??? | ……ダンロー・ユリシーズ。 特別召集令状に従い参上いたしました。 |
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中将 | 来たかね、ユリシーズ少佐。 ……その召集令状が意味するところは理解しているな。 |
ダンロー | はい。 もちろん承知しております。 |
中将 | ならばいい。 長らく続いているドイツの苦境を打破するため、 君が任務を全うすることを期待する。 |
中将 | ……この結晶を使いたまえ。 |
中将が机の上に置かれた小箱を開けると、
そこには赤黒い結晶が入っていた。
ダンロー | これが……アリノミウム結晶……。 |
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中将 | そして── 君の貴銃士となるのは、この2挺だ。 |
中将 | プロイセンを悲願のドイツ帝国統一へと導いた、 世界初の実用的ボルトアクション銃…… ドライゼ・ニードルガン。 |
中将 | そして、我が国が誇るライフルの傑作、 世界四大アサルトライフルにも数えられる、DG3だ。 |
中将 | 『彼ら』が、今のドイツでどのような立場にあるかは……ふむ。 いや、言うまでもないことだったな。 |
ダンロー | ……それでは、失礼します。 |
一度深呼吸をしたダンロー・ユリシーズは、
どことなく禍々しい光を放つ、
赤い結晶へと手を伸ばした。
ダンロー | ……っ!! |
---|
一瞬の鋭い痛みと共に、結晶を掴んだ手の甲に
薔薇のような形の傷が刻まれる。
ダンロー | ぐ……っ! |
---|
ダンローは息を整えると、
その手で2挺の銃に触れた。
その瞬間、部屋は眩い光に包まれ、
やがて──
ドライゼ | …………。 |
---|---|
エルメ | …………。 |
ダンロー | 君たち、が……。 |
エルメ | いかにも。 僕はDG3──コードネームはエルメだよ。 よろしくね、新しいマスターさん。 |
ドライゼ | 私は、ドライゼだ。 |
中将 | ドライゼ君、エルメ君。紹介しよう。 彼は、ダンロー・ユリシーズ少佐。 軍歴が長く、優秀な軍人だ。 |
中将 | 任務に忠実で、周囲からの信頼も厚い。 私も、彼を高く評価している。 |
ダンロー | ドライゼ特別司令官、エルメ特別司令官補佐…… よろしくお願いします。 |
ダンローは握手をしようと、右手を差し出す。
薔薇の傷が刻まれたその手を見て、
ドライゼはわずかに顔をしかめた。
エルメ | よろしく、ユリシーズ少佐。 |
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ドライゼ | …………。 |
エルメ | ……どうしたんだい、ドライゼ。 新たなマスターと、友好関係を結ばないと。 |
エルメ | ほら、握手だよ。できるでしょう? |
ドライゼ | ……私たちは戦いのために呼ばれた。 そのような行為は、私たちにとって無用なものだ。 |
ドライゼ | 私は戦場に行く。 エルメ。お前も、貴銃士の本分を忘れるな。 |
エルメ | ……ひどいね。俺が1度でも、 戦闘や練兵に手を抜いたことがあったかい? |
エルメ | Keine Komorpmiss……妥協はしない。 君も知っているだろう。 |
ドライゼ | ……そうだな。先ほどの発言は訂正しよう。 |
ダンロー | …………。 |
中将 | どうだね、ユリシーズ少佐。頼もしい貴銃士だろう? ドライゼ君……彼は、軍人の中の軍人だ。 いかなるときも、彼の心は鉄のように揺るがない。 |
エルメ | ……鉄のように、ね。 いいね、その通り。僕たちは鉄だもの。 |
エルメ | 目的を達成するためには、 いかようにも冷徹になることができる。 |
