ジョージ | よし、十手のおっさん、やってくれ! |
---|---|
十手 | がってん承知の助だ! いくぞ、そぉーれっ! |
私兵たち | なんだ、霧か!? |
私兵たち | 違う、煙幕だっ! くそっ、何も見えない……! |
ロジェ | 殺、せ……! |
ロジェ | 殺せ、殺せーッ! |
私兵リーダー | し、しかしっ! |
ジョージ | させるかよ! ──絶対高貴! |
私兵リーダー | 貴銃士! いつの間に!? |
私兵たち | ロジェ様に、何を……! |
ジョージ | ちょっとした荒療治さ。 |
ロジェ | ア、ァ……やめろ、薔薇の傷が……! |
絶対高貴の光によって、
ロジェの手に刻まれていた薔薇の傷が、
みるみる消えていく。
ロジェ | …………! |
---|---|
ジョージ | これでもう、おまえはシャルルのマスターじゃない。 シャルルヴィルは──自由だ。 |
ロジェ | ここ、は……? 私は一体、何をしていた……? |
私兵たち | おい、貴銃士がいるぞ! |
私兵たち | 全員銃を構えろ! |
ジョージ | くっ……! |
ロジェ | な、なぜ貴銃士と戦っているんだ? 攻撃やめ! 全員、ただちに武器を下ろせ! |
ジョージ | ……へっ? |
私兵リーダー | 聞こえただろう! 全員、銃を下ろせ! ロジェ様の命令だ! |
私兵たち | はっ! |
ジョージ | ……シャルル。 |
シャルルヴィル | ありがとう、ジョージ。 〇〇。みんな……。 |
雨に濡れ、土埃と泥にまみれていても、
シャルルヴィルの笑顔は一点の曇りもなく、美しい。
誰もが言葉を失うなか、
シャルルヴィルは光の粒となって、
空気へ解けゆくように消えていった──。
ジョージ | マスター。 ……シャルルを、頼む。 |
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主人公 | 【わかった】 【任せて】 |
地面に横たわる、
すらりと細長いマスケット銃を拾い上げる。
ロジェ | ああ……この光は、あの日の……。 |
---|---|
シャルルヴィル | ロジェ様──ううん、ロジェさん。 今までありがとう、なんて、正直言えない。 |
シャルルヴィル | だけど……ごめんね。 |
シャルルヴィル | ボクは結局、絶対高貴になれないままだった。 あなたの言いなりになって、 フランスの人たちに大きな嘘を吐き続けた。 |
シャルルヴィル | 嘘とまやかしでフランスの人々を騙すようなこと、 本当はやめたかったし、止めたかった。 |
シャルルヴィル | だけど、ボクは…… これくらいしかできないから仕方ないって、 ずっと、自分をごまかしてた……。 |
シャルルヴィル | ボクが弱かったせいで、 あなたを止められなくてごめん。 絶対高貴になれなくて、ごめん。 |
ロジェ | シャルルヴィル……。 |
ロジェ | 謝るべきは、私の方だ。 私はなぜ君にあんな酷いことをしてしまったのか……。 |
シャルルヴィル | ……もう、いいんだ。 ボクは、変わるって決めたから。 過去を引きずったりしない。 |
シャルルヴィル | これからは、自分をちゃんと信じる。 ジョージや〇〇が、 ボクを信じてくれたみたいに。 |
シャルルヴィル | それから、自分の生き方は自分で決めるんだ。 行き先も、目的も、旅路も、全部! |
シャルルヴィル | そして──時間はかかるかもしれないけど、 ボクは必ず、絶対高貴に目覚める。 ベスくんとの約束を、果たすんだ。 |
ジョージ | シャルル……! |
シャルルヴィル | ボクは……ボク自身の力で、 本当の本当にみんなを助けたいから。 |
強い覚悟を込めてシャルルヴィルが言った途端、
彼の身体が、淡く光り輝きはじめる。
シャルルヴィル | ……えっ、何、これ……? |
---|---|
ジョージ | シャルル、やったな……! おまえなら、ぜってー絶対高貴になれるって思ってた! |
シャルルヴィル | 絶対高貴……これが……? ボク、絶対高貴になれたの……!? |
ロジェ | …………! |
ロジェ | (ああ、なんて美しい光なんだ──) |
ロジェ | (彼を貶めていた私の目は、 なんと濁っていたのだろう) |
ロジェ | (シャルルヴィルは、こんなにも強く、美しい。 まるで、谷に咲く、一輪の白百合のように……) |
ジョージ | ──ってわけで、報告は以上! |
---|---|
ジョージ | 今日からシャルルも、オレたちと一緒に 士官学校の貴銃士クラスに入れてくれよ。 よろしくなっ! |
ラッセル | …………。 |
ラッセル | き、君たちは……。 一体何をどうしたら、こうも次々と とんでもないことばかりしでかせるのか……。 |
ジョージ | へへっ! 照れるなぁ。 |
ライク・ツー | いや、褒められてねぇから。 |
