──トルレ・シャフのアジトにて。
トルレ・シャフ | ──恐れ多くも、申し上げます。 |
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トルレ・シャフ | 確保したこちらの2挺について、調査が完了しました。 まさに、かつての御身を支えた銃であると! |
トルレ・シャフ“杖” | 彼の者たちが従うは、偉大なるあなた様のみ──。 どうぞ、お手を触れてくださいませ。 |
??? | …………。 |
??? | ……っ。 |
??? | ……! |
??? | ああ、信じていたわ──! |
トルレ・シャフ“杖” | 我らが悲願の成就へ、また1歩近づいた……。 |
トルレ・シャフ“杖”たち | ──Great World Emperor……! |
マークス | そんな……おかしいぞ……。 どこにも見当たらない……。 |
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主人公 | 【どうした?】 【何か捜し物?】 |
マークス | マスター! いや……なんでもないんだ。 |
ライク・ツー | 〇〇、放っとけ。 こいつの様子がおかしいのはいつものことだろ。 |
マークス | なんだと? マスターは優しいんだぞ。 様子がおかしいときにマスターが放っておくわけないだろう! |
ライク・ツー | 加えて、頭のネジが外れてるのもいつものこと。 |
十手 | ま、まあまあ! 2人とも、外をごら~ん。雲ひとつない晴れ渡った── |
ラッセル | 〇〇君! |
十手 | ──空と、ラッセル教官! |
主人公 | 【任務でしょうか?】 【何かありましたか?】 |
ラッセル | いや、まだなんとも言えない。 |
ライク・ツー | なんだよ、はっきりしねぇな。 |
ラッセル | 〇〇君宛に手紙が届いていてね。 相手が相手だから、私も一応内容を確認しておきたいんだ。 |
マークス | 変なヤツからの手紙か? ……たぶん、ろくなことにならないぞ、マスター。 |
ライク・ツー | ったく……今度はどこのどいつからだ。 |
ラッセルから手紙を受け取った〇〇は、
記されている差出人の名前を読み上げる。
主人公 | 【……シャルロット・サリバン?】 |
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マークス | マスターの知り合いか? |
主人公 | 【聞いたことがない名前だと思う】 【知らない人だと思う】 |
ラッセル | まだ国際的な表舞台には出てきていないから、 君が知らないのも無理もないか。 シャルロット・サリバン──彼女は、ベルギーの首相令嬢だ。 |
十手 | ほほう、国を代表するような偉い御仁の娘さんということか。 それがまた、どうして急に……? |
ライク・ツー | どうせまた招待状か何かだろ。 とりあえず開けてみろよ。 |
〇〇が封筒を開くと、
洗練された筆致で綴られた手紙と、1枚の写真が出てきた。
『〇〇さん、
突然のお手紙で驚かれていることでしょう。
どうぞご無礼をお許しください』
『多くの貴銃士のマスターとして活躍し、
また、フィルクレヴァート士官学校でも優秀な成績を収める
士官候補生であるあなたの噂は、ベルギーまで聞こえてきます』
『私も〇〇さんに少しでも近づけるよう、
貴銃士カトラリーのマスターとして励んではいるのですが、
まだまだ至らないことばかりだと日々痛感しております』
『そこで、〇〇さんと古銃の貴銃士を
ベルギーにお招きしたく、お手紙を差し上げました』
『きっとご多忙でしょう〇〇さんや貴銃士の皆さんに
このようなお願いをするのは大変心苦しいのですが……。
家庭教師として、私たちの国においでいただけないでしょうか?』
『その際には、当家にて手厚いおもてなしをさせてください。
ベルギーの美しい風景や文化を楽しんでいただけたら、
とても嬉しく存じます。ぜひ、ご検討ください』
『やや余談となりますが……私は、世界帝府支配下や
革命戦争の中で、痛ましくも孤児となった子供たちを育む
福祉施設への支援活動をしております』
『子供たちは皆、貴銃士が大好きです。
