解説

カード解説

小さな皇帝は、夜毎悪夢に魘される。暗い夢の中で死者たちの声に惑わされ、その目は赤く濁っていく──。

心銃解説:威光を背負いし皇帝の進撃

甘美な罠に誘われ、籠の中のガラクタは夢を見る。
狂気の笑顔を浮かべ、彷徨い続ける歪んだ幻。
懐かしき声が聞こえては消えていく。
悪夢と共に闇に消えていく。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. 華麗なる二連拳銃

カールやあ。久しいね、〇〇。
ローレンツ会いたかったぞ、モルモット2号……!

オーストリアから士官学校へ2人がやってくるという連絡があり、
〇〇はエントランス前で2人を出迎えた。

主人公【長旅お疲れ様】
【部屋に案内するよ】
カールああ。
しばらく世話になる。よろしく頼むよー。

ローレンツカール様。紅茶をお淹れします。
本日の茶葉は何がよろしいでしょうか。
カールふむ……
ダージリンのファーストフラッシュにしようか。
カール少しさっぱりとしたい気分だしね。
銃のメンテナンスのお供にちょうどよさそうだ。
ローレンツはっ、かしこまりました。

ローレンツが紅茶の用意を始める一方、
カールは荷物から道具を取り出して、
銃のメンテナンスを始めた。

〇〇は、興味を引かれて
その様子をじっと見る。

カール〇〇。
僕の銃がそんなに物珍しいかい?
主人公【とても綺麗だから気になって】
【どういう構造なのか気になって】
ローレンツそうだろう!!
ローレンツカール様の銃は、世界最古に数えられる
美麗なホイールロック式二連拳銃……!
ローレンツ本来ならばガラス越しにしかお目にかかれないような
希少で貴重な銃であり、
輝かんばかりに高貴な銃なのだから……!
カールふむ……。〇〇。
そういえば君には、
僕の銃について詳しく説明したことがなかったね。
カールいい機会だから、我がマスターに
特別講義をするとしようか。
ローレンツカ、カール様の講義……!
ドナウ川よりも大きな心の広さに感激いたします……!
主人公【お願いします!】
【楽しみ!】
カールでは、まずは基本的な構造についてだ。
僕の銃に採用されているホイールロック式の機構は、
その名の通りホイールロック、鋼輪によって点火する仕組みだ。
カール正確な発祥は定かでないが、15世紀末から16世紀初頭に、
イタリアかドイツで発明されたと言われている。
最初の全自動点火システムさ。
カール引き金を引くとホイールロックが回転して、
アームの先に取り付けた火打ち石と摩擦が生じ、火花が出る。
これによって点火し、弾が発射されるというわけだ。
カール安全装置として、火縄銃と同様に火蓋がある。
これは、点火薬を入れる火皿を保護して、
予期せぬ発射を防ぐためのものだ。
カールそういえば、以前イエヤスに聞いたんだが、
日本には「戦いの火蓋を切る」という慣用句があるそうだよ。
カール火縄銃やホイールロック式の時代から
今にまで言葉が残り伝わっているとは、
なんとも面白いものだねー。はっはっは。
ローレンツさささ、流石はカール様……!
東洋の慣用句にまで精通していらっしゃるとは!
主人公【火縄銃と共通点があるんだ】
【フリントロック式とも少し似てるんだ】
カールいかにも。
ホイールロック式は、火縄銃──マッチロック式の次に生まれ、
あとにはフリントロック式が続いた銃だからねー。
カールマッチロック式やフリントロック式に比べ、
僕のようなホイールロック式の銃は珍しいものと言えるだろう。
その理由がわかるかい?
カールヒントは……僕の銃の見た目かなー。
主人公【高価だから?】
→カール「その通り。
ホイールロック式は構造が複雑でね。ゆえに高価なのさ。」

