フランス編:第1話~第5話

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第1話:プロローグ

司会──紳士、淑女の皆様!
司会今宵は、レザール侯爵家、ロシニョル侯爵家によります、
心躍る祝宴──「召銃パーティー」へ
ようこそおいでくださいました。
司会もう……間もなく! 開宴の時でございます。
しばしのご歓談をお楽しみくださいませ……。
À tout de suite!!
男性1レザール家とロシニョル家、
どちらが貴銃士を目覚めさせることができるのか……
これは見ものですな。
男性2ですが、貴銃士になる銃はなかなかないと聞きますぞ。
1挺も召銃できないとなれば、とんだ興ざめですが……
さて、どうなることやら。
女性1リリエンフェルト家には
シャルルヴィル様がいらっしゃいますし……
今宵集いし両家は、革命戦争を支えた誇り高き名家。
女性1きっと、その志に呼応して、
貴銃士様が現れるに違いありませんわ。
女性2ええ、そうね。
……ロシニョル家の方は、どうかわからないけれど。
男性3……貴殿は、どちらに賭けるおつもりで?
男性4もちろん、レザール家ですよ。
テオドール殿は才覚溢れる青年だそうですからね。
……して、貴殿は?
男性3同じくレザール家に。しかし、これでは賭けになりませんよ。
誰か、ロシニョル家に賭けてもいいという猛者はいないものか……
はっはっは!

──別室にて。

ロシニョル侯爵すまない、カトリーヌ。
お前にこんな役目を負わせる父を許してくれ。
カトリーヌお父様、わたくしは大丈夫です。
どうか心配なさらないで。
カトリーヌ……やるべきことはわかっています。
カトリーヌわたくしは、並べられた銃に触れ……
何事もなく、この催しを終えればいい。
ロシニョル侯爵ああ、そうだ。
……お前が貴銃士を召銃することは、決してない。
ロシニョル侯爵お前は貴銃士を一人も目覚めさせることなく、
この愚かで忌まわしい催しを終える……。
ロシニョル侯爵お前に、マスターとなる栄誉を与えられず、
本当にすまない……。
だが、これはロシニョル家のためなのだ……!
カトリーヌお父様……。

レザール侯爵我が息子、テオドールよ。わかっているな。
お前はレザール家の者として、
並み居る民衆たちの前で堂々と召銃するのだ。
テオドール……そのつもりですよ、父上。

司会──皆様、大変お待たせいたしました。
司会「召銃パーティー」の幕開けでございます!

──フランス郊外。

〇〇、ジョージ、マークスの3名は
フランスでのアウトレイジャー討伐の任務を受け、
世界連合軍フランス支部へ向かっていた。

ジョージなぁ、〇〇、窓の外を見てみてくれ。
ジョージなんか、オレのイメージと違うんだけど……
フランスって、こんな殺風景で荒んでるもんなのか!?
ジョージもっとこう、華やかで賑わってて、道行く人が
のんびりマカロン食ってるようなとこじゃないの!?
マークス四六時中マカロン食ってるのは、
あのシャルルヴィルとかいうスイーツ狂いくらいだろ。
ジョージいや、シャルルだってさすがに
四六時中はマカロン食ってないと思うけど……
って、そうじゃなくて!
マークス……確かに、荒れてるな。
人気もほとんどないし、半壊してる建物もある。
マークスちょっとした内戦の痕みたいだが……
アウトレイジャーの被害か?
ジョージそうなんじゃないかなー?
こうやって、オレたちが派遣されてるワケだし。
マークスだが、フランスには貴銃士が4人いると聞いたぞ。
そいつらは何をやってんだ。
ジョージんー……?
4人いても対応しきれないくらい、
アウトレイジャーの数が多いとか?
マークスフランスの奴らのことだ。
戦わずに、菓子でも食って──……
マークス──ん?
主人公【マークス?】
【どうした?】
マークス……別の車の音がする。
マークスかなりのスピードで近づいてきた、けど、
この車の後ろで、速度を落とした……?
ジョージそれって……オレたちをつけてるってことか!?

