貴銃士たるもの、大切なマスターの死の危機には、出来得る限りの最善を尽くすべきである!
彼の強い思いに感銘を受けた「何者か」が、なんだかすごい退魔の力を彼に授けたのだ。
ええ、この聖なる僕にお任せを!
大切なマスターが口にするもの、触れるもの、纏うもの、全部全部聖別・浄化していきますよ!
ええ、ええ。お喜びください!
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──ある日、ドーリィという人形を拾った〇〇は、
怪奇現象に悩まされ始める。
心配したエンフィールドは、ドーリィを預かることにした。
エンフィールド | 〇〇さんに任せていただいたからには、 ドーリィさんを完璧に保存・管理しなくては……! |
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エンフィールド | いずれ〇〇さんか持ち主に返すことを考えると、 宿っていると思われる悪い魂を排除するか、 改心させる必要があるから……。 |
エンフィールド | そうだ! 健全な精神は、健全なものに宿ると言うし、 まずは見た目を綺麗にしよう! |
エンフィールドは、洗濯洗剤を溶いた水の中にドーリィを入れ、
じゃぶじゃぶと洗い始める。
エンフィールド | わっ、水が黒くなっていく……! かなり汚れてたんだなぁ。 一度すすいで、次はフローラルな香りの洗剤を使おう。 |
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二度洗いをしたドーリィを干して乾かしたあと、
エンフィールドはほつれていた服やボタンを直した。
エンフィールド | うん、綺麗になった! でも、まだまだだ! |
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エンフィールド | 次は……魔除けのセージの葉を焚いて清めてみよう。 |
ドーリィ | …………! |
エンフィールドがセージの葉に火をつけると、
瞬く間に部屋に煙が充満した。
強烈な香りとともに、ドーリィは燻されてしまう。
スナイダー | おい、エンフィールド……! 火事……ではなさそうだが、なんだ、この匂いは。 |
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エンフィールド | おかえり、スナイダー。 今、浄化のためにセージを焚いているんだ。 |
スナイダー | 浄化だと? 臭い。窓を開けろ。 |
エンフィールド | ああっ、ちょっと! |
スナイダー | なんだ。換気をしてやったのに、文句があるのか? |
エンフィールド | これは、〇〇さんのためなんだよ!? この人形が悪さをやめて、〇〇さんが安心して── |
エンフィールド | あっ! いいことを思いついた! 薬草園に行かないと……! |
エンフィールドは部屋を飛び出し、
あっという間に走り去ってしまった。
スナイダー | 騒がしいやつだな……。 |
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スナイダー | ん……? なんだ、この人形は……。 |
スナイダー | ちょうどいい。 これを的にしてやろう。 |
ドーリィ | ……!! |
スナイダーに持ち出されたドーリィは、
人気のない森の中で試し撃ちの的にされていた。
スナイダー | さて、始めるか。 |
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スナイダー | ……ん? 今のは当たるはずの軌道だが……。 |
狙いを正確に定めたはずが当たらず、
スナイダーは首を傾げながら次弾を装填する。
銃を構えて再び狙いを定め、引き金を引く直前──……
葉っぱが一気に舞い落ちてきて、
スナイダーの視界を遮る。
スナイダー | なんだ……? まあいい。次こそ当ててやる。 |
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──パァンッ!!
