虫。幽霊。実のところ少年は、人が怖がるものは然程怖くないことが多い。
(生きてる人間のほうが怖かったからな……)
……ちなみに、怖がってる人を見てる時、ちょっとかわいいと思ってるのは内緒。
もう、怖くないよ。大丈夫。
……ほんとは僕も、君たちの気持ちは他人事ではないんです。
いつかきっと君たちも、どこかで優しい人達と出会えますように。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
士官学校で幽霊騒ぎが起きる少し前のこと──。
スプリングフィールド、シャルルヴィル、ライク・ツーの3人は
任務の途中、山小屋で一晩を過ごすことになった。
ライク・ツー | はーぁ……。 ぼろっちい小屋だな。 けどまぁ、野宿よりはだいぶマシか。 |
---|---|
シャルルヴィル | ……でも、こういう廃墟みたいな小屋ってちょっと怖いよね。 虫だけじゃなくて、何か出そうっていうか……。 うう……。 |
シャルルヴィル | ねぇ、スフィーは大丈夫? 眠れそう? |
スプリングフィールド | ……? はい。僕は大丈夫です。 雨も風もしのげて、ベッドまであって……。 よく休めそうだなと思います。 |
シャルルヴィル | スフィー……! でもボク、スフィーにはふかふかのベッドで眠ってほしい! |
ライク・ツー | はぁ、過保護なやつ。 ほら、さっさと寝るぞ。明日も早いんだから。 |
シャルルヴィル | はぁ~い。それじゃあ、おやすみ。 |
スプリングフィールド | おやすみなさい。 |
シャルルヴィル | …………。 |
---|---|
シャルルヴィル | (やっぱり眠れない……) |
なんとか寝ようと目を閉じて横たわっていたシャルルヴィルは、
額のあたりに、むず痒いような違和感を覚える。
シャルルヴィル | (なんかそわそわする……。 今、鼻に何か当たったような……?) |
---|
シャルルヴィルが目を開けると、
眼前には天井から糸でぶら下がった蜘蛛がいた。
シャルルヴィル | ぎゃあああッ!!! |
---|---|
シャルルヴィル | ムリムリムリッ、近寄らないでっ!! 撃つからねっ!!! |
ライク・ツー | ……んだよ、うるせぇな。 |
ライク・ツー | ──って、クモぉ!? |
ライク・ツー | うわ、ワサワサ寄るなっ! 足は2本か4本で十分なんだよっ!! |
スプリングフィールド | ……。 向こうへ行きましょうか、クモさん。 |
シャルルヴィルとライク・ツーが枕や銃を手に逃げ惑う中、
スプリングフィールドはためらうことなく蜘蛛に近づく。
そして、手のひらでそっと包むと、外へと逃した。
スプリングフィールド | もう大丈夫ですよ。 |
---|---|
ライク・ツー | マジかよ。 すげぇな、お前……! |
シャルルヴィル | ありがとう! もう、ほんとにビックリしたぁ~……。 スフィーのおかげで、安心して眠れるよ。 |
ライク・ツー | そうだな。寝るか。 |
──数分後。
シャルルヴィル | ぎょええええ!!! |
---|---|
シャルルヴィル | 今度はムカデがぁぁぁーー!! 来ないでぇぇぇ!!! |
ライク・ツー | もうこんなところ無理っっ!! 俺、帰るっっ!! |
スプリングフィールド | あっ……行っちゃった。 |
スプリングフィールド | 何もしてないのに、いるだけで怖がられるって……。 なんだか複雑だね。 |
虫たちに小さく苦笑した後、スプリングフィールドは
シャルルヴィルたちを追って山小屋を出たのだった。
士官学校で幽霊騒ぎが起こり、
スプリングフィールドたちは事件の真相を突き止めるため、
深夜の校内を探索していた。
スプリングフィールド | あれ……? 窓ガラスに、何かが……。 |
---|---|
ペンシルヴァニア | 本当だ。 手形のようなものがついているな。 |