慌てて窓から外の様子を窺うと、
高級そうな乗用車が1台、
ぴたりとこちらの車両についてきていた。

マークス弱そうな車だけど……油断はできない。
マスター、いつでも退避できるように準備を。

マークスとジョージが臨戦態勢に入る中、
乗用車はこちらの車両の進路を塞ぐように前へ出た。

そして、速度を緩め……車は2台とも停止する。

マークス俺が出る。マスターは車の中にいてくれ。
……ジョージ、こっちは頼んだぞ。
ジョージおう。
マークス──何者だ。
???突然失礼いたします。
???皆様は、フィルクレヴァート連合士官学校の貴銃士様と
そのマスター様で間違いないでしょうか。
マークス…………。
そうだと言ったら?
???……おお!
???やはりあなた方でございましたか!
お会いできて光栄でございます。
マークス……?
レザール家執事長私は、レザール侯爵家で執事長を務めている者です。
皆様のお迎えに上がりました。
マークスレザール……? 迎え……?
なんのことだ?
主人公【レザール家!?】
【どこかで聞いたことがあるような……?】
マークスマスター、知ってるのか?
ジョージオレも聞いたことある! たしか……
シャルルヴィルがいるリリエンフェルト家の次くらいに
すげー貴族じゃなかったっけ?
レザール家執事長ふふ……そうでございますね。
レザール家執事長フランスにて、リリエンフェルト公爵家に次いで
並び立つ2つの侯爵家……
そのうちの1つが、レザール侯爵家でございます。
マークス……それで、あんたは何しに来たんだ。
レザール家執事長フランスでの任務に当たってくださる皆様を
ぜひとも当家にて歓待すべく……。
案内役として、お迎えに上がりました。
マークスん……?
そんな話、聞いてないよな?
ジョージ……だよなぁ。
ラッセルも何も言ってなかったし。
もしかして……サギか!?
レザール家執事長おや……?
既に連合軍から皆様へ連絡済みかと思っていましたが、
情報の行き違いがあったようですね。
レザール家執事長私の身分は……
こちらの懐中時計の紋章で証明できるでしょうか。

執事長が懐から取り出した懐中時計には、
凝った意匠の紋章が刻まれている。

マークスドラゴン……? いや、トカゲか?
レザール家執事長ええ。これは、レザール家の紋章です。
レザールは、フランス語でトカゲを意味しますので。
レザール家執事長この懐中時計は、レザール家の歴代の執事長のみが
持つことを許された、特別なものです。
……これで、ご納得いただけたでしょうか。
主人公【……行ってみよう】
【2人がいるから大丈夫】
ジョージおお! 思い切りがいいな、〇〇!
マークスマスターが望むなら、その通りに。
レザール家執事長ご理解いただき、ありがとうございます。
それでは……レザール家へご案内いたしましょう。

第2話:侯爵家のパーティー1

マークス……すげぇ家だな。
シャルルヴィルのところには負けるが。
ジョージこのあたりは郊外と違って、キレーで賑わってるな~!
イメージ通りのフランスって感じがする!
ジョージ……っていうか、なんでこんなに人がいるんだ?
なんかみんな着飾ってるし。
マークス何かの集会か?
レザール家執事長集会と言いますか……
これは、皆様の歓迎パーティーでございます。
ジョージ歓迎パーティー!? マジで!?
レザール家執事長ええ。皆様は、フィルクレヴァート連合士官学校より、
フランスのためにおいでくださったのですから、
任務外の時間はせめてお楽しみいただければと……。
レザール家執事長旦那様のお言い付けで、
急遽開催することになったのです。
ジョージWow! Thank you☆
オレ、パーティー大好きなんだ!
だって、美味しいご馳走があるもんな~!
マークス……マスターは、俺から離れないでくれ。
マークス知らない人間がこんなにたくさんいるんだ。
危ない奴が紛れているかもしれない。
それに、人混みの中ではぐれる可能性もある。危険だ。
マークス……そうだ!
マスターは、俺のベルトでも掴んでおいてくれ。
それか、俺がマスターのどこかを掴まえて──
ジョージおいおいマークス! 心配しすぎだって~。
手が塞がってたら〇〇も
ご馳走食べられないだろー?
マークスだが……周りの奴らがこっちをチラチラ見てて、
なんだか嫌な感じだ。
ジョージん~、確かに視線は感じるけど、
パーティーの主役がオレたちだからじゃないか?
ジョージほら、行こうぜ!
主人公【行ってみよう】
【せっかくのご厚意だから】
マークス……わかった。

