ベルギー編:第26話~第31話

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第26話:シャルロットの本音?

〇〇たちがファルの異変を知ってからも、
カトラリーへの家庭教師は続いていた。

カトラリー絶対高貴……って、どんな感覚なんだろう。
カトラリー……はぁ。見たことはあるけど使ったことなんてないし、
よくわからない物をやるなんて無謀だよね。
カトラリー……っていうか、十手もあんたたちも、
変わり映えしない練習見てて飽きないわけ?
僕をジロジロ見てないで、そのへんのお菓子でも食べてれば?
十手お気遣いありがとう、カトラリー君。
そうだね、あんまり見ているとやりづらいだろうし、
ちょうど小腹が空いていたんだ。ありがたくいただくよ。
カトラリーあっそ。
……十手はマナーがなってないんだから、
ぽろぽろ崩れるやつじゃなくてチョコレートにしなよ。
十手ほうほう。カトラリー君のおすすめはちょこれぇとなんだね。
いろいろ種類があって、どれも美味そうだなぁ……!
ライク・ツー…………。
ライク・ツー会話が成立してる……みてぇだな。
そいつのツンケン用語をどう好意的に解釈したらそうなんだよ。
主人公【すごいね、十手】
【なんとなく傾向がわかってきたかも……?】
十手はははっ。カトラリー君は少し独特な言い方をするが、
素直でわかりやすい、いい子だからね。
カトラリーはぁっ……!?
意味わかんないんだけど。
十手はは、照れなくたっていいじゃないか。
カトラリー君の優しさを誤解されるのはもったいないしね。
ライク・ツー照れてんのか、それ。
って……。
カトラリー…………。
ライク・ツーうわ、マジか。
十手……すげぇな、お前。
十手言葉の裏がわかれば、気遣いが伝わってくるんだよ。
そのあたりは、ライク・ツー君のおかげで鍛えられているしね!
ライク・ツーは……? 俺をそいつと一緒にすんな!

──コンコン

シャルロット皆様、ごきげんよう。
カトラリー……あ、マスター。
シャルロット数日ぶりになってしまいましたわね。
そろそろ、家庭教師の成果が出た頃かしらと思って見に来たの。
どうかしら、カトラリー。
シャルロット絶対高貴になれたという報告は聞いていないけれど、
片鱗は掴め始めたのかしら。
カトラリー……えっと……まだ、よくわからないかも。
シャルロット……そう……。
絶対高貴になれる貴銃士の導きがあっても、
そう簡単にはいかないものなのね……。
十手しかし、カトラリー君は本当によく頑張っているよ。
あとは俺みたいに、何かきっかけがあればいいのかもしれない。
シャルロットそうでうか……。
引き続きよろしくお願いしますわね、十手さん。
シャルロット……ところで、ファルさんは?
姿がないようだけど……任務かしら。
ライク・ツーああ。
あいつなら、マチルダに呼ばれてまた朝から出かけてったぜ。
シャルロット彼女ったら……。
相変わらず、落ち着きのないこと。
シャルロットこうしてお客様がいらしているのだから、
もっとお話したり会食したりすればいいのに。
シャルロットまあ、彼女は自己管理も十分にできないような方ですものね。
この間だって、真っ白な顔で、幽鬼のように歩いて……。
……みっともないわ。
十手シャルロット殿。そういう言い方は──……。
十手(……ん、待てよ。
この感じ、どこかで……)
十手シャルロット殿……
もしや、マチルダ殿のことを心配しているのかい?
シャルロット…………えっ。

十手の言葉に、シャルロットは固まってしまった。

シャルロットか、彼女がもし……、もしも、
万が一にでも死んでしまうようなことがあったら、
ベルギーの国防に差し障るのですもの。
シャルロット首相の娘としても、ベルギーを愛する一国民としても、
当然、心配はしますわ。
シャルロット……コホン。
さて、わたくしは失礼いたします。
支援している楽団のチャリティーコンサートがありますの。
シャルロットカトラリーが絶対高貴になれたら、
わたくしにお知らせくださいね。
シャルロットそ、それでは、ごきげんよう。

