カール | やあ、よく来たね。 君が〇〇か。 |
---|---|
主人公 | 【はい】 【〇〇と申します】 |
マークス | 俺はマークス。 マスターの相棒だ。 |
シャルルヴィル | 僕はシャルルヴィルです。 お招きありがとうございます、閣下。 |
カール | ははっ、そう堅苦しくならなくていいよー。 僕はカール。 こっちがローレンツで、彼がマスターのフリッツ・ザラだ。 |
ローレンツ | ご紹介ありがとうございます、カール様。 |
ローレンツ | ヴァイスブルク宮殿へようこそ。フィルクレヴァートの客人たち。 俺は、オーストリア帝国初の国産ライフル、ローレンツだ。 |
ローレンツ | 言っておくが俺は、民間製の駄作ではないぞ。 官製の高性能で優秀な、真のローレンツ・ライフルだ。 くれぐれも混同しないように頼むよ。 |
マークス | どっちでも変わらな─── |
シャルルヴィル | なっ、なるほど! 官製でいらっしゃるんですね。それはそれは。 |
ローレンツ | む……? |
ザラ | ───それでは、私はあいさつ代わりのワンフレーズを。 |
フリッツ・ザラは、楽器ケースからバイオリンを取り出すと、
美しい旋律を奏で始める。
その手の甲には薔薇の傷が刻まれているが、
それが本物なのか偽物なのか、
見ただけでは〇〇にもわからなかった。
シャルルヴィル | Bravo! 名前を聞いてもしかして……って思ったけど、 まさかあのザラさんだなんて! |
---|---|
マークス | あんた、こいつのこと知ってるのか? |
シャルルヴィル | うん! 有名なバイオリニストだよ。 ロジェさんが晩餐会に招待したがってて、 名前を聞いたことがあったんだ。 |
ザラ | ……いかにも。 多忙ゆえに招待をすべて受けることはできないが。 かの人物が渦中の人となったからには、幸運だったと言える。 |
シャルルヴィル | …………。 |
カール | ザラ。 |
ザラ | ……失礼いたしました。 |
微妙な空気が流れる中、
なぜかローレンツがじりじりと〇〇へ近づいてくる。
主人公 | 【……何か?】 【……どうかしましたか?】 |
---|---|
ローレンツ | 君が、貴銃士を次々に絶対高貴へ導くというマスターか。 ふっ……実に興味深い。 俺のモルモット2号にならないか? |
主人公 | 【よくわからないけど嫌です】 【……? お断りします】 |
ローレンツ | ……フフフ……。 仮説は証明された。 |
マークス | マスター……こいつ、変だぞ。 変質者だ。近寄らない方がいい。 |
シャルルヴィル | うーん……。 ボクもマークスにちょっと賛成かな……。 |
ザラ | ……さて。 自己紹介は済んだな。 |
ザラ | 2日後の金鷲勲章授与式典まで、 観光でも楽しむといいだろう。 |
マークス | ……貴銃士も変なら、マスターも無礼な奴だな。 オーストリアには来たし、あいさつもした。 もう士官学校に帰っていいんじゃないか? マスター。 |
主人公 | 【そういうわけにはいかないよ】 【ちゃんと式典に参加しないと】 |
カール | 〇〇の言う通り。 せっかく来たのだから、ゆっくりしていくといい。 |
カール | 僕としても、ようやく会えたシャルルヴィルや君たちと、 もう少し語らいたいからね。 |
シャルルヴィル | ようやく、って……? |
ローレンツ | おや……? 君は知らないのか? 以前、リリエンフェルト家へ君宛ての招待状を送ったが、 予定が合わないと辞退の連絡が届いたのだ。 |
シャルルヴィル | そうだったんだ……。 |
シャルルヴィル | (……たぶん、ロジェさんが断ったんだろうな。 絶対高貴になれていなかったから……) |
カール | ところで、恭遠はどうしたんだい? 姿が見えないが。 |
マークス | 恭遠なら、連合本部から呼び出されて、 一緒に来られなくなった。 |
