ドイツ編Ⅰ:第17話~第23話

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第17話:兄と弟1

ライク・ツーおい、〇〇。
大丈夫か? 傷を見せてみろ。
主人公【大丈夫】
【そんなに悪化してない】
ライク・ツー……ん、これくらいなら許容範囲内だな。
士官学校からの応援が来るまで、慎重に戦わねぇと……。
主人公【ライク・ツーのおかげで助かった】
【最小限の絶対非道で戦ってくれてありがとう】
ライク・ツー別に?
俺はやれることをやっただけだし。
ライク・ツーあと、変な誤解、するなよ?
さっきのは効率を考えて言ったんだ。
マスターを使い捨てなんてやり方、効率悪すぎるだろ。
ライク・ツー……まぁ、
お前がマスターで、不満はねえのは事実だけどな。
主人公【わかってる】
【ありがとう】
ライク・ツー……フン。

ドライゼ…………。
ドライゼ……撃てなかった。
俺は、撃ってしまったら──……。
???…………。
連合軍兵士3ゴーストさん! 戦況は一体……!?
ゴーストもう、終わったみたい……だ。
損害は軽微……俺たちも、戻る……戻ろう。
連合軍兵士3はっ! かしこまりました!
ゴースト──憐れやな、ドライゼ……。

ライク・ツー……ったく。
戦ったばかりってのに、会議かよ。
昼メシもほぼ食ってねぇし、腹減ったんだけど。
エルメ仕方ないよ。
この会議は、元々予定されていたものだからね。
ライク・ツーその割に、俺たち以外誰も来ていないけど?
エルメそれも仕方ない。
ドライゼはドイツ支部の上層部に連絡を入れないといけないし、
応援要請の件もある。
ライク・ツーいや、それなら俺らも、
会議が始まるまで休憩でよかっただろ……。
エルメそうかな?
いいことがあるかもしれないよ。

そう言ったエルメは、棚から応急処置セットを取り、
ライク・ツーへと渡す。

エルメはい、どうぞ。
ライク・ツー……どうも。
ライク・ツー〇〇、手を出せ。
この時間に手当てをやっちまおう。
主人公【よろしく】
【ありがとう】
エルメ君の薔薇の傷って、どんな感じなの?
俺にも少し見せてくれないかな。
ライク・ツーおい、邪魔すんなよ。
エルメ大丈夫だよ、見るだけだから。
エルメふぅん……ほとんど薔薇の花の形そのままで、
あんまり悪化していないね。
エルメ絶対高貴になれる貴銃士がいると、
こんなもので済むのか。
エルメ……うん、ありがとう。満足したよ。
ドライゼが来る前に、早く包帯を巻いてしまって。
ライク・ツーはぁ……?
なんだよ、あいつ、手当てに文句でもあんのか?
エルメそうじゃなくて……。
ライク・ツーなんだよ。言いかけたなら言え。
気になるだろ。
エルメうーん……あんまり言いふらしたくはないけど、
一緒に任務に当たる上で、
君たちには知っておいてもらった方が安全かな。
エルメここだけの話にしてほしいんだけど、
……彼、血が苦手なんだよ。
ライク・ツーはぁ? 意味がわからねぇ。
俺たちは銃だぞ?
エルメそうなんだけど。より正確には、血というか──

エルメが言葉を続けようとした時、
ノックもなく、いきなりドアが開く。

ライク・ツー&エルメ……!
ライク・ツーなんだ、お前かよ。
ジーグブルートあ? なんか文句あんのかよ?
エルメまさか。むしろホッとしたところだよ。
ちょっと噂話をしていたものだから。
ジーグブルート噂ァ? 夜中やら明け方に幽霊が出るってやつか。
どうせ正体はゴーストだろ。
エルメその噂は初耳だな。
だけど、俺も幽霊の正体については同感だね。
エルメ……それはそうと、ジグ。
さっきは命令を守れて偉かったね。
マスターの様子は見てきた?
ジーグブルート見るまでもねぇよ。俺が不完全燃焼ってことは、
あいつはまだピンピンしてるんだろ。
エルメ……まあ、君がマスターの顔を見たがらないのは、いいとして。
エルメいずれにせよ、一生懸命なのは立派だけど、
みんなの迷惑になっちゃだめだよ。
ジーグブルートその上から目線な言い方をやめろ!
俺は俺のやりたいようにやるだけだ。
てめぇの指図は受けねぇ!
エルメふぅ。困った子だ。
ジーグブルート……こいつら、最近よく見るな。
エルメああ、そういえばまだ
ジグと〇〇たちは自己紹介をしていなかったね。
エルメちょうど手当ても終わったみたいだし、
今のうちに挨拶を済ませておくとしよう。
エルメジグ。彼らは、イギリスの連合士官学校から来た、
マスターと貴銃士だよ。
エルメUL85A2の貴銃士、コードネームはライク・ツー。
それから、マスターの〇〇。
主人公【よろしくお願いします】
【〇〇です】
ジーグブルート……俺はDG36。
コードネームはジーグブルートだ。
ジーグブルート砂塵まみれでも問題ねぇ、
水に沈もうが平気で使える、実戦向きの傑作だぜ。