シャルロットは足早に立ち去った。

十手あっ、シャルロット殿……!
もう行ってしまった。
カトラリー僕が絶対高貴になれそうにもないってわかったから、
もう用はないんでしょ。
十手しかし、あの様子……。
ライク・ツーけっこう、図星な感じだったよな?
十手ああ。まさか……とは、思いつつ……。
十手カトラリー君が絶対高貴に目覚めるよう
シャルロット殿が急いでいる様子なのは、
マチルダ殿を救いたい一心なのではないか?
カトラリー……えっ!?
ライク・ツーあー……言われてみれば、確かに?
その線もあるかもな。
カトラリーええっ!
カトラリー……そんなふうに、考えたことなかった。
カトラリーうーん、でも……2人はずっと仲が悪い感じだったけど。
親が政敵同士らしいし……?
ライク・ツー親が仲悪くても、子供までそうとは限らないんじゃねーの?
カトラリー…………。
ライク・ツーんじゃ、俺はトレーニング行ってくる。
せいぜい特訓頑張れよ。

第27話:世界帝の銃たちのゆくえ1

屋敷の一角、人気のない場所で──

マチルダ……ハァ……。

薔薇の傷が再び悪化したのか、青白い顔をしたマチルダが
廊下の壁にもたれかかっていた。

彼女は首元のペンダントの蓋を開くと、
その中をじっと見つめる。

マチルダ…………。
ライク・ツー……何見てんの?
マチルダ……ッ!
マチルダお前は、士官候補生の……!
ライク・ツーああ……UL85A2、ライク・ツー。
……お前の相棒と同じく、世界帝軍にいた奴と同じ型の現代銃だ。
マチルダそうか……。
何か足りないものがあれば、使用人に伝えておくが。
ライク・ツーいや、必要なもんは足りてる。
ここに来たのは、お前と話したかったからだ。
マチルダ任務についてか?
ライク・ツーいや。
……なんでわざわざ、世界帝軍にいたのと同型の銃を召銃した?
ライク・ツーベルギーは、世界帝府の武器工場ってイメージを消したいんだろ。
なら、現代銃の貴銃士が欲しいにしても、
いくらでも別の銃を用意できたはずだ。ドイツみてぇにさ。
マチルダ…………。
ライク・ツーミカエルを召銃したのも、理解に苦しむんだよ。
世界帝軍の記録で、ミカエルが戦わねぇのはわかってただろ。
同種の銃ならそのリスクは当然あるのに、なんで選んだ。
ライク・ツーあいつが世界帝軍にいた銃だってのは、
本人がうっかり喋ってたから知ってるぜ。
にしても……なんでわざわざ同じ名前を名乗ってる。
ライク・ツーファルとくれば……そうだな、エフあたりか。
ま、他にもベルギーで作られた名銃はあるよな。
ライク・ツーなのに、お前が召銃したのがファルとミカエルなのは、
単なる偶然か?
それとも、狙いがあってのことか?
マチルダ……答える必要はないだろう。
ライク・ツー…………。
ライク・ツー……はぁ。回りくどい話にはいい加減飽きてきたぜ。
もうわかってんだから、はっきりさせようぜ。
ライク・ツーミカエルだけじゃなくてファルも……
世界帝軍にいたのとまったく同じ銃の貴銃士だろ。
マチルダ……っ。
ライク・ツーあいつを呼び覚ました理由はなんだ?
国際的な地位向上のためなら、呼び覚ます必要はない。
……リスクを取ったからには、大きいリターンがあるはずだ。
ライク・ツーつまり、トルレ・シャフをおびき寄せるエサとか……
そんなところか。
ライク・ツーあいつらを利用してトルレ・シャフに大打撃を与えるとかな。
ベルギーが抜け駆けして一国で手柄を上げれば、
国際的な立場もかなり変わるか。
マチルダ……それは……。
マチルダ……お前は、それを知って何がしたい。
ライク・ツー別に、脅したり言いふらしたりするつもりはねぇよ。
ただの憶測だしな。
その代わり……少しばかり聞きたいことがある。
マチルダ取引というわけか。
……いいだろう。
ライク・ツー世界帝の銃は、各国に搬送中に襲撃を受けたが、
その後は問題もなく厳重に保管されている──
表向きには、そういうことになってるよな。
ライク・ツー再び召銃されたって正式な記録は残ってない。
なのに、ファルはこうして召銃されてる。
ライク・ツー返還から召銃の間に何があったんだ?
お前の知ってることを教えろ。
マチルダ……ベルギーおよびドイツへの護送中、
搬送者が世界帝の銃を狙う武装勢力に襲撃された。
マチルダその際に、DPSG-1やKB EFFなどの銃が持ち去られた。
KB FALLはかろうじて無事だったため、
貴銃士として運用している。
マチルダ私が知らされているのは、それだけだ。
ライク・ツーなるほどな。
ライク・ツー……輸送途中での襲撃は、イギリスへの道中でも起きてるだろ。
そこで、UL85A1──世界帝軍ではラブ・ワンと名乗っていた
銃が強奪されてる。
ライク・ツーそれも、ベルギーやドイツの銃を奪った奴らと
同じ犯人グループだったのか?
マチルダイギリスでも……?
すまないが、UL85A1についての情報は持っていない。
ライク・ツー……そうか。
マチルダ他に質問がないのならば、失礼する。
ライク・ツーああ。

