オーストリア編:第6話~第10話

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第6話:オーストリアの貴銃士たち

カールやあ、よく来たね。
君が〇〇か。
主人公【はい】
【〇〇と申します】
マークス俺はマークス。
マスターの相棒だ。
シャルルヴィル僕はシャルルヴィルです。
お招きありがとうございます、閣下。
カールははっ、そう堅苦しくならなくていいよー。
僕はカール。
こっちがローレンツで、彼がマスターのフリッツ・ザラだ。
ローレンツご紹介ありがとうございます、カール様。
ローレンツヴァイスブルク宮殿へようこそ。フィルクレヴァートの客人たち。
俺は、オーストリア帝国初の国産ライフル、ローレンツだ。
ローレンツ言っておくが俺は、民間製の駄作ではないぞ。
官製の高性能で優秀な、真のローレンツ・ライフルだ。
くれぐれも混同しないように頼むよ。
マークスどっちでも変わらな───
シャルルヴィルなっ、なるほど!
官製でいらっしゃるんですね。それはそれは。
ローレンツむ……?
ザラ───それでは、私はあいさつ代わりのワンフレーズを。

フリッツ・ザラは、楽器ケースからバイオリンを取り出すと、
美しい旋律を奏で始める。

その手の甲には薔薇の傷が刻まれているが、
それが本物なのか偽物なのか、
見ただけでは〇〇にもわからなかった。

シャルルヴィルBravo!
名前を聞いてもしかして……って思ったけど、
まさかあのザラさんだなんて!
マークスあんた、こいつのこと知ってるのか?
シャルルヴィルうん! 有名なバイオリニストだよ。
ロジェさんが晩餐会に招待したがってて、
名前を聞いたことがあったんだ。
ザラ……いかにも。
多忙ゆえに招待をすべて受けることはできないが。
かの人物が渦中の人となったからには、幸運だったと言える。
シャルルヴィル…………。
カールザラ。
ザラ……失礼いたしました。

微妙な空気が流れる中、
なぜかローレンツがじりじりと〇〇へ近づいてくる。

主人公【……何か?】
【……どうかしましたか?】
ローレンツ君が、貴銃士を次々に絶対高貴へ導くというマスターか。
ふっ……実に興味深い。
俺のモルモット2号にならないか?
主人公【よくわからないけど嫌です】
【……? お断りします】
ローレンツ……フフフ……。
仮説は証明された。
マークスマスター……こいつ、変だぞ。
変質者だ。近寄らない方がいい。
シャルルヴィルうーん……。
ボクもマークスにちょっと賛成かな……。
ザラ……さて。
自己紹介は済んだな。
ザラ2日後の金鷲勲章授与式典まで、
観光でも楽しむといいだろう。
マークス……貴銃士も変なら、マスターも無礼な奴だな。
オーストリアには来たし、あいさつもした。
もう士官学校に帰っていいんじゃないか? マスター。
主人公【そういうわけにはいかないよ】
【ちゃんと式典に参加しないと】
カール〇〇の言う通り。
せっかく来たのだから、ゆっくりしていくといい。
カール僕としても、ようやく会えたシャルルヴィルや君たちと、
もう少し語らいたいからね。
シャルルヴィルようやく、って……?
ローレンツおや……? 君は知らないのか?
以前、リリエンフェルト家へ君宛ての招待状を送ったが、
予定が合わないと辞退の連絡が届いたのだ。
シャルルヴィルそうだったんだ……。
シャルルヴィル(……たぶん、ロジェさんが断ったんだろうな。
絶対高貴になれていなかったから……)
カールところで、恭遠はどうしたんだい?
姿が見えないが。
マークス恭遠なら、連合本部から呼び出されて、
一緒に来られなくなった。
カールふぅん……。
カールなるほどねー。
久々の再会を楽しみにしていたんだが、
そういうことなら仕方がない。
シャルルヴィルよかったら、恭遠教官とのお話を聞かせてほしいです。
主人公【ぜひお願いします!】
【レジスタンスのことを伺いたいです!】
上級使用人───失礼いたします。
上級使用人面会のお時間が終わりました。
お客様方をお見送りいたします。
シャルルヴィルあっ、もう!?
まだ自己紹介しかしてないのに……。
マークスマスターが話そうとしてるのに邪魔をするな。
それに、こいつも元気そうじゃねぇか。
上級使用人決まりですので。
どうぞご退室ください。
マークスだが……!
ローレンツ……カール様、まもなくです。
カールうむ。
シャルルヴィルえっ? 何が?

