──翌朝。
メイド | おはようございます。〇〇様。 ゆうべはよくお眠りになられましたか? |
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メイド | 長旅でお疲れでしょうし、 今朝は通常の朝食の他に、 お粥など消化のいいものもご用意しました。 |
メイド | お食事のあと、落ち着かれましたら、 アロマのマッサージなどもいかがですか? |
主人公 | 【あ、ありがとうございます】 【お、お構いなく……】 |
メイド | ふふっ、ご遠慮なさらないでくださいね。 |
メイド | それでは、私はお食事を運んでまいります。 あの……申し訳ないのですが、お連れの貴銃士様には 〇〇様からお声がけいただけますか……? |
メイド | 私には、その……。 恐ろ──いえ、あの、恐れ多くて。 |
主人公 | 【……わかりました】 【声をかけてきます】 |
メイド | あ、ありがとうございます……! |
メイドは、ほっとしたように頬を緩め、退室する。
主人公 | 【(マークスが、現代銃だから……?)】 【(現代銃は本当に忌避されてるんだ……)】 |
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マークス | マスター、いるか? 入るぞ。 |
マークス | おはよう、マスター。 昨日より顔色が良くなってるな。 ちゃんと休めたみたいでよかった。 |
マークス | だが……俺は……。不覚にも……。 |
マークス | 不覚にも、ぐっすり眠ってしまったんだ……ッ! 一晩中、マスターの警護をするつもりだったのに! |
マークス | あの寝間着がいけなかった……! サラサラとした肌触りで、雲に包まれるような寝心地で……! クソ、もう二度と着るものか……! |
執事長 | 失礼いたします。 |
執事長 | 〇〇様宛のお手紙と、 本日の新聞をお持ちいたしました。 |
マークス | 手紙? ラッセルからか? |
執事長 | いえ、差出人はジョージ様のようです。 |
執事長 | 消印がないので、当家を出られる前に、 郵便受けに直接入れていかれたのでしょう。 |
執事長から手紙とペーパーナイフを受け取り、
中の便せんを取り出してみる。
マークス | マスター、なんて書いてあるんだ? 俺にも見せてくれ。 |
---|
『〇〇へ。 悪い! 連合軍から緊急の連絡があって、 極秘の任務で急いでイギリスに戻ることになったんだ』 |
『その任務が終わったらすぐにフランスに戻るけど、 何日かかるかわからない。 だから、あんまり無理しないでくれよ!』 |
『ジョージより』 |
マークス | はぁ……!? こんな司令出した奴は誰だよ! |
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マークス | ジョージがいないと、 マスターの傷を治せねぇのに……! |
主人公 | 【……緊急要請なら仕方がない】 【ジョージの任務がすぐ終わることを祈ろう】 |
マークス | マスターが、そう言うなら……。 |
マークス | けど、ジョージがいない間、 俺はなるべく絶対非道を使わないからな。 |
マークス | 連合軍の都合に振り回されてるんだ。 これくらいの要求をしても、問題ないだろ。 |
マークス | くそっ……。 士官学校に戻ったらラッセルを問い詰めて、 この司令を出した奴を締め上げてやる。 |
主人公 | 【ほどほどに……】 【理由を聞いてから……】 |
マークス | ああ。任せろ、マスター。 |
シャスポー | …………。 |
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タバティエール | また読書か。今日は何を読んでるんだ? |
シャスポー | ちょっとした童話だよ。 『盲目トカゲと小夜啼鳥(サヨナキドリ)』っていうやつ。 |
タバティエール | トカゲにナイチンゲールねぇ。 |
タバティエール | お前が童話を読むなんて、 珍しいこともあるもんだと思ったら…… タイトルに目が留まったってわけか。 |