第18話:兄と弟2

エルメジグは、俺の後継として開発された銃なんだ。
本当は、DG11──ゴーストが後継になる予定だったんだけど、
開発が頓挫してしまってね。
エルメケースレス弾を用いた……排莢が必要ない銃っていう
コンセプトはすごく面白いと思うんだけど、
ゴーストはついに実用には至らなかった。
エルメその反省を生かして、堅実に開発されたのが、
ジーグブルートだよ。少し意外でしょ?
ジーグブルートおい、意外ってどういう意味だよ……!
ライク・ツー堅実……こいつが……?
ジーグブルートてめぇ、喧嘩売ってんのか!?
エルメこら、すぐに噛み付くのはよしなさい。
ジーグブルートチッ……。
エルメご覧の通り、俺とジグはあんまり似てなくてね。
ジグは俺の機構を踏襲しているわけじゃないから、
そのせいかな……?
ジーグブルートお前の機構が特殊なんだろうが。
……性能はいいけどよ。
エルメふふ、当然のことだけど、ありがとう。
エルメさて……君たちはこれから
任務で一緒に行動することもあるだろうし、
協力してやってくれると助かるよ。
ライク・ツー……ああ。
こいつに“協力”なんて芸当ができるならな。
ジーグブルート……あ?
ジーグブルートてめぇ……UL85A2って言ってたな。
欠陥銃と名高いUL85A1の改修品様じゃねぇか。
ライク・ツー……!
ジーグブルート大改修で、少しは使えるようになったのか?
それとも、たまにまぐれで弾が撃てる鈍器のままか?
ライク・ツーてめぇ……!
エルメこら、ジグ。
今日のジグを見ていて、協力できるのかと
彼が危惧するのは当然のことだよ。
ライク・ツー彼の前身がどうであれ、彼自身は、
世界水準のアサルトライフルだと聞いている。
喧嘩を売るのはやめなさい。
ジーグブルート……クソが。

険悪な雰囲気に耐えかねて、
〇〇は話題を変えようと試みる。

主人公【あの、もう1人の貴銃士は……!?】
【まだ一度もお会いしていませんが……】
エルメ……ああ、さっき少し話したけど、
もう1人の貴銃士はDG11──ゴーストだよ。
ライク・ツーゴースト……。
エルメまあ、その名の通り、
ゴーストのように掴みどころがなくて、神出鬼没でね。
エルメ俺たちでさえ、いることになかなか気づけないんだ。
エルメもしかしたら、どこかですれ違ったりしてるかもしれないけど、
気づかなかったって可能性もあるね。
あの子は声も小さいし、存在感もないから。
ジーグブルートハッ、あの失敗作は、知らねぇうちに踏み潰される
アリみたいなヤツだぜ。
失敗作らしく、身の程を弁えてるだけいいがな。
エルメこら。年長者をそんなふうに言ったらだめだよ。
彼がいるから君がいるってのに。
ジーグブルート……フン。
ライク・ツーんで……そいつはどこにいるんだ?
エルメさぁ……? さっきの戦闘にも、
少し遅れて合流したみたいだけど、
もう拠点に戻ってるんじゃないかな。
ジーグブルートあれ、あいつ来てたのかよ。
全っ然気づかなかったぜ。
ジーグブルートま、あいつが来たところで
大して役に立ちもしねぇだろうけどよ。
エルメ他に用がなければ会議に参加するだろうし、
そのうち会えると思うよ。
……君たちが、彼に気づけたら、だけど。
ライク・ツー…………。
エルメ……おっと、ようやく来たみたいだね。

廊下側から足音が聞こえたかと思うと、
ドライゼ、ユリシーズに続いて、
ドイツ支部の兵士たちが会議室へと入ってくる。

ドライゼ……もう来ていたのか。
待たせたな。
ジーグブルートおう、遅ぇんだよ。何ちんたらしてんだ。
ダンロー今日の一連の襲撃や戦闘について、
ベルリンに報告を入れていた。
それから、連合軍からの応援についても。