ベルギーゆかりの貴銃士が放つ高貴さが、
未来を担う子供たちの希望になることを祈って──』
『シャルロット・サリバン』
十手 | へぇ! 〇〇君を招いて勉強したい、か。 向上心のあるいいお嬢さんだなぁ。感心するよ。 |
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ライク・ツー | で、写真のこいつが、そのシャルロット嬢ってわけか。 |
写真には、たくさんの子供達に囲まれて、
穏やかな笑みを浮かべている女性が写っている。
ラッセル | ああ。そうだ。 様々な慈善活動に熱心に参加していることで知られている。 この福祉施設も、彼女の肝入りで運営されているようだ。 |
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主人公 | 【力になりたいです】 【ぜひ、行かせてください!】 |
ラッセル | そうだな。 貴銃士のマスターとしての活動ということで、問題ないだろう。 |
マークス | なぁ、1つ聞きたいことがある。 カトラリーって……そいつは本当に貴銃士なのか? 俺が知ってるヤツが、貴銃士になるとは思えねぇ。 |
マークス | カトラリーって……そいつは本当に貴銃士なのか? 俺が知ってるヤツが、貴銃士になるとは思えねぇ。 |
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ライク・ツー | は……? お前が知ってるヤツって? |
マークス | この間、マナーの授業の時に聞いたぞ。 ナイフ、フォーク、スプーンとかのことをまとめて、 “カトラリー”と言うんだとな。 |
マークス | ああいうのは食器で、どう考えても銃じゃない。 なのに貴銃士になるなんて、おかしいんじゃないか? |
十手 | マ、マークス君……? それを言うなら、俺だって似たようなもんだが……。 |
マークス | あんたは筒みたいな形だし、十手ってのは元々武器の一種だろ。 だから、銃にできるのもわからなくはない。 |
十手 | そ、そうかな……? へへ……。 |
ライク・ツー | いや、何に照れてるんだよ。 |
マークス | だが、カトラリーは平べったいし、 銃身やトリガーにできそうなところもなさそうだ。 あんなもんを、十手みたいに銃にできるのか? |
ラッセル | 私も、類似の実物すら見たことはないんだが……。 |
ラッセル | カトラリー……つまり、マークスの言う通り食器だね。 それに銃の機構を組み込んで作られた銃の貴銃士は、 革命戦争時代にも実在していたんだよ。 |
ラッセル | ちょうどいい機会だから、 ベルギーの貴銃士について教えておこう。 |
ラッセル | ベルギーには、カトラリーを含め3人の貴銃士がいる。 カトラリーは古銃で、 残る2人が現代銃…… KB FALLと、KB MNMだ。 |
ラッセル | それぞれ、ファルとミカエルを名乗っていると聞いているよ。 |
ライク・ツー | ……ファルにミカエルにカトラリーねぇ。 革命戦争時代の再現みてぇな面子だな。 |
ラッセル | はは……しかし、当然3挺とも、革命戦争時代の レジスタンス、世界帝軍にいた貴銃士とは無関係な個体だ。 |
ラッセル | 古銃の貴銃士たちの多くは、 銃に戻ったのち、 元レジスタンスのマスターが 密かに所有していると噂されているし……。 |
ラッセル | 各国に返還された世界帝軍の銃については…… 例外はあるとはいえ、基本的に召銃などされるはずがないのは 言うまでもないだろう。 |
ライク・ツー | そうだな。 |
十手 | それで、今ベルギーにいるカトラリー君というのは、 どういう貴銃士なんだい? |
ラッセル | 北海の海賊ゆかりの品だそうでね。 カリブの海賊の愛用品だった革命戦争のカトラリーと 来歴は異なるが、見た目はよく似ていると聞いたことがあるよ。 |
マークス | カイゾク……? |
ライク・ツー | 知らねぇの? 船に乗って、 商船とかから金品やらを強奪する荒くれ者の賊。 |
マークス | 何……!? おい、そんな物騒なところにマスターが行くのはダメだ! |