シャスポー | ……そう。 それに、面白いんだよ、これ。 |
シャスポー | “Lézard(トカゲ)”と“Rossignol(ナイチンゲール)”の、 因果みたいなものを感じてさ。 |
タバティエール | ……へぇ。どんな話なんだ? |
シャスポー | ──あるところに、お互い目を1つしか持たない 小夜啼鳥(ナイチンゲール)とトカゲが仲良く暮らしていた。 |
シャスポー | ある日、婚礼に招かれた小夜啼鳥は、 自分の目が1つであることを気にして、 婚礼の日だけ目を貸してほしいとトカゲに頼むんだ。 |
シャスポー | トカゲはその頼みを聞き入れて、 小夜啼鳥に目を貸した。 |
シャスポー | だけど……小夜啼鳥は、 宴が終わっても、トカゲに目を返さなかった。 |
シャスポー | 両方の目で見る世界を知ってしまった小夜啼鳥は、 それを手放すのが惜しくなったんだ。 |
シャスポー | 当然、盲目になってしまったトカゲは怒った。 でも、空を飛べる小夜啼鳥にとって、 トカゲは脅威にはならない。 |
シャスポー | 目を貸してやった恩を忘れて、 「高いぞ、高いぞ」と囀りながら飛ぶ小夜啼鳥に、 トカゲは恨みを募らせ── |
シャスポー | それ以降、小夜啼鳥の巣がある木陰に潜んで、 卵を襲うようになった……っていう話さ。 |
タバティエール | ……因果応報、って話なのかねぇ。 なんだか救いがないな。 |
シャスポー | そうかもな。 ま、僕に言わせれば、このトカゲは迂闊すぎるけどね。 |
シャスポー | 僕だったら……みすみす目を奪われたりしない。 むしろ、こっちが奪ってやる。 それに、こそこそ卵を狙うほど弱くもないね。 |
シャスポー | 僕ならきっと、愛らしい小鳥もろとも奪ってみせる。 必ず、ね……。 |
タバティエール | …………。 |
シャスポー | 可愛い小鳥へ手を伸ばすには、 色々と準備も必要さ。 |
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シャスポー | そうだな……あの、フィルクレヴァートの客人。 彼らも使わせてもらおうか。 |
シャスポー | マークスとかいう現代銃の貴銃士の方は、 マスター以外目に入らないって感じだったけど…… 〇〇の方には、つけ込む余地があるかな? |
シャスポー | 老若男女虜にしてきた僕なら、 あの子を操り人形にするのも、わけないことだよね。 |
タバティエール | お前……。 |
シャスポー | ……お、噂をすればだ。 声をかけたいところだけど…… なんだか急いでるみたいだね? |
その視線の先には、玄関から出てくる
〇〇とマークスの姿がある。
タバティエールはきょっとして目を見開いた。
タバティエール | ちょっと待て、なんであの子らがここにいるんだ!? フランス支部の方に滞在するはずだろ? |
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シャスポー | はぁ? 何言ってるんだ。 |
シャスポー | フランス滞在中、 レザール家が面倒みるってことになったんだよ。 |
タバティエール | くっ……そういうことはもっと早く言えよ! |
シャスポー | あっ、おい! 抜け駆けは許さないぞ! |
マークス | 向こうに停まってるのが支部からの迎えの車だな。 行こう、マスター。 |
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タバティエール | おーい、ちょっと待ってくれ! |
マークス | ん……? あんたは……タバティエールだったか。 |
タバティエール | なんでこの屋敷に戻ってきたんだ! 昨日、忠告しただろう。もう関わるなと……! |
マークス | 俺だって好きで戻ってきたわけじゃない。 だけど、マスターは怪我をしていた。 早く休ませたかったし……。 |
タバティエール | はぁ……。 |
タバティエール | これからフランス支部へ行くんだろ? 俺も一緒に行かせてくれ。 |
