【愛故に、と暗がりに謳う】エンフィールド

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解説

カード解説

これは遠い記憶の欠片。イギリスでの、彼らの物語の前日譚。
道を誤った者の教育は高貴なる者の責務である。
エンフィールドは秘匿された闇の中、兄弟愛の義務を果たす。
「駄目だよ。僕の言いつけを守らなきゃ」

心銃解説:高貴であれ 英雄であれ

いいこでいて。いいこでいてよ。
そうすれば、おしおきしなくてすむんだから。
……青年は一人、その心を高貴、その情動を愛と名付けて慈しむ。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. 偶然は自分で生み出せ

これは〇〇たちが
イギリスに招待されるよりも、前の話──。

エンフィールド……!
スナイダー…………。
???お目覚めでしょうか?
我が国の、新たな貴銃士様──
エンフィールドはじめまして、マスター!
エンフィールド僕は大英帝国が誇る前装銃最後の傑作、
エンフィールド銃です!
あなたの期待に応えてみせましょう! ええ!
アッカーソンあ……私はアッカーソン。
イギリスの国務大臣を務めております。
どうぞよろしく、エンフィールド殿。
エンフィールドええ! よろしくお願いいたします、
マスター!
アッカーソンゴホン。
……あなたのマスターは私ではなく、
こちらの者です。
ロナルドロナルド、と申します。
エンフィールド様とスナイダー様、
お2人のマスターに選ばれました、国務省の者です。
エンフィールドこれは失礼! あなたがマスターでしたか。
ロナルドさんですね。
──おや?
ロナルド……?
何か……?
エンフィールドいえ……ロナルドさんは、もしや何かスポーツを?
ロナルド……!
アッカーソンこれは……よくおわかりで。
彼は元オリンピック選手で、銀メダルをとったこともある
優れたスポーツマンなんですよ。
エンフィールドやはり! 均整の取れた身体つきだと思いまして。
そんな方が、僕のマスターになってくださるなんて光栄です。
ロナルド恐縮です。エンフィールド様は──
スナイダーおい。くだらん話は十分だ。
スナイダー俺たちを召銃した目的を言え。
すぐに終わらせてやる。
エンフィールドこら、スナイダー!
ダメだろう? 初対面の方々だよ。
アッカーソンこれは失礼を。話を先へ進めましょう。
我々があなた方に望むことは1つ……。
アッカーソン革命戦争の際もエンフィールド銃とスナイダー銃は、
レジスタンスの貴銃士として召銃されておりました。
アッカーソン絶対高貴の力で前線に立ち、
世界帝軍との戦いでも活躍していたという話です。
アッカーソンならば、同型の銃であるあなた方にも、
絶対高貴になれる素質は十分に備わっているはず!
アッカーソン是非ともその絶対高貴の力で、
イギリスを支えていただきたいのです。
エンフィールド──お任せください!
このエンフィールド、
必ず絶対高貴の力を使いこなしてみせましょう!
スナイダー…………。

エンフィールドスナイダー。さっきの態度、良くないよ。
君は僕にとっては弟みたいな存在なんだから、
ちゃんと注意していくからね!
スナイダー……弟、か。

アッカーソンくれぐれも注意するように……。
ロナルドはい……心得ております。

エンフィールドとスナイダーが召銃されてから、
数日が経過したころ──。

エンフィールドどうして、早く教えてくださらなかったのですか!?
まさか──
エンフィールドブラウン・ベス先輩が
既にイギリス王室で召銃されているなんて……!
ぜひ、お会いしたいです! 今すぐにでも!
アッカーソンそれはなりません。マスターである女王陛下は
公務でお忙しく、その警護を務めるブラウン・ベス様も
とても時間が取れるような状態ではないのです。
アッカーソン公式謁見の機会を待つしかないかと。
エンフィールド……わかりました。ブラウン・ベス先輩に、
ご迷惑をかけるわけにはいかないですしね……。

──数日後。

エンフィールド(ふぅ……いつになったらブラウン・ベス先輩と
お会いできるのか……)
使用人ブラウン・ベス様。
次の会合のお時間が迫っております。
ブラウン・ベスわかった。急ごう。
エンフィールド……っ!
エンフィールドブラウン・ベス……先輩!!
ブラウン・ベス……!?
使用人ブラウン・ベス様。
早くお乗りに……。
ブラウン・ベス……ああ。
エンフィールド……やった……!

