───ある日の、スターズハウスにて。
机に置かれた手紙を見て、ケンタッキーは目を見開いた。
ケンタッキー | ……んだよ、これッ!? |
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置き手紙 | 『広い世界を旅したい。 ケンタッキー、あとは任せた』 |
ケンタッキー | ……逃げ出しやがった。 |
ケンタッキー | あいつらっ……! 仕事ほっぽって逃げ出しやがった!! |
───フィルクレヴァート連合士官学校。
貴銃士特別クラスにて。
恭遠 | よし、全員揃っているな。 それでは、HRを始めよう。 |
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主人公 | 【はい!】 |
マークス | マスター! どうしたんだ、マスターも同じクラスになるのか? 待ってくれ、俺の隣の席をすぐに空ける! |
主人公 | 【そうじゃないよ】 【落ち着いて】 |
恭遠 | 今日は重要な伝達事項があるから、 〇〇君にも来てもらったんだ。 |
シャルルヴィル | 伝達事項……? |
恭遠 | ああ。 フィルクレヴァート士官学校は、 規程に則り、明日から……。 |
十手 | あ、明日から……? |
恭遠 | ───夏季休暇に入るっ! |
ジョージ&十手&マークス | おおぉっ!! |
ライク・ツー | はぁ……なんだよ、それだけか。 妙にもったいぶりやがって。 |
恭遠 | はは……すまない。 そういうわけで、貴銃士特別クラスも、一般の生徒同様休みだ。 各自、この機会にしっかりと休養してくれ。 |
シャルルヴィル | やったぁ、バカンスだね♪ |
ジョージ | ってことは、勉強しなくていいんだなっ!? ひゃっほーう! それが一番Happyだぜ!! |
恭遠 | いや、宿題はあるぞ。 |
ジョージ | Noooooooo〜〜〜!!! |
マークス | なぁ。 夏季休暇ってのは、なんか特別な休みなのか? |
タバティエール | そうさ。夏季休暇は、 週末だけの普通の休みとは違って、何週間も連続で休みがある。 年に数回だけの、特別な長期休暇の1つなんだよ。 |
恭遠 | 一般生徒はほぼ全員、故郷に帰省するはずだ。 あとは、仲のいい生徒同士で旅行に行ったりもするようだな。 |
シャスポー | 僕は……まずはフランスに帰ろうかな。 フランスの方が、湿気がなくて過ごしやすいし。 |
シャスポー | ねぇ、〇〇。 夏休みの旅行先に、フランスはどう? 素敵な街並みや観光名所を、僕が案内するよ♥ |
グラース | はぁ? お前はどうせ、湿気がどうとかウダウダ言って、 案内もろくにできねぇんじゃねーの? ……おい、僕が案内してやるよ。光栄だろ? |
シャスポー | 何を寝ぼけたことを言ってるんだ。 君が案内したら、フランスの魅力ですらも半減だよ。 |
グラース | なんだと!? |
タバティエール | おいおい、2人ともやめろって。 そんなんじゃ〇〇ちゃんが逃げちまうぜ? |
シャスポー&グラース | ……ふん。 |
ドライゼ | 長期休暇は助かるな。 どのみち、そろそろドイツ支部へ戻ろうと思っていた。 |
エルメ | ゴーストとジグだけじゃあちょっと心配だし、 ドイツ支部の兵士たちが、ドライゼを恋しがってるだろうしね。 |
ジョージ | Hey! 十手はどこでバケーションを過ごすんだ? |
十手 | やあ、ジョージ君。 俺は、憧れの盆栽ふぇすてぃばるに行きたいと思ってるんだ。 |
ジョージ | Bonsai Festival? ってことは、日本に行くのか!? |
十手 | いや、この催しはイタリアで開かれるそうなんだ。 欧州の盆栽愛好家たちの力作が一堂に会する、 とてもアツい祭典になりそうだよ……! |
ジョージ | よくわかんねーけど、Nice☆ 楽しんでこいよー! |
ジョージ | みんな色々行くところがあるんだなぁ。 オレはどうするかな〜。 オレの帰省って、イギリスでもあるし、アメリカでもあるし! |
ジョージ | ライク・ツーもマークスもイギリスだから、 帰省しろって言われても悩むよなぁ。 |
ライク・ツー | そもそも、銃に帰省っつったって、 マジで帰省するなら工場とかだし。無意味だろ。 |
ジョージ | HAHAHA☆ でもさ、行きたいところとかないのか? |
