青年は思った。「まさか自分が」と。
この震えは武者震いだと思いたかった。
……まさか、オバケがこんなに怖いなんて!
むしろ兄貴分や弟分もなぜ皆平気なんだ!?
ありえないだろ、ウオァー!!!!!
こ、怖いとかじゃないんすよ!?
少しの油断が元で……みたいなんも聞くし? ちょい警戒してるだけみてーな、ね? だから俺全然ビビッてな……ギャーッ!!!!
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──ある日の士官学校にて。
ケンタッキー | くっそ~~! ペンシルヴァニアのやつ! 俺に勝ってといて、すました顔しやがって……! |
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ケンタッキー | 次はぜってぇ勝てる勝負……あ、裁縫とか? でも、もうちょいバシッと勝負決まりそうなのがいいな。 |
ケンタッキー | ……ん? |
生徒1 | え~! お前、ホラー映画苦手なんだ! ははは、意外とビビりだなぁ! |
生徒2 | う、うるさいなぁ。 誰だって、苦手なモンくらいあるだろ!? |
ケンタッキー | ホラー……か。 まぁ、苦手なヤツは苦手だよな。 |
ケンタッキー | ……おっ。 ってことは、こんな勝負もアリじゃねーか? |
ケンタッキー | 今日は肝試しの勝負だ! ビビッて逃げたやつが負け、いいな? |
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ペンシルヴァニア | そう、か。 ……嫌な空気を感じるな……。 |
ケンタッキー | ったく、だらしねぇな。 これくらいで怖がるなよ。 |
ペンシルヴァニア | いや、怖がっているわけじゃ── |
ペンシルヴァニア | ……! 今、足音が……? もしかして、幽霊……が……うっ。 |
スプリングフィールド | わっ、大丈夫ですか!? |
ケンタッキー | はははっ、俺の勝ちだな! |
ケンタッキー | ……アリだな。 あいつ星とかなんとかよく言ってるし、幽霊も信じるかも。 |
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ケンタッキー | よーし……! 明日あたり、ホラー映画で対決といくか! |
──翌日。
ペンシルヴァニア | ケンタッキー……映画はここでいいのか? |
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ケンタッキー | よく来たな。 ……勝負だ、ペンシルヴァニア! |
ペンシルヴァニア | 勝負……? だが、映画を見るんじゃないのか……? |
ケンタッキー | おう。だけど、見るのはホラー映画だ。 んで、ビビッた方が負けだからな! |
スプリングフィールド | あの、ケンタッキー。 対決なら、僕は何を……? |
ケンタッキー | 勝負には、公平にジャッジしてくれる審判がいるだろ? だから、スーちゃんは一緒にいて、 どっちがビビッてるのか判定してほしいんだ。 |
スプリングフィールド | そっか……。わかった。 |
ケンタッキー | んじゃ、再生するぞ。 |
アダム | 『この家、何かおかしいって! 俺たちだけしかいないのに、人の気配がする……!』 |
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ジョアン | 『気のせいだろ?』 |
ケンタッキー | (う……絶対やべぇことが起きるだろ、この流れ……!) |
リリー | 『待って! 廊下から何か聞こえてくるわ……!』 |
ケンタッキー | (ん……? 今、マジで扉の向こうから何か音が──) |
ケンタッキー&アダム | ぎゃあああっ!! 『ぎゃあーーっ!!』 |
スプリングフィールド | ケンタッキー、落ち着いて。 たぶん、今のは……寮の誰かが廊下を走った音だと思う。 |
ペンシルヴァニア | ふむ……ジョージだろうか。 ……ケンタッキー、怖いなら無理に見なくても── |
ケンタッキー | ち、違ぇよ! 俺は怖くねぇ! 今の声は主人公のアダムが叫んだ声だ! |
ペンシルヴァニア | そう……だったか? |
ケンタッキー | ああ、そうだった! ほら、続き、見るぞ! |
スプリングフィールド | ………………。 |
ジョアン | 『アダム……! 俺に構うな。 俺ごと……この悪霊を……た、おせ──』 |
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アダム | 『そんなことできるはずがない……!』 |
ケンタッキー | ううっ……。 乗っ取られて、あんなにも顔が怖くなっちまったってのに、 仲間のことを一番に思ってるなんて……優しすぎるぜ……。 |
ジョアン | 『ならば、おまえも……道連れ……だ……』 |
アダム | 『うわぁあああっ!!』 |
アダム(?) | 『フフフ……ハハハハハ! おれは……アダム……くく、くくく』 |