エルメたちが何度か絶対非道を使って戦ったからか、
ダンローの顔色は心なしか、
先ほど〇〇が見た時より悪くなっていた。

彼の体調が気がかりで、〇〇が
じっと顔色を窺うと──目が合った途端、
ダンローはわずかに、眉間に皺を刻んだ。

主人公【(ダンローおじさん……?)】
【(勝手なことをしたから、怒ってる……?)】
ドライゼでは、定例会議を始める。
ユリシーズ少佐、報告を。
ダンローはっ。ドイツ支部総帥および連合軍本部へ、
〇〇士官候補生とその貴銃士に、
ドイツ支部から協力を要請したいと打診しました。
ダンロー士官学校および貴銃士たち本人からの合意も得たため、
明日早朝に、貴銃士3名が
シュトゥットガルト拠点へ向けて発つとのこと。
ライク・ツー3人っつーと……
全員、補習は後回しにしたみたいだな。
ま、お前の命が懸かってるんだし、当然だけど。
エルメ到着はいつ頃になる見込みかな。
ダンロー最短で明日の夜ですが……
親世界帝派が動きかねない地帯を避けつつ陸路を辿るため、
2~3日かかる可能性もあります。
ドライゼ承知した。到着後はエルメの隊に加え、
アウトレイジャー討伐を中心に、
任務に当たって──

その時、ドタバタと駆けてくる
せわしない足音が聞こえてくる。

???ドライゼ特別司令官……!
緊急の伝令です!
ドライゼ……なんだ? 入れ。
伝令兵失礼いたしますッ!

駆け込んできた兵士は、息を整える間も置かず、
額に汗を流しながら報告する。

伝令兵国外からの親世界帝派支援を断ち、
残党の国外逃亡を防ぐため、
暴動鎮圧まで、国境が封鎖されることとなりました!
ライク・ツー国境閉鎖だと!?

第19話:番人の咆哮

ライク・ツーそれじゃあ、ジョージたちはどうなるんだよ!
ちゃんとドイツに入れるのか?
ドライゼ……無論、そのように手配する。
エルメ連合軍に所属する貴銃士が、
親世界帝派のはずもないしね。
ドライゼただし、厳重な検問が敷かれるからには、
入国までに多少時間がかかる可能性はあるな。
ライク・ツーあいつらが到着するまで、激しい戦闘は控えたい。
大規模戦闘まで、猶予はどれくらいある?
ドライゼ……あまり余裕はない。
ニュルンベルク基地の奪還を急がねばならんからな。
加えて、未だ行方を掴めない捕虜たちもいる。
ドライゼ明日の朝には、フランクフルトからさらなる増援が来る。
明後日以降で作戦を決行する予定だ。
エルメニュルンベルクは、ミュンヘン奪還のための重要拠点なんだ。
そこをいつまでも、敵に掌握させたままにするわけにはいかない。
エルメニュルンベルク奪還作戦は3~4日後。
それまでに応援が間に合わなくても、
作戦は決行すべきだと進言するよ。
ドライゼああ、エルメの言う通りだ。
ドライゼ〇〇、ライク・ツー。
士官学校からの応援が間に合わずとも、
お前たちに作戦に参加する意思はあるか?
主人公【はい!】
【当然です!】
ドライゼいいだろう。
お前たちの作戦参加を許可する。
ライク・ツーんで、基地を奪還するって言っても、
具体的にどうやってやる気なんだ?
ライク・ツー向こうにとっても重要拠点なんだから、
必死で守ろうとするだろ。
おまけに、わらわら出てくるアウトレイジャーもいる。
ドライゼああ……我が軍が一番手を焼いているのが、
多数のアウトレイジャーの出現だ。
ドライゼ前線で数か月の戦闘を重ね、はっきりしたことがある。
……原理は不明だが、アウトレイジャーどもと反乱軍との間では、
戦闘が発生していない。
ライク・ツーは……? どういうことだ。
エルメアウトレイジャーはどうも、反乱軍に対しては
攻撃をしかけないみたいでね。
でも、彼らは意思疎通を図れる存在じゃないし……。
エルメ反乱軍は何かしら、アウトレイジャーを寄せ付けない
秘密の手段でも握っているのかもしれない。
エルメそういうわけで、こちら側だけが、
反乱軍に加えてアウトレイジャーの相手で
疲弊していってるってわけ。
ドライゼ兵力をどこかに集中させた時、
脆い部分にアウトレイジャーが現れれば、
一気に瓦解しかねない。
ドライゼ満遍なく力を分散させると戦術が限られ、効率も悪い。
そこで、まずは最大限アウトレイジャーを排除する。
ドライゼ前回の襲撃時にはアウトレイジャーを13体確認した。
これまでの出現傾向から考えても、
想定できる出没数は10体から15体程度だろう。
エルメ俺が率いる少人数の部隊で、偵察をしつつ、
アウトレイジャーを倒していく。
その後、本隊が一気に攻め込み、迅速に制圧するんだ。
ドライゼ仮に、アウトレイジャーが想定より多く、
20体ほど出現したとしても、
貴銃士が4人いれば、十分対応可能なはずだ。
ジーグブルートハッ。4人もいらねぇよ。
俺だけで10体は倒せるからな。
ドライゼ……指揮に反しない範囲で可能ならば、
やってみるといい。
ジーグブルート上等だ。
ダンロー作戦決行までの数日は、どう動きましょうか。
これまで毎日のように小競り合いを繰り返していたと
耳にしています。動きを止めれば、怪しまれるかと。
ドライゼ別に奇襲部隊を編成し、何度か小競り合いを仕掛ける。
小規模戦闘の中で、敵の布陣が弱いところを探れれば
本作線にもプラスになるだろう。
ドライゼ人員の選出は、各隊長に任せる。
兵士たちはっ!
ドライゼ──全員、心して聞け!
ドライゼ親世界帝派のこれ以上の身勝手を許すな!
ドイツはかつて、世界帝軍の巨大な基地があり、
悪事に自ら進んで加担した者もいたという。
ドライゼ既に過去となれど、その事実は消えない。
だからこそ我々は、この身をもって
世界に証明する必要があるのだ。
ドライゼドイツは世界帝派の残党が跋扈することを許さず、
平和のために正義をなす国であると!
ドライゼ我々はドイツを守る番人!
与えられた力を正しく振るい、母国の未来を切り開け!
ドイツに栄光あれ!
兵士たち栄光あれ!
ドライゼ以上だ。各人、配置に戻れ!
兵士たちJawohl!

