シャルルヴィル | う……うぅ……っ! |
---|---|
シャルルヴィル | ま、て……待って……っ! う……っ。 |
ブラウン・ベス | …………。 |
---|---|
シャルルヴィル | ベスくん、何してるのさ! |
シャルルヴィル | 君が兵士を撃つなんて……! どうして……!? |
シャルルヴィル | 待って、どこ行くんだよ。 |
シャルルヴィル | ベスくん……待って、待ってよ! ──ベスくんッ! |
シャルルヴィル | ……うわあああっ! |
---|---|
シャルルヴィル | ……はぁ、はぁ、 …………っ。 |
シャルルヴィル | また、この夢か……。 |
──フランス滞在4日目。
〇〇とマークスは、次々と現れる
アウトレイジャーを前に、苦戦を強いられていた。
アウトレイジャー | 殺、シテ、ヤル……! |
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マークス | ぐッ……!! |
主人公 | 【マークス!】 【血が……!】 |
マークス | わき腹をかすっただけだ。これくらいなんてことない! |
マークス | 一気に片付けるぞ。 ──心銃! |
アウトレイジャーたち | ギャァァァ……! |
マークス | ハァ……ハァ……ッ……。 |
マークス | ……アウトレイジャーの沈黙を確認。 マスター、傷を見せてくれ。 |
主人公 | 【マークスの傷を先に見せて】 【早く治療をしよう】 |
マークス | 俺のことはいいんだ。 これくらい、包帯を巻いておけば血も止まる。 ……マスターに、これ以上負担を掛けたくない。 |
マークス | (俺が絶対高貴になれれば……っ。 くそ……ジョージの野郎は、まだ戻らないのかよ!) |
無線 | 『報告します! パリ中心部にアウトレイジャー出現!』 |
無線 | 『現在、ロシニョル侯爵邸付近にて、 連合軍とアウトレイジャーが交戦中! 付近にいる隊は、至急応援願います!』 |
指揮官 | なっ……! 侯爵邸付近だと!? 総員、ロシニョル侯爵邸へ急行するぞ! |
兵士たち | はっ! |
兵士1 | パリのど真ん中にまで被害が広がるなんて、 フランスは一体どうなってるんだ……!? |
---|---|
兵士2 | 俺、呪いだとか非科学的なものは信じてなかったけど、 最近はちょっと思うんだ。世界帝派の怨念が、 フランスに災厄を呼び寄せてるんじゃないかって……。 |
兵士3 | んなわけないだろ。 でも、フランスの状況は、他国と比べて異常だ。 何かしら原因はあるに違いない。 |
マークス | ロシニョル家のそばか……。 あいつ……グラースが、少しは戦いに出てるだろうか。 |
マークス | いや……でも、あいつのマスターは貧弱だし、 静観してる可能性も十分にあるな。 あまり期待しない方がいいか……。 |
無線 | 『──報告します。 ロシニョル侯爵邸付近に出現したアウトレイジャーは、 グラース様が鎮圧! 被害は軽微です』 |
無線 | 『当隊は引き続き、周辺の警戒を行い、 逃れたアウトレイジャーがいないか捜索を行います』 |
兵士2 | 連戦にならなくて助かったぜ……。 |
主人公 | 【グラースは大丈夫だろうか】 【……カトリーヌさんが心配だ】 |
マークス | ……マスター、気になるのか? それなら、様子を見に行こう。 |
マークス | ん……? 意外と静かなもんだな。 軍の奴らは、もう帰ったのか。 |
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到着したロシニョル侯爵邸は、
アウトレイジャーの襲撃があったのが嘘のように、
いつも通りの様子だった。
メイド1 | あら……? 〇〇様にマークス様ではありませんか! |
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マークス | あんたは、この前の……。 |
〇〇とマークスを出迎えてくれたのは、
先日カトリーヌについていろいろと教えてくれた
メイドたちのうちの1人だった。
