ミュンヘン奪還作戦まであと5日。
〇〇たちは事前準備に忙殺されていた。
……その日の夜。
ジョージはそっとベッドから抜け出した。
ジョージ | …………。 |
---|---|
シャスポー | おい。 |
ジョージ | わっ!! |
シャスポー | 盗み食いでもするつもりか? 〇〇の貴銃士として、 品位に欠ける行いは見逃せないな。 |
ジョージ | ち、違うって! 盗み食いなんてオレ……いつもはしてるけどっ! 今回は違うぞ! |
ジョージ | ほら、もうすぐ作戦で、ドイツ支部の人たち、 毎日すげー頑張ってるだろ? |
ジョージ | だから、少しでもホッとできたらいいなって思って、 みんなにサプライズでお菓子を作ろうと思ったんだ。 |
シャスポー | お菓子……? |
ジョージ | そう☆ 前に夏祭りで食べたチョコバナナが美味くてさ。 んで、ドイツの人はソーセージをよく食べてるだろ。 |
ジョージ | だから、ちょっとアレンジして、 チョコソーセージを作るぜ☆ |
シャスポー | チョコ、ソーセージ……。 ……一応聞くけど、どうやって作るんだ? |
ジョージ | え? ソーセージにチョコをかける! |
シャスポー | うう……。聞かなきゃよかった……。 |
ジョージ | ダメかな? |
シャスポー | 絶対にやめるんだ。 ヴルストへの冒涜だとか言って、 ドライゼ以下この基地の兵士が一斉蜂起する可能性がある。 |
ジョージ | Noooo……! |
シャスポー | 馴染みのあるドイツの菓子ならいいかもな……。 しょうがない……僕も手伝ってやるか。 |
〇〇の部屋の前では、
エルメが交代で警護・見張りをしている。
ジョージは、夜食を作るため、
近くにあるサブキッチンを借りたいと伝え、
シャスポーとともに静かに部屋を出た。
シャスポー | アプフェルシュトゥルーデル、ベーネンシュティッヒ、 シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ…… うーん、どれもなかなか難しそうだな。 |
---|---|
シャスポー | パイは工程が多くて時間が掛かるし、 スポンジ生地は上手く膨らまないとなかなか悲惨だ。 |
ジョージ | あ、これはどうだ? テーゲベック……コーヒーブレイクに合うクッキーみたいだ。 |
シャスポー | テーはお茶だろう? テーゲベックで、お茶請けの焼き菓子ってところかな。 |
シャスポー | サブレなら、ケーキよりは大失敗の可能性は低いし、 配るにもちょうどいい。 それに、素朴な焼き菓子を懐かしく思う兵士もいるだろう。 |
ジョージ | Nice! それじゃあ、このゲベックを作ろうぜ☆ |
シャスポー | ……ところで、材料は? |
ジョージ | 料理担当の人に、あとで使った分補充するからって お願いしたらOKもらえたぜ! 作戦前に1回買い物行かないとな~。 |
シャスポー | えっ、昼間から計画していたのか。 ……君、意外とちゃんと考えて動いてるんだな。 |
シャスポー | (ただの能天気だと思ってたけど、 冷静な部分もあって……なんというか──そう、不思議な奴だ) |
ジョージ | 意外でCOOLだろ☆ 惚れちゃったか? |
シャスポー | はぁ? ふ、ふざけたこと言ってないで、 さっさと始めるぞ! |
ジョージ | んじゃ、Let’s cook☆ えーっと……? まずは小麦粉とバターと……? |
シャスポー | いいか、お菓子は繊細なんだ。 全部きっちり計量してから手順通りに作るぞ。 僕は小麦粉を計る。 |
ジョージ | OK! それじゃあオレはバターだ。 重さは……グラム? ああ、秤もグラム単位のだから大丈夫か。 計ったバターは柔らかくして……って、ええっ? |
ジョージ | 袋に入れて、手でギュッと握ればいいかな!? じっと待っててもなかなか柔らかくならないって! |
