不思議な扉をくぐった先は、魔法に溢れた奇妙な世界。
こんなお伽話みたいな…と首を捻るシャスポーもこう言われちゃ敵わない。
「銃の化身も、魔法みたいな存在でしょ?」
さあ、めくるめく魔女のお伽話を楽しもう!
シェーブル、魔法羊。古来、山羊は欲望と快楽の象徴とされた。
……奔放な弟じゃあるまいし、どうして僕が? ねぇマスター?
──どうしてだと思う?
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
ハロウィンの準備をしていた〇〇たちは、
倉庫にあったワードローブから、
不思議な世界へ迷い込んでしまった──。
そこで出会った魔女エリンに、元の世界に戻るには、
大魔女ブリギッドを若返らせなければならないと教えられる。
〇〇は若返りの儀式に必要な13人目として、
シャスポーたちはその使い魔として、
エリンの力で変装し、儀式まで待つことになった。
エリン | 儀式は皆既月食とともに始まるの。 準備もあるし、お茶でも飲んで少し待っていてね。 |
---|---|
ローレンツ | 異世界のお茶か……ふむ、興味深いな。 味、成分、効能は普通の茶と異なるのか……検証のし甲斐がある。 |
主人公 | 【どんな味なんだろう】 【飲んでみよう】 |
シャスポー | ちょっと待って、〇〇。 危険かもしれないから、僕が先に飲んでみるよ。 |
シャスポー | …………。 |
シャスポー | ……うん。大丈夫みたいだ。 なかなか上質な紅茶の味がするよ。 |
主人公 | 【本当だ】 【美味しいね】 |
シャスポー | ふふ、〇〇と一緒に飲むお茶は どんな場所でも美味しく感じるよ。 |
ローレンツ | ところで……Mr.スナイダーの姿が見えないが、 どこに行ったのだ? |
3人があたりを見回していると、
物凄い速さでスナイダーとフクロウが
〇〇たちの横を通り過ぎて行った。
スナイダー | 俺の銃を返せ……! |
---|---|
フクロウ | ほう? 追ってきおったか。 しかし、わしに追いつけるかな? ホッホッホ。 |
シャスポー | …………。 |
シャスポー | ……ええと、あちらの壁にある女性の肖像画は誰だろうね? この屋敷の女主人なのかな……。 |
シャスポーが壁の肖像画を見ていると、
突然、絵の中に絵描きの男性らしき人物が現れた。
シャスポー | えっ!? |
---|---|
画家 | ううむ、華やかさが足りない……。 もう少し頬を赤くしてみるか。 |
シャスポー | そんな、まさか……絵が、動いた? 僕は夢でも見ているのか……? |
画家 | ん? 何やら視線を感じると思ったら……。 君も描いてみるかい? |
シャスポー | えっ? でも……僕は絵を描く道具を持ってきていないし、 そもそもその絵の中に入ることもできないだろう……? |
画家 | 難しく考えなくてもいいのさ。 道具は君の目の前にあるだろう? ほら。 |
シャスポー | わっ! |
画家がシャスポーに向かって絵具と筆を投げると、
それらはキャンバスを飛び出し、
実物となってシャスポーの前に現れた。
画家 | さあ、それで描けるだろう? |
---|---|
シャスポー | いや、絵具と筆だけもらっても……どこに描けばいいんだい? |
画家 | おや、私としたことが失礼したね。 |
シャスポーの前にキャンバスが現れる。
画家 | 準備は整った。 心の赴くままに、描いてみなさい。 |
---|---|
シャスポー | ええ……? そう言われても……。 |
周囲に視線を走らせたシャスポーは、
ジャック・オー・ランタンに目を留めた。
シャスポー | とりあえず、これを描いてみるか。 |
---|
シャスポー | …………。 |
---|---|
シャスポー | よし、こんな感じかな……? 〇〇。僕の絵を見てみてくれる? |
〇〇がキャンバスに近づこうとした時、
ジャック・オー・ランタンが絵の中から飛び出した。
シャスポー | な……っ!? どういうことだ!? |
---|---|
主人公 | 【ジャック・オー・ランタンが逃げた!?】 【どこかに行ってしまった……】 |