中将 | ドライゼ君が特別司令官、エルメ君がその補佐に ついていることで、前線の士気は非常に高い。 これからもよろしく頼むよ、エルメ君。 |
エルメ | Jawohl。 |
中将 | さて……ユリシーズ少佐。 君ほどの軍人には言うまでもないことだが、 貴銃士のマスターに選ばれるのは、大変な誉れだ。 |
中将 | 存分に職務に励んでくれたまえ。 ……命の限り、な。 |
ダンロー | ……はい。 |
兵士1 | ……あの! もしやあなたは、ユリシーズ少佐ではありませんか? |
---|---|
ダンロー | ん……? 確かに私はユリシーズだが。 |
兵士1 | やはりそうでしたか……! 少佐には以前、戦地で助けていただきました。 またお会いできて光栄です! |
ダンロー | ……ああ、君か。 見違えたが、もちろん覚えているとも。 ……震えていた新兵が、立派になったものだね。 |
兵士1 | 覚えていてくださったのですね……! 立派だなんて……こうして生きていること自体、 ユリシーズ少佐のおかげです! |
感極まった若い兵士は、
固く握手を交わそうと、両手を差し出した。
微笑んで応えたダンローだが、
その手甲に刻まれている傷を見て、
兵士はさっと青ざめる。
兵士1 | ……っ! ユリシーズ少佐…… その手の傷は、まさか……。 |
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ダンロー | ああ……実は、特別召集令状が届いてね。 |
兵士1 | やはり、薔薇の傷……。 どうしてあなたほどの方が、そんな決死の任務に!? |
ダンロー | 君が気にすることではないさ。 君は君の任務をまっとうしたまえ。 私も、命じられたこの任務をまっとうするのみだ。 |
兵士1 | ユリシーズ少佐。あなたには恩があります。 僕にできることがあれば、なんでもします……! |
ダンロー | ……私には、妻も子もいない。未練はないさ。 むしろ、最後に名誉ある役目をいただけて、 よかったとすら思っている。 |
ダンロー | ただ……1つだけ心残りがあるとすれば……。 |
マークス | ……マスター! 朝食以来45分ぶりだな。 会えて嬉しい。 |
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ライク・ツー | は……? 会ってない時間カウントしてるのか……? |
恭遠 | 〇〇君。 そんなに慌ててやってきて、どうしたんだ? |
ラッセル | 貴銃士クラスとの合同授業は次の時間だが…… 彼らに何か、急ぎの用事でも? |
主人公 | 【教官たちにお話があります】 |
ラッセル | ほう。私たちに……? |
主人公 | 【ドイツに行かせてください!】 |
ラッセル | ド、ドイツ!? |
恭遠 | 随分とまた、急な話だな。 何があったのか、順を追って話してくれ。 |
恭遠の言葉に頷いた〇〇は、
事の経緯を話し始めた。
主人公 | 【手紙が届いたんです】 【例の、支援者の方から連絡があって……】 |
---|---|
ラッセル | 手紙? |
支援者から、今朝、新たに手紙が届いたのだと
〇〇は2人の教官に伝えた。
ラッセル | 君の支援者というと…… 〇〇君に仕送りをしたり、 進路の相談に乗ってくれていたという人のことだね。 |
---|---|
ラッセル | 確か、ダンローさんと言っていたか。 |
ダンローというファーストネームだけを名乗る彼は、
世界帝軍に両親を殺され、天涯孤独の身となった
〇〇を長年援助している人物だ。
金銭的な支援を行うだけでなく、
時折届く手紙を通して様々な相談に乗ってもらい、
〇〇の心の支えにもなっていた。
