解説

カード解説

天使のラッパはこの世の終わりを告げるものだという。
では、天使のピアノは我々に何を告げるのか──?
不吉な予感とは裏腹に、天上の音楽とも呼べる美しい調べと共に天使は尋ねる。
「リクエストはあるかな?」

心銃解説:憐れみの讃歌

哀れなる群衆よ歓喜の声を上げよ。
美しき旋律を響かせて、天命の使者が舞い降りる。
与えるは無情な救済。
致死量の祝福に灰となれ。新たな命の人柱となれ。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. ミカエルの銃

シャスポーいきなりグラウンドに集まるようにって……
何が始まるんだ?
タバティエールさあなぁ……。
一般クラスとの合同訓練とかになるのかねぇ。
恭遠みんな、急遽集まってもらってすまない。
今日は予定を変更して、特別授業だ。
ジョージ外で特別授業……!
わかった! キャンプファイヤーで焼きマシュマロだな☆
恭遠違うぞ、ジョージ。
マークスつーか、横にいるおっさんはなんだ。
恭遠マークス……おっさんはやめるんだ。
こちらは、連合軍イギリス支部のブルック中尉だよ。
ブルックここからは私が説明しよう。
君たち貴銃士には、連合軍の各国支部と協力して、
アウトレイジャー討伐などの任務に当たってもらうことが多い。
ブルックそこで、より綿密な連携が取れるようになることを目的に、
本日の授業では試験的に私が指揮をする。
ブルック連合軍と共同の任務を想定して、
私の指示に沿って訓練を行ってくれ。
ライク・ツーへぇ、実戦想定の訓練ってわけか。悪くねぇな。
シャスポーふん……どの程度の指揮なのか、お手並み拝見だね。
ブルック……ゴホン。静かに。
貴銃士諸君の銃の適性を考え、チームを組んだ。
今から発表するので、各自の役目をしっかり把握してくれ。
ブルックまず、制圧射撃にミカエル君。
そして、歩兵をジョージ君、ファル君、ライク・ツー君。
ライク・ツージョージが歩兵……まあ、絶対高貴込みならアリか。
ブルックこの編成では、分隊支援火器のミカエル君を活かし、
敵の侵攻を阻止する想定で射撃訓練を行う。
ライク・ツーなるほどな。まあ、順当で悪くねぇ。
……ミカエルが機能すれば、だけど。
ファルどうでしょうねぇ。
ブルック全員、ポジションについてくれたまえ。
では……訓練開始!
ブルック制圧射撃、始め!
ミカエル…………。
ブルック……ん?
ミカエル君、聞こえているかね? 制圧射撃だ!
ミカエル…………。
ブルックミ……ミカエル君。なぜ立ったままなのだ?
制圧射撃をしないか。君がこの作戦の要なんだぞ……!
ミカエルここにはピアノがないのだから、
僕がすべきこともない。
ブルックな、何を言っているんだ……?
ライク・ツーはぁ……やっぱこうなったか。
ブルックくっ……!
ならばライク・ツー君、君がバックアップだ!
制圧射撃開始!
ライク・ツーはいはい……。
ブルックよし、いいぞライク・ツー君。
ここで援護だ。ミカエル君! ……ミカエル君!?
ミカエル蝶の羽ばたき……音のないものを曲に起こすには……?
ブルックどこを見ているのだね?
早く銃を構えないか……!!
生徒1あの……失礼します!
自分がミカエル様に代わり、制圧射撃をやります!
いえ! やらせてください……っ!
ミカエルそう、よろしく。
生徒1……っ! ありがたき幸せ……!
頑張りますっ!!
ブルックいや、待て待て! 待ちたまえ!!
何故、ミカエル君が撃たないのだね!?
そもそも君はいつの間に訓練場にやってきた!?
ジョージ……そういや、ミカエルが自分で銃を撃ってるとこ、
見たことないな~。
なぁ、たまには撃ってみようぜ☆
ミカエル僕にとって銃を撃つことよりも、
ピアノを弾くことの方が重要なのだけれど。
ミカエル……でも、そうだね。
どんな響きなのか、少し興味がある。
ジョージそれじゃ、やってみようぜ!
生徒1では、自分は失礼して……。
ミカエル様、どうぞ!!

ミカエルは、銃の引き金にそっと指をかけた。

ミカエル……わっ。

きちんと構えず引き金にだけ触れたために、
反動で銃が跳ね上がる。

ライク・ツーちょっ……! おい!
突っ立って銃もしっかり持たずに撃つんじゃねぇ……!
ちゃんと射撃姿勢を取れ!
ファル……彼、一度でも銃を撃ったことがあるんですか?
とても、あるようには思えませんが。
ライク・ツー前に任務には行ったことあるって聞いたけど……
銃をまともに使ったかどうかは怪しいな。
……やばいんじゃねぇの、これ。
ジョージうわぁっ! 銃口どっち向いてんだ、あれ!
皆、伏せろーっ!