画家 | 何を驚いているんだね? 絵から出ていくことも、絵の中に入ることも自由じゃないか。 |
シャスポー | 絵の中に入れる、だって……!? |
シャスポー | ……そうだ、いいことを思いついた! |
シャスポーや再び絵を描き始める。
儀式の準備を手伝いに行った〇〇たちが戻って来ても
キャンバスに向き合ったままだった。
シャスポー | …………。 |
---|---|
主人公 | 【上手だね】 【パリの街並み?】 |
シャスポー | ああ、〇〇。 いいところに来てくれたね! |
シャスポー | この絵はね、君のために描いたんだ。 ほら、一緒に行こう! |
シャスポーは〇〇の手を引き、絵の中に飛び込んだ。
──絵の中のパリは春のようで、花が舞っていた。
シャスポー | パリと言えば、花の都。 その名の通りの街並みを表現してみたんだ。 |
---|---|
シャスポー | さぁ、僕の愛する綺麗なパリを、馬車に乗って回ろう。 |
シャスポーの合図で、どこからともなく馬車が現れる。
シャスポー | 馬車に乗るには少しコツがいるんだ。 〇〇お手をどうぞ。 |
---|---|
主人公 | 【ありがとう】 【偉い人になったみたいだ】 |
シャスポー | ふふっ、車で案内というのも考えたんだけれど、 やっぱり、馬車のほうがロマンチックでいいよね。 |
シャスポー | ほら、窓の外を見てごらん。 セーヌ川の水面、花に彩られた凱旋門……。 どれも綺麗でしょう? |
主人公 | 【街行く人たちも楽しそう】 【明るくて活気がある街だね】 |
シャスポー | ああ、こだわったところに気づいてくれて嬉しいな。 僕は、パリジャン・パリジェンヌたちが 活き活きと暮らしている姿がとても好きなんだ。 |
〇〇は、シャスポーと共に街の景色をしばし眺める。
シャスポー | ……そろそろ目的の場所に着く頃かな。 せったくの〇〇とのデートだからね。 とっておきの場所でティータイムができるように用意したんだ。 |
---|---|
シャスポー | 少し揺れるかもしれないから、気をつけて。 君たち、頼んだよ。 |
主人公 | 【馬がペガサスに……!?】 【空を飛んでる!】 |
シャスポー | ふふっ、気に入ってくれたかい? パリを一望できるエッフェル塔の上でのティータイム…… 素晴らしいだろう? |
シャスポー | 現実ではあり得ないけれど…… 絵の中ならこんな風に、空の上に絨毯を引くことだってできる。 |
シャスポー | ティーセットだって、僕が描くだけで用意しなくて済むんだよ。 この絵の中は、自由な世界なんだ……! |
シャスポー | それを、〇〇も楽しんでくれたら嬉しいな。 |
空飛ぶ馬車が止まり、扉が開く。
シャスポー | 見ていて、〇〇。 |
---|---|
シャスポー | ……ほら、空の上の絨毯に降り立っても 僕は落ちたりしないだろう? |
主人公 | 【すごいね】 【夢みたいだ】 |
シャスポー | さあ、僕の手を取って。 一緒に空のティータイムを楽しもう。 |
シャスポーが〇〇の手を取り、
エスコートしようとしたその時──
エリン | あれっ? どこに行ったの! もしかして、この絵の中……!? 準備ができたから早く戻ってきて! |
---|---|
シャスポー | えっ!? いいところだったのに……時間切れみたいだ。 また今度一緒にデートしようね、〇〇♥ |
シャスポーと〇〇は、
エリンによって強制的に絵の外へと戻されたのだった。
〇〇たちが不思議な世界へ迷い込んだ……
かもしれない、不思議なハロウィンから数日後。
シャスポー | 違う……っ! |
---|---|
シャスポー | こうじゃない、僕が表現したいのは……! |
シャスポー | (僕と〇〇の完璧なデートを描きたいのに……。 頭の中に鮮明に残っている映像が、どうしても表現できない!) |
シャスポー | はぁ……。 |
美術部生徒1 | あっ……! シャスポーさん、また絵を破いちゃった。 |
美術部生徒2 | すごく素敵な絵だったのに……。 さっきから何枚も破ってるよね……もったいないなぁ。 |
ペンシルヴァニア | ……何がもったいないんだ? |
