ベルギー編:第1話~第5話

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第1話:ベルギーからの手紙

──トルレ・シャフのアジトにて。

トルレ・シャフ──恐れ多くも、申し上げます。
トルレ・シャフ確保したこちらの2挺について、調査が完了しました。
まさに、かつての御身を支えた銃であると!
トルレ・シャフ“杖”彼の者たちが従うは、偉大なるあなた様のみ──。
どうぞ、お手を触れてくださいませ。
???…………。
???……っ。
???……!
???ああ、信じていたわ──!
トルレ・シャフ“杖”我らが悲願の成就へ、また1歩近づいた……。
トルレ・シャフ“杖”たち──Great World Emperor……!

マークスそんな……おかしいぞ……。
どこにも見当たらない……。
主人公【どうした?】
【何か捜し物?】
マークスマスター!
いや……なんでもないんだ。
ライク・ツー〇〇、放っとけ。
こいつの様子がおかしいのはいつものことだろ。
マークスなんだと?
マスターは優しいんだぞ。
様子がおかしいときにマスターが放っておくわけないだろう!
ライク・ツー加えて、頭のネジが外れてるのもいつものこと。
十手ま、まあまあ!
2人とも、外をごら~ん。雲ひとつない晴れ渡った──
ラッセル〇〇君!
十手──空と、ラッセル教官!
主人公【任務でしょうか?】
【何かありましたか?】
ラッセルいや、まだなんとも言えない。
ライク・ツーなんだよ、はっきりしねぇな。
ラッセル〇〇君宛に手紙が届いていてね。
相手が相手だから、私も一応内容を確認しておきたいんだ。
マークス変なヤツからの手紙か?
……たぶん、ろくなことにならないぞ、マスター。
ライク・ツーったく……今度はどこのどいつからだ。

ラッセルから手紙を受け取った〇〇は、
記されている差出人の名前を読み上げる。

主人公【……シャルロット・サリバン?】
マークスマスターの知り合いか?
主人公【聞いたことがない名前だと思う】
【知らない人だと思う】
ラッセルまだ国際的な表舞台には出てきていないから、
君が知らないのも無理もないか。
シャルロット・サリバン──彼女は、ベルギーの首相令嬢だ。
十手ほほう、国を代表するような偉い御仁の娘さんということか。
それがまた、どうして急に……?
ライク・ツーどうせまた招待状か何かだろ。
とりあえず開けてみろよ。

〇〇が封筒を開くと、
洗練された筆致で綴られた手紙と、1枚の写真が出てきた。

『〇〇さん、
突然のお手紙で驚かれていることでしょう。
どうぞご無礼をお許しください』

『多くの貴銃士のマスターとして活躍し、
また、フィルクレヴァート士官学校でも優秀な成績を収める
士官候補生であるあなたの噂は、ベルギーまで聞こえてきます』

『私も〇〇さんに少しでも近づけるよう、
貴銃士カトラリーのマスターとして励んではいるのですが、
まだまだ至らないことばかりだと日々痛感しております』

『そこで、〇〇さんと古銃の貴銃士を
ベルギーにお招きしたく、お手紙を差し上げました』

『きっとご多忙でしょう〇〇さんや貴銃士の皆さんに
このようなお願いをするのは大変心苦しいのですが……。
家庭教師として、私たちの国においでいただけないでしょうか?』

『その際には、当家にて手厚いおもてなしをさせてください。
ベルギーの美しい風景や文化を楽しんでいただけたら、
とても嬉しく存じます。ぜひ、ご検討ください』

『やや余談となりますが……私は、世界帝府支配下や
革命戦争の中で、痛ましくも孤児となった子供たちを育む
福祉施設への支援活動をしております』

『子供たちは皆、貴銃士が大好きです。
ベルギーゆかりの貴銃士が放つ高貴さが、
未来を担う子供たちの希望になることを祈って──』

『シャルロット・サリバン』

十手へぇ! 〇〇君を招いて勉強したい、か。
向上心のあるいいお嬢さんだなぁ。感心するよ。
ライク・ツーで、写真のこいつが、そのシャルロット嬢ってわけか。

写真には、たくさんの子供達に囲まれて、
穏やかな笑みを浮かべている女性が写っている。

ラッセルああ。そうだ。
様々な慈善活動に熱心に参加していることで知られている。
この福祉施設も、彼女の肝入りで運営されているようだ。
主人公【力になりたいです】
【ぜひ、行かせてください!】
ラッセルそうだな。
貴銃士のマスターとしての活動ということで、問題ないだろう。
マークスなぁ、1つ聞きたいことがある。
カトラリーって……そいつは本当に貴銃士なのか?
俺が知ってるヤツが、貴銃士になるとは思えねぇ。

第2話:家庭教師の適任は?