ライク・ツー……確信はなかったけど、やっぱりそうだったのか。
あいつ……世界帝軍の……。
ファル…………。

彼らのやりとりを密かに聞いていたファルが、
そっと立ち去っていった──。

第28話:世界帝の銃たちのゆくえ2

ライク・ツー…………。
主人公【おかえり】
【何かあった?】
ライク・ツー……ああ、〇〇か。
十手のおっさんは?
主人公【カトラリーの部屋にいる】
【もう少し授業をするみたい】
ライク・ツーすっかり懐かれてんな、あいつ。
ライク・ツー…………。
ライク・ツー……おい、〇〇。
今さらだけどよ、この国にはあんまり関わらねぇ方がいいぜ。
特に、あのやべぇファルにはな。
ライク・ツーカトラリーの授業がひと段落したら、
さっさと士官学校に戻るぞ。
主人公【でも、ファルのことが気になる】
【苦しんでいるのに見て見ぬふりは……】
ライク・ツー…………。
……はぁ。
ライク・ツー仕方ねぇ。お前には言っておくか。
……あのファルは、元世界帝軍の奴だ。
ライク・ツー世界帝軍の特別患部だったKB FALLの貴銃士──
……それと同個体で、ほぼ間違いねぇ。
主人公【……!?】
【そんなはずは……】

事前にラッセルから聞いていた情報では、
ファルは当然、世界帝軍にいたのとは別の個体とのことだった。

ミカエルは記憶がないため、
別個体として発表されていたのは理解できるが、
ファルもとなると話は大きく変わってくる。

主人公【まさか、ファルも記憶がないとか?】
【何かよほどの理由があるのか……?】
ライク・ツーさあ。
探ってみた感じだと、たぶん、それはねぇと思うけど。
ライク・ツーベルギー的には、世界帝軍の情報でも聞き出すとか、
トルレ・シャフを釣るための囮にでもしようとしてんのかもな。
ライク・ツーどっちにしろ、あいつはまともな状態じゃねぇ。
それはわかってんだろ?
ライク・ツーそれに……。
元世界帝軍の貴銃士で、特に残虐だったっていう奴だ。
〇〇は関わってもいいことないぜ。

──地下室で見た光景が、〇〇の脳裏によぎる。
怯え切った表情で血を流していたテロリストの男。
拷問を楽しんでいるかのようだったファルの姿。

さらに、革命戦争に関する記録では、
ファルは世界帝軍特別幹部の中でも、
冷酷無情だったと残されている。

主人公【(ファルは何かに酷く苛まれている)】
主人公【(でも、彼が変わっていないなら危険だ)】
ライク・ツー……マチルダはファルの力を必要としてるし、
今んとこ、ベルギーにとっても欠かせないみたいだ。
ライク・ツーあいつが暴走しねぇなら、現状維持させとけ。
俺たちは手を引こうぜ。
主人公【……ファルと話したい】
【ファルに会いに行く】
ライク・ツー……は?
ライク・ツーいや、話聞いてたのかよ!
あいつを下手に刺激するな──……って、
こういう時のお前は頑固なんだったな……。
ライク・ツーはぁ……ったく……。

