解説

カード解説

どうしても隠された秘密が知りたくて、在坂を追いかけてたどり着いた先は、街の市場のど真ん中。
追いかけっこの末、勝利したのは……?

心銃解説:揺れる心柱 燻る炎

あの子の瞳に映るに値しないモノ。
アレも、コレも、全て消して。
あの子を守るため。あの子のためだけに。
自分に巣くう歪みの影すら、覆い隠して消してしまえ。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

 

Ep1. 献身は誰が為に

邑田と在坂が士官学校にやってきてから、
しばらく経ったある日のこと。

ライク・ツーは、生徒たちで混み合う昼休みの食堂で、
微動だにせず立っている人物がいるのに気づいた。

在坂…………。
ライク・ツーおい、何突っ立ってるんだ?
食堂混んできたし、邪魔になるっての。
在坂……在坂は、オムライスを食べたいと思っている。
ライク・ツーは? 食えばいいだろ。
っつーか、お前が持ってるのオムライスじゃねぇのかよ。
在坂…………。

在坂が手にしているトレイには、
オムライスと紙ナプキンが載せられている。

ライク・ツー……もしかして、スプーンがねぇとか?
在坂…………。

在坂は、コクリと頷いた。

ライク・ツー馬鹿じゃねーの?
んなの、もらいに行きゃいいだろ。
在坂……在坂に、それはできない。
スプーンは……食堂のご婦人から貰わないといけない。
在坂そういうのは……いつもは邑田がやってくれている。
ライク・ツーはぁ!? お前は赤ん坊かよ。
そんくらい、自分で普通に声かけてもらえばいいだろ。
在坂……在坂が話しかけると、人間は怖がる。
ライク・ツー……ふぅん。それ、やってみたのか?
在坂…………。
ライク・ツーやってねぇなら、四の五の言わずにやってみろ。
ほら、とっとと行け。
在坂……っ!

ライク・ツーが在坂の背中を押す。
在坂は食堂のカウンターの前に押し出された。

在坂…………。
食堂のおばさんあら、どうしたの?
在坂……在坂は……スプーン、が欲しい。
食堂のおばさんスプーン?
あらヤダ! つけるの忘れてたかしら!
食堂のおばさんはい、お待たせ。
ごめんねぇ、うっかりしちゃってて!
冷めないうちに召し上がれ。
在坂……!

在坂は無事にスプーンを受け取ると、
少しふわふわした足取りで
ライク・ツーのところへ戻ってきた。

ライク・ツーよかったじゃん。
ほら、とっとと食──
邑田ちぇすとォ──ッ!
ライク・ツーぐほっ!?

ライク・ツーの背中に、
邑田のドロップキックが炸裂した。

邑田大事ないか、在坂!?
在坂……!?
ライク・ツーてめぇ、何すんだ!?
本気で蹴りやがったな、このマロ眉野郎……!
邑田何をしておったのかと問うのはわしの方じゃ。
貴様、在坂に何をした!?
ライク・ツー何もしてねぇよ!!
邑田つまらん虚言を申すのならば、容赦はせんぞ……!
在坂の背を叩いたのを、わしはこの目で──
在坂……邑田は、勘違いをしている。
在坂のオムライスにスプーンがついていなかったので、
ライク・ツーが食堂のご婦人から貰うよう促しただけだ。
在坂邑田にいつもやってもらっていることを、
在坂がやったまで。
在坂……スプーンを貰うことに成功したので、
在坂はこれからオムライスを食べようと思う。
邑田むぅ……?
在坂ライク・ツーは在坂に危害を加えていない。
むしろ、助けてくれた。

在坂の説明に、邑田は握りしめていた拳を解いた。

邑田……そういうことじゃったか。
しかし、在坂に手間を掛けさせず、
そなたが匙を取りに行けばよかろう、ライク・ツーよ。
ライク・ツーお前なぁ……前から思ってたけど、
可愛がり方がいちいち気持ち悪いんだよ。
ライク・ツー可愛いからってなんでもかんでもやってやるのは、
こいつのためにならねぇだろ。
ライク・ツーいくらこいつが根暗で何もできねぇやつだからって、
お前が全部やってやる必要はねぇよ。
邑田……何も知らんくせに、言いよるのう。
今回ばかりは在坂に免じて見逃してやるが、言葉には気をつけよ。
邑田在坂を少しでも傷つけようものなら容赦はせぬ。
在坂に降りかかる火の粉は、このわしがすべて払ってやるからの。
ライク・ツーいや、お前のやり方って……
火の粉を払うっつーか、無菌室に軟禁してるような感じだろ……。
ライク・ツーま、俺には関係ねーけど?
お前は結局──
生徒1……どうしたの、喧嘩?
生徒2貴銃士様たちが言い争いをしてるみたいだ。
ライク・ツー……チッ。
とにかく、お前の過干渉はこいつのためになってない。
いいかげん気づけよ。
邑田…………。
在坂邑田?
邑田おお、すまんすまん。
せっかくのおむらいすが冷めてしまうのう。
あちらでともに食すとするか。ここは騒がしいゆえな。
在坂……ああ。
邑田(……そうじゃ。
在坂のこの純な瞳が……陰るくらいなら……)