士官学校入学に際し、
UL96A1を贈ってくれたのも、ダンローである。
恭遠 | そんな人物がいたのか……。 それで、どうしてドイツに行くという話に? |
---|---|
主人公 | 【初めて、会う許可をもらえたんです】 【会いたいと言ってもらえて……!】 |
支援者の存在がなければ、
孤児となった〇〇は、
どうなっていたかわからない。
そのため〇〇は何度も、
直接会ってお礼を言いたいと手紙で伝えていたが、
その度に断られていた。
しかし……今朝届いた手紙には、こう書いてあった。
『よかったら、ベルリンに来てほしい。
立派に育った君の姿を、一目見せてくれないか』と。
ラッセル | ふーむ、なるほど……。 |
---|---|
ラッセル | 君のような優秀な生徒が、フィルクレヴァートに 入学するための後押しをしてくれた人だ。 |
ラッセル | こちらも、ぜひ行ってくるようにと、 背中を押したいところなのだ、が……。 どう思われます、恭遠審議官。 |
恭遠 | うーむ……。難しいですね。 |
ラッセル | ええ……。 |
マークス | なんだ? なぜマスターをドイツに行かせてやらない。 |
恭遠 | それはだな……ドイツは今、 非常に不安定な状況なんだ。 |
マークス | 不安定……? |
ラッセル | ああ。親世界帝派の集団が武装蜂起して 一部地域を乗っ取り、局地的内乱状態にある。 |
ラッセル | ……正直なところ、許可はかなり出しづらい。 〇〇君に万が一のことがあったら、 悔やんでも悔やみきれないからね。 |
マークス | ……そんな危険なところにマスターが行くのは、俺も反対だ。 だが、マスターがどうしてもと言うなら、 俺が全力でマスターのことを守る。 |
マークス | マスターの望みを叶えるのが、 マスターの愛銃である俺の役割だからな! |
ライク・ツー | …………。 ドイツの内乱って、どんなにひどい状態なのか? |
ラッセル | 全土が、というわけではないが……長期化しているな。 せっかくだから、現在の情勢について話しておこう。 |
ラッセル | 世界の多くの国では、革命戦争後、 比較的安定した情勢を保つことができている。 |
ラッセル | 特に、イギリスやフランスは、世界帝統治下時代から レジスタンス活動が活発だったから、 戦後の親世界帝派の排除も早かった。 |
ラッセル | ただ、ドイツの場合、そう簡単にはいかなくてな。 |
ライク・ツー | あー……そういえば、ドイツには、 世界帝軍のヨーロッパ最大の拠点があったんだっけ。 |
恭遠 | その通りだ。世界帝軍のお膝元だったこともあって、 親世界帝派の残党も多く……時折そういった連中の 蜂起を受けて、情勢がなかなか安定しないんだ。 |
ラッセル | 特に、最近になって 親世界帝派の動きが再び活発化しているようでね。 |
ラッセル | あまり規模の大きくない戦いだったし、 当初は簡単に鎮圧できると思われていたんだが、 かれこれ数ヶ月も膠着状態が続いている。 |
ライク・ツー | 連合軍が聞いて呆れるな。 ドイツ支部は、残党の雑魚相手に何やってんだよ。 |
ラッセル | それが……どうも、反乱軍の中に 強力で厄介な部隊がいるらしくてな。 |
マークス | ……まさか、アウトレイジャーか? |
ラッセル | その可能性は非常に高い。 でなければ、武力で圧倒できるはずのドイツ支部が、 ここまで手こずる理由がない。 |
ライク・ツー | なぁ、ドイツ支部には貴銃士はいないのか? |
恭遠 | 公表されている限り、貴銃士は4人いるな。 |
マークス | 4人もいるのか。 |
恭遠 | ああ。まずはドライゼ。プロイセンが生んだ、 銃の歴史を変えたボルトアクション式ライフルだ。 かつてレジスタンスにも、同型の銃の貴銃士がいた。 |