ラッセル | 落ち着いてくれ、 マークス。 北海やバルト海で海賊が席巻していたのは14世紀頃までの話だ。 今では問題ないんだよ。 |
十手 | しかし、家庭教師というのはなんのことかなぁ? 貴銃士の教育と言えば、 恭遠教官だけど。 |
ラッセル | それは……。 カトラリーが絶対高貴に目覚めたという話は耳にしないし、 手紙の内容からして、その相談かもしれない。 |
十手 | なるほどなぁ! それなら、同じ奇銃として、 何か助けになれるかもしれない。 絶対高貴になるのには、 俺も苦労したしね。 |
十手 | 〇〇君。 その……今回の件、俺が一緒に行っても構わないかな? |
主人公 | 【もちろん!】 【一緒に来てくれると助かる】 |
十手 | ありがとう、誠心誠意やらせてもらうよ! |
マークス | マスター、もちろん俺も一緒に行くぞ! |
ラッセル | ……マークス。 そういえば、恭遠審議官から忘れ物を預かっていたんだった。 ほら、これは君のだろう? |
マークス | あっ! |
マークスは、ラッセルから渡された何かを、
すぐさまポケットの中に入れてしまう。
ライク・ツー | ……なんだ? 今の。 |
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ラッセル | 鼻クリップだ。 マークスは水泳の補習に手こずっているようだね。 息継ぎが上手くいかないとか。 |
ラッセル | そこで、恭遠審議官がマークスのために 鼻クリップを用意したと話されていたよ。 どうだい? それのおかげで、補習はもう合格できたのかな。 |
マークス | そ、それは……。 |
主人公 | 【マークス、教えてほしい】 【正直に答えよう】 |
マークス | マスター……! う……それは、その……。 |
マークス | ……まだ、合格していない。 |
ラッセル | 残念だが……マークスのベルギー行きは見送りだな。 |
マークス | そんな……! い、今から泳げるようになってくる!! 待っててくれ、マスター!! |
ライク・ツー | ……いや、ぜってぇ無理だろ。 |
ラッセル | では、ベルギーには〇〇君と十手で 行ってもらうことになるだろうか……。 |
ライク・ツー | …………。 |
ライク・ツー | 十手のおっさんだけじゃ何かあったときに心配だし、俺も行く。 ファルとミカエル……ベルギーにいる現代銃が、 その2挺ってのもちょっと引っ掛かるしな。 |
十手 | む……? 何が気になるんだい? |
ライク・ツー | ベルギーで作られた銃はいろいろあんのに、 よりによって、2挺とも世界帝軍にいた銃と同種だぞ。 |
ライク・ツー | おまけに、ファルの方はまあ、銃の名前通りだからわかるけど…… KB MNMも、世界帝軍にいた奴と同じミカエルを名乗ってる。 何か狙いがあるようにしか思えない。 |
ラッセル | わぁ……私もあまり詳しくは知らないんだが、 彼らを呼び覚ましたのは、 マチルダ・ジャンセンという人物だと聞いているよ。 |
ラッセル | なぜこの2挺なのか……いろいろな銃を試して、 召銃に応じたのがたまたまそうだった、という線もあるな。 |
ラッセル | だが、名前のことを考えると……ライク・ツー。 君と同じ思惑を、ベルギー政府が持っているのかもしれない。 |
十手 | ライク・ツー君の思惑って言うと……例のアレかい? 世界帝軍にいた同じ種類の銃と同じ名を名乗ることで、 トルレ・シャフをおびき寄せて退治してやるっていう……。 |
十手 | そうすると、ベルギーはトルレ・シャフの殲滅に えらく力を入れているんだね。 |
十手 | ……もしや、革命戦争中に、何か酷い出来事があったとか? |
ラッセル | ああ……ベルギーでもやはり、他の多くの国と同じように、 武力を背景にした統治で、つらい思いをした人も多いだろう。 だが、単なる被害国とは言いづらい面もあってね。 |
ラッセル | ……ベルギーは、世界帝府の統治下で武器製造を担っていたんだ。 元々、優れた銃を生産する会社があったことも災いしてね。 数多くの武器を生産し、世界帝軍に納めることになった。 |