マークス | 俺は構わないが……マスターは? |
主人公 | 【大丈夫】 【車に乗りましょう】 |
タバティエール | ところで、ジョージくんは一緒じゃないのか? |
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マークス | あいつは、急な任務でここを離れてる。 |
タバティエール | そうか……それは幸いだ。 |
マークス | 昨日もそんなことを言っていたが…… どういう意味なんだ。 |
タバティエール | ……君たちにとって最善なのは、 フランスの貴族や名家に関わらないことだった。 |
タバティエール | だが……昨日はロシニョル家のお嬢さんを助けて、 今はレザール家に滞在することになってる。 |
タバティエール | もう手遅れ、だよな……。 |
マークス | おい、もったいぶるな。何が手遅れだ? わけのわからない忠告では役に立たない。 正直にすべての情報を伝えろ。 |
タバティエール | ……! |
タバティエール | 君……嘘はつけないタイプだろ? |
マークス | だ、だったらなんだ。 |
タバティエール | いや、この国にいると、 君みたいなのにはなかなかお目にかかれないからさ…… 正直にすべての情報を……ははっ! |
マークス | な、なんなんだコイツは……。 マスター。マスターも情報が欲しいだろう? |
主人公 | 【聞きたいことがあります】 【ロシニョル家について教えてください】 |
〇〇は、ロシニョル家について、
昨日のパーティーの中で気になったことがあった。
女性1 | ……まあ、ご覧になって。 “ロシニョル家”がマカロンを手にしましたわ。 |
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女性2 | あら、嫌だ。 あのテーブルのものは、口にしない方がよさそうね。 |
女性1 | ええ、毒でも入っていたら困りますもの。 |
現代銃が忌避されているのとは別に、
グラスと同じくらい……いや、それ以上に、
カトリーヌが爪弾きにされているように見えたのだ。
マークス | 確かに、あの女に対する態度は妙だったな。 毒がどうだとかも言っていた。 |
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タバティエール | …………。 |
タバティエール | 知ってることで、 対処できることも増えるかもしれないな。 |
タバティエール | ……これから話すことは、 俺から聞いたって言わないでくれよ。 |
主人公 | 【わかりました】 【約束します】 |
タバティエール | それじゃあ…… レザール家とロシニョル家の因縁について、 ちょっと昔話を聞いてくれ。 |
タバティエール | レザール家とロシニョル家には、 古くからの因縁があるんだが…… さて、どこから話したもんかねぇ。 |
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タバティエール | まずは、フランスの貴族について、おさらいするか。 知ってることも多いかもしれないけど、 まぁ、道中の暇つぶしにでも聞いてくれ。 |
タバティエール | ……世界帝が圧政を敷いていた頃、 その統治を支えるため、フランスでは8つの家に 特権が与えられ、封建的身分制度が復活した。 |
タバティエール | だが──やがて、そのうちの3家が、 密かに世界帝へ反旗を翻し、 レジスタンスの援助を始めた。 |
タバティエール | ……それが、リリエンフェルト家と、 レザール家と、ロシニョル家だ。 |
タバティエール | 革命戦争後、世界帝派の5家は良くて取りつぶし。 酷い例だと、民衆の私刑で屋敷ごと燃やされたり、 刺されたり、撃たれたり……。 |
タバティエール | まぁ、権力を笠に着てやりたい放題だったらしいから、 よっぽど民衆の怒りと恨みを買ってたんだろうな。 碌な目に遭わなかったそうだ。 |
