メインストーリーⅡ:第6話~第10話

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第6話:心残り

ライク・ツー…………。
遅ぇな。いつまで待たせる気だ?
ジョージ腹減ったぁ……。もう1時間くらい経ったか?
ライク・ツーやっぱり、歓迎されてるってわけじゃなさそうだな。
はぁ……面倒なことになりそうな予感がしやがる。
ジョージライク・ツーは後ろ向きだな~。
お茶会の準備に時間がかかってるだけだって!
……たぶん。
ライク・ツーお前は前向きすぎるだろ……。
ライク・ツー……つーか、シャルルヴィルって、
お前のこと妙に気に入ってないか?
何か心当たりでもあんのかよ。
ジョージん? ……ああ、オレらって、
アメリカ独立戦争での戦友だからな!
主人公【シャルルヴィルはフランスの銃なのに?】
【フランスがアメリカを支援したんだっけ】
ジョージフランスはアメリカを支援してたから、
アメリカ軍側には、
シャルルヴィルがたくさん渡ったんだぜ。
ジョージシャルルもオレも、自由のために立ち上がった
アメリカの人たちの相棒として戦ったんだ。
ジョージそれに……シャルルは、
王室にいたブラウン・ベスと仲が良かったから。
ライク・ツーは……?
ブラウン・ベスなら、今も王室にいるだろ?
ジョージ……あ、うん。そうそう。HAHAHA☆
使用人……失礼いたします。
皆様、大変お待たせいたしました。
使用人茶会の準備が整いましたので、
シャルルヴィル様のお部屋へご案内いたします。
ライク・ツーはぁ、ようやくか。
ジョージ行こうぜ、〇〇!

ジョージよっ、シャルルヴィル!
元気にしてたか?
シャルルヴィルBonjour、〇〇、ジョージ!
ライク・ツーくんまで来てくれるとはびっくりだなぁ。
シャルルヴィルまた皆に会えて嬉しいよ!
ライク・ツー……なんだ、普通に元気そうじゃねぇか。
ジョージなぁ、おまえ、大丈夫か?
スパイみたいな方法で手紙寄越すからびっくりしたぞ!
シャルルヴィルあはは、驚いてくれた?
ちょっとしたサプライズだよ!
シャルルヴィルこの間のことでロジェ様の機嫌を損ねちゃったから、
なるべくこっそり呼びたくてね。
シャルルヴィルでも、そのうちロジェ様の怒りも収まるだろうし、
全然心配いらないよ。
シャルルヴィルさぁ、さっそくティータイムにしよう♪
とっておきのスイーツをたくさん用意してあるんだ!

シャルルヴィルん~! やっぱりマカロン最高♪
ほら、〇〇も遠慮なんてしないで、
好きなものをいっぱい食べてね?
主人公【ありがとう】
シャルルヴィルそういえば、噂で聞いたよ?
士官学校は、どんどん貴銃士が増えてるんだってね。
ライク・ツー……まぁな。
毎日嫌になるくらい賑やかで騒がしい。
ジョージだな!
シャスポーとグラースはほぼ毎日コントしてるし、
エンフィールドとスナイダーも、改造の話で賑やかだ!
ライク・ツーあれをコントって言うのも、
賑やかの一言で片付けるのも違う気がするけどな……・。
シャルルヴィルあははっ。ほんとに楽しそうだね。
シャルルヴィル……ボクにもさ、スプリングフィールドっていう
弟分がいるんだ。
シャルルヴィルボクをモデルに作られた、
アメリカ初の国産マスケット銃でね。
シャルルヴィルいつか君たちのところに
スフィーが召銃される日が来るのかな。
そうしたら会いたいな~、なんて。
ライク・ツー……なぁ。お前、本当に茶会のためだけに、
わざわざこいつらを呼んだのか?
シャルルヴィルえっ……?
ライク・ツーレザール家を使ってまで手紙を届けさせたのは、
大事な用件があったからじゃないのかよ。
シャルルヴィル……っ、それは……。
シャルルヴィル…………。
シャルルヴィル実は……その……。
君たちに伝えたいことっていうか、
謝りたいことがあってね。
シャルルヴィル……ボク、本当は、絶対高貴になれないんだ。
ライク・ツーはぁっ!?
主人公【え……!?】
シャルルヴィルいや、ほんと、騙しててごめんね。
絶対高貴の光で人々を癒やしてるってのも、
ぜーんぶウソ!
シャルルヴィルいつまで経ってもボクが絶対高貴に目覚めないから、
ロジェ様が痺れを切らしちゃってね。
シャルルヴィル光とか、微かに温かい風を吹かせたりとか……
そういう演出をするから、
絶対高貴になれるフリをしろって言われてたんだ。
ジョージ…………。
シャルルヴィル……人って、不思議なものでね。
奇跡を目の当たりにした!って思い込みで、
本当にちょっと具合がよくなったりして。
ライク・ツーはぁ……マジかよ。
んじゃあ、こいつの薔薇の傷を治さなかったのは……。
シャルルヴィル……そう。癒やしの順番待ちで、っていうのはウソ。
本当は治さなかったんじゃなくて、治せなかった。
シャルルヴィル力になれなくて、ごめんね。
シャルルヴィルできることなら、助けたかった。
だけどボク、どう頑張っても絶対高貴になれなくて。
シャルルヴィルそれで……ずっと、みんなのことを騙してた。
本当に、ごめんなさい。
主人公【謝らないでほしい】
【本当のことを言ってくれてありがとう】
シャルルヴィル……ありがとう、〇〇。
シャルルヴィルいきなり変な話しちゃってごめんね!
ほら、どんどん食べて。
ジョージんん! マジで美味いな、これ!
シャルルヴィル気に入ってもらえたならよかった。
余った分はお土産に包むから、ぜひ持って帰ってね。

