トルレ・シャフの幹部である『シェパーズ・クルーク』
───通称『杖』の面々に召集されたフルサトは、
指定された会議室の前に到着した。
込み入った話をしている様子なので、
話の腰を折らないよう、少し待機する。
??? | ───新しいコマの手配は順調かい、『バラニー』。 今のは不足があると話していたが。 |
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『バラニー』 | 無論。選抜を進めているところだ。 もともと今のは使い捨てのつもりだったのだが、 想定外のこともあり長く使うことになっただけのこと。 |
『バラニー』 | もう少し機密に関わらせることもでき、 振り回されるのではなく導けるような人員にすげ替える。 |
??? | そうか。 |
漏れ聞こえる会話がひと区切りついたところで、
フルサトは部屋の扉をノックした。
『バラニー』 | 入れ。 |
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室内には、『杖』のうち2人と1組、計4人がいた。
『バラニー』 | 来たか、フルサト。 絶対高貴でメサルティムの傷を治すように。 |
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フルサト | ……わかったワ。 |
『メサルティム』のマスター | はぁ……? やるのか? |
『メサルティム』の貴銃士 | やってもらえ。血が溜まってるんだろう。 |
『メサルティム』のマスター | まあな。 飲み込むか吐き出せばいいだけだが。 |
『杖』は人間の上級幹部だが、『メサルティム』は例外だ。
由来である二重星のように、
マスターと貴銃士で一座となっている。
その『メサルティム』のマスターは、
胸ポケットからシルクのハンカチを取り出すと、
口内に溜まっていた血を吐き出した。
そして、フルサトに向かって舌を出す。
そこには痛々しく血を流す薔薇の傷が刻まれていた。
フルサト | ……っ。 わざわざ傷を見せなくても大丈夫ヨ。 |
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フルサト | 絶対高貴での治療は、 身体のどこかに触れていればいいノ。 |
『メサルティム』のマスター | だが、見えていないと、治療のやめ時がわかりにくいだろう。 |
『メサルティム』のマスター | それにさ……見せたいんだよ。 普段隠しているものだからさ───フフ……! |
フルサト | ……絶対高貴。 |
絶対高貴の光が降り注ぎ、『メサルティム』の舌に刻まれた
薔薇の傷が癒やされていく。一輪の薔薇の花くらいの大きさに
戻ったところで、フルサトは治療を終えた。
『メサルティム』のマスター | これで満足か? |
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『メサルティム』の貴銃士 | ああ。 |
フルサト | …………。 |
フルサトは、そのまま『杖』たちに背を向けて去っていく。
彼らもまた、何事もなかったかのように会議を続けた。
『バラニー』 | ところで、オーストリアの引き継ぎは───…… |
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扉が閉まり、フルサトは次の目的地へ向けて歩き始める。
もう、会議室からの声は聞こえなかった。
フルサト | はぁ……。 |
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フルサト | (……時間がかかってしまったワ。 早く、あのコのところに行かないと……) |
フルサトが廊下を歩いていると、
前方からトルレ・シャフ構成員が慌ただしく走って来た。
トルレ・シャフ構成員1 | フルサト様!! こちらにいらっしゃいましたか!! |
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フルサト | ユー、あのコの世話係の……。 |
フルサト | 何かあったノ? |
トルレ・シャフ構成員1 | はい。 実験体5番ですが……アウトレイジャー化が始まりまして。 |
フルサト | ……!! |
トルレ・シャフ構成員1 | ……偶然いらっしゃった他の貴銃士様が治療してくださり、 結晶回収ののち再召銃されました。 が、今現在もかなり不安定な状況です……。 |
フルサト | …………。 そう、わかったワ……。 |
トルレ・シャフ構成員2 | フルサト様、よろしいでしょうか。 |
フルサト | ……今度はナニ? |