ライク・ツー……はぁ、なんだよあいつ。
ライク・ツー……うおっ!?
八九おわっ!
ライク・ツー……悪ィ、ちゃんと前見てなかった。
八九へぇ。珍しいな、お前がぼーっとするとか。
ライク・ツー…………。
なぁ。お前って、邑田と在坂とよくつるんでるよな。
八九いや、つるんでるっつーか、絡まれてるっつーか。
……それがなんだ?
ライク・ツー何ってんじゃねぇけど……。
献身的に誰かの世話する奴らって昔からいるけどさ。
八九ん?
ライク・ツー度を超した献身ってのは、
結局、相手のためっていうか自分のためなんだよな。
八九お、おう……??
ライク・ツー……なんでもねぇ。
じゃあな、食堂混んでるぞ。
八九はぁ……いや、文脈謎すぎんだけど!?
八九なんつった? 度を越した献身……?
八九…………。

Ep2. 日仏溺愛同盟

ある日の貴銃士特別クラスでは、
雨上がりのグラウンドにて、体力増強訓練が行われていた。

恭遠よーし、先頭はあと1周だ!
余裕がある者、物足りない者は追加で走ってもいいぞー!
ジョージはぁ、はぁ、はぁ……
よし、あとちょっと! 飛ばすぜ~!
ジョージ……って、うわあぁっ!
スナイダーなっ……!

ラストスパートをかけようとしたジョージがぬかるみで滑り、
渋々参加していたスナイダーを巻き込み転倒した。

シャルルヴィルわっ、2人とも大丈夫!?
あちゃー……泥だらけになっちゃったね。怪我はない?
エンフィールドああっ!
なんということだ……!

少し後方を走っていたエンフィールドが、
すさまじいスピードで2人に駆け寄った。

エンフィールドジョージ師匠!!
エンフィールド大丈夫ですか、お怪我は!?
ああ、こんなに泥がついて!
さぁ、僕に掴まってください。医務室へお連れします!
ジョージええっ、別にこれくらい大丈夫だって~!
あとちょっとだし、ゴールしてからで平気だぜ☆
スナイダー…………。
エンフィールドいえいえ、無理はいけません!
足を痛めているかもしれないので、僕が師匠を背負いましょう。
その前にまずは、泥だらけのお顔を拭かなくては……。
スナイダー…………。
エンフィールドあ、スナイダー。
スナイダー……なんだ。
エンフィールド君なら怪我はないだろうけど、泥だらけじゃ不衛生だからね。
面倒がらずに、ちゃんと水で汚れを落とすんだよ。
エンフィールドさて、師匠。お顔をお拭きしますね。
少しじっとしていてください!
ジョージいや、だから大丈夫だって~!
スナイダー…………。