ライク・ツー | 別に……。 トレーニング施設がちゃんとしてるから、 下手なとこに行くより士官学校に残る方がマシだな。 |
マークス | 俺は、マスターが行くところに行く! マスターは、夏休みはどうするんだ? |
主人公 | 【うーん……】 【帰る場所、は……】 |
マークス | あ……そうか……。 マスターの両親は……。 |
レジスタンス活動をしていた彼らは世界帝軍の手にかかり、
〇〇が幼い頃に他界している。
そのため、ユリシーズの支援のおかげでなんとか生きてきたのだ。
恭遠 | ……〇〇君。 俺もこの機会に里帰りするつもりなんだが、 よければ一緒にどうだろう? |
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恭遠 | 実家には姉夫婦が住んでいてね。 きっと歓迎してくれるはずだよ。 |
恭遠 | それに俺も、1人で姉夫婦のところにお邪魔するのは なんだか肩身が狭いから、君が来てくれると助かるよ。 娯楽の少ない田舎町で申し訳ないが……。 |
主人公 | 【恭遠教官……】 【お気遣い、ありがとうございます】 |
マークス | マスター……! 夏休みを……恭遠と過ごすのか……!? |
ライク・ツー | お前、これ見よがしに拗ねてんじゃねーよ。 |
マークス | ……おい、恭遠。 マスターが行くなら、当然俺も行く。いいな。 |
恭遠 | ああ、もちろん構わないぞ。 俺の故郷はハーブが有名なところだから、 マークスも楽しめるはずだ。 |
マークス | そうなのか……!? なら、なおさら行く。 んで、夏休みはマスターのためになる調合の研究をする……! |
ジョージ | いいなー、オレも一緒に行こっかなー! |
恭遠 | 2人でも3人でも歓迎するよ。 姉が作るパイは絶品でね。 ジョージのようによく食べるお客は喜ばれるはずだ。 |
ジョージ | へぇ、恭遠の姉ちゃんってパイを作れるのか! 今から腹空かせておかないとな! |
恭遠 | さすがに、今からは早すぎると思うが……。 |
恭遠 | それで……〇〇君、どうする? マークスとジョージは、すっかりその気みたいだが。 |
主人公 | 【ご迷惑でなければ……】 【お邪魔してもいいですか?】 |
恭遠 | ああ! さっそく姉夫婦に連絡しておくよ。 君たち3人は決まりとして……ライク・ツー、君は? |
ライク・ツー | 俺はパス。 田舎町に興味ねーし。 |
ラッセル | ───恭遠審議官、少しよろしいですか? |
恭遠 | ラッセル教官。 どうしましたか、そんなに慌てて……? |
教室に駆け込んできたラッセルが、
焦った様子で恭遠に何やら耳打ちをした。
聞いている恭遠の表情が曇っていく。
恭遠 | ……なるほど。 それは仕方がありませんね……。 |
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恭遠 | みんな、すまない……。 |
恭遠 | 俺の実家に来てもらう話だが、今回は中止だ。 俺は、急遽出張に行かなくてはいけなくなった。 |
ジョージ | ええーっ!? 出張って、どこにだよー? |
恭遠 | ……アメリカ支部だ。 短期間で済む用件ではなさそうだから、 里帰りする時間まであるかどうか……。 |
ジョージ | 楽しみにしてたのに……パイ……。 でも、恭遠が呼ばれるってことは、大事な仕事なんだよな…… 仕方ねーかぁ……。 |
マークス | なら、薬草の研究は、 士官学校の薬草園でやるか。 |
恭遠 | 本当に申し訳ない……。 せめて、お土産はたくさん持って帰るよ。 |
主人公 | 【楽しみにしています】 →恭遠「ああ、期待していてくれ。 リクエストがあれば聞くぞ。」 【出張、お気をつけて】 →恭遠「ありがとう、〇〇君。」 |
恭遠 | ハーブが盛りの故郷を案内できないのは残念だが……。 〇〇君なら、各国の貴銃士のところを巡って、 旅行をするのもいいかもしれないな。 |
恭遠 | ……どうか、楽しい夏休みを。 |
ジョージ | Yeah〜〜〜!!! ただいま、America!!! |
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市民男性1 | Wow! 兄ちゃん、イカした衣装だなーっ! ニュー・ジャージーから来たのかい!? |
ジョージ | ううん! オレたちはイギリスから来たんだ! っていうか、なんでニュー・ジャージー? |
