マスターと貴銃士、その在り方。銃と共に生きる限り、安寧の運命はきっとない。
けれど、前を向いて歩み続けよう。
暗い夜を裂いて、空に輝く陽が昇るように──終わらぬ絶望はないのだから。
どんな未来が待っていても、君となら立ち向かえる。絶対に。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
PLUS ULTRA
僕が共にある限り、
君に敗北はない。
貴銃士の勇敢さを称える記念行事、
ブレイブ・マスケッターズ・デー。
その一環として開催された食事会に、
〇〇は貴銃士たちとともに参加していた。
カール | はむもぐ……! もぐ……! もぐもぐ……! はむ…… |
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カール | ──んぐッ!! |
カール | ………………! |
カール | ──ごくん。 |
カール | もぐ……はむもぐ……! |
カール | ……ん? 視線を感じると思ったら〇〇じゃないか。 いたのならば、声をかけてくれたまえ。 |
主人公 | 【夢中で食べてるから】 【すごい食べっぷり!】 |
カール | いや、このステーキがあまりに美味しくてねー。 もう5回もおかわりしてしまった! |
カール | 今日はとんでもなく充実した日だったからな。 いつも以上に腹が減ってしまったのだ。 |
カール | ま、それだと君は僕の倍くらいは腹が減っているだろうけどねー。 |
カール | ……今回の件ではフリッツが世話になった。 「我がマスター」を救ってくれたこと、心から感謝しよう。 |
カール | 交流面談では、たっぷりとおもてなしをするつもりだ。 労をねぎらわせてくれたまえよ、〇〇。 |
──交流面談当日。
〇〇はカールに案内され、高級ラウンジ内にある
個室のVIPルームにいた。
主人公 | 【VIPルーム……】 【(高そう……)】 |
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カール | ノンアルコールドリンク、スイーツ、軽食……。 どれも僕の選りすぐりのお気に入りのものを用意させたぞ。 さぁ、午後の優雅なティータイムといこうじゃないか。 |
スタッフ | チョコレートでございます。 お好きなものをお選びください。 |
スタッフが持ってきた大きめの箱には、
ずらりと30個以上のチョコレートが、黒から白へと
グラデーションを描くように美しく並べられていた。
主人公 | 【すごくたくさん!】 【味が違うのかな!?】 |
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カール | うむ。カカオの原産国によって、風味や酸味などが 絶妙に違うのだよ。カカオの含有量によっても変わっていくから、 その組み合わせは無限大さ! |
カール | さらに、ワインやコーヒー同様、その年によっても出来が違うと チョコレートの味も変わるのだ。 その中で、自分好みを見つける……贅沢な嗜好品だねー! |
カール | さぁ、色々試してみよう、〇〇! |
主人公 | 【えっと……】 【じゃあ、これを……!】 |
カール | なに、それだけか? 遠慮しなくていいんだよー。 僕はこれとこれと……こっちと……! |
カールと〇〇は、様々なチョコレートと
紅茶を満喫した。
カール | ふー、堪能した。 しかし、君はまだこういう場所では緊張するようだねー? |
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主人公 | 【高級すぎる!】 【緊張を見抜いてたんだ】 |
カール | 普段ならば、目を輝かせて説明を聞くのに、 僕の説明をうわの空で聞いていたようだったからね。 ここは社会見学だと思いたまえ。 |
カール | 将来、君自身も僕のようにこういう場所で VIP扱いされることになるかもしれないからねー。 |
主人公 | 【それはない】 【まさか……】 |
カール | ……ふむ。 |
カールは口元に運んでいたカップを置き、
〇〇を見上げる。
カール | 君は既にこの世界の要人だ。それは自覚しているのかね? |
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主人公 | 【え……?】 【…………】 |
カール | 『まさか』と思っているのかい? なら、それはすぐに改めた方がいい。 君は今、一国をも滅ぼすことができる兵力を手中に収めている。 |
カール | ……そう。我々、貴銃士のことだ。 |
カール | 君は貴銃士を──絶対高貴、絶対非道の力に目覚めさせれば、 一騎当千と言っても過言ではない兵力を、 両の手ではとても足りないほど『所有』しているのだよー? |
主人公 | 【…………】 |
カール | ……君には既に話したけれども。 革命戦争の英雄、『レジスタンスのマスター』は今現在、 名も姿も伏せて世界のどこかに隠れ住んでいる。 |
カール | それは、そうしなければ『レジスタンスのマスター』は 2度と『人間』としての幸せを手にすることができない…… そう、本人と、周囲の人が判断したからだ。 |
カール | そして、時が流れ……。 君は……彼らとは別の時代の『英雄』としての道を 歩まされ始めている。 |
カール | 我々といる限り、きっと君はいつか『英雄』になる。 『人間』ではない、『英雄』だ。 |
カール | そして、世界には僕の前に積み重なっている ケーキ皿のように、まだまだ問題が山積みだ。 |
カール | 君も成長してわかってきたかもしれないが、 悲しいかな、現実というものは『悪に見えるものを 気持ちよく倒して終わり』ではないのだよ。 |
カール | ハッピーエンドを迎えても、その先にまだまだ世界は続く。 この世に『悪』がある限り、『英雄』は求められ続け、 どちらも絶えることはない。 |
カール | それと同様、絶対的な正義も存在しない。 悪と思って立ち向かった先も、また別の正義なのさ。 |
カール | ……そんな世の中で、このままならきっと君は 『英雄』として判断を下すことになるだろう。 そしてそれは、必ずしも無邪気で『善』にはなりえないだろう。 |
カール | 善意は人を殺すことだってあるのだから……。 |
カール | ……君にその覚悟ができているかね? |
カール | もし、覚悟がないのなら……僕たち貴銃士という存在を 手放すしかないだろう。 君が、『英雄』になる前に。 |
〇〇は、カールの顔を見返す。
カールもまた、〇〇の顔を見返した。
カール | ……ふふ、少し苦いチョコレートを食べてしまったようだねー。 ザッハ・トルテをいただいて、口直しをしようかね! |
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