トルレ・シャフ構成員2 | 至急、シェパード・ルームにお戻りを。 モーゼル様がお呼びです。 |
───フルサトが会議室に行くと、
すでにアインスとエフが待機していた。
しばらくすると、モーゼルが部屋に入ってくる。
アインス | ……結論が出たのか。 |
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モーゼル | ええ。アシュレーに現時点で把握済みのすべての情報と、 我々の中で出た意見を伝えました。 |
モーゼル | ラブ・ワンについてですが───…… |
モーゼル | アシュレーは、残しておくことを選択しました。 |
アインス&エフ | ……っ! |
モーゼル | ……しかし、これは特例です。 今回は我々がラブ・ワンの銃本体を保管しているため、 破壊するほどの緊急性も必要性もないからこその判断でした。 |
モーゼル | 戦闘中に銃に戻り、我々が回収することが困難な場合や、 本体を所持したままで敵と接触した場合、こうはいきません。 あなたたちも、それは十分把握しておくように。 |
モーゼル | でないと、半端な判断をのちに後悔することになるでしょう。 |
モーゼル | …………。 |
モーゼル | (そう……僕は、後悔している。 あの時、『本体』を狙えなかったことを……) |
───イレーネ城での戦いにて。
玉座の間にアシュレーと2人で籠もったモーゼルは、
ドア越しに周囲を警戒していた。
モーゼル | (防衛ラインはもう機能していない。 特別幹部が無力化されたという報告もいくつか受けた。 できることならアシュレーを逃したいが、傷が酷すぎて……) |
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モーゼル | (……! 誰か来る……?) |
ライク♥ツー | ここだよ。 この扉の先の玉座に、あの人がいる。 ……これでいいでしょ? |
モーゼル | ───ッ!! |
モーゼル | (この声は、ライク・ツー……? 一体、何を……誰と話をして……) |
モーゼル | (……現実逃避をしている場合じゃない。 ライク・ツーは……アシュレーを裏切ったんだ) |
ライク♥ツー | モーゼルにバレたらやばいし、僕はあっちにいるから。 あとは勝手にやって─── |
静かに、ごく僅かに扉を開けたモーゼルは、
ライク♥ツーへと狙いを定め、引き金を引いた。
ライク♥ツー | あ……え…………? |
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───ドサッ!
モーゼル | アシュレーが無理を押して呼び覚ましたというのに、 その報いがこれですか。 |
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モーゼル | ……あなたはもう不要です、ライク・ツー。 |
モーゼル | 僕はかつて……UL85A2の銃本体を破壊しなかった。 |
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モーゼル | ……だからこそ今になって、あの貴銃士は、 厚顔無恥にも我らが敵として堂々とふるまっている。 |
モーゼル | 僕は、あの時あの銃を徹底的に破壊しておかなかったことを ひどく後悔しています。 |
エフ | …………。 |
アインス | モーゼル。ただの銃に戻ったラブ・ワンは、もう何もできない。 |
アインス | そして……俺たちはいつまでもあの方の味方だ。 俺たちが仕える主は、あの方ただ1人だ。 |
モーゼル | ええ。わかっていますよ、アインス。 あなたの忠誠は本物だと。 |
エフ | あらヤダ。アタシの忠誠もよ? |
フルサト | …………。 |
フルサト | はぁ……もう夕方ネ……。 |
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フルサト | (……呼び出しに始まって、本当にいろいろあった日だったワ) |
??? | ……から……ね 。 では、……しましょう……。 |
フルサト | 今の声……。 |
フルサトは足を止め、廊下の奥から聞こえる話し声に集中する。
フルサト | (どこかで聞き覚えがあるワ……。 そう、確か……レジスタンス時代に……) |
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声に誘われるようにして進んでいったフルサトは、
ある女性の後ろ姿を見て、思い出した名前を口にしていた。
フルサト | ……オリビア……? |
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オリビア | ……はい? |