美術部生徒1 | あっ、ペンシルヴァニアさん! さっきからシャスポーさんが絵を描いては すぐに破ってしまっていて……。 |
ペンシルヴァニア | そうか……。 |
ペンシルヴァニア | シャスポー。 |
シャスポー | ……なんだい? 僕は今手が離せないんだ。 要件があるなら手短に頼むよ。 |
ペンシルヴァニア | シャスポーは何を描こうとしているんだ? |
シャスポー | ……〇〇との、夢のような時間だよ。 |
シャスポー | 花の都で、柔らかな日差しを浴びて駆けていく馬車……。 パリの街並みを一望する空のティールームで、 2人だけのティータイムをするところだったのに……! |
ペンシルヴァニア | ……? |
シャスポー | あと少しというところで、邪魔が入ってしまったんだ。 はぁ……あの時、引き戻されなければ……っ! |
ペンシルヴァニア | よくわからないが…… つまり、〇〇とのデートを描きたい、のか? |
シャスポー | ああ、そうだとも! |
ペンシルヴァニア | …………。 |
ペンシルヴァニア | ……俺に考えがある。ついて来てくれ。 |
ペンシルヴァニアに着いて行くと、辿り着いたのは公園だった。
シャスポー | なんで公園……? 君、本当に僕の話を聞いていたのかい? 僕の描きたいのは、こんな平凡な景色じゃないんだ。 |
---|---|
ペンシルヴァニア | いや……別に、ここでデッサンをするわけじゃないんだ。 ちょっと待っていてくれ。 |
シャスポー | …………? |
──しばらくしてシャスポーのもとにやって来たのは
ペンシルヴァニアではなく〇〇だった。
シャスポー | えっ、〇〇!? どうしてこんな場所に? |
---|---|
主人公 | 【ペンシルヴァニアに呼ばれて】 【ここでシャスポーが待ってるって聞いて】 |
シャスポー | (ペンシルヴァニアのやつ、何を考えてるんだ……? 〇〇と一緒に過ごせるのは嬉しいけど、 あいつの考えがわからない……) |
シャスポー | ……あれ? 〇〇、何を持ってきたの? |
主人公 | 【ピクニックセットだよ】 【サンドイッチとかいろいろ!】 |
主人公 | 【一緒に気分転換をしよう】 【ゆっくり食べながら話そう】 |
シャスポー | 〇〇……。 ありがとう。そうしよう! |
2人は芝生の上にレジャーシートを敷いて、
バスケットに入っていたサンドイッチや果物、
飲み物などを並べていく。
シャスポー | ふふっ、〇〇と2人で ピクニックができるなんて、なんだか幸せだな。 君といると、どこだって特別になるんだね。 |
---|---|
シャスポー | ……! あ……っ。 |
シャスポー | (そうだ……僕が描きたかったのは、幻想のパリじゃない。 〇〇と過ごす、温かくて優しい時間── あの時感じた幸せを、描きたかったんだ) |
〇〇とのピクニックを楽しんだシャスポーは、
寮ではなく、美術室へとまっすぐに向かう。
ペンシルヴァニア | 帰ってきたな。……描けそうか? |
---|---|
シャスポー | ああ、もちろん。 素敵な時間をくれてありがとう。 |
シャスポー | 僕はシーンやシチュエーションに囚われすぎていた。 でも、大事なのはそこじゃないって気づけた。 今の僕なら、理想の絵が描ける……! |
──数時間後。
美術部生徒1 | わぁ……温かくて綺麗な絵! 見ているだけで幸せな気持ちになれる……。 |
---|---|
美術部生徒2 | 不思議な魅力がある作品ですね。 目が話せなくて……ずっと見ていられそうだ。 |
シャスポー | ふふっ……愛に包まれた幸福な時間……。 そのイメージがどんどん溢れてきて…… こんなに描くことが楽しいなんて初めてだったよ。 |
シャスポー | 我ながら、いい絵が描けた。 |
グラース | あいつ、目覚めたな……。 |
タバティエール | 俺には絵の価値はわからねぇが…… ま、シャスポーがあんだけ満足してるからには、 いい絵なんだろうな。 |
Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.
まだコメントがありません。