【軍用に向かないから?】

→カール「正解と言えるね。ホイールロック式は、
きちんと作動すれば不発が少ないという利点があるが、
いかんせん構造が複雑繊細で、高価なものだ。」

カール「だから、軍隊の統一装備として歩兵に持たせるのは難しい。
ホイールロック式の銃を愛用できるのは、
王侯貴族のような富裕層くらいのものだったのさ。」
ローレンツカール様はもはや銃の枠組みを越えた、
一級品の芸術品ですからね……!
主人公【二連になっているのもすごい】
カール確かに、16世紀の銃で二連ピストルはなかなかなさそうだ。
僕を作ったのは、時計職人でもあった人物だから、
繊細で独創的な機構を組み上げられたのかもしれないねー。
カールさて、僕の銃についてはこれで十分わかったかな。
主人公【よくわかった】
【解説ありがとう】
カール最後に1つ付け加えておこう。
僕の銃は歴史的にも非常に価値があることは間違いないが、
時の流れとともに人の技術は発展を続けている。
カール19世紀には、ローレンツ・ライフルのような、
優れた性能の軍用銃もオーストリアに誕生している。
ローレンツ……!
カ、カ、カール様が!! 俺を褒めて……!?
これは夢か幻か……っ!?
ローレンツ──青年は、歓喜に震えた。
心臓は破裂寸前にまで高まり……。
ローレンツ……ウウッ!
カールよし、静かになったな。
ローレンツが起きる前に、手入れを終わらせるとするかねー。

Ep2. 芸術談義

ケンタッキーおい、いいか? ペンシルヴァニア。
メシ食い終わったら、今度こそ勝負だからな!!
ペンシルヴァニアまたか、ケンタッキー。
勝負じゃなくて、昼寝でもいいと思うんだが……。
ケンタッキーああ? 仲良く昼寝しろってか!?
ペンシルヴァニア……ん?
ケンタッキーおい、聞いてんのか、ペンシルヴァ……って、なんだあれ?

立ち止まったペンシルヴァニアにケンタッキーが文句を言うが、
すぐに、前方の不思議な光景に気づいて言葉が止まる。

食堂前の廊下で生徒たちが誰からともなく
左右に分かれて道を開けていた。

ケンタッキー誰かVIPでも来てんのか?
ペンシルヴァニアさあ……。

2人が不思議に思いつつ近づくと、
生徒たちの間をカールが悠然と歩いてくる。

カールローレンツ。今日のランチメニューは?
ローレンツカール様御用達のステーキ店シェフが出張し、
特上牛フィレ肉のステーキを用意しております。
カールおお、それはいいねー。
午後もいい気分で過ごせそうだ。
女子生徒1とても美しい銃ね……。
はぁ……見惚れちゃう。
男子生徒1ああ、なんという威厳……!
男子生徒2オーストリアではお目にかかれなかったけど、
まさか士官学校で間近でお姿を見られるなんて……!
ケンタッキーすげー人気だな……。
ペンシルヴァニア……変わった形の銃だな。
彼は……カールだったか。
ケンタッキーおう。
世界最古の部類に入る、ホイールロック式の二連拳銃だってよ。
知らねぇのか?

ケンタッキーとペンシルヴァニアの会話が耳に届いたのか、
カールが足を止め、振り返る。

カールやあ。僕のことを呼んだかい?
ペンシルヴァニアああ……。
呼んではいないが、あんたの銃の話をしていた。
ペンシルヴァニア変わった形をしているし……遠目にも、装飾の見事さがわかる。
……よかったら、よく見せてくれないか?
ケンタッキーちょっ……おい、ペンシルヴァニア!
んな、突然……!
カールああ、構わないよ。
ケンタッキーいいのかよ!?

ペンシルヴァニアは、カールから銃を手渡され、
ケンタッキーと一緒にまじまじと見始める。

ペンシルヴァニアふむ……。近くで見ると、なおさら美しいな。
ケンタッキーうおお……すっげぇ細かい装飾……!
木の深い色味と、金の色味がシブいな……!
ケンタッキー作った職人の気合とこだわりがビシバシ伝わってくるぜ……。
つーか、歴史と銃自体のすごさでどんだけ価値があるんだ……?
ケンタッキーペ……ペンシルヴァニア……!
お前、ぜってー落とすんじゃねぇぞ!
ペンシルヴァニアわかっているさ。
ペンシルヴァニア……鹿と、それを追う猟犬……。
後方に馬に乗った人間……。これは狩りの様子だな。
カールうむ。狩りの様子が象嵌(ぞうがん)されている。
撃鉄側には「双頭の鷲」と「ヘラクレスの柱」の彫金があるぞ。
ケンタッキーなんか文字が書かれてんな。
プラス……ウルトラ?
カールラテン語で「プルス・ウルトラ」
カール5世のモットーさ。
ペンシルヴァニア……どこもかしこも見事なものだな。
これを彫った職人は、相当に腕がよかったのだろう。
ケンタッキーすげーけど……戦場に持ってくにはおっかねぇよな。
俺がこの銃をオーダーしたヤツだったら、
銃に傷がつかねぇかヒヤヒヤして戦いどころじゃなくなるぜ……。
カールはっはっは。
装飾というと、君たちの銃にもいろいろと施されているが、
日常の中にあるこだわりの品と僕とは、また性質が違うからねー。
カールホイールロック式の銃を買うのは王侯貴族が中心……
彼らがオーダーするからには、生半可な品にはならない。
カールまあ、一種のステータスシンボルとも言えるだろう。
ペンシルヴァニア……貴重な銃を見せてくれてありがとう。

