ドイツ編Ⅱ:第6話~第10話

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第6話:密会

???……来たかね、ゴースト。
ゴースト急に呼び出して……なんの用や?
???そちらの状況を確認したい。
……ドライゼとエルメは、私に疑いを抱いているだろうか。
ゴースト……上層部に対する不信感はあるみたいやな。
ドライゼが怪我することになったレーゲンスブルクの作戦で、
情報がどっかから漏れてることには確実に気づいとる。
ゴーストアウトレイジャーの不審な動きについて、
調査依頼を出しとるのにこれといって進展がないのも
引っかかっとるみたいや。
ゴースト……けど、そもそもアウトレイジャーに関しては謎が多いし、
内通者がおるのか敵さんが潜り込んどるのか、
それがどのあたりなのか、まだ見当がついてなさそうやな。
ゴーストまとめると……今のところ、
あんさんがピンポイントで怪しまれてる感じはナシや。
???そうか。
???……ゴースト、指令だ。
〇〇の貴銃士になれ。
ゴースト……っ!? は……!?
???〇〇が少数の貴銃士とともにドイツへ来たのは
絶好のチャンス……導きをかける予定だったが、
ドライゼとエルメが張りついていて隙がない。
???アプローチを変える必要がある。
……頼まれてくれるな。
ゴースト…………。

ミュンヘン奪還作戦へ向けて、
〇〇たちは周辺の地理などについて詳しく学ぶため、
ドライゼたちの案内で会議室へ向かっていた。

ゴーストあわっはうあっ!
主人公【ゴースト!?】
【危ない!】

〇〇たちの目の前で、何かに躓いたらしい
ゴーストが派手に転倒する。

主人公【大丈夫!?】
【怪我は……!?】
エルメまったく……何をしているの、ゴースト。
ドライゼ鍛錬が足りていないのではないか。
ゴーストう……いてて……。
〇〇、ありがとう……。

〇〇が差し出した手に掴まって、
ゴーストはゆっくり立ち上がる。
そしてそのままぎゅっと手を握りしめた。

ゴーストあんたは……優しいなぁ。
助けてくれたお礼に……パスタでも作る、よ。
ゴーストおもろ……面白いギャグコレクションもあるから、
それ聞きながら食べたら……いい。
ジョージWow! パスタに面白いギャグだって!
何味のパスタだろ? 楽しみだな、〇〇☆
シャスポージョージ、君……誘われてないのに、
当たり前のように参加しようとしてるじゃないか。
シャスポーまあ、警備を手薄にするわけにいかないから、
今回は僕たちも同席するというのが、
了承の返事をする条件として妥当だけれど。
ゴーストそっちの2人もまとめてで……俺は構わ、ない。
主人公【ありがとう!】
【それじゃあ、会議のあとに】
ゴースト(よし……!)

