【伏して睨む】スナイダー

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解説

カード解説

これは遠い記憶の欠片。イギリスでの、彼らの物語の前日譚。
歪に捩れた兄弟銃の思惑は、秘匿された地下室に鬱積する。
「己惚れるな。いつまでも大人しくしていると思ったら大間違いだ──」

心銃解説:変転、そして制圧

征服したとでも思ったか?
俺が折れたとでも思ったか?
……は。笑わせてくれる。
結局お前も俺の手の上だ。
すぐに、俺の色に染めてやる。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. 謎の強敵

これは、〇〇たちが
イギリスの招待されるよりも前の話──。

エンフィールド……!
スナイダー…………。
???お目覚めでしょうか?
我が国の、新たな貴銃士様──
エンフィールドはじめまして、マスター!
???……あなたのマスターは私ではなく──
スナイダー(これが腕……ここが足……
なるほど、こう動くのか)
エンフィールド──の取れた身体つきだと思いまして。
そんな方が、僕のマスターになってくださる
なんて光栄──
スナイダーほう……。

スナイダーが手に入れたばかりの肉体を確認している間、
2人の男とエンフィールドは、何やらずっと話し続けている。

スナイダーおい、くだらん話は十分だ。
スナイダー俺たちを召銃した目的を言え。
すぐに終わらせてやる。
エンフィールドこら、スナイダー!
ダメだろう? 初対面の方々だよ。
アッカーソンこれは失礼を。話を先へ進めましょう。
我々があなた方に望むことは1つ……。
アッカーソン絶対高貴の力で、
イギリスを支えていただきたい……!
エンフィールドお任せください!
このエンフィールド、
必ず絶対高貴の力を使いこなしてみせましょう!
スナイダー…………。

エンフィールドスナイダー。さっきの態度、良くないよ。
君は僕にとっては弟みたいな存在なんだから、
ちゃんと注意していくからね!
スナイダー……弟、か。

数日後──。
スナイダーは、最近出没するという正体不明の強敵を
探すために、1人で城の外へと足を運んでいた。


ロナルドお2人のマスターに選ばれたこと、
大変誇りに思います!
必ずや、共に絶対高貴への道を開きましょう!

スナイダー……俺は、俺の役目を果たすまでだ。
スナイダー……ッ!

木々の奥から何者かの視線を感じ、
スナイダーは警戒をより強める。

スナイダー…………。
アウトレイジャー……殺、ス……。
スナイダー自ら撃たれに来るとはな。

スナイダーは素早く銃を構え、
敵の頭に狙いを定めて引き金を引く。
放たれた銃弾は寸分たがわず。標的を撃ち抜いた。

アウトレイジャーウ……ガァ……。
スナイダー並みの強さではないと聞いていたが……
拍子抜けだな。

興味を失い、スナイダーが立ち去りかけた時だった。

アウトレイジャー……殺ス……!
スナイダー……!?

頭部を損傷して倒れたはずの敵が、
何事もなかったかのようにゆらりと立ち上がる。

スナイダーほう……少しは骨があったというわけか。

──十数分の戦闘の末、
スナイダーは謎の敵を撤退させるに至ったが、
自らも負傷して、ぐったりと木に寄りかかっていた。

スナイダーはぁ……、はぁ……。
あれは、一体なんだったんだ……?
スナイダーあらゆる急所を撃っても、すぐに動き出す。
不死身なのか……?

未知なる敵を倒す方法について
考えを巡らせるスナイダーだったが、
やがて、視界にモヤがかかり始める。

スナイダー(くそ……血が止まらない……
前が……見え……な……)

エンフィールド……スナイダー?
出てきてくれ! おーい!
エンフィールドまったく、一体どこまで行っ──
エンフィールドあっ!
あれは……スナイダー!?

