ペンシルヴァニアは分刻みのスケジュールが苦手だ。
弟分にひどく迷惑をかけて以来、(彼なりに)頑張ってはいるが……まだ時折「やってしまう」ことはある。
だがしかし、いざという時はお任せあれ!
さあ。大地に寝ころぼう。
風と、花と、獣の声を聴こう。
What will be, will be.
きっと我々を守る星々が、良きように導いてくれるから。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──ペンシルヴァニアとケンタッキー、〇〇は
交流・講演会に招待され、
イギリスにある海軍士官学校へと向かっていた。
ケンタッキー | やべっ、列車の出発まであと5分くらいっすよ! 急いで切符買わねぇと……! |
---|---|
ケンタッキー | えーっと、ハーバー・ロイヤル駅までの料金は2200UCだな。 |
ペンシルヴァニア | …………。 |
ケンタッキー | おい、ペンシルヴァニア。何ぼーっとしてんだよ。 さっさと切符買って乗るぞ! |
ペンシルヴァニア | 切符が必要なのか……? 乗る時か下りる時に2200UCを払えばよさそうだが……。 |
主人公 | 【切符に交換してないといけないんだ】 【乗車をスムーズにするために切符が必要だよ】 |
ケンタッキー | 乗る時に1人1人ちまちま小銭出したり お釣り渡したりしてたらいつまでたっても出発できねぇだろ。 だから切符を見せたり渡したりして、パッと乗り降りすんだよ。 |
ペンシルヴァニア | なるほど、そういうことなのか。 ありがとう、〇〇、ケンタッキー。 |
ペンシルヴァニア | それで、この機械のボタンを押せばいいんだな。 |
ペンシルヴァニアはお金を入れる前に、
2200UCと書かれたボタンを押すが、切符は出てこない。
主人公 | 【まずはお金を入れて……】 【お金を入れるとボタンが押せるよ】 |
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ケンタッキー | ったく、マスターに甘えてんじゃねぇよ! 自分で買えっての! |
ケンタッキー | つーか、お前1人でふらふらどっか行ってんのに、 切符の買い方も知らなかったってマジかよ……。 |
ペンシルヴァニア | はは……旅に出ると、車に乗せてくれる人がいるんだ。 風の向くままに歩くのもいいしな……。 考えてみると、列車に乗る機会はほとんどなかった。 |
ケンタッキー | はぁ……。 んじゃあ、この機にちゃんと覚えろ──って、 覚えたら覚えたでまたどっかにふらふら行きそうだな……。 |
アナウンス | 『まもなく、2番線に列車が到着します。 乗車するお客様は、2番線ホームにお急ぎください』 |
ケンタッキー | うおっ、急ぎましょ、マスター! |
ケンタッキー | そういや、マスターと列車旅ってのは初めてっすね! 自分、アメリカにいた時は、旅っつーか道中は仮眠ばっかで…… でも、今回は移動中もすっげー楽しみでわくわくしてるんっす。 |
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ケンタッキー | 窓の外の景色見ながら、たくさん喋って、 ときどき美味いもん食べて……とにかく、楽しみましょー! |
ケンタッキー | おっ、列車が来たみたいッスね。 切符はよしっと。乗りましょうか、マスター。 |
主人公 | 【待って、ペンシルヴァニアは!?】 【ペンシルヴァニアがいない!】 |
ケンタッキー | 本当だ……ったく、あいつ何してんだ!? |
2人が周囲を見回すと、プラットホームの片隅に、
ぼーっと佇んでいるペンシルヴァニアの姿があった。
ペンシルヴァニア | …………。 |
---|---|
ケンタッキー | おい、何やってんだ!? |
ペンシルヴァニア | ああ……すまない。 このポスターが気になってな……。 |
ケンタッキー | はぁ……!? ほら、さっさと乗るぞ! 切符はあるな? |
ペンシルヴァニア | ああ。買ったあとポケットに── |
ペンシルヴァニア | ……ん? ないな。 |
ケンタッキー | はぁぁ!? |
主人公 | 【あった!】 【足元に落ちてる!】 |
〇〇が大急ぎで切符を拾って
ペンシルヴァニアに渡し、3人は列車へと走る。
ケンタッキー | 乗りまーす!!! 乗ります乗ります!!! |
---|
ケンタッキー | ぜぇ……はぁ……なんとか、間にあった……。 |
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ペンシルヴァニア | 助かった、ケンタッキー。ありがとうな。 |
ケンタッキー | のほほんとしてねぇで、切符は肌身離さず持て! はぁ……。 |
ペンシルヴァニア | すまない……。 |