マークスカトラリーって……そいつは本当に貴銃士なのか?
俺が知ってるヤツが、貴銃士になるとは思えねぇ。
ライク・ツーは……? お前が知ってるヤツって?
マークスこの間、マナーの授業の時に聞いたぞ。
ナイフ、フォーク、スプーンとかのことをまとめて、
“カトラリー”と言うんだとな。
マークスああいうのは食器で、どう考えても銃じゃない。
なのに貴銃士になるなんて、おかしいんじゃないか?
十手マ、マークス君……?
それを言うなら、俺だって似たようなもんだが……。
マークスあんたは筒みたいな形だし、十手ってのは元々武器の一種だろ。
だから、銃にできるのもわからなくはない。
十手そ、そうかな……? へへ……。
ライク・ツーいや、何に照れてるんだよ。
マークスだが、カトラリーは平べったいし、
銃身やトリガーにできそうなところもなさそうだ。
あんなもんを、十手みたいに銃にできるのか?
ラッセル私も、類似の実物すら見たことはないんだが……。
ラッセルカトラリー……つまり、マークスの言う通り食器だね。
それに銃の機構を組み込んで作られた銃の貴銃士は、
革命戦争時代にも実在していたんだよ。
ラッセルちょうどいい機会だから、
ベルギーの貴銃士について教えておこう。
ラッセルベルギーには、カトラリーを含め3人の貴銃士がいる。
カトラリーは古銃で、 残る2人が現代銃……
KB FALLと、KB MNMだ。
ラッセルそれぞれ、ファルとミカエルを名乗っていると聞いているよ。
ライク・ツー……ファルにミカエルにカトラリーねぇ。
革命戦争時代の再現みてぇな面子だな。
ラッセルはは……しかし、当然3挺とも、革命戦争時代の
レジスタンス、世界帝軍にいた貴銃士とは無関係な個体だ。
ラッセル古銃の貴銃士たちの多くは、 銃に戻ったのち、
元レジスタンスのマスターが
密かに所有していると噂されているし……。
ラッセル各国に返還された世界帝軍の銃については……
例外はあるとはいえ、基本的に召銃などされるはずがないのは
言うまでもないだろう。
ライク・ツーそうだな。
十手それで、今ベルギーにいるカトラリー君というのは、
どういう貴銃士なんだい?
ラッセル北海の海賊ゆかりの品だそうでね。
カリブの海賊の愛用品だった革命戦争のカトラリーと
来歴は異なるが、見た目はよく似ていると聞いたことがあるよ。
マークスカイゾク……?
ライク・ツー知らねぇの?
船に乗って、 商船とかから金品やらを強奪する荒くれ者の賊。
マークス何……!?
おい、そんな物騒なところにマスターが行くのはダメだ!
ラッセル落ち着いてくれ、 マークス。
北海やバルト海で海賊が席巻していたのは14世紀頃までの話だ。
今では問題ないんだよ。
十手しかし、家庭教師というのはなんのことかなぁ?
貴銃士の教育と言えば、 恭遠教官だけど。
ラッセルそれは……。
カトラリーが絶対高貴に目覚めたという話は耳にしないし、
手紙の内容からして、その相談かもしれない。
十手なるほどなぁ!
それなら、同じ奇銃として、 何か助けになれるかもしれない。
絶対高貴になるのには、 俺も苦労したしね。
十手〇〇君。
その……今回の件、俺が一緒に行っても構わないかな?
主人公【もちろん!】
【一緒に来てくれると助かる】
十手ありがとう、誠心誠意やらせてもらうよ!
マークスマスター、もちろん俺も一緒に行くぞ!
ラッセル……マークス。
そういえば、恭遠審議官から忘れ物を預かっていたんだった。
ほら、これは君のだろう?
マークスあっ!