ライク・ツー……作戦までに、
あいつらが間に合うといいんだが……。
主人公【信じるしかない】
【きっと大丈夫】
ライク・ツー俺たちがジタバタしたところで、
あいつらの到着が早まるわけでもねぇしな。
ライク・ツー……つーか、おっさんのことはいいのか?
お前が応援に加わるって話してた時、
不満そうにしてたけど。

〇〇は、目が合った時に
わずかに眉をしかめたダンローのことを思い浮かべた。

主人公【ライク・ツーもそう思った?】
【やっぱり、怒ってるのかも……】
ライク・ツーかもな。
ライク・ツーそもそもお前、おっさんとまともに話してないだろ。
あの様子だと向こうも言いたいことがありそうだし、
話をしに行ったらどうだ?
主人公【迷惑かも】
【…………】
ライク・ツーハッ、ここまで押しかけといて、
今さら何を弱気になってんだよ。
ライク・ツーずっと会いたかった『ダンローおじさん』に、
今までの礼を言いてぇんだろ?
ライク・ツー俺の記憶が正しけりゃ、お前はまだ
「ありがとう」の一言も言えてねぇと思うけど?
ライク・ツー……話せるうちにさっさと話しとかねぇと、
永遠に話せなくなっちまうぞ。
主人公【ありがとう】
【話をしに行ってくる】
ライク・ツー……おう。

第20話:縮まらない距離

〇〇は、兵士たちから
ユリシーズの部屋を聞いて向かうが、
そこは無人だった。

ユリシーズを探し、拠点内を歩き回ることしばらく。
〇〇はついに、探し人の姿を見つける。

主人公【ユリシーズ少佐!】
【ダンローおじさん!】
ダンロー……なんだね。
主人公【今までのお礼を言わせてください】
【ずっと、直接お話ししたかったんです】

固い表情のユリシーズに少し萎縮しつつ、
〇〇はこれまでお世話になったことへの
感謝の念を述べる。しかし──。

ダンロー……そのようなことを、君が気にする必要はない。
君への支援は、私が勝手にやったことだ。
ダンローそれより……君は、なぜ帰らなかった?
私を助けたいなど──
ダンロー──馬鹿なことを!
ダンロー国境が閉鎖され、ドライゼ特別司令官が
作戦に君を組み込んだ今、
君はこの戦いが終わるまで帰れなくなった。
ダンロー……君をベルリンに呼ぶべきではなかった。
一目会いたいなどと、愚かなことを考えたものだ。
後悔しても、遅いがね。