メイド1 | 今日はどうなさったのですか? もしや、襲撃犯の一件で、 様子を見にきてくださったとか……? |
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マークス | ああ。この近くで襲撃犯が出たと聞いた。 グラースが殲滅したらしいな。 |
メイド1 | ええ。グラース様のおかげで、 人にも建物にも被害は出ておりません。 |
メイド1 | 不思議な力で、あっという間に 襲撃犯を倒してくださったんです。 |
メイド1 | 何か、得体のしれない、恐ろしく禍々しい力でしたが、 本当にお強くて……。 |
主人公 | 【カトリーヌさんは無事ですか?】 【寝込んだりしてはいませんか?】 |
メイド1 | ええ、ちょうど今、 ご様子を窺ってきたところです。 お嬢様はご無事でいらっしゃいます。 |
メイド1 | それに、ジョージ様の高貴なるお力に触れて以来、 体調も割と安定しているようです。 皆様には、なんとお礼を申し上げたらいいか……! |
マークス | んん……? |
マークス | ……マスター、どう思う? |
主人公 | 【薔薇の傷が悪化していない?】 【ジョージが治したから……?】 |
マークス | どちらにしても、直接様子を見ておきたいな。 もし本当にピンピンしてるなら、 グラースを遠慮なく前線に引っ張り出せる。 |
マークス | おい、邪魔するぞ。 部屋の場所はわかってるから、案内はいらない。 |
メイド1 | は、はいっ、ごゆっくり……。 |
マークス | ……なぁ、マスター。 上手く言えないんだが……俺、フランスに来てから なんだかずっともやもやしてるんだ。 |
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マークス | 何か、常に違和感がまとわりついてて……。 |
マークス | どいつもこいつも、顔と、思ってることと、 やってることと、全部バラバラな感じで、 何を信じたらいいのかもわからない。 |
マークス | おまけに、まだジョージは戻ってこないし……。 任務なんかよりマスターのほうがずっと大事なんだから、 さっさと士官学校に戻りたい。 |
主人公 | 【それはできないよ】 【責任があるから】 |
マークス | ……マスターは、ん……と、 …………頑固だ。 |
マークス | ……ん? あれは── |
マークスの視線の先を見ると、
ロシニョル家の庭を歩くグラースの姿があった。
足取りは軽く、口元には笑みが浮かんでいる。
グラース | ~~~♪ |
---|---|
マークス | あいつ……討伐の帰り、だよな……。 ずいぶん余裕そうじゃねーか。 |
マークス | 絶対非道を使ってマスターを傷つけておいて、 あんなに呑気にしていられるなんて……。 |
マークス | やっぱり、あいつは戦闘になると 性格が変わるタイプなのか……? |
マークス | ……なんか、引っかかるな。 マスター、あいつのあとをつけてみよう。 |
グラース | さて、……小鳥は──どんな声で…… |
---|---|
グラース | ナイチンゲール……可愛い…… ……を呼ぶ小鳥……♪ |
何か独り言を言いながら、上機嫌なグラースは、
カトリーヌの部屋の窓へと手を伸ばす。
軽くノックをすると、すぐにカトリーヌが顔を出し、
微笑みを浮かべた。
マークス | ここからだと声が聞こえないな。 もう少しだけ近づいてみよう。 |
---|
グラース | やあ、カトリーヌ。お待たせ。 ──これを、君に。 |
---|---|
カトリーヌ | ……! |
グラースが差し出したのは、一通の手紙だった。
待ちきれない様子で封を開けたカトリーヌは、
さっそく手紙を読んで、嬉しそうに笑う。
カトリーヌ | ねぇ、少し待っていてくれるかしら。 すぐに返事を書くから……。 |
---|---|
グラース | ああ、もちろんだよ。 |
グラース | それに、急がなくても大丈夫。 僕はお茶でも飲みながら、のんびり待つからね。 |
カトリーヌ | ……ありがとう、すぐにお茶を淹れるわ。 裏口が開いているから、 そこから入ってちょうだいね。 |