──会議のあと、兵士たちに指示を出すドライゼと別れ、
〇〇、ジョージ、シャスポー、エルメは
食堂へと向かい、エルメ以外はゴースト作のパスタを味わう。

主人公【美味しい!】
【料理が得意なんだ】
ゴーストへへ……バジルソース……爽やかで俺も好きなんだ。
口に合ったなら、よかった……よ。
ゴーストたくさんのバジルと、パインナッツ、ニンニク、
チーズ、オリーブオイルをミキサーで混ぜて、
茹で上がったパスタと和えるだけ……簡単なんだ。
ゴースト今日はオーソドックスなパスタにしたけど、
シュペッツレっていう面白いのもあるから……
今度はそれ、作ろうか。
シャスポー……存在感が薄いし、1人でよくわからないことを言って笑ってる
胡散臭い奴だと思っていたけれど……こんな特技があったとはな。
ジョージ意外でCOOL☆
ゴースト……褒め、てるのか……? 一応……。
ゴースト……なあ。
ドライゼとエルメは、時々士官学校に行ってるん……だろ。
学校って、どんな感じなんだ?
エルメそうだね……前線基地には遠く及ばないけれど、
それなりに統率が取れていて、いい教育機関だと思ったよ。
ゴーストそういうことじゃなくて……
学校生活について聞きたかったん、だけど……。
ジョージんーっと、勉強とか運動とか、たまにはクッキングとか!
あと実験とか……いろんなことを皆でワイワイしてるぜ☆
ジョージ貴銃士も増えてきて賑やかだし退屈しないよ!
月に何回かはキャンプもするんだ~。
シャスポーキャンプじゃなくて野営訓練だろう。
時には、サバイバル訓練もあるね。
ゴーストへぇ……!
いろいろやってるんだな……面白そう、だ。
ゴースト任務に行くこともある……んだろ?
ジョージもっちろん!
イギリスだけじゃなくて、外国に遠征することもあるよな。
シャスポーそうだね、要請があれば急いで出発するよ。
アウトレイジャー相手の戦闘には貴銃士が有効だからね。
ゴーストいいな……。
ジョージへ? 任務が?
ゴースト全部……だけど、ちゃんと戦ってるのも、羨ましい。
俺は、あんまり戦ったことがない、んだ……。
ゴースト俺のマスターは、ジグと一緒だから……。
最近はマシになったけど、前はしょっちゅう銃に戻っ……てた。
ゴースト俺まで絶対非道使うわけにもいかなくて……
そうじゃなくても、俺の銃は特殊だから、
実銃でバリバリ戦う……ってのもできない。
シャスポー銃の性能に何か問題でも?
ゴーストそれもあるっちゃある。
一番は……弾薬が貴重で高いせい、だ。
ゴースト言ってて悲しくなってきた……。
俺、ドイツ支部にいる意味あるん、だろうか……?
ゴースト……俺も、士官学校に行ってみたい……。
エルメの義兄さん、俺も〇〇の貴銃士になるのって、
アリ、だと思う……?
エルメどうかな。
確かにジグと同一マスターだと運用が難しい面はあるし、
悪くはないと思うけれど。
ゴースト〇〇、あんたはどう思う……?
主人公【できる限り望みを叶えたいとは思う】
【自分の一存では決められない】
ゴーストそうかぁ……まあ、そうだよなぁ……。
ドイツ支部兵士1失礼します!
エルメ特別司令官補佐、巡回の兵士が戻りました。
エルメああ、ドライゼはまだ立て込んでるだろうから、
俺が報告を聞くよ。
……君たちはゆっくり食事をしていて。

エルメが退出したあと、〇〇は
食堂からひっそりと出て行こうとする
ジーグブルートの姿を見つけた。

主人公【……何してるの?】
【……これから外出?】
ジーグブルート……ん? ああ……まあな。

ジーグブルートは声を落とし、
〇〇にだけ聞こえるように言う。

ジーグブルートほら、この間言ったやつ。
気の合う……まあ、ダチみてぇなやつんとこに、ちょっとな。
主人公【そうなんだ】
【気をつけて】
ジーグブルートおう、じゃあな。
ジョージちょっと聞こえたけど……もしかして、彼女かな!?
シャスポー下世話な勘ぐりは感心しないな。
ほら、冷めないうちに食事をいただこう。

第7話:2人の貴銃士

スケレット遅ぇぞ~ジーグブルート!
ジーグブルート悪ィな、スケレット。
ほら、待たせた詫びだ。

ジーグブルートは、サンドイッチが入った紙袋を
スケレットへと投げてパスした。

スケレットおおっ、やったね♪
ちょうどハラ減ってたんだ~。
スケレット腹ごしらえしたら、いつもの店でも行くか。
ジーグブルートおう。
ジーグブルート(つくづく不思議なもんだ。
毎日苛ついてた俺が、こんなに穏やかな気分で……
いや、それどころか楽しく過ごせてるとかよ)
ジーグブルート(あの日、こいつに出会ってから、
やっと歯車が噛み合って、上手く回りだした気がする)

──再召銃された日のこと。

廃墟の屋上で1人、瓦礫を放り投げては撃ち抜くという手遊びを
無心で繰り返していたジーグブルートのもとに、
その貴銃士は現れた。

???楽しそうな遊びしてるじゃん、俺もやっていい?
ジーグブルートてめぇ……何者だ。
???これ、投げた破片を撃てばいいんだろ?
何発当たるかな~……よーし、ほいほいっと!