恭遠 | 2挺目は……アサルトライフルの名作、DG3。 コードネームはエルメだと聞いている。 |
恭遠 | そして、DG3の後継として開発が進められた、 ケースレス弾を用いた実験的な銃……DG11。 コードネームは、ゴースト。 |
ライク・ツー | ……! それって、世界帝軍にもいた……。 |
恭遠 | ああ。同じタイプの中の貴銃士だ。 同一の個体ではないという話だが……。 |
恭遠 | 最後は、DG36、コードネームはジーグブルート。 DG11の開発が頓挫したため、DG3の後継として 新たに作られたアサルトライフルだ。 |
恭遠 | 彼ら貴銃士4名をもってしても、 内乱は今のところ収束する様子がない。 地域によっては、かなり危険だろう。 |
マークス | だ、だったら……! |
マークス | だったら、俺だけ行ってくる! マスターに危険がなきゃいいんだろ。 |
---|---|
ライク・ツー | 〇〇が会いたがってんだ。 お前が行っても意味ねーだろ、バカ。 |
マークス | くっ……そうだった。 |
ライク・ツー | なぁ。ドイツ全土がヤバいわけじゃないんだろう? ベルリンだけ行ってサッと帰ってくりゃいーんじゃねーの? |
恭遠 | ベルリンは今のところ情勢が安定しているが…… そもそも、突然会いたいと言ってきたことが気になるな。 |
恭遠 | 〇〇君が、複数の貴銃士を呼び覚ました マスターだと知った何者かが、支援者を装って おびき出そうとしている可能性もあるのでは? |
主人公 | 【筆跡は、間違いなく本人のものです】 【脅されて書かされたものでもないかと】 |
ラッセル | 〇〇君。君は、絶対高貴になれる貴銃士と 絶対非道になれる貴銃士、両方を呼び覚ましている、 世界的に見ても稀有な存在なんだ。 |
ラッセル | 当然、連合軍にとっても重要な存在だし、 何より、私は君の担当教官として、 危険地帯にみすみす送り出すような真似はできない。 |
主人公 | 【でも、どうしても行きたいんです】 【ダンローさんに会わせてください】 |
ラッセル | 〇〇君…… 賢い君が、そこまで無理を言うとは。 |
主人公 | 【……嫌な予感がするんです】 【この機を逃したら、二度と会えない気が……】 |
恭遠 | …………。 ラッセル教官。〇〇君に、 許可を与えてやってもらえませんか? |
ラッセル | 恭遠審議官……。 あなたも、ドイツ行きの危険は承知しているはずです。 なぜ、そんなことを……? |
恭遠 | ……俺にも、覚えがあるんです。 そういう、嫌な予感に。 |
恭遠 | 杞憂で終わることも多かったですが…… 嫌な予感が、現実になることもあった。 そして、そういう時、ひどく後悔したんです。 |
恭遠 | 『あの時、無理を通してでも、ああしておけばよかった』……と。 その後悔は、決して消えることがありません。 |
ラッセル | …………。 |
主人公 | 【どうか、お願いします】 【ドイツへ行かせてください】 |
ラッセル | はぁ……そこまで言われては、 私が引き下がるほかないようだ。 |
ラッセル | ……よし。 |
ラッセル | 〇〇君。 君に、ドイツの内情視察を目的とした任務を命じる。 |
ラッセル | 安全確保のため、貴銃士を伴ってドイツに赴き、 首都ベルリンの様子を視察、報告するように。 |
ラッセル | 現地は局所的に内乱中のため、 内乱地帯への接近や長期の滞在は避け、 帰還後は報告書の提出をすみやかに行うこと! |
ラッセル | ……わかったかい。 |
主人公 | 【イエッサー!】 【お2人とも、ありがとうございます!】 |
十手 | 随分と熱心に話し込んでいたが、 どうやら一件落着のようだな。 |
ジョージ | んで、なんの話してたんだ? |