フルサト | ねぇ、ユー……オリビア、よね? レジスタンスのシンパで、街の手芸屋さんの……! |
オリビア | ……ああ、懐かしいわ、フルサト様! |
オリビア | またお会いできるなんて……! あの頃は、よくうちの店に毛糸を 買いに来てくださっていましたよね。 |
───レジスタンス時代、
フルサトには行きつけの手芸屋がいくつかあった。
そのうちの1つが、オリビアの店だ。
フルサト | コンニチハ♪ 家族に手袋を編む毛糸を探しているノ。 どの色がいいかしらネ? たくさんあって迷っちゃうワ。 |
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フルサト | ひとりひとり合う色がいいカシラ? デモ、お揃いもかわいいわよネ、きっと! |
オリビア | ふふっ、仲がよくて羨ましいですね。 せっかくですし、揃いにしてみたらいかがです? |
フルサト | オリビアは、お揃いがイイと思う? |
オリビア | ええ。 みんなでお揃いって、「家族」って感じがして嬉しいと思います! |
フルサト | それじゃあ、お揃いにしちゃうわネ。 色は……。 |
オリビア | こちらの赤色はどうですか? これなら、もしも雪の上に落としてしまった時も目立って、 すぐに見つけられると思いますよ。 |
フルサト | そうネ……! とっても綺麗な色だし、この赤い毛糸にするワ。 |
オリビア | はぁい! お買い上げありがとうございます♪ ご家族のみなさんが喜んでくれるといいですね。 |
フルサト | まさかココで、昔の知り合いに会えるなんて……! |
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フルサト | でも、ユーがどうしてトルレ・シャフの施設に……? まさか、ユーも脅迫されてここに連れてこられたノ……!? |
オリビア | え……? |
オリビア | ……ふふ。安心してください、フルサト様。 私は大丈夫ですから。 |
フルサト | 本当に……? つらいことはナイ? 何かあれば言ってチョウダイ。 ワタシにできることがあれば、力になるワ。 |
オリビア | いいえ、お気持ちだけで。 本当に大丈夫なんです、フルサト様。 だって……。 |
オリビア | ───だって私、最初から世界帝に忠誠を誓っている身ですから。 |
フルサト | …………え? |
『オリビア』 | あはは……! 本当に懐かしいわ、『オリビア』って名前。 レジスタンスのシンパのふりをして、 レジスタンスの情報を集めてた時に使ってたのよね。 |
フルサト | ……ッ! |
『オリビア』 | 『オリビア』だった頃は親しくさせてもらったわね。 フルサト様が色々と話してくれたから、私、本当に助かったの! |
『オリビア』 | ま、さすがに具体的な話はしてくださらなかったけど。 何気ない日常の話も、他の諜報員の情報を繋ぎ合わせれば、 意外と役に立ったりもするんですよ? |
『オリビア』 | ……あ、そうそう。 あなたとの関わりがトルレ・シャフでも活きたの。 |
『オリビア』 | モーゼル様にあなたのことを報告して…… それをもとに、あなたをこの役目にお選びになったんですって! ああ、なんて光栄なのかしら……! |
フルサト | う……そ……。 |
フルサトはその場から駆け出す。
フルサト | (やめて……ヤメテ、もうヤメテ……!) |
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フルサト | (ワタシの宝物をメチャクチャにしないで……! せめて、思い出ダケは……綺麗なまま大切にさせて……) |
フルサト | (これ以上、ぐちゃぐちゃに汚さないで……) |
かつてレジスタンスのシンパを演じていた
トルレ・シャフ構成員から逃げ出して、
フルサトは部屋へと戻って来た。
フルサト | …………はぁ……はぁ……。 あんなノ、嘘……全部、嘘にきまってるワ……っ! |
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フルサト | …………。 |
フルサトは部屋の片隅に転がっていた毛糸玉を手に取り、
一心不乱に編み始める。
フルサト | ……手袋。 |
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フルサト | 手袋を、編まなくチャ……。 |
フルサト | そ、そう……そうヨ、手袋を編むノ。 そうしたら……そうしたら、きっと喜んでくれるワ。 きっとみんな、喜んで─── |
フルサト | (……みんな……?) |
フルサト | (みんなって……誰? 誰もイナイのに……) |