シャルルヴィルの疑問には答えることなく、
ローレンツは時計を見ながらカウントダウンを始める。

ローレンツ5、4、3、2、1……。
カール……ゼロ。

次の瞬間───。

使用人きゃあああっ!!

どこからか大きな爆発音のようなものが聞こえ、
宮殿が小刻みに揺れる。

マークス襲撃か……!? 敵はどこだ!
シャルルヴィル何、何っ!? 爆発……!?
???───絶対非道ッ!
シャルルヴィルぎゃあああっ!!
アウトレイジャー……じゃなくて、派手な貴銃士!?
マークスな、なんなんだコイツ!
敵なのか!?
???うおおおお……!!
やっと出られたぜぇー!!
???シャバの空気サイコー!! アッヒャッヒャッヒャ!
手始めにそこらじゅうのコーク飲み干してやんぜぇ!!
???オラオラオラァ〜〜〜!!!
兵士1た、大変だ!
奴が脱走した!!
上級使用人こっちです! 早く!!
兵士2まずいぞ、早く確保しろ!
兵士3だが、俺たちだけでは取り押さえられない!
応援を呼ぶぞ! 使用人は退避しろ!!
ザラまったく……だからこの宮殿には来たくなかったんだ。
バイオリンを壊されてはたまらない……!
カール様、ローレンツ殿、私は失礼します。

2人の返事を聞かずして、ザラはバイオリンをケースにしまうと、
1人足早に立ち去ってしまった。

シャルルヴィルえっ、えええ……!?
マークスどうする、マスター。
あいつがマスターの敵なら、俺はすぐに撃ち抜く。
???……んぁ? なんだ、お前ら。
見たことねーやつな気がすんなぁ。
???貴銃士だろ! やんのかオラ!
シャルルヴィルちょっ、お、落ち着いて……!
???今日の俺はぁ……いける!
ジャマなやつはぁ……ぶっ飛ばーす!!
いっくぜぇ!!!

第7話:謎の貴銃士

突然始まった、謎の貴銃士との戦闘。
しかし、彼はアウトレイジャーにもなっておらず、
宮殿にいたことからして、徹底的に応戦するのもはばかられる。

???うが〜〜っ!!
暴れ足りねぇ!! もっと本気だせよザーコ!!
シャルルヴィルなんなの、彼!?
ムチャクチャだよ!
マークスクソ! ちょこまか動きやがって……!
カール……ローレンツ、そろそろいいだろう。
ローレンツはっ、カール様。
俺にお任せを。

恭しくカールヘ一礼したローレンツは、
謎の貴銃士の方へと進み出る。

ローレンツMr.ベルガー……いや、親愛なるモルモット1号。
大人しくしたまえ。彼がどうなってもいいのか?
ベルガー……うおっ!? アルパチーノ!!

ローレンツは、透明なケースを掲げる。
その中には、1匹の白いネズミが閉じ込められていた。

アルパチーノキィ……!
ベルガーてめぇ!
アルパチーノに何しやがるつもりだ!!
ローレンツ安心したまえ。
君が大人しくするのであれば、君の友は無事に明日を迎えられる。
ベルガー……!!!
シャルルヴィル(暴走が止まった!)
ローレンツそして───さぁ、よく見るんだ!
ここにあるのが何かわかるな?

ローレンツの足元には、いつの間にか
布がかぶった箱があった。

ローレンツが、その布を勢いよく取り去ると───

ベルガー冷え冷えのコークゥゥゥ!