シャスポー | だからって体温で溶かしたら、 ドロドロになりすぎるんじゃないか? 「柔らかいバター」と「溶かしバター」は別物らしいぞ。 |
ジョージ | そ、そんな……どうすればいいんだ!? あう、ここにタバティエールがいてくれたら……! |
ジーグブルート | ……誰だ? |
ジョージ&シャスポー | ……!! |
ジーグブルート | あ? こんな時間に何してんだ、お前ら。 |
ジョージ | えーっと、これは……! |
シャスポー | ……差し入れのお菓子を作っているんだ。 キッチンと食材を借りる許可は得ているよ。 ジョージはサプライズにしたいみたいだから、他言無用で頼む。 |
ジーグブルート | それは別に構わねぇが……何作ろうとしてんだ? |
ジョージ | ゲベックってやつ! けど、バターがカチカチでさ。 どうすりゃいいかなーってなってたんだ。 |
ジーグブルート | はぁ……シンプルなゲベックの初歩で躓いてんのか。 |
ジーグブルート | お前らの自由にさせてたらキッチンがめちゃくちゃになるか、 嬉しくねぇ差し入れができるか、どっちもになりそうだ。 俺が手を貸してやる。 |
シャスポー | え? 君、製菓の心得でもあるのかい? それに、酔っているように見えるけれど……大丈夫なのか? |
ジーグブルート | ハッ、俺は成功作様だからな。 菓子作りにも自信があるぜ。 この程度の酔いで失敗するかっての。 |
──数十分後。
キッチンには甘い香りが漂っていた。
ジーグブルート | 粗熱は取れたか。これで完成だ。 味見してみろ。 |
---|---|
ジョージ | ……ウマい! サクサクで、なんか懐かしい感じがする。 |
シャスポー | こ、これは……美味しい……! 料理なんてと一蹴しそうな君に、こんな特技があったなんて。 |
ジーグブルート | 菓子作りには精密さが要求される。 優れた銃である俺にかかれば簡単ってわけだ。 |
ジーグブルート | ほらよ、夜中だから飲み物はこれでいいだろ。 |
ジョージ | ホットミルクだ! Thank you! |
ジョージ | ジーグブルート、おまえ、いいヤツだよな! ってことはやっぱり…… 基地の外に会いに行ってるのってカノジョ!? |
ジーグブルート | はぁ……? どういう理屈だよ、そいつは。 てめぇはろくでなしじゃあなさそうだが、 わけはわかんねぇな。 |
シャスポー | それに関しては概ね同意するね。 訓練で『絶対高貴ビーム』とか言い出した時は目と耳を疑ったよ。 |
ジョージ | ええーっ!? かっこいいだろ、絶対高貴ビーム! |
シャスポー | 駄目だ、品がない。 貴銃士たるもの高貴で気高くなくちゃいけないんだ。 |
ジーグブルート | …………。 |
ジーグブルート | お前ら古銃は、絶対高貴になれるんだよな。 絶対高貴で、マスターの薔薇の傷を治せる……だったか。 |
シャスポー | ああ、そうだよ。 絶対高貴を薔薇の傷に当てて癒やすこともできるし、 僕たちが絶対高貴を使って戦うだけでも多少の効果がある。 |
ジョージ | けど、あんまり使いすぎると、 マスターの薔薇の傷が完全に消えちまうんだよな。 だから、絶対非道とバランスを取るのが大事なんだぜ☆ |
シャスポー | 絶対高貴に関心があるとはね。 君は戦果を求めるあまり、 マスターを次々に犠牲にしたと聞いたけれど。 |
ジーグブルート | ……かったんだよ。 |
シャスポー | ん? |
ジーグブルート | 知らなかったんだよ……! 絶対非道が、マスターの命を食い潰すもんだって。 |
ジーグブルート | 別に……好き好んで殺したわけじゃねぇ。 俺は、自分の力を示したかった。 俺の活躍を心底喜ぶマスターもいた。 |