シャルルヴィル……ねぇ、エンフィールド。
エンフィールドおや、シャルルヴィルさん。
どうかなさいましたか?
シャルルヴィル君、スナイダーのお兄ちゃんなんでしょ?
ジョージばっかりじゃなくてさ……
もうちょっと、スナイダーの心配もしたらどうかなぁって。
エンフィールドえ……? なぜですか?
スナイダーは心配いりませんよ。強いんですから。
エンフィールドでは、僕は師匠のお着替えを取りに行きますので。
失礼しますね!
シャルルヴィルええ……?
邑田……ふむ。
そういえば、スナイドル銃は鳥羽の弟であったな。
シャルルヴィルあ、邑田さん。
トバ……って、エンフィールドのことですか?
邑田うむ。鳥羽はかつて日本でも活躍した銃でのう。
わしが作られて軍銃一定が成し遂げられる以前……
戊辰の戦場などで使われておったのだ。
シャルルヴィルへぇ……そうなんですね。
シャルルヴィルで、スナイドルは……スナイダーのことかな?
ええ、エンフィールドの弟です。
シャルルヴィルさっきの態度はちょっと酷いですよね。いくら強いからって。
そりゃ……猫かわいがりしたら、
それはそれでスナイダーは気持ち悪がりそうだけど!
シャルルヴィル弟なんだし、もう少し心配してあげてもいいのに。
そうしたら、スナイダーの方も
案外素直になって、ちょっとおとなしくなるかもしれないし。
邑田ふむ……わしにとっては、年少の近縁は在坂。
もしも在坂が、あのように泥にまみれたならば……。
おお……労しや……!
シャルルヴィルボクも……スフィーがあんな風に転んじゃったら、
駆けつけて怪我がないか確認する……!
邑田うむ。もしも怪我をしておったならば、
わしが在坂をおぶって、〇〇のところまで駆けるわ。
シャルルヴィルうん、うん!
ボクだって、服が汚れるのも気にせずにおんぶします!
シャルルヴィルそれに、スフィーは欲がないし我慢強いからさ、
美味しいお菓子を夜中にこっそり食べる……なんて、
悪いことなんかも一緒にして甘やかしたい……!
邑田うむうむ。
在坂のためであれば、紅あずさの焼き芋も用意してやろうな。
無論、玉露の茶も八九に淹れさせようぞ。
シャルルヴィルじゃあ、ボクは美味しい紅茶を用意して……!
で、もしお菓子と一緒に飲んでる紅茶を
スフィーがうっかり零しちゃったりしたら……。
シャルルヴィル急いで冷やして、着替えも用意しちゃう!
冬ならふわふわモコモコので、夏ならサラサラひんやりの!
邑田ほっほっほ、あっぱれな心意気よ。
じゃが、わしはその上を行こう。
邑田わしならば、在坂の服に熱い茶がかかる前に、
この身を滑り込ませて在坂を守る!
シャルルヴィルそ、それならボクは──

スプリングフィールドはぁ、はぁ、はぁ……。
ごめんなさい、在坂さん……。
僕のスピードに付き合わせちゃって……。
在坂……問題ない。
在坂は、走ることは苦ではない。

2人がゆっくり走っていると、
にわかにグラウンドが騒がしくなる。

在坂……? あれは……。
邑田在坂やー!
在坂、あともう少しじゃ!
シャルルヴィルスフィー、頑張って!
あともうちょっとだよっ、頑張れー!
スプリングフィールド……な、なんだろう、あれ……。
シャルル兄さんと邑田さんが……旗を振ってる……。
在坂在坂は知っている。
あれは、横断幕というやつだ。

ゴール付近に陣取った邑田とシャルルヴィルは、
『スフィー 在坂 頑張れ 負けるな!』と書かれた
横断角を掲げて、2人に声援を送っていた。

何事かと、通りすがりの一般生徒たちもちらほらと加わって、
走っている2人に「頑張れー!」とさらなる声援が送られる。

在坂&スプリングフィールド…………。

在坂とスプリングフィールドは、俯いたままゴールした。

シャルルヴィルやった、ゴールだ!
おめでとう、スフィー! よく頑張ったねぇ!
スプリングフィールド……シャルル兄さん……。
あの……これは……。
シャルルヴィルえ……っ、気に入らなかった?
スフィーたちへの応援の気持ちをちゃんと言葉にしようって、
邑田さんと一緒に考えたんだけど……。
邑田おお、在坂!
そなたの雄姿、わしはしかと見届けたぞ!
在坂邑田……。
邑田あ、在坂!?
待っておくれ……在坂や……!

頬を赤くしたスプリングフィールドと、
居心地の悪そうな表情の在坂は、
2人揃って逃げるように去っていった。

邑田何故じゃ……在坂……?
シャルルヴィルど、どうしよう……!
ボク、スフィーに嫌われた……!?
エンフィールドおやおや……。お2人はシャイなのですね。
大きな声援はお好みではなかったと。お気の毒です!
ジョージ……は、はは……。
なぁ、それよりこの包帯解いてくれないか?
オレ、ミイラみたいになってる……。

