! お前っ!! |
ベルガー | (やべー、いつからここに!? ってか、ばれたらアルパチーノと引き離される! いや、それどころか……) |
ベルガー | (アルパチーノにもなんかしやがるかも!) |
顔面蒼白になりながら、
ベルガーは慌ててアルパチーノを服の中に隠す。
ローレンツ | 今、懐になにか隠したな? それが『アルパチーノ』かい? |
---|---|
ベルガー | な、なんもねーし、なんもいねーよ! |
ベルガー | (アルパチーノ……! じっとしとけよ……!) |
だがアルパチーノは、不穏な気配を察知したのか、
外の様子が気になったのか……
服の中からひょこっと顔を出してきてしまう。
ベルガー | ちょ、出てくんなバカ! |
---|---|
ローレンツ | ほう……これが……。 |
アルパチーノ | キー、キー……! |
ベルガー | おい、触んな! 離せよ……! |
ひょいとアルパチーノを持ち上げたローレンツは、
興味深そうに上から下まで観察し始める。
ローレンツ | これはこれは……妙なノイズが入ったものだ。 |
---|---|
ベルガー | ……! |
そして、ローレンツがアルパチーノへと
もう片方の手を伸ばした瞬間──
ベルガー | だから……アルパチーノに触んなって言ってんだろ! この変態野郎!! |
---|---|
ローレンツ | ……っ!? |
叫んだベルガーは
がぶりとローレンツの手に噛みついた。
ローレンツ | くっ……! |
---|---|
ベルガー | アルパチーノ! |
呆気にとられていたローレンツの手の中から
逃げ出したアルパチーノは、
すぐさまベルガーの元へ逃げてくる。
ベルガー | こいつは、俺が守る……! 絶対にてめぇの手に渡したりしねーぞ! |
---|---|
ローレンツ | ふむ……ノイズかと思ったが、 これはあるいは──福音か? |
ベルガー | ぜったい、ひど──……! |
ローレンツ | ──素晴らしいっ!! |
ベルガー | !?!? |
徹底抗戦の覚悟を決めたベルガーだったが、
ローレンツはむしろ好意的に
アルパチーノを見つめている。
ローレンツ | 新たな可能性の広がりを感じるぞ! さっそく観察してデータを集めなければ。 |
---|---|
ベルガー | お、おい…… アルパチーノのこと、取り上げたりしねー、のか? |
ローレンツ | 取り上げる? 何故? 君がそのネズミと関わることは、 むしろ推奨すべき事象だ。 |
ローレンツ | 動物と貴銃士の友情という題材も、魅力的といえよう。 今のところ引き離す気はさらさらないから 安心したまえ。 |
ベルガー | ……マジ? はぁ~あ……。 |
思わぬローレンツの許可に、
べルガーはへなへなと座り込んだ。
ベルガー | ……っ! やったぜアルパチーノ! 俺たち、ずっと一緒にいてもいいってよ! |
---|---|
アルパチーノ | チュー! |
ローレンツ | ……! 意思の疎通ができているのか。 やはり面白いモルモットだな……。 |
そして時間は流れ──
これは、ベルガーが士官学校にやって来てからの話。
シャルルヴィル | それでね、マスター。 この後の予定なんだけど……ん? |
---|---|
??? | おっ、お前ここにいたのか! ほらよ! |
声をかけられ後ろを振り向こうとするが、
それよりも先に──
首に、何やらひんやりとしたものを巻かれた。
主人公 | 【……?】 |
---|---|
シャルルヴィル | ぎゃあああっ!? |
その『ひんやりとした長くて太い何か』はずるりと動き、
〇〇の目の前に顔をのぞかせた。
──真っ白で目が赤い、アルビノの蛇だった。
シャルルヴィル | な、な、ヘビっ!? |
---|---|
ベルガー | ぎゃはははは! |
主人公 | 【これは……ペット?】 |
ベルガー | あぁ? そんなんじゃねーよ。 こいつは俺のトモダチのテキサス1号だ! 二度とペットなんて呼ぶなよ! |
主人公 | 【ごめん】 【よろしく、テキサス1号】 |
ベルガー | ……フン! だいたい、こいつをその辺の蛇と一緒にすんな。 テキサス1号はめちゃくちゃ頭いーんだぞ。 |
ベルガー | 夜は俺と並んで寝るイイコだし~、 俺の言うこともちゃんと聞けるんだからなっ! |
ベルガー | だからよぉ……俺が噛めっつったら、 こいつは迷わず噛むぜ? お前の首を、がぶっとな! |
シャルルヴィル | ヒィ! ぼ、ボクもう無理~~! 助けてジョージ!! |
ベルガー | あひゃひゃ、情けねー! |
主人公 | 【えっと、どうしたら……】 【ずっと絡みついてるんだけど……】 |
ベルガー | お? テキサス1号に気に入られたんじゃねー? よかったな! |
八九 | ……なんの騒ぎかと思ったら、お前かよ。 |
八九 | はぁ。シャルルヴィルが泣いてた理由がわかったぜ。 ビビらせて遊ぶとか、ガキじゃねーんだからさ……。 |
ベルガー | ああん!? なんか言ったかよぉ、 引きこもりオタクのドーテーく~ん? |
八九 | ど、童貞じゃねーよ! つかオタクバカにすんな、イキリクソガキ! |
ベルガー | トモダチいねーぼっちが喚いてるわぁ~! あっひゃっひゃ! |
主人公 | 【テキサス1号のこと、好きなんだ?】 |
ベルガー | あ? んなの、当たり前だろ。 そうじゃなきゃ一緒に寝たりしねーよ。 ……こいつ、カワイイし。 |
八九 | げぇ。 蛇がかわいいとか、正気かよ……。 |
ベルガー | あぁ!? てめっ── |
主人公 | 【確かに、よく見ると可愛いかも】 |
ベルガー&八九 | ……!? |
ベルガー | お、おう。 ……そーだろ? へへっ……。 |
主人公 | 【つぶらな瞳がカワイイ】 【おとなしくて賢くて、神秘的で素敵】 |
ベルガー | そ、そうか……って、もう返せよ! 俺のテキサス1号だぞ!! |
八九 | いや、この流れおかしくね? そもそもはお前が押し付けたんだろ? |
ベルガー | …………。ま、まあ? テキサス1号の良さが わかるってんなら、その……俺がいない時に エサやりする名誉をやってもいいぜ? |
主人公 | 【ありがとう!】 【楽しみにしてる!】 |
八九 | え、ええー……マジか。 お前、すげーな……。 |
ベルガー | ……フン! |
ベルガー | …………。 |
---|---|
ベルガー | へへ…… テキサス1号のかわいさに気づくとか、 ワカってんじゃねーか、あいつ……。 |
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