エンフィールド(ああ……! 目が合った!
絶対に僕のことを見てくださった!
嬉しいなぁ……!)
エンフィールド(噂に聞いた通りの、凛々しいお姿だった……。
さすが大英帝国を築いた名銃ブラウン・ベス……!
ああ、もっとお話したい……!)
エンフィールド(──そうだ。女王陛下のスケジュールを調べれば、
先輩が単独でいる時間帯はわかるはず……)
エンフィールド(そこを狙って、
偶然、外で会ったということにできれば……)
エンフィールドよし! 早速情報収集だ!!

エンフィールド(そろそろかな……)
ブラウン・ベス…………。
エンフィールド(あ! き、来た……っ!)
エンフィールドブ、ブラウン・ベス先輩!
……偶然ですね!
ブラウン・ベスん……?

Ep2. 彼だけが目にしたもの

ブラウン・ベスを待ち伏せしていたエンフィールドは、
狙い通り、2人きりで語り合う時間を手に入れようとしていた。

ブラウン・ベスえっと……。
エンフィールドようやくお話ができますね……!
僕はずっと、あなたにお会いしたかったんです!
エンフィールドご存知かとは思いますが、
僕は1か月ほど前に召銃されたエンフィールドです!
どうかお時間の許す限り、僕の想いを語らせてください!
ブラウン・ベス……!?
エンフィールド僕はずっと、ブラウン・ベス先輩に憧れていたのです。
大英帝国を築いた名銃と言われる、偉大な方ですし……!
エンフィールドイギリスの銃としての大先輩で、
革命戦争の英雄たちと同じく、絶対高貴を使えると!
あなたはとても高貴で偉大な、イギリスの誇りです!
ブラウン・ベス…………。
エンフィールド僕も、先輩のように絶対高貴になりたいのです。
参考にするためにも、
ぜひ先輩の絶対高貴のお力を見せてくださいませんか?
ブラウン・ベス……っ!
そ、それは……。
エンフィールド突然申し訳ございません……!
ですが、どうか!
お願いします! イギリスのために! なにとぞ!!
ブラウン・ベスす、すまない……!
エンフィールドあ、待ってください!
どこに行かれるんですか先輩!? 先輩!!
使用人1ブラウン・ベス様?
使用人2どちらにいらっしゃるのですか?
エンフィールド(人が……。
はぁ、仕方ない……ここは一度退こう)
エンフィールド(それにしても……なぜブラウン・ベス先輩は、
ほとんど言葉を交わしてくださらなかったのだろう?)

それから数日後。
懲りないエンフィールドは、今度はブラウン・ベスの
自室近くの廊下の物陰に隠れ、彼を待ち構えていた。

エンフィールド(ようやくまた、チャンスが巡ってきたぞ……!)
エンフィールド(先輩が部屋に入る瞬間を狙って、僕も室内へ入る。
鍵さえ閉めてしまえば、
この前のように逃げられる心配もないし、人目も気にならない)
エンフィールド(前回は他の人が来て、ゆっくり話せなかったから……
今日こそ絶対高貴を見せてもらわなければ……!)
エンフィールドあっ……!
ブラウン・ベス…………。
エンフィールドブラウン・ベス先ぱ──

エンフィールドが声をかけるよりも早く、
ブラウン・ベスは俯き、きつく眉根を寄せた苦し気な表情で、
急いで自室へと入っていってしまった。

エンフィールド(どうしたんだろう……?
僕にもまったく気づいてないみたいだったし……
……あっ!)

ブラウン・ベスの動作が乱暴すぎたせいか、
部屋の扉はきちんと閉まりきっておらず
──少しだけ、隙間が空いていた。

エンフィールド(先輩の様子を確かめないと……)

ブラウン・ベスくそっ……!
こんなこと、いつまでやらなきゃいけねぇんだ……!
ブラウン・ベスもう限界だ。俺は──。
エンフィールド……っ!? あれは……。
ま、まさか……そんな……!?