フルサトは手を止め、部屋の隅のカゴをぼんやりと見つめる。
そこには、フルサトが今までに編んだ手袋が
山のように積まれていた。
フルサト | ……っ! |
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フルサト | ワタシ、いつの間にこんなに編んだノ……? |
フルサト | はぁ……フ、フフフ……。 |
フルサト | (部屋に1人でいるとツラくて、寂しくて……。 何かして気を紛らわせたくて、いつの間にか編んでたのネ。 今もソウ……ワタシ、手袋を編もうとしてる) |
フルサト | (こんなコトしても、あの頃は戻ってこないのに……) |
フルサト | 忘れ物はナイ? 手袋も耳あてもしっかりつけた? |
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サカイ | 大丈夫やで! |
クニトモ | フルサトさんに作ってもろた手袋やさかい、 絶対忘れたりせーへんよ。 |
フルサト | 大事に使ってくれて嬉しいワ。 ワタシも、みんなにもらったマフラー、大事に使うわネ♪ |
サカイ | おおきに! |
フルサト | ……ッ。 |
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フルサト | (ああ、思い出してしまったワ。 今朝見ていた、優しくて温かい夢……) |
フルサト | (思い出したら、ツラくなるのに……) |
フルサト | ………………。 |
フルサト | 金チャン。サカイちゃん。クニトモちゃん。 |
フルサト | ……マスター。 |
フルサト | ワタシ、レジスタンスで家族ができたのに…… 1人になっちゃったワ……。 |
フルサト | うっ……うっ……っ。 |
───トルレ・シャフ本部、シェパード・ルーム。
アインス | なぜ、彼───フルサトだったんだ? |
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モーゼル | ……? それは、どういう意図での質問でしょうか? |
アインス | ……我々が欲しかったのは、確実に絶対高貴が使える古銃だ。 |
アインス | 移送中に奪取することを考えると、 移送距離が長く積み替えなどで隙があると有利。 世界連合との連携が緊密でないならなおよし───。 |
アインス | そのあたりの条件から絞り込んだのはわかる。 だが、似たような条件の銃は他にもあっただろう。 |
アインス | なぜ、彼を選んで呼び覚ましたのか…… 特別な事情があるのであれば聞いておきたい。 |
モーゼル | ……それは───。 |
───革命戦争終結後。
処刑から逃れたアシュレーは、
暗躍していた信奉者から真のアリノミウム結晶を献上され、
再びマスターとなる道を選んだ。
モーゼル | ……陛下、お身体の調子はいかがですか。 |
---|---|
アシュレー | ああ、悪くない。 |
アシュレー | 馴染み深い傷を得られて、むしろ調子が良いくらいだ。 力比べでもしてみるかい? |
モーゼル | ……お戯れを。 |
アシュレー | 戯れというなら、君もだろう。 ……今の私は『陛下』じゃない。ただのアシュレーだ。 |
モーゼル | ……アシュレー……。 |
モーゼル | 薔薇の傷をお見せください。 |
アシュレー | 心配性だな。 そんなに変わりはないだろう? ほら。 |
モーゼル | ……確かに、世界帝であらせられた頃とは 比べ物にならないほど良好な状態ですが、 僕を再召銃した直後と比べると、やや進行しています。 |
モーゼル | この傷がまた茨のごとくあなたを蝕む前に、 早い段階で対策を打たねばなりません。 |
モーゼル | ……僕はもう二度と、 あなたに、あんな苦痛を味合わせたくない。 |
モーゼル | ……絶対高貴になれる古銃を早急に召銃することが 必要不可欠です。 |
モーゼル | アシュレー。本日は、あなたが召銃するにふさわしい 銃の候補を見繕ってまいりました。 ……こちらの資料を。 |
アシュレー | …………。 |
モーゼル | 召銃自体が負担となる以上、 呼び覚ますのは、絶対高貴になれる保証のある銃にすべきです。 |
モーゼル | 古銃であるだけでは不十分…… 絶対高貴になれるということを自分たちがこの目で確認している、 レジスタンスの貴銃士がもっとも確実でしょう。 |
モーゼル | レジスタンスの貴銃士のうち、どの銃が適切かですが…… 量産銃は元マスターが所持しているようで、 まだ居所の特定ができていません。 |
モーゼル | 特定できた後も、すり替えれば流石に気づくでしょうから、 我々の動きを悟らせることになり得策ではないかと。 |