マークス | 俺とマスターが、ドイツに行くという話だ。 |
ライク・ツー | いや、微妙にちげーだろ。 〇〇がドイツに行くことになったけど、 誰か貴銃士をつけないとマズいってとこまでだ。 |
マークス | だから俺が行く。当然だ! |
ラッセル | おっと。それは許可できないな。 |
マークス | な、なんでだよ! マスターに俺がついていくのは当然だろ!? |
ラッセル | マークス、君は今週末に古典の追試があるらしいな。 数学や工学系の科目は優秀なのに、スナイピングに 無関係な科目は悲惨極まりないと聞いているぞ。 |
マークス | 古典なんてできなくてもいいだろ! 俺は銃だぞ! |
ラッセル | 君たちは確かに銃だが、ただの銃ではない。 〇〇君と共に戦う貴銃士だ。 相応の教育を受けてもらわないと。 |
マークス | だ、だけど! マスターの安全のほうが優先だ! |
ラッセル | ああ、それは当然そうだ。 私としても、〇〇君の安全を 一番に考えたいと思っている。 |
ラッセル | ……恭遠審議官。 十手、ジョージ、ライク・ツーの3名は、 追試の予定などはあるでしょうか。 |
恭遠 | ええと…… 十手は、化学と音楽が追試になっていますね。 |
十手 | め、面目ない……。 化学は難しい言葉が多くて、 内容がなかなか入ってこないんだ……。 |
ラッセル | 音楽の方は、何が苦手なんだい? |
十手 | あの、みょうちきりんな記号がなぁ……。 おたまじゃくしにしか見えないんだよ……。 |
ジョージ | あ、じゃあオレが── |
恭遠 | ジョージ。君が一番ひどいぞ。 体育以外は全科目が追試だ……! |
ジョージ | ええーっ、マジかよ! 割と自信あったのに! |
ラッセル | た、体育以外すべてとは……。 |
ラッセル | それで、ライク・ツーは……。 |
ライク・ツー | ハッ。 俺が追試なんてダセェことするわけないだろ。 |
マークス | はぁ……!? じゃああんたは、全科目クリアできたっていうのか!? |
恭遠 | ふむ……できているな。 全科目90点以上! 見事なものだ。 |
ライク・ツー | 当然だろ。こんな雑魚どもと一緒にされたら、 UL85A2の名が泣くっての。 |
十手 | つまり……〇〇君の旅のお供は、 ライク・ツー君で決まりかな。 |
主人公 | 【お願いできるかな】 【よろしく】 |
ライク・ツー | りょーかい。 ……ま、たまには遠出も悪くねぇしな。 |
マークス | クソっ……! 古典さえなければ……! マスター、古典を撃ち抜いてくるから、 俺も連れて行ってくれ!!! |
主人公 | 【撃ち抜いたらだめだよ】 【追試はちゃんと受けよう】 |
マークス | くっ……マスターがそう言うなら……っ! |
ジョージ | 残念! オレも行きたかったな~、ドイツ。 ソーセージが美味いんだろ? |
十手 | びぃるという酒が有名だと聞いたことがあるなぁ。 日本酒とはまた違った味わいなのか、気になるよ。 |
恭遠 | 君たち……観光しに行くんじゃないんだぞ。 |
ラッセル | さて/……〇〇君。 理事長や各所には私が話を通すから、 出発まで数日待ってくれ。 |
ラッセル | それから……くれぐれも気をつけてくれよ。 ライク・ツーと、2人揃って無事に帰還してくれ。 それが、私たち教官の何よりの願いだ。 |
──数日後、ベルリンにて。
主人公 | 【(活気がある街だ……)】 【(内乱の影はあまり感じない……)】 |
---|---|
ライク・ツー | おい、キョロキョロしてんじゃねーよ。 こっち来い。 |
ライク・ツー | ……にしても、賑やかなもんだな。 恭遠がベルリンは情勢が安定してる方だって言ってたけど、 もうちょっと荒れてんのかと思ってた。 |