ドーリィ | ……!! |
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銃弾は、ドーリィを貫いたはずだった。
しかし……ドーリィは無事なまま、静かに切り株に座っている。
ただし、その位置は一瞬のうちに20cmほど移動していた。
スナイダー | こいつ──……動いたか? |
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スナイダー | おい、動くな。 大人しくしていろ。 |
スナイダーは、木に巻き付いていたツル性の植物を剥がし、
それをロープ代わりにして、ドーリィを木の幹に縛り付ける。
スナイダー | よし、これでいい。 |
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エンフィールド | ちょっ……スナイダー!? 何をやっているんだ!! |
スナイダー | こいつを的に、試し撃ちをしていた。 |
エンフィールド | な、なんだって……!? この人形は、〇〇さんから預かった大切な物なのに! |
スナイダー | こんなものが大事なのか? あいつの考えは、時々よくわからんな。 |
エンフィールド | ああもう、せっかく綺麗にしたのに、こんなに汚れて……! いいかい? 人の物を勝手に持ち出してはいけないよ。 |
エンフィールドはドーリィを解放して奪い返すと、
大急ぎで寮に戻ったのだった。
寮に戻ったエンフィールドは、
もう一度ドーリィを洗濯・乾燥した。
エンフィールド | よぉーし、最後の仕上げだ! |
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エンフィールドは鼻歌を歌いながら、裁ちばさみと裁縫道具、
ドライラベンダーや布などを机の上に並べた。
エンフィールド | これでサシェを作って、ドーリィの中に入れれば…… ふふつ、〇〇さんもきっと、 穏やかに眠ることができるはず! |
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エンフィールド | えーっと、まずはどこを切ろうかな。 背中……いや、おなか側がいいかな。 中の綿はちょっと取る方がすっきり──…… |
エンフィールド | うぐっ!? |
本棚から辞書が飛んできて、エンフィールドの頭に衝突する。
エンフィールドが昏倒すると……
ドーリィは密かに、〇〇の部屋へと戻ったのだった。
ドーリィを拾ったことで悪魔に魂を狙われる羽目になった
〇〇を救うため、
エンフィールドはエクソシストのいる教会へと走った。
エンフィールド | ──……というわけなんです。 どうか、お力を貸していただけないでしょうか……! |
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神父1 | ……なるほど。 そういった話は以前にも聞いたことがある。 |
神父2 | 人の生魂を奪っては、新たな獲物を求めて彷徨う邪悪な悪魔…… あなたのマスターを狙っているのも、 おそらくその類のものでしょう。 |
エンフィールド | では、すぐに悪魔祓いを── |
神父1 | ううむ……申し訳ない。 この時期は依頼が多く、重要度が高い案件も多い。 人手不足で、エクソシストがすぐには派遣できない状況なんだ。 |
エンフィールド | ですが、一刻の猶予もないんです……! そうだ! 僕にここで修行をさせてください! 僕が代理で悪魔祓いの術を習得しますので!! |
神父1 | 君が、悪魔祓いを……? やめておきなさい。半端に手を出しては危険だ。 |
エンフィールド | いえ、絶対にやらなくてはなりません。 マスターのために……! |
神父2 | …………。 その曇りなき瞳……悪魔と戦う覚悟がおありのようですね。 |
神父2 | ならば、エクソシスト養成講座7日間コースを──…… |
エンフィールド | 7日もかけていられません……! 不眠不休でいいので、なんとか最短でお願いします!! |
神父1 | えっ……? ……でも不眠不休だと、講師も……。 |
エンフィールド | マスターの命がかかっているんです……! なんとか! 無理は承知の上ですが、どうかお願いします!! |
神父1 | わ、わかった。 そこまで言うなら、戦い方を重点的にレクチャーしよう。 |
神父2 | ここから先は、地獄のような修行になりますよ。 本当によろしいのですね? |
エンフィールド | ええ、もちろん構いません! よろしくお願いします! |
そうして、不眠不休のエクソシスト養成講座が始まった。
──3日後。
神父1 | ぜぇ、はぁ……。 この修業に君が耐えられるとは、予想外だった……。 |
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エンフィールド | 確かに、悪魔の精神操作に対する防衛術は 習得するのが大変でした……。 |
エンフィールド | (でも、スナイダーに改造される恐怖や、 〇〇さんを失う絶望に比べれば これしきのこと、大した苦痛じゃない……!) |
神父2 | エンフィールドさん。 厳しい修行によく耐え、頑張りましたね。 あなたが無事、悪しき魔との戦いを終えることを祈ります。 |
神父1 | 我々が教えられることは以上だ。 旅立つ前に、エクソシストとしての装束を渡そう。 |
エンフィールド | 素敵ですね! 布地や装飾からも特別な力を感じます……! |
エンフィールド | しかし……。 なぜでしょうか。何かが足りない気がして……。 |
エンフィールド | ん……? 何か、ビジョンが……。 |
神父1 | ビジョン……? なんだね。 |
エンフィールド | 大きな十字架です……。 日輪のような飾りがついていて、とても大きい…… あしらわれているのは……緑色の宝石……? |