ケンタッキー | ……え、ここで終わりかよ……! バッドエンドじゃねぇか……! |
ケンタッキー | 続編とかねーの? このまんまだと後味悪すぎるぞ。 |
ペンシルヴァニア | たしかに……続きが気になるな。 少し探してみよう……。 |
スプリングフィールド | (もう、勝負はいいのかな……) |
ケンタッキー | おい、見つけたぞ! これ続編じゃねぇか!? げぇ、パッケージからして不気味だぜ……!! |
ペンシルヴァニア | 早速観てみよう。 |
スプリングフィールド | (2人とも楽しそうだし……勝負はお預けでいっか) |
──士官学校で起きている幽霊事件の真相を確かめるべく、
ケンタッキーたちは、夜の校舎の見回りをすることになった。
ケンタッキー | (う……見回りに行くって言っちまったけど、 なんか、この間見た映画思い出して……) |
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ケンタッキー | (あの映画、実話を元にしたとか書いてあったし……。 マジであんなふうに取り憑かれたりしたら……?) |
ケンタッキー | なんとか悪霊に対抗する方法を見つけねぇと……! |
ケンタッキー | 敵に勝つには、まずは徹底リサーチだ。 実体がねぇ悪霊も倒せるようにする方法…… こんだけ本があるんだから、どっかには情報があるだろ。 |
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ケンタッキー | ……お、この本とかよさそうだな。 『世界の妖魔・悪霊伝承100』……! |
──『悪霊に取り憑かれたその男は、
次々に殺人を犯しては、犠牲者の骨などを加工して身に着けた』
ケンタッキー | ぎぇっ……。 いきなり挿絵入れるのやめろよな……。 |
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ケンタッキー | こ、この本には対処法書いてなさそうだし、別の本見るか……。 お、『実在したエクソシストたち』! これなら間違いねぇはずだ……! |
『古い家に引っ越したその夜から、一家は怪奇現象に悩まされる。
リチャードソン神父は、その原因が呪われた本にあると気づくが、
呪いは神父すらをも襲い』──……
ケンタッキー | し、神父ですらダメなのか……!? いや、ここから神父がガツンと反撃するかもしれねぇ。 つ、続きを見てみるか……いや、一旦休憩だ。 |
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立ち上がったケンタッキーは、
何かにぶつかってよろめいた。
??? | いてっ。 |
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ケンタッキー | うひぃっ!? 誰もいねぇのに声が……! |
ゴースト | いや、お……いる、し。 ちゃんと前、見ろ……。 |
ケンタッキー | なんだ、ゴーストかよ! 驚かすなっての。 |
ゴースト | はぁ……勝手に驚いたん、だろ……。 そもそも……なんでそんなに怯えてる……んだ? |
ケンタッキー | 別に……幽霊について調べてて…… そう、すっげー集中してたとこに、 お前が幽霊みたいにスッと現れるから……! |
ゴースト | 俺を、幽霊と間違えたってことか……? |
ゴースト | ……ぷっ! |
ケンタッキー | ああ!? 何笑ってんだよ。 いいか? 幽霊には銃弾も効かねぇんだぞ? |
ゴースト | まあ、死ん……でるし、なぁ。 でも……聖水とか、十字架とか……そういうもん用意したら、 多少は効果あるん……じゃないか? |
ケンタッキー | ……! マジか。その話、もっと詳し──…… |
ローレンツ | 話は聞かせてもらった! |
ケンタッキー | うおっ!? |
ローレンツ | Mr.ケンタッキーは除霊や悪魔祓いに興味があるようだな。 では、こちらの書籍を読むといい。 古来より人々がどうやって怪奇現象に対応してきたのかわかるぞ。 |
ケンタッキー | へ、へぇ……? なかなか面白そうだな。 こういう本、他にもあったらありったけ持ってきてくれ……! |
ローレンツ | いいだろう。少し待っていたまえ。 |
ケンタッキー | どれどれ……おっ! この聖なる槍とか強そうだな。 |
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ローレンツ | ふむ、聖人を刺し、その血を浴びたことで 神聖なる力を得たという槍だな。 ──しかし、残念なことに実在するかはっきりしていない。 |
ケンタッキー | はぁ。手に入らねぇならダメだな。 |
ケンタッキー | じゃあさ、ゴーストが言っていた聖水は どこで買えるんだ? |
ローレンツ | 聖水は、聖職者が典礼や儀式に用いるもので、 市販はされていないはずだ。 |
ゴースト | ……街外れのアミュレット店で、売ってる、ぞ……。 |
