フランス編:第11話~第15話

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第11話:盲目トカゲと小夜啼鳥1

──翌朝。

メイドおはようございます。〇〇様。
ゆうべはよくお眠りになられましたか?
メイド長旅でお疲れでしょうし、
今朝は通常の朝食の他に、
お粥など消化のいいものもご用意しました。
メイドお食事のあと、落ち着かれましたら、
アロマのマッサージなどもいかがですか?
主人公【あ、ありがとうございます】
【お、お構いなく……】
メイドふふっ、ご遠慮なさらないでくださいね。
メイドそれでは、私はお食事を運んでまいります。
あの……申し訳ないのですが、お連れの貴銃士様には
〇〇様からお声がけいただけますか……?
メイド私には、その……。
恐ろ──いえ、あの、恐れ多くて。
主人公【……わかりました】
【声をかけてきます】
メイドあ、ありがとうございます……!

メイドは、ほっとしたように頬を緩め、退室する。

主人公【(マークスが、現代銃だから……?)】
【(現代銃は本当に忌避されてるんだ……)】
マークスマスター、いるか? 入るぞ。
マークスおはよう、マスター。
昨日より顔色が良くなってるな。
ちゃんと休めたみたいでよかった。
マークスだが……俺は……。不覚にも……。
マークス不覚にも、ぐっすり眠ってしまったんだ……ッ!
一晩中、マスターの警護をするつもりだったのに!
マークスあの寝間着がいけなかった……!
サラサラとした肌触りで、雲に包まれるような寝心地で……!
クソ、もう二度と着るものか……!
執事長失礼いたします。
執事長〇〇様宛のお手紙と、
本日の新聞をお持ちいたしました。
マークス手紙? ラッセルからか?
執事長いえ、差出人はジョージ様のようです。
執事長消印がないので、当家を出られる前に、
郵便受けに直接入れていかれたのでしょう。

執事長から手紙とペーパーナイフを受け取り、
中の便せんを取り出してみる。

マークスマスター、なんて書いてあるんだ?
俺にも見せてくれ。
『〇〇へ。
悪い! 連合軍から緊急の連絡があって、
極秘の任務で急いでイギリスに戻ることになったんだ』
『その任務が終わったらすぐにフランスに戻るけど、
何日かかるかわからない。
だから、あんまり無理しないでくれよ!』
『ジョージより』
マークスはぁ……!?
こんな司令出した奴は誰だよ!
マークスジョージがいないと、
マスターの傷を治せねぇのに……!
主人公【……緊急要請なら仕方がない】
【ジョージの任務がすぐ終わることを祈ろう】
マークスマスターが、そう言うなら……。
マークスけど、ジョージがいない間、
俺はなるべく絶対非道を使わないからな。
マークス連合軍の都合に振り回されてるんだ。
これくらいの要求をしても、問題ないだろ。
マークスくそっ……。
士官学校に戻ったらラッセルを問い詰めて、
この司令を出した奴を締め上げてやる。
主人公【ほどほどに……】
【理由を聞いてから……】
マークスああ。任せろ、マスター。

シャスポー…………。
タバティエールまた読書か。今日は何を読んでるんだ?
シャスポーちょっとした童話だよ。
『盲目トカゲと小夜啼鳥(サヨナキドリ)』っていうやつ。
タバティエールトカゲにナイチンゲールねぇ。
タバティエールお前が童話を読むなんて、
珍しいこともあるもんだと思ったら……
タイトルに目が留まったってわけか。
シャスポー……そう。
それに、面白いんだよ、これ。
シャスポー“Lézard(トカゲ)”と“Rossignol(ナイチンゲール)”の、
因果みたいなものを感じてさ。
タバティエール……へぇ。どんな話なんだ?
シャスポー──あるところに、お互い目を1つしか持たない
小夜啼鳥(ナイチンゲール)とトカゲが仲良く暮らしていた。
シャスポーある日、婚礼に招かれた小夜啼鳥は、
自分の目が1つであることを気にして、
婚礼の日だけ目を貸してほしいとトカゲに頼むんだ。
シャスポートカゲはその頼みを聞き入れて、
小夜啼鳥に目を貸した。
シャスポーだけど……小夜啼鳥は、
宴が終わっても、トカゲに目を返さなかった。
シャスポー両方の目で見る世界を知ってしまった小夜啼鳥は、
それを手放すのが惜しくなったんだ。
シャスポー当然、盲目になってしまったトカゲは怒った。
でも、空を飛べる小夜啼鳥にとって、
トカゲは脅威にはならない。
シャスポー目を貸してやった恩を忘れて、
「高いぞ、高いぞ」と囀りながら飛ぶ小夜啼鳥に、
トカゲは恨みを募らせ──
シャスポーそれ以降、小夜啼鳥の巣がある木陰に潜んで、
卵を襲うようになった……っていう話さ。
タバティエール……因果応報、って話なのかねぇ。
なんだか救いがないな。
シャスポーそうかもな。
ま、僕に言わせれば、このトカゲは迂闊すぎるけどね。
シャスポー僕だったら……みすみす目を奪われたりしない。
むしろ、こっちが奪ってやる。
それに、こそこそ卵を狙うほど弱くもないね。
シャスポー僕ならきっと、愛らしい小鳥もろとも奪ってみせる。
必ず、ね……。
タバティエール…………。