十手 | なるほどなぁ……。やむを得なかったとしても、 その武器で多くの人が亡くなったとなると、 戦後の世界では複雑な感情を抱く人も多いというわけか……。 |
ラッセル | ああ。加えて、ベルギーは比較的歴史が浅い新しい国だから、 国際政治的な基盤も弱い。 それらが重なって、今の国際社会では微妙な立場にあるんだ。 |
ラッセル | 国際的な名誉や信頼の回復を狙っているのか、 要請があれば国外のアウトレイジャー討伐に KB FALLを積極的に派遣していると聞いているよ。 |
ライク・ツー | ……ふぅん。 |
主人公 | 【アウトレイジャー討伐でも協力できるかも】 →十手「そうだね。マチルダさんと言ったかな。 現代銃の貴銃士だけで戦っているなら、傷もつらいだろう。 俺たちもぜひ力になりたいもんだ。」 【何か気になることが?】 → |
ラッセル | 滞在中、〇〇君にもアウトレイジャー討伐の 協力要請があるかもしれない。 |
ラッセル | その場合は、世界連合軍ベルギー支部や士官学校と相談の上、 なるべく協力をしてほしい。 |
主人公 | 【イエッサー!】 |
ラッセル | では、さっそく出発の準備に取りかかってくれ! |
〇〇、十手、ライク・ツーは、
公休を取得し、ベルギーにやってきた。
十手 | おお……! 立派なお屋敷だなぁ。 |
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ライク・ツー | ハッ、いかにも金持ちって感じだ── |
ライク・ツー | うおっ!? あのクリスタルベースって、 ミラノのデザイナーズブランドの限定ひ── |
ライク・ツー | ──んん、ゴホン。 ……派手で成金趣味だな。 |
シャルロット | あら? その凛とした佇まい──お若いのににじみ出る貫禄! 噂の士官候補生さんではなくって? |
主人公 | 【〇〇といいます】 【はじめまして!】 |
シャルロット | まぁ、やっぱり! お待ちしておりましたのよ、〇〇さん! |
シャルロット | 無理なお願いを聞いてくださり、本当に感謝しております。 それに、まさか貴銃士をお2人も連れてきてくださるなんて…… ああ、感激ですわ! |
シャルロット | 改めて、シャルロット・サリバンです。 こちらがわたくしの貴銃士、カトラリーですわ。 よろしくね♪ |
カトラリー | こんにちは。 お話を聞いて、すごい貴銃士たちなんだなって尊敬してたから、 皆さんに会えて嬉しいな……! |
ライク・ツー | 俺はUL85A2の貴銃士、ライク・ツー。 アサルトライフルだ。 |
十手 | 俺は指し火式の十手鉄砲だ。十手と呼んでくれ。 奇銃同士、ぜひ仲良くしてほしいな! |
カトラリー | 〇〇さん、ライク・ツーさんに、十手さん…… よろしくお願いします! |
カトラリー | 僕はカトラリー。 この通り、食器型の仕込み銃でね。 |
カトラリー | ベルギーの北の海、北海の海賊が使っていた銃で、 彫刻が施された銀食器に見えるけど……ほら! フリントロック式のれっきとした銃なんだよ。 |
十手 | おお……! なんとも精巧で綺麗で、興味深いからくりだなぁ。 |
シャルロット | ふふっ、十手さんもそう思われますこと? 革命戦争で活躍したというカトラリーではありませんが、 ベルギーゆかりの自慢の貴銃士なんですの。 |
シャルロット | それから、こちらは執事のコーバスです。 滞在中、お困りのことやご要望などがありましたら、 なんでも彼に言いつけてくださいね。 |
シャルロット | コーバス、皆様のお荷物をお願い。 それから、とびきりのお茶もご用意して♪ |
コーバス | かしこまりました、お嬢様。 |
シャルロット | 到着早々で申し訳ないのですけれど…… 皆さん、少しついて来てくださるかしら。 応接室に記者団が待っていますの。 |
ライク・ツー | ……記者団? |
応接室に入ると、一斉にカメラのフラッシュが焚かれた。
〇〇や貴銃士たちは驚き、固まってしまう。
カメラマン | 〇〇さん! シャルロットさんと握手をお願いします! |
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主人公 | 【はい……?】 |