ユリシーズは、溜息を吐くと踵を返し、去っていった。


ライク・ツー……おい。
なんか魂が抜けた顔してるけど……
おっさんとちゃんと話せなかったのか?
主人公【一応は、話せた】
【話せた、けど……】
ライク・ツーなのに、なんでそんな暗い顔してんだよ……。
ライク・ツー……ったく、しょうがねぇな。
茶でも淹れてやるから、それ飲んで一息つけ。
言っとくが、俺が茶を淹れるなんて今回だけだからな!
ライク・ツーただし、マズいとか文句は聞かねえ。
もし本当にマズくても、水か茶葉が悪いんだ。
わかったな?
ライク・ツーほら、行くぞ。

ライク・ツーに連れられながら、
〇〇はユリシーズについて思いをはせる。

手紙では、気遣いに溢れたとても優しい人だった。
けれど、実際に会った彼はまるで別人のようだ……。

主人公【(おじさんにとっては、迷惑だったのかも)】
主人公【(嫌われてもいいから、死なないでほしい)】

ライク・ツーに淹れてもらったお茶を飲み、
少し気分を落ち着けた〇〇は、
夕食のために食堂へと向かうことにした。

ライク・ツー……少しは元気出たか。
主人公【ありがとう】
【おかげ様で】
ライク・ツーあの茶も、軍の備品にしては悪くなかったな。
メシもそれなりに美味いといいんだが。
ライク・ツー……つーか、
食堂って、こっちでいいんだよな?
ライク・ツー──うおっ!
ライク・ツー&ゴースト……っ!
ライク・ツーお前……!
ゴーストあ……。
ライク・ツー……急に出てくるなよ。
びっくりするだろ。
ゴーストす……みません。
ライク・ツー──なぁ、お前、貴銃士だろ?
ゴーストって奴だな。
ゴースト俺のこと……見つけるなんて……やるな……。
ライク・ツーは?
ゴースト……そう、俺が、ゴースト……だ。
存在感、ないからなぁ……。
お似合いの名前……だろ……。
ライク・ツーまぁ、ぶつからなきゃ気づかなかったかもな。
一旦認識しちまえば、割とちゃんと目に入るけど。
ゴーストほん……とう、か?
ジグのやつは、俺……がしゃべってても、
全然気づか……ない時が、あるのに……。
ライク・ツーいや、あれと比べられてもな……。
それより、お前も作戦に参加するのか?
ゴースト俺、は……結局実用化され、なかった。
試作品しかない、出来損ない、だ……。
戦うのは、あいつらで十分や……だろ。
ゴーストドライゼは……すごく、立派にやってる。
己にも他人にも厳しい、ドイツの英雄、だ……。
ゴースト俺なんか……いなくても、
作戦は成功する、だろ。
主人公【そんなに卑下しなくても……】
【DG11の銃の機構は、興味深いと思う】
ゴーストほん、とうに……?
そう言ってもらえると、少し、嬉しい……や。
あんた、いい人……だな。
ゴースト……って、俺のことは、どうでもいい……。
夕食に行くなら……食堂は反対……だよ……。
ライク・ツーマジかよ!
つーか、俺たちが食堂に行くことなんで知ってんだ?
ゴースト話が聞こえたから、な……。
それじゃあ……俺はこれで。

ゴースト……はぁ、びっくりしたわぁ……。
ゴーストあいつは“どっち”なんやろか。
もしおんなじやったとしても……許されへんわなぁ。
おお、怖い怖い……。
ゴーストしっかし、ドライゼが英雄て……。
咄嗟にしては、上手いこと口から出てきたもんや。
ゴースト……ドライゼも、エルメも、ジグも……。
ほんまのことはなぁんも知らん、憐れなもんや……。

ライク・ツー…………。
あいつ……。
主人公【どうかした?】
【ゴーストのことが気になる?】
ライク・ツー……ああ、いや。
あいつは食堂に行かなくてもいいのかと思ってさ。
ライク・ツーまあ、俺が気にすることでもねぇか。
早く行こうぜ、〇〇。

 

第21話:休息日1

ライク・ツーはぁ……食った、食った。
ここの飯も悪くねぇな。
まあ、もう少し品数多い方が嬉しいけどさ。
ライク・ツー……ん?
〇〇、机に何か載ってるぞ?
ライク・ツーこれは……薬か?
それに、キャンディとメモ──いや、手紙みたいだ。
ライク・ツー……!
おい、これ、読んでみろよ。