ラッセル | いいかい、君たちはお茶会に行ったはずだろう!? |
ラッセル | それがどういうわけか、フランス最大の貴族、 リリエンフェルト家の私兵と交戦! |
ラッセル | 一部を負傷させたうえに、貴銃士シャルルヴィルを 我が物として持ち帰ってきたんだぞ!? |
ラッセル | じょ、情報過多だ! |
マークス | 先に仕掛けてきたのはあっちだぞ。 マスターが「戦う気はない」と言ってやったのに、 やたらめったら撃ちまくってきやがった。 |
シャスポー | 彼の言う通り。僕たちは正当防衛だ。 それに……あの時のロジェは、 とてもまともだとは思えなかったよ。 |
タバティエール | だな。とんでもなく飛躍した被害妄想をまくし立てるわ こっちの話を聞く気はゼロだわ……。 おまけに「殺せ!」って叫んでるのも聞こえたぜ。 |
ラッセル | なっ……、彼がそんなことを……!? |
ジョージ | オレが薔薇の傷を治したら、 なんかボーゼンとして、正気に戻ってたけどな。 |
ジョージ | あれがなかったら、オレ、蜂の巣にされてたかも。 HAHAHA! |
ラッセル | 笑いごとではないだろう……。 はぁ……。 |
ラッセル | …………。 |
ラッセル | とにかく、事情はおおよそわかった。 幸いにして、リリエンフェルト家からの抗議もない。 |
ラッセル | それどころか、深刻な誤解が生じて、 誤って交戦に至ってしまったと謝罪があった。 |
シャルルヴィル | ……! ロジェさん……。 |
ラッセル | いずれにせよ、報告も相談もなしでの 勝手な行動については咎めるべきだが……。 |
ラッセル | まずは、私個人として言うぞ。 |
ラッセル | ……よく、無事に戻ってきた。 |
ラッセル | 極限状況の中で君たちは最善の選択をし、 誰1人として欠けることなく無事に生還した。 そのことを嬉しく、誇らしく思う。 |
ジョージ | へへっ! 今度こそ褒められたなっ! |
ラッセル | ただし! |
ラッセル | 報告もなしに勝手をしたからには相応の処分が必要だ。 まずは、外出禁止2週間! 構内美化奉仕活動1ヶ月! |
ライク・ツー | はぁっ!? |
ジョージ | うっそだろ!? |
ラッセル | 文句は受け付けない。これは決定事項だ。 返事は? |
主人公 | 【イエッサー!】 |
ラッセル | よろしい。 ……さぁ、みんな早く寮に戻って休みなさい。 |
貴銃士たちが続々と退出するなか、
ジョージがふと、足を止める。
主人公 | 【ジョージ?】 【どうした?】 |
---|---|
ジョージ | いや……。 これ、どっかで直してもらえねーかなぁと思って。 |
ラッセル | ん……? それは、羅針盤かい? |
ジョージ | ああ。でも、針も歪んでるし、 ガラスも割れちまってるんだ。 |
ラッセル | ふむ……。 少し手がかかりそうだが、直せないこともなさそうだ。 |
ジョージ | えっ、本当に直るのか!? |
ラッセル | 安請け合いはできないが、おそらく。 こういう作業は得意でね。 |
ラッセル | 君たちの外出禁止が解けるころまでには、 修理を終わらせて返却しよう。 |
ジョージ | うおぉぉぉっ! マジか! Thank you!!! |
ジョージ | あ、そうだ、なんかお礼! ポケットに何か入ってたかな~。 |
ラッセル | ……古いお菓子なんかは遠慮しておくぞ。 |
ジョージ | ──あっ。 そういえば、コレのこと忘れてた。 |
ジョージがポケットから取り出したのは、
小さな透明の結晶だった。
主人公 | 【これは?】 |
---|---|
ジョージ | ロジェの薔薇の傷を治したあと、 気づいたら近くに落ちてたんだ。 |
ジョージ | 綺麗だったし、一応拾ってきたんだけど。 よかったらそれいるか? |
ラッセル | ほう……。 薔薇の傷の治療の際に、か。 |
ラッセル | 興味深い。これは私の方で預かって、 カサリステでの分析に回しておくことにするよ。 |
ラッセル | これからも見かけたら持ってきてくれないか? |
ジョージ | ああ、了解! じゃあ、羅針盤の修理はよろしくな! |
ラッセル | ああ。仕上がりを楽しみにしていてくれ。 |
ラッセル | この結晶──。 |
---|---|
ラッセル | …………。 |
──シャルルヴィルが
士官学校にやって来てしばらく。
シャルルヴィル | ……あ、いたいた! |
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シャスポー | シャルルヴィル……先輩。 僕になにかご用ですか? |
グラース | お前に用事なわけないだろ。 |
タバティエール | はいはい、2人とも張り合うなって。 |
シャスポー&グラース | 張り合ってない! |