新聞屋 | 号外、ごうがーい! |
新聞屋 | 今回もミュンヘン奪還ならず! 謎の強兵に阻まれ、連合軍は苦戦! |
新聞屋 | 前線はニュルンベルクまで後退、睨み合いが続く! 現在の最前線はニュルンベルク! |
ライク・ツー | (謎の強兵……やっぱり、アウトレイジャーなのか? でも、奴らはまともに意思疎通できねぇし、 ドイツ支部を妨害する意味がわかんねーな……) |
市民男性1 | 予想以上に苦戦しているらしいな……。 |
市民女性1 | でも、大丈夫でしょう? ドライゼ様はじめ、貴銃士が4人もいるのよ。 |
市民男性1 | それもそうだな。ドライゼ特別司令官が、 親世界帝派の残党なんて蹴散らしてくれるはずだ。 |
市民男性1 | 厳しい戦況が続く中でも前線の士気は高いと聞くし、 今に猛烈な反撃が始まるに違いない! |
老人1 | 世界帝派だかなんだか知らないが、 わしはとにかく、いい加減平和に暮らしたいもんだ。 |
市民男性2 | ……ふん、いい気味だ。 親世界帝派の粛清なんかしてたら、 どっちが悪者だかわかったもんじゃねぇ。 |
市民男性2 | 大人しくニュルンベルクを明け渡して、 親世界帝派の自治区として認めりゃいいんだ。 |
市民男性3 | ああ、暮らしづらくなったもんだなぁ……。 世界帝軍の基地があった頃の方が、 街が豊かだった気すらするぜ。 |
ライク・ツー | ……驚いたな。このご時世に、 世界帝を大っぴらに支持する声があるとは。 |
主人公 | 【イギリスとは様子が違う】 【でも、どうして……?】 |
ライク・ツー | 当時、甘い汁を吸った奴も多いんだろ。 欧州最大の基地があったってことは、 それだけ多く人も金も集まってたってことだ。 |
ライク・ツー | 圧政下で上手く生き延びるためかもしれないが、 世界帝軍との癒着に奔走したって奴も、 相当いたんじゃないのか? |
ライク・ツー | そういう奴らが、栄光の影にすがって、 世界帝統治時代の再来を夢見てるんだろ。 |
ライク・ツー | ……ほら、行くぞ、〇〇。 とっとと行って、とっとと帰ろうぜ。 |
ライク・ツー | お前のその制服、良くも悪くも目立ってるし。 世界連合軍の士官候補生サマ? |
主人公 | 【……行こう】 |
ライク・ツー | ……って、おい。 命がけの決戦に行くみたいな顔になってんぞ。 |
ライク・ツー | これから恩人とやらに会って、お礼言うんだろ? だったら、その……もうちょっと嬉しそうっつーか、 リラックスして行った方がいいんじゃねぇの。 |
ライク・ツー | せっかく念願叶って、 ずっと会いたかった奴に会えるんだからさ。 |
主人公 | 【……緊張しすぎてたみたいだ】 【……意外と優しいね】 |
ライク・ツー | ……っ、なに寝ぼけたこと言ってんだ。 おら、行くぞ! |
──待ち合わせ場所として指定されたのは、
連合軍ドイツ支部近くのホテルのロビーラウンジだった。
約束の時間になり、周囲を見回すが、
人を探している様子の男性はいない。
ライク・ツー | ……おい、なんだよ。 呼び出しといてバックレか。 |
---|---|
ライク・ツー | っつーか、今まで直接会おうとしなかった奴が いきなりそんな手紙を寄越してくるとか…… やっぱり、なんかの罠じゃねぇの? |
主人公 | 【あの手紙は偽物なんかじゃない】 【何か事情があるに違いない】 |
ライク・ツー | はぁ……仕方ねぇ。 ダンローって奴が泊まってないか、確認するか。 お前も適当に口裏合わせろよ。 |
ライク・ツー | おい。俺たちは連合軍イギリス支部から任務で来た。 貴銃士ライク・ツーと、そのマスターだ。 |
ホテルマン | ……! |