グラース | Oui♪ |
まるでスキップでもするかのように軽やかな足取りで、
グラースは裏口の方へと消えていった。
マークス | ……なんだ、今の。 |
---|---|
主人公 | 【どういうことだろう……?】 【2人とも、別人みたいだ……】 |
マークス | やっぱり、変だよな……? ……一体、どうなってるんだ? |
マークス | 裏口から、って……ロシニョル家の貴銃士なんだから 玄関から入ればいいだろ。 なんでコソコソと……。 |
主人公 | 【……確かめに行こう】 【2人に会いに行ってみる?】 |
マークス | ああ。賛成だ、マスター。 |
マークス | おい、邪魔するぞ。 |
---|---|
カトリーヌ | ……っ! 〇〇様、マークス様!? どうなさったのですか? |
マークス | アウトレイジャーが出たと聞いて、様子を見に来た。 |
カトリーヌ | そうだったのですか……。 わざわざありがとうございます。 |
グラース | また君か。カトリーヌとの楽しい時間を……。 僕の邪魔をするのが趣味なのか? |
マークス | グラースが戦って聞いて来たんだ。 あんた、なんで元気そうにしてる? 絶対非道を使ったなら、あんたへの負担も大きいだろ。 |
カトリーヌ | え、ええ……。ですが、先日のジョージさんのおかげで 楽になっていましたから、大丈夫ですわ。 |
マークス | ……そうか。 なら、次に俺たちが招集された時、 グラースも連れて行って構わないか? |
カトリーヌ | それは……わたくしの一存では、なんとも…… 戦うのはわたくしではありませんから。 彼自身の意思を── |
グラース | 僕はもちろんかまわないよ、カトリーヌ。 他でもない、君のためならね。 |
カトリーヌ | ……ありがとう……。 |
マークス | ……ところで、グラース。 あんた、どうして裏口からコソコソと入ってきたんだ。 |
グラース | ……見てたのかい。それは── |
カトリーヌ | ……お義母様の言いつけなのです。 彼はこれまで一度も、 正面玄関を通ったことがありません……。 |
マークス | ……現代銃だから、か……。 |
カトリーヌ | …………。 |
主人公 | 【……マークス、そろそろ帰ろう】 【突然お邪魔しました】 |
カトリーヌ | 大したお構いもできず、申し訳ありません。 帰り道、どうぞお気をつけくださいね。 |
──レザール家の客室にて。
マークス | マスター、包帯はきつくないか? |
---|---|
主人公 | 【ちょうどいいくらい】 【手当てが上達したね】 |
マークス | ……そうか? ならよかった。 これで少しは痛みも引くといいんだが……。 傷が、手首の辺りまで進行してるな。 |
マークス | アウトレイジャーの数が多すぎて、 討伐に呼ばれるたびに絶対非道を使う羽目になってる。 ジョージがいないと、これ以上は……。 |
マークス | あの変質者──エラメル大佐、だったか。 変だけど、割と偉い奴なんだろ? |
マークス | やっぱり、あいつに頼んで抗議してもらおう。 早くジョージをこっちの任務に戻せ、ってな。 |
マークス | 極秘任務のことが明るみになると、 危険が及ぶ可能性もある──と言っていたが。 今のマスターの状況の方がよほどまずい。 |
マークス | ジョージは弱くはねぇし、 こっちの事情も理解しているはずだ。 なぁ、マスター? 呼び戻そう。 |
主人公 | 【でも、任務の邪魔は……】 【もう少しだけ待とう】 |
マークス | ん……マスターが、そう言うなら……。 ……だが、あまり悠長に待ってられないぞ。 |
マークス | 俺が、マスターの傷をこれ以上悪化させられないと 判断した時は、ラッセルやエラメルに掛け合って、 なんとしてもジョージを呼び戻す。 |
マークス | それでいいか? |
主人公 | 【……わかった】 |
マークス | ──よし。 |
マークス | じゃあ、まだ5時過ぎだけど、今日はもう寝るか。 色々あって疲れただろう? |
主人公 | 【今の状況を整理したい】 【最近の出来事を振り返ろう】 |