シャルルヴィル……今日は、来てくれてありがとう。
主人公【またね】
【元気でね】
シャルルヴィル……っ、うん。
ありがとう、〇〇。
ライク・ツー菓子……悪くなかった。
じゃあな。
ジョージじゃあな、シャルル!
シャルルヴィルうん……。
バイバイ、ライク・ツーくん。ジョージ。
シャルルヴィル…………。
シャルルヴィル……さようなら、みんな。
シャルルヴィル……さようなら、ベスくん。

第7話:ふたりの約束

──ブラウン・ベスとの最悪な出会いのあと、
ボクたちは何度か、パーティーや晩餐会で
顔を合わせることがあった。

だけど相変わらず、お互いの印象は悪いまま。
打ち解けられる日が来るなんて、思っていなかった。

ロジェ私は陛下との階段に参加してくる。
お前は近くで大人しくしているように。
シャルルヴィルはい、ロジェ様。
シャルルヴィル……はぁ。気持ち悪い。
外の風にでも当たってこようかな……。

──パリ、ポリ……

シャルルヴィル……んん? 何、この音。
向こうから聞こえてくるような……。
ブラウン・ベス…………。
シャルルヴィル(……ブラウン・ベス!
が、なんで生の人参をポリポリ食べてるの!?)
シャルルヴィルな、何してるの……?
ブラウン・ベス見ればわかるだろ。人参を食べてる。
シャルルヴィルいや、なんで……?
ブラウン・ベスちょっと腹が減ったから。
……おまえも食うか?
シャルルヴィルええっ!? いらないけど……。
ブラウン・ベスそうか。

──パリ、ポリ……

シャルルヴィル…………。
ブラウン・ベス…………。
シャルルヴィルえっと……その……やっぱり、もらってもいい?
ブラウン・ベスおう。

──パリ、ポリ……
──パリ、ポリ……

シャルルヴィル(無言が辛くて食べ始めたけど、
何この状況……!)
ブラウン・ベス……なぁ、シャルルヴィル。
シャルルヴィルへっ、何?
ブラウン・ベスおまえ、絶対高貴になる時は、
どんなことを考えてるんだ?
シャルルヴィルえっ……と……。
シャルルヴィル(そんなこと聞かれたって、
ボク、絶対高貴になれないし……)
シャルルヴィル(でも、ロジェ様から“怪しまれないようにしろ”
ってキツく言われてるから……)
シャルルヴィル……言葉にするのは、ちょっと難しいかなぁ?
そう言う君こそ、、どんなことを考えてるの?
ブラウン・ベス……よく、わからない。
シャルルヴィルええっ、君って絶対高貴になれるのに、
わからないなんてことある?
ブラウン・ベス……っ、それは……!