タバティエール | 一方で、残る3家は、人々からの称賛を浴びた。 そして改めて、フランス政府のもとで、 叙爵されることになったってわけだ。 |
タバティエール | って言っても、名誉称号みたいなもんで、 名誉はあっても特権はないんだけどな。 |
タバティエール | 3家が今でも貴族らしい生活を続けてられてるのは、 それぞれの事業で大きな収益があるからだ。 |
マークス | ……フランスの貴族についてはわかった。 で、レザールとロシニョルの因縁ってのはなんなんだ? |
タバティエール | この2家は、貴族になるよりずっと前から、 折り合いが悪かったらしい。 長い歴史の中で、常に競い合い、争い合ってきた。 |
タバティエール | 現侯爵の代でもそれは同じだったが…… 決定的にいがみ合うきっかけになったのは、 毒マカロン事件だろうな。 |
主人公 | 【毒マカロン事件……?】 【なんですか、それは】 |
タバティエール | ……ある年のことだ。自然災害の影響を受けて、 ロシニョル家の事業が大損害を被った。 再開すらも難しいくらいにな。 |
タバティエール | その時、犬猿の仲だったレザール家が援助を申し出た。 いい加減、先のことを見据えて、 関係を改善しようと思ったのかもな。 |
タバティエール | その援助のおかげで、 ロシニョル家の事業はなんとか持ち堪えられた。 そして、2家のわだかまりも消えるはずだったが……。 |
タバティエール | 後日、ロシニョル家が、援助のお礼として あれこれ金品を贈った時に、事件が起きたんだ。 |
タバティエール | 贈答品の中の1つ──マカロンを食べた レザール侯爵夫人が、毒に倒れた。 |
タバティエール | マカロンは、ロシニョル家のパティシエが作ったもの。 レザール家はロシニョル家が毒を盛ったと思い、 恩を仇で返されたと激怒した。 |
マークス | 怒るのは当たり前だな。 毒を盛るなんて、卑怯なやり方だ。 殺したい奴がいるなら、正面から撃ちに行けばいい。 |
タバティエール | おいおい、物騒だなぁ、マークスくんは……。 |
マークス | ……だが、よく考えてみると謎だな。 せっかくの関係修復の機会をふいにするなんて、 ロシニョルはそこまでレザールが嫌いだったのか? |
マークス | 毒なんか盛ったら、 それから先何があっても援助してもらえなくなる。 メリットが特にないように思えるんだが。 |
タバティエール | まぁ……普通に考えたらそうだと思うぜ。 |
タバティエール | 実際、ロシニョルの侯爵や夫人たちも、 援助してもらっておいて そんな愚かな真似はするはずがないと訴えた。 |
タバティエール | ロシニョル家のパティシエたちは 決して毒なんか入れていないと主張したし、 毒を入れたという証拠も出なかった。 |
タバティエール | だが、非難は収まらず…… ロシニョル侯爵は仕方なく、使用人たちを 解雇処分にしたが、結局真相はわからずじまいさ。 |
タバティエール | そんなわけで……。 フランスの名士たちの間で、 ロシニョル家の立場はすっかり悪くなっちまったんだ。 |
タバティエール | とはいえ、ロシニョル家の革命戦争での功績は大きい。 証拠がない以上、表立って糾弾するわけにもいかない。 特に、当主が相手ではな。 |
タバティエール | その代わりに標的になったのが、カトリーヌちゃんだ。 彼女は色々とあって立場が弱いから、格好の的さ。 |
マークス | 昨日のパーティーのは、そういうことか……。 |
マークス | だが、それと俺たちになんの関係がある? 関わるなという理由はなんだ。 |
タバティエール | レザール家とロシニョル家の関係は、 危ういバランスでなんとか保たれている。 だが、いつ正面衝突するかわからない状況なんだ。 |
タバティエール | 2家の間に波風を立てるような要因があれば…… 排除されるか、取り込まれるか、 何かしらの陰謀に使われるか、わかったもんじゃない。 |
主人公 | 【……なるほど】 【ジョージが彼女を治したのがまずかったと】 |
タバティエール | ……わかったかい? つまりはそういうことだ。 |