第12話:盲目トカゲと小夜啼鳥2

シャスポー可愛い小鳥へ手を伸ばすには、
色々と準備も必要さ。
シャスポーそうだな……あの、フィルクレヴァートの客人。
彼らも使わせてもらおうか。
シャスポーマークスとかいう現代銃の貴銃士の方は、
マスター以外目に入らないって感じだったけど……
〇〇の方には、つけ込む余地があるかな?
シャスポー老若男女虜にしてきた僕なら、
あの子を操り人形にするのも、わけないことだよね。
タバティエールお前……。
シャスポー……お、噂をすればだ。
声をかけたいところだけど……
なんだか急いでるみたいだね?

その視線の先には、玄関から出てくる
〇〇とマークスの姿がある。
タバティエールはきょっとして目を見開いた。

タバティエールちょっと待て、なんであの子らがここにいるんだ!?
フランス支部の方に滞在するはずだろ?
シャスポーはぁ? 何言ってるんだ。
シャスポーフランス滞在中、
レザール家が面倒みるってことになったんだよ。
タバティエールくっ……そういうことはもっと早く言えよ!
シャスポーあっ、おい! 抜け駆けは許さないぞ!

マークス向こうに停まってるのが支部からの迎えの車だな。
行こう、マスター。
タバティエールおーい、ちょっと待ってくれ!
マークスん……? あんたは……タバティエールだったか。
タバティエールなんでこの屋敷に戻ってきたんだ!
昨日、忠告しただろう。もう関わるなと……!
マークス俺だって好きで戻ってきたわけじゃない。
だけど、マスターは怪我をしていた。
早く休ませたかったし……。
タバティエールはぁ……。
タバティエールこれからフランス支部へ行くんだろ?
俺も一緒に行かせてくれ。
マークス俺は構わないが……マスターは?
主人公【大丈夫】
【車に乗りましょう】

タバティエールところで、ジョージくんは一緒じゃないのか?
マークスあいつは、急な任務でここを離れてる。
タバティエールそうか……それは幸いだ。
マークス昨日もそんなことを言っていたが……
どういう意味なんだ。
タバティエール……君たちにとって最善なのは、
フランスの貴族や名家に関わらないことだった。
タバティエールだが……昨日はロシニョル家のお嬢さんを助けて、
今はレザール家に滞在することになってる。
タバティエールもう手遅れ、だよな……。
マークスおい、もったいぶるな。何が手遅れだ?
わけのわからない忠告では役に立たない。
正直にすべての情報を伝えろ。
タバティエール……!
タバティエール君……嘘はつけないタイプだろ?
マークスだ、だったらなんだ。
タバティエールいや、この国にいると、
君みたいなのにはなかなかお目にかかれないからさ……
正直にすべての情報を……ははっ!
マークスな、なんなんだコイツは……。
マスター。マスターも情報が欲しいだろう?
主人公【聞きたいことがあります】
【ロシニョル家について教えてください】

〇〇は、ロシニョル家について、
昨日のパーティーの中で気になったことがあった。


女性1……まあ、ご覧になって。
“ロシニョル家”がマカロンを手にしましたわ。
女性2あら、嫌だ。
あのテーブルのものは、口にしない方がよさそうね。
女性1ええ、毒でも入っていたら困りますもの。