カール | ふぅん……。 |
カール | なるほどねー。 久々の再会を楽しみにしていたんだが、 そういうことなら仕方がない。 |
シャルルヴィル | よかったら、恭遠教官とのお話を聞かせてほしいです。 |
主人公 | 【ぜひお願いします!】 【レジスタンスのことを伺いたいです!】 |
上級使用人 | ───失礼いたします。 |
上級使用人 | 面会のお時間が終わりました。 お客様方をお見送りいたします。 |
シャルルヴィル | あっ、もう!? まだ自己紹介しかしてないのに……。 |
マークス | マスターが話そうとしてるのに邪魔をするな。 それに、こいつも元気そうじゃねぇか。 |
上級使用人 | 決まりですので。 どうぞご退室ください。 |
マークス | だが……! |
ローレンツ | ……カール様、まもなくです。 |
カール | うむ。 |
シャルルヴィル | えっ? 何が? |
シャルルヴィルの疑問には答えることなく、
ローレンツは時計を見ながらカウントダウンを始める。
ローレンツ | 5、4、3、2、1……。 |
---|---|
カール | ……ゼロ。 |
次の瞬間───。
使用人 | きゃあああっ!! |
---|
どこからか大きな爆発音のようなものが聞こえ、
宮殿が小刻みに揺れる。
マークス | 襲撃か……!? 敵はどこだ! |
---|---|
シャルルヴィル | 何、何っ!? 爆発……!? |
??? | ───絶対非道ッ! |
シャルルヴィル | ぎゃあああっ!! アウトレイジャー……じゃなくて、派手な貴銃士!? |
マークス | な、なんなんだコイツ! 敵なのか!? |
??? | うおおおお……!! やっと出られたぜぇー!! |
??? | シャバの空気サイコー!! アッヒャッヒャッヒャ! 手始めにそこらじゅうのコーク飲み干してやんぜぇ!! |
??? | オラオラオラァ〜〜〜!!! |
兵士1 | た、大変だ! 奴が脱走した!! |
上級使用人 | こっちです! 早く!! |
兵士2 | まずいぞ、早く確保しろ! |
兵士3 | だが、俺たちだけでは取り押さえられない! 応援を呼ぶぞ! 使用人は退避しろ!! |
ザラ | まったく……だからこの宮殿には来たくなかったんだ。 バイオリンを壊されてはたまらない……! カール様、ローレンツ殿、私は失礼します。 |
2人の返事を聞かずして、ザラはバイオリンをケースにしまうと、
1人足早に立ち去ってしまった。
シャルルヴィル | えっ、えええ……!? |
---|---|
マークス | どうする、マスター。 あいつがマスターの敵なら、俺はすぐに撃ち抜く。 |
??? | ……んぁ? なんだ、お前ら。 見たことねーやつな気がすんなぁ。 |
??? | 貴銃士だろ! やんのかオラ! |
シャルルヴィル | ちょっ、お、落ち着いて……! |
??? | 今日の俺はぁ……いける! ジャマなやつはぁ……ぶっ飛ばーす!! いっくぜぇ!!! |
突然始まった、謎の貴銃士との戦闘。
しかし、彼はアウトレイジャーにもなっておらず、
宮殿にいたことからして、徹底的に応戦するのもはばかられる。
??? | うが〜〜っ!! 暴れ足りねぇ!! もっと本気だせよザーコ!! |
---|---|
シャルルヴィル | なんなの、彼!? ムチャクチャだよ! |
マークス | クソ! ちょこまか動きやがって……! |
カール | ……ローレンツ、そろそろいいだろう。 |
ローレンツ | はっ、カール様。 俺にお任せを。 |
恭しくカールヘ一礼したローレンツは、
謎の貴銃士の方へと進み出る。
ローレンツ | Mr.ベルガー……いや、親愛なるモルモット1号。 大人しくしたまえ。彼がどうなってもいいのか? |
---|---|
ベルガー | ……うおっ!? アルパチーノ!! |