ハンド上ランダムに動く銃から、弾が発射されていく。

ブルックひいいっ!? や、やめ! 射撃やめーい!!
仲間を殺す気かね!?
ライク・ツーおい、やめろっての! ミカエル!!

近くにいたライク・ツーとファルが、
銃を押さえつつミカエルを引き離して銃撃を止めた。

ミカエル…………。
ファルミカエルさん、大丈夫ですか?
ミカエル…………。
こんなに激しい鼓動は、初めてだ……さすが、僕の銃だね。
ふふ、新たな音に出会えた……。
ブルック一体なんだったのだ……。
貴銃士とはこういうものなのか……?
ブルックはぁ……とても私の手には負えそうにない。
グランバード氏は一体どうやって彼らを指導しているのだか……。

Ep2. 機関銃の進化

──ブルック中尉による訓練2日目。

ブルック本日は機関銃についての訓練だが……。
その前に、機能の訓練のおさらいをしよう。
ブルック制圧射撃とは何か。
ずばり答えられる者はいるかね。
ローレンツ俺が答えるとしよう。
制圧とは、威力をもって相手を押さえつけること。
ローレンツ制圧射撃とは、相手の動きを制限することを主な目的とした、
機関銃などの火器によって行う攻撃である。
目的はあくまで制圧であり、命中はあまり重視されない。
ローレンツフッ……Q.E.D.
ブルックQ.E.D.は不要だが……まさにその通り。
さすが、ローレンツ殿は博識でおられる。
十手なるほどなぁ。
しっかり狙いを定められていなくとも、
連射されていると迂闊には動けない。効果は十分というわけか。
ブルックさて、おさらいはこれくらいにしておこう。
これより、分隊支援火器を使った訓練に入る。
今回は軍用銃を使ったことがない貴銃士諸君をメインに行おう。
ブルックカトラリー君、カール君、十手君は前へ。
ミカエルおや……? 僕はいいのかな。
ブルック……っ!
ミカエル君は、他の貴銃士のアシストをしなさい。
ただし、くれぐれも君自身は決して! 撃たないように!!
ミカエルそう……わかった。

ミカエルが銃からやや離れた場所に移動すると、訓練が始まる。

ブルックでは機関銃の操作から始めよう。
まずは、持ち上げてみてくれ。
カトラリーうわっ、何この重さ……!
こんなの僕が持てるわけないじゃん!
十手むむっ……かなりの重さだなぁ……。
これを担いで長い距離を歩くのは大変そうだ。
ブルックそう。今体感してもらったように、機関銃は重い。
20~40kg程度の重量がある。
カール砦なんかの防衛には適しているだろうけど、
攻勢に持ち込むには実用的とは言い難いねー。
ブルックその通りです、カール閣下。
ブルック敵地に前進していく歩兵をサポートするには、
ライフルより多くの弾をばら撒け、なおかつ軽い銃がいい──
そんなないものねだりに答えたものが、こちらだ!
ライク・ツー……昨日の衝撃でテンションおかしくなってねぇか?
カトラリーあ、ミカエルの銃……!
ブルックさあ、KB MNMを持ってみてくれ。
十手おお……さっきの機関銃と比べると、ずいぶん軽いなぁ!
ブルックそうだろうとも。
KB MNMは200発装填してもなお10kg前後なのだ。
ミカエル……ねぇ。
ブルックどうしたのだね、ミカエル君。
何か補足することが?
ミカエルきみ……僕のことをよく知っているね。
褒めてあげる。
ブルックなに、兵士や銃火器それぞれの特徴を知り、
適切に運用するのは、将校として当然のことだ。
ミカエルそう……。
ところできみ、その調子でもう少ししゃべってくれないかい?
ブルック何故だ?
ミカエル声が聴きたいんだ。
きみの声は……川のせせらぎのようで、耳に心地良くてね。
ミカエルピアノを弾けない時間は退屈だと思っていたけれど、
きみが喋っていてくれるのなら、悪くはなさそうだ。
ブルックう、うむ……では、教科書の朗読でも……。
声の調子を整えるので、少し待ってくれ。
あー、あー……ごほんっ……。
ブルックでは、分隊支援火器の作られた経緯について……。
ミカエル……うん、よく眠れそうだ。
十手さ、さすがに堂々と寝るのはまずいんじゃないかい!?