ローレンツが差し出したジュースを、
ベルガーはごくごくと一気に飲み干した。

ベルガーっぷはぁ〜〜! うっめぇ〜!!
ベルガーめぇ……めぇ〜。ヒツジ……?
マークスん……? どうしたんだ。
元々変だったが、もっと様子がおかしくなったぞ。
アルパチーノキィ……?
ベルガーぼへぇ……。
シャルルヴィルえ、倒れた!?
ローレンツ安心しろ。眠っただけだ。
ベルガー……ぐー……すぴー……。
ローレンツモルモット1号がコークに夢中になっている隙に、
極細の針で鎮静剤を注入済みだ。
これでしばらくぐっすり眠ることだろう。

ローレンツは透明なケースの蓋を開け、
ネズミを取り出すと、眠っているベルガーの頭に乗せた。

カール計画通り、暴走兎のおかげで邪魔者は消えたね一。
では、楽しいお散歩といこうじゃないか。
君たち、こちらへ。

カールに手招きされて、〇〇たちは
2人の方へと近づく。

カールよし、全員“乗った” ね。
……ローレンツ。
ローレンツはっ、カール様!

ローレンツが、ポケットから取り出したリモコンのボタンを押す。
次の瞬間───

───ガコッ!

〇〇たちの足元の床が開き、
床下の空間へと全員落下していった。

主人公【どういうことー!?】
シャルルヴィルえ、えええーーー!?
マークスマ、マスターーーー!

第8話:噂の真相

───穴から通じていた抜け道を通り、
混乱に乗じてヴァイスブルク宮殿を抜け出した一行は、
ローレンツが運転する車でどこかへ向かっていた。

シャルルヴィルね、ねぇ……。
勝手に宮殿を抜け出したりして大丈夫なの?
マークスどこに向かってるんだ。
マスターに危害を加えるつもりなら、俺がてめぇらを始末するぞ。
カール番犬は警戒心が強いくらいでちょうどいいが、
あまり吠えるのも騒々しいものだね。
カール君は、マークスと言ったかな。
僕は当然、君たちに何もする気はない。安心していいさ。
カールふわぁ……失礼。
どうも、車の揺れというのは眠くなるよー。
マークス呑気な奴だな……。
シャルルヴィルさっきの人……ベルガーだっけ。
彼は置いてきてよかったの?
ローレンツMr.ベルガーはあの通り、暴走しやすい性質だ。
同行に適さない生物であることは、証明するまでもないだろう。
主人公【行き先を教えてください】
【これから何をするんですか?】
カールただ……静かな場所で、
誰にも邪魔されずに君たちと話したいだけさ。

───やがて、車が止まる。
到着したのは、郊外にある墓地だった。

カールこっちだ。

カールの先導で、一行は墓地の中を進んでいく。
歩きながら、カールは世間話でもするように切り出した。

カール君たち、“死神皇帝”について知っているかね?
シャルルヴィル……!
主人公【……そういう噂があることは耳にしました】
→カール「ふむ。イギリスの士官候補生の耳にまで入るとは、
それなりに噂が広がっているようだね。
それとも、君だからこそ知っているのか……。」