ローレンツは、透明なケースを掲げる。
その中には、1匹の白いネズミが閉じ込められていた。
アルパチーノ | キィ……! |
---|---|
ベルガー | てめぇ! アルパチーノに何しやがるつもりだ!! |
ローレンツ | 安心したまえ。 君が大人しくするのであれば、君の友は無事に明日を迎えられる。 |
ベルガー | ……!!! |
シャルルヴィル | (暴走が止まった!) |
ローレンツ | そして───さぁ、よく見るんだ! ここにあるのが何かわかるな? |
ローレンツの足元には、いつの間にか
布がかぶった箱があった。
ローレンツが、その布を勢いよく取り去ると───
ベルガー | 冷え冷えのコークゥゥゥ! |
---|
ローレンツが差し出したジュースを、
ベルガーはごくごくと一気に飲み干した。
ベルガー | っぷはぁ〜〜! うっめぇ〜!! |
---|---|
ベルガー | めぇ……めぇ〜。ヒツジ……? |
マークス | ん……? どうしたんだ。 元々変だったが、もっと様子がおかしくなったぞ。 |
アルパチーノ | キィ……? |
ベルガー | ぼへぇ……。 |
シャルルヴィル | え、倒れた!? |
ローレンツ | 安心しろ。眠っただけだ。 |
ベルガー | ……ぐー……すぴー……。 |
ローレンツ | モルモット1号がコークに夢中になっている隙に、 極細の針で鎮静剤を注入済みだ。 これでしばらくぐっすり眠ることだろう。 |
ローレンツは透明なケースの蓋を開け、
ネズミを取り出すと、眠っているベルガーの頭に乗せた。
カール | 計画通り、暴走兎のおかげで邪魔者は消えたね一。 では、楽しいお散歩といこうじゃないか。 君たち、こちらへ。 |
---|
カールに手招きされて、〇〇たちは
2人の方へと近づく。
カール | よし、全員“乗った” ね。 ……ローレンツ。 |
---|---|
ローレンツ | はっ、カール様! |
ローレンツが、ポケットから取り出したリモコンのボタンを押す。
次の瞬間───
───ガコッ!
〇〇たちの足元の床が開き、
床下の空間へと全員落下していった。
主人公 | 【どういうことー!?】 |
---|---|
シャルルヴィル | え、えええーーー!? |
マークス | マ、マスターーーー! |
───穴から通じていた抜け道を通り、
混乱に乗じてヴァイスブルク宮殿を抜け出した一行は、
ローレンツが運転する車でどこかへ向かっていた。
シャルルヴィル | ね、ねぇ……。 勝手に宮殿を抜け出したりして大丈夫なの? |
---|---|
マークス | どこに向かってるんだ。 マスターに危害を加えるつもりなら、俺がてめぇらを始末するぞ。 |
カール | 番犬は警戒心が強いくらいでちょうどいいが、 あまり吠えるのも騒々しいものだね。 |
カール | 君は、マークスと言ったかな。 僕は当然、君たちに何もする気はない。安心していいさ。 |
カール | ふわぁ……失礼。 どうも、車の揺れというのは眠くなるよー。 |
マークス | 呑気な奴だな……。 |
シャルルヴィル | さっきの人……ベルガーだっけ。 彼は置いてきてよかったの? |
ローレンツ | Mr.ベルガーはあの通り、暴走しやすい性質だ。 同行に適さない生物であることは、証明するまでもないだろう。 |
主人公 | 【行き先を教えてください】 【これから何をするんですか?】 |
カール | ただ……静かな場所で、 誰にも邪魔されずに君たちと話したいだけさ。 |
───やがて、車が止まる。
到着したのは、郊外にある墓地だった。
カール | こっちだ。 |
---|
カールの先導で、一行は墓地の中を進んでいく。
歩きながら、カールは世間話でもするように切り出した。
カール | 君たち、“死神皇帝”について知っているかね? |
---|---|
シャルルヴィル | ……! |