現代銃が忌避されているのとは別に、
グラスと同じくらい……いや、それ以上に、
カトリーヌが爪弾きにされているように見えたのだ。

マークス確かに、あの女に対する態度は妙だったな。
毒がどうだとかも言っていた。
タバティエール…………。
タバティエール知ってることで、
対処できることも増えるかもしれないな。
タバティエール……これから話すことは、
俺から聞いたって言わないでくれよ。
主人公【わかりました】
【約束します】
タバティエールそれじゃあ……
レザール家とロシニョル家の因縁について、
ちょっと昔話を聞いてくれ。

第13話:盲目トカゲと小夜啼鳥3

タバティエールレザール家とロシニョル家には、
古くからの因縁があるんだが……
さて、どこから話したもんかねぇ。
タバティエールまずは、フランスの貴族について、おさらいするか。
知ってることも多いかもしれないけど、
まぁ、道中の暇つぶしにでも聞いてくれ。
タバティエール……世界帝が圧政を敷いていた頃、
その統治を支えるため、フランスでは8つの家に
特権が与えられ、封建的身分制度が復活した。
タバティエールだが──やがて、そのうちの3家が、
密かに世界帝へ反旗を翻し、
レジスタンスの援助を始めた。
タバティエール……それが、リリエンフェルト家と、
レザール家と、ロシニョル家だ。
タバティエール革命戦争後、世界帝派の5家は良くて取りつぶし。
酷い例だと、民衆の私刑で屋敷ごと燃やされたり、
刺されたり、撃たれたり……。
タバティエールまぁ、権力を笠に着てやりたい放題だったらしいから、
よっぽど民衆の怒りと恨みを買ってたんだろうな。
碌な目に遭わなかったそうだ。
タバティエール一方で、残る3家は、人々からの称賛を浴びた。
そして改めて、フランス政府のもとで、
叙爵されることになったってわけだ。
タバティエールって言っても、名誉称号みたいなもんで、
名誉はあっても特権はないんだけどな。
タバティエール3家が今でも貴族らしい生活を続けてられてるのは、
それぞれの事業で大きな収益があるからだ。
マークス……フランスの貴族についてはわかった。
で、レザールとロシニョルの因縁ってのはなんなんだ?
タバティエールこの2家は、貴族になるよりずっと前から、
折り合いが悪かったらしい。
長い歴史の中で、常に競い合い、争い合ってきた。
タバティエール現侯爵の代でもそれは同じだったが……
決定的にいがみ合うきっかけになったのは、
毒マカロン事件だろうな。
主人公【毒マカロン事件……?】
【なんですか、それは】
タバティエール……ある年のことだ。自然災害の影響を受けて、
ロシニョル家の事業が大損害を被った。
再開すらも難しいくらいにな。
タバティエールその時、犬猿の仲だったレザール家が援助を申し出た。
いい加減、先のことを見据えて、
関係を改善しようと思ったのかもな。
タバティエールその援助のおかげで、
ロシニョル家の事業はなんとか持ち堪えられた。
そして、2家のわだかまりも消えるはずだったが……。
タバティエール後日、ロシニョル家が、援助のお礼として
あれこれ金品を贈った時に、事件が起きたんだ。
タバティエール贈答品の中の1つ──マカロンを食べた
レザール侯爵夫人が、毒に倒れた。
タバティエールマカロンは、ロシニョル家のパティシエが作ったもの。
レザール家はロシニョル家が毒を盛ったと思い、
恩を仇で返されたと激怒した。
マークス怒るのは当たり前だな。
毒を盛るなんて、卑怯なやり方だ。
殺したい奴がいるなら、正面から撃ちに行けばいい。
タバティエールおいおい、物騒だなぁ、マークスくんは……。
マークス……だが、よく考えてみると謎だな。
せっかくの関係修復の機会をふいにするなんて、
ロシニョルはそこまでレザールが嫌いだったのか?
マークス毒なんか盛ったら、
それから先何があっても援助してもらえなくなる。
メリットが特にないように思えるんだが。
タバティエールまぁ……普通に考えたらそうだと思うぜ。
タバティエール実際、ロシニョルの侯爵や夫人たちも、
援助してもらっておいて
そんな愚かな真似はするはずがないと訴えた。
タバティエールロシニョル家のパティシエたちは
決して毒なんか入れていないと主張したし、
毒を入れたという証拠も出なかった。
タバティエールだが、非難は収まらず……
ロシニョル侯爵は仕方なく、使用人たちを
解雇処分にしたが、結局真相はわからずじまいさ。
タバティエールそんなわけで……。
フランスの名士たちの間で、
ロシニョル家の立場はすっかり悪くなっちまったんだ。
タバティエールとはいえ、ロシニョル家の革命戦争での功績は大きい。
証拠がない以上、表立って糾弾するわけにもいかない。
特に、当主が相手ではな。
タバティエールその代わりに標的になったのが、カトリーヌちゃんだ。
彼女は色々とあって立場が弱いから、格好の的さ。
マークス昨日のパーティーのは、そういうことか……。
マークスだが、それと俺たちになんの関係がある?
関わるなという理由はなんだ。
タバティエールレザール家とロシニョル家の関係は、
危ういバランスでなんとか保たれている。
だが、いつ正面衝突するかわからない状況なんだ。
タバティエール2家の間に波風を立てるような要因があれば……
排除されるか、取り込まれるか、
何かしらの陰謀に使われるか、わかったもんじゃない。
主人公【……なるほど】
【ジョージが彼女を治したのがまずかったと】
タバティエール……わかったかい?
つまりはそういうことだ。
タバティエール貴銃士は──俺たちは、政治の道具さ。
家の威光を示す広告塔であり、権力の象徴……。
タバティエールシャスポー、グラース……
あの日の召銃パーティーから、あいつらの運命は──
マークス……召銃パーティー?
運転手皆さん、お待たせしました。
連合軍フランス支部に到着しました。