ライク・ツーに渡された便箋には、
〇〇にとって馴染み深い、
ユリシーズの流麗な文字が並んでいた。

ダンロー『君とは、文字でのやりとりの方が慣れているから、
こういう形で伝えたいと思う』
ダンロー『……君を巻き込んでしまって、本当にすまない。
本来無関係の君を士官学校へ帰すように進言したが、
本人が望んだことだからと、聞き入れられなかった』
ダンロー『君に一目会いたいという、私の自分勝手な望みを
君は懸命に叶えてくれた。そして、私の行く末を察し、
少しでも延命しようと協力を申し出てくれたのだろう』
ダンロー『大事な君を戦場に立たせることになるなんて、
不甲斐ないことこの上ない』
ダンロー『これからの険しい戦いで君が傷つくことを思うと、
とても平常心で言葉を交わすことができなかった。
素っ気ない態度になってしまい、すまない』
ダンロー『君が無事に士官学校へ戻れるよう、全力を尽くすよ。
無力な私を、どうか許しておくれ。
ダンロー・ユリシーズ』
ダンロー『P.S. 薬は痛み止めだ。
傷が悪化して辛い時に使うといいだろう』
ライク・ツー……なんだ。
ちゃんと〇〇のこと、
考えてるんじゃねぇか。
ライク・ツーちょっと口下手なだけでさ。
主人公【おじさんは、おじさんだった】
【本心がわかってよかった】
ライク・ツーでもまぁ、もうちょっと情報を更新してもらえよ?
士官学校の学生にキャンディって……。
おっさんの中では、お前はまだ小さい子供なのかもな。
主人公【そうかも】
【でも、もう守ってもらうばかりじゃない】
ライク・ツー…………。
ライク・ツーはーあ。こんな固い簡易ベッドじゃ休まらねぇ。
さくっと作戦成功させて、士官学校に戻ろうぜ。
ライク・ツーお前もあのおっさんも、
生きてるうちに……な。

──ドイツ滞在3日目。

ライク・ツー入るぞ、〇〇。
主人公【おはよう】
【何かあった?】
ライク・ツーさっき、ドライゼから伝達があった。
ニュルンベルク奪還作戦が、
3日後決行に決まったそうだ。
ライク・ツー俺たちも、身体が鈍らねぇように訓練でもするか。
ドイツ支部のトレーニングに興味あるし。
ここの奴ら、マジで全員仕上がってんだよな……。

ライク・ツーん……?

朝食のために食堂へ移動を始めた2人は、
すぐに拠点内の異変に気づいた。

ライク・ツーやけに静かだな。
昨日に比べて、出歩いてる兵士の数が明らかに少ない。
主人公【作戦で出払ってるとか……?】
【何かあったのかも】
ライク・ツーいや……そういう雰囲気じゃねぇな。
戦闘があるなら、もっと空気がピリついてる。
今はむしろ……ゆったりしてないか?
ライク・ツーおい、そこのお前。
兵士1はっ!
ライク・ツーやけに静かだが、今日は何かあんのか?
兵士1いえ、何もありません! 本日は休息日ですので。
ライク・ツーは……? 休息……?
ここは最前線の拠点だぞ?
兵士1当然、必要な警戒は怠っておりません!
ですが、休める者については
できる限り休息を取るようにとの指示です。
ライク・ツー指示って……ドライゼのか?
あいつ、いまいちそういうこと言いそうにねぇけど。
主人公【なぜ休日なんですか?】
【もう少し詳しく教えてもらえませんか?】
兵士1はっ。指示を出されたのはドライゼ特別司令官ですが、
エルメ特別司令官補佐が、
お1人で集中されるための時間だとか……!
ライク・ツーエルメって参謀なのか?
それで、今回の作戦に向けて、1人であれこれ
作戦をねってるってことか……?
兵士1いえ、そういうわけでもないかと。
このような休息日は月に数度、
不定期に設定されております。
ライク・ツー不定期ってことは、まさか……
毎回エルメの気分次第で、ってわけじゃ……?
兵士1…………。
ライク・ツーいや図星かよ!?
なんでエルメの勝手な事情で、
丸1日休みになってんだよ!
兵士1ぜ、前線では気が抜けない日々が続きますので、
こういった休息日を設け、しっかり心身を休めることは
隊全体にとっても有意義かと……!
兵士1自分は見張り番の交代に向かいますので、
失礼いたします!
ライク・ツーなんであいつの事情で休みができてんだ……。
ありえねぇだろ。
主人公【本人に理由を聞いてみよう】
【何か事情があるのかも】
ライク・ツーそうだな。
ひとまず、エルメの部屋に行くぞ。