 

Ep3. ミカエルと八九

──ある日の士官学校にて。

恭遠今日の授業では、それぞれの銃について考えてみよう。
世界には新旧いろんな銃があるが、すべてに共通することがある。
それは、弾がなければ銃として使えないということだ。
シャルルヴィル確かにそうだね……。
シャルルヴィルボクとかジョージは、銃剣を付けて槍みたいにしたり、
銃床は鈍器として使えたりするけど、
それは”銃として”の使い方ではないし。
恭遠そこでこの時間は、弾切れを起こさないための工夫を
各自考えてみてくれ。
ベルガー弾切れってクッソイラつくよなぁ!
弾切れを撃ちてぇのに弾が切れてっから撃てねぇしよぉ。
ローレンツ弾切れという事象を撃ち抜こうという思考になるか……。
モルモット1号の認識能力について、メモを加えておこう。
ケンタッキーはぁ~あ。
これだから数撃ちゃあたる戦法のヤツはダメなんだよなぁ。
ケンタッキー手持ちの弾数から逆算して作戦組み立てんのは常識だろ。
ワンショット・ワンキルを貫くからには、
俺はトーゼン、何発持ってて何発使ったか把握してるぜ。
ベルガーあ? 俺の銃はすっげぇから、
チマチマ数えらんねーくらいドバババンって撃てるんでぇ~す!
ケンタッキーんだと? スナイパー舐めんなよ長耳!!
恭遠こら、そこ。喧嘩しない!
弾切れを起こしてしまった時の対処法についても考えてみよう。
ベルガーはぁ~?
んなもん、そこらへんの兵士から奪えばいいだろ。
ケンタッキー都合よくお前の銃と同じ弾使ってるヤツがいるとは限らねぇだろ。
ベルガーんぇ? マジ?
八九はぁ……バカだってわかってんのに、
毎度お前のバカさは想定を超えてくるな……。
ベルガーああ? じゃあお前はどうすんだよ!
八九俺は……ミカエルからもらうぜ。
どうせあいつは撃たねぇだろうし。
俺らはほら、弾と弾倉の規格が共通だからな。
カトラリーえ、そうなの?
ベルガー弾もらえるだけでドヤ顔かよ。
うわー、引くわぁー。
八九べ、別にドヤってねぇし!!
カトラリーねぇ、八九がミカエルの弾を使えるってことは、
ミカエルも八九のを使えるってこと?
ミカエルどうなんだろう。
今度やってみようか、八九。
八九いや……やめとけ。
MNMは俺の弾倉を使うとなぜか暴発するらしい。
だから、自衛軍では禁止されてるぜ。
ミカエルおや、そうなの?
グラースへぇ……要するに片想いってことか。
受け入れられねぇ想い……惨めなもんだな。
八九はぁ? 想い関係ねーだろ、弾倉の話だっての!
ベルガーあひゃひゃひゃ!
オマエ、ドーテーだもんな!!
八九もっと関係ねぇぞ、クソが!
八九ったく、好き勝手言いやがって……。
ミカエル、お前も少しは怒れよ。
ミカエル…………。
八九おーい、どうした?
ミカエルん……少し考え事をしていたんだ。
僕の弾倉を八九に貸して、それを返してもらって使ったら……
どうなるんだろうね。
八九さあ……?
元はミカエルのなんだし、平気なんじゃね……?
八九まあでも、やってみて暴発して、
お前がどっか壊れちまったりしたら怖ぇから、やめとくわ。
ミカエルそう……残念。少し興味がそそられたのだけれど。
諦めるしかなさそうだね。

Ep4. ミカエルの役目

ニャ、ニャ……ッ!
ベルガーおっ? 猫はっけーん。
何追いかけてんだ?
ベルガー……うげっ!
まさかアルパチーノを狙ってんじゃねーだろうな!
ベルガーおいっ! 猫!!
俺のトモダチに手ェ出すんじゃ──
フーッ!!

ベルガーが近づくと、猫は驚いて逃げてしまった。

ベルガーアルパチーノ──
……って、ちげーじゃん! バッタかよ。
ベルガー動かねぇ……もう壊れちまったのか。なーんだ。

ベルガーがバッタを放り投げた方にはミカエルがいて、
動かないバッタを前にし、立ち止まった。

ミカエル……虫?
ベルガーそ。もう壊れちまってるから、触ってもつまんねーぞ。
ミカエルそうかな。

ミカエルがバッタを拾い上げた途端、
死んでいたはずのバッタが勢いよく跳ね、
草むらの中へと逃げていった。

ベルガーマジかよ、生き返った!?
カッケー!
ミカエル生き返ったのではなく……仮死状態になっていたんじゃないかな。
猫はただ、いたぶって遊んでいただけだね。
殺すつもりではなくて……。
ミカエル…………。

革命戦争時代のこと──。
ミカエルがピアノ奏でる中、戦闘が行われていた。

レジスタンスうわぁぁぁぁっ!
世界帝軍兵士1よし、やったな……。
世界帝軍兵士2ああ、さすがミカエル様の銃だ!
これだけ撃てば、さすがにレジスタンスの奴らも全滅だろ。
レジスタンスうぅ……っ。
世界帝軍兵士1……っ!? お、おいっ!
あいつ、立ち上がってるぞ!
世界帝軍兵士2馬鹿な! 確かに命中したはずだぞ!
あいつら、人間じゃねぇのか?
世界帝軍兵士1いや、怪我はしているから確かに当たってはいるぞ。
それが動きを止めることに繋がってないんだ……!
レジスタンスうおおおおおっ!