 

第14話:エラメル大佐1

連合軍兵士〇〇候補生と、貴銃士マークス殿、
レザール家の貴銃士タバティエール殿ですね。
タバティエール悪いな、俺は来る予定じゃなかったのに。
連合軍兵士いえ、とんでもありません!
ご案内します。どうぞこちらへ。

シャルルヴィルBonjour♪ 待ってたよ。
マークスまたあんたか。
シャルルヴィルもうっ! 君、僕への態度酷くない?
???…………。
主人公【……は、初めまして!】
【〇〇と申します!】
???ん~! 〇〇くんとマークスくんだね。
昨晩はアウトレイジャーの討伐、ご苦労である。
???現場にいた兵士たちから、
トレビア~ンな戦いぶりであったと聞いているぞ!
???おっと、自己紹介が遅れたねぇ。吾輩のことは、
気軽に「エラメル大佐」と呼んでおくれ。
マークス…………。
主人公【は、はい……】
シャルルヴィルあははっ、大佐、2人が戸惑ってるみたいですよ?
シャルルヴィル〇〇、マークス、改めて紹介するね。
彼がエラメル大佐。
フランスのアウトレイジャー討伐を指揮してるんだ。
エラメル大佐どうだね、キミたち。友愛の証として、
吾輩とビズをしようではないかっ!
マークスビズ?
シャルルヴィルフランスではね、友達とか親しい人に会ったら、
こう……ほっぺをくっつけてから、チュッてリップ音を出す、
ビズっていう挨拶をするんだ。
シャルルヴィル地域によって色々違いはあるけど、
基本は右、左の2回だよ。
〇〇、やってみようか♪
マークスおい、近いぞシャルルヴィル。
マスターから離れろ!
シャルルヴィルええっ! ちょ、撃たないでよ!
エラメル大佐むむ……我輩とビズは嫌なのかね……。
よぉーし、ならば、代わりに熱烈なハグでもよいぞ。
連合軍兵士エラメル大佐……イギリスからいらした方に、
初対面からそれは酷かと……!
エラメル大佐おおっと、これは失礼。のほほほほ!
マークスこいつ……本当に偉いやつか?
本当はただの変態なんじゃないのか?
変態をなんていうんだっけ……そう、変質者!
マークスマスター!
この変質者は俺が始末する。いいな!?
タバティエールやれやれ……マークスくん。
大差は確かにちょっと変わってるが、
頼りになるお方だ。安心してくれ。
マークスだが……本当に変だぞ……?
主人公【マークス、失礼だよ】
【口には出さないようにしよう】
マークス了解した。すまない、マスター。
エラメル大佐さてさて……
さっそく、本題に入るとしようかねぇ。
エラメル大佐諸君、好きな席にかけておくれ。
連合軍兵士……それでは、アウトレイジャー襲撃による、
フランス国内の被害について報告します。
連合軍兵士襲撃は1か月で38件発生し、死傷者は25名。
出没地点付近にいた民間人7名が死亡しています。
また、兵士10名が重傷で、残りが軽傷です。
連合軍兵士初期の被害では、単体の襲撃が多かったのですが……
数体同時にアウトレイジャーが出現する例も増え、
苦戦を強いられています。
エラメル大佐うむ……。
やはり、戦力になれる貴銃士がいないと、
なかなか厳しい状況だねぇ。
マークス……まともな戦力に数えられる貴銃士は、
グラース以外いないのか?
マークスタバティエールは絶対高貴になれないと聞いたが、
シャルルヴィル、あんたはなれるんだろう?
少しは戦ったらどうなんだ。
シャルルヴィルいやぁ、ホントごめんね?
僕も力になりたいのは山々なんだけど、
ロジェ様の貴銃士は僕1人でしょ?
シャルルヴィル癒しの順番待ちをしている人がたくさんいるのに、
あんまり絶対高貴を使ったら、
ロジェ様の薔薇の傷が消えちゃう。
シャルルヴィルそうすると僕も消えてしまうから……
勝手に絶対高貴の力を使わないように、
ロジェ様から厳命されてるんだ。
マークス銃の本来の役目は、敵を撃つことだろ。
絶対高貴の力が貴重なのは……まぁ、わかるが……。
マークスそれで、あいつ……シャスポーは?
客を守る貴銃士が必要だとか言って残ったのに、
まさか、本当は絶対高貴になれないとか言わないよな?
シャルルヴィル…………。
タバティエールあー……シャスポーについてだが、
あいつも俺と同じで、絶対高貴になれない。
タバティエールグラースは絶対非道を使えるが……
絶対高貴になれる貴銃士を抱えていないから、
マスターへの負担が大きすぎて、あまり力を使えない。
シャルルヴィル僕が、グラースのマスターの傷を
緩和してあげてもいいんだけど……
レザール家とロシニョル家の関係は複雑でしょ?
シャルルヴィルリリエンフェルト家がどちらか一家に肩入れすると、
バランスが崩れてどうなるかわからないし……。
シャルルヴィルそういうわけで、フランスにいる僕たち貴銃士4人は、
実は全員、ほとんど戦いに出られないんだよね。
マークス…………。