神父たち | ……!! |
神父1 | な、なぜそれを……!? それは、こが教会に伝わる最強の聖具……! |
神父2 | 神の導きでしょうか……。 エンフィールド君、君に聖具を授けます。 持ってお行きなさい。 |
エンフィールド | ええ……! ありがとうございます! 必ず修行の成果を出してみせます! |
エンフィールド | 待っていてください、〇〇さん……! 今、僕が助けに行きます……! |
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こうして、エンフィールドは士官学校へ向けて
出立したのだった──……。
悪魔祓いが行われ、ドーリィ事件が無事解決してから数日──。
エンフィールド | あ、〇〇さん。 僕はこれから少し出かけてきますね。 |
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主人公 | 【どこに行くの?】 【買い物か何か?】 |
エンフィールド | 教会へ、お借りした衣装と十字架を返しに行くんです。 数時間で戻ります。 |
ライク・ツー | ……お前、最近なんか静かだよな。 悪魔騒動は解決したのに……引っかかってることでもあんのか? |
エンフィールド | いえ、そういうわけでは……。 ただ……僕は、あの悪魔に勝てませんでした。 〇〇さんの力になれず、悔しくて……。 |
主人公 | 【そんなことない】 【力になってくれた】 |
エンフィールド | 〇〇さん……ありがとうございます。 あなたは本当に優しいお方ですね。 だからこそ、もっと役に立てたらと思ってしまい……。 |
ライク・ツー | つーか、お前がたった数日修行しただけで 本職のエクソシストと同じことができるわけ── |
エンフィールド | ──ですが! くよくよしてはいられませんね。 〇〇さんに加護があるよう、 祈りを捧げさせてください! |
エンフィールド | 汝、灰の沼を渡るとも、死の谷を歩むとも恐るることなかれ……。 いついかなる時も、汝の魂は神の御心のもとにあらん。 神よ、どうかこの者──〇〇を守り給え……! |
主人公 | 【ありがとう!】 【とても清らかな気持ちになった】 |
エンフィールド | 本当ですか!? |
エンフィールド | ふふっ! 修行した甲斐がありました……! これからは毎日、あなたのために祈りを捧げますね! ですのでどうか、ご安心ください。ええ! |
ライク・ツー | はぁ……変な方向に張り切りだしたな。 |
──数日後。
マークス | マスター、ハーブティーを持ってきたぞ! 今日は特にブレンドが上手くいったんだ! |
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エンフィールド | ハーブティーですか。 僕が聖別してから、〇〇さんにお渡ししますね! |
マークス | なんだ? |
エンフィールド | 祈りを捧げるんです。 〇〇さんが口にするものですから、 聖なる力を高めた方が──……。 |
マークス | おい、ハーブティーが冷めるだろ。 温かいものをマスターに……おいっ! 聞け!! |
──翌日。
ケンタッキー | マスター! ブレスレット作ったんで、オソロで使いましょ! |
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エンフィールド | お待ちください。 マスターが身につける前に、僕が聖別しますね。 |
ケンタッキー | あぁ? |
エンフィールド | こうすることで、マスターへのご加護が増しますから。 |
ケンタッキー | そんな効果あんのか……? ならまあ、頼んどくか。 |
その後も、エンフィールドによる聖別の習慣が続いた。
ジーグブルート | ……なんだありゃ? 〇〇の食うもん触るもんにいちいち祈って……。 |
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エルメ | この間の騒動がよほど堪えたのかな。 でも、ちょっと……度を越してる感じがするね。 |
ジーグブルート | あれが“ちょっと”かぁ……? タバティエール、てめぇもなんか文句言えよ。 作った料理が冷めるまで祈祷されてただろ。 |
タバティエール | はは…… えも、エンフィールドくんが善意でやってることだからなぁ。 |
そんなある日──。
在坂 | マスター。 在坂はアイスクリームを持ってきた。 一緒に食べるといいだろう。 |
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エンフィールド | ちょっと待ってください! 聖別がまだですよね? |
エンフィールド | 汝、神の御心のもとに……! |
在坂 | あ……。 |
在坂 | アイスが溶けて……ぐにゃっとしてしまった……。 |
八九 | うおおおおっ……やべぇぞ、お前……! 邑田にバレたらべっこべこのボッコボコにされんぞ……! |
主人公 | 【聖別はほどほどにしよう……!】 【聖別はもう大丈夫だよ!】 |
エンフィールド | え……それは、どういうことですか? |
八九 | あ~……ほ、ほら! |
八九 | 何かあっても、エンフィールドとかマークスとか、 モンペェ……門兵みたいに頼もしい貴銃士が守るから 大丈夫ってことだ。だから、聖別は──…… |
エンフィールド | なるほど。 やつくらいなら聖別は不要というわけですね。 今後は、朝昼晩の食事だけにしましょう! |
在坂 | ……在坂は、エンフィールドはよくわかっていないと思う。 |
八九 | ああ……俺もだぜ……。 |
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