Ep3. 強い友達

邑田と在坂が初めての喧嘩を終えて、
士官学校の日常に戻った後のこと……。

邑田おーい、在坂や?
むぅ、ここでもないとは……。
……のう、ライク・ツー。在坂を見てはおらぬか?
ライク・ツーん? 昼休みだし、食堂かどっかじゃねーの。
っつーか、お前またあいつのこと甘やかしてんのかよ。
いい加減にしとけよな。
十手ライク・ツー君、そんな言い方しなくても……。
邑田はて……困ったのう。
先日、日本から取り寄せたさつまいもがまだあるゆえ、
今日も在坂と焼き芋をしようと思ったのじゃが……。
ライク・ツー無視かよ!
ライク・ツー……あ、んなこと言ってるうちに戻ってきたみたいだぜ?
十手やあ、在坂君。
昼食はちゃんととれたかい?
在坂…………。
邑田むっ!
在坂や、一体どこに──
邑田(……いや、ここは我慢じゃ……!
せっかく仲直りをしたのに、同じ轍を踏むわけにはいかぬ。
しかし歯がゆいのう……隔靴掻痒とはまさにこのことよ……!)
八九在坂、お前最近1人でどこ行ってんの?
また友達でもできたのか?
邑田(は、八九────っ!!)
邑田(わ、わしが聞かずに我慢していたことを……!
じゃが、でかしたぞ!)
邑田そ、そういえばそうじゃのう!
わしも気になるぞ、在坂や。
在坂……在坂は、太郎に会いに行っている。
邑田太郎!?
邑田(どこの馬の骨じゃ、そやつは!)
八九へー、やっぱ友達か。
どんな奴なんだ?
在坂太郎はとても強い。
足の力が抜きん出ていて、威圧感がある。
相撲を得意としている。
八九す、相撲……!?
まさかイギリスに、相撲が強い奴がいるとはな。
十手おお、相撲か!
いいねぇ、俺も太郎殿の立ち会いを見てみたいよ。
邑田わ、わしも相撲は腕に覚えがあるぞ!!
どうじゃ、在坂。わしも太郎とやらと──
在坂それは駄目だ。
邑田では、勝負にならない。
邑田な……っ!
邑田そ、そうか……よ、よい友人を持ったな……。
ほ……ほっほっほ……。
八九(うっわ、笑顔がひきつってる……。
しばらく近寄らねぇようにしとこ……)

──翌日の放課後。

在坂…………。
邑田あ、在坂。
在坂……なんだ。
邑田今日も太郎のもとへ行くのか……?
在坂……ああ、そうだ。
今日は邑田も来てほしい。太郎を紹介する。
邑田なぬっ!?
ほ、ほっほっほ……そうかそうか!
わしに在坂の新しい友達を紹介してくれるのか……!
邑田ふ、ふふ……わしにだけ……!
在坂……八九。
在坂は八九にも来てほしいと思っている。行こう。
八九え、俺っ!?
邑田……っ!! …………っ!!!
八九(やっべー! 邑田がすげぇこっち睨んでんじゃん!)
在坂2人とも、何をしている?
こっちだ。

うきうきしている邑田と怯える八九を連れて、
在坂は演習場横の林に入っていった。

邑田……しまった!
太郎に手土産でも持って来た方がよかったか。
なにせ在坂の友なのじゃ。わしも礼を尽くさねばのう。
八九いやいや、つーか、林って!
なぁ、在坂。
友達との待ち合わせ場所、おかしくね?
在坂おかしくない。太郎はいつもここにいる。
……ほら。
八九……ひょわっ!?

在坂が突然目の前に差し出したのは黒光りする虫で、
八九は奇声とともにのけぞった。

八九ご、ご、ごっ!
邑田……鍬形……?
八九へ? クワガタ……?
在坂紹介する。太郎だ。

つまみ上げられてじたばたと足を動かしているクワガタを見て、
在坂は微笑んだ。

在坂太郎は今日も元気だ。
在坂は嬉しい。
邑田これが、太郎……。
ど、どのようにして出会ったのじゃ……?
在坂林に生える薬草を見て回っていた時、
太郎が在坂の肩にとまった。
在坂在坂には、太郎が強くて力持ちなことがわかった。
だから、他のクワガタムシやカブトムシと
相撲をさせることにした。
在坂太郎はとても強い。
どんな大きな相手にも、負けなしだ。

誇らしげな在坂の手の中で、太郎が黒く輝いている。

八九マジか……。
邑田わ、わしだって強くて力持ちじゃ!
八九クワガタに張り合うなって……。

意外な太郎の正体に最初は面食らった2人だったが、
太郎たちが繰り広げる試合は迫力満点で白熱し、
在坂と共に熱く盛り上がる時間を過ごしたのだった──。

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