市民男性1 | ニュー・ジャージーじゃあ、毎年6月にバトルフィールド公園で アメリカ独立戦争の再現イベントをやってるんだぜっ! すんげぇCoolなんだよ! |
ジョージ | そうなのかっ!? でも6月かぁ〜! オレも参加したかったなぁ。 |
市民男性1 | 元気出せよ。ワシントンもホットな街だぜ! 楽しんでいってくれよな〜! |
ジョージ | へへっ! Thank you☆ にーちゃんもいい1日を〜! |
市民女性1 | Hi! レッドコートのお兄さん。 18世紀から来たの!? |
ジョージ | Yes! 18世紀はすごいぞ〜! 月はミラーボールで夜はキラキラ、 昼はブタが空を飛んでるんだからな! |
市民女性1 | Really!? ダンス踊り放題ね! でもブタが痩せてハムがなくなっちゃうわ! |
ジョージ | それって最悪!! HAHAHAHAHA!! |
マークス | …………。 |
主人公 | 【ジョージみたいな人がたくさんだ……】 →ジョージ「えっ、そうかぁ? やっぱアメリカだからかなっ!?」 【マークス、大丈夫?】 →マークス「マスター……、アメリカというところは、 ジョージみたいに騒がしい奴ばかりだな……。」 |
ジョージ | 〇〇もマークスも、 アメリカをもっと満喫しようぜ☆ せっかくの旅行なんだからさ! |
ラッセル | いや……確かに旅行ではあるが、 アメリカに来たのは、ただの遊びではないぞ、ジョージ。 |
恭遠 | 羽目を外すのはほどほどにな。 |
ジョージ | OK! 任せろ! |
ラッセル | だ、大丈夫でしょうか……。 |
恭遠 | 〇〇君もいますし、おそらく……。 |
マークス | ……おい、恭遠。 ワシントンにハーブ畑はないのか? 石とコンクリートばかりで、薬草が見当たらない。 |
恭遠 | ワシントンD.C.に、ハーブ畑はないだろうな。 あったとしたら、とんでもない地価の畑になりそうだ……。 |
───恭達の出張のはずが、
5人でアメリカを訪れることになったのは、
1週間ほど前の出来事が発端だった。
恭遠 | ───なるほど。 それで、大統領秘書官のあなたが自らご連絡を。 |
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大統領秘書官 | 恭遠審議官、急なことですがどうかご協力を。 貴銃士に関する問題の調査ならば、 あなた以上の適任はいらっしゃいません。 |
恭遠 | ……私も、貴銃士の神秘について、 全てを知り尽くしているわけではないのですが……。 少しでもお役に立てそうなら、力を尽くしたいと思います。 |
大統領秘書官 | ありがとうございます。 この件はなるべく極秘に、速やかに解決を図りたいため─── |
??? | Hello! |
恭遠 | Hello……? |
??? | 聞こえているか? こちらヒューストン! 宇宙センターより交信中! |
恭遠 | ヒュ、ヒューストン? 宇宙センター?? |
大統領 | НАНАНА! 冗談さっ! 私だよ、Mr. Presidentだ。 Youは、かの有名な恭遠審議官で間違いないかな? |
恭遠 | Mr. President……!? は、はじめまして。 はい、私が恭遠・グランバードで間違いありません。 |
大統領 | That’s great! こうして話ができて嬉しいよ、Mr.グランバード。 |
大統領 | 革命戦争時代、そして現在の二度にわたって、 貴銃士たちと良好な関係を築いているそうだね。素晴らしい! Youが来てくれるなら心強いよ。 |
大統領 | どうだい? キミたちの様子は。 貴銃士たち、そして年若いマスターとで、 青春の日々を謳歌しているかな!? |
恭遠 | え……ええ。〇〇候補生は非常に優秀でして、 一筋縄ではいかない貴銃士たちをうまくまとめ、 日々健やかに士官学校での訓練に励んでおります。 |
大統領 | そうかい、それはよかった。 件の候補生君は、〇〇君というんだね。 |
大統領 | そちらのマスターほど多くの貴銃士を召銃していると、 気苦労も多そうだね。 疲れていないか心配だなぁ。 |
大統領 | えーっと……確か、 フィルクレヴァートのマスターを担当している教官は─── ラッセル曹長、だったかな。 |
ラッセル | はっ、Mr. President! ご心配には及びません。 士官学校は、明日から夏季休暇に入りますので。 |
