マスターと貴銃士、その在り方。銃と共に生きる限り、安寧の運命はきっとない。
けれど、前を向いて歩み続けよう。
暗い夜を裂いて、空に輝く陽が昇るように──終わらぬ絶望はないのだから。
どんな未来が待っていても、君となら立ち向かえる。絶対に。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
マスターに出会えて、僕は人になれました
僕の胸はいま、あたたかいです
貴銃士の勇敢さを讃える記念行事、
ブレイブ・マスケッターズ・デー。
その一環として開催された食事会に、
〇〇は貴銃士たちとともに参加していた。
スプリングフィールド | …………。 |
---|---|
主人公 | 【どうかした?】 【具合が悪い?】 |
スプリングフィールド | ……あっ、すみません。 いえ、その……なんていうか、夢みたいだなって。 |
スプリングフィールド | 食べ物が、食べきれないくらいあって……。 僕の大切な人たちが笑っていて……。 |
スプリングフィールド | でも、あんなことが──……あ、いえ……。 |
スプリングフィールド | …………。 |
スプリングフィールド | その……今日は、ゆっくり休んでくださいね、マスター。 交流面談のことは、また今度ご連絡します。 |
──交流面談当日。
〇〇は、スプリングフィールドから指定された時間に、
第二医務室を訪れた。
主人公 | 【(大丈夫かな……?)】 【(具合でも悪いのかな……?)】 |
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スプリングフィールド | 〇〇さん、来てくださったんですね。 |
出迎えるスプリングフィールドは顔色がよく、
至って健康そうで、〇〇は首をかしげる。
スプリングフィールド | あっ……説明不足ですみません。 何か誤解させてしまったでしょうか……。 |
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スプリングフィールド | 今日はここを、交流面談の場として 貸し切りにしてもらっているんです。 |
スプリングフィールド | 元々ここは、怪我人が多い時の予備室で、 あまり使っていないのだと、在坂さんに教えてもらいました。 なので、大丈夫ですよ。 |
〇〇を室内に案内すると、
スプリングフィールドは、香りのよい紅茶を淹れ、
アップルパイと一緒にテーブルに置いた。
スプリングフィールド | カフェインが少ない紅茶で、香りにもリラックス効果があると シャルル兄さんがおすすめしてくれたものなんです。 |
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主人公 | 【いい匂いだね】 【つい深呼吸したくなる香りだ】 |
スプリングフィールド | ふふ……よかったです。 アップルパイは……実は、作ったものなんです。 |
スプリングフィールド | ジグせんせいにたくさん手伝ってもらったので、 きっと、上手くできていると思います。 ぜひ、食べてみてください。 |
主人公 | 【すごい!】 【美味しそうにできてるね!】 |
〇〇はスプリングフィールドとともに、
ゆったりとティータイムを楽しんだ。
アップルパイを食べ終わり、
食後のお茶までのんびり満喫してから、
〇〇はふと疑問に思ったことを尋ねる。
主人公 | 【今日の交流面談は、ティータイム?】 |
---|---|
スプリングフィールド | いえ……ティータイムは、目的ではなくて、手段の1つなんです。 今日は……僕があなたを甘やかす日にしたくて。 |
主人公 | 【どういうこと……?】 【甘やかす日……?】 |
スプリングフィールド | こちらをどうぞ、マスター。 |
スプリングフィールドは、柔らかそうな白いブランケットを、
〇〇の肩にふわりとかける。
主人公 | 【今日は交流面談だけど……?】 【スプリングフィールドがしたいことをする日だよ?】 |
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スプリングフィールド | はい。だからです。 僕が〇〇さんとしたいことを、 目一杯やろうと思います。 |
スプリングフィールド | マスター……あなたは本当に頑張り屋さんで、 尊敬できる素晴らしい人です。 |
スプリングフィールド | いろんなことを乗り越えてきたあなたを、 僕は心から尊敬しています。 だけど……少し、心配でもあるんです。 |
スプリングフィールド | 〇〇さん。 あなただって疲れるし、傷つくはずだから……。 |
主人公 | 【…………】 【そんなこと……】 |
スプリングフィールド | 平気じゃない時ほど、 人の心は「自分は平気だ」って嘘をつくんです。 |
スプリングフィールド | ……僕は、そのことを……よくわかっているつもりです。 |
スプリングフィールド | アメリカで出会ったマイケルさん、ケンタッキー、 ペンシルヴァニア、〇〇さん、ジョージさん……。 いろんな人が、僕をいっぱい甘やかしてくれました。 |
スプリングフィールド | みんなが僕を大事にしてくれて、優しくしてくれました。 だから僕は、今の僕になれたんです。 |
スプリングフィールド | 人の善意を信じることができるようになって…… 未来の希望を抱いてもいいんだって思えるようになりました。 仲間と、安心して冗談を言い合えるようにすらなりました。 |
スプリングフィールド | 〇〇さん…… あなたにもきっと、甘やかされる時間が必要だと思うんです。 |
スプリングフィールド | 気を抜いて、ただゆっくりして、 柔らかくて甘くて……そういう優しいものに包まれる時間が。 |
スプリングフィールド | なので、今日はあなたの好きなものを食べて、 あなたの好きな話をしましょう。 |
スプリングフィールド | でも、まずは……ここでゆっくり休んでください。 |
スプリングフィールド | ゆっくり眠ってください。 その間、僕が守りますから、何も心配しないでくださいね。 そして、目が覚めたら、好きなところを巡りましょう。 |
主人公 | 【そんなわけにはいかない】 【それじゃあスプリングフィールドに悪いよ】 |
スプリングフィールド | ふふっ、気にしなくていいのに。 |
スプリングフィールド | 〇〇さんが気にするなら……こう考えてください。 僕は今日、あなたのことを誰にも譲らなくていいんですよね? |
スプリングフィールド | あなたの騎士の座を、独り占めする権利をください。 僕にとって、それはとても嬉しいことなので。 |
スプリングフィールド | 僕はそんなに古い銃ではありませんし…… 弟分としてかわいがってもらうことも多いんですけど。 |
スプリングフィールド | 僕だって実は、お兄さんなんですよ。 双子の弟のような銃もいますし。 |
スプリングフィールド | 生まれた年で言えば、マスター。 あなたよりずっとずっと年上です。 |
スプリングフィールド | だから今日だけは、 僕に「お兄さん」をさせてください。ね? |
主人公 | 【そういうことなら……】 【今日だけ、お言葉に甘えて……】 |
スプリングフィールド | ……ふふ。ありがとうございます。 僕もたまには「お兄さん」ができて嬉しいです。 |
〇〇がベッドに寝転がると、
スプリングフィールドはベッドサイドの椅子に腰掛け、
その頭をそっと撫でた。
スプリングフィールド | おやすみなさい、〇〇さん。 |
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スプリングフィールド | 本当に、いっぱい、いっぱい頑張ったので…… ゆっくり、休んでくださいね。 |
優しいスプリングフィールドの声を聞きながら、
〇〇はゆっくりと眠りに落ちたのだった。
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