スケレットが破片を2つまとめて投げる。
続いて放たれた弾丸は、見事に破片を打ち砕いた。

???おお、ナイス~!
これは俺の勝ちかな、ブハハッ!
???おーい、降参か?
次はそっちの番だぜ。
ジーグブルート…………。

ジーグブルートは同じように2つ破片を投げ、
それを撃ち抜いてみせた。

???お、やるじゃん。
んじゃ、連続成功を競うってことで☆

何度か交互にその遊戯を繰り返し──一瞬の隙をついて、
ジーグブルートは隠していたナイフを男の首に突きつけた。

ジーグブルートおい、そろそろ吐けよ。
……お前はなんだ。
???ワァーオ、かっこいい!
ジーグブルートこれ以上お遊びに付き合うつもりはねーぞ。
もう1度だけ聞く、お前は誰だ。
スケレット俺ぇ? ……俺の名前はスケレット。
トルレ・シャフに召銃された貴銃士だ。
ジーグブルートそうか、俺は連合軍の貴銃士だ。
……殺し合うか。
スケレット待て待て!
スケレットそんなつもりで来たわけじゃないっての!
俺は確かに、トルレ・シャフ側のマスターに召銃されたぜ。
スケレットでも、俺は……そこから逃げたいんだ。
ジーグブルート逃げたい……?
どういうことだ。
スケレット俺はさ、一生懸命頑張って人の役に立ちたいわけ。
でも、誰もそんな俺を見てくれねぇんだ。
スケレットあいつらはだーれも、そんなこと求めちゃいない。
俺は……貴銃士は、ただの使い捨ての道具だ。
ジーグブルート…………。

スケレットは、自分の腕をぎゅっと強く握りしめる。
ジーグブルートがそこへ視線を向けると、
苦笑しつつ袖を捲くってみせた。

腕には、線のような赤黒い傷が幾重にも走っている。
鞭で打たれたあとのようだ。

スケレット役立たずへの罰だ、とか言ってさぁ。
治療されないまま……どれくらい経ったっけ。
これくらい平気なんだけどさ。
ジーグブルート……マスターが気に食わねぇんだろ。
絶対非道になれるんなら、それでマスターを殺しちまえよ。
スケレット……!?
ジーグブルートんだよ、その顔は。
スケレットいや、かっけーなって!
そんなこと考えたこともなかったけど……
信念を貫いてマスターを切るっての、いいかもな。
スケレット……なあ、もっとあんたのこと教えてくれよ。
こんなとこに1人でいるってことは……
単独行動が許されてる、強くて立場があるスゲーやつか、やっぱ。
ジーグブルート俺は……。
ジーグブルート誰よりも成果はあげてる。間違いねぇ。
ジーグブルートけど……あいつらは命令違反だのなんだの、
くだらねぇことばっかり抜かして俺の力を認めやしねぇ……。
スケレットおいおい、マジかよ。
スケレットなんだぁ……どこも一緒だな!
急に親近感湧いてきたぜ。
スケレットなーなー、俺の話聞いてくれよ。
高性能って期待されて、制式採用も順調に進むはずだったのに
軍のお偉いさんどもの謎の事情で急にキャンセルだぜ?
スケレット振り回された挙げ句、制式採用を逃した銃になっちまって
ふざけんなよって感じだっての。
ジーグブルート……!
スケレットまあ……銃は性能がすべてじゃねーんだよな。
銃が評価されるかされないかってのには、運がデカい。
運が悪けりゃ、いくら性能がよくても全部台無しだ。
ジーグブルート運……。
スケレットだからさ、あんたも悪くないんじゃなーい?
悪かったとしたら、それはあんた自身じゃなくて、運の方だ。
スケレットはーあ、やってらんねぇよな!
ジーグブルートそうか……運……。
ジーグブルート……くくっ、ははは!
まったくだ……!
ジーグブルート(妙な気分だ……そんで、変な奴だ、こいつ。
逃げてきたつってもトルレ・シャフの貴銃士だってのに、
初対面で……これまで会った誰より話がわかる)
ジーグブルート(通じる部分が多いんだろうな……。
こんなに自然に話ができたのは、初めてだ)
ジーグブルート(なんせ、日頃関わりがある奴らって言ったら、
駄目な奴を見るような目を向けてくるムカつく野郎どもと、
ビビってるか煙たがってるかみてぇな連中ばっかりだ)
ジーグブルート(俺を誰より認めていたマスターは……
俺が絶対非道で命を食い潰して──……)
スケレットいやー、びっくり。
俺、あんたとはなんか、めちゃくちゃ気が合いそうだ。
スケレットなあ、また会おうぜ!
連合軍とかトルレ・シャフとか関係ねぇだろ?
お互い、陣営に居場所がないときた。
スケレットそんで、シンパシーもバッシバシ!
あんたとなら、自分自身のままでいられる気がするんだ。
スケレットただのスケレットと、ただの……あれ?
そういやまだ名前聞いてなかった!
ジーグブルート…………。
ジーグブルートだ。
スケレットジーグブルート!
よろしくな!