ケンタッキー | お、おい……待てよ。 見間違いじゃねぇのか? 手形って……まさか、ゆ、ゆ……! |
スプリングフィールド | 誰かが汚れた手で触ったのかな……。 明日、掃除しないとですね。 |
ペンシルヴァニア | スプリングフィールドは偉いな。 よし……俺も手伝おう。 |
ケンタッキー | だっ、だよな! 誰かが汚しただけだよな! まったく、紛らわしいことしやがって……。 |
その時、ドアが軋みながらひとりでに開いた。
ケンタッキー | ひっ!! |
---|---|
ケンタッキー | なっ、なんか今、ヘンな音が……! |
スプリングフィールド | あの教室の扉、建付けが悪くなっているのかもしれませんね……。 ペンシルヴァニアさんなら、修理できるでしょうか……? |
ペンシルヴァニア | ああ。あれくらいならすぐに直せるだろう。 今は工具を持っていないから……やるのは明日だな。 |
ケンタッキー | なっ、なんだ~~、建付けが悪かっただけかよ。 とっとと次行こうぜ! |
安心したケンタッキーが先へと進もうとした時だった。
ケンタッキー | わっ!? |
---|---|
ケンタッキー | いっ、今……髪、ヒッ、引っ張られた……!! |
ペンシルヴァニア | おかしいな……。 俺とスプリングは前を歩いていたし、ケンタッキーの後ろには 誰もいないはず……。 |
ケンタッキー | まさか、今度こそゆゆっ……! |
スプリングフィールド | うーん……帽子に髪が引っかかったのかも。 僕も時々あるけど、ケンタッキーは髪が長いから……。 |
ペンシルヴァニア | ああ、それはありそうだな……。 俺もたまに、チャームと髪が絡まることがある。 |
ケンタッキー | な、なんだ……そう、だよな……! ふぅ…………。 |
ケンタッキー | うっし。この角を曲がれば、見回りは終わり……。 |
ケンタッキー | ぎゃーー! |
ペンシルヴァニア | ケンタッキー……!? 今度は何があった? |
ケンタッキー | か、か、肩……! 肩を叩かれたんだ! でも、振り返っても誰もいねーって……! |
ペンシルヴァニア | 落ち着くんだ。 こういう時は、深呼吸をするといい。 |
ケンタッキー | おっ……俺は落ち着いてるっての! ビビッてなんかねーからなっ!! |
ケンタッキーとペンシルヴァニアが、
不可思議な現象に翻弄されている間……。
スプリングフィールド | はぁ……。 ずっと気づかないふりしてたのに……。 |
---|---|
スプリングフィールド | ……ケンタッキーの反応がいいからって、 あんまりイタズラしちゃダメだよ? |
誰もいないはずの廊下に向かって、
スプリングフィールドは困ったように小さく笑うのだった──。
幽霊騒動が無事解決したあと、
〇〇とアメリカの貴銃士たちは、
移動式遊園地へとやってきた。
ケンタッキー | おい、ペンシルヴァニア! お前には、絶対に負けねーからなっ! |
---|---|
ペンシルヴァニア | ああ……わかった。 |
ペンシルヴァニア | しかし……的が熊やウサギのぬいぐるみというのは なかなかやりづらいな……。 |
ケンタッキー | は? いつも狩りで勝負してるだろ。 |
ペンシルヴァニア | 命を大切にいただく狩猟とは……やはり少し違う……。 だが、やるからには全力で……な。 |
ケンタッキー | クッソー! 結局引き分けかよ! |
---|---|
スプリングフィールド | 2人とも、本当にすごかった……! |
ジョージ | なっ! 射的のスタッフさん、もうカンベンしてって顔してたぜ……。 |
ジョージ | 賞品たくさんGETできたし、次はゴーカートだ! んで、その次は……メリーゴーランド☆ |
スプリングフィールド | わ……これが、メリーゴーランド……! 結構、動きが早いんですね。 |