スナイダー(ん……? この感覚は……)

スナイダーがゆっくりと目を開けると、
真っ先に視界に入ってきたのは、
エンフィールドの心配そうな顔だった。

スナイダー……なんだ。
エンフィールドなんだ、じゃないよ!
いなくなった君を探して森に入ったら
銃に戻っていて……僕がどんなに驚いたことか……!
エンフィールド大急ぎでマスターのとろこに君を運んで、
再び召銃してもらったんだからね!
エンフィールド森で一体何があったんだい?
勝手に戦ってたみたいだけど、
君が銃に戻るほどの深手を負うなんて……
エンフィールドまさか、例の正体不明の難敵ってやつと
遭遇したのかい……?
スナイダー(そうか、俺はあのあと……)
スナイダー奴を倒すにはどうすればいい……。
肉体を損傷しても駄目なら、
銃を狙ってみるか……?
エンフィールドはぁ……僕の話を全然聞いていないことはわかったよ。
その様子だと、反省なんてこともあり得なそうだ。
エンフィールドまったく、1人で無茶するなんて……。
本体が修復不能なまでに壊れたら、僕たちはたぶん、
もう2度と貴銃士として目覚められない。
エンフィールド貴銃士になれない壊れた古銃なんて、
きっとお払い箱だ。
破棄されてしまうことになるんだよ?
スナイダー……黙れ。
次はこんなことにはならない。
エンフィールドはぁ……。
頼むから、少しくらい僕の言うことを聞いてくれよ。
ロナルドまあまあ……とにかく、良かったではないですか。
スナイダー殿もこうして無事──
ロナルドうっ……!
エンフィールドロナルドさん!? 大丈夫ですか!?
ロナルド突然、痛みが……!
…………。
ロナルドは、はは……すみません。
安心して、気が緩んだようで……。
なんともないので、ご心配なさらず。
エンフィールドですが……。
スナイダーフン、人騒がせな奴だ。
エンフィールドなっ、君がそれを言うかい!?
大体、マスターの心労は君のせいだろう!
まったく、君はどうして──!
ロナルドははは……。
…………。

Ep2. 力への渇望

エンフィールドこら! スナイダー!
今日という今日はもう許さないよ!
スナイダーチッ……。
エンフィールドさっきの君の態度はなんだい?
せめて公式の場では、イギリスの紳士として、
礼儀正しくみんなに接するべきだろう!
エンフィールド僕たち貴銃士を気にかけてくださる人たちの前で
溜息をつくなんて、言語道断だよ!
スナイダー俺は銃だ。
人間どもの御機嫌取り用の玩具ではない。
銃に愛想を求めるな。
エンフィールドマスターたちの迷惑にならないように、
最低限の礼儀は身につけておくべきだと言ってるんだ!
エンフィールド大体、君は食事のマナーから問題がありすぎる。
シェフが丹精込めて作った料理を「ベトベトしている」
とか言ってほとんど何も食べないし!
エンフィールドもうマナー以前の問題だ!
僕たちは貴銃士という力ある者として、
ノブレス・オブリージュの精神を持って──
スナイダー…………。
エンフィールドあっ、待て! スナイダー!!

スナイダー(銃が人間の真似事をするなど薄気味悪い。
エンフィールドは楽しいなら好きにすればいいが、
俺にまで同じことを求めるな)
スナイダー(それよりも……力だ。
あのわけのわからん敵をも蹴散らせる、
圧倒的な力を手に入れたい……)
スナイダー次こそ、必ず倒す……。

アウトレイジャー全テ、ヲ……破壊スル……。
スナイダー…………。
アウトレイジャー……殺、ス……。
スナイダー……くっ!
スナイダー……もっとだ。もっと戦って、俺は……!
アウトレイジャー殺ス……!
スナイダーはぁ、はぁ……くそっ!
なぜこれだけ戦っても目覚めない!
???おーおー、絶対高貴にもなれねぇ古銃が
必死に頑張っちゃって笑えるなぁ!
スナイダーなんだ、おまえは。

突如として訪れたその出会いは、
スナイダーに新たな選択肢を
もたらすことになるのだった──。

 