ジーグブルートはスケレットが差し出した右手を無視して、
踵を返した。

ジーグブルートもう会わねぇよ。……じゃあな。
スケレット…………。

第8話:意気投合

──スケレットと出会った翌日、
ジーグブルートは再び廃墟の屋上にやってきた。

そこではすでに、スケレットが待っていた。

スケレットよっ!
なんだよ、やっぱり来てくれたじゃーん!
スケレット一応来てみてよかったぜ☆
ジーグブルート(……俺はどうして来ちまったんだ)
スケレットなーなー、ジーグブルート。
俺の行きつけのパブに行こうぜ。案内するよ!
スケレットここにはなーんもないしさ。
うまい酒とつまみがあるとこでゆっくり話そう。
ジーグブルート……まあ、いいぜ。少しなら。
スケレットやったね♪

スケレットとジーグブルートは、夜の街へと繰り出した。

チンピラ1……おい! いってぇな!
どこ見て歩いてんだよ!
ジーグブルートあ? てめぇがぶつかってきたんだろうが。
チンピラ2んだと? 兄貴に怪我させといてンだよその態度は!
スケレット怪我ァ?
チンピラ1あー、いってぇなぁ。
治療費に慰謝料……誠意見せてもらわねぇと。
スケレット……クッ、ブハハハ!
雑魚はぶつかっただけで肩でも外れんのぉ?

思い切り馬鹿にした口調と表情で言うスケレットに、
2人はにわかに気色ばむ。

チンピラたちてめぇ……!!

スケレットは、殴りかかってくる男たちを難なく避ける。

スケレット怪我ってのはなぁ……こういうのを言うんだよ!
チンピラ2す、すびばせんでした……。
チンピラ1こいつで勘弁してください……。
スケレットブハハハハ! これが誠意ってやつかぁ。
ありがとなー☆

差し出された札束を受け取ったスケレットは、
自分の懐へと仕舞う。

ジーグブルート……おい。
スケレットえ、何? 半分いる?
どうせパブでぱーっと使っちまうし、
ちまちま数えて分けるの面倒だからいいだろ?
ジーグブルートそういうことじゃなくて……いや、いい。
スケレットお、話がはやーい!
……どうせこいつらはこれまで散々こんなことしてきたんだ。
これで懲りれば被害もなくなっていいだろ?
ジーグブルートそうだな。

スケレットの案内で、ジーグブルートは地下にあるパブに入った。

スケレット俺たちの出会いにィ……かんぱーい!
ジーグブルート乾杯。

瓶ビールをコツンとぶつけ合わせ、
2人は一気に中身をあおった。

スケレットかーっ、うまい!
次はどのビールにしよっかな~♪

ジーグブルートとスケレットは何本ものビールを開けていく。

ジーグブルートそれでよ、あの木偶の坊が……。
スケレットムカつくことは酒でぜーんぶ流しちまおうぜ。
ほら、飲め飲め~!

スケレットは途中から蒸留酒やワインも飲み、
夜も深まってきた頃、ぐでっとカウンターに突っ伏した。

スケレットうー……。
ジーグブルートおいおい、てめぇはそんなもんか?
ジーグブルート……おい、大丈夫かよ。
スケレットおーけぇ……。
ジーグブルート……こりゃダメだな。
おい、ここで寝んな。
肩貸してやるから、歩け。家はどこだ。
スケレットやさしーなぁー……じぐぶる……。
ジーグブルートったく、勝手に名前変えんじゃねぇ。

半分眠りかけているスケレットからなんとか道を聞き、
その通りに歩いていくと、
ごく普通のアパートにたどり着いた。

スケレットここの2階……カギぁ……帽子の中……。
ジーグブルート……トルレ・シャフってのは、
こんなアパートメントに住んでるのか?
スケレット任務の拠点……で……。
マスターは出張で……しばらく帰ってこねーから……。