主人公 | 【……そういう噂があることは耳にしました】 →カール「ふむ。イギリスの士官候補生の耳にまで入るとは、 それなりに噂が広がっているようだね。 それとも、君だからこそ知っているのか……。」 【噂程度ですが、知っています】 →カール「そうか。素直でよろしい。 余計な探り合いの手間が省けるというものだ。」 |
カール | ……さあ、着いた。 |
カールは、とある墓標の前で足を止めた。
カール | ……これは僕の最初のマスター、オットー・ヨナスの墓だ。 |
---|---|
マークス | ……死んだのか。 |
カール | ああ。彼はまだ若く、前途洋々な青年だった。 だが……彼が僕を召銃してしばらく経った頃、異変が起き始めた。 |
カール | いや、異変はある意味、最初からかな。 今回の僕は、完全な貴銃士ではなかったのだからね。 |
シャルルヴィル | 完全な貴銃士ではないって……どういうこと? |
カール | 僕は……絶対高貴になれない。 貴銃士の姿をしているだけの、力の抜け殻さ。 |
ローレンツ | カール様、そのようなことは───。 |
カール | いいや、ローレンツ。 絶対高貴になれない貴銃士など、貴銃士のなり損ねだ。 僕はかつてそう断じたし、今でもそう思っている。 |
カール | 話を戻そう。 僕が不完全な目覚めを果たしてからしばらくして、 マスターであるオットーにも異変が現れ始めた。 |
カール | 薔薇の傷が悪化していき…… 優しく穏やかで、知性も品性もあった彼が、 誰彼構わず火が付いたように怒鳴り散らすことがあった。 |
シャルルヴィル | ……っ! |
カール | どうも、幻覚や幻聴の症状があったようでね。 その異変は、次第に僕の身にも起き始めた。 |
カール | そこで僕は、銃に戻ることにした。 |
マークス | ……? 戻ろうとして戻れるものじゃないだろ。 |
カール | なに、簡単なことさ。貴銃士としての肉体を壊せばいい。 君の銃では難しそうだが…… 僕は都合のいいことに、ピストルだからね。 |
マークス | ……っ、自分で自分を殺したのか……!? あんた、正気か? |
カール | ははっ、実に正気さ。 正気だったからこその選択とも言える。 |
カール | オットーの異変は間違いなく、マスターになったことが引き金だ。 貴銃士の維持にも、力を使うだろう。 だから、僕という負荷を減らしたわけだが……手遅れだった。 |
カール | 僕がいなくなったからといって、薔薇の傷が治るわけではない。 既に酷く衰弱していた彼は、まもなく命を落としたそうだ。 |
カール | さて……シャルルヴィル。 さっき、何か言いたそうな顔をしていたね。 オットーの異変について、君も心当たりが? |
シャルルヴィル | ボクの前のマスター…… ロジェさんと、似てるかもって思ったんだ。 彼は、最初はすごく優しい人だったのに、変わっていった。 |
シャルルヴィル | 絶対高貴になれって言われて……その、いろいろあって。 でも、ジョージが薔薇の傷を治してくれたら、 憑き物が落ちたみたいに元に戻ったんだ。 |
カール | ……ふむ。 君は彼の貴銃士だった頃から絶対高貴を使えると言われていたが、 やはり、本当は使えなかったんだね。 |
カール | そして、〇〇のもとで呼び覚まされてから、 本当に絶対高貴に目覚められた。 |
シャルルヴィル | う……うん。その通り。 |
カール | どうだい? 君の力、僕に見せてはくれないか。 |
シャルルヴィル | もちろん。 |
シャルルヴィル | ───絶対高貴。 |
ローレンツ | おお……! これがあの、絶対高貴……! |
カール | ……懐かしい光だ。 これがあれば、彼を救えたはずだ。 いや、彼らをと言うべきかな。 |
主人公 | 【“彼ら”というと……?】 |
