マチルダ | 撃て、撃て! 奴らはファルがエサとなって誘き出した大物! 必ず捕らえろ、これは千載一遇の好機だ! |
---|---|
ファル | な、なぜ……!? どういう、ことだ、これは……! |
エフ | 信じてたのに……ファルちゃん……! |
アインス | ……これが、お前の出した結論ということか。 |
ファル | アインス……私は……! |
アインス | お前の選択を尊重しよう。 だが、俺たちの行く道が交わることはない。 ……エフ、行くぞ。 |
エフ | はい……アインスお兄様。 ……さようなら、ファルちゃん……。 |
アインス&エフ | ──絶対非道。 |
ファル | 待って──っ、く! |
ファルは追いすがろうとするが、絶対非道で廃墟が一部崩れ。
どこからか火の手が上がる。
煙に紛れて、2人の姿はすぐに見えなくなった。
ファル | どう、して……。 |
---|---|
ファル | ……監視? 私に? |
ファル | いや、監視がついていたとしても、 この規模の突入はあり得ない……。 私が彼らと接触すると、事前に知っていなければ……! |
マチルダ | ……状況が理解できていないようだな。 |
マチルダの後ろから、ミカエルとカトラリーが姿を現した。
ミカエルは、ファルへゆっくりと手を差し伸べる。
ミカエル | ……ファル。 |
---|---|
ファル | ……ミカエル、さん……? |
ミカエル | おかえり。 |
ファル | ……ッ!!! |
ファル | ……あなたもいらっしゃいますか? |
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ミカエル | …………。 |
ミカエル | ノン、僕は行かないよ。 |
ミカエル | 僕にかつての記憶はない……。 行ったとしても、誰も何も得るものはないだろう。 |
ファル | ミカエル……あなたが、情報を……! |
---|---|
ファル | 何故ですか……あのまま彼らと一緒に行けた方が、 私……は……。 |
ミカエル | ノン……いけないよ。彼らと行く先に安寧はない。 君はここで生きて行くんだ……僕らとともに。 |
ミカエル | そのために……── |
ミカエル | 愛を拒むきみに……憎しみをあげる。 |
ミカエル | 僕を憎むことが、きみの生きる理由になるなら。 ……きみの音が、濁らなくなるなら。 |
ミカエル | ──それが、僕の幸いだ。 |
ミカエル | さぁ、帰ろう。ファル。 |
ファル | …………。 |
??? | ファル。 |
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??? | ファルちゃん! |
マチルダ | これからはお前の力を、 祖国ベルギーのために存分に使ってもらうぞ。 |
---|---|
マチルダ | ……返事をしろ。 祖国に仕える気はあるか? |
ファル | 世界帝に召銃されれば、特別幹部として振る舞う。 あなたに召銃されれば、祖国のために働く。 なんら変わりはありませんね。 |
ファル | ……っ!? |
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ミカエル | 何か……? |
ファル | …………。 最近、心臓の調子がおかしいようで。 |
ファル | おや……目をつけていたつぼみが開花していますね。 期待通りの美しい薔薇です。 |
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十手 | ファル君は、花が好きなのかい? |
ファル | いえ、別に。 |
ファル | ──私は、何をしているんでしょうね。 |
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ファル | (私は何を望んでいるのか。 かの時代の復興か? それとも──) |
ファル | ……いや。 武器が物思いに耽るなど、馬鹿らしい。 |
ファル | ……クソが……。 |
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──ガン! ガン!
ファル | ……ハァ、ハァ……ッ! せっかくの楽しみを……邪魔しやがって……! |
---|
──ガン! ガン! ガン!
──ガン! ガン! ガン!
──ザクッ、ザクッ!
ファル | 黙れ……黙れ……ッ! うるさい、うるさい……うるさい……! |
---|
ゴースト | せやなぁ。ワイは情深い銃やから。 ──なぁ、ファルはん。あんさんもそうやろ? |
---|---|
ファル | ……私が? そんなわけないでしょう。 |
ゴースト | いいや。 アインスの兄さんやエフといる時のあんさんには、情があった。 少なくともワイには……そう見えてたで。 |
ゴースト | ……ワイは知っとる。 あんさんは、あの2人に会いたいはずや。 |
エフ | 信じてたのに……ファルちゃん……! |
---|---|
アインス | ……これが、お前の出した結論ということか。 |
ファル | アインス……私は……! |
アインス | お前の選択を尊重しよう。 だが、俺たちの行く道が交わることはない。 ……エフ、行くぞ。 |
エフ | はい……アインスお兄様。 ……さようなら、ファルちゃん……。 |
ファル | …………ふっ。 |
---|---|
ファル | ふふふ……はははは……。 |
ファル | あっははははは! |
カトラリー | ファル……? |
ファル | ああ……おかしい。 あのねぇ、憎むほどの気力も残っていませんよ。 |
ファルは、自分の銃を壁に強く叩きつけはじめた。
十手 | ……っ! ファル君、そんなことをしたら……! |
---|---|
ファル | 黙れ。その善人面、反吐が出る……! |
十手 | ……っ! |
ファルはなおも自分の銃を叩きつけ続ける。
何度も、何度も、何度も──
カトラリー | そ、うだよ! やめて……やめて、ファル! そんなにしたら、壊れちゃう!! |
---|
ファルは誰の声にも耳を貸さず、銃を叩きつけ続ける。
しかし、凹みや傷はできても、決定的な破壊には至らない。
ファル | ……壊れたくとも、ここまでしても壊れられないとは。 軍用銃とは厄介なものですね……。 |
---|---|
ライク・ツー | おい、やべぇぞ。 火の手が回ってきてる……! |
マチルダ | 我々も待避するぞ。ファル、来い……! |
ファル | は、はは……! あーはっはっはっ! すべてが、馬鹿らしい……! もう何もかも壊れてしまえば、いい……っ!! |
ファル | ふ、ふふ…………ああ、赤い──。 |
ファルは薄らと笑みを浮かべると、
建物の奥──火の勢いが強い方へと歩きはじめる。
ミカエル | ファル……およしよ。そんなことは……! |
---|---|
カトラリー | な、何やってるの! ファル……ファルってば! |
ミカエルとカトラリーの手を強く振り払ったファルは、
炎の中へと消えていく。
カトラリー | ……っ、ファル!! |
---|---|
十手 | ダメだ、カトラリー君! |
マチルダ | 全員、避難しろ! |
ベルギー支部の兵士たちに引っ張られるようにして、
〇〇たちは燃える建物の外へと出る。
──数時間後。
火事は鎮圧され……
焼け跡からは、ひどく損傷したKB FALLが発見された。
──翌日。
シャルロット | 驚きましたわ。 マチルダの銃が、わたくしたちベルギーを裏切って、 トルレ・シャフらしき組織に接触だなんて……。 |
---|---|
シャルロット | はぁ、なんて恐ろしいこと……。 |
ライク・ツー | さっそく噂になってるみてぇだな。 |
主人公 | 【ファルは……?】 |
十手 | 損傷がひどいそうだよ。 マチルダ殿と専門家が修復を試みているらしいが……。 |
十手 | …………。 俺には、修復することも酷に思えてね……。 |
カトラリー | ……ファル……。 |
ミカエル | ……君に、会えなくなるなんて……。 |
一同 | …………。 |
シャルロット | ……沈んでいる暇はありませんわ。 ファルがいなくなってしまった今、 ベルギーの国防は手薄になってしまっています。 |
シャルロット | 一刻も早く、カトラリーには絶対高貴になってもらわないと。 十手さん。今日も家庭教師をお願いしますわね。 |
シャルロット | 今日はわたくしも授業の見学を── |
コーバス | シャルロットお嬢様……! |
シャルロット | まあ、コーバス。 一体何事ですの? |
コーバス | こ、これを……! |
執事が持ってきた新聞の一面には、
『サリバン首相ブレーン、対抗候補の罪を捏造!』
という見出しが躍っていた。
シャルロット | どういうことですの……これは……? |
---|---|
十手 | サリバン首相というと、シャルロット殿のお父上だね。 |
ライク・ツー | 対抗候補で罪って言ったら……。 |
主人公 | 【ドリス・シルヴァスター氏のこと?】 【マチルダさんのお母さん……?】 |
ライク・ツーはシャルロットが取り落とした新聞を拾い上げ、
素早く目を通す。
ライク・ツー | 間違いねぇな。マチルダの母親だ。 ドリス・シルヴァスター……当時の第一野党党首だった奴に、 虚偽の罪をなすりつけてスキャンダルをでっち上げた。 |
---|---|
ライク・ツー | その首謀者がサリバン派の中核ってのが、すっぱ抜かれたとさ。 ……サリバン本人にも関与の疑いがあるらしい。 |
ライク・ツー | ベルギーで謎の強兵を討伐する、マチルダ・ジャンセンの 身元を探っていた記者が偶然、証拠を発見した、 ……って書いてあるぜ。 |
ライク・ツー | へぇ……あいつ、死ぬ気で動き回ってた甲斐があったな。 |
カトラリー | ねぇ……これって、どうなっちゃうの……? |
シャルロット | …………っ。 |
シャルロット | お父様は……お父様は、正しい方です! わたくしが、尊敬してやまない……。 こんなこと……ありえません! |
シャルロットは、急ぎ部屋を出ていく。
コーバス | 〇〇さん、皆さん。 おそらく、ここにも記者たちが詰めかけるでしょう。 |
---|---|
コーバス | 急ぎ帰国なされることをお勧めいたします。 帰路は責任を持って手配いたしますので、お早く──。 |
混乱の中、〇〇たちは士官学校に戻ることになった。
──数週間後。
十手 | ……はぁ。 |
---|---|
ライク・ツー | んだよ、辛気くせぇな。 |
十手 | いや……つい、ベルギーの一件を考えてしまってね。 俺がしたことに、意味はあったのだろうか……。 |
……カトラリーは、絶対高貴になれないまま。
ファルは焼損し、サリバン家は没落。
ベルギーはしばらくの間混乱に陥っていた。
ライク・ツー | ……お前が気に病むことはねぇだろ。 なんでもかんでも解決できるわけねぇんだからさ。 |
---|---|
主人公 | 【意味はあったはず】 【カトラリーと打ち解けられていた】 |
十手 | しかし、カトラリー君はファル君を失ってしまったし……。 なんとも後味が悪いというか……うーむ……。 |
ラッセル | 〇〇君。 十手とライク・ツーも一緒か。ちょうどよかった。 |
ラッセル | 今朝、また君たち宛に郵便が届いていた。 ベルギー首相のご令嬢からなんだが……。 |
十手 | シャルロット殿から? |
ラッセル | いや、違うんだ。 例の事件があってから、ベルギーでは政権交代があってね。 |
ラッセル | ……新首相ドリス・シルヴァスター氏のご令嬢、 マチルダ殿からの招待状だ。 |
〇〇たちは再びベルギーを訪れた。
マチルダ | 〇〇士官候補生、貴銃士の諸君。 招待に応じていただけたこと、心から感謝する。 |
---|---|
主人公 | 【お久しぶりです】 【またお会いできて嬉しいです】 |
マチルダ | ああ、例の事件ぶりだな。 慌ただしい出国となってしまったと聞いている。 申し訳なかった……。 |
マチルダ | 改めて。 現在は、特別執行官の職を退いている。 |
マチルダ | 母が……ドリス・シルヴァスターが新首相となり、 ともなって私もかねてから力を注ぎたいと思っていた、 産業開発分野の大臣補佐を担当することになった。 |
マチルダ | マチルダ・シルヴァスター産業開発大臣補佐、だ。 長たらしくてすまない。 |
ライク・ツー | ……で? |
ライク・ツー | 俺たちをわざわざ呼び戻したのはどういうことだ? |
マチルダ | 前置きが長くなってしまったな。 君たちを呼んだのは、2つ頼みがあってのことだ。 |
マチルダ | 1つは、この薔薇の傷だ。 政権運営に関わることになった以上、 私はこれ以上危険を伴う前線勤務を続けられなくなった。 |
マチルダ | 今の私が背負うべき任務は、命を省みず戦うことではなく、 自らを万全の状態に保ち、 この国の未来のため、長きにわたりこの身を捧げることだ。 |
マチルダ | ……よって、私は貴銃士のマスターから退く。 この薔薇の傷を、絶対高貴で完治させてほしい。 |
マチルダ | そして、もう1つは……私がマスターを退くに伴って、 今後のアウトレイジャー討伐に、君たちの力を借りたい。 |
マチルダ | 私とファルは、ベルギー国内だけではなく、 周辺諸国の要請に応じて、 国外でもアウトレイジャー討伐を引き受けていた。 |
マチルダ | ベルギーは世界帝の武器工場ではなく世界連合の一員である、 という連帯を示すために。 |
マチルダ | 今後は、今まで通りともいかなくなる。 貴銃士がいなくなるのだからな。 |
マチルダ | ……もしもの時には、どうか力を貸してくれ。 |
主人公 | 【わかりました】 【任せてください!】 |
ライク・ツー | おう、戦闘なら、家庭教師よりは気乗りするぜ。 |
十手 | その……マチルダ殿。 君がマスターではなくなるということは、 ベルギーの貴銃士たちはどうなるんだい……? |
マチルダ | ファルとミカエルについては、連合軍に管理を委ねる。 |
マチルダ | ミカエルは……すでに耳に入っているだろうが、 かつて世界帝軍にいたのと同じ個体だ。 |
マチルダ | しかし、以前の記憶はほとんどなく、 例の事件の際にも、我々への情報提供を行うなど協力的だった。 |
マチルダ | そこで、連合軍ベルギー支部としては、 多くの貴銃士を束ねる士官学校のマスターが希望するなら、 召銃してよいという判断を下しているそうだ。 |
マチルダ | ファルについては……損傷が激しく、 試してはみたが、召銃はできない状態だ。 |
マチルダ | ……召銃に成功したところで、 尋問を行ったのち処分となる可能性もある。 |
ライク・ツー | …………。 |
十手 | カトラリー君についてはどうなるんだい? その……シャルロット殿は、 随分と立場が変わってしまっただろう。 |
マチルダ | ああ、カトラリーについてだが── |
──コンコン
シャルロット | ……マチルダ。 わたくしから説明させてくださいな。 |
---|
シャルロット | ……父が投獄され、路頭に迷っていたわたくしに マチルダが手を差し伸べてくれました。 |
---|---|
シャルロット | 今まで彼女にしていた仕打ちが許されるとは思っておりません。 現代銃の貴銃士のマスターとして傷つきながら戦っていた彼女を わたくしは助けることができなかった。 |
シャルロット | ……カトラリーを絶対高貴に導けなかったのですから。 |
シャルロット | それどころか、絶対高貴への焦りが募って カトラリーにもつらく当たってしまい、 ……お世辞にも、マスターとしてふさわしい人間ではなかった。 |
カトラリー | …………。 僕のことが嫌いだったんじゃなかったの? |
シャルロット | 違うわ! 嫌いなのは……── |
シャルロット | 嫌いなのは、むしろ……素直になれないで、 外面ばかり取り繕っている自分自身よ。 |
カトラリー | ……そっか。 |
シャルロット | 〇〇さん。 実は……わたくしも貴銃士のマスターを退くことに決めたのです。 |
シャルロット | 力不足の未熟なマスターでは、 きっとカトラリーを絶対高貴に導いてあげることができない。 |
シャルロット | あなたたちに、カトラリーをお任せしたいと思っているのです。 |
主人公 | 【カトラリーの気持ちは……?】 【一方的には決めたくありません】 |
シャルロット | ……! そう、ですね。わたくしの悪い癖が出てしまいましたわ。 |
シャルロット | ……カトラリー、どうかしら? |
カトラリー | ……いいよ。 ミカエルもいなくなっちゃうし、 シャルロットもこれから忙しくなるんでしょ? |
カトラリー | 僕は、士官学校でも暮らしていけるし。 別に問題ないよ。 |
シャルロット | カトラリー……ありがとう。 あなたが今度こそ、伸び伸びと暮らせることを願っているわ。 |
シャルロット | では……〇〇さん、十手さん。 お願いしてもいいかしら。 |
主人公 | 【わかりました】 【十手、お願い】 |
十手 | ああ、任せてくれ! |
薔薇の傷を治そうと近づいた十手に、
シャルロットは小声でささやく。
シャルロット | ねぇ、十手さん。 |
---|---|
シャルロット | カトラリーは、あなたにとても心を許しているみたい。 ……どうか、あの子をよろしくお願いいたしますね。 |
十手 | ああ、合点だ。 |
十手 | それじゃあ、マチルダ殿の傷も合わせて── |
十手 | ──絶対高貴! |
絶対高貴の光が、2人の薔薇の傷に降り注ぐ。
薔薇の傷が消えていくのと同時に、
ミカエルとカトラリーの姿も揺らぎ始める。
ミカエル | ああ……この感覚を、知っている気がする……。 |
---|---|
カトラリー | ……じゃあね、シャルロット。 今まで……ありがと。一応。 |
シャルロット | こちらこそありがとう、カトラリー。 元気でいてね。 |
〇〇は、銃に戻った2挺へ、
順番に手を触れていく。
カトラリー | …………。 えーっと……よろしく、〇〇。 |
---|---|
カトラリー | タイヤキは美味しかったけど、 僕のマスターなら、食事のマナーは完璧にしててよね。 |
ライク・ツー | ……相変わらずのクソガキだな。 |
カトラリー | なっ……・、僕は当たり前のこと言っただけでしょ! |
十手 | ははは、カトラリー君はまた俺たちと食事したいって 言ってくれているんだよな。 楽しみにしているよ。 |
続いて、〇〇はミカエルの銃に触れる。
ミカエル | よろしく、〇〇。 ……士官学校には、ピアノはあるのかな。 |
---|---|
主人公 | 【音楽室にあるよ】 【グランドピアノがあるよ】 |
ミカエル | そう。それはいいね。 |
ライク・ツー | 揺らぎねぇな……。 |
マチルダ | ……ファルについてだが、 修繕が終わり次第、イギリスに届けさせるつもりだ。 |
マチルダ | 現状、ベルギー支部では扱いに困っている部分があってな。 再び奪われる危険もあるため、 貴銃士の扱いに長けたフィルクレヴァートに預けたがっている。 |
マチルダ | 奴の願ったように、このまま捨て置くか、 いっそ粉々に破壊してやった方がいいのかもしれないが…… 連合軍では、尋問したいという意見も多いのだろう。 |
マチルダ | 銃として機能するよう徹底的に修繕をして、 召銃を試みるという結論に至るかもしれない。 このあたりは、追々また相談することになるはずだ。 |
十手 | …………。 |
ライク・ツー | …………。 |
エフ | 信じてたのに……ファルちゃん……! |
---|---|
アインス | ……これが、お前の出した結論ということか。 |
ライク・ツー | (あれは、元世界帝軍の貴銃士、アインスとエフ……) |
---|---|
ライク・ツー | (ということは、護送途中で銃を奪ったのは、 世界帝軍に恨みを持つ奴らじゃなくて、 トルレ・シャフ……で確定か) |
ライク・ツー | (なら、UL85A1もトルレ・シャフ側にいる……? 無事で……また召銃されてる可能性も──) |
十手 | ライク・ツー君? どうしたんだい、怖い顔をして……。 |
ライク・ツー | ……いや、なんでもねぇ。 |
──数カ月後。
カトラリーとミカエルが士官学校での生活にも
慣れてきた頃。
シャルロット | ごきげんよう、〇〇さん。 |
---|---|
十手 | シャルロット殿! |
カトラリー | ……久しぶり。今日は何しに来たわけ? |
シャルロット | カトラリー! それに、十手さんにミカエルも。 |
シャルロット | お久しぶりです。 本日は、マチルダの代理で参りましたの。 |
シャルロット | ……これを。 |
シャルロットが差し出したのは、KB FALLだった。
ラッセル | これが例の……。 |
---|---|
シャルロット | 損傷が激しく。修理に時間がかかってしまいましたが……。 どうにか以前と同じ状態になりました。 |
シャルロット | 連合軍の要求通り尋問をするにせよ、ここに残ってもらうにせよ、 まずは召銃しなくてはいけません。 |
シャルロット | ですが……修復はしたものの、 召銃には応じなかったということにして、 このままの方がいいのでは……と、マチルダは言っています。 |
ミカエル | ……〇〇。 きみは、ファルをどうするの? |
ファル | 感情があって苦しむとしたら、お前のせいだ。 |
---|
〇〇の脳裏に、
ファルの苦しげな顔が思い出される。
主人公 | 【召銃しない方がいいのかもしれない】 【マチルダさんの言う通りだとは思う】 |
---|---|
主人公 | 【でも、話をしないといけない】 【それでも、聞かないといけないことがある】 |
ミカエル | ……! |
シャルロット | わかりました。 わたくしたちは〇〇さんにお任せします。 あなたなら……ファルを救えるかもしれませんし。 |
シャルロット | だって……カトラリー、聞きましたわ。 あなた、ついに目覚めたのでしょう? ふふっ、すごいわ……! |
カトラリー | 別に……割とみんな使えてるし、そんなにすごくないけど。 |
十手 | いやいや、照れることはないよ。 カトラリー君は本当に頑張っていたんだ。 自分でもちゃあんと誇っていいと思うぞ! |
カトラリー | ……ふぅん、そう……? |
カトラリー | …………。 遠路はるばる、わざわざ来たわけだし? 絶対高貴、見せてあげてもいいけど。 |
シャルロット | まあ……! 本当ですの? それは素敵だわ……! |
カトラリー | それじゃ、いくよ。 |
カトラリー | ……絶対高貴……っ! |
シャルロット | あ……っ! |
シャルロット | なんて……なんて優しくて、清らかな光……。 体中が、きれいなものでいっぱいになるみたい……。 |
シャルロット | これが、あなたの高貴なのね。 ……おめでとう、カトラリー。 ……おめでとう……っ。 |
カトラリー | ……うん。 ……ありがと。 |
シャルロットを見送った後、〇〇たちは
警戒態勢の下でファルを召銃することにした。
ラッセル | 見た目には普通のKB FALLだが…… 焼けて酷く損傷していたのだろう? 一度はそんな状態になった銃を、本当に召銃できるのか……? |
---|---|
ライク・ツー | ……ま、なるようにしかならねぇだろ。 |
〇〇が、そっとファルの本体に触れる。
ファル | ……っ! |
---|---|
主人公 | 【大丈夫?】 【おかえり】 |
ファル | ……? あなたは── |
ミカエル | ああ、ファル……また会えて嬉しいよ。 |
ライク・ツー | へぇ……あんなになったらもう無理だと思ったけど。 貴銃士ってずぶといんだな。 いや、この場合はこいつだからか。 |
ミカエル | カトラリー? きみもこちらへ来たら。ほら。 |
カトラリー | ……! |
カトラリー | ううん……僕はここでいい。 |
カトラリー | でも……その……良かった、……ね。 僕、てっきりもう……。 |
カトラリー | ……良かった、ファル。 ……良かっ、た……! |
ファル | …………。 |
ミカエル | ファル……? |
ファルは何もしゃべらず、
ただ微笑みを浮かべて、周囲の様子を眺めている。
ファル | 皆さん、何か喜ばしいことでも? |
---|---|
ライク・ツー | そんな冗談言うタイプだっけ、お前。 見りゃ分かんだろ。 こいつらはお前と再会できて喜んでんだよ。 |
ファル | 再会……? 私は皆さんと『初対面』ですが……。 |
ファルはまっさらな微笑みをたたえて、
〇〇たちに応対する。
ファル | 記憶喪失──というやつでしょうか。 ふふ……面白いですねぇ。 |
---|---|
ミカエル | …………。 |
ファル | それで、皆さん。 私は今、あなた方に何を期待されてるんでしょうか? 期待には応えますよ。 |
ファル | 世界4大アサルトライフルの1つと言われる このKB FALLが、迅速かつむごたらしく、 始末して差し上げましょう。 |
ミカエル | ……なるほど。きみはそれを選んだんだね。 |
ミカエル | ──うん、僕が好きな、澄んだ音だ……。 |
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