 

Ep3. 突然の別れと出会い

エンフィールドがブラウン・ベスの秘密を
知ってしまってから、しばらくが経ったころ──。

エンフィールド…………。
……やっぱりいないか。
スナイダーおい。マスターはいたのか?
エンフィールドいいや。メイドや使用人の部屋どころか、
厩舎まで探したけど……どこにもいなかったよ。
エンフィールドどこに行ってしまったんだろう……。
マスター……突然、いなくなるなんて。
エンフィールド僕、もう一度同じ場所を見て回ってくるよ。
スナイダーもそれで──
……っ!?
スナイダー──?
なんだ、これは──。

エンフィールドの目の前にいたスナイダーが、
突然金色の光に包まれ──
跡形もなく、消えてしまった。

エンフィールドスナイダー!?
ど──。

エンフィールド(ん……? あれ、ここは……)
アッカーソンエンフィールド殿。
ご気分はいかがですかな。
???ほう、こちらが……。
スナイダー…………。
エンフィールドそうだ。確か突然スナイダーが消えて……!
僕たちに一体何があったのです……?
アッカーソンあなた方は、銃に戻られてしまったのです。
エンフィールドえっ……?
アッカーソンマスターからの力の供給が止まると、
貴銃士は人の姿を保てなくなってしまうのだとか……。
エンフィールドそんな……。
マスターは!? マスターはいったいどこに……!
アッカーソン……残念ながら見つかっておりません。
ですが、おそらくはもう……。
エンフィールド……っ!
アッカーソン彼は……あなた方を絶対高貴にしてやれない
不甲斐ない自分を恥じていたようでしたから……。
もしかしたら、自ら命を……。
エンフィールドまさか……
僕が……絶対高貴に、なれなかったから……
マスター……!
スナイダー……フン。
終わったやつなどどうでもいい。
スナイダーならば、おまえが新しいマスターというわけか。
今度は俺を上手く使えよ?
新しいマスター……! ええ、もちろんでございます。
見た通り、老いてはおりますが……これでも元軍人。
革命戦争では、レジスタンスを率いた将の一人で──。
スナイダーもういい。
エンフィールド……スナイダー!!
君はなんとも思わないのかい!?
あのマスターの下で絶対高貴になれていたら、と!
エンフィールド君が、そんなだから……!
マスターが思いつめてしまったとは考えないのか!?
スナイダー……おまえに言われなくとも、俺は力が欲しいさ。
現状を歯がゆくも感じている。
スナイダーだが──目覚めないのであれば、
どうすることもできまい。
エンフィールド……っ!
でも、君の態度はあまりにも……!
スナイダーおい。俺に八つ当たりしてる暇があるなら、
大好きなブラウン・ベス先輩に
絶対高貴のコツでも聞きにいったらどうだ?
エンフィールドそ、それは……。
スナイダー……?
何を躊躇する必要がある?
エンフィールドと、とにかく!
僕は今度こそ絶対高貴になるために努力する!
だから、君もちゃんと頑張るんだよ!
エンフィールドそれじゃあ、これからよろしくお願いしますね!
新しいマスターは、はぁ……。
スナイダー……?

Ep4. 歪んでしまった兄弟

これは〇〇たちが
イギリスを訪れる直前のこと。
──イギリスで起こった、ある出来事の前日譚。

エンフィールド──食事を持ってきたよ。
今日こそはちゃんと食べてね……あれ?
スナイダー後ろががら空きだ──
『エンフィールドお兄ちゃん』?
エンフィールドなっ……!?
スナイダー俺をこんなところに閉じ込めたんだ。
それ相応の罰は受けてもらうぞ。
エンフィールド君が悪いんだろう!?
僕は兄として正しいことをしたまでだよ!
スナイダー黙れ。
今日こそ、おまえをねじ伏せ……脱出してやる。
エンフィールド……っ!