主人公 | 【でも、間に合ったから大丈夫】 →ペンシルヴァニア「ああ……2人のお陰で間に合ってよかったよ。」 【切符は自分が持っておこうか?】 →ペンシルヴァニア「そうだな……その方がいいかもしれない。」 |
ケンタッキー | マスター! 甘やかしちゃダメっすよ! 自分のことは自分でやるようにしねぇと── |
ケンタッキー | ……ふあぁ~……。 |
ケンタッキー | さ、さーせん! 気が緩んでました……っ! |
ペンシルヴァニア | 今日は朝が早かったから仕方ないさ。 それに……昨日も任務で、休んだのが夜遅かっただろう? |
主人公 | 【しばらく休んだらどうかな】 【寝てても大丈夫だよ】 |
ペンシルヴァニア | ああ。 俺が起きているから、2人とも休むといい。 |
ケンタッキー | ……本当にいいのか? |
ペンシルヴァニア | もちろん。 |
ケンタッキー | それなら、まあ。ちょっとだけ……。 |
ケンタッキーが目を閉じる。
列車の心地よい揺れで、
〇〇の瞼も重くなっていった。
ケンタッキー | …………ぐがっ。 |
---|---|
ケンタッキー | ──ん? |
ケンタッキーが目を覚ますと、
ペンシルヴァニアと〇〇は眠っていた。
ペンシルヴァニア | …………。 |
---|---|
ケンタッキー | はぁ……起きてるって言ったくせに、 ペンシルヴァニアまで結局寝てんじゃねーか。 |
ケンタッキー | つーか、今どのあたりだ? 結構寝てた感じするし、ハーバー・ロイヤルももうすぐか……? |
窓の外の景色は、緑あふれるのどかなものになっている。
ケンタッキー | (え……ここ、どこだ? フィルクレヴァートからハーバー・ロイヤルまでの間で、 こんな田舎町は通らねぇはずだよな……!?) |
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ケンタッキー | す、すんません! 今ってどこら辺走ってるんスか!? |
車掌 | グレナダを過ぎて、次はノースヒル駅ですよ。 |
ケンタッキー | ノースヒル!? ハーバー・ロイヤルは……。 |
車掌 | もうかなり前に通過してしまいましたが……。 |
ケンタッキー | ……っ!? |
ケンタッキー | ……おい、起きろ、ペンシルヴァニア!! |
---|---|
ペンシルヴァニア | ん……? あ……俺まで眠っていたのか。 |
主人公 | 【おはよう……】 【どうかした……?】 |
ケンタッキー | マ、マスター……大変なんっす。 ハーバー・ロイヤル駅を通り過ぎちまいました……! |
ペンシルヴァニア | ……! |
主人公 | 【今はどのあたり?】 【次の駅は?】 |
ケンタッキー | えっと……もうすぐノースヒル駅につくって言ってました。 |
主人公 | 【次の駅で降りよう!】 【すぐに戻ればまだ間に合うはず!】 |
ケンタッキー | うっす! |
ケンタッキー | ……つーか、ペンシルヴァニア! なんでてめぇまで寝てんだよ! 俺たちはお前を信用して──…… |
ケンタッキー | (……! 考えてみりゃ、こいつも俺と同じで、 昨日の任務で夜遅かったし、朝も同じくらいには起きてた) |
ケンタッキー | (当然、俺と同じくらいには疲れてて眠かったはずだ。 なのに、俺があくびしてたから、寝ろって言ってくれたのか? それに、俺は甘えて──) |
ケンタッキー | ……っ。 |
ペンシルヴァニア | ……すまなかった。 2人の寝顔を見ていたら、いつの間にか俺まで……。 |
ケンタッキー | ……過ぎちまったことはどうしようもねぇだろ。 俺も……完全に気ィ抜いて寝てたし、 お前だけが悪いわけじゃねぇ。 |
ケンタッキー | ほら……さっさと降りる準備するぞ。 |
ノースヒル駅で降りた3人は、
反対側のプラットホームへ走る。
ケンタッキー | あのっ! ハーバー・ロイヤル駅に戻りたいんスけど…… 次の列車って、何分後っすか!? |
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駅員 | 本当は、20分後くらいの予定なんですが…… 途中駅で車両故障があって、運行が止まっているんです。 |
ケンタッキー&ペンシルヴァニア | え……っ!? |
ペンシルヴァニア | それは……どれくらいで直りそうなんだ? |
駅員 | ちょっと大がかりな修理になると連絡がありまして…… 早くても、2~3時間はかかりそうとのことでした。 運航再開は午後3時ごろでしょうか。 |
主人公 | 【2~3時間……!?】 【流石に間に合わないか……】 |
ケンタッキー | マスター……マジですみませんっした!! |
ペンシルヴァニア | いや……謝るなら俺だ、ケンタッキー。 起きていると言ったのに……。 |