シャスポー&グラース | …………。 |
シャルルヴィル | あははっ、さすが兄弟銃、息ピッタリだね。 今日は、3人にお土産があって来たんだよ。 |
タバティエール | お土産……? ああ、そういえばシャルルくん、 フランスに行ってたんだっけか。 |
シャルルヴィル | Oui♪ せっかく絶対高貴になれるようになったからね、 「癒やし」のお仕事は、続けさせてもらってるんだ。 |
シャルルヴィル | で、今回は晩餐会で テオドールさんとカトリーヌさんに会って、 2人からみんなにってお土産をもらったんだ。 |
シャルルヴィル | はい、どうぞ! カトリーヌさんからは、 焼き菓子のアソート。 |
シャルルヴィル | テオドールさんからは、 フレーバーティーのアソートだよ。 これでお茶会を楽しんで~、だって! |
タバティエール | へぇ、どれも美味そうだな。 さっそくティータイムにするか。 |
主人公 | 【どうしたの?】 【みんなで何してるの?】 |
シャスポー | ああ、〇〇。 それに、恭遠教官も。 ちょうどいいところに来たね。 |
シャスポー | 僕らの前のマスターたちからのお土産を、 シャルルヴィル先輩が届けてくれたんだ。 |
タバティエール | これからティータイムにするんだが、 2人も一緒にどうだ? |
グラース | ……菓子も紅茶もかなり量があるから、 1人や2人加わったところで、特に支障はねぇな。 |
主人公 | 【ありがとう】 【じゃあ、お邪魔しようかな】 |
恭遠 | ありがとう、俺も少しいただくよ。 |
恭遠 | ……シャルルヴィル。 フランス滞在はどうだった? |
シャルルヴィル | すごく楽しかったよ。 ここに来る前は、辛いことが多かったけど……。 |
シャルルヴィル | ボク自身が変われたお陰かな。 もう何も嘘はないし、 前向きな明るい気持ちでみんなに会えるんだ。 |
シャルルヴィル | だから……前よりずっと、 フランスのことが好きになったかも。 |
恭遠 | そうか……! それは何よりだ。 |
主人公 | 【よかったね、シャルル】 【ほっとしたよ】 |
シャルルヴィル | ふふっ……Merci、〇〇♪ |
その日の夜──。
ジョージ | シャルル、ここにいたのか。探したぞ。 |
---|---|
シャルルヴィル | ジョージ。 どうしたの、もう夕食の時間になるでしょう? |
ジョージ | ああ。おまえにこれを渡したくてな。 |
シャルルヴィル | これって……あの羅針盤? すごい、直ってる……! |
ジョージ | やっぱりこれは、おまえが持っててくれよ。 おまえがブラウン・ベスから預かったものだからさ。 |
シャルルヴィル | ふふ。ありがとう、ジョージ。 |
シャルルヴィル | でも、これは君が持っててよ。 もうジョージにあげたものだし。 |
ジョージ | は? いいから受け取っておけよ! ほら、格好いいぞ! |
シャルルヴィル | ふふふ、子供じゃないんだから。 そんなに気に入ってるなら、 なおさらジョージが持っておいてよ。 |
ジョージ | いいから。いつか全部終わって、 貴銃士としての役目もなくなったら…… これ持って、ブラウンと2人で旅にでも行け。 |
ジョージ | ちなみに、おすすめはアメリカな! グランドキャニオンにイエローストーン。 見どころはたくさんあるぜ! |
ジョージ | ま、オレも見に行ったことはないけどな! |
シャルルヴィル | …………。 |
シャルルヴィル | ベスくんと、って……ジョージは? |
ジョージ | オレは、いいよ。 |
シャルルヴィル | え……? |
ジョージ | おまえと旅に出るのは── オレじゃなくてブラウン・ベスだ。 |
ジョージ | あいつが目覚めたら、オレの役目は終わりだし……。 |
シャルルヴィル | ……っ! |
シャルルヴィル | (それって……“ベスくん”の人格が目覚めたら、 ジョージは消えちゃうってこと……?) |
ジョージ | ……なぁ、シャルル。 ここでの暮らしは楽しいか? |
シャルルヴィル | ……うん! すっごく! |
シャルルヴィル | ここにいると色々な人と出会って、 色々な場所に行ける。 |
シャルルヴィル | それに何より…… ボクは自分で決めて、ここに来たんだ。 |
シャルルヴィル | 自分の選んだ場所で、自由に過ごせる。 それだけでも本当に本当に楽しいよ。 |
ジョージ | ……そうか。 |
──誰かのお膳立てはいらない。
ボクは、ボクのやり方で、
困ってる人を助けたい。
まだ、ボクはその1歩を踏み出したばかりだけれど。
……でもここには、ボクを信じてくれる仲間がいる。
ボクは自分に恥じないように、この道を行くよ。
いつかまた君と会った時、誇れるように。
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