ブラウン・ベスの顔色が、サッと変わった。
それを見て、“もしかしたら”という思いがよぎる。

シャルルヴィル……ねぇ、まさかとは思うけどさ。
君も……絶対高貴、なれないの?
ブラウン・ベス君“も”って……それじゃあ、おまえもなのか?
シャルルヴィルえっ、ってことは、本当に!?
ブラウン・ベス&シャルルヴィル……!
ブラウン・ベスはぁ……まさか俺たちどっちも、
本当は絶対高貴になれてないとはな。
シャルルヴィルねぇ、君はどうして、
絶対高貴になれるフリをしてるの?
ブラウン・ベスフリっていうか……俺の場合は、誤解だな。
ブラウン・ベス革命戦争の時の貴銃士の戦いをその目で見た奴なんて、
実際にはほとんどいないだろ?
ブラウン・ベスみんながみんな、噂の又聞きみたいな状況で
「貴銃士は絶対高貴という力で戦うらしい」って
ぼんやりした話が広まってる状態だった。
ブラウン・ベスそれが……いつのまにか
「貴銃士とは、よくわからないが絶対高貴らしい」
っていう話に変わっていったみたいなんだ。
ブラウン・ベスで、戴冠式の時、女王陛下のそばにいる俺の姿を見て
「確かに、絶対的な高貴さを放っている!」って
皆がささやきあって……。
ブラウン・ベスいつの間にか、
「ブラウン・ベスは絶対高貴な貴銃士だ」って
言われるようになっちまった。
ブラウン・ベス王室側としても、良い方向の誤解だから、
特別否定する必要もないだろうってスタンスで……。
シャルルヴィルそ、そうなんだ……。
ブラウン・ベスおまえはなんで、
絶対高貴になれることになってんだ?
シャルルヴィルボクのマスター……ロジェ様が、
イギリスのブラウン・ベスは絶対高貴に目覚めてるのに
お前はなんでなれないんだーって言って……。
シャルルヴィルみんなの期待をこれ以上裏切るわけにもいかなくて、
絶対高貴になれるフリをすることになっちゃったんだ。
シャルルヴィル……最初に君に会った時、
正直、すごく焦ってたし、憎たらしかった。
シャルルヴィルボクは絶対高貴になれないのに、どうして……って。
ブラウン・ベス……おいおい、そんなところまで一緒かよ。
ブラウン・ベス「フランスのシャルルヴィルは絶対高貴になれる」
って聞いて……俺も焦ってたし、ムカついてた。
なんでこんなヘラヘラした奴が……って。
シャルルヴィルえっ! じゃあボクたち……。
ブラウン・ベス嘘の情報を信じて、勝手に誤解して、
お互いにピリピリしてたってわけだな。
シャルルヴィル……ふふっ!
ブラウン・ベスく……っ、あははは!
ブラウン・ベスバカみたいだな、俺たち!
シャルルヴィルあはは、本当に!
シャルルヴィル……はー。
こんなに大笑いしたの、初めてだよ。
ブラウン・ベス俺もだ。
シャルルヴィル……あのさ。
今はボクたち2人とも、絶対高貴になれないけど。
いつかは、きっと──
ブラウン・ベスああ。絶対高貴になろうぜ。
シャルルヴィルちょ、ボクのセリフ取らないでよ!
ブラウン・ベスふん。おまえがさっさと言わないのが悪い。
シャルルヴィルベスくんって意地悪だよね……!
ブラウン・ベスはぁ? なんだその呼び方は、気持ち悪いな。
シャルルヴィルいいじゃん!
可愛いし呼びやすいでしょ、ベスくん。
ブラウン・ベス俺は認めないからなっ!
シャルルヴィルあはは、じゃあ勝手に呼ばせてもらうから。
……これからよろしくね。
ブラウン・ベス……ああ。こっちこそ。

──ベスくんは、
ボクの初めての友達で、同志だった。

同じ秘密を共有している仲間がいる。
そう思うだけで、ボクは気が楽になって、
頑張ることができたんだ。


シャルルヴィル…………。
シャルルヴィル……ベスくん。
ボク、もう疲れちゃったよ。
シャルルヴィルやっぱりボクは絶対高貴になれないし、
君も……もう、いなくなっちゃった。
シャルルヴィルだから……もういいよね。
シャルルヴィルボク……、楽になりたいんだ。

第8話:羅針盤 1

ジョージ……あーっ!!!
ライク・ツー……っ、うるせぇ!
いきなりでかい声出すなよ。
主人公【どうしたの?】
ジョージお土産のお菓子持ってくるの忘れちまった!
オレ、ちょっと取りに行ってくる!