第22話:休息日2

〇〇とライク・ツーは、
エルメの部屋へと小走りで向かう。

2人が視線の先に目的地を捉えた時、
予想外の人物が、部屋の扉を開けて出てきた。

ライク・ツー……ドライゼ? お前もエルメに用事か?
ドライゼ……!
お前たち、ここに何をしに来た。
主人公【少し気になることがあり……】
【エルメさんの様子を見に……】
ドライゼまずは私に用件を話せ。
ライク・ツーはぁ? お前はマネージャーか母ちゃんかよ。
……まぁいい。作戦がもうすぐだってのに、
エルメの都合で今日1日休みらしいじゃねぇか。
ライク・ツー一体何考えてやがんのか、聞きに来てやったんだよ。
つーか、直接話すから──

ライク・ツーが、エルメの部屋のドアへと
一歩足を進めるが、ドライゼが素早く
その前に立ちはだかった。

ドライゼ部屋に近寄るな!
ライク・ツーはぁ!?
なんだよ、いきなりでかい声出して。
ドライゼいや、それは……。
ドライゼ……ゴホン。とにかく、作戦に支障はない。
既に作戦立案は済んでいる。
エルメの部屋には近づくな。
ライク・ツー……意味わかんねぇ……。
ドライゼエルメを探りに来るほど暇を持て余しているのなら、
鍛錬でもしたらどうだ。
ドライゼ休息日とはいえ、自主的に鍛錬を行う者も多い。
興味があるなら、裏の空き地に行ってみるといい。
ライク・ツーはぁ……。

隊長よし! ドイツ支部伝統!
スペシャルマッスルメニュー、その48! 始め!
兵士たちJawohl!!!
ライク・ツースペシャルマッスルメニュー……だと……!?
ライク・ツーなんだよ、面白そうなことしてるじゃねぇか。
ドイツ仕込みの筋トレ方法を盗むチャンスだ。
主人公【あれをやれば皆バキバキに……!?】
【参加させてもらおうか】
ライク・ツーおう。ドライゼにも参加を勧められたし、
俺たちが混ざっても問題ないだろ。
ライク・ツー頼もー!!! 俺たちも参加するぜ!
隊長その心意気や良し! 列に加わりたまえ!
主人公【Jawohl!】
隊長近くの者がやり方を教えるように!
兵士たちJawohl!
兵士1ではさっそく、この泥の中へ入ってください!
ライク・ツーはぁ……!? ど、泥……?
兵士1泥は重く絡みつき、身動きを困難にします。
悪条件の中でも素早く、また、持続して動く訓練です!
ライク・ツー絶対やだ!
大事な服が泥まみれになるじゃねーか!
兵士1隊長!
ライク・ツー殿が拒否しております!
隊長一度参加を表明した以上、問答無用!
泥につけなさい!
兵士たちJawohl!
兵士1これが我々の訓練であります!
ライク・ツーうわっ! ちょっ、やめろぉぉお……!

兵士2では次に、この蛇を身体に巻きつけます!
ライク・ツー泥の次は蛇かよ!
兵士2どのような状況下でも狙撃に集中するための訓練です!
なお、この蛇には、弱いながらも毒があります!
ライク・ツーおいおいおい、元気に言うことじゃねぇだろそれ!
貴銃士でもたぶん毒は有効だし!
大事な作戦前に死んだらどうすんだよ!?
兵士2毒牙は奥歯なので、よほど怒らせない限り大丈夫かと!
それでは、失礼しますッ!
ライク・ツー待てって!
蛇とか虫とか、そういうのマジで勘弁……!
兵士2これが我々の訓練であります!
ライク・ツーうわっ! ちょっ、やめろぉぉお……!
主人公【頑張って!】
【心を無に!】
ライク・ツーえ……うっそだろお前、なんで平気な顔してんの?
根性あり過ぎだろ……!

兵士1次はこの穴の中に潜っていただき……。
ライク・ツーまだあるのかよっ……!!