ジーグブルート | ……そいつが死んだあとで聞かされた。 俺のせいで、マスターが死んだんだと。 |
シャスポー | …………。 |
ジーグブルート | それを知らされたところで……俺にどうしろって言うんだ。 マスターを死なせねぇために戦いをやめるのか? それじゃあ俺は役立たずだ! なんのために存在してる!? |
ジーグブルート | 戦時に犠牲がまったく出ないことはありえねぇ。 マスターの犠牲もそういうもんだ。 その分俺が戦いまくって勝てばいい……そう思うことにした。 |
ジーグブルート | マスターの顔もろくに知らねぇ……見ねぇようにした。 死んだと聞かされても、ああそうかよって……。 |
ジーグブルート | 戦ってるうちは、余計なことを考えなくて済むからいい。 銃に……貴銃士に求められる『力』をふるって、 存在意義を示しまくって……。 |
ジーグブルート | ……チッ。 俺は何を喋ってんだ……。 思ってた以上に酔いが回ってたらしい。 |
ジーグブルート | 今のは忘れろ。 |
ジョージ | オレは……ジーグブルートの話、聞けてよかったよ。 |
ジーグブルート | 忘れろって言っただろ。 変に気ィ遣ってんじゃねぇ! |
ジーグブルート | ……じゃあな。 それだけありゃ、顔見知りの奴らに配れるだろ。 |
ジョージ | あっ……! |
ジーグブルートはキッチンから立ち去ってしまった。
シャスポー | ……追わない方がいい。 ああいう時、人からかけられる言葉は意味を持たないばかりか 癪に障るだけのこともある。 |
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ジョージ | ……そっか。 |
シャスポー | 絶対非道を使わない僕たちの言葉は特に…… 今は率直に受け入れられないだろう。 |
ジョージ | そう、だな……。 手伝ってくれたお礼は、今度ちゃんと言わなきゃ。 |
──ミュンヘン奪還作戦まであと4日。
ティータイムになると、
ジョージたちはゲベックを兵士たちに配った。
ドイツ支部兵士1 | ううん、懐かしい……! 母さんが作ってくれたゲベックを思い出すなぁ。 |
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ドイツ支部兵士2 | 俺にとっては兄ちゃんの味だな! 菓子職人をしてて、昔からいろいろ作ってくれてたんだ。 |
ジョージ | まだまだあるから、食べてないやつは言ってくれよ! 遠慮はいらないぜ☆ ほら、〇〇も! |
主人公 | 【すごくおいしい!】 【いいアイデアだね】 |
ジョージ | へへっ、喜んでくれてよかった! でももっとたくさん作っておけばよかったな。 |
エルメ | 賑やかだね。どうしたの? |
シャスポー | 彼らのためにドイツの菓子を作ったんだ。 ……まあ、ジーグブルートが半分以上作ったようなものだけど。 |
ドライゼ | ジーグブルートが……? |
ジョージ | おう! オレたちが苦戦してるのを見て手伝ってくれたんだ。 いいヤツだよな~! |
シャスポー | 正直なところ、彼を〇〇には近づけたくない 粗暴で信用ならない貴銃士だと思っていたけれど……。 昨日少し話してみて、誤解があったと感じたよ。 |
ジョージ | うん。あいつは……どうしたらいいのかわかんなくって、 がむしゃらにもがいてたのかもなって思った。 |
ジョージ | 真っ暗な中にいる時って、 どっちが正しい方向かもわかんなくってさ。 頑張って走った方向が、間違いってこともあるよ。 |
ジョージ | だからオレは、ジーグブルートが『こっちだ!』って思える道を、 胸を張って堂々と進めるようになればいいなって思う。 |
主人公 | 【どういうこと……?】 【もう少し詳しく聞かせてほしい】 |