カール | 僕が“死神皇帝”と呼ばれるゆえんだ。 オットーのあとも、マスターは変わり続けて…… 今は何人目だろうね。 |
カール | ───30人前後といったところかな。 |
マークス | さ、30人だと!? なんでそんなにマスターが死ぬんだ! |
シャルルヴィル | あ、あの! ザラさんの傷なら、ボクが治します! |
シャルルヴィル | カールさんたちは必要な存在だろうから、 傷を完全に消すことはできないけど、 こうやって絶対高貴になれる誰かが時々来れば─── |
カール | その必要はない。 彼はあの通り元気だから、貴銃士の派遣を受ける理由はないよ。 そもそも、彼に治すべき傷など存在していない。 |
シャルルヴィル | 噂通り、彼は偽のマスターってこと? でもそれなら、本当のマスターの傷を……! |
カール | それも不可能だ。 連合軍を通して打診してきたところで、 オーストリア政府が受諾する理由はない。 |
カール | 僕らのマスターは、死刑を待つ囚人だ。 死刑執行されるか、マスターとなり薔薇の傷で死ぬか。 いずれにせよ死ぬ運命にある。 |
マークス | ……ラッセルが聞いたっていう噂は、本当だったのか。 |
カール | うむ。要するに……僕は死刑執行人というわけだ。 誰が言い出したのかは知らないが、 “死神皇帝”とはお似合いの名だね、はは。 |
シャルルヴィル | そんな……っ。 |
カール | ……と、ここまでが、僕にまつわる噂の真相だ。 状況の共有ができたところで、本題に入ろう。 |
---|---|
カール | ……〇〇。 君は、これを知っているね。 |
カールに目配せされたローレンツが、
ジュエリーケースのような小箱を開ける。
そこに入っていたのは、小さな赤い結晶だ。
主人公 | 【これは……!】 【アリノミウム結晶……!】 |
---|
ヴィヴィアン | お、願い、この箱……。 この箱を、ラッセル教官、に……! |
---|
───あの日の記憶が、鮮明に蘇る。
〇〇に木箱を託し、動かなくなったヴィヴィアン。
アウトレイジャーの襲撃。
転がり出た結晶を握った瞬間に走った鋭い痛み。
そして───マークスの目覚め。
〇〇が硬直していると、
マークスが庇うように前へ出る。
マークス | おい、その石をしまえ。 マスターにとって、あの時の記憶はつらいものなんだぞ! |
---|---|
カール | マークス。君は下がっていてくれ。 これは、世界に起きている異常の鍵を握る、重要な問いなんだ。 |
カール | 〇〇。君がマスターになった日のことを教えてくれ。 ……君が触った石は、確かにこれだったか? |
主人公 | 【……よく似ています】 【……同じような結晶でした】 |
カール | よく思い出すんだ。 ……本当にこれだったか? 触れた瞬間、何が起きた? どういう感覚だった? |
〇〇は目を閉じて、あの日の記憶を辿りながら、
ゆっくりと話し始める。
結晶を手にした瞬間、耐え難いほどの苦痛に襲われたこと。
誰かの嘆きや悲しみ、怒り、恨み、憎しみ……様々な声に
呑み込まれそうになったけれど、どうにかそれを跳ねのけたこと。
主人公 | 【死んでたまるかと、ただ必死で……】 →カール「ふむ。 究極の状況下でそう思える人物であることが、 僕が知りたかったことの答えに繋がっている。」 【暗かったので、まったく同じものかは……】 →カール「ふむ。 しかし、今の君の話が、僕にとってはほとんど答えだった。」 |
---|---|
カール | 礼を言うよ、〇〇。 やはり、君を呼んだのは正、か……。 |
シャルルヴィル | ……カールさん……? |
カールの身体がよろめいたかと思うと、
芝生の上に倒れ込みそうになる。
それを、ローレンツが慌てることなく抱き留めた。
ローレンツ | …………。 ……風に当たりすぎましたね。カール様……。 |
---|---|
マークス | (倒れるのがわかっていたような動き……?) |