【噂程度ですが、知っています】

→カール「そうか。素直でよろしい。
余計な探り合いの手間が省けるというものだ。」
カール……さあ、着いた。

カールは、とある墓標の前で足を止めた。

カール……これは僕の最初のマスター、オットー・ヨナスの墓だ。
マークス……死んだのか。
カールああ。彼はまだ若く、前途洋々な青年だった。
だが……彼が僕を召銃してしばらく経った頃、異変が起き始めた。
カールいや、異変はある意味、最初からかな。
今回の僕は、完全な貴銃士ではなかったのだからね。
シャルルヴィル完全な貴銃士ではないって……どういうこと?
カール僕は……絶対高貴になれない。
貴銃士の姿をしているだけの、力の抜け殻さ。
ローレンツカール様、そのようなことは───。
カールいいや、ローレンツ。
絶対高貴になれない貴銃士など、貴銃士のなり損ねだ。
僕はかつてそう断じたし、今でもそう思っている。
カール話を戻そう。
僕が不完全な目覚めを果たしてからしばらくして、
マスターであるオットーにも異変が現れ始めた。
カール薔薇の傷が悪化していき……
優しく穏やかで、知性も品性もあった彼が、
誰彼構わず火が付いたように怒鳴り散らすことがあった。
シャルルヴィル……っ!
カールどうも、幻覚や幻聴の症状があったようでね。
その異変は、次第に僕の身にも起き始めた。
カールそこで僕は、銃に戻ることにした。
マークス……? 戻ろうとして戻れるものじゃないだろ。
カールなに、簡単なことさ。貴銃士としての肉体を壊せばいい。
君の銃では難しそうだが……
僕は都合のいいことに、ピストルだからね。
マークス……っ、自分で自分を殺したのか……!?
あんた、正気か?
カールははっ、実に正気さ。
正気だったからこその選択とも言える。
カールオットーの異変は間違いなく、マスターになったことが引き金だ。
貴銃士の維持にも、力を使うだろう。
だから、僕という負荷を減らしたわけだが……手遅れだった。
カール僕がいなくなったからといって、薔薇の傷が治るわけではない。
既に酷く衰弱していた彼は、まもなく命を落としたそうだ。
カールさて……シャルルヴィル。
さっき、何か言いたそうな顔をしていたね。
オットーの異変について、君も心当たりが?
シャルルヴィルボクの前のマスター……
ロジェさんと、似てるかもって思ったんだ。
彼は、最初はすごく優しい人だったのに、変わっていった。
シャルルヴィル絶対高貴になれって言われて……その、いろいろあって。
でも、ジョージが薔薇の傷を治してくれたら、
憑き物が落ちたみたいに元に戻ったんだ。
カール……ふむ。
君は彼の貴銃士だった頃から絶対高貴を使えると言われていたが、
やはり、本当は使えなかったんだね。
カールそして、〇〇のもとで呼び覚まされてから、
本当に絶対高貴に目覚められた。
シャルルヴィルう……うん。その通り。
カールどうだい? 君の力、僕に見せてはくれないか。
シャルルヴィルもちろん。
シャルルヴィル───絶対高貴。
ローレンツおお……!
これがあの、絶対高貴……!
カール……懐かしい光だ。
これがあれば、彼を救えたはずだ。
いや、彼らをと言うべきかな。
主人公【“彼ら”というと……?】
カール僕が“死神皇帝”と呼ばれるゆえんだ。
オットーのあとも、マスターは変わり続けて……
今は何人目だろうね。
カール───30人前後といったところかな。
マークスさ、30人だと!?
なんでそんなにマスターが死ぬんだ!
シャルルヴィルあ、あの!
ザラさんの傷なら、ボクが治します!
シャルルヴィルカールさんたちは必要な存在だろうから、
傷を完全に消すことはできないけど、
こうやって絶対高貴になれる誰かが時々来れば───
カールその必要はない。
彼はあの通り元気だから、貴銃士の派遣を受ける理由はないよ。
そもそも、彼に治すべき傷など存在していない。
シャルルヴィル噂通り、彼は偽のマスターってこと?
でもそれなら、本当のマスターの傷を……!
カールそれも不可能だ。
連合軍を通して打診してきたところで、
オーストリア政府が受諾する理由はない。
カール僕らのマスターは、死刑を待つ囚人だ。
死刑執行されるか、マスターとなり薔薇の傷で死ぬか。
いずれにせよ死ぬ運命にある。
マークス……ラッセルが聞いたっていう噂は、本当だったのか。
カールうむ。要するに……僕は死刑執行人というわけだ。
誰が言い出したのかは知らないが、
“死神皇帝”とはお似合いの名だね、はは。
シャルルヴィルそんな……っ。

 

第9話:赤い結晶

カール……と、ここまでが、僕にまつわる噂の真相だ。
状況の共有ができたところで、本題に入ろう。
カール……〇〇。
君は、これを知っているね。

カールに目配せされたローレンツが、
ジュエリーケースのような小箱を開ける。
そこに入っていたのは、小さな赤い結晶だ。

主人公【これは……!】
【アリノミウム結晶……!】

ヴィヴィアンお、願い、この箱……。
この箱を、ラッセル教官、に……!

───あの日の記憶が、鮮明に蘇る。
〇〇に木箱を託し、動かなくなったヴィヴィアン。

アウトレイジャーの襲撃。
転がり出た結晶を握った瞬間に走った鋭い痛み。
そして───マークスの目覚め。


〇〇が硬直していると、
マークスが庇うように前へ出る。

マークスおい、その石をしまえ。
マスターにとって、あの時の記憶はつらいものなんだぞ!
カールマークス。君は下がっていてくれ。
これは、世界に起きている異常の鍵を握る、重要な問いなんだ。
カール〇〇。君がマスターになった日のことを教えてくれ。
……君が触った石は、確かにこれだったか?
主人公【……よく似ています】
【……同じような結晶でした】
カールよく思い出すんだ。
……本当にこれだったか?
触れた瞬間、何が起きた? どういう感覚だった?