鍵を開けて入ると、室内は殺風景ながらも散らかっていた。
家具はベッドと椅子くらいで、床には酒瓶やゴミが散乱していた。

スケレットをベッドまで運ぼうとしたジーグブルートは、
床に置いてあったビールの瓶を蹴飛ばしてしまった。

ジーグブルートげっ! 中身入ってたのかよ……!
ジーグブルートうぁ……最悪だ……。
拭くものはどこだ……!
スケレットくかー……すぴー……。

スケレットをベッドに放りだし、
ジーグブルートは軽く掃除を始めた。

ジーグブルートこんなもん、か。
はぁ……ったく、疲れた。
ジーグブルートふぁ……眠ィな。
少し休んでから帰る……か……。

ジーグブルート……!
やべぇ、朝か!?
ジーグブルートエルメとドライゼの野郎にバレたらまずい……!
スケレットふぁ~~……おはよ……。
んだよ、そんなに慌てて。
ジーグブルート基地に帰るんだよ!
あいつらにバレる前に!
スケレットブハハハ、真面目ぇ!
散々文句言っといて、ちゃんと帰るのか。
ジーグブルートうるせぇ!
お前だって逃げたいって言っといて、
この部屋に戻ってんじゃねぇか。
スケレットま、そーだけど。
しばらくマスターいないし、使えるもんは使っとこーって。
スケレットじゃ、またな~。

ジーグブルート……おい。俺のこと、あいつらに余計な報告すんじゃねぇぞ。
いいな。
門兵は、はい……!
ジーグブルートはぁ……朝帰りになっちまうとは、ミスったな……。
けど……、悪くねぇ気分だ。へへっ。

 

第9話:夜明け

──数日後。

ジーグブルートんだよ、エルメ。
エルメ呼び出された理由、君だってわかってるでしょ。
勝手に基地を抜け出して飲み歩いているそうじゃないか。
ほら、手を出して。鞭3回だよ。
ジーグブルート……っ、チッ!
エルメ君はどうして規律を守って、
冷たい鉄として落ち着いた行動ができないのかな。
ジーグブルート……もうたくさんだ。
エルメ何?
ジーグブルートいい加減にしろ、クソが!
エルメ……っ!

ジーグブルートはエルメを突き飛ばし、部屋を出る。
そのまま基地から飛び出した。


スケレット……あれ? ジーグブルート?
ジーグブルートおう、邪魔してるぜ。
スケレットなんだよ、どうした?
……っていうか、部屋が綺麗になってる!?
ジーグブルート汚すぎたから勝手に掃除したぜ。
レバーケーゼサンドも作ったが、食うか? ほら。
スケレットお、美味そ~! もーらいっと!
スケレット……それ、どうしたんだ?

スケレットはジグの右手の甲を指さす。
そこには鋭い爪で引っかかれたように赤く腫れていた。

ジーグブルート……勝手に抜け出した罰だとよ。
スケレット鞭はいてーよな~。俺は慣れっこだけど。
ジーグブルート……お前も大変だな。
スケレットまあな~。クズばっかでやんなっちゃうよ。
ビール飲もーっと。
スケレットっぷはァ!
そうだ、気晴らしにひと暴れしにいく?
ジーグブルート街か?
スケレットんーにゃ、アウトレイジャーをぶっ殺しにいくんだよ。
人間じゃあ俺らの相手にならないし、
あいつら相手の方がスカッとするだろ!
ジーグブルートお前……一応トルレ・シャフ側だろ。
敵に塩送るような真似していいのかよ。
スケレットトルレ・シャフとかどうでもいいってわかってるだろ?
それに、ブッ壊してぇ気分なんだ。
なんでもいいからよ!

スケレットの案内でやってきた場所には、
十数体ものアウトレイジャーがうろついていた。

ジーグブルートこんなに……。
スケレット撃ちまくろうぜ──絶対非道!
ジーグブルート……絶対非道。
アウトレイジャーウゥゥ……!
スケレットよっしゃ、もういっちょ~!
ブハハハ!
ジーグブルート横取りするんじゃねぇ、俺の的だ!
ジーグブルート(血が沸騰するみてぇだ……!
力を認めあってる奴と、存分に戦う……
それがこんなにいいもんだとは……!)

スケレットとジーグブルートは
次々にアウトレイジャーを倒していく。

アウトレイジャーがいなくなれば移動して、
新たな標的を探し……いつしか、夜が明けていた。


ジーグブルートふ……はははッ!! いい夜だったぜ!
スケレットだな!
スケレット……なあ、ジーグブルート。
俺たちは強いし、それに見合った成果を出そうとしてる。
なのに、見下されてこき使われて……間違ってると思わねぇか?
ジーグブルート……ああ、間違ってる。
スケレットだよなぁ! この世界は狂ってやがる!
スケレット……俺たち2人でいつか、
狂ってるこの世界をひっくり返してやろうぜ。

スケレットが拳を差し出す。
ジーグブルートは、それに自分の拳をぶつけた。

ジーグブルート(俺の居場所はここなんだ……こいつの隣が……俺の居場所!)