大統領 | そうか! それなら安心だ。 楽しくHappyな、青春の夏を過ごしてほしいものだね! |
恭遠 | ええ。ただ─── |
大統領 | ん? |
恭遠 | あ、いえ……。 実は、この出張が決まる前は、〇〇君と 何人かの貴銃士に、私の故郷を案内する予定でした。 |
大統領 | ───なんだって? |
恭遠 | はい……? |
大統領 | まさか、この出張で、若きマスターと貴銃士たちの Summer Vacationの予定が変わってしまったと!? |
恭遠 | は、はい。 しかし、そちらでの任務は非常に重要ですから─── |
大統領 | Oh No〜〜! せっかく共に過ごすはずだった夏が台無しなんて、あんまりだ! |
大統領秘書官 | し、しかし、Mr. President。 これは急ぎ解決しなければならない案件です。 |
大統領 | ───そうだ、閃いたぞ。 Partyだ!! |
大統領 | せっかくだし、みんなでアメリカにおいでよ。 キミの故郷に行くはずだったメンバー全員、まるっとCome on☆ |
恭遠 | ……は、はい!? |
大統領 | うんうん、みんなでPartyといこうじゃないか! 貴銃士たちやマスターの視点は、調査にも役立ちそうだしね! せっかくだし……ラッセル曹長、君も来たらどうだい? |
ラッセル | えっ……! 自分もですか!? |
大統領 | Youだけ仲間外れにするわけにはいかないよ! というわけで、みんなでPartyだ! いやぁ〜楽しみだね。ハッハッハ☆ |
恭遠&ラッセル | は、はぁ……。 |
ジョージ | おっ、〇〇! あっちに人だかりができてるぜ! 何か面白いことやってんのかな? 見に行こう! |
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マークス | おい、ジョージ! マスターを引っぱるな。 |
主人公 | 【なんだろう?】 【マークスも行こう!】 |
マークス | マスターが、そう言うなら……。 おい、ジョージ。マスターと俺を案内しろ。 |
ラッセル | こらこら、あまり勝手に動いて はぐれないようにしてくれよ。 |
恭遠 | ジョージ、車道には飛び出さないように注意するんだぞ! |
マークス | な、なんだこれは……! “Tank Steak” ……肉の戦車、ってことか……!? |
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ジョージ | うわあっ! あのおっちゃんが食べてるヤツ見てみろよ! マークスの顔よりもデカいじゃん! Crazy! |
ジョージ | うんまそ〜っ! なーなー、オレもあれ食べたい! みんなで一緒に食べようぜ!! |
恭遠 | きょ、今日は会食の予定があるはずだから、やめておこう。 だが、滞在中に来られるといいな。 |
恭遠 | ん? あれ……マークス? |
マークス | マスター、見てくれ! このアイスクリーム屋、色がいっぱいだ! 青いアイス……だと……!? 食べられるのか……!? |
主人公 | 【どんな味なんだろう】 →マークス「青い、食べ物……。 ハーブだと、ブルー・マロウや、バタフライピーってやつがある。 育てたことがないから、味はわからないが。」 【食べてみようか】 →マークス「了解だ! だけど、俺が先に食べる。 変な味がしたり、毒が入ってたりしたら危ないからな!」 |
ジョージ | おっ、アイス食うのか? オレもオレも〜! |
恭遠 | ははは……俺とラッセル教官はあちらで少し話しているから、 ゆっくり選ぶといい。 あまり遠くにいかないようにだけ、注意してくれ。 |
主人公 | 【了解!】 【わかりました】 |
暑さもあって、アイスクリームのワゴンは大盛況だった。
ジョージ | うーん、どれにしようかな〜! フレーバーがいっぱいありすぎて、迷う! |
---|---|
店主 | いろんな味を食べたいなら、トリプルがおすすめだ。 アイスを3種類選べるよ! |
ジョージ | Wow! それいいな! じゃあじゃあ、このホッピングソーダと、 レモンソルベと……あと、レアチーズストロベリー! |
店主 | ……はい、まいど! Mサイズのトリプルで1800UCだよ。 落とさないように気を付けて。 |