〇〇が戸惑いつつ手を出すと、
その手をシャルロットがしっかり握った。
握手の場面を捉えようと、再び一斉にフラッシュが焚かれる。
シャルロット | ふふっ、不思議ですわね。〇〇さんとは、 ずっと前からお友達だったような気がしてしまいますわ! とても親切で優秀なイギリスからのお客様ですの! |
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記者1 | シャルロットさん、こちらに視線をください! |
記者2 | 貴銃士のみなさんも、一緒にお願いします! |
十手 | こ、こうかい? いやぁ、緊張するなぁ。 |
ライク・ツー | ……はぁーあ。 |
ライク・ツー | (……そーいうことな) |
十手 | ふぅ! 驚いたよ。 シャルロット殿は一挙手一投足が注目されているみたいだね。 |
シャルロット | 恐縮ですが、有難くも思いますわ。 わたくしの成すこと、行く先々にも注目が集まれば、 支援が必要な子供たちにもおのずと光が当たりますもの。 |
十手 | ああ、写真の子供たちのことだね。 皆、いい笑顔で写っていて……施設での暮らし向きが窺えたよ。 |
十手 | 身寄りをなくしてしまったことは、悲劇としか言えないが…… シャルロット殿のように手を差し伸べてくれる人がいるのは、 きっと大きな救いになっているだろうね……! |
シャルロット | そうだといいのですが……。 わたくし1人だけでは手の届かないところも多く、 歯がゆさを感じることだらけですわ。 |
シャルロット | 世界帝の支配や革命戦争の爪痕は、まだまだ残っております。 家族を亡くした子供たちにも、そしてこのベルギーにも……。 |
シャルロット | ……ですから、少しでも状況を変えたいのです。 もちろん、わたくしにできることは限られていますが、 かといって何もしなければ、それこそ何も変わりませんものね。 |
十手 | うんうん、その通りだ! あっぱれなご令嬢だなぁ……! |
ライク・ツー | ……はぁ、いつまでやってんだよ。 |
シャルロット | メディアの皆さん、 本日は取材にお越しくださりありがとうございます。 |
シャルロット | 皆様はイギリスから到着されたばかりで、 きっとお疲れだと思いますの。 今日のところは、ここまででお願いできるかしら。 |
記者1 | はっ……それもそうですね。 わかりました。 |
カメラマン | それでは皆さん、よいご滞在を! 視察などに行かれる際は、また取材させてください。 |
記者たちが退室し終えると、
ライク・ツーはシャルロットの方へ一歩詰め寄る。
ライク・ツー | ……おい。 |
---|---|
十手 | ラ、ライク・ツー君……? |
ライク・ツー | 俺たちとの仲良し写真を何に使う気か知らねぇが、 ベルギーやお前らの事情なんて、 こっちは知ったこっちゃねぇんだよ。 |
ライク・ツー | 俺たちはあくまで、そいつの家庭教師に来たんだ。 お家争いだか、権力争いだか、なんだか知らねぇが…… 〇〇を余計な厄介ごとに巻き込むな。 |
シャルロット | えっと……あの……。 |
主人公 | 【ライク・ツー……!】 【シャルロットさん、すみません!】 |
ライク・ツー | おい、〇〇。お前もわかってんのか? さっきの撮影会、こいつがイメージアップか何かのために 記者どもをわざわざ集めてたんだぞ。そうだろ? |
シャルロット | ……! |
十手 | ええっ……? |
ライク・ツー | 俺たちをお前の都合に利用するんじゃねぇよ。 |
シャルロット | ……ご、ごめんなさい……。 ライク・ツーさんの、おっしゃる通りで……。 |
シャルロットは言葉に詰まり唇を噛み締めていたが、
その目に涙が溜まっていく。
そしてついには堪えきれずに、大粒の涙がこぼれ落ちた。
シャルロット | あ……嫌だ、わたくしったら……。 ごめんなさい、ライク・ツーさんのおっしゃることはもっともて、 何も非はありませんわ……。 |
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十手 | シャ、シャルロット殿……? |
シャルロットは涙を少し乱雑にぬぐうと、