──ファルが任務から戻ったと聞き、
〇〇とライク・ツーはファルを探して
屋敷の敷地内を歩き回る。

ライク・ツー……いたぞ。
ファル……おや、私に何かご用です?
主人公【世界帝軍の貴銃士だったのは本当?】
ファル……その様子ですと、確信があるようですね。
はぁ……やれやれ。
一応は機密事項のはずですが、どこから漏れたのやら。
ファルおっしゃる通りです。
私は世界帝軍にいた貴銃士KB FALLと同個体ですよ。
ライク・ツーへぇ。案外あっさり認めたな。
ファルかまをかけているという感じではなさそうでしたし。
これ以上、隠しようがなさそうだと判断したまでです。
ファルそれに、銃は持ち主に仕えるものですので。
その時その時の持ち主の望むように働くだけでしょう?
どんな過去があれど、大した問題にはなり得ないかと。
主人公【でも、様子がおかしい】
【ひどく苦しんでいた】
ファル苦しむ……? はて、なんのことやら。
記憶にありませんね。
ファル私はいたって普通ですよ。
ファル感情などというものに振り回されることもなく、
ただ、与えられた役割を果たすのみです。
所詮、銃はただの道具なのですしね。
主人公【それならなぜ、部屋に花を飾る?】

ファルは花になど興味がなさそうなのに、
薔薇園を気にしては毎日のように花を摘んでいる。
そして今も、ファルは庭園で過ごしていた。

ファル……花……。
主人公【感情がないただの道具に、花は必要?】
【花に思い入れがあるから飾るのでしょう?】
ファル……っ!
ファルそ、れは──……ぐっ!?

その時、ファルの身体がぐらりと揺れた。

第29話:世界帝の銃たちのゆくえ3

ファル……ぐっ!?

ぐらりとファルの身体が揺れた。
苦しげに胸のあたりを押さえ、青白い顔をしている。

ライク・ツーうぉっ!?
なんだよ……!
主人公【大丈夫!?】
【今、治療を──】
ファル触るな!

ファルは、〇〇が差し伸べた手を振り払う。

ファルさっきから、ごちゃごちゃと……。
感情があって苦しむとしたら、お前のせいだ。
主人公【……!】

吐き捨てるように言うと、
ファルはふらつきながら屋敷の中へ引き上げていく。

〇〇は呼び止めようと手を伸ばしたが、
それ以上何も言えずに手を下ろした。

ライク・ツーもう、やめとけ。
これ以上、俺たちにできることはない。
ライク・ツー前……ミカエルに初めて会った時、
言われたな。

ミカエルあのね……ファルのことだけれど。
ミカエル彼のことを、誤解しないでほしい。
そして……誤解を解こうともしないでほしいな。

ライク・ツーあれは、触れるなってことなんだ。
あいつは変化を望んでない。頑ななまでに……。
ライク・ツーもう何日かしたら家庭教師の件もテキトーに話つけて、
とっとと士官学校に帰るぞ。もう、あいつには関わるな。

ファル…………。
ミカエル……ファル。
ファル…………。
ミカエル……ねぇ、ファル。
こっちを向いて。

ミカエルの声には気づいていないのか、ファルは無反応のまま、
窓際に置かれた薔薇の一輪挿しをぼんやりと見つめている。

ミカエル…………。
そうか、きみはもう……。

ミカエルは、そっとファルの顔を覗き込んだ。

ミカエル……ねぇ、きみは空っぽすぎるよ。
ミカエル僕たちはもう、ただの銃ではなくて。貴銃士。
人のような存在になったんだ。
きみが望もうと、望むまいと。
ミカエル人は愛がなくては生きてはいけないよ。
空っぽのきみに──僕が愛をあげる。
ファル……る、さい……。
ミカエル……っ。

ファルは、ミカエルが差し伸べた手を払った。

ファル……銃に、愛など必要ありません。
ミカエル……ファル。
どうして、愛を拒むの……?
ファル…………。

──その日から、ファルは庭園に姿を見せなくなった。
一輪挿しの手入れがされることもなくなり──
赤い薔薇は、萎れていった。


──数日後。

マチルダファル。アウトレイジャー出没の一報が入った。
すぐに向かうぞ。
ファルはい、マスター。
ミカエル……ファル。

ミカエルは、自分の声を無視し、庭園に一瞥もくれずに
軍用車に乗り込もうとするファルの背中に手を伸ばし──

──そっと、その手を下ろした。

ミカエル……うん、そうだね。
きみは、これを望んでいない。
ミカエル愛を拒むきみに、────をあげる……。

 