女性1まぁ! いらしたわ……!
女性2華のある素敵なお方ね……!
さすが、古銃の貴銃士様だわ。
男性1お会いできて光栄です、
ブラウン・ベス・マスケットの貴銃士様。
ジョージおう!
オレはジョージっていうんだ。よろしくな!
女性1ジョージ様とおっしゃるのですね……?
わたくしたちにも挨拶をさせてくださいな。
男性2吾輩もぜひ……!
マークスうお……ジョージのやつ、すげー囲まれてるな。
イギリスの銃なのに、フランスでも人気なのか。
わからねぇな……。
マークスん! ふんふん……マスター!
あっちから、うまい肉の匂いがするぞ……!
行ってみよ──
マークス……!
???…………。
マークスマスター、俺の後ろに。

マークスが見据える先には、
厳しい眼差しでこちらを睨んでいる男がいた。
彼はゆったりと近づいてくると、仏頂面で口を開く。

テオドール当家へようこそ、イギリスからのお客人。
私は、レザール家の次男、
テオドール・ド・レザールだ。
マークスレザールって……この屋敷に住んでる貴族か。
テオドールいかにも。
今宵は急ごしらえのささやかな宴だが、楽しまれよ。
テオドール要件は以上だ。失礼する。
マークス…………。
マークス……はぁ? 今のが歓迎の挨拶?
マスターを睨んでなかったか?
なんだあの、ブスッとした態度は!
ジョージ……それ、マークスが言うんだ。
マークスあ? なんか言ったか。
主人公【マークス、落ち着こう】
【たぶん、ああいう顔なんだよ】
マークスチッ……失礼な顔の野郎だ。
ジョージなーなー、それよりもさ!
これからなんか始まるって。
あっちのステージの方に行こうぜ! 〇〇!
マークスちょ……ジョージ!
マスターを勝手に連れていくな! 待てー!

司会──皆様、本日はレザール家主催の夜会に
お集まりいただき、誠にありがとうございます!
司会今宵は、フィルクレヴァート連合士官学校より、
特別なお客様をお迎えしております。
早速ご紹介いたしましょう!
司会まずは……マスター、〇〇様!
司会そしてイギリスの名銃、
ブラウン・ベス・マスケットから
目覚めた貴銃士──ジョージ様!
女性1ジョージ様……ああ、本当に素敵なお姿ね……!
女性2こうやってお会いできるなんて、夢のようだわ……!
ジョージThank you! 歓迎してもらえて嬉しいよ!
マークスフン……俺は歓迎されても嬉しくないけどな……。
司会そして……イギリスの現代銃、
UL96A1の貴銃士、マークス様。
女性1・女性2…………。

ジョージの時とは打って変わって、
人々は静まり返り──
パラパラとまばらな拍手が起きるのみだった。

マークス……いや、なんでだ!
ジョージうっわー、あからさまだなぁ。
もしかしてマークス、何かやらかした?
マークス何もしてない!
ジョージええっ!?
オレたちの歓迎パーティーのはずなのになぁ……
なんでみんな冷たいんだ……?
マークス…………。

第3話:フランスの掟

司会今宵のゲストは、
フィルクレヴァートの御三方だけではありません。
司会続きまして、
我らがフランスのゲストをご紹介いたします!
司会リリエンフェルト公爵家よりお越しいただきました、
貴銃士シャルルヴィル様!