マークスは、ラッセルから渡された何かを、
すぐさまポケットの中に入れてしまう。

ライク・ツー……なんだ? 今の。
ラッセル鼻クリップだ。
マークスは水泳の補習に手こずっているようだね。
息継ぎが上手くいかないとか。
ラッセルそこで、恭遠審議官がマークスのために
鼻クリップを用意したと話されていたよ。
どうだい? それのおかげで、補習はもう合格できたのかな。
マークスそ、それは……。
主人公【マークス、教えてほしい】
【正直に答えよう】
マークスマスター……!
う……それは、その……。
マークス……まだ、合格していない。
ラッセル残念だが……マークスのベルギー行きは見送りだな。
マークスそんな……!
い、今から泳げるようになってくる!!
待っててくれ、マスター!!
ライク・ツー……いや、ぜってぇ無理だろ。
ラッセルでは、ベルギーには〇〇君と十手で
行ってもらうことになるだろうか……。
ライク・ツー…………。
ライク・ツー十手のおっさんだけじゃ何かあったときに心配だし、俺も行く。
ファルとミカエル……ベルギーにいる現代銃が、
その2挺ってのもちょっと引っ掛かるしな。
十手む……? 何が気になるんだい?
ライク・ツーベルギーで作られた銃はいろいろあんのに、
よりによって、2挺とも世界帝軍にいた銃と同種だぞ。
ライク・ツーおまけに、ファルの方はまあ、銃の名前通りだからわかるけど……
KB MNMも、世界帝軍にいた奴と同じミカエルを名乗ってる。
何か狙いがあるようにしか思えない。
ラッセルわぁ……私もあまり詳しくは知らないんだが、
彼らを呼び覚ましたのは、
マチルダ・ジャンセンという人物だと聞いているよ。
ラッセルなぜこの2挺なのか……いろいろな銃を試して、
召銃に応じたのがたまたまそうだった、という線もあるな。
ラッセルだが、名前のことを考えると……ライク・ツー。
君と同じ思惑を、ベルギー政府が持っているのかもしれない。
十手ライク・ツー君の思惑って言うと……例のアレかい?
世界帝軍にいた同じ種類の銃と同じ名を名乗ることで、
トルレ・シャフをおびき寄せて退治してやるっていう……。
十手そうすると、ベルギーはトルレ・シャフの殲滅に
えらく力を入れているんだね。
十手……もしや、革命戦争中に、何か酷い出来事があったとか?
ラッセルああ……ベルギーでもやはり、他の多くの国と同じように、
武力を背景にした統治で、つらい思いをした人も多いだろう。
だが、単なる被害国とは言いづらい面もあってね。
ラッセル……ベルギーは、世界帝府の統治下で武器製造を担っていたんだ。
元々、優れた銃を生産する会社があったことも災いしてね。
数多くの武器を生産し、世界帝軍に納めることになった。
十手なるほどなぁ……。やむを得なかったとしても、
その武器で多くの人が亡くなったとなると、
戦後の世界では複雑な感情を抱く人も多いというわけか……。
ラッセルああ。加えて、ベルギーは比較的歴史が浅い新しい国だから、
国際政治的な基盤も弱い。
それらが重なって、今の国際社会では微妙な立場にあるんだ。
ラッセル国際的な名誉や信頼の回復を狙っているのか、
要請があれば国外のアウトレイジャー討伐に
KB FALLを積極的に派遣していると聞いているよ。
ライク・ツー……ふぅん。
主人公【アウトレイジャー討伐でも協力できるかも】
→十手「そうだね。マチルダさんと言ったかな。
現代銃の貴銃士だけで戦っているなら、傷もつらいだろう。
俺たちもぜひ力になりたいもんだ。」

【何か気になることが?】

ラッセル滞在中、〇〇君にもアウトレイジャー討伐の
協力要請があるかもしれない。
ラッセルその場合は、世界連合軍ベルギー支部や士官学校と相談の上、
なるべく協力をしてほしい。
主人公【イエッサー!】
ラッセルでは、さっそく出発の準備に取りかかってくれ!