ジョージ | うおっ、Mサイズでもデケ〜! さすがアメリカだな☆ なぁ、〇〇。 これ一緒に食べようぜ! オレ1人で食べてたら溶けそう! |
主人公 | 【わかった!】 【溶けないうちに急いで食べよう……!】 |
アイスとスプーンで手がふさがっているジョージに代わり、
〇〇が代金を払って、ベンチへ向かう。
ジョージ | じゃ、マークス。 オレたち向こうのベンチで待ってるからな〜! |
---|---|
マークス | わかった。 マスター、青いアイスは俺が買っていくから、待っててくれ! |
マークス | ……この、青いヤツを頼む。 あとは……一番人気の味も! 青いヤツが不味かったら、そいつで口直しをする。 |
店主 | おいおい、ウチのアイスはどれも絶品だっての! まあいい、とにかく食べてみな。ダブルで1200UCだよ。 |
マークス | ああ。 |
マークス | …………ん? |
アイスを受け取り、ポケットを探ったマークスは、
財布がないことに気づいて固まった。
マークス | ……やべぇ。財布がどこかに行った。 |
---|---|
店主 | ……なんだって!? |
マークス | ジョ、ジョージから金をもらってくる。 待っててくれ! すぐに戻る! |
店主 | おい、そうはいかないぞ。 逃げる気だろう! 動くんじゃねぇ、警察を呼んでやる! |
マークス | は……? 待てよ、金はすぐに持ってくるって言ってんだろうが! |
店主 | ったく、そんな手に引っ掛かるとでも思ったか! そう言って食い逃げしようとする輩がたまにいるんだ。 騙されるわけ───…… |
??? | ……1200UCでいいのか? それなら───ほら。 |
マークス | ……!? |
突然現れた物腰の柔らかな男が、
マークスの背後から店主へと手を伸ばし、
1200UC分のコインを渡す。
??? | 代金に不足はないか? |
---|---|
店主 | あ、ああ。 なんだ、悪かったな兄ちゃん! |
??? | ほら、早く食わないと、 せっかくのアイスが溶けるぞ。 |
マークス | あ……誰だか知らないが、助かった! 仲間が財布を持ってるはずだから、すぐに返す。 |
??? | いや、これくらい気にしなくていい。 旅行なのに、嫌な思いをさせてすまなかったな。 ……アメリカを、楽しんでいけよ。 |
マークス | だが……! |
??? | なに、『One good turn deserves another』 (1つの善行は他の善行に値する)さ! じゃあな。 |
マークス | …………。 やたらと陽気なヤツ以外に、いいヤツもいるもんなんだな……。 |
ジョージ | おーい! マークス、買えたのかー!? |
マークス | ……あ、今行く! |
ラッセル | みんな、アイスは食べ終わったかい? そろそろ出発しよう。 まずはアメリカ支部に向かうぞ。 |
---|---|
恭遠 | 大統領と会う可能性もあるそうだから…… マークス、くれぐれも失礼のないようにしてくれよ。 ……ジョージは、到着までに口を拭いておくように。 |
ジョージ | えっ、アイス付いてる!? |
マークス | 右側。 |
ジョージ | ちょっ……早く教えてくれよーっ! ここ? 取れた? |
マークス | バカ、そっちは左だ! |
ラッセル | 〇〇君は……うん、心配いらないな。 いつも通りの君で問題ないだろう。 どこに出しても恥ずかしくない、立派な士官候補生だからな。 |
恭遠 | 大統領のお人柄的に…… あまりかしこまりすぎず、元気に応答するといい。 さて、行こうか。 |
───世界連合軍・アメリカ支部。
ラッセル | なんだ? ずいぶん騒がしいようだが……。 |
---|---|
ジョージ | すげぇ人だな! もしかして、何かのフェスティバルかな? |
青空の下、音楽隊のマーチが響き渡る。
活気ある雰囲気のなか、登壇する人影があり、
人々から拍手や歓声があがった。
ジョージ | おおっ、ハリウッドのスターとか!? |
---|---|
恭遠 | いや、あの方は……大統領だ。 貴賓席に座っているのは、海外の要人のようだな。 なるほど……どうやら、歓迎セレモニーらしい。 |
高らかに奏でられていたマーチの演奏が止まり、
大統領がマイクの前へ歩み出る。
大統領 | Welcome to United States of America! 各国からのお客人の皆さんを、 我らがアメリカの貴銃士とともに歓迎します。 |