マークス | マスターは働き者だな……。 わかった。俺も頑張るぞ。 |
〇〇とマークスは、
気になった出来事や情報について共有した。
マークス | んーと……俺のカンによると、 シャスポーはなにか嘘をついてる。 それからテオドールは、見るからに信用できねぇ。 |
---|---|
マークス | グラースもおかしい。戦いの時の好戦的な態度と、 カトリーヌの横にいる時のジメッとした態度……。 さっきは妙に上機嫌だったし、あいつも信用ならねぇ。 |
マークス | それに……カトリーヌも。 弱々しいから可哀想なヤツかと思っていたが、今日は変だった。 |
マークス | これまでの様子とは全然違って、明るくて…… やっぱり、あいつも信用できねぇな。 |
マークス | これらの事実から考察するに、俺は……。 |
マークス | グラースとカトリーヌは 二重人格ってやつなんじゃないかと思っている。 |
マークス | ……ん? 待てよ。 |
マークス | 最初のパーティーでジョージが少し手当てした後に、 グラースは戦いの場に現れた。 そして今日も、絶対非道を使った。 |
マークス | それなのに、あの女の傷は パーティーの夜の状態から悪化してない……。 |
マークス | ……ってことは、二重人格じゃなくて…… アッ! 完全に別人ってことか!! |
マークス | ああ、だとしたら全部説明がつく。 カトリーヌとグラースは、それぞれ2人いるんだ! |
主人公 | 【なるほど……】 【そうかなぁ……?】 |
マークス | ……ロシニョル家のどこかに、 もう1人マスターがいるのかもしれないな。 |
マークス | フランスでは現代銃への風当たりが強いし、 たまには戦いに出さないと、余計に立場が悪くなる。 だが、虚弱なマスターに負担をかけると命にかかわる。 |
マークス | だから、戦いに出すためのグラースを、 別のマスターが密かに召銃した……とか? |
主人公 | 【わざわざ現代銃をまた召銃……?】 【継母はカトリーヌさんを疎んでいるのに?】 |
マークス | あ……そうか。 そんなことしないよな……わざわざ……。 |
マークス | あああああ! くっそー……こういう面倒な話を考えるのは、 ライク・ツーにぶん投げてぇ……! |
──コンコン
マークス | ……っ、誰だ! |
---|---|
タバティエール | おいおい、そんなに怖い声出すなって。 俺──タバティエールだよ。 |
タバティエール | よっ。今日も忙しかったみたいだな。 体調は大丈夫かい? |
---|---|
タバティエール | 軽食でもどうかと思って、ちょっと作ってきたんだ。 |
マークス | あんたが作ったのか? 匂いはいいが……なんだ、そのぺらっとしたやつ。 |
タバティエール | ガレットだよ。クレープの元になった料理さ。 |
タバティエール | ハムと卵とチーズを乗せた食事系のと、 生地を少し甘くしてフルーツを乗せたデザート系、 2種類用意してみたんだ。お好きな方をどうぞ。 |
主人公 | 【どっちも美味しそう……!】 【いただきます!】 |
タバティエール | Bon appétit! |
マークス | んん……っ! うまいっ! あんた、すごい奴だったんだな……! |
タバティエール | はは……それほどでも。 |
タバティエール | ……俺はろくに戦えないからな。 身を削ってフランスのために戦ってくれてる君たちに、 これくらいのことでしか報いてやれなくて、すまない。 |
タバティエール | 俺が絶対高貴になれりゃよかったんだが……。 自分なりに色々頑張ってみても、どうも駄目でね。 ……情けない限りだ。 |
マークス | …………。 |
マークス | ……それでも、俺はあんたが少しうらやましい。 |
タバティエール | 俺が……? そいつはまた、どうしてだ? |
マークス | あんたは古銃だ。今は絶対高貴になれなくても、 いつか力に目覚められるかもしれないだろ? |
マークス | 俺は……自分の性能には自信を持ってる。 絶対非道も使えて、マスターの敵を薙ぎ払える。 でも、絶対高貴は使えない。マスターの傷を癒せない。 |
タバティエール | マークスくん……。 |