タバティエール | 貴銃士は──俺たちは、政治の道具さ。 家の威光を示す広告塔であり、権力の象徴……。 |
タバティエール | シャスポー、グラース…… あの日の召銃パーティーから、あいつらの運命は── |
マークス | ……召銃パーティー? |
運転手 | 皆さん、お待たせしました。 連合軍フランス支部に到着しました。 |
連合軍兵士 | 〇〇候補生と、貴銃士マークス殿、 レザール家の貴銃士タバティエール殿ですね。 |
---|---|
タバティエール | 悪いな、俺は来る予定じゃなかったのに。 |
連合軍兵士 | いえ、とんでもありません! ご案内します。どうぞこちらへ。 |
シャルルヴィル | Bonjour♪ 待ってたよ。 |
---|---|
マークス | またあんたか。 |
シャルルヴィル | もうっ! 君、僕への態度酷くない? |
??? | …………。 |
主人公 | 【……は、初めまして!】 【〇〇と申します!】 |
??? | ん~! 〇〇くんとマークスくんだね。 昨晩はアウトレイジャーの討伐、ご苦労である。 |
??? | 現場にいた兵士たちから、 トレビア~ンな戦いぶりであったと聞いているぞ! |
??? | おっと、自己紹介が遅れたねぇ。吾輩のことは、 気軽に「エラメル大佐」と呼んでおくれ。 |
マークス | …………。 |
主人公 | 【は、はい……】 |
シャルルヴィル | あははっ、大佐、2人が戸惑ってるみたいですよ? |
シャルルヴィル | 〇〇、マークス、改めて紹介するね。 彼がエラメル大佐。 フランスのアウトレイジャー討伐を指揮してるんだ。 |
エラメル大佐 | どうだね、キミたち。友愛の証として、 吾輩とビズをしようではないかっ! |
マークス | ビズ? |
シャルルヴィル | フランスではね、友達とか親しい人に会ったら、 こう……ほっぺをくっつけてから、チュッてリップ音を出す、 ビズっていう挨拶をするんだ。 |
シャルルヴィル | 地域によって色々違いはあるけど、 基本は右、左の2回だよ。 〇〇、やってみようか♪ |
マークス | おい、近いぞシャルルヴィル。 マスターから離れろ! |
シャルルヴィル | ええっ! ちょ、撃たないでよ! |
エラメル大佐 | むむ……我輩とビズは嫌なのかね……。 よぉーし、ならば、代わりに熱烈なハグでもよいぞ。 |
連合軍兵士 | エラメル大佐……イギリスからいらした方に、 初対面からそれは酷かと……! |
エラメル大佐 | おおっと、これは失礼。のほほほほ! |
マークス | こいつ……本当に偉いやつか? 本当はただの変態なんじゃないのか? 変態をなんていうんだっけ……そう、変質者! |
マークス | マスター! この変質者は俺が始末する。いいな!? |
タバティエール | やれやれ……マークスくん。 大差は確かにちょっと変わってるが、 頼りになるお方だ。安心してくれ。 |
マークス | だが……本当に変だぞ……? |
主人公 | 【マークス、失礼だよ】 【口には出さないようにしよう】 |
マークス | 了解した。すまない、マスター。 |
エラメル大佐 | さてさて…… さっそく、本題に入るとしようかねぇ。 |
エラメル大佐 | 諸君、好きな席にかけておくれ。 |
連合軍兵士 | ……それでは、アウトレイジャー襲撃による、 フランス国内の被害について報告します。 |
連合軍兵士 | 襲撃は1か月で38件発生し、死傷者は25名。 出没地点付近にいた民間人7名が死亡しています。 また、兵士10名が重傷で、残りが軽傷です。 |
連合軍兵士 | 初期の被害では、単体の襲撃が多かったのですが…… 数体同時にアウトレイジャーが出現する例も増え、 苦戦を強いられています。 |
エラメル大佐 | うむ……。 やはり、戦力になれる貴銃士がいないと、 なかなか厳しい状況だねぇ。 |
マークス | ……まともな戦力に数えられる貴銃士は、 グラース以外いないのか? |
マークス | タバティエールは絶対高貴になれないと聞いたが、 シャルルヴィル、あんたはなれるんだろう? 少しは戦ったらどうなんだ。 |