---|
そう言って大統領が手のひらで示した先には、
銃身の長い古銃を肩に担いだ、1人の貴銃士の姿があった。
??? | …………。 |
---|---|
恭遠 | ……! |
ジョージ | ん? あれって、確か……。 |
マークス | なんか、すげー長い銃だな。 |
恭遠 | 彼は……狙撃銃だからな。 |
マークス | 狙撃銃(スナイパー・ライフル)……。 |
ジョージ | あ、やっぱりか! アメリカ独立戦争で活躍した民兵たちの相棒で、名前は─── |
大統領 | ご紹介しましょう。 彼こそが……貴銃士、ケンタッキーです! |
拍手喝采を受けて、
ケンタッキーは笑顔で人々に手を振る。
ケンタッキー | おう! よろしくなーっ! |
---|---|
報道官 | これから彼が、皆さんに狙撃を披露します。 的は───あちらのバルーン! 空高く舞い上がったバルーンを、見事狙撃して見せまShowッ! |
マークス | マジか……。 ちょっとの風でもふらふら不規則に動く風船の狙撃は、 相当難しいぞ。古銃にそんな芸当、できるのか? |
マークス | あ、マスター! 俺ならもちろんできるからな!? |
観衆がざわめく中、
ケンタッキーは余裕の笑みを浮かべていた。
ケンタッキー | 俺、ケンタッキー・ライフルのモットーは ワンショット・ワンキル! ……絶対に外さねぇ! |
---|
スッと表情を落としたケンタッキーは、
目を閉じてから、何か不思議な動きをしている。
マークス | ……? あいつ、何してんだ? |
---|---|
恭遠 | ……おそらく、狙撃前のルーティンだ。 集中力を最大限に高めるためだろう。 懐かしいな……“彼”を思い出すよ……。 |
報道官 | さぁ、バルーンが放たれます! 皆さん、成功を祈り、静かにお見守りください! |
ざわめきが止み、静寂が訪れる。
ルーティンの動作を終えたケンタッキーは、静かに銃を構えた。
そして───紐が切られ、ふわりとバルーンが舞い上がる。
ケンタッキー | …………。 |
---|
───パァン!
ケンタッキーが放った弾丸は、見事にバルーンを撃ち抜いた。
中に入っていた紙吹雪が観客の上に舞い散り、
一斉に歓声が上がる。
観客1 | キャ〜〜〜ッ! すごい! 最高にCOOLね! |
---|---|
観客2 | ヒューッ! ワンショット・ワンキル! さっすが、独立戦争を戦い抜いた貴銃士だぜ! シビれるなぁ! |
主人公 | 【……すごい!】 【古銃であの距離の狙撃を成功させるなんて!】 |
ケンタッキー | っし! センキュー! |
報道官 | 皆さん、貴銃士ケンタッキーに盛大な拍手を〜!! |
観客たち | ヒュー! ケンタッキー! ケンタッキー! |
ケンタッキーコールで大盛り上がりの中、
彼はひらりと手を振って退場していった。
ジョージ | ひゅー、さすがケンタッキー! あいつも、オレと同じ時代に活躍してたんだぜ☆ |
---|---|
ジョージ | そういや……恭遠もケンタッキーのこと知ってる感じだったな! |
恭遠 | ああ……彼とは違う個体だが、 レジスタンスにもケンタッキー・ライフルの貴銃士がいてね。 マスター想いの、熱い貴銃士だったよ。 |
ジョージ | へぇ! オレ、早くあいつと喋ってみたいな〜! |
??? | Hello♪ 皆さんは、イギリスの フィルクレヴァート連合士官学校からのお客様ですかー? |
ラッセル | ええ、そうですが……。 |
ジュディス | Oh! お会いできて嬉しいでーす! 私はジュディス・パーカー。 どうぞ、ジュディと呼んでくださーい♪ |
恭遠 | はじめまして、ジュディさん。 私は世界連合本部審議官の、恭遠・グランバードです。 |
ジュディス | Mr. グランバード! レジスタンスを率いた名将ですね! さすが、独特のオーラを感じま〜すっ! |
恭遠 | いえいえ……恐縮です。 こちらは、フィルクレヴァート士官学校教官の ラッセル・ブルースマイル曹長です。 |
恭遠 | そして、マスターの〇〇君、 貴銃士マークスと、ジョージです。 |
主人公 | 【はじめまして】 【〇〇です】 |
ジュディス | よろしくお願いしまーす! 皆さんとお会いできて、心から光栄です♪ 特に……ジョージさん! |
ジョージ | えっ、オレ? |