モーゼル | そこで、かのマスターの手を離れ、 各国に返還される予定の一品銃を 移送中にすり替え、入手することを提案します。 |
モーゼル | 面倒事をなるべく避けるため、世界連合の影響が強い地域…… たとえばフランスなどから距離がある国の貴銃士が理想です。 それらを満たす候補としては───。 |
モーゼル | トルコのアリ・パシャ、エセン、マフムト。 ロシアのエカチェリーナ、アレクサンドル。 日本のイエヤス、ヒデタダ、ユキムラ、キンベエ、フルサト。 |
モーゼル | 僕はその中から、日本の『フルサト』を推薦します。 |
アシュレー | ……それは何故? |
モーゼル | まず、彼の所有権を有しているのが日本だからです。 |
モーゼル | 世界連合───レジスタンスの息がかかった組織が、 新世界秩序を構築しようとする中で、 あの国は連合から一定の距離を置いています。 |
モーゼル | 我々にとっては、いろいろと好都合です。 |
モーゼル | そして、もう1点は彼の性質です。 フルサトという貴銃士は人一倍情に厚く、温厚で、 しかし仲間のために時に容赦なく力を振るうと報告がありました。 |
モーゼル | ……平和な世界を望み、 時にリスクを取ることも辞さない、志高いアシュレー…… あなたに通じるところがある貴銃士ではないかと考えました。 |
アシュレー | それは美しい話だな。 ……だが、君のことだから、理由はそれだけではないだろう。 |
モーゼル | はい。 ───彼なら、レジスタンスのマスターや近縁の銃を人質に取れば、 容易に操ることが可能です。 |
アシュレー | ああ……モーゼルはいい子だ。 |
モーゼル | ……っ! |
アシュレー | いいだろう。話を進めておくれ。 |
モーゼル | ……っ、はい。お任せを、アシュレー。 |
モーゼル | ……長所と短所は表裏一体です。 |
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モーゼル | どちらも本来は単なる特性にすぎず、 周囲にとって都合のいいものが長所で、 不都合なものが短所とみなされているだけのこと。 |
モーゼル | 貴銃士フルサトは仲間思いで情に厚い─── これは、長所であり短所でした。 |
モーゼル | 我々にとっても長所といえるかもしれませんね。 ありがたいことに、弱点が明確なのですから。 |
モーゼル | ラブ・ワンとライク・ツー───あの2挺も同じです。 兄弟銃に対しての思い入れが強く、それが長所であり短所でした。 |
モーゼル | その結果……どうなりましたか? |
アインス | …………。 |
モーゼル | 現場にいた監視役から、任務失敗、裏切りのコードが届いた時…… 僕は『ああ、やっぱりか』としか思いませんでした。 あまりにも予想通りでしたから。 |
モーゼル | ……それに比べて、アインス。 ベルギーでのあなたの冷静な判断、見事でしたね。 |
モーゼル | あの状況で、敵か味方か明確に判別できなかったファルを 軽率に連れ帰ったり、ほだされて隙を見せたりするようなら、 僕はあなたを見限っていたでしょう。 |
モーゼル | 後顧の憂いを断つために、破壊すらしていたかもしれませんね。 |
アインス | ……ああ。お前なら、そうするだろう。 |
モーゼル | ……今後も、聡明な判断を期待していますよ。 次は、決別を決めた時点で破壊するか、 銃にした上で奪取するかまでしてほしいところですが。 |
アインス | ……覚えておこう。 |
モーゼル | …………。 |
モーゼル | (……僕たちは、絶対高貴の力を求めて古銃の貴銃士を召喚した) |
モーゼル | (……絶対高貴は、気高い心の力だと聞いたことがある。 ならば、どれだけ御しやすく操りやすくても、 心が折れるような貴銃士ではダメだった) |
モーゼル | (……長所と短所は、本当に表裏一体だ) |
モーゼル | (特定の人物や集団にひどく思い入れをもっているがゆえに 操りやすいと判断していたフルサトだが…… 彼は彼らを守るためなら、どこまででも自分を犠牲にできる) |
モーゼル | (報告にあった彼の言動からは、 僕の、アシュレーに対する思いと似たものを感じた) |
モーゼル | (その証拠に、どれだけ孤独を感じようと、 どれだけ傷つこうと、彼はまだ折れていない) |
モーゼル | (……僕もアシュレーのためなら、 どんなに過酷な状況でも耐えられる) |
モーゼル | (僕たちのために、僕たちの見据える理想のために……) |
モーゼル | (───その心、これからも折らないでくださいね。フルサト) |
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