シャスポー | ……彼には、聞かなかったことに……と言われたけれど。 誤解がある今の状態よりはいいと思う。 |
ジョージとシャスポーは、
昨晩キッチンでジーグブルートから聞いたことを話した。
シャスポー | ……ジーグブルートの気持ちも少しわかる気がする。 僕もパリ・コミューンでは……多くの人の命を奪った銃だ。 |
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シャスポー | 自分の存在が人の命を奪う。 銃なら当たり前かもしれないけれど…… 貴銃士として、人のような心を持った今、複雑な問題だ。 |
シャスポー | 彼は……どうしたらいいのかわからなくなったんだろう。 周囲やマスターの期待に応えようと戦ったら、 そのマスターを自身が死に至らしめてしまった。 |
シャスポー | かといって戦うことをやめるわけにはいかない。 犠牲に報いるくらいの活躍をと思えば、 余計にどつぼにはまってしまう……。 |
ドライゼ | …………。 |
ドライゼ | ジーグブルートの振る舞いは度を越している部分が多々ある。 一兵士ならば不名誉除隊処分10回分ほどになるだろう。 |
ドライゼ | 単身で前進しすぎることにも大いに問題があるが、 奴が多数のアウトレイジャーを倒したのは事実……。 |
ドライゼ | マスターたちの犠牲と、奴の捨て身なまでの戦いがなければ、 我々は今と同じペースで進軍できていたかわからない。 ミュンヘン奪還が見えてきたのには、奴の功績もある。 |
主人公 | 【ちゃんと話してみたらどうだろう】 【お互い率直に、落ち着いて話そう】 |
ドライゼ | ……そうだな。 |
エルメ | おや……噂をすればジグだ。 ねぇ、ジグ。こっちに来て。 |
ジーグブルート | あ? なんだよ。 説教ならいらねぇぞ。 |
ドライゼ | ……無闇矢鱈に威圧的な態度を取るな。 俺たちはお前と── |
ジーグブルート | おーおー、偉そうに。 アウトレイジャー化した特別司令官サマがよ! |
ドライゼ | ……なんだと? その話をどこで聞いた。 |
ジーグブルート | ハッ、やっぱり俺には隠してたのか。 だっせぇもんなぁ? |
ジーグブルート | 自分が一番正しくて偉いですってツラしてる奴が、 アウトレイジャーになりかけちまっただなんて! |
エルメ | ジグ! |
主人公 | 【でも、ドライゼは耐え抜いた】 【ドライゼはアウトレイジャーになっていない】 |
ドイツ支部兵士1 | あ、あの! 自分はあの場におりましたが、ドライゼ特別司令官は 我々が知るアウトレイジャーとはまったく違っていました! |
ドイツ支部兵士2 | そうです! 我々に危害を与えることなど決してせず、 正気を保てているうちに撃てとまでおっしゃって……! |
ドイツ支部兵士3 | それに、ドライゼ特別司令官がいなければ、 我々がここまで鍛錬を重ねることもなく、 士気も及ばず、ずっと多くの者が倒れていたはずです。 |
ドイツ支部兵士2 | 自分はあの一件から、 ドライゼ特別司令官をますます尊敬しております! |
ジーグブルート | ……ッ! |
ドイツ支部通信兵 | エルメ特別司令官補佐。 先日の件について追加の資料が……、……! |
やってきた兵士が、
ジーグブルートを見て資料を隠すそぶりをした。
ジーグブルート | ……おい、それはなんだ? 俺が見ちゃあまずいもんかよ。 |
---|---|
ドイツ支部通信兵 | いえ、これは、その……。 |
ジーグブルート | 寄越せ! |
ドイツ支部通信兵 | あっ! |
ジーグブルート | ……これは……? |
ジーグブルート | なんだよ、これは! ふざけんじゃねぇぞ!! |
兵士から取り上げた資料の表題を見たジーグブルートは、
資料を床に叩きつけた。
シャスポー | ……『DG36の欠陥についての報告書』。 |