ペンシルヴァニアが銃を差し出し、
カールが受け取ろうとしたその時。

カールおおっと。
ペンシルヴァニア&ケンタッキーあっ!!!

落ちそうになった銃を守ろうと、
ペンシルヴァニアとケンタッキーが同時にスライディングする。

カールあっはっはっ、今のは冗談だよー。
ケンタッキーうぉい!!
笑えねぇジョークだぞ!
ペンシルヴァニア心臓が止まるかと思った……。
カールははは、すまなかったねー。
さて、君たちもこれから昼食なら、ステーキはどうだい?
驚かしてしまった詫びにご馳走しよう。

 

Ep3. 酒も肉もほどほどに

とある休日、カールは街の食堂を訪れていた。

カール(おや? あれは……)
ジーグブルートチッ……!
ジーグブルートドライゼの野郎、また俺に指図しやがって……!
エルメもなんであの古臭ぇ銃の言うことを大人しく聞いてんだよ。
クソが……!
カール(おやおや、ずいぶんと荒れているようだねー。
ふむ……)

カールは、酒を煽るジーグブルートの席へと向かった。

カールやあ、いい飲みっぷりだね。
ジーグブルートああ?
ジーグブルート……てめぇか、なんの用だ。
また気まぐれかよ。
カールそこの君。彼にこの店で一番いい肉を。
店員は、はい……!
ジーグブルートんだよ。礼なら言わねぇぞ。
カールなに。僕が勝手にやったことだ。
そもそも求めてなどいないさ。
カール君の飲みっぷりが気に入ったからねー。
美味い酒には美味い料理がつきもの。
肉もたっぷり食べるといいよ。
ジーグブルート…………。
そうかよ。
カールさて、僕も何か食べようかな。

カールが注文した肉料理を待つ間も、
ジーグブルートはビールと料理をどんどん飲み食いする。

ジーグブルート……うめぇな、この肉。
カールははっ、それはよかったねー。
カール……ところで君、痛風って知ってるかい?
ジーグブルートツーフゥ? なんだそれ。
カール風が吹くだけでも痛いと言われる病気さ。
僕の名の由来になった持ち主……。
カール5世は若い時から大食漢でねー。
カール牛、イノシシ、キジなどの鳥だけではなく、
カエルの肉なども大好物だったそうだ。
カールそして、寒い冬でもビールを大量に飲むのを好んでいた……。
ジーグブルート……なんでそんな話を俺にすんだよ。
カールいや。
痛風はビールの飲みすぎが原因の1つだと言われていてねー。
君の飲みっぷりを見ていて、ふと思い出したのさ。
カール風すらも激痛に感じるとは、どんな感じなのだろうねー?
ジーグブルート……ッ、それを早く言えよ!

ジーグブルートは慌てて、
ほとんど空になったビールジョッキを置いた。

ジーグブルートはぁーあ……。
んなこと言われたら、飲む気が削がれちまったじゃねぇか。
カールあははっ!
君は見かけによらず、意外と用心深いな。
ジーグブルートはぁ……?
そんなんじゃねぇが……今日はもう茶に切り替える。
カールうむうむ、そうしておきたまえー。
ストレスも痛風になる原因の一環らしいからね。
リラックスできるお茶を頼んであげよう。
ジーグブルートチッ……!
余計なお世話だ!
ジーグブルート頼むんなら、一番美味い茶にしろ。
てめぇのせいで酒がまずくなったんだからな。
カール任せておきたまえ。
これでもお茶にはこだわりがある方でねー。
今日は、楽しいお茶会といこうか。はっはっは!