立ち上がったレジスタンスが、火炎瓶を投げてくる。

世界帝軍兵士1ッ!! 避けろ!!
世界帝軍兵士2駄目だ! 間に合わないっ!

ミカエル…………。
ミカエル(今、一瞬よぎったのは……記憶の残滓かな)
ベルガーへぇ~確かに遊ぶなら、殺しちゃもったいねーよな!
俺が猫でも同じことするぜぇ。あひゃひゃっ!
ミカエルそうだね……。
ミカエル(僕の役目も、たぶん……)

Ep5. 音色至上主義

──ある日の午後。

ミカエル…………♪
ミカエルふふ……ここのピアノは素晴らしい音色だな。
ミカエルあと2、3曲弾いてみようか……。
おや。でも、外が暗い……今は何時なんだろう。
ミカエル一度、部屋に戻ろうか……。

ミカエルが廊下に出ると、『ミカエル様へ』と書かれた
クッキーが置かれていた。

ミカエル……?
ミカエル(僕宛てのようだし、持ち帰っておこう)

──数日後。
〇〇とカトラリーとミカエルは、
休日を街で過ごしていた。

ミカエルおや……見たことのない花だな。

文房具屋に行く途中、ミカエルは花屋に目をとめて立ち止まる。

カトラリーミカエル?
僕たちあそこの文房具屋を見てくるけど……。
ミカエルそう。行っておいで。
僕はここにいるから。
カトラリーそっか……わかった。
飽きたらお店に来るか、ここから動かないでね!

〇〇とカトラリーが手早く買い物を済ませて戻ると、
ミカエルが身動きできないほどたくさんの花に埋もれていた。

カトラリーえっ……、ちょっ、何これ……!?
僕たちがいなかったほんの10分くらいで何があったわけ!?
主人公【どうしたの!?】
【大丈夫!?】
ミカエル平気だよ。
絵のモデルになってくださいと花を渡されて……。
そうしたら、道行く人たちもどんどん花をくれたんだ。
カトラリーえ……それで、こんなになるまで断らなかったの?
ミカエル花はいい匂いだし、気分はいいよ。
カトラリーそ、そう……。
カトラリーミカエルは天使だもんね。
花を捧げたくなる気持ちはわかるけど……。
これはやりすぎって言ってもよかったんじゃないかな……。
主人公【ミカエルが怒ることってあるのかな】
【ミカエルはなんでも受け入れてしまうのかな】
カトラリー…………。

──数日後。
ミカエルはいつものようにホールでピアノを弾き、
それをカトラリーと〇〇が鑑賞する。

ミカエル…………♪
生徒1ああ……ミカエル様……。

ピアノの音色に聞き惚れていたファンの生徒は、
夢遊病のようにふらふらとピアノに近づき──
うっとりするあまり、手に持っていた花瓶を落としてしまう。

生徒1あ……っ! す、すみません!
ミカエル鍵盤に……水が……。
ミカエル……っ!
カトラリーミ、ミカエル! 落ち着いて!
こんな場所で力を使ったら、ピアノが壊れちゃうよ!
生徒1ひいっ!?
す、すみません……っ!
主人公【早く水を拭かないと!】
カトラリー僕、布巾を取ってくる……!
〇〇はここにいて、ミカエルを見てて。

大急ぎでピアノを拭いたあと、
調律師を呼んでピアノの調子を確認してもらう。

調律師……素早く汚れと水分を拭きとってくださったので、
あとは時間をかけてしっかり乾燥する必要がありますね。
調律師ただ……乾燥が完了しても、
鍵盤の吸湿による変化が出る可能性はありますので……
後日、またケアしに来ます。
ミカエル…………。

その日以降、ミカエルがピアノを弾いている時は、
〇〇と一部の貴銃士を除き、
誰も入れなくなった。

カトラリーふふふ、士官学校でも天使の調べを独り占めできるなんて、
僕ってばラッキーだよね。
ミカエル今日は何がいい?
遠慮なくお言いよ。
カトラリーうーんと、ミカエルの好きな曲!
ミカエル……そう。

ミカルはレクイエムを弾き始める。

カトラリー(天使は優しい曲を奏でるだけの存在じゃない。
時に冷酷で、咎人を罰する存在でもあるんだ……)

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