---|---|
ジョージ | DG36……それって……。 |
エルメ | ドイツ支部において制式採用されているアサルトライフルだよ。 ……ジーグブルートの本体でもある。 |
──その日の夜、インゴルシュタット仮説基地の会議室にて。
ドイツ支部上層部と通信が繋がれ、DG36に関する
会議が行われている中へ、ジーグブルートは乱入した。
ジーグブルート | ……おい、説明しろ! 俺が、DG36が欠陥品のはずねぇだろうが!! |
---|---|
エルメ | ジグ! この会議は君が参加するものじゃないはずだよ。 |
ドライゼ | 勝手な行動は慎めとあれほど……。 |
ドイツ支部兵士1 | 中将、ドライゼ特別司令官、申し訳ございません! お止めしたのですが……! |
ドイツ支部中将 | いや、いい。 遅かれ早かれ、このことは耳に入る。 |
ドイツ支部中将 | ジーグブルート、この報告書に記載されている内容は事実だ。 現場からDG36に関する欠陥が報告されている。 |
ジーグブルート | ……DG36をどうするつもりだ。 別の銃に置き換えるつもりか!? |
ドイツ支部中将 | まだ検証段階だ。 今すぐにどうこうということはない。 |
ジーグブルート | 検証とやらをするなら俺の戦果も資料に載せとけよ。 俺は最高傑作だ! 戦場での優位性を見ろ。 誰よりもアウトレイジャーを倒してるだろうが! |
ドイツ支部中将 | うむ。 だが、欠陥を指摘する報告の数々を無視することはできない。 ……見たまえ。 |
会議室の壁面には、拡大印刷された資料が貼り出されている。
ドイツ支部中将 | DG36のテスト環境下での性能は、 既知の通り申し分ないものだった。 |
---|---|
ドイツ支部中将 | だが、実戦配備以降に現場から不具合の報告が相次いだ。 特に記録的な猛暑に見舞われた地域からの報告だ。 |
ドイツ支部中将 | 外気温の上昇や直射日光、あるいは連続使用などによる 銃身の温度上昇で命中精度が如実に落ちる、という報告だ。 |
ドイツ支部中将 | この度、ドイツ支部による検証により、 この報告が事実であることが確認された。 |
ドイツ支部中将 | ここに掲出されているのは、それを裏付けるデータだ。 |
ジーグブルート | ……っ! |
ドイツ支部中将 | 軽量化のために多用されたプラスチック部品が原因ではないか、 という仮説を検証するため、現在は追加の実験が行われている。 |
ドイツ支部中将 | 加熱による歪みか、あるいは経年劣化か……。 いずれにせよ、原因究明と、対処を考える必要がある。 |
エルメ | ……ジーグブルート。 銃の評価と、貴銃士の評価は必ずしもイコールではないよ。 |
エルメ | それに、銃が世代交代していくのは必定だ。 どんなに優れた銃でも、いつか新しい銃に置換されていく。 |
ジーグブルート | ……チッ……! |
ジーグブルートは会議室を飛び出した。
主人公 | 【待って!】 【ジーグブルート!】 |
---|---|
ジーグブルート | うるせぇ、どけ! |
騒ぎを聞いて、会議室の前までやってきていた〇〇は
ジーグブルートを呼び止めようとするが、
彼の足が止まることはない。
ジーグブルートを追って基地の外まで出た〇〇たち。
しかし、ジーグブルートの姿は暗い木立の中に消えてしまった。
シャスポー | 〇〇、これ以上の深追いはやめよう。危険だ。 それに、今は1人になりたいんだろう……。 |
---|---|
シャスポー | 世代交代するのは当たり前とわかっていても…… 欠陥の指摘は、存在を否定されるようで傷つくのはわかる。 受け入れるまでには時間がかかるだろう。 |
シャスポー | シャルルヴィル先輩やジョージのように、 欠陥云々じゃ揺らがない大きな名声があれば、 よかったんだろうが……。 |