殴りかかってくるスナイダーの猛攻を防ぎながら、
エンフィールドはその動きを抑え込みにかかる。

激しい攻防の末、勝利をつかんだのは──。

エンフィールドふぅ……残念だけど、脱出は無理みたいだね。

スナイダーを床に押さえつけながら笑う、
エンフィールドだった。

スナイダー……チッ!
エンフィールドまったく……君がちゃんと僕の言うことに従えば、
こんなことにはならないのに。
スナイダー…………。
エンフィールド睨みつけたって駄目だよ。
本当のことだろう?
本来なら、僕より君のほうが力は強いはずなんだから。
エンフィールドそれなのに、君がまともに食事をとろうとしないから、
今や五分五分どころか僕に競り負けるほどだ。
かわいそうに……。
エンフィールドちゃんと僕の言う通りに、
大人しく食事をとっていれば、
こんな悔しい思いをしなくても済んだんだよ?
エンフィールドこの状況は──君のわがままが招いた結果だ。
わざわざ拘束まで解いて頑張ったみたいだけど、
残念だったね。
スナイダーチッ……偉そうに。
エンフィールドはぁ……君こそ、強情だね。
エンフィールドほら、戻って。
今日の食事は、さっきのでダメになってしまったから、ナシだ。
どっちにしろ食べなかっただろうけど……明日こそは食べてよ。

エンフィールドは優しく語りかけながら、
スナイダーを拘束しなおし、起き上がらせる。

スナイダー……おまえが何を言おうと同じことだ。
俺は俺の考えを変えるつもりはない。
エンフィールドそれなら君はずっとこのままだ。
大丈夫、銃には戻らないように、
無理矢理にでも食べさせてあげるから。
エンフィールドそして……必ず君を正しい道に引き戻してみせるよ
──君は僕の弟だから、ね?

Ep5. 僕の想いを込めた詩

そして時間は流れ──
これは、エンフィールドとスナイダーが
士官学校で生活するようになってからの話。

エンフィールド〇〇さん、エンフィールドです。
よろしければ一緒にアフタヌーンティーをしませんか?
主人公【もちろん!】
エンフィールドああ、よかった。
いい茶葉が手に入ったんです。
スコーンも焼きたてですから、とても美味しいですよ!
主人公【それは楽しみ!】
【嬉しいなぁ……!】
エンフィールドええ、僕もです!
さあ、どうぞこちらに──。

エンフィールド〇〇さん、いかがですか?
主人公【香りのいい紅茶だね】
【スコーンがザクザクで美味しい!】
エンフィールド喜んでいただけてよかった……!
天気にも恵まれて、とても嬉しいです! ええ!
エンフィールドそれで、あの……今日は他にもですね……。
エンフィールド実は、マスターを想って詩を書いてきたんです。
聞いていただけますか?
主人公【あ、ありがとう】
【もちろん!】
エンフィールドありがとうございます!
ではさっそく、披露させていただきます!

いそいそとノートを取り出したエンフィールドは、
どこか恍惚とした様子で、自作の詩を朗読し始める。

エンフィールド『絶望に囚われた僕を救い上げた2つの希望
その名は〇〇さんとジョージ師匠』
エンフィールド『この出会いは、意地悪な神様からの
気まぐれなプレゼント
あなたの愛が世界(ぼく)を生まれ変わらせて』
エンフィールド『師匠の導きが絶対高貴(ぼく)を輝かせた
人々を癒し、光をもたらす存在(ぼく)を
照らす2つの希望(ひかり)』
エンフィールド『尊き我が主(ひかり)に永遠の敬愛を
──ありがとう 僕の救世主』
主人公【…………】
エンフィールド以上です!
お付き合いいただき、ありがとうございました……!
主人公【す、すごいね……!】
【す……すごい、ね……】
エンフィールドあ……そ、そんな拍手まで……
本当に、ありがとうございます……!
エンフィールドそれで、〇〇さんさえよろしければ……
これからも新しく詩を作ったら、
聞いてもらえないでしょうか?
主人公【次も楽しみにしてる】
【う、うん……!】
エンフィールドええ! 約束ですよ。次はもっと気合を入れて……
マスターにスタンディングオベーションまで
していただけるような詩を、用意しておきますので!
エンフィールドですからどうか、この約束を破って……
僕の前からいなくなったりしないでくださいね。

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