第3話:カトラリーとシャルロット

〇〇、十手、ライク・ツーは、
公休を取得し、ベルギーにやってきた。

十手おお……! 立派なお屋敷だなぁ。
ライク・ツーハッ、いかにも金持ちって感じだ──
ライク・ツーうおっ!? あのクリスタルベースって、
ミラノのデザイナーズブランドの限定ひ──
ライク・ツー──んん、ゴホン。
……派手で成金趣味だな。
シャルロットあら?
その凛とした佇まい──お若いのににじみ出る貫禄!
噂の士官候補生さんではなくって?
主人公【〇〇といいます】
【はじめまして!】
シャルロットまぁ、やっぱり!
お待ちしておりましたのよ、〇〇さん!
シャルロット無理なお願いを聞いてくださり、本当に感謝しております。
それに、まさか貴銃士をお2人も連れてきてくださるなんて……
ああ、感激ですわ!
シャルロット改めて、シャルロット・サリバンです。
こちらがわたくしの貴銃士、カトラリーですわ。
よろしくね♪
カトラリーこんにちは。
お話を聞いて、すごい貴銃士たちなんだなって尊敬してたから、
皆さんに会えて嬉しいな……!
ライク・ツー俺はUL85A2の貴銃士、ライク・ツー。
アサルトライフルだ。
十手俺は指し火式の十手鉄砲だ。十手と呼んでくれ。
奇銃同士、ぜひ仲良くしてほしいな!
カトラリー〇〇さん、ライク・ツーさんに、十手さん……
よろしくお願いします!
カトラリー僕はカトラリー。
この通り、食器型の仕込み銃でね。
カトラリーベルギーの北の海、北海の海賊が使っていた銃で、
彫刻が施された銀食器に見えるけど……ほら!
フリントロック式のれっきとした銃なんだよ。
十手おお……!
なんとも精巧で綺麗で、興味深いからくりだなぁ。
シャルロットふふっ、十手さんもそう思われますこと?
革命戦争で活躍したというカトラリーではありませんが、
ベルギーゆかりの自慢の貴銃士なんですの。
シャルロットそれから、こちらは執事のコーバスです。
滞在中、お困りのことやご要望などがありましたら、
なんでも彼に言いつけてくださいね。
シャルロットコーバス、皆様のお荷物をお願い。
それから、とびきりのお茶もご用意して♪
コーバスかしこまりました、お嬢様。
シャルロット到着早々で申し訳ないのですけれど……
皆さん、少しついて来てくださるかしら。
応接室に記者団が待っていますの。
ライク・ツー……記者団?

応接室に入ると、一斉にカメラのフラッシュが焚かれた。
〇〇や貴銃士たちは驚き、固まってしまう。

カメラマン〇〇さん!
シャルロットさんと握手をお願いします!
主人公【はい……?】

〇〇が戸惑いつつ手を出すと、
その手をシャルロットがしっかり握った。
握手の場面を捉えようと、再び一斉にフラッシュが焚かれる。

シャルロットふふっ、不思議ですわね。〇〇さんとは、
ずっと前からお友達だったような気がしてしまいますわ!
とても親切で優秀なイギリスからのお客様ですの!
記者1シャルロットさん、こちらに視線をください!
記者2貴銃士のみなさんも、一緒にお願いします!
十手こ、こうかい?
いやぁ、緊張するなぁ。
ライク・ツー……はぁーあ。
ライク・ツー(……そーいうことな)
十手ふぅ! 驚いたよ。
シャルロット殿は一挙手一投足が注目されているみたいだね。
シャルロット恐縮ですが、有難くも思いますわ。
わたくしの成すこと、行く先々にも注目が集まれば、
支援が必要な子供たちにもおのずと光が当たりますもの。
十手ああ、写真の子供たちのことだね。
皆、いい笑顔で写っていて……施設での暮らし向きが窺えたよ。
十手身寄りをなくしてしまったことは、悲劇としか言えないが……
シャルロット殿のように手を差し伸べてくれる人がいるのは、
きっと大きな救いになっているだろうね……!
シャルロットそうだといいのですが……。
わたくし1人だけでは手の届かないところも多く、
歯がゆさを感じることだらけですわ。
シャルロット世界帝の支配や革命戦争の爪痕は、まだまだ残っております。
家族を亡くした子供たちにも、そしてこのベルギーにも……。
シャルロット……ですから、少しでも状況を変えたいのです。
もちろん、わたくしにできることは限られていますが、
かといって何もしなければ、それこそ何も変わりませんものね。
十手うんうん、その通りだ!
あっぱれなご令嬢だなぁ……!
ライク・ツー……はぁ、いつまでやってんだよ。
シャルロットメディアの皆さん、
本日は取材にお越しくださりありがとうございます。
シャルロット皆様はイギリスから到着されたばかりで、
きっとお疲れだと思いますの。
今日のところは、ここまででお願いできるかしら。
記者1はっ……それもそうですね。
わかりました。
カメラマンそれでは皆さん、よいご滞在を!
視察などに行かれる際は、また取材させてください。

 