第23話:休息日3

ライク・ツー……あー、痛ぇ。筋肉は平気だけど、
精神がすり減って心臓がキリキリする……。
とんでもねぇ訓練だったぜ……。
主人公【少し強くなったかもしれない】
【士官学校でも取り入れよう】
ライク・ツー……俺、お前のこと、ちょっと尊敬したわ……。
ライク・ツーさーて、メシだメシだ。
美味いもん食わねぇとやってらんねーっての。
兵士2お待ちください!
ライク・ツー殿! 〇〇殿!
ライク・ツーん?
まさか……食堂まで休みなのか?
兵士2本日は食堂の一斉点検日となっておりますので、
昼食は後ほどお部屋にお持ちいたします。
ライク・ツー一斉点検日? なんだそりゃ?
兵士2ドライゼ司令官のご命令により、
食堂の隅々までを消毒する作業となっております!
ライク・ツー隅々までって……!
ドライゼの奴、潔癖過ぎじゃねーか?
主人公【お手伝いしましょうか?】
兵士2本当ですか!?
哨戒に人手が割かれているので、助かります!
では、お2人ともこちらへ……!
ライク・ツーお2人って……俺もかよ!?

ライク・ツーやっと夜か……。
ライク・ツー今日は妙なことばっかで疲れたな。
夕飯だけが楽しみだぜ。
ライク・ツーおっ……? なんか美味そうな匂いがする。
あいつらが運んでるやつ、俺たちの分じゃね?
主人公【スパゲッティだ】
【美味しそう】
ライク・ツーおい。
その美味そうなスパゲッティ、今日の夕飯か?
兵士3こちらは、ゴースト様専用のお食事です。
ライク・ツーは……? ゴースト専用……?
兵士3休日の夜は必ず
スパゲッティを自室まで運ぶようにとのことで……。
ライク・ツーあー、そういえば……。
主人公【そういえば?】
【……?】
ライク・ツーいや。
エルメといいゴーストといい、勝手な奴が多いな。

──翌朝。

ライク・ツーおはよ……。
──いててっ……。
ライク・ツーいや、ちょっと背筋がキててさ……。
筋トレはさぼったことねーってのに……!
ライク・ツー今後のメニュー見直そ……。
まぁ、今後のためにはなったな。うん。
主人公【色々頑張った】
【充実した休日だった】
ライク・ツーいや、マジでな……。
さー、朝メシ食いに行こうぜ。

連合軍兵士1第8連隊!
朝食を終え次第、ゲート前へ集合するように!
連合軍兵士たちJawohl!
ライク・ツーさすがに今日はマトモだな。
作戦は明日だ。
ライク・ツーさて、今日のメニューはグーラシュ、か……。
へぇ。カレーみてぇだな。うまそう。

ライク・ツーと〇〇が
座る席を探していると、長身の影が現れる。

エルメやあ、おはよう。
ライク・ツー呑気なもんだな。
エルメん? どういうことかな。
ライク・ツーどうもこうも、昨日の話だ。
集中するとかなんとかで部屋に籠って、
拠点全体を休日にしてただろうが。
エルメああ……それか。
主人公【集中できましたか?】
【もしや、体調不良では……?】
エルメうん、おかげ様でね。
頭がすっきりしたよ。
エルメそれより、兵士たちから聞いたよ。
君たちが昨日、訓練に参加したって。
エルメあの訓練を耐え抜くとは、なかなかやるね。
エルメあと、食堂の消毒を手伝ってくれたって、
みんなすごく喜んでいたよ。
ライク・ツーやめろ。昨日のことはもう思い出したくない……。

ふと、ライク・ツーはエルメのメニューが
自分のメニューと違うことに気がついた。

ライク・ツーもしかして、お前だけ特別メニュー?
なんだ、その団子のスープ。
エルメレバークヌーデルズッペ。
バイエルン州の伝統料理だよ。
エルメ牛肉のレバーと野菜を煮込んで作った、
とても栄養価の高いスープなんだ。
ライク・ツーこの団子っぽいやつは、牛肉だったんだな。
エルメレバーは、栄養の宝庫と言われる食材でね、
抗酸化作用や免疫力を高める効能もある。
エルメ生臭さが難点だけど、下処理をすることで
香ばしいスープになるんだ。
エルメガーリックトーストと一緒に食べると、
さらに美味しくなるそうだよ。
主人公【すごいですね】
【料理に詳しいんですね】
エルメ文献を読んで調べているうちに、凝っちゃってね。
エルメ俺は元々、食に興味はなかったんだけど、
ドライゼがドイツ各地の伝統料理を食べたり、
自分でも作ったりしているものだから。
エルメ彼の真似をして、食材についても
色々と調べるようになったんだ。
ライク・ツードライゼが料理……?
なんか意外だな。
エルメああ見えて、彼はこの国の兵士のことを
理解しようと努力しているからね。
エルメ立派な心掛けだよ。
だからかな、どんなに厳しくても、
兵士たちから慕われてるんだ。

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