シャルルヴィルの名前が呼ばれた途端、
会場にはひときわ大きな拍手が鳴り響く。

ジョージあ! シャルルじゃないか!
シャルルは人気者なんだなぁ~!
シャルルヴィルBonjour♪
皆さんと楽しい時間を過ごせると嬉しいな。
女性1ああ、シャルルヴィル様……。
白百合のように清廉で麗しいお姿だわ……。
女性2流石はフランスの貴銃士ですわね。
溢れ出る気品、高貴でお優しい眼差し……
お姿を見ているだけで心洗われるようですね。
女性3ああ、あまりの眩しさに、
わたくし……くらくらいたしますわ~!
マークスうわ……。
司会続きまして、今宵の宴を主催するレザール侯爵家より、
マスターであるテオドール・ド・レザール様!
マークス……あいつ、貴銃士のマスターだったのか。
司会並びに、古銃の貴銃士、
シャスポー様、タバティエール様!
タバティエールはは、どうも……。
シャスポー麗しの蝶々たち……今宵の素晴らしい時間を
あなた方と過ごせるなんて、僕は幸運だな。
シャスポー楽しい時間はきっとあっという間に感じるだろうけど、
記憶に残る一夜にしようね♥
女性1きゃあ……! シャスポー様ぁ……!
女性2シャスポー様が、私の方を見て微笑んで……!
はぁ……っ!
ジョージうわっ、女の人が倒れたぞ!?
主人公【でも、大丈夫そう】
【感極まっただけみたい】
マークスフランスの奴らは、わけがわからないな……。
マークスなぁ、マスター。美味そうなメシだけ食ったら、
さっさと連合軍のフランス支部に行こう。
???──せっかくレザール家に来たっていうのに、
それはいただけないなぁ。
ジョージえーっと、おまえは……。
シャスポーBonsoir、新たなマスターとその貴銃士たち。
はるばるイギリスからようこそ。
シャスポー僕はシャスポー。
フランス生まれの後装式ボルトアクションライフルさ。
ジョージそうそう、シャスポーだ!
シャスポープロイセンのドライゼを参考に作られたんだけど、
性能はあいつよりずっとずっといい。
シャスポー当時の戦場の覇者にふさわしい実力を備えた、
フランスが誇る、古銃の最高峰の銃なんだよ。
シャスポーところで……
君が連れている貴銃士の片方は、現代銃みたいだね?
主人公【UL96A1、愛称はマークスです】
【現代銃ですが、それが何か……?】
シャスポー僕は君のためを思って、助言に来たんだ。
シャスポー──現代銃なんて連れていると、
君の品格まで落ちてしまうよ?ってね。
マークス……なんだと?
シャスポーおや、野蛮な現代銃というのは、
歴史すら満足に知らないのかな?
シャスポーここフランスは、先の革命戦争で、
密かにレジスタンスを支援した国の筆頭だ。
シャスポー世界帝軍に与した現代銃を、
フランスの人々が歓迎するはずないだろう?
シャスポーフランスでは、レジスタンスの英雄である
古銃の貴銃士たちこそが高貴で敬うべき存在であり、
現代銃は忌避すべき存在なんだよ。
ジョージでも、マークスは何も悪いことしてないだろ?
現代銃だからってだけで、
この国の人たちは、あんな風に冷たくするのか……?
シャスポーそうだよ。
この国では、そういう文化ができあがっている。
シャスポー君の性能や性格がどんなに良くても関係ない。
現代銃であるという一点だけで、忌み嫌われる。
シャスポー……だから、フランスにいる間平穏に過ごしたいなら、
賢い振る舞いをすることだね。
シャスポーでないと君も、彼女みたいになってしまうよ?
主人公【どういうこと?】
【彼女って?】
???…………。
司会最後のゲストがいらっしゃったようです。
司会ロシニョル侯爵家のご令嬢、
カトリーヌ・ド・ロシニョル様と──
司会その貴銃士、現代銃のグラース様。
カトリーヌ…………。
グラース…………。

紹介を受けた年若い女性は、
明らかに歓迎されていないとわかるまばらな拍手の中、
気丈に顔を上げている。

そのとなりに並んでいる貴銃士グラースは、
浮かない顔で、心配そうに彼女を見ていた。

男性1よくもまぁ、
レザール家主催の夜会に顔を出せたものだな。
女性1あんなことをしておいて……。
おまけに、例の現代銃を連れて
パーティーに参加するなんて……。
男性2お静かに。相手は腐っても革命戦争を支援した名家。
滅多なことを言うものではありませんぞ。
ジョージ……酷いな。パーティーってもっと、こう、
楽しいところだと思ってたのに……。
シャスポーま、色々とあってね。
マークスあの貴銃士、あんたにそっくりじゃないか。
なのにここまで扱いが変わるのか?
シャスポーあれはグラース。僕──シャスポー銃を、
金属薬莢対応に改良した銃で、僕の弟だね。
そっくりなのは当然だよ。
シャスポー彼も同じくフランス生まれだし、
見た目はそっくりなんだけど──現代銃なんだ。
だから、仕方ないんだよ。
シャスポー〇〇さん、だっけ?
これで君もわかったでしょ?
現代銃とは距離を置く方が身のためだってね。