Ep4. 月を見て何思う

ある休日のこと。
カールと〇〇が談話室でくつろいでいると、
紙袋を抱えた十手と在坂がやって来た。

十手在坂君と有名なパン屋に行って来たんだ。
〇〇君にもお土産があるよ。
在坂十手と一緒に選んだ。
在坂は腹ペコだ。早く食べよう。
主人公【2人ともありがとう】
【いい匂い!】
カールこれはまたずいぶんとたくさん買ってきたようだねー。
バターの香りが食欲をそそって……腹の虫が鳴きそうだ。
ローレンツなっ! カール様を空腹になどしておけません!
今すぐ軽食をご用意いたします。少々お待ちを!
十手ローレンツ君、ちょっと待った。
わざわざ用意しなくても、
俺たちが買ってきたパンを一緒に食べないかい?
カールおや、いいのかい?
在坂たくさんあるから、在坂は構わないと思う。
食べたいものを皆で食べればいい。
十手うんうん。
みんなで食べた方がきっと、美味しく感じるだろうしね!
ローレンツそれで、どんなパンを買ってきたのだ?
十手お店にあったパンをほとんど全種類買ってきたよ。
ただ、1つ気になるものがあってね。

十手が取り出したのは、
形が違う2つのクロワッサンだった。

十手ほら、こっちは三日月のような形をしているだろう?
で、こっちもくろわっさんというパンなのに、形が違うんだ。

十手が指し示したもう1つは、まっすぐな形をしている。

カールああ……確かにこの2つは、
同じ「クロワッサン」だが、違うものでもあるねー。
十手むむ……? どういうことなんだい?
カールクロワッサンは、フランス語で「三日月」を意味する。
元はすべて三日月形だったんだよ。
カール初期のクロワッサンはマーガリンを使っていたのだが、
のちにバターを使った高級品が誕生したから、
区別するために2通りの形があるのではなかったかな。
ローレンツパンのことにまでお詳しいとは……!
新たなカール様の一面を知られて、感激です……!
十手ほほう……! 原材料で形が違うとは面白いね。
それで、まっすぐな方が少し高かったのか。謎が解けたよ!
在坂……在坂は不思議だ。
これを最初に作った人は、月が好きだったのだろうか。
カールそれについては、諸説ある。
特に有名な説を1つ話すとしようか。
カールクロワッサンは、オーストリアやドイツの
キッフェルンという三日月形のパンが原型だとも言われていてね。
カール17世紀、攻め入ってきたオスマントルコ軍を、
ハプスブルク家の守備隊が、撃退した記念に、
オスマントルコの象徴である三日月を模して作り……。
カールその後、ルイ16世に嫁いだマリー・アントワネットによって
フランスへ伝えられ、20世紀初頭に今のような生地になって
フランスを代表するパンになった……というものだ。
カールま、これ以外にもいろいろな説があって、
今となっては何が本当かわからないのだがねー。
十手銃に歴史があるように、パンにも歴史あり、か……。
不詳な部分も含めて奥深く感じるね。
在坂オスマン……在坂は、授業で聞いたことがある。
レジスタンスの活動についての話で出てきた名だ。
十手おお! 俺も覚えがあるぞ!
3人の貴銃士がいたと、恭遠教官が話していたね。
カールああ。
マフムト、アリ・パシャ、エセンの3人だね。
十手カール君は……はぷすぶるく家と因縁深いようだし、
複雑な関係だったんだろうか……?
カールははっ。
まあ、仲良しこよしというわけではなかったかな。
彼ら3人も、独特な関係性でねー。
カール野心家のアリ・パシャ……
エセンは自他ともにその部下だと認めていたけれど、
彼はマフムトにもいたく気に入られていた。
カールマフムトは宝石をポロポロと出す不思議な貴銃士で、
のんびりと穏やかな性格だが、強い力があったよ。
いやぁ、面白いバランスの3人組だったなー。
十手ほ、宝石……!?
なんとも気になる御仁だなぁ。
十手いつか俺も、彼らに会ってみたいものだよ。
カール君、とても興味深い話をありがとう。
在坂…………。
カールいや、これくらい構わないよー。
……ところで、在坂。
君、ずっと食べているが、苦しくないのかい?
十手え……? あれっ!?
在坂もぐもぐ……。
主人公【パンがかなり減ってる!】
在坂在坂はクロワッサンが気に入った。
さくさくでパリパリだ。
どちらの形が美味しいか食べ比べていたら、減ってしまった。
カールあっはっはっ! そんなに美味いクロワッサンなら
食べないと損だねー。
よし、僕も食べるとしよう。