第30話:接触1

──その日の夜。

ファルは、アウトレイジャー出没が確認された危険なエリアで
周囲を警戒しつつ、1人静かに進んでいた。

ファル……そこか。絶対非道──!
アウトレイジャーグアァァ……!
ファル……はぁ。
ファル……さて。これで強襲の危険はなくなったことですし、
マスターと合流しますかね。

ファルが元来た道を辿ろうとした時、
背後で微かに音がする。

ファル……! アウトレイジャーが、まだ……?
???さすがやなぁ、ファルはんは。
ファル……!
あなたは──
ゴーストワイはDG11──……ゴーストや。
あんさんは、こっちの名前の方に馴染みがあるやろ?
ファルさあ。ドイツにいる貴銃士のうち1人が
ゴーストと呼ばれていることは知っていますが。
ゴーストそないな誤魔化し……する必要あたへんで。
イレーネ城におった頃は、ゴーストさんって呼びよったこと、
ワイ自身がよぉく知っとるからなぁ……。
ゴーストあんさんは……“あの”ファルはんで間違いないやろ。
もうわかっとるやろうけど……ワイもや。
ゴースト感動の再会っちゅーことや。
はっぴーやなぁ……。
ハッピでお祝い、なんちゃって……ぷぷっ。
ゴースト…………。
ゴースト……あんさんに、伝えることがあって来た。
ゴースト──あの人は、生きとる。
トルレ・シャフはあの人のための組織や。
ファル…………!?
ゴーストそれから、ワイだけやのうて、
アインスの兄さんとエフもおるで……。
ファル……ッ!
ぐ…………。
ゴーストなんや? 胸んとこでも痛むんか?
ファル……いえ。
今のお話、なくもない……とは思えますが。
ファル今さら、何をお考えですか?
ファル彼のところに貴銃士が再び集ったとしても、無駄ですよ。
彼はすでに亡き者となっているはずの人間ですし、
圧政を敷いたのちに敗北した今、世界中が敵のようなもの。
ファル一部に熱狂的な信奉者はいるかもしれませんが、
再び覇権を握るなど夢物語でしょう。
……一体、なんのために私を呼ぶのです?
ファル私には既に新たなマスターがいて、
新たな任務を与えられています。
そんな私にどうしろと?
ゴースト……あんさんは、4大アサルトライフルて呼ばれるくらいの
一流の銃やからなぁ……。
新しい生き方を選ぶっちゅうのも、まあわかる……。
ゴーストでも……ワイは違う。
あの人に見つけて召銃してもらえたのが奇跡みたいな、
ドマイナー銃や……。
ゴーストそんなワイを、あの人が救ってくれたんや。
せやからワイは……何があっても……どんなことになっても
あの人についていくって決めとる。
ファル……ふっ。
それは……情ってやつですか?
ゴーストせやなぁ。ワイは情深い銃やから。
──なぁ、ファルはん。あんさんもそうやろ?
ファル……私が? そんなわけないでしょう。
ゴーストいいや。
アインスの兄さんやエフといる時のあんさんには、情があった。
少なくともワイには……そう見えてたで。
ゴースト……ワイは知っとる。
あんさんは、あの2人に会いたいはずや。
ゴースト……戻ってきぃや、ファルはん。
場所と時間は、ここに書いといた。目印は、赤い花──やて。
ゴースト戻るっちゅうても……いろんなやり方がある。
ワイみたいに、連合軍に潜入しとくのもありや。
……完全に、あの人んとこに戻るのもええ。
ゴーストアインスの兄さんとエフもあんさんに会いたがっとるからな。
まずは、再会して積もる話でもするとええわ。
ファル…………。
ゴーストああ、それから……ミカエルくんのことは知っとる。
このことを伝えるかは、あんさんに任せるわ。
ファル…………。

ファルは、ゴーストに渡されたメモを握りしめた。

マチルダ……ファル、ここにいたのか。
ファル……ッ!