まばゆい朝日が、笑い合う2人を照らした。

第10話:知らされた真実

そして現在──
〇〇たちに見送られて、
スケレットと合流したジーグブルートは夜の街を歩いていた。

スケレットうめー!
やっぱ、ジーグブルートの作るサンドイッチは最高だな!
ジーグブルートだから、いちいち大げさなんだよ。
……で、今日は何するよ。
スケレットああ、それなんだけどな。
ちょうどおもしれぇものを見つけたんだ。来いよ。

スケレットに連れて行かれた先でジーグブルートが目にしたのは、
アウトレイジャーだった。

ジーグブルートなんだよ、アウトレイジャーじゃねぇか。
アウトレイジャーオレは……オレ、は、負け……ね……!
誰に……も……負け……タク……!
ジーグブルート(ん……? なんだ?
普通のアウトレイジャーとは違う……?)
スケレットぶはは!
負けちゃってるけどね、あばよ!

スケレットの銃弾がアウトレイジャーを撃ち抜いた。

アウトレイジャーコンナ、ハズジャ……!
ジーグブルートなんだったんだ、今のアウトレイジャーは。
やけにハッキリ喋りやがるな。
スケレットあいつはな、『変化中』のやつ。
たまにいるんだよなぁ。
ジーグブルート変化……?
スケレットそ。貴銃士からアウトレイジャーへな。
ジーグブルート……!?
ジーグブルートアウトレイジャーってのは、貴銃士のなりそこない……
貴銃士の失敗作みたいなもんなんじゃないのか?
貴銃士がアウトレイジャーになるって……どういうことだよ。

スケレットトルレ・シャフではこういう実験をしてるんだ。
マスターが持つ薔薇の傷が悪化して死ぬ直前、
その貴銃士はアリノミウム結晶に支配された状態になるんだって。
スケレット意思が強いやつだと、アウトレイジャーに堕ちきれずに
しばらくの間、中途半端に自我が残った状態なんだけどさ。
それを過ぎたら完全にアウトレイジャーになるんだと。
スケレットそうなったら、もう戻れない。
破壊するしかなくなる。
絶対高貴で銃に戻しても、二度と召銃できないっぽいよ。

ジーグブルートは……。
んなこと、ありえるのかよ……。
ジーグブルート……いや、待て。明らかにおかしい部分がある。
俺のマスターはこれまで5人死んでるんだぞ。
なのに俺はどうしてアウトレイジャーになっていないんだ?
スケレットさあ……?
マスターは実は死んでなかったとか?
ジーグブルートまさか・・俺は絶対非道を使いまくって、マスターが死んで……。
そのたびに、確かに俺は銃に戻ってる!
ジーグブルート…………。
ジーグブルート(だが……そういえば、死体をこの目で見たことはないな)
スケレットまーとにかく、貴銃士ならみぃーんな、
ああなっちまう可能性があるってのが
トルレ・シャフの結論らしいぜ。
スケレットほら、ドイツ支部のドライゼって貴銃士も、
アウトレイジャーになりかけたんだろ?
スケレットたまたま近くに絶対高貴になれる貴銃士がいたから、
マスターの傷を癒やして元に戻れたらしーけど。
ジーグブルートあ? なんの話だ?
スケレットは?
知らねぇの?
スケレットお前、ドイツ支部の貴銃士なんだろ?
こないだの大規模な戦闘の時って聞いたぜ。
ジーグブルート……知らされてねぇ。
ドライゼがアウトレイジャーになりかけた……?
あいつが……?
ジーグブルートはは……俺に知られたくなくて黙ってたってわけだ。
ジーグブルート俺には偉そうなことを散々言っておいて、
自分はアウトレイジャーに……っ。
ジーグブルートはは、はっははは!!
ジーグブルートやっぱりあいつ、出来損ないじゃねーか!
あっはっはっは!!
スケレットそれをお前に知らせねぇのも、
自分でも知られたら恥ずかしーって思ってるんだろうなぁ?
ジーグブルートああ、違いねぇ!
こいつはとんだ笑い話だ。くくっ……!

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