ジュディ | Yes! 独立戦争で活躍した、ブラウン・ベス・マスケット! そのうちのアメリカ側で戦ったMindが貴銃士になったのが、 ジョージさんなんですよねー♪ |
ジョージ | おう! そんなカンジだぜ! |
ジュディ | お好きなものはバーガーだと伺っていまーす! これ、ジュディ厳選おすすめバーガーマップでーす♪ ぜひ使ってくださーい♪ |
ジョージ | マジで!? Wow……最高のもてなしだっ! |
恭遠 | それで……我々はこれからどうすればよいでしょうか? |
ジュディス | そうでしたっ! 皆さまをご案内しますね! Mr. Presidentものちほど挨拶に来られますが、 今は来賓の方々とのミーティング中で……。 |
ジュディス | お待ちになる間、我が国の貴銃士に会われますか? ちょうどセレモニーが終わって お部屋に戻られているはずですよー♪ |
マークス | さっきの、古銃のスナイパー・ライフルか。 |
ジョージ | お、いいな! オレ、ケンタッキーと話したい! |
ジュディス | 了解でーす! それでは、ジュディについてきてくださいねー♪ |
───恭遠と〇〇たち一向は、
ジュディスの案内で、
ケンタッキーがいるという部屋へ向かった。
マークス | ……なぁ、マスター。 あいつは確かにすごかった。それは、俺も認める。 |
---|---|
主人公 | 【古銃であの狙撃……本当にすごいよ】 →マークス「くっ……! だが、俺だって負けてない……! だから、マスターの相棒はこれからも俺だけだ!!!」 マークス「おい、ジュディスって言ったか!? バルーンを用意してくれ。あいつが撃ったやつより小さいの!」 ジュディス「えーっと……?」 恭遠「こら、マークス。 ジュディさんも〇〇君もびっくりしているだろう。」 マークス「……! すまない、マスター……。」 【笑顔が素敵で、大人気だったね】 →マークス「え、笑顔が、素敵……だと……?」 マークス「…………。」 ジョージ「ん? マークス、何ヘンな顔してんだ? あ、笑ってるのか?」 マークス「……なんでもない。」 |
ラッセル | アメリカにて召銃された貴銃士は、 彼───ケンタッキーだけではないと伺っていますが……。 |
ジュディス | Yes、彼以外にも、もう1人貴銃士がいますよ♪ ケンタッキー・ライフルの元になった、 開拓者の狙撃銃 ペンシルヴァニア・ライフルでーす! |
ジュディス | 公式に召銃されているのは、 その2挺ですねー♪ |
マークス | くっ……またスナイパーか……。 |
ジョージ | あいつらは、開拓民が狩猟に使ってた銃なんだ! 当時は鉛も火薬もレアだし、動物は警戒心が強いから、 遠くから正確に獲物を狙える狙撃銃が相棒に選ばれたんだ。 |
マークス | へぇ……。 珍しく、すげーまともに詳しいな。 |
ジョージ | へへっ! 昔の戦友のことだからな〜! |
ジュディス | 到着しましたー! こちらがケンタッキーさんのお部屋です♪ |
ジュディス | もしもーし、ケンタッキーさーん? |
ケンタッキー | ……どーぞ。 |
───室内では、生気のない顔のケンタッキーが、
虚空を見つめてぐったりとソファに沈んでいた。
主人公 | 【あれ……?】 【なんだか、様子が……】 |
---|---|
マークス | …………? こいつ、本当にさっきの奴か……? |
ケンタッキー | ……よう、ジュディ……。 なんだよ、そいつら……。また仕事……? |
ジュディス | ハーイ、ケンタッキーさん。 今日も大活躍でしたねー♪ |
ジュディス | イギリスの士官学校からお客さんですよ! 恭遠・グランバード審議官、 ラッセル・ブルースマイル曹長、それと─── |
ジュディス | チャーミングなマスター、〇〇さんと、 貴銃士のお2人、ジョージさんにマークスさんです! |
ケンタッキー | ジョージ……? ……って、あー! ブラウン・ベス・マスケット! |
ジョージ | やっほー、ケンタッキー! 久しぶり! うーん、貴銃士になって初めて会うのに 久しぶりっていうのは不思議だよなー。 |
ケンタッキー | ジョージ……ってことは、 お前はアメリカ側で戦った銃か! ヘーっ、久しぶりだな。第二次独立戦争ぶり? |
ジョージ | かなっ!? HAHAHA☆ |
ラッセル | はは……貴銃士の同窓というのは、 年代感がすごいものだな……。 |
ケンタッキー | ……っと。挨拶がまだっしたね。 俺は、ケンタッキー・ライフル。 |