ローレンツ | なに……? |
ケンタッキー | よっしゃ、そこで買うか! ……つーか、アミュレットってなんだ? |
ゴースト | まあ、魔除けの石……って感じのも、のだ。 宝石とルーン文字なんかを組み合わせてる……んだ。 |
ゴースト | 他芋、ラビットフットとか、日本のハマヤ……とか。 いろんなお守りを売っている……ぞ。 |
ケンタッキー | スゲー! お前、ゴースト博士だな! なんでも知ってるじゃねーか! |
ゴースト | (ゴースト博士って……なんやダサい響きやな……。 でも……悪くはないかもしれへん……) |
ゴースト | あの店、よく行くから……。 |
ケンタッキー | Thank youな! んじゃ、俺は行ってくるぜ! |
ゴースト | あ、ああ……。 |
ゴースト | ……派手ぇで騒々しい奴や、思っとったけど、 案外素直やな……。 |
──士官学校での幽霊騒動が終結してからしばらく。
ケンタッキーは〇〇と2人で任務に赴いていた。
ケンタッキー | 無事に任務が終わってよかったっすね、マスター! |
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ケンタッキー | ……けど、思ってたより遅くなっちまいましたね……。 |
主人公 | 【大丈夫、お疲れ様】 →ケンタッキー「いえ! マスターの方こそお疲れさまっす! 帰ったら、ゆっくり休んでください!」 ケンタッキー「……まずは無事、帰らないと……ですけど。 なんていうか、ほら…… 暗いので、足元が危ない……つーか……。」 【暗くなって少し不気味だね】 →ケンタッキー「マ、マスター! だ、大丈夫っすよ。俺もいるんで……!」 ケンタッキー「幽霊だろうとなんだろーと、ワンショット・ワンキルで 撃ち抜いてみせますし! ……いや、幽霊は撃てねぇよな……?」 |
ケンタッキー | う……っ。 よく見たら、道路の右手……墓地になってるんすね……。 |
カァ……! カァ……!
ケンタッキー | ……っ!! |
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ケンタッキー | カ、カラスかよ……びっくりさせんなっての。ハハハ……。 |
ケンタッキー | マ、マスター……。 大丈夫っすよ、俺を盾にしてくださいっす! |
主人公 | 【ありがとう】 →ケンタッキー「ど、どういたしまして!! ゆ、幽霊なんて、俺にかかれば怖くもなんともないんで……!」 【無理しなくて大丈夫】 →ケンタッキー「い、いえいえ!! 全然無理とかしてないっすから! マジで全っ然平気なんで!!」 |
ケンタッキー | ほら! み、見ててください、マスター!! |
ケンタッキー | Oh~、Kentucky~♪ The hunters of Kentucky~♪ |
突然、ケンタッキーは振りをつけながら大声で歌い出した。
主人公 | 【どうしたの?】 →ケンタッキー「俺、悪魔とか悪霊とかについて調べて気づいたんっす。 ヤツらは……楽しい気持ちがあれば寄ってこないって!」 ケンタッキー「だから、マスターも歌って踊りましょう! ほら、Oh~Kentucky~♪」 【Oh、Kentucky~♪】 →ケンタッキー「さすが、マスターっす。 楽しい場には、悪魔とか悪霊とか寄ってこないんっすよ、たぶん!」 ケンタッキー「なので、ノリノリのウキウキで歌いながら進みましょう!」 |
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ケンタッキー | Oh~、Kentucky~♪ The hunters of Kentucky~♪ |
ケンタッキーと〇〇は軽快に歌って踊りながら歩く。
ケンタッキー | ははっ、マスター! 無茶苦茶楽しいっすね! |
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ケンタッキー | そういえば、こんな風にマスターと歌って踊ったことって、 なかったかもしれないっす。 |
ケンタッキー | ……そう考えると、 こんな……アレな雰囲気の場所にも感謝っすね! |
ケンタッキー | 次は……『ケンタッキーの我が家』でスキップしますか! |
??? | ……ふふふ、楽しそう。 |
ケンタッキー | ……? マスター、今、何か言いました? |
主人公 | 【何も言ってないよ】 →ケンタッキー「空耳……すかね?」 【ケンタッキーの方こそ何か言った?】 →ケンタッキー「いや、俺も何も言ってないっすけど……。」 |
ケンタッキー | ま、いっか! それより歌ですね。 陽気なワルツでもどうっすか? |
??? | すごく楽しそう……。 ついていっちゃおう……。 |
??? | そうだね……そうだね……。 たのしい……、おー、けんたっきー……けんたっきー……。 ふふふ……。 |
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