ライク・ツー | 詳細は明かせないが、 ダンローという人物を探している。 ここにまだ泊まってるか確認してくれ。 |
ホテルマン | は、はい……! |
すぐさま宿泊簿を調べ始めたホテルマンだったが、
やがて、首を横に振る。
ホテルマン | ダンロー様という方のご宿泊の記録はありません。 ですが、もしかすると……。 |
---|---|
ライク・ツー | ん……? 何か知ってるのか? |
ホテルマン | ああ、いえ……ダンロー様と伺って、 ユリシーズ少佐が思い浮かんだのですが……。 |
ライク・ツー | ユリシーズ少佐……? |
主人公 | 【詳しく聞かせてください】 【ユリシーズ少佐とは?】 |
ホテルマン | 少佐は、ベルリンではちょっとした有名人ですよ。 優れた知略、己の身を顧みない勇敢な行動で、 若い兵士たちの命を救ったそうです。 |
ライク・ツー | ふぅん……。ドイツ支部所属の少佐なら、 ここを待ち合わせ場所にしたのも納得だな。 ドイツ支部の目と鼻の先だし。 |
ライク・ツー | 問題は、なんで来てねぇのかだけど……。 |
主人公 | 【ドイツ支部に行ってみよう】 【こちらから会いに行こう】 |
ライク・ツー | 賛成。待ちぼうけって嫌いなんだよな。 |
ライク・ツー | 目立つからどーかと思ってたけど、 お前、クソ真面目に制服で来ててよかったな。 その格好なら、すんなり通してもらえるかもしれねぇ。 |
連合軍ドイツ支部は、厳重に警備されていた。
武装した門兵が、〇〇たちを
少し怪訝そうに上から下まで眺める。
門兵 | その制服……イギリスの、 フィルクレヴァート連合士官学校の学生ですね。 ご用件は? |
---|---|
主人公 | 【ユリシーズ少佐に会いに来ました】 【ユリシーズ少佐との面会を希望します】 |
門兵 | ユリシーズ少佐に……? しかし、彼は──…… |
??? | ──あっ、いた! おーい! |
ライク・ツー | ん……? |
慌てた様子で走ってきたのは、
1人の若い兵士だった。
兵士1 | やっぱり、フィルクレヴァートの制服だ……! 君が、〇〇さんですか!? |
---|---|
主人公 | 【はい】 【自分が〇〇です】 |
兵士1 | よかった! ホテルのロビーに行ったのですが、 すれ違ってしまったようで……。 受付の人に教えてもらい、こっちへ来たんです。 |
兵士1 | これで、ユリシーズ少佐との約束を果たせる……! |
安堵の息をついた兵士だったが、
すぐに真剣な表情になり、居住まいを正す。
兵士1 | 〇〇士官候補生殿。 ダンロー・ユリシーズ少佐は、 今朝ニュルンベルクへ発たれました。 |
---|---|
兵士1 | 少佐は、あなたにお会いすることを 心から楽しみにされていました。 |
兵士1 | 御足労いただいても会えない非礼を許してほしいと、 言伝を承っております。 |
ライク・ツー | ふぅん……。 ……ってことは、とりあえず、 手紙の主はダンロー・ユリシーズで確定か。 |
ライク・ツー | それより、ニュルンベルクっつーと……。 |
新聞屋 | 前線はニュルンベルクまで後退、睨み合いが続く! 現在の最前線はニュルンベルク! |
---|
ライク・ツー | さっき、号外配ってる奴が言ってたな。 ミュンヘン奪還に失敗して、 前線がニュルンベルクに後退したって。 |
---|---|
ライク・ツー | 最前線に投入されたら、 少佐だろうが命の保証はねぇ。 それで、急に会いたいって言い出したのか……。 |
兵士1 | …………。 |
兵士1 | 本当は、出立は明日の朝のはずでしたが…… 上から、急な命令が下ったのです。 |
兵士1 | そこで、少佐に会いに来るであろうあなたへ、 これを必ず渡すようにと頼まれました。 |
兵士が差し出したのは、飾り気のない封筒だった。