Ep3. 始まりの夜

──ある日の夜。
イギリス、ウィンズダム宮殿では、
密かに事件が起きていた。

スナイダー…………。

スナイダーは、気を失ったエンフィールドを担ぎ、
人気のない暗い廊下を足音もなく進む。


スナイダー……城の警備は外側ばかり厳重だな、エンフィールド。
おかげで、おまえの危機には誰一人気付きそうにないぞ。
……ククッ。
エンフィールド…………。

やがてスナイダーは、場内の一室に入ると、
エンフィールドを椅子に下ろし、
手首を背もたれの後ろに回して縛る。

スナイダー何度言っても駄目なら、
おまえを俺にしてわからせてやるまでだ。

スナイダーは、エンフィールドの本体である銃を、
作業台の上に置いた。


エンフィールドはぁ……。
どうすればブラウン・ベス先輩に会えるんだろう。
エンフィールドきっとブラウン・ベス先輩は、
女王陛下のおそばで忙しい日々を過ごしているんだと思うけど……
早くお会いしたいなぁ。
スナイダーおまえは、口を開けばブラウン・ベスの話ばかりだな。
エンフィールド当たり前じゃないか。
だって、ブラウン・ベス先輩は、1世紀以上にわたって使われて、
大英帝国を築いた銃とも言われている偉大な存在なんだよ?
エンフィールドああ、早く先輩に会って話がしたいな。
お疲れだろうから紅茶を淹れて、
肩もみやマッサージをしてさしあげて……。
スナイダー……会ったこともない奴よりも、
世話を焼くべき相手がいるだろう?
エンフィールドえ? それってもしかして、マスターのこと?
ロナルドさんにはちゃんと、
紅茶やお菓子の差し入れをこまめにしているよ?
スナイダー…………。

エンフィールド~~♪ ~~~♪
スナイダー……やけに上機嫌だな。
エンフィールドああ、さっき、マスターのご親戚の方々が
城に遊びに来ていてね。
エンフィールド小さい男の子が、僕を見て
「貴銃士のお兄ちゃんかっこいい!」って
大はしゃぎだったんだ。
エンフィールド僕はまだ、絶対高貴に目覚めることができていないけれど……
ああやって慕われるのは、嬉しいものだね。
スナイダー…………。
スナイダーエンフィールドお兄ちゃん。
エンフィールド……!?
なんだよ、いきなり気味の悪い呼び方をして……!
何かよからぬ頼み事でもあるのかい?
エンフィールドほら、それより絶対高貴になるための鍛錬だ。
君もふらふら出歩いてばかりいないで、
貴銃士としての力を高めるんだよ。
スナイダー…………。

エンフィールドなんて、禍々しい……!
スナイダーなに?
エンフィールド君は、一体どこで何をしていたんだい?
絶対高貴に目覚めることを放棄して、
そんな力を手に入れてくるなんて……。
エンフィールドそんなものを使うのは、金輪際やめるんだ!
スナイダー…………。

スナイダー絶対高貴、ブラウン・ベス……
おまえの話はいつもそればかりだったな。
スナイダーだが……それも今日までだ。
おまえも俺になり、
力がすべてだと理解するようになるだろう。
スナイダー……さて、改造に必要な工具は……。

スナイダーは、部屋の隅へと工具箱を取りに行く。
一方、エンフィールドは、
うっすらと意識を取り戻していた。

エンフィールドん……。
ここは……?
エンフィールドうっ……頭が……!
エンフィールド(そ、そうだ。
たしか、いきなり殴られて──)
エンフィールドなんだ、これ……!?
エンフィールド(動けない……!
椅子に縛りつけられてる!?)

周囲を見回したエンフィールドは、
作業台の上にある自分の銃と工具箱、
そして、その前に佇むスナイダーを視認する。

エンフィールド……っ!
エンフィールドまさか……!
スナイダーほう、目が覚めたのか。

暗闇の中で、スナイダーが手にしている工具が
鈍く光を反射した──。

Ep4. 歪な兄弟

スナイダーが「療養中」ということになってから
しばらく経った頃のこと──。

スナイダー…………。
エンフィールドさぁ、食事を持ってきたよ。
今日のメニューの中で一番シンプルだった、
野菜スープとパンだ。
スナイダー草だのなんだのを煮込んだ汁を食えと? いらん。
エンフィールド草じゃなくて野菜だよ。
栄養が豊富なんだ。
エンフィールド君、もう何日も水しか飲んでないだろう?
いくら貴銃士でも危ないよ。
いい加減、ちゃんと栄養のあるものを食べないと……。
スナイダーそれより、俺を早くここから出せ。
エンフィールドそれはできな、──ッ!