〇〇は目を閉じて、あの日の記憶を辿りながら、
ゆっくりと話し始める。

結晶を手にした瞬間、耐え難いほどの苦痛に襲われたこと。
誰かの嘆きや悲しみ、怒り、恨み、憎しみ……様々な声に
呑み込まれそうになったけれど、どうにかそれを跳ねのけたこと。

主人公【死んでたまるかと、ただ必死で……】
→カール「ふむ。
究極の状況下でそう思える人物であることが、
僕が知りたかったことの答えに繋がっている。」

【暗かったので、まったく同じものかは……】

→カール「ふむ。
しかし、今の君の話が、僕にとってはほとんど答えだった。」
カール礼を言うよ、〇〇。
やはり、君を呼んだのは正、か……。
シャルルヴィル……カールさん……?

カールの身体がよろめいたかと思うと、
芝生の上に倒れ込みそうになる。
それを、ローレンツが慌てることなく抱き留めた。

ローレンツ…………。
……風に当たりすぎましたね。カール様……。
マークス(倒れるのがわかっていたような動き……?)
シャルルヴィルどうしたの!? 大丈夫!?
ローレンツ大丈夫。眠っておられるだけだ。
カール様は俺が車へとお運びする。
ローレンツ君たちもついてきたまえ。
そろそろ宮殿に戻らねば……。

───一行がヴァイスブルク宮殿に戻ると、
目覚めたらしいベルガーが再び暴れており、
5人が抜け出したことには気づかれていないようだった。

兵士1ああっ、ローレンツ様!
ローレンツ苦戦しているようだな。
カール様の眠りを妨げられては困る。加勢しよう。
兵士たちありがとうございます!
ベルガーうげぇっ! 捕まるかよバーカ!!
ローレンツふっ……我々を威嚇するモルモット1号が、
その窓枠に上がる確率は70%以上……。
ベルガーぐぇっ……!?
ローレンツよって、窓枠を踏んだ際に発動するトラップを仕掛けておいた。
フッ……またしても俺の理論が証明されてしまったな。
ベルガーぐがー……。
兵士1よし、地下へ運ぶぞ!!
兵士たちおう!!
主人公【彼は一体……?】
【ベルガーって、まさか……?】
ローレンツその話は次の機会にしよう。
まずは、カール様をお部屋へ運ばねば。

応接室のソファに横たえていたカールを抱え、
ローレンツは宮殿の中を進んでいく。
〇〇たちも、あとに続いた。

第10話:カールの頼み

ローレンツは、カールの私室らしい豪華な部屋に入ると、
そっとカールをベッドに寝かせた。

シャルルヴィルカールさん、本当に大丈夫?
いきなり倒れちゃうなんて……。
ローレンツ……カール様は近頃、眠りがひどく深くなられた。
俺には何も言ってくださらないのだが……。
マークスつーか、あんたも貴銃士なのに、
どうして世話係みたいなことをしているんだ?
ローレンツ……よくぞ聞いてくれた!
カール様は、古銃の中でもとりわけ長い歴史を持つだけでなく、
一級の芸術品の領域に達しておられる尊きお方だ。
ローレンツ持ち主が凡人であったとしても、その尊さは損なわれないだろう!
しかし、最初の持ち主は神聖ローマ帝国皇帝にしてスペイン国王、
カール5世! そしてカール様自身も、革命戦争の英雄……!
ローレンツ……ああ、あの日、青年は歓喜した。
偉大なる小さき皇帝陛下直々に命を受け、
大いなる役目を任されたわが身の幸運に!
ローレンツあの日から、俺の思いは変わらない。
カール様に粉骨砕身お仕えするのだ……!
マークス……なんつーか、ジョージの話をする時の
エンフィールドみたいだな。
主人公【大切なんだ】
【尊敬しているんだ】
ローレンツああ。心の奥底から。
ローレンツ…………。
……だが……。

ローレンツは暗い顔で溜息をつく。

ローレンツだが……俺は、カール様のお役に立てているのか……。
カール様は、俺にはきっと、すべてを明かしてくださっていない。
己の無力さが……心苦しい。
カール……ん、ん……。
ローレンツ……!
カール様がそろそろお目覚めになりそうだな。
俺とカール様の話はここまでにしておこう。
主人公【さっきの話につい───】
【アリノミ───】
ローレンツ……シッ!