〇〇たちを真っ直ぐに見つめた。
シャルロット | 首相としての父を見ていて、痛感するんです……。 ベルギーは、世界連合の中でちっとも信用されておりませんし、 周辺の国々との関係もぎくしゃくしたままで……。 |
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シャルロット | 世界帝府圧政下でベルギーが果たした役割を、 正当化することはできません。 ですが、そうせざるを得なかった面も確かにあって……。 |
シャルロット | 今でも残る“世界帝府の武器工場”のイメージを払拭したくても、 一筋縄ではいきませんし、できる限りの手を打ちたかったのです。 |
シャルロット | ……ごめんなさい。 これも、言い訳になってしまっていますわね。 |
ライク・ツー | …………。 ……まあ、なりふり構ってられなかったってのは、わかった。 |
シャルロット | 皆さんにはご迷惑をおかけしてしまいましたわ……。 この際ですから……正直に言います。 |
シャルロット | 皆さんをお呼びしたのは、革命戦争の英雄を思わせる 絶対高責の力を持つ責銃士がベルギーにいれば、 状況が少しは変わるかと期待してのことでしたの。 |
カトラリー | その……僕、なかなか絶対高責になれなくて。 いろいろと頑張ってはみてるんだけど……。 |
十手 | カトラリー君……気持ちはよーくわかるよ。 絶対高責って言っても、雲をつかむような話に思えるし、 何をどうしたら目覚められるのかもそれぞれ違うからさっばりだ。 |
十手 | だが……きっと大丈夫さ。 焦りは禁物、君の絶対高責を、これから俺と探してみよう! |
カトラリー | …………。 |
カトラリー | 十手さん……! 心強いよ。 本当に……親切に、どうもありがとう。 |
十手 | さてと。シャルロット殿に悪気はなかったし、 ライク・ツー君は〇〇君を守ろうと、 少し警戒していたってことで……仲直りでいいかな? |
ライク・ツー | 別に、直すような仲もねぇけど。 そっちの事情はわかった。 面倒事に巻き込まれなけりや、俺はどうでもいい。 |
シャルロット | ありがとうございます。 わたくしとしたことが、お恥ずかしいところをお見せしたばかりか お客様に失礼をしてしまいましたわ。本当にごめんなさい …… 。 |
主人公 | 【気にしないでください】 【こちらこそすみません】 |
シャルロット | まあ……〇〇さんはお優しい方ですのね。 |
シャルロット | さ、この話はおしまい! 皆さんを貴銃士たちの屋敷へ案内いたしますね。 |
十手 | 貴銃士たちの屋敷……!? |
シャルロット | ふふっ、そう遠くはありませんから、すぐに着きますわ。 街の眺めを楽しみつつ……さあ、参りましょう。 |
シャルロットの屋敷を出ると、
豪奢な馬車が〇〇たちを待っていた。
シャルロット | 皆さん、こちらへどうぞ! |
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ライク・ツー | 今どき馬車って……車でいいだろ。 |
十手 | まあまあ、風情があっていいじゃないか。 |
シャルロット | 車だとあっという間についてしまいますから、 馬車を用意してみましたの。 ……あら、街の皆さんが手を振ってくださっているわ。 |
---|
シャルロットは、民衆へにこやかに手を振り返す。
カトラリーも同じように、笑顔で手を振った。
ライク・ツー | …………。 |
---|---|
シャルロット | そういえば……ライク・ツーさん。 お顔をよく見せてくださるかしら? |
ライク・ツー | んだよ。 |
シャルロット | まあ、やっぱり! あなたの瞳の色……左右で色合いが違いますのね。 宝石みたいですこと♪ とっても素敵ですわ♪ |
ライク・ツー | (……こいつ、なんか苦手だ……) |
十手 | ところで、ベルギーにいる他の貴銃士は、 今から行く屋敷に住んでいるのかい? |
カトラリー | そうだよ。 ミカエル、ファル、それから僕で一緒に過ごしてるんだ。 |
シャルロット | ファルとミカエルは現代銃の貴銃士で、 マスターはわたくしではありませんの。 |