マチルダに呼ばれてファルは振り返る。
先程までそばにいたはずのゴーストの姿は、既になかった。

ファル…………。
マチルダ……どうした。幽霊でも見たような顔をして。
ファル……いえ、なんでもありません。

──翌朝。

ファル…………。

ライク・ツーつまり、トルレ・シャフをおびき寄せるエサとか……
そんなところか。
ライク・ツーあいつらを利用してトルレ・シャフに大打撃を与えるとかな。
ベルギーが抜け駆けして一国で手柄を上げれば、
国際的な立場もかなり変わるか。

ファル(……私は、もとより世界帝軍の中を奪った組織や、
トルレ・シャフをおびき寄せるエサとして召銃されている……)
ファル(ならば、彼らが私に接触してきたのは、
マスターにとっても朗報、だが……)
ファル(マスターに報告をするべきか……?
ゴーストさんが言っていたことがどこまで本当か、
もう少し踏み込んで、確かめたい……)
ファル(まずは向こうの様子を見よう。
マスターには事後報告でもさほど問題はないだろう。
……私がエサとしての役目を全うするだけのことなのだ)
ファル(しかし、本当に彼が──世界帝が生きていると……?)

考え事をしながら自室に戻ったファルは、
ふと顔を上げ、窓辺に新しい薔薇が飾られていることに気づく。

ファル……これは。
使用人失礼いたします。
使用人ファル様、朝食のご用意が──
ファルこれは、誰が。
使用人昨日の夕方ごろ、士官候補生の〇〇様が、
カトラリー様と一緒に選んで活けておられました。
ファル様はご多忙なので、手が回らないだろうと……。
ファル……温かい、お気遣い……。

ファルは花瓶を跳ね除けるように手を振った──が、
花瓶に当たる寸前で止める。

使用人……っ!
ファル朝食、持ってきてください。
使用人は、はい……。

第31話:接触2

ミカエル…………。
ファル……ミカエルさん。
ミカエル……ファル。
どうしたんだい?
ファルええ、伝達事項が。
……ゴーストさんから接触がありました。
ミカエル幽霊から、きみに?
ファル……ああ、失礼。
トルレ・シャフのことです。
ファル今夜、元同僚のアインスとエフと接触する機会があります。
街はずれの廃倉庫で落ち合う予定です。
ミカエル……ファルは、彼らに会うんだね。
ファルええ、あくまでも様子見ですが。
なんでも、我々の元マスターが生きているとか……。
どこまで事実なのかはっきりしませんので。
ファル……あなたもいらっしゃいますか?
ミカエル…………。
ミカエルノン、僕は行かないよ。
ミカエル僕にかつての記憶はない……。
行ったとしても、誰も何も得るものはないだろう。
ファル……そうですか。
ミカエルねぇ、ファル。
ファルはい?
ミカエルその人たちとの再会が、きみのためになるといいね。
ファル……さて、どうでしょう。
大して期待はしていませんよ。
ミカエル……そう。
ミカエル…………。
ミカエルやっと、解放される時が来たんだね。
ファル……。

ゴーストから指定された時刻、
ファルは待ち合わせの場所にやってきた。

ファル赤い花……。

そこには、寂れた風景に似合わない赤い花が置かれていた。

ファル……っ!

夜闇の中から、3つの人影が浮かび上がる。
それは、ファルがよく知る姿だった。

アインス──久しぶりだな、ファル。
ずっと、1人にさせてすまなかった。
いろいろと手間取ってな。
ファル……アインス……本当に……。
エフファルちゃ~ん!
会いたかったわぁ♥
ファルエフ……!
ゴースト……ミカルくんは来ぇへんかったか。
せやけど……ファルはんはちゃあんと来てくれてよかったで。
ゴーストほんなら、ワイは報告に戻るわ。
久々の再会、あんさんらで楽しむとええわ。
アインスファル、来い。
これまでのことと、これからの話をしておこう。
エフウフフ……夢みたいね。
またアインスお兄様とファルちゃんと一緒に過ごせるなんて!
ファル…………。

ファルは、2人のもとへと足を踏み出す。
──その時だった。

???動くな!
エフ……っ、何よ、あいつらは……!
ファル……!?

ファルたちを取り囲むように、
ベルギー支部の兵士が廃墟内へ突入してくる。

ベルギー支部指揮官総員、構え!
ベルギー支部指揮官世界帝府の残党だ。
なるべく破壊せずに捕らえよ!
ベルギー支部兵士はっ!
アインス……どうなってる。
エフちょっと、ファルちゃん!
これ、どういうことよ!?
ファル知りません、私は何も──
ファルどうして、こんな……!
ライク・ツーあれは……! ……ッ。
アインスファル……お前、まさか……。
マチルダ総員、戦闘態勢!
行くぞ、〇〇候補生。
主人公【行こう、2人とも】
【やろう!】
十手&ライク・ツー了解!

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