第15話:エラメル大佐2

マークスそういうことか……。
それで俺たちが呼ばれる羽目になったんだな。呆れた。
エラメル大佐我がフランスの貴銃士たちが戦場に来ずとも、
これまでは兵たちの力で対処できていたのだがねぇ。
エラメル大佐兵士が携行しているアサルトライフルでは、
1体を仕留めるにも相当な時間がかかる。
エラメル大佐出現が1体だけならまだいいが、
昨日みたいに一度に5体も出てこられたら、
我々もお手上げなのであるよ。
エラメル大佐今は、なんとかして高威力の火器を配備できないか、
連合軍加盟国や周辺国と協議中でねぇ。
エラメル大佐配備が実現すれば、奴らと渡り合えるかもしれない。
しかし、一国だけ強力な火器を持つというのもよろしくない。
エラメル大佐色々とややこしい、政治の問題になってきて……
ん~まったく、我輩をもってしても頭が痛い!
エラメル大佐そういうわけで……
フランスでのアウトレイジャーの被害が落ち着くまで、
君たちに力を貸してもらいたいのだよ。
マークス……昨日、フランスに到着した時点では、
協力することに特に問題はなかった。
マークスだが……ジョージが極秘の緊急任務とやらで、
イギリスに呼び戻された以上、
俺もあまり絶対非道を使うわけにはいかない。
エラメル大佐むむ? ジョージくんの姿がないと思っていたら、
彼は既に帰国してしまっていたのかね?
マークスああ。
っていうか、あんたは何も聞いてないのか?
フランスでの任務に支障が出ることなのに。
エラメル大佐うーむ……連合軍の極秘任務の場合、
すべての加盟国に対して
任務内容を公開するとも限らないが……。
エラメル大佐フランスへの影響が大きい事案なのだから、
前もって何かしらの通達があって然るべきだねぇ。
エラメル大佐この件について、吾輩からも抗議しよう!
と言いたいところなんだが……。むむぅ……。
マークスなんだよ。抗議したらまずいのか?
エラメル大佐抗議したことで極秘任務の存在が明るみとなっては、
ジョージくんの身に危険が及ぶかもしれないだろう?
迂闊に動くのはintelligentではないねぇ。
主人公【ジョージの安全が優先です】
【任務を手伝いつつ、彼が戻るのを待ちます】
エラメル大佐うむうむ。
しばらくは様子を見る方がいいだろう。
マークスだが、ジョージが戻るまでは、
余程のことがない限り、絶対非道を使わないからな。
エラメル大佐もちろんだとも、マークスくん。
古銃と現代銃、両方の貴銃士を召銃しているとはいえ、
〇〇くんはまだ士官候補生。
エラメル大佐学生の身たる君に過度の負担を強いるのは、
連合軍で責務ある立場の者として、看過できないよ。
エラメル大佐それに、貴銃士もマスターも、
非常に有用で貴重な人材だからねぇ。
エラメル大佐君たちには、ジョージくんが任務を終えて戻るまで、
無理のない範囲で手を貸してもらえればOKだよ。
マークス……案外話のわかるおっさんで助かった。
主人公【エラメル大佐だよ】