シャルルヴィル | いやぁ、ホントごめんね? 僕も力になりたいのは山々なんだけど、 ロジェ様の貴銃士は僕1人でしょ? |
シャルルヴィル | 癒しの順番待ちをしている人がたくさんいるのに、 あんまり絶対高貴を使ったら、 ロジェ様の薔薇の傷が消えちゃう。 |
シャルルヴィル | そうすると僕も消えてしまうから…… 勝手に絶対高貴の力を使わないように、 ロジェ様から厳命されてるんだ。 |
マークス | 銃の本来の役目は、敵を撃つことだろ。 絶対高貴の力が貴重なのは……まぁ、わかるが……。 |
マークス | それで、あいつ……シャスポーは? 客を守る貴銃士が必要だとか言って残ったのに、 まさか、本当は絶対高貴になれないとか言わないよな? |
シャルルヴィル | …………。 |
タバティエール | あー……シャスポーについてだが、 あいつも俺と同じで、絶対高貴になれない。 |
タバティエール | グラースは絶対非道を使えるが…… 絶対高貴になれる貴銃士を抱えていないから、 マスターへの負担が大きすぎて、あまり力を使えない。 |
シャルルヴィル | 僕が、グラースのマスターの傷を 緩和してあげてもいいんだけど…… レザール家とロシニョル家の関係は複雑でしょ? |
シャルルヴィル | リリエンフェルト家がどちらか一家に肩入れすると、 バランスが崩れてどうなるかわからないし……。 |
シャルルヴィル | そういうわけで、フランスにいる僕たち貴銃士4人は、 実は全員、ほとんど戦いに出られないんだよね。 |
マークス | …………。 |
マークス | そういうことか……。 それで俺たちが呼ばれる羽目になったんだな。呆れた。 |
---|---|
エラメル大佐 | 我がフランスの貴銃士たちが戦場に来ずとも、 これまでは兵たちの力で対処できていたのだがねぇ。 |
エラメル大佐 | 兵士が携行しているアサルトライフルでは、 1体を仕留めるにも相当な時間がかかる。 |
エラメル大佐 | 出現が1体だけならまだいいが、 昨日みたいに一度に5体も出てこられたら、 我々もお手上げなのであるよ。 |
エラメル大佐 | 今は、なんとかして高威力の火器を配備できないか、 連合軍加盟国や周辺国と協議中でねぇ。 |
エラメル大佐 | 配備が実現すれば、奴らと渡り合えるかもしれない。 しかし、一国だけ強力な火器を持つというのもよろしくない。 |
エラメル大佐 | 色々とややこしい、政治の問題になってきて…… ん~まったく、我輩をもってしても頭が痛い! |
エラメル大佐 | そういうわけで…… フランスでのアウトレイジャーの被害が落ち着くまで、 君たちに力を貸してもらいたいのだよ。 |
マークス | ……昨日、フランスに到着した時点では、 協力することに特に問題はなかった。 |
マークス | だが……ジョージが極秘の緊急任務とやらで、 イギリスに呼び戻された以上、 俺もあまり絶対非道を使うわけにはいかない。 |
エラメル大佐 | むむ? ジョージくんの姿がないと思っていたら、 彼は既に帰国してしまっていたのかね? |
マークス | ああ。 っていうか、あんたは何も聞いてないのか? フランスでの任務に支障が出ることなのに。 |
エラメル大佐 | うーむ……連合軍の極秘任務の場合、 すべての加盟国に対して 任務内容を公開するとも限らないが……。 |
エラメル大佐 | フランスへの影響が大きい事案なのだから、 前もって何かしらの通達があって然るべきだねぇ。 |
エラメル大佐 | この件について、吾輩からも抗議しよう! と言いたいところなんだが……。むむぅ……。 |
マークス | なんだよ。抗議したらまずいのか? |
エラメル大佐 | 抗議したことで極秘任務の存在が明るみとなっては、 ジョージくんの身に危険が及ぶかもしれないだろう? 迂闊に動くのはintelligentではないねぇ。 |
主人公 | 【ジョージの安全が優先です】 【任務を手伝いつつ、彼が戻るのを待ちます】 |
エラメル大佐 | うむうむ。 しばらくは様子を見る方がいいだろう。 |