ケンタッキー | ガンスミスのハンドメイドで、 全く同じものは1つもない、オリジナリティ溢れる銃っす! |
ケンタッキー | モットーは、ワンショット・ワンキル。 数撃ちゃ当たるどこぞの戦法とはワケが違うんでぇー、 そこんとこ、よろしくお願いしまっす! |
主人公 | 【〇〇です】 【よろしくお願いします】 |
ケンタッキー | ッス! ……ふぁーあ……っと、すんません……。 |
挨拶を終えた途端、ケンタッキーが大あくびをした。
よく見ると、目の下にはクマがくっきりと浮かんでいる。
秘書官 | ご歓談中、失礼致します。 ケンタッキー様、出発の準備は整っていますか? |
---|---|
ケンタッキー | ……うげ。 |
秘書官 | そろそろ出ませんと、次の仕事に支障が出ます。 上院パーティーでのデモンストレーションと、 慈善団体への慰問が3件の予定です。 |
ケンタッキー | う……、あー……。 |
主人公 | 【……大忙しだ】 →ケンタッキー「まぁ……いつものことなんで。 そんだけ俺が求められてるってことっすね。」 【体調は大丈夫ですか?】 →ケンタッキー「んー……まだ、なんとか動けるんで。 大丈夫っすよ。」 |
ソファから立ち上がるケンタッキーだが、
その身体がふらりとよろめいた。
ジョージ | うおっ、大丈夫か!? すげー顔色悪いぞ。気分でも悪いのか……? |
---|---|
ケンタッキー | ……いや、ちょっと寝不足でさ。 |
ジョージ | 昨日、夜ふかししたとか? |
ケンタッキー | 昨日……は、ろくに寝てねぇな。 確か、おとといも。 |
ジョージ | へっ!? 3日起きっぱなしってことかよ!? |
マークス | なぁ、アメリカにはペンシルヴァニアって奴もいるんだろ? 姿が見えないが、そいつも同じくらい忙しいのか? そうでないなら、仕事を手分けしたらどうなんだ。 |
ケンタッキー | …………。 |
ジュディス | Oh……! |
秘書官 | No……! |
ケンタッキー | ペン……シル、ヴァ……ニア……! |
ケンタッキー | あんの野郎ぉおぉっ! |
ラッセル&恭遠 | ……!? |
ジョージ | わわ、どうしたんだよ! |
ケンタッキー | ああああああああクソッ! 許せねぇ、あの野郎ォオォ! |
ケンタッキーは激怒した。
部屋の中を暴れ回り、手当たり次第に物を投げる。
マークス | マスター、危ない! こっちだ! |
---|---|
ジュディス | 皆さーん! テーブルの下に隠れてーっ! |
ジョージ | Wow! いきなりどうしたっていうんだよ!? |
ジュディス | Sorry……! 最初に説明しておくべきでした! |
ジュディス | ケンタッキーさんに、ペンシルヴァニアさんの名前は、 禁句なんでーすっ! Absolutely! |
ラッセル | なっ……それはどういうことですか!? |
ジュディス | 実は、ペンシルヴァニアさんは現在行方不明中! それは先月のこと。置き手紙を1枚残して、 急に姿を消してしまったのでーす……。 |
マークス | はぁ!? |
秘書官 | 我々にもケンタッキー様にも何も言わずに、 マスターと共に出奔されまして。 それ以来、ケンタッキー様はあんな感じに……。 |
ジュディス | 彼、元々ペンシルヴァニアさんをライバル視してたんですが、 ペンシルヴァニアさんがいないといないでさらに酷くて……! |
ケンタッキー | うがああああー! ペンシルヴァニアペンシルヴァニアうるせぇぇぇぇー! |
───ガシャン、ドカン!
ケンタッキーの怒りは、簡単にはおさまりそうもない。
大暴れが続いていたが、急に動きが止まった。
ラッセル | なんだ? 窓の外を見ているぞ……。 |
---|---|
ケンタッキー | ……ッ、あいつ……!! |
ケンタッキーが、部屋を飛び出していった。
ものすごい剣幕に、〇〇たちはしばし呆然とする。
マークス | なんだったんだ……? 外に何か、気になるものでも見つけたのか? |
---|---|
主人公 | 【どうしたんだろう?】 【追いかけてみよう】 |
ジョージ | オレたちも行こう! ……ケンタッキーのこと、放っとけないし。 |
〇〇たちは、
急いでケンタッキーのあとを追いかけた。
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