【おっさん呼びはやめよう……】
マークス悪かった、マスター。
タバティエールはは……そこはエラメル大佐に謝るところだろ?
エラメル大佐まああまあ、いいのだよ。吾輩、とっても心が広くて
Très bien!な大佐であるからねぇ。
シャルルヴィルマークスって、本当にマスター第一だよね……。
マークス当然だ。俺はマスターの銃だからな。
シャルルヴィル…………。
シャルルヴィルとにかく、これで方針は決まったね。
ジョージが戻るまで、フランス支部は、
なるべく自力でアウトレイジャーの討伐にあたる。
シャルルヴィルだけど、〇〇とマークスも、
可能な範囲で協力する。
エラメル大佐うむっ!
タバティエール力になれなくてすまないな……。
俺が、絶対高貴になれりゃよかったんだが。
エラメル大佐なぁに、タバティエールくんが気に病むことはない。
絶対高貴を使える貴銃士がいれば心強いが、
使えなくとも、貴銃士の存在は大きな心の支えとなる!
エラメル大佐そして……
君の中に、フランスを想う熱い気持ちがあるならば、
それだけでも十分というものだよ。
タバティエール……Merci beaucoup.
エラメル大佐Je vous en prie! では、解散!
タバティエールあー、ちょっと待ってくれ、大佐。
エラメル大佐む、なんだね、タバティエールくん。
タバティエール1つ質問なんだが、〇〇ちゃんたちの
滞在先を、軍の施設からウチに変えてよかったのか?
タバティエール何か不便がありそうなら、レザールの体面はともかく、
任務の方を優先してほしいんだが……。
侯爵やマスターになら、俺が話をつけておくぜ?

タバティエールは、車中での話の通り、
〇〇たちを少しでも
貴族から遠ざけようとしてくれているらしい。

エラメル大佐うーむ、しかし、レザール家のほうが快適だろう?
支部とそちらは近いからねぇ、
任務に特に支障はないし、今のままでOKさ。
タバティエール……そうか。
エラメル大佐だが……君の懸念が強くなったならば、
その時は話が変わってくるねぇ。
タバティエール……! 恩に着るぜ、大佐。
エラメル大佐ふっふっふ。
それでは、吾輩は会議があるので失礼するよ。
シャルルヴィル…………。
タバティエールおーい、シャルルくん、どうしたんだ?
シャルルヴィル……えっ、あ、ごめん。
ぼーっとしてたみたい。
シャルルヴィル極秘の緊急任務って、ジョージは大丈夫なのかなって、
ボク、なんだか心配になっちゃって。
シャルルヴィル(ロジェ様ならあちこちに人脈があるし、
何か知ってることがあるかな……?)
マークスあいつはバカだが、絶対高貴が使えるし、
そう簡単にやられるほど弱くないと思うぞ。
シャルルヴィルうん……そうだよね。
じゃあ、ボクもこれで。またね!
タバティエールさてと……。
俺たちも、レザール家に帰るとしますかね。

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