ローレンツは小声とジェスチャーで、静かにするよう促す。

ローレンツさて! これを聴きたまえ!
諸君にウィーンが音楽の都たるゆえんを教えよう。
まずはお馴染みのシュトラウス・ファミリーの名曲だ。

打って変わって朗らかに言うと、
レコードをセットしてクラシック音楽を流し始めた。

マークスマスターの話の途中だぞ。
なんでいきなり音楽を流す。
ローレンツ俺としたことが、カール様がお休みの際に流す曲を忘れていた。
ああ、この素晴らしい音色……!
オーストリアの歴史ごと、響きを感じてくれたまえ……!

曲が流れる中、ローレンツは〇〇に歩み寄る。
そして、小声で耳打ちをした。

ローレンツ〇〇殿。
どうか、手を貸してほしい。
……カール様を助けてくれ。
主人公【……助ける?】
【どういうことですか?】
カール……続きは、僕から話そう。
シャルルヴィルカールさん、起きて大丈夫なの!?
カールああ、大丈夫だ。
別に具合が悪いわけではないのだが、驚かせてしまったか。

手招きされて4人がベッドサイドに近づくと、
カールは小声で話し始めた。

カール……すまないね。
貴銃士になってしばらくしてから、こんな調子になってしまった。
カール常に思考にモヤがかかっているようで、気がつくと眠ってしまう。
長く起きていることができないんだ。
カール以前───レジスタンスの頃の僕は、こうではなかった。
絶対高貴も使えた。
カールまあ、当時も力の加減を誤って、
やはり倒れるように眠ることは度々あったのだがねー。
絶対高貴を使っていない以上、あれとこれとは原理が違う。
マークス……あんたの話は、よくわからない。
助けが必要だと言うなら、もっとわかりやすく話せ。
カールやれやれ。君の番犬はせっかちだな。
……さっきも話した通り、今の僕は不完全な貴銃士だ。
もっと言うなら、不完全な形で召銃されているのだと思う。
マークス召銃に、完全も不完全もあるのか?
カールああ。僕の仮説が正しければ。
なぜこんなことになったのか……
再び目覚めてから、僕はずっと考えていた。
カールなにせ、この世界はおかしなことだらけだ。
アウトレイジャーの出没に、異様に多い例の結晶。
カールそして、次々に現れるマスター。
……こんなことは、本来あり得ないんだ。
主人公【どういうことですか?】
【何があり得ないんですか?】
カール……そこで君の出番だ、〇〇。
君は優秀だそうだからねー。
この謎を解いてもらおうというわけだ。謎解きは得意だろう?

カールは一息つくと、声のボリュームを普通に戻す。

カールさて、君たちにひとつ講釈をしようか。
ローレンツ、シュトラウスもいいがオペラを頼むよ。
ローレンツはい、カール様。
オーストリアが誇るオペラの数々……。
まずはアマデウス・モーツァルトがよろしいかと!
マークスは……?

ローレンツがオペラのレコードを流し始める。
同時に、ローレンツがオペラのうんちくを語り始めた。

ローレンツヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、
神聖ローマ帝国に生まれた偉大な作曲家。
彼の五大オペラは国立歌劇場に欠かせない。
カール今流れているのは、『ドン・ジョヴァンニ』だ。
少し、僕から解説しよう。
見に行くなら、事前に知識もあった方がいいだろうからねー。
マークスお前ら、いきなり何を言って……。
カール静かに。

マークスの声を遮ると、カールはメモを手に取った。

カール『重要な話は音楽に紛れるような小声で話すように。
だが、何も会話が聞こえないのも不審に思われる。
だから、雑談を挟みつつ、最重要事項は筆談で伝える』
カール『───この部屋はおそらく盗聴されている』

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