マークス | だが、ジョージが戻るまでは、 余程のことがない限り、絶対非道を使わないからな。 |
エラメル大佐 | もちろんだとも、マークスくん。 古銃と現代銃、両方の貴銃士を召銃しているとはいえ、 〇〇くんはまだ士官候補生。 |
エラメル大佐 | 学生の身たる君に過度の負担を強いるのは、 連合軍で責務ある立場の者として、看過できないよ。 |
エラメル大佐 | それに、貴銃士もマスターも、 非常に有用で貴重な人材だからねぇ。 |
エラメル大佐 | 君たちには、ジョージくんが任務を終えて戻るまで、 無理のない範囲で手を貸してもらえればOKだよ。 |
マークス | ……案外話のわかるおっさんで助かった。 |
主人公 | 【エラメル大佐だよ】 【おっさん呼びはやめよう……】 |
マークス | 悪かった、マスター。 |
タバティエール | はは……そこはエラメル大佐に謝るところだろ? |
エラメル大佐 | まああまあ、いいのだよ。吾輩、とっても心が広くて Très bien!な大佐であるからねぇ。 |
シャルルヴィル | マークスって、本当にマスター第一だよね……。 |
マークス | 当然だ。俺はマスターの銃だからな。 |
シャルルヴィル | …………。 |
シャルルヴィル | とにかく、これで方針は決まったね。 ジョージが戻るまで、フランス支部は、 なるべく自力でアウトレイジャーの討伐にあたる。 |
シャルルヴィル | だけど、〇〇とマークスも、 可能な範囲で協力する。 |
エラメル大佐 | うむっ! |
タバティエール | 力になれなくてすまないな……。 俺が、絶対高貴になれりゃよかったんだが。 |
エラメル大佐 | なぁに、タバティエールくんが気に病むことはない。 絶対高貴を使える貴銃士がいれば心強いが、 使えなくとも、貴銃士の存在は大きな心の支えとなる! |
エラメル大佐 | そして…… 君の中に、フランスを想う熱い気持ちがあるならば、 それだけでも十分というものだよ。 |
タバティエール | ……Merci beaucoup. |
エラメル大佐 | Je vous en prie! では、解散! |
タバティエール | あー、ちょっと待ってくれ、大佐。 |
エラメル大佐 | む、なんだね、タバティエールくん。 |
タバティエール | 1つ質問なんだが、〇〇ちゃんたちの 滞在先を、軍の施設からウチに変えてよかったのか? |
タバティエール | 何か不便がありそうなら、レザールの体面はともかく、 任務の方を優先してほしいんだが……。 侯爵やマスターになら、俺が話をつけておくぜ? |
タバティエールは、車中での話の通り、
〇〇たちを少しでも
貴族から遠ざけようとしてくれているらしい。
エラメル大佐 | うーむ、しかし、レザール家のほうが快適だろう? 支部とそちらは近いからねぇ、 任務に特に支障はないし、今のままでOKさ。 |
---|---|
タバティエール | ……そうか。 |
エラメル大佐 | だが……君の懸念が強くなったならば、 その時は話が変わってくるねぇ。 |
タバティエール | ……! 恩に着るぜ、大佐。 |
エラメル大佐 | ふっふっふ。 それでは、吾輩は会議があるので失礼するよ。 |
シャルルヴィル | …………。 |
タバティエール | おーい、シャルルくん、どうしたんだ? |
シャルルヴィル | ……えっ、あ、ごめん。 ぼーっとしてたみたい。 |
シャルルヴィル | 極秘の緊急任務って、ジョージは大丈夫なのかなって、 ボク、なんだか心配になっちゃって。 |
シャルルヴィル | (ロジェ様ならあちこちに人脈があるし、 何か知ってることがあるかな……?) |
マークス | あいつはバカだが、絶対高貴が使えるし、 そう簡単にやられるほど弱くないと思うぞ。 |
シャルルヴィル | うん……そうだよね。 じゃあ、ボクもこれで。またね! |
タバティエール | さてと……。 俺たちも、レザール家に帰るとしますかね。 |
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