スナイダーは、鎖で繋がれていてもなお届く範囲内に
エンフィールドが入ったのを見逃さず殴りかかるが、
寸でのところで躱される。

エンフィールド油断も隙もない……!

すぐに体勢を整えるエンフィールドに向かって、
再度拳を振り上げるが──。

エンフィールドくっ……!
いい加減に──しろっ!
スナイダーチッ……!

もみ合いの末に押さえつけられて、
スナイダーは兄を鋭く睨みつける。

エンフィールドはぁ……君って奴は、本当に……。
弱っていてくれて命拾いしたよ。
まさか、君の偏食に助けられる日がくるとはね。
スナイダー……いつまで俺をここに閉じ込めておく気だ。
エンフィールド君が、僕の言うことを
ちゃんと聞けるようになるまで……かな。
この様子だと、そんな日は当分来そうにないけど。
エンフィールドいいかい、スナイダー。
自覚してるかわからないけど、今の君は弱ってる。
僕にあっさり後れをとるくらいにはね。
エンフィールド食事はここに置いていくから、
少しでも食べておいてくれ。いいね?
僕は、君を傷つけたいわけじゃないんだ。
スナイダー…………。
エンフィールドそれじゃあ、また。
スナイダー傷つけたくはない、か。
いけしゃあしゃあと……。
スナイダー俺がいつまでも
大人しくしていると思ったら大間違いだ。
スナイダーエンフィールド……
必ずおまえを、俺と同じにしてやる。

薄暗い地下室の中で、
スナイダーは瞳を爛々と輝かせ、
エンフィールドが消えていった扉を見据えた。

Ep5. 二者択一

スナイダーとエンフィールドが
〇〇の貴銃士となり、
士官学校で生活するようになってからのこと──。

???──関係ないだろう。
???またそうやって君は──!
主人公【……?】
【誰かが喧嘩してる……?】

エンフィールドだから、どうして君はきちんと食事をとらないんだ!
そんなに偏食だと、貴銃士としての力をちゃんと発揮できないし、
そもそも不健康だろう!?
スナイダーこの肉体を動かすために必要なだけの
エネルギーは摂取している。
俺の貴銃士としての力に問題はない。
スナイダー仮に俺が多少弱っていたとしても、
おまえより強いことに変わりはない。
おまえも俺になってみればわかる。
エンフィールド……っ!
だ、だから、改造は嫌だって言ってるだろう!
スナイダー……わからんな。
力を手に入れることをなぜ否定する?
エンフィールドそれは……僕だって強くなりたいけど、
それと君になることは別の問題だ!
僕は僕のままで高貴を磨いて強くなる……!
スナイダーふん……その覚悟がいつまで持つか、見ものだな。

スナイダー……〇〇。
盗み聞きか? 大した趣味だな。
主人公【エンフィールドを脅すのはやめたらどうかな】
【改造はやめてあげてほしい】
スナイダー……俺に指図をするな。
スナイダー俺が大事な兄を強くしてやろうというのに、
文句でもあるのか?
主人公【疑問がある】
【……よくわからない】
スナイダー何がだ。言ってみろ。
主人公【改造したら「エンフィールド」はいなくなる】
【「エンフィールド」が消えていいの?】
スナイダー…………。
スナイダー……半人前の士官候補生の分際で、
生意気を言うようになったな。
スナイダー…………。
おまえも改造──いや、
人間は改造できないのだったな。
スナイダーだが……こういうのはどうだ?
スナイダーおまえがエンフィールドの改造をよしとするまで、
鎖で繋いで地下に閉じ込めておく。
スナイダーおまえ1人程度、簡単にどこかへ隠せるさ。
地下なら叫び声も届かない。
……どうだ?
スナイダー嫌だと言うなら……
黙って、せいぜい俺の役に立つよう、力を尽くすことだな。

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