タバティエール | ……すまねぇな、情けないこと言って。 俺も、もっと頑張んないとな。 |
タバティエール | ところで── |
シャスポー | ──失礼するよ。 |
シャスポー | Bonjour、〇〇さん。 |
マークス | シャスポー……何しに来やがった。 |
シャスポー | 君、いちいちうるさいよ。 僕は、君たちが任務から戻ったって聞いて、 慰労のためのお誘いに来たんだ。 |
シャスポー | ねぇ、〇〇さん。 君のためにハープ奏者を呼んだんだよ。 |
シャスポー | 庭園で、ゆっくりお茶をしよう。 美しい旋律を聞きながら、お茶とお菓子を楽しむんだ。 そうすれば、疲れも取れるはずだよ。 |
シャスポー | この間のディナーは断られてしまったけど、 今日はいい返事をくれるよね? |
シャスポー | 僕、一度君とゆっくり話してみたいんだ。 2人きりで……ね? |
マークス | はぁ……? あんた……気が利かない奴だな。 |
マークス | マスターは疲れてんだよ。 労りたいってんなら、 茶に誘うより、マスターを休ませろ。 |
シャスポー | それを言うなら、君の方こそ気が利かないよ。 自分を傷つける根源の現代銃と四六時中一緒の方が、 気が休まらないってものだろう? |
マークス | ……っ! |
シャスポー | ね、〇〇さんは十分頑張ったんだから、 アウトレイジャー退治もしばらく休んじゃえばいいよ。 |
マークス | シャスポー……てめぇ、 マスターがどんな思いで戦ってるかも知らないで……! |
シャスポー | ふん。……それより、〇〇さん。 いい返事を聞かせて? じゃないと、君がOuiと言う前に攫ってしまうよ。 |
タバティエール | ……おい。お前、いい加減にしろ。 |
シャスポー | ……なんだよ、タバティエール。 |
タバティエール | 〇〇ちゃんとマークスくんのおかげで、 今のフランスはなんとか持ち堪えてるんだぞ。 |
タバティエール | お前がふらふら遊び歩いてる間にも、 2人は必死に戦ってくれてるんだ。 |
タバティエール | なのに、マークスくんを蔑ろにして、 〇〇ちゃんの覚悟も無視して……。 せめて、心からの感謝のひとことでも言えないのか!? |
シャスポー | 感謝、だって? 僕は誉れ高いシャスポー銃の貴銃士だよ? |
シャスポー | 革命戦争の英雄に、現代銃が尽くすのは当然のことだ。 感謝なんか── |
タバティエール | ──お前は“違う”だろ! |
シャスポー | …………。 |
タバティエール | 革命戦争で戦った銃でもないし、第一お前は──! |
??? | ……一体なんの騒ぎだ、タバティエール。 |
タバティエール | ……っ、マスター……。 |
テオドール | 当家の客人の部屋で怒鳴り合いか。 ……みっともない真似をするな。 |
タバティエール | ……悪かった。 だが、こいつの態度はあまりにも── |
テオドール | 言い訳は無用だ。 悪かったという言葉は、どうやら口先だけのようだな。 |
タバティエール | マスター……? |
テオドール | ──タバティエール。 お前に、1週間の謹慎を命じる。 |
タバティエール | は……謹慎!? 一体どういう風の吹き回しだ? あんたはそういう柄じゃ── |
テオドール | 口を慎め。 ……お前がしばらく部屋から出ないことは、 屋敷の者たちに伝えておく。 |
タバティエール | …………。 |
タバティエールはしばらく沈黙したのち、
やれやれといった様子で、小さく肩をすくめた。
タバティエール | 了解しましたよ、マスター。 俺は大人しく“謹慎”に励むとするさ。 |
---|---|
テオドール | それでいい。さっさと行け。 |
タバティエール | へいへい。 |
タバティエールが退室すると、
室内はしばらくの間、思い沈黙に包まれた。
テオドール | 当家の貴銃士が、失礼した。 ……お前も来い、シャスポー。 |
---|---|
マークス | おい、待てよ。 |
マークス | あんた、やけにタイミングよく来たな。 盗み聞きでもしてたのか? |