シャルルヴィル | どうしたの!? 大丈夫!? |
ローレンツ | 大丈夫。眠っておられるだけだ。 カール様は俺が車へとお運びする。 |
ローレンツ | 君たちもついてきたまえ。 そろそろ宮殿に戻らねば……。 |
───一行がヴァイスブルク宮殿に戻ると、
目覚めたらしいベルガーが再び暴れており、
5人が抜け出したことには気づかれていないようだった。
兵士1 | ああっ、ローレンツ様! |
---|---|
ローレンツ | 苦戦しているようだな。 カール様の眠りを妨げられては困る。加勢しよう。 |
兵士たち | ありがとうございます! |
ベルガー | うげぇっ! 捕まるかよバーカ!! |
ローレンツ | ふっ……我々を威嚇するモルモット1号が、 その窓枠に上がる確率は70%以上……。 |
ベルガー | ぐぇっ……!? |
ローレンツ | よって、窓枠を踏んだ際に発動するトラップを仕掛けておいた。 フッ……またしても俺の理論が証明されてしまったな。 |
ベルガー | ぐがー……。 |
兵士1 | よし、地下へ運ぶぞ!! |
兵士たち | おう!! |
主人公 | 【彼は一体……?】 【ベルガーって、まさか……?】 |
ローレンツ | その話は次の機会にしよう。 まずは、カール様をお部屋へ運ばねば。 |
応接室のソファに横たえていたカールを抱え、
ローレンツは宮殿の中を進んでいく。
〇〇たちも、あとに続いた。
ローレンツは、カールの私室らしい豪華な部屋に入ると、
そっとカールをベッドに寝かせた。
シャルルヴィル | カールさん、本当に大丈夫? いきなり倒れちゃうなんて……。 |
---|---|
ローレンツ | ……カール様は近頃、眠りがひどく深くなられた。 俺には何も言ってくださらないのだが……。 |
マークス | つーか、あんたも貴銃士なのに、 どうして世話係みたいなことをしているんだ? |
ローレンツ | ……よくぞ聞いてくれた! カール様は、古銃の中でもとりわけ長い歴史を持つだけでなく、 一級の芸術品の領域に達しておられる尊きお方だ。 |
ローレンツ | 持ち主が凡人であったとしても、その尊さは損なわれないだろう! しかし、最初の持ち主は神聖ローマ帝国皇帝にしてスペイン国王、 カール5世! そしてカール様自身も、革命戦争の英雄……! |
ローレンツ | ……ああ、あの日、青年は歓喜した。 偉大なる小さき皇帝陛下直々に命を受け、 大いなる役目を任されたわが身の幸運に! |
ローレンツ | あの日から、俺の思いは変わらない。 カール様に粉骨砕身お仕えするのだ……! |
マークス | ……なんつーか、ジョージの話をする時の エンフィールドみたいだな。 |
主人公 | 【大切なんだ】 【尊敬しているんだ】 |
ローレンツ | ああ。心の奥底から。 |
ローレンツ | …………。 ……だが……。 |
ローレンツは暗い顔で溜息をつく。
ローレンツ | だが……俺は、カール様のお役に立てているのか……。 カール様は、俺にはきっと、すべてを明かしてくださっていない。 己の無力さが……心苦しい。 |
---|---|
カール | ……ん、ん……。 |
ローレンツ | ……! カール様がそろそろお目覚めになりそうだな。 俺とカール様の話はここまでにしておこう。 |
主人公 | 【さっきの話につい───】 【アリノミ───】 |
ローレンツ | ……シッ! |
ローレンツは小声とジェスチャーで、静かにするよう促す。
ローレンツ | さて! これを聴きたまえ! 諸君にウィーンが音楽の都たるゆえんを教えよう。 まずはお馴染みのシュトラウス・ファミリーの名曲だ。 |
---|
打って変わって朗らかに言うと、
レコードをセットしてクラシック音楽を流し始めた。
マークス | マスターの話の途中だぞ。 なんでいきなり音楽を流す。 |