 

第4話:侯爵家のパーティー2

マークス……なんか、胸糞悪い奴らだな。
ジョージオレも同感。
マークス……なぁ、マスター。
俺はマスターのそばにいたい。
だけど、俺がそばにいたら迷惑になるか?
マークスマスターを守れる範囲内のちょっと離れた位置にいて、
マスターが変な目で見られないようにするか……?
主人公【迷惑なんかじゃない】
【離れる必要なんてない】
マークス本当か!? なら、よかった……!
司会──ゲストがお揃いになったところで、
レザール家当主より、皆様にご挨拶がございます。
レザール侯爵本日は急な宴にも関わらず、お集まりいただきまして
ご来賓の皆々様には大変感謝しております。
レザール侯爵どうぞ心行くまで、
楽しい夜をお過ごしください。
レザール侯爵それでは……乾杯!
一同乾杯!
シャルルヴィルやっほー、久しぶりだね。
〇〇、ジョージ! それにマークス!
マークス……ああ、あんたか。
シャルルヴィルええっ。それだけ!?
せっかくの再会だってのに、つれないなぁ~!
ジョージオレは会いたかったぜ、シャルル!
元気だったか~?
シャルルヴィルジョージ! もちろん、元気だったよ。
君たちにまた会えて嬉しいな。
今日はたくさんお喋りしようね♪
マークス……そうもいかないんじゃないのか?
さっきから、派手派手しい奴らがあんたのこと見てる。
シャルルヴィルえっ……?
女性1シャルルヴィル様がこちらをご覧になったわ!
女性2あのっ、シャルルヴィル様……!
私とお話してくださいませんか……?
女性3まぁ、抜け駆けはよくなくてよ?
シャルルヴィル様、“私たちと”お話しましょう♪
シャルルヴィルあ……っと、ごめん、ちょっと行ってくるね。
すぐ戻るから、またあとで!

シャルルヴィルの周りには、あっという間に人だかりができて、
姿が見えなくなってしまった。

ジョージうっへぇ……シャルルは大変そうだな……。
マークスおい、ジョージ。
あんたも呑気にしてられないみたいだぞ。
ジョージへ?
マークス見ろ。また狙われてる。
男性1ジョージ様! 私にもぜひお話しする機会を!
男性2ぜひともジョージ様のことをお聞かせください!
ささ、こちらへ……!
ジョージえ、ああ、うん……?
マークス…………。
マークスよし、静かになったな。
マスター、腹が減っただろう? 何か食おう。
マークスなんなのかはわからないが、
これなんかはすごく……いい匂いがする。
俺が毒見をするから、マスターも食べてみてくれ。
主人公【いい匂いだね】
【美味しそう】
マークスむ……この白いペーストもよくわからないが
美味い……!
マークスポテト……? 信じられないな……
この白いペーストがポテト、か……。
マークスよし、これも毒見完了だ。
他にはこれと……あの肉と、この肉と……
魚……はいらないな……あとは──

マークスしかし……フランスの奴らは本当に理解に苦しむな。
現代銃は避けるくせに、あの無愛想で失礼な
テオドールとかいう奴には尻尾振りやがって……。

マークスの視線の先には、招待客に囲まれている
テオドールとシャスポーの姿があった。

マークスそういや、もう1人の奴……タバティエール、だっけ?
あいつはどこに行ったんだ?
ジョージふぅ~、ただいまー。モテモテで疲れたなぁ。
ん? マークス、誰か探してるのか?
マークスタバティエールって奴が見当たらないんだ。
ジョージそれなら、あっちの奥にいるぞ。ほら!