在坂に負けじとカールもパンを食べ始める。
少なくなったパンを皆で分け合いながら食べ、
しばしの楽しい時間を過ごしたのだった。

Ep5. 年長者と若輩者

──ある日の士官学校にて。

昼食をとる生徒で賑わっている食堂で、
ベルガーが椅子を3席分占領して寝ていた。

ベルガー……ぐー……むにゃむにゃ……。
……もう食えねぇって……。
ローレンツ起きろ、モルモット1号!
ベルガーうおおっ!?
んだよ、うるせーなぁ。せっかくきもちよーく寝てたのによぉ。
ベルガー……って、クソメガネ!?
ローレンツカール様に席を譲るんだ、モルモット1号。
ベルガーはァ~? なんで俺が席を譲らなきゃなんねーんだよ。
空いてる席探せばいいだろ!
ないならオメーが床で食べろ。
ローレンツ……ほう。
ローレンツモルモット1号には、
俺の背後に立つ高貴な御方の姿が見えないとでも言うのか?
ベルガーんぁ? 誰がいるって?
カールやあ、ベルガー。
すいぶんと豪快に寝ていたねー。
ベルガーあ? あー……なんだ、こいつか。
ローレンツなんだとはなんだ!! 口の利き方に気をつけろ!
カール様は450年以上の歴史を持つ偉大なる御方で……。
ベルガーよんひゃくぅ!? ジジイじゃん!
あっひゃっひゃ!
ローレンツ……っ!!
貴様……っ!
シェフ失礼いたします。
カール様、ステーキをお持ちいたしました。
カールうん……いい香りだ。
冷めてしまう前に、一刻も早くいただくとしよう。
ベルガーちょ~っと待った!
カールむ……?
ベルガージジイはそんな分厚い肉食ったら、
喉に詰まってあぶねーんじゃね?
これは俺が食ってやっから、野菜食っとけよ!

ベルガーは、カールの目の前から、
極上のステーキ肉が乗った皿を横取りする。

カール…………。
ローレンツモッ……! モモモ、モ……!
ベルガーん? なんかみょ~に寒ィような……。
レーボーってヤツのせいか?
ベルガーまあいいや。それより肉肉~♪
なんだこれ!!! すっげーうめぇ!!
カール…………。
ローレンツ(あ、あばばばば……
カール様が、本気で怒っていらっしゃる……!)
ベルガーお……? 黙っちまってどーした? 怒ったのかよ。
ジジイらしく労ってやろーか?
そうだ! 肩たたきしてやんよ~。

ベルガーは、カールの肩をバシバシと叩いた。

ローレンツあ、あわわわわ……!
ベルガーほらよ! 肩叩きしてやったぜ!
金払えよ! あっ、コークでもいいぜ?
この分厚い肉に合うしな~! ぎゃははははっ!!
カール…………。

食堂に入る誰もがカールの静かな怒りを感じ、静まりかえる。
そして……。

カール──心銃。

同時刻、食堂の屋根の上でスナイダーが寝ていると……。

スナイダー……っ!?
何だ、この殺気は……。

スナイダーが起きて身構えた直後、
轟音と共に、すぐ近くの屋根が下からの衝撃でぶち破られた。

スナイダーこれは、心銃か……?
これほどの力の主……戦い甲斐がありそうだな。

食堂では、心銃攻撃を受けたベルガーが倒れていた。

ベルガーあ、が、が……。
カール……おや?
カールベルガー以外の者は無事みたいだねー。
力のコントロールに成功したぞ。実にいい精度だ!
生徒1な、なんだ今の……!?
生徒2や、屋根が……!
大変だ、すぐに教官を呼ばないと……!!
ローレンツカール様……
素晴らしい一点集中の強力な心銃でした!!
日頃のトレーニングがこの結果に繋がったのですね……!
ローレンツ強大なお力をお持ちでありながら、
さらに鍛錬を重ねるその姿勢……俺の永遠の目標で道しるべです!
カールさて。
これでようやく肉に集中できるね。
シェフ、もう一度用意してくれるかい?
シェフもちろんですとも!
カール生徒諸君。君たちを驚かせてしまったね。
今日の食事代は、屋根の修繕費とともに僕が持とう。
なんでも好きなものを存分に食べるといい。
生徒たちうおおお!!
生徒たちありがとうございます!!

その日の食堂は、いろんな意味で大いに賑わったのであった──。

コメントを書き込む


Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

まだコメントがありません。

×