ゴースト | ……俺と同じだな。 |
ジョージ | うわっ!? びっくりしたー!! |
ゴースト | いや、ずっと隣りにいたんだけど……。 |
シャスポー | ……同じって、どういうことだ? |
ゴースト | ああ……俺にも銃として致命的な欠陥がある。 ……失敗作、だ。 |
ゴースト | 俺は……致命的な欠陥があるし、 大きな名声なんてものも……ない。 |
---|---|
ゴースト | なんせ、DG11はプロトタイプしか作られ……なかった ドマイナーな銃……だからな。 |
ジョージ | えっ、そうなのか? |
ゴースト | そう……だから製造数も少ない。 そんな俺を召銃して、貴銃士にして…… 世界帝は、『特別幹部』として重用したらしいな。 |
ゴースト | 大罪人に召銃されたことはフクザツ……だけど、 違う俺を貴銃士にしてくれたおかげで知名度があがった。 それは……正直、感謝し……てる。 |
ゴースト | ……たぶん、世界帝に召銃されたゴーストも、 必要とされて嬉しかった……だろうな。 |
ゴースト | ……軍や兵士に必要とされてないってことは、 銃にとって……本当にツラいから。 |
シャスポー | ……そうだね。 後継がいいヤツとも限らないし。 |
シャスポー | それで……どうする? 僕らが何を言ったところで、 ジーグブルートには届かない気がするよ。 |
ゴースト | 一番立場が近いのは俺……だけど、 『てめぇと一緒にすんな』って余計怒りそう……だしな。 |
ジョージ | ちょっと時間を置いて、 落ち着いた頃ならまた違うんじゃないか? |
主人公 | 【次こそちゃんと話をしたい】 【基地に戻ってきたら話してみよう】 |
シャスポー | そうだね。 多くの貴銃士を呼び覚ましている君の言葉なら、 何か届くかもしれない……。 |
ゴースト | ありがとう……な。 |
ゴースト | あいつとマスターが同じなせいでしょっちゅう銃に戻ったり、 迷惑はしてたけど……ジーグブルートの気持ちはわかるから。 頼んだ……ぞ。 |
シャスポー | それじゃあ、基地に帰ろう。 暗闇でアウトレイジャーに襲われたら厄介だ。 |
歩きだした一行だが、〇〇はジーグブルートが
気になり、後ろを振り返ってしまう。
主人公 | 【ジーグブルートは大丈夫かな】 【ちゃんと戻ってくるかな】 |
---|---|
シャスポー | 脱走は重大な違反だし…… 基地に彼のマスターもいるはずだから、 時間はかかっても戻るんじゃないかな。 |
ジョージ | ドイツ支部ってすげー厳しいし、脱走なんてしたら大変だよな。 でも……何もかも嫌になって、 どっかずっと遠くに行っちまったら……。 |
ゴースト | その時は……探してる時間がない、な。 戦力が減るのは痛いけど……奪還作戦が優先、だろう。 |
〇〇たちは基地へ引き返した。
ゴースト | …………。 |
---|
シャスポー | シャルルヴィル先輩やジョージのように、 欠陥云々じゃ揺らがない大きな名声があれば、 よかったんだろうが……。 |
---|
ゴースト | ……せやなぁ。 あいつの言う通りや。 |
---|---|
ゴースト | なーんにもなかったワイを引き上げてくれたのは、 あの人や。 |
ゴースト | あの人がおらへんかったら、 ワイは、忘れられ、歴史に埋もれた銃になっとったはず……。 |
ゴースト | せやから……ワイがいっちゃん恩義を感じるのは、あの人や。 揺らがへん忠義を捧げたい、けど……。 |
ゴースト | だからこそ……ただ、何も考えんとついてくだけじゃ……。 |
ゴースト | ……忠義ちゅうもんは、難しいな。 |
ゴースト | …………。 |
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