ジョージが指さした方を見てみると、
どこか遠い目をして、静かにグラスを傾けている
タバティエールの姿があった。

タバティエール…………。
マークス……あいつは、あのムカつくシャスポーとは、
ずいぶん雰囲気が違うみたいだな。
ジョージぼーっとしてるみたいだけど、どこ見てるんだ?
マークスさぁな。別にどうでもいい。
ジョージマークスもたまには、
〇〇以外に関心持とうぜ!?
マークスはぁ……。
マークスたぶん、あの2人の方を見てる。
ロシニョル家ってのと、グラース。
あいつらの周りは人がいないから、割とわかりやすい。
ジョージおおっ、さっすがスナイパー! 目がいいな~!
ジョージって、あの2人……なんか暗いなぁ……。

第5話:垣間見える翳り

大勢の招待客で賑わう会場の中で、
カトリーヌとグラースの周囲だけは全く人影がなく、
2人は明らかに孤立していた。

グラースほら、マスター。
せっかくだから、少しは食べたらどう?
グラースマドレーヌもマカロンも美味しそうだよ。
カトリーヌ……そうね。
ありがとう、いただくわ。
女性1……まあ、ご覧になって。
“ロシニョル家”がマカロンを手にしましたわ。
女性2あら、嫌だ。
あのテーブルのものは、口にしない方がよさそうね。
女性1ええ、毒でも入っていたら困りますもの。
カトリーヌ……っ!

嘲るような囁きが届いたのか、
硬直したカトリーヌの指先から、
マカロンがころりと落ちる。

グラースマスター……!
グラースくっ……! お前ら……!

マスターであるカトリーヌへの仕打ちに、
グラースが激昂しそうになった時──

タバティエール──まぁまぁ、落ち着けって。な?
グラースんぐっ!?

タバティエールが割って入ったかと思うと、
グラースの口にマドレーヌを突っ込んで、
強制的に言葉を遮った。

タバティエール……ここでお前が声を荒げたり手を出したりしたら、
それこそカトリーヌちゃんの立場が悪くなる。
タバティエールだから、落ち着け。
グラース僕に触るな。
……お前に言われなくても、それくらいわかってる。
タバティエールはいはい、余計なお世話で悪かったな。
グラース……ふん。

マークス揉めてるみたいだな。
ジョージなんか心配だな……。
様子見に行ってみないか?

ジョージの提案に、
〇〇が頷こうとした時──

カトリーヌう、ぅ……。

カトリーヌが、その場へくずおれる。
顔色は真っ青で、ほとんど意識もないようだ。

グラース……っ、マスター!
主人公【大変だ!】
【救護しないと!】
シャスポーその必要はないよ。
マークスおい、気安くマスターに触んな。
ジョージ必要ないって、なんでだよ!?
倒れてる人は助けないとダメだろ!?
シャスポーロシニョル家のご息女は、元々体が弱いんだ。
倒れることも珍しくないと聞いているから、
君たちがどうこうすることはない。
シャスポー対処なら、あの現代銃が心得ているはずだからね。
マークス(“あの現代銃”……
現代銃は、名前すら呼びたくねぇってことか……?)
マークス……おい、いいかげんマスターから手を離せ。
シャスポーいたた……ちょっと君、乱暴だよ。
主人公【大丈夫ですか?】
【すみません】
シャスポー気にしないで。
僕の方も、不躾に君の手を掴んでしまったからね。
シャスポーはぁ……場が白けてしまったなぁ。
明るいワルツを奏でるよう、楽団に言ってくるよ。
グラースマスター、向こうのソファで休もう。
僕に掴まって……。
カトリーヌ……ごめんなさい。あなたにも迷惑をかけて……。
グラースマスターが謝る必要なんて、どこにもないんだよ。
ほら、楽にしていて。
テオドール…………。
マークスマスター、何を見てるんだ?
主人公【テオドールさんが……】
【カトリーヌさんとグラースを睨んでる……?】
マークスあいつ……本当に嫌な奴だな。
なんでもかんでも睨まねぇと気が済まないのかよ。
俺が夜中にこっそり撃ってやろうか?
ジョージ……なぁ、〇〇。
ジョージあの女の人、マスターだから……薔薇の傷が
ひどいんじゃないかなぁって思うんだ。
ジョージオレ、絶対高貴で力になれるか、試してみたい。
……いいか?
主人公【わかった】
【行っておいで】
ジョージおう!

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