──コンコン

ジョージおーい、シャルル! いるか?
悪い、お菓子忘れちまってさ!
シャルルヴィル……! ジョージ……!
シャルルヴィルど、どうしたの?
ジョージ言ったろ、忘れてたお菓子取りに来たって。
どれもすっげー美味かったから、
土産に持って帰らねぇと!
シャルルヴィルあ、ああ……そうだったね。
シャルルヴィル……はい、これ。
お土産なんだから、
途中でジョージが食べちゃ駄目だよ?
ジョージわかってるって!
んじゃ──
シャルルヴィル……あ、待って!
ジョージん? どうした、シャルル。
シャルルヴィルあのね……。
これ、ジョージが持っててくれないかな?
ジョージなんだ、これ?
シャルルヴィル羅針盤だよ。
……もう、壊れちゃって動かないけど。
ジョージ羅針盤……。
ジョージ……?
どっかで見たことあるような……?
ジョージでも、これはシャルルの物だろ?
自分で持ってなくていいのかよ。
シャルルヴィルうん、いいんだ。
ボクにはもう、必要のないものだから。
ジョージに持っていてもらいたいんだ。
ジョージわかった。
そういうことなら、受け取っとく。
ジョージ羅針盤かぁ。
ガラスは割れちまってるけど、格好いいな!
シャルルヴィルふふっ。
……そういうところは、変わらないんだね。
ジョージん? なんか言った?
シャルルヴィルううん。引き止めちゃってごめんね。
今日はロシニョル家に泊まるんだったっけ。
ジョージおう!
シャルルヴィルイギリスまで気をつけて帰ってね。
……本当に、会えてよかった。
ジョージオレも! 元気そうな顔見れてよかったよ。
また会おうな!
シャルルヴィル…………。

ライク・ツージョージの野郎、おっせーな。
また茶でも飲んでるんじゃないだろうな……?
ライク・ツーまた雨が降り出しそうだってのに……。
ジョージ……悪い、遅くなった!
ライク・ツーったく、本当にな。
ほら、さっさとロシニョル家に行くぞ。
ジョージ…………。
ライク・ツーどうした。まだなんか忘れ物かよ。
ジョージいや……。
ライク・ツーなんだよ、調理狂うな。
シャルルヴィルが気になるのか?
ジョージまぁ、な……。
なんか、ちょっと引っかかってて……。
主人公【戻った時、何かあった?】
【話してみてほしい】
ジョージ具体的にどこが、ってのは上手く言えないんだけど、
シャルルの様子が、なんか変だった気がするんだ。
ジョージ手紙を見た時、オレ……
直感的に、「シャルルに会わねぇと!」って思った。
ジョージでも、フツーに元気だったし……
だけど、なーんか引っかかってモヤモヤする……。
ライク・ツー俺はあいつのことよく知らねぇけど、
絶対高貴になれないことぶっちゃけたりしてたし、
色々吹っ切れて性格変わったのかと思ったな。
ジョージあー……確かに、それはあるなぁ。
主人公【明日、また会いに来よう】
【明日、本人に聞いてみよう】
ジョージそれもそうだな!
ジョージ明日の出発前に会ってみて、
まだ変なカンジがしたら、
大丈夫かこっそり聞いてみるよ。
ジョージ……うおっ、雨降ってきた!
急いでロシニョル家行こうぜ!

 

第9話:羅針盤 2

ライク・ツー47……48……49……、50!
ふぅ、いい感じに腹筋に効いてるな。
ジョージおまえってホントにトレーニング好きだよなぁ、
ライク・ツー甘いもの散々食ったんだから、
いつも以上にトレーニングしないと、
身体の感覚が変わっちまうだろ。
ジョージそういうもんかぁ?
ジョージっていうか、あんだけ食ったのに腹減ってきたな!
今日の晩飯なんだろな~。
ジョージナントカカントカのスープのなんたら添えとか、
ほにゃららのナントカ包みとか、
洒落てