ラッセル | 山の麓には、タントケールという廃村がある。 |
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ラッセル | いまは無人のはずだが、 そこを拠点にしている可能性も考えられる。 |
ラッセル | 複数のアウトレイジャーが潜伏しているかもしれない。 十分に注意して── |
UL85A2 | 御託はいいから、さっさと行かせろ。 おい、もっとスピード出ねぇのか! |
運転手 | ヒッ……! す、すみません! |
ラッセル | 君、無茶を言うな。かなりの悪路だぞ! これでもできる限り速度は出させている。 |
ラッセル | すまなかったな。 運転に集中してくれ。 |
運転手 | はいっ! |
UL85A2 | ……ったく、雑魚どもが……。 で? あと、どれくらいで着くんだよ。 |
ラッセル | ……2時間だ。 |
UL85A2 | 2時間……!? |
UL85A2 | はぁ~っ、やってられねぇ! この狭苦しいショボい車内で、2時間か。 |
UL96A1 | なぁ、男。 |
ラッセル | 男、ではない。私の名前はラッセルだ。 |
UL96A1 | ……どうでもいい。 |
ラッセル | どうでもよくない! |
UL96A1 | とにかくだ。 俺はできればマスターの隣に座りたい。 |
UL96A1 | 俺はマスターの銃だ。 もちろん、マスターさえよければ……だが。 |
ラッセル | ほう? どうする、〇〇君。 |
主人公 | 【そうしたいなら、どうぞ】 【もちろん、いいよ】 |
UL96A1 | ありがとう、マスター。 |
ラッセル | マスターの銃、か。 |
ラッセル | 〇〇君。 君は本当に、彼を…… UL96A1を大事にしていたんだな。 |
ラッセル | しかし──彼らの名前は少し呼びづらいな。 |
主人公 | 【ニックネームが必要かもしれません】 【呼び名を作りましょう】 |
UL96A1 | マスターが、俺に名前をつけてくれるのか? |
主人公 | 【UL96A1のプロトタイプにちなんで……】 【マークス、なんてどう?】 |
マークス | ……マー、クス。 |
マークス | マークス。 今から俺の名前は、マークスだ。 |
マークス | ありがとう、マスター。 |
UL85A2 | けっ。 |
ラッセル | 君の方はどうする? |
UL85A2 | どーでもいい。 |
ラッセル | UL85A2は先の革命戦争中は、 「ライク・ツー」と呼ばれていたそうだが……。 |
UL85A2 | …………。 |
ラッセル | 世界帝軍の貴銃士と同じというのは、 さすがに縁起が悪い。 |
ラッセル | 別の名前に変えた方がいいな。 |
UL85A2 | ……いや。 そのままの方が、都合がいい。 |
UL85A2 | トルレ・シャフってのは世界帝派の組織なんだろ? |
UL85A2 | 俺の名前を──「ライク・ツー」の名前を聞いて、 向こうから接触してくるかもしれない。 |
UL85A2 | まあ、ノコノコやってきたところを、 ボッコボコにしてやるけどな。 |
ラッセル | しかし、いいのか? 逆に連合軍からは誤解される可能性もある。 |
ライク・ツー | ああ、構わない。 俺の名前は、ライク・ツーだ。 |
ラッセル | ……そうか。 ともかく、これで決まりだな。 |
ラッセル | それじゃあ、マークス、それにライク・ツー。 |
ラッセル | 俺はラッセル・ブルースマイル。 世界連合軍の曹長。 そして、フィルクレヴァート連合士官学校の教官だ。 |
ラッセル | 改めて、よろしく! |
マークス&ライク・ツー | …………。 |
ラッセル | …………。 |
ラッセルが差し出した手は宙に漂い、
車内には沈黙が流れた。
……ラッセルの笑顔が凍っている。
主人公 | 【ほら、握手して】 【教官に失礼だよ】 |
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マークス | …………。 よろしく。 |
ライク・ツー | よろしくおねがいしまーす。 ……チッ。 |
ラッセル | あ、ありがとう……。 ハハハ……。 |
全員 | …………。 |
ラッセル | ……とにかく。 アウトレイジャーは危険だ。 現地に着く前に、できる限り対策を講じたい。 |
ラッセル | マークス。 アウトレイジャーと戦った時の状況を教えてくれ。 |
マークス | ……はっきりとは覚えていない。 マスターに呼び覚まされてすぐ、 目の前の敵を無力化するために動いた。 |
マークス | だが、奴に俺の銃弾は──効かなかった。 何か特殊な膜で防衛しているような…… そんな感じだった。 |
マークス | 手間取っているうちに、 奴らのうちの1人を取り逃がした。 そいつがマスターへ銃口を向けて── |
アウトレイジャー | ──殺ス。 |
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マークス | (しまった! このままだと、マスターが──) |
マークス | (いや、だめだ! 絶対にそうはさせない。 何をしても、どんな手を使っても、 目の前の敵を──殺す!) |
マークス | そう決意したとき、声がしたんだ。 地鳴りっつーのか……? そういう、 低くて歪でぞっとする声──そいつが俺に言った。 |
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マークス | 「どんな手段を使っても、 どんな代償を払っても、 何かを成し遂げるだけの力が欲しいか」……って。 |
マークス | どこから聞こえたのかわからない。 それが正しかったのかもわからない。 だけど、俺は無我夢中でその力に手を伸ばした。 |
マークス | ──『絶対非道』。 |
---|
マークス | ……で。 そっから先は、マスターも見ていてくれた通りだ。 |
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ライク・ツー | ……絶対、非道……。 |
ラッセル | ふむ…… マークス、1つ質問をしていいか。 |
ラッセル | なぜ君は、そこまで〇〇君を 大事に思っているんだ? |
マークス | ……? 質問の意味がわからない。 |
マークス | 俺はマスターのために貴銃士として生を得た。 マスターのためにならなくて、なんになる? |
マークス | マスターは、俺を手にしたその日から、 俺のことを本当に大切にしてくれた。 メンテナンスを一日だって欠かしたことはない。 |
マークス | 時にはマスター自身よりも 俺のことを大事にしてくれていたんだ。 |
マークス | だから、俺はマスターを守りたい。 どんな手段だろうと、何をしてでも、絶対に。 |
マークス | そのために、俺は誰も信用しない。 アウトレイジャーも、カサリステも。 |
マークス | ……お前らもな。 |
ラッセル | …………。 |
マークス | カサリステに手を貸すことは、マスターが決めた。 だから、俺はそれに従う。 |
マークス | だが、俺とマスターの邪魔にならないように動けよ。 いいな? |
ライク・ツー | はぁー……。 |
ラッセル | ……ははは。ご忠告どうも。 なるほどね。よくわかったよ。 |
ラッセル | ライク・ツー、君にも聞いておきたい。 君にとって一番大事なものはなんだい? 〇〇君ではなさそうだが……。 |
ライク・ツー | …………。 …………めーよばんかい? |
ラッセル | ……えっ? |
ライク・ツー | ……なんでもない。 そんな話、今はどーだっていいだろうが。 |
ライク・ツー | ……とりあえず、そうだな。 |
ライク・ツー | こいつみたいに暑苦しいこと言うつもりはないけど、 少なくとも、マスターを死なせることはねぇよ。 |
ライク・ツー | こいつが死ねば、俺も消えることになるからな。 マスターと貴銃士ってのはそういうもんだ。 |
ライク・ツー | ──それに。 |
ライク・ツー | 俺が今からぶっ殺しに行くのは、 こいつの親友の仇なんだからな。 |
ライク・ツー | きょーりょくかんけー、ってやつだ。 だろ? |
主人公 | 【そうだね】 【ありがとう】 |
ラッセル | 協力関係、いい言葉だな。 私にもかつてそういう仲間が……。 |
ライク・ツー | あ、そういうのいいんで。 |
ライク・ツー | 俺、聞かれたことには答えたし。 はい、無駄話はおしまーい。 |
ラッセル | う……。 |
ラッセル | これでも一応、校内では 人望のある方だと思っていたんだが。 |
ラッセル | さすが、貴銃士様というべきか……。 |
ラッセル | 今のは……!? |
ライク・ツー | おい、外を見ろ。 あれは……。 |
アウトレイジャー | …………。 |
マークス | ──アウトレイジャーだ! |
マークス | ──アウトレイジャーだ! |
---|---|
ラッセル | なんだって! |
運転手 | お前ら、手を挙げろっ! |
ラッセル | ……!? ど、どうして私たちに銃を向ける!? そ、そんな、どういうことだ……。 |
ライク・ツー | おらっ! |
運転手 | ぐはっ!? |
ラッセル | ライク・ツー! た、助かった。 |
ライク・ツー | ……はーぁ。 これだから雑魚は。 最初から、こいつがグルだったんだよ。 |
ラッセル | なに!? |
ライク・ツー | 外、見てみろよ。 道が一本ズレてんだろ。 |
ラッセル | なっ!? ……ほ、本当だ。 |
ライク・ツー | さっきの分かれ道で、 タントケール行きの標識を無視して走ってただろ。 |
ライク・ツー | まさかとは思うが、気づいてなかった ……とか言わないよな? |
マークス | ……くそっ。 俺としたことが……! |
ラッセル | …………。 |
ライク・ツー | ……ハァ。 なんでこんな雑魚どもと一緒に……。 おら、とっとと外の奴ら片付けんぞ。 |
マークス | ──絶対非道! |
---|
マークスの放つ力が、アウトレイジャーたちを
無力化していく。
右手に、あの激痛が走る。
まるで、突き刺されるような──
激しい苦痛が全身を蝕むような感覚に、
思わず腕を押さえる。
マークスのまとう絶対非道が禍々しさを増すたびに、
力を吸い取られているような、意識が遠くなるような、
そんな感覚に陥っていく。
ラッセル | な、なんだこの戦いは……っ! ありえない、俺の理解を超えている! |
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マークス | マスターに危害を加える奴は、全員俺が── |
ライク・ツー | 待て、やめろ! |
ライク・ツー | 〇〇の様子がおかしい。 薔薇の傷跡が開いて……出血してる! |
マークス | …………! |
ライク・ツー | どんな手段を使っても、 どんな代償を払っても……そういうことか。 |
ライク・ツー | 絶対非道の代償は、マスターの生命力だ。 |
マークス | なっ……!? |
ライク・ツー | 自分の主人であるマスターの命を削ってでも、 この瞬間を乗り切りたい…… それが絶対非道っつーわけ……。 |
マークス | そ、それじゃ、俺は……。 |
主人公 | 【自分のことは、気にしないで……】 【大丈夫……!】 |
マークス | だ、だがマスター、俺は……。 俺は、マスターを傷つけるわけには……ッ! |
アウトレイジャーたち | ぐッ!? な……ぁ……っ! |
ライク・ツー&マークス | !? |
マークス | いったい誰が……! |
ラッセル | っ、あれを見ろ! |
??? | …………。 |
??? | よォ~、コンニチハぁ。 |
??? | ……貴様らが我らが秘宝を盗んだ罪人か。 |
ライク・ツー | 貴銃士……。 |
ラッセル | 貴銃士!? さっきのもこいつがやったのか!? |
??? | ……愚かな。 |
??? | 愚かなァァァァッ!! |
??? | 我らトルレ・シャフの邪魔だてをするとは! これだから愚民というものは駄目なのだ。 |
??? | 他人の不幸を想像もせず、 無知を恥じらうこともせずのうのうと生を貪るばかり! |
??? | 出た、出た。 ガンマ様の時間の無駄トーク。 |
??? | 殺せばいいんだよォ~、ゴミなんて。 |
ラッセル | な……なんだこいつらは!? 常軌を逸してるぞ! |
ガンマ | 痛みを知らぬ愚民には躾をしなくてはァッ! 唸れ、我が鞭よ! |
ガンマ | 我が名はガンマッ! 偉大なる世界帝、羊飼いの──鞭ッ! |
ガンマ | 行くぞ、スケレット! |
スケレット | へいへい。 |
ガンマ | 躾ッ、躾だ!! |
スケレット | ちょろちょろ逃げんなよ~ウジ虫ども! |
全員 | ……!? |
---|---|
マークス | こいつ……強いぞ! |
ラッセル | 聞いたことがある……。 トルレ・シャフの構成員は杖、笛、鞭という3つの 役職に分かれており、鞭はその中でも戦闘部隊……! |
ラッセル | 貴銃士とマスターのペアで行動し、 有事の際にはその強い殺傷能力で 目標を完全に破壊し尽くすという……! |
ライク・ツー | じゃあ、敵の中でもやる気のある奴ってことかよ! こんな時にラッキーだなぁ、おい! |
スケレット | だーかーら、逃げんなって! かかって来いよオラぁ!! はっはっはァ!! |
マークス | ぐあっ! |
ライク・ツー | マークス! |
ライク・ツー | チッ。おい、なんだよこの状況。 こんなところで終わるわけにはいかねぇっつーの! |
ライク・ツー | 貴銃士になった目的を、俺はまだ…… 何も……! |
──ガ──シイカ──
ライク・ツー | ……っ! |
---|
──ドンナ手段ヲ使ッテモ、
ドンナ代償ヲ払ッテモ──
何カヲ成シ遂ゲルダケノ力ガ欲シイカ──
ライク・ツー | お前か……待ってたぜ。 ああ、そうだ……力が欲しい。 どんな手を使ってもいい。 |
---|---|
ライク・ツー | 〇〇、耐えろよ! |
ライク・ツー | どんな手段を使っても、俺は……、 僕は二度と、負け犬にはならないっ! |
ライク・ツー | ──絶対非道! |
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