第4話:首相令嬢の葛藤

記者たちが退室し終えると、
ライク・ツーはシャルロットの方へ一歩詰め寄る。

ライク・ツー……おい。
十手ラ、ライク・ツー君……?
ライク・ツー俺たちとの仲良し写真を何に使う気か知らねぇが、
ベルギーやお前らの事情なんて、
こっちは知ったこっちゃねぇんだよ。
ライク・ツー俺たちはあくまで、そいつの家庭教師に来たんだ。
お家争いだか、権力争いだか、なんだか知らねぇが……
〇〇を余計な厄介ごとに巻き込むな。
シャルロットえっと……あの……。
主人公【ライク・ツー……!】
【シャルロットさん、すみません!】
ライク・ツーおい、〇〇。お前もわかってんのか?
さっきの撮影会、こいつがイメージアップか何かのために
記者どもをわざわざ集めてたんだぞ。そうだろ?
シャルロット……!
十手ええっ……?
ライク・ツー俺たちをお前の都合に利用するんじゃねぇよ。
シャルロット……ご、ごめんなさい……。
ライク・ツーさんの、おっしゃる通りで……。

シャルロットは言葉に詰まり唇を噛み締めていたが、
その目に涙が溜まっていく。
そしてついには堪えきれずに、大粒の涙がこぼれ落ちた。

シャルロットあ……嫌だ、わたくしったら……。
ごめんなさい、ライク・ツーさんのおっしゃることはもっともて、
何も非はありませんわ……。
十手シャ、シャルロット殿……?

シャルロットは涙を少し乱雑にぬぐうと、
〇〇たちを真っ直ぐに見つめた。

シャルロット首相としての父を見ていて、痛感するんです……。
ベルギーは、世界連合の中でちっとも信用されておりませんし、
周辺の国々との関係もぎくしゃくしたままで……。
シャルロット世界帝府圧政下でベルギーが果たした役割を、
正当化することはできません。
ですが、そうせざるを得なかった面も確かにあって……。
シャルロット今でも残る“世界帝府の武器工場”のイメージを払拭したくても、
一筋縄ではいきませんし、できる限りの手を打ちたかったのです。
シャルロット……ごめんなさい。
これも、言い訳になってしまっていますわね。
ライク・ツー…………。
……まあ、なりふり構ってられなかったってのは、わかった。
シャルロット皆さんにはご迷惑をおかけしてしまいましたわ……。
この際ですから……正直に言います。
シャルロット皆さんをお呼びしたのは、革命戦争の英雄を思わせる
絶対高責の力を持つ責銃士がベルギーにいれば、
状況が少しは変わるかと期待してのことでしたの。
カトラリーその……僕、なかなか絶対高責になれなくて。
いろいろと頑張ってはみてるんだけど……。
十手カトラリー君……気持ちはよーくわかるよ。
絶対高責って言っても、雲をつかむような話に思えるし、
何をどうしたら目覚められるのかもそれぞれ違うからさっばりだ。
十手だが……きっと大丈夫さ。
焦りは禁物、君の絶対高責を、これから俺と探してみよう!
カトラリー…………。
カトラリー十手さん……! 心強いよ。
本当に……親切に、どうもありがとう。
十手さてと。シャルロット殿に悪気はなかったし、
ライク・ツー君は〇〇君を守ろうと、
少し警戒していたってことで……仲直りでいいかな?
ライク・ツー別に、直すような仲もねぇけど。
そっちの事情はわかった。
面倒事に巻き込まれなけりや、俺はどうでもいい。
シャルロットありがとうございます。
わたくしとしたことが、お恥ずかしいところをお見せしたばかりか
お客様に失礼をしてしまいましたわ。本当にごめんなさい …… 。
主人公【気にしないでください】
【こちらこそすみません】
シャルロットまあ……〇〇さんはお優しい方ですのね。
シャルロットさ、この話はおしまい!
皆さんを貴銃士たちの屋敷へ案内いたしますね。
十手貴銃士たちの屋敷……!?
シャルロットふふっ、そう遠くはありませんから、すぐに着きますわ。
街の眺めを楽しみつつ……さあ、参りましょう。

第5話:貴銃士たちの屋敷

シャルロットの屋敷を出ると、
豪奢な馬車が〇〇たちを待っていた。

シャルロット皆さん、こちらへどうぞ!
ライク・ツー今どき馬車って……車でいいだろ。
十手まあまあ、風情があっていいじゃないか。

シャルロット車だとあっという間についてしまいますから、
馬車を用意してみましたの。
……あら、街の皆さんが手を振ってくださっているわ。

シャルロットは、民衆へにこやかに手を振り返す。
カトラリーも同じように、笑顔で手を振った。

ライク・ツー…………。
シャルロットそういえば……ライク・ツーさん。
お顔をよく見せてくださるかしら?
ライク・ツーんだよ。
シャルロットまあ、やっぱり!
あなたの瞳の色……左右で色合いが違いますのね。
宝石みたいですこと♪ とっても素敵ですわ♪
ライク・ツー(……こいつ、なんか苦手だ……)
十手ところで、ベルギーにいる他の貴銃士は、
今から行く屋敷に住んでいるのかい?
カトラリーそうだよ。
ミカエル、ファル、それから僕で一緒に過ごしてるんだ。
シャルロットファルとミカエルは現代銃の貴銃士で、
マスターはわたくしではありませんの。
シャルロットですが、同じベルギーの貴銃士として、
普段からお互いに親交を深めてもらっていますわ。
シャルロットただ……ファルさんは彼のマスターとともに任務で忙しくて、
屋敷にいないことも多いのですが。

ほどなくして、馬車は貴銃士が住まうという屋敷に到着した。
華やかなサリバン家の邸宅とは打って変わって、
どことなく暗い雰囲気が漂っている。

シャルロット中をご案内いたしますわね。
そこまで大きな屋敷ではありませんから、すぐに済みますわ。
十手家庭教師──と自分で言うのはもぞ痒い感じがするが……
カトラリー君の絶対高貴の糸口探しは、
この屋敷に来てすればいいのかな。
シャルロット皆さんの滞在は当家ですから、
カトラリーに来てもらう方がいいでしょうか。
シャルロットただ、父の関係で当家は出入りが多いので、
集中できる場所をご用意しておきますね。
十手うーん、それはなんだか悪いなぁ。
そんなに遠くないし、落ち着く場所の方がいいだろうし、
俺がこちらの屋敷に来て構わないならそうするよ。
シャルロット……わかりました。
コーバスに、送迎の車の手配を頼んでおきますわ。
主人公【ありがとうございます】
【助かります】
ライク・ツー……ん?
十手む? どうしたんだい、ライク・ツー君。
ライク・ツーいや……微かにだけど、曲が聞こえるなと思って。
十手おお……?
本当だ。確かに何か聞こえてくるね。
カトラリーふふっ、天使が旋律を奏でてるんだ。
シャルロット…………。
またレクイエムね……わたくし、明るい曲の方が好きだわ。
カトラリーこの曲を弾いてるのはね──
ライク・ツーん……? なんだ?

物音が聞こえた廊下の曲がり角の方に
〇〇たちが視線を向けていると、
男女2人が歩いてくる。

???……あなたたちが、イギリスからの客人か。

女性はメイクで隠しきれないほど顔色が青白く、
着衣は土埃などで汚れている。
そして、薔薇の傷も首までツタを伸ばしていた。

シャルロットマチルダ、あなた、その格好は……。
ファル失礼。任務から帰ったばかりなもので。
主人公【大丈夫ですか……!?】
【薔薇の傷が酷い……!】
マチルダ問題ない。
私からも挨拶を──っ、ぐっ……!

マチルダがよろめいたかと思うと、倒れそうになり、
なんとか踏みとどまって床に膝をつく。

十手だ、大丈夫かい!?
シャルロットお客様の前なのに……ねぇ、誰か。
彼女をどこかに連れて行ってくださらない?
あいているソファかベッドがあるでしょう。
ライク・ツーおい、適当に寝かせたところでどうにもならねぇだろ。
マチルダ……私は、まだ大丈夫だ……。
十手いやいや! 動いちゃだめだ。
そのままじっとしていてくれ。
薔薇の傷なら、俺が助けになれるはずだ。
主人公【十手、お願い】
【傷の治療を頼めるかな】
十手ああ、もちろんだ。
マチルダ殿、ちょいと失礼するよ。
十手──絶対高貴!
カトラリー……っ!
これが……!
マチルダ……傷が……!

絶対高貴の光がマチルダに降り注ぎ、
ツタを伸ばしていた薔薇の傷が、一輪の花の形へと戻っていく。

十手よぉし、これで大丈夫だな!
痛みやつらさはないかい?
マチルダああ……治療していただき感謝する。
これが、絶対高貴の力なのだな。
カトラリー…………。
主人公【どうかしましたか?】
【大丈夫ですか?】
カトラリー……っ、な、なんでもない!
絶対高貴って初めて見るから……驚いちゃっただけ。

カトラリーは微笑むが──
爪が食い込むほどに握り締められた拳が、微かに震えていた。

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