---|---|
ジョージ | おーい、マスター! スプリングフィールド! 写真撮るからこっち向いてくれよ! |
スプリングフィールド | えっ……! 今、ですか……? |
主人公 | 【一緒にポーズを取ろう!】 →スプリングフィールド「わっ、わかりました。 こう……ですか?」 【にっこり笑って!】 →スプリングフィールド「は、はい……!」 |
ペンシルヴァニア | スプリングフィールド……いい顔をしているな。 今日はここに来ることができて、本当によかった。 |
ジョージ | へへっ、楽しかったな! でもオレ……幽霊討伐隊にも参加したかったなー。 ゴーストハントなんて、めっちゃCOOLじゃん! |
ケンタッキー | ウゲッ……俺はもう二度とやらねぇからな……! |
たくさんのアトラクションを楽しんだ後、
一行は最後に、観覧車に乗り込む。
ジョージ | Wow! 意外と揺れるんだな、これ。 よーし、もっと揺らしてやるよ! |
---|---|
ケンタッキー | バッ……ジョージ、やめろ! 揺らすなっ! 落ちたらどうすんだっ! |
ペンシルヴァニア | 街を一望できて、いい景色だな……。 山からの眺めとはまた違うが……人の営みを感じられる。 |
スプリングフィールド | …………。 |
観覧車はゆっくりと、高度を上げていく。
ジョージ | お、そろそろテッペンかな!? |
---|---|
ケンタッキー | うおお、思ってたよりちゃんと高ぇな……! |
ペンシルヴァニア | 本当に、高いな。 周りに何もなくて……鳥たちが見る景色みたいだ。 |
スプリングフィールド | …………。 |
ケンタッキー | おーい、スーちゃん? どうしたんだ? |
主人公 | 【もしかして、観覧車が苦手?】 【大丈夫……?】 |
スプリングフィールド | だっ……大丈夫、です……。 |
そう答えたスプリングフィールドだったが、
顔色が悪く、足が細かく震えている。
ペンシルヴァニア | ……! 高いところが苦手だったのか。 気がつかなくてすまない……。 |
---|---|
ジョージ | ごっ、ごめん! さっきは揺らしたりして……。 |
スプリングフィールド | いっ、いえ……! |
スプリングフィールド | 僕も、最初は平気だったんです。 なのに、高くなっていくと、なんだか急に怖くなってきて……。 でも、みんなと一緒に楽しみたくて……。 |
主人公 | 【無理はしないで】 →スプリングフィールド「ありがとうございます、マスター。 次から、無理はしないでおきます……。」 【気が紛れるようなことをしよう】 →ジョージ「おっ、さっすが〇〇☆ ナイスアイディア!」 |
ケンタッキー | スーちゃん、大丈夫だぜ。 俺たちが一緒だし! |
ペンシルヴァニア | スプリングが怖くないように…… そうだな、歌でも歌うか。 |
ペンシルヴァニア | 子守歌の歌詞は……ん……? |
ケンタッキー | いや、この状況で子守歌はねぇだろ。 スーちゃん、あっちむいてホイしようぜ! |
ジョージ | でも、外の景色が目に入ったら余計に怖いかもしれないぞ? |
ジョージ | ……おっ、そうだ! オレの顔見てくれ! Let’s 百面相☆ |
ケンタッキー | うわっ、変顔ガチすぎんだろ! 普通にこえーよ……! |
ケンタッキー | お前らにはやっぱ任せられねー。 ここは俺渾身の、的を外さない話をするしかねぇな! |
スプリングフィールド | ……ふ、ふふふっ。 皆さん、ありがとうございます。 |
スプリングフィールド | (みんながいると、本当に怖いものなんてなくなるかも……) |
スプリングフィールドの震えは、いつの間にか止まっていた。
Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.
まだコメントがありません。