シャルロット | ですが、同じベルギーの貴銃士として、 普段からお互いに親交を深めてもらっていますわ。 |
シャルロット | ただ……ファルさんは彼のマスターとともに任務で忙しくて、 屋敷にいないことも多いのですが。 |
ほどなくして、馬車は貴銃士が住まうという屋敷に到着した。
華やかなサリバン家の邸宅とは打って変わって、
どことなく暗い雰囲気が漂っている。
シャルロット | 中をご案内いたしますわね。 そこまで大きな屋敷ではありませんから、すぐに済みますわ。 |
---|---|
十手 | 家庭教師──と自分で言うのはもぞ痒い感じがするが…… カトラリー君の絶対高貴の糸口探しは、 この屋敷に来てすればいいのかな。 |
シャルロット | 皆さんの滞在は当家ですから、 カトラリーに来てもらう方がいいでしょうか。 |
シャルロット | ただ、父の関係で当家は出入りが多いので、 集中できる場所をご用意しておきますね。 |
十手 | うーん、それはなんだか悪いなぁ。 そんなに遠くないし、落ち着く場所の方がいいだろうし、 俺がこちらの屋敷に来て構わないならそうするよ。 |
シャルロット | ……わかりました。 コーバスに、送迎の車の手配を頼んでおきますわ。 |
主人公 | 【ありがとうございます】 【助かります】 |
ライク・ツー | ……ん? |
十手 | む? どうしたんだい、ライク・ツー君。 |
ライク・ツー | いや……微かにだけど、曲が聞こえるなと思って。 |
十手 | おお……? 本当だ。確かに何か聞こえてくるね。 |
カトラリー | ふふっ、天使が旋律を奏でてるんだ。 |
シャルロット | …………。 またレクイエムね……わたくし、明るい曲の方が好きだわ。 |
カトラリー | この曲を弾いてるのはね── |
ライク・ツー | ん……? なんだ? |
物音が聞こえた廊下の曲がり角の方に
〇〇たちが視線を向けていると、
男女2人が歩いてくる。
??? | ……あなたたちが、イギリスからの客人か。 |
---|
女性はメイクで隠しきれないほど顔色が青白く、
着衣は土埃などで汚れている。
そして、薔薇の傷も首までツタを伸ばしていた。
シャルロット | マチルダ、あなた、その格好は……。 |
---|---|
ファル | 失礼。任務から帰ったばかりなもので。 |
主人公 | 【大丈夫ですか……!?】 【薔薇の傷が酷い……!】 |
マチルダ | 問題ない。 私からも挨拶を──っ、ぐっ……! |
マチルダがよろめいたかと思うと、倒れそうになり、
なんとか踏みとどまって床に膝をつく。
十手 | だ、大丈夫かい!? |
---|---|
シャルロット | お客様の前なのに……ねぇ、誰か。 彼女をどこかに連れて行ってくださらない? あいているソファかベッドがあるでしょう。 |
ライク・ツー | おい、適当に寝かせたところでどうにもならねぇだろ。 |
マチルダ | ……私は、まだ大丈夫だ……。 |
十手 | いやいや! 動いちゃだめだ。 そのままじっとしていてくれ。 薔薇の傷なら、俺が助けになれるはずだ。 |
主人公 | 【十手、お願い】 【傷の治療を頼めるかな】 |
十手 | ああ、もちろんだ。 マチルダ殿、ちょいと失礼するよ。 |
十手 | ──絶対高貴! |
カトラリー | ……っ! これが……! |
マチルダ | ……傷が……! |
絶対高貴の光がマチルダに降り注ぎ、
ツタを伸ばしていた薔薇の傷が、一輪の花の形へと戻っていく。
十手 | よぉし、これで大丈夫だな! 痛みやつらさはないかい? |
---|---|
マチルダ | ああ……治療していただき感謝する。 これが、絶対高貴の力なのだな。 |
カトラリー | …………。 |
主人公 | 【どうかしましたか?】 【大丈夫ですか?】 |
カトラリー | ……っ、な、なんでもない! 絶対高貴って初めて見るから……驚いちゃっただけ。 |
カトラリーは微笑むが──
爪が食い込むほどに握り締められた拳が、微かに震えていた。
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