---|---|
ローレンツ | 俺としたことが、カール様がお休みの際に流す曲を忘れていた。 ああ、この素晴らしい音色……! オーストリアの歴史ごと、響きを感じてくれたまえ……! |
曲が流れる中、ローレンツは〇〇に歩み寄る。
そして、小声で耳打ちをした。
ローレンツ | 〇〇殿。 どうか、手を貸してほしい。 ……カール様を助けてくれ。 |
---|---|
主人公 | 【……助ける?】 【どういうことですか?】 |
カール | ……続きは、僕から話そう。 |
シャルルヴィル | カールさん、起きて大丈夫なの!? |
カール | ああ、大丈夫だ。 別に具合が悪いわけではないのだが、驚かせてしまったか。 |
手招きされて4人がベッドサイドに近づくと、
カールは小声で話し始めた。
カール | ……すまないね。 貴銃士になってしばらくしてから、こんな調子になってしまった。 |
---|---|
カール | 常に思考にモヤがかかっているようで、気がつくと眠ってしまう。 長く起きていることができないんだ。 |
カール | 以前───レジスタンスの頃の僕は、こうではなかった。 絶対高貴も使えた。 |
カール | まあ、当時も力の加減を誤って、 やはり倒れるように眠ることは度々あったのだがねー。 絶対高貴を使っていない以上、あれとこれとは原理が違う。 |
マークス | ……あんたの話は、よくわからない。 助けが必要だと言うなら、もっとわかりやすく話せ。 |
カール | やれやれ。君の番犬はせっかちだな。 ……さっきも話した通り、今の僕は不完全な貴銃士だ。 もっと言うなら、不完全な形で召銃されているのだと思う。 |
マークス | 召銃に、完全も不完全もあるのか? |
カール | ああ。僕の仮説が正しければ。 なぜこんなことになったのか…… 再び目覚めてから、僕はずっと考えていた。 |
カール | なにせ、この世界はおかしなことだらけだ。 アウトレイジャーの出没に、異様に多い例の結晶。 |
カール | そして、次々に現れるマスター。 ……こんなことは、本来あり得ないんだ。 |
主人公 | 【どういうことですか?】 【何があり得ないんですか?】 |
カール | ……そこで君の出番だ、〇〇。 君は優秀だそうだからねー。 この謎を解いてもらおうというわけだ。謎解きは得意だろう? |
カールは一息つくと、声のボリュームを普通に戻す。
カール | さて、君たちにひとつ講釈をしようか。 ローレンツ、シュトラウスもいいがオペラを頼むよ。 |
---|---|
ローレンツ | はい、カール様。 オーストリアが誇るオペラの数々……。 まずはアマデウス・モーツァルトがよろしいかと! |
マークス | は……? |
ローレンツがオペラのレコードを流し始める。
同時に、ローレンツがオペラのうんちくを語り始めた。
ローレンツ | ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、 神聖ローマ帝国に生まれた偉大な作曲家。 彼の五大オペラは国立歌劇場に欠かせない。 |
---|---|
カール | 今流れているのは、『ドン・ジョヴァンニ』だ。 少し、僕から解説しよう。 見に行くなら、事前に知識もあった方がいいだろうからねー。 |
マークス | お前ら、いきなり何を言って……。 |
カール | 静かに。 |
マークスの声を遮ると、カールはメモを手に取った。
カール | 『重要な話は音楽に紛れるような小声で話すように。 だが、何も会話が聞こえないのも不審に思われる。 だから、雑談を挟みつつ、最重要事項は筆談で伝える』 |
---|---|
カール | 『───この部屋はおそらく盗聴されている』 |
Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.
まだコメントがありません。