ケンタッキー | さっきも言っただろ。お前だけの責任じゃねぇ。 |
主人公 | 【自分も完全に寝ててごめん】 【とにかく先方に連絡するよ】 |
〇〇は、ラッセルに連絡を取り、
到着が大幅に遅れそうなことを伝える。
ケンタッキー | これからどうしましょっか……。 2時間も3時間もかかるなら、いっそ歩いた方が……? |
---|---|
ペンシルヴァニア | …………。 |
ケンタッキー | おい、どこ行くんだ、ペンシルヴァニア。 |
ペンシルヴァニア | こっちだ。 |
ケンタッキー | はぁっ!? ちょ、待てって……! |
ペンシルヴァニアが歩いていった先には、
色とりどりの花が咲き誇る広場があった。
ケンタッキー | すげー……。 |
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ペンシルヴァニア | いい香りだな。 列車が動くまで、ここで待つか。 |
ペンシルヴァニアは、芝生の上に寝転がる。
ケンタッキー | んな呑気なこと言ってる場合かよ! 急いでハーバー・ロイヤルまで戻らないといけねぇってのに……。 |
---|---|
ペンシルヴァニア | だが……地図を見せてくれ。 ノースヒルからハーバー・ロイヤルまで歩こうとすると、 途中山道もあって……急いでも5時間はかかりそうだ。 |
ケンタッキー | だからって、のんびり昼寝って気分にはなれねぇよ。 |
ペンシルヴァニア | When one door shuts, another opens. 寝過ごしたし、列車の故障もあったが…… 星が俺たちをこの景色に導いたのかもしれない。 |
ペンシルヴァニア | こうして待っているうちに、 案外早く列車が動き出すかもしれないしな。 |
主人公 | 【慌てても仕方がないしね】 【ここでのんびり待つしかないか】 |
ケンタッキー | それもそうっすね、マスター。 |
ペンシルヴァニア | ああ。 ほら、〇〇もケンタッキーもおいで。 |
2人も、芝生の上に寝転がる。
ペンシルヴァニア | ……どうだ? 気持ちいいだろ? |
---|---|
ケンタッキー | ふぅ……確かにな。 天気もいいし、花のいい匂いがして、空は真っ青で……。 |
主人公 | 【また眠ってしまいそう】 【本当にいいところだね】 |
ペンシルヴァニア | そうだな……。 今日は随分迷惑をかけてしまったが、 俺は、2人とこうして旅に出られて嬉しいよ。 |
ケンタッキー | ……っ、クサいこと言うなっての。 つーか、また寝過ごしたら許さねぇからな! |
ペンシルヴァニア | ああ、大丈夫さ。 こうして花を見ていると飽きないし、もう眠らない。 |
猫 | にゃー。 |
ペンシルヴァニア | ん? |
主人公 | 【ペンシルヴァニアの帽子が……!】 |
ケンタッキー | おーい、猫! それは食べもんじゃねーから返せ! |
3人は、帽子の飾りをくわえて逃げた猫を追いかける。
その先には、1軒の家があった。
ケンタッキー | ここは……? |
---|---|
男性 | おや、うちに何か用ですか? |
ペンシルヴァニア | そちらの猫が、俺の帽子の飾りを気に入ったらしく…… 持って行ってしまったんだ。 |
猫 | にゃーん! |
男性 | そうだったんですね。 この猫はイタズラが好きでね……はい。 |
ペンシルヴァニア | ありがとう、助かったよ。 |
男性 | それじゃあ、私は出かけるから──。 |
ケンタッキー | あっ、お出かけのところすんません! |
男性 | いや、急ぎではないから気にしないでくれ。 ちょっとハーバー・ロイヤルの親戚のところに行くだけなんだ。 |
ケンタッキー | えっ! |
ペンシルヴァニア | ハーバー・ロイヤルに行くのか? |
ケンタッキー | でも、列車は故障で動いてないっすよ。 |
男性 | そうなのかい? でも、私は車で行くから別に平気だよ。 |
ケンタッキー | ……あのっ、お願いがあるんっすけど……! |
主人公 | 【自分たちも乗せてもらえませんか!?】 |
男性 | うーん……2人乗りのピックアップトラックだからなぁ。 もし荷台でもいいなら、構わないんだが……。 |
ペンシルヴァニア | ああ、問題ない。助かるよ。 |
ケンタッキー | よっしゃー! やりましたね、マスター! これで時間に間に合いそうっスよ!! |
主人公 | 【よかった!】 【ありがとうございます!】 |
ペンシルヴァニア | これも星の導きだな。 |
ケンタッキー | いや、昼だし、星出てねぇだろ。 それにどっちかって言うと、猫の導きだしな。 |
ペンシルヴァニア | はは、そうだったな。ありがとう。 |
猫 | にゃ~ん。 |
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