テオドール | 邪推はやめていただこう。 大事な客人とはいえ、過ぎた無礼は許されない。 |
マークス | 邪推だって言い切れるのかよ。 あんた、こそこそ動くのが得意みたいじゃねぇか。 |
テオドール | なんの話だ。 |
マークス | “召銃パーティー”について、話を聞いた。 |
テオドール&シャスポー | …………。 |
マークス | 古銃だけを集めたはずが、ロシニョル家の方に、 現代銃のグラースが混ざってたんだろ? |
マークス | パーティーの前の晩、あんたがロシニョル家から こっそり出てきたって噂を聞いたんだ。 ……グラース銃を混ぜたのは、あんたじゃないのか? |
テオドール | ふん……何を言うかと思えば、荒唐無稽な話だな。 私がなぜ、そんなことをしなければならない。 |
マークス | そんなこと、俺が知るか。 だが、レザールとロシニョルは 長いこといがみ合ってるんだろ。 |
テオドール | ……要するに、ただの憶測の域を出ないというわけか。 くだらんな。 |
テオドール | 行くぞ、シャスポー。 |
シャスポー | あ、ああ……。 |
マークス | 待て! 話はまだ終わってないぞ! |
マークスがテオドールの腕を掴み、引き留める。
その瞬間──
テオドール | ぐっ──! |
---|
苦悶の表情を浮かべた彼は、がくりと膝をついた。
マークス | うおっ……! マ、マスター…… 俺はそんなに強く引っ張ったわけじゃなくてだな……! |
---|---|
主人公 | 【テオドールさん!?】 【大丈夫ですか!?】 |
シャスポー | あれ……マスター、大丈夫? 誰か使用人を呼んできてあげようか? |
テオドール | ……ッ、いらん。少しめまいがしただけだ……。 |
テオドール | 行くぞ。 |
シャスポー | はいはい。 |
マークス | …………。 |
マークス | ……マスター。 今の、見えたか? |
主人公 | 【……見えた】 【薔薇の傷の蔦が、首元にまで……】 |
先ほど、テオドールが膝をついた時、
襟元の隙間から微かに覗いたのは──
薔薇の蔦のように伸びる、暗赤色の傷。
マークス | あいつの傷、なんであんなに悪化してるんだ? 仏頂面男の貴銃士は、シャスポーとタバティエールで、 どっちも古銃だろう。 |
---|---|
マークス | 2人とも絶対高貴にはなれないっつったって、 急速にあそこまで傷が悪化するのはおかしい……。 |
主人公 | 【そういえば、前にも似たようなことがあった】 【初日の夜のことは覚えてる?】 |
マークス | ああ。アウトレイジャー討伐に行ったあと、 レザール家に滞在することになったからって、 またこの屋敷に戻されて……。 |
マークス | あの時も、戻った俺たちを出迎えたあの男は、 急にふらついていた……。 |
マークス | ……っ! そういうことか……! |
マークス | ……マスター。 俺たちは、大きな思い違いをしていたみたいだ……。 |
主人公 | 【核心に近づけるかも!】 【真相を確かめないと!】 |
マークス | ああ! |
──翌日、ロシニョル家の庭園の片隅にて。
マークスは1人、標的が現れる瞬間を待ち、
茂みの陰に身を潜めていた。
??? | ~~♪ ~~~♪ |
---|---|
マークス | ……来たな。 やっぱり、“あいつ”みたいだ。 |
??? | ナイチンゲールは可愛い小鳥、 愛を呼ぶ小鳥……♪ |
マークス | ──おい。待っていたぞ、“グラース”。 |
グラース(?) | うわっ、びっくりした! こんなところで何をしてるんだい、君。 |
マークス | それはこっちのセリフだ。 とにかく、ついてきてもらうぞ。 |
グラース(?) | おい、いきなり何するんだよ。手を離せ! |
マークス | つべこべ言わず来い!! |
マークス | マスター、待たせてすまない。 グラースを連れてきたぞ。 |
---|---|
グラース(?) | えっ……! |
グラース(?) | チッ……。 |
グラース(?) | …………。 |
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