中を見てみると、小切手が入っている。
ライク・ツー | 一、十、百、千、万、十万、百万、せ…… うわ、マジかよ。 |
---|
ライク・ツーも〇〇も、
驚きの表情になる。小切手に記されていたのは、
軽々しく人に渡せるはずもない大金だった。
──ただ、数字が妙だ。
十万、百万単位のキリがいい金額ではなく、
1の位まで不規則な数字が並んでいる。
主人公 | 【(これって、もしかして……)】 【(おじさんの全財産じゃ……!?)】 |
---|---|
兵士1 | ユリシーズ少佐から伝言です。 |
兵士1 | 「今のドイツは危ない。 これを受け取ったら、すぐにイギリスに戻りなさい。 どうか元気で」……。 |
兵士1 | ……自分も同じ意見です。 各地に親世界帝派の残党が蔓延っていて、 ベルリンの安寧もいつまで続くかわからない。 |
兵士1 | 本当は……あなたに一目会いたいという、 ユリシーズ少佐の願いを叶えたかった。 |
兵士1 | しかし……少佐が一番に願っているのは、 あなたが無事に巣立つことです。 ですからどうか、安全なうちに、イギリスへ帰還を。 |
主人公 | 【…………】 【……伝言、ありがとうございました】 |
ライク・ツー | ……さて、これで用は済んだな。 |
---|---|
ライク・ツー | 情勢が比較的安定してるベルリンなら 行ってもいい、って許可だったんだ。 お目当てが前線に行っちまったらどうしようもない。 |
ライク・ツー | 報告できるくらいには、 街の様子も適当に視察できたし、帰るぞ。 |
主人公 | 【……まだ、帰れない】 【行かないと】 |
ライク・ツー | はぁ……? 何言ってんだよ。 ……まさか、ニュルンベルクに行くとか 言うつもりじゃねぇだろうな? |
ライク・ツー | おいおい、冗談じゃねーぞ。 さっきの号外聞いただろ。 ニュルンベルクは最前線だ。 |
ライク・ツー | そんなとこに、現代銃の俺だけ連れて乗り込むとか、 無謀通り越して馬鹿の極みだぞ。 |
主人公 | 【今回だけは譲れない】 【今行かないと、一生後悔する気がする】 |
ライク・ツー | …………。 |
ライク・ツー | あの小切手、やっぱりそういうことだよなぁー……。 |
ライク・ツー | ここに来る前、お前が「嫌な予感がする」って言ってたけど…… 当たってると思うぜ。 きっと、ダンローはもう戻らないつもりで── |
ライク・ツー | 前線で死ぬつもりで、お前にあれを渡したんだろうな。 だから、お前の主張はある意味正しい。 ──だがな。 |
ライク・ツー | だからって、前線に突っ込むのはねぇよ! |
ライク・ツー | ベルリン限定のちょっとした護衛役で来たんだ。 道中でアウトレイジャーに遭遇したらどうする? 俺が絶対非道を使えば、お前の傷は悪化するんだぞ。 |
ライク・ツー | 絶対高貴になれる奴がいないと、 傷を治せなくて詰む。 合理的に考えて、そんな状況で── |
主人公 | 【それでも、どうしても行かないと】 【わがままを、どうか許してほしい】 |
ライク・ツー | …………。 はぁぁ…………。 |
ライク・ツー | お前、普段は割と柔軟なくせに、 譲らない時はクソ頑固だよな……。 |
ライク・ツー | あー……仕方ねぇ。 護衛で来たからには、俺もついて行ってやる。 ただし、勝手に動くな。俺の目の届くところにいろ。 |
ライク・ツー | お前は自分の安全を最優先に考えて行動しろ。 ……いいな? |
主人公 | 【了解!】 【ありがとう】 |
ライク・ツー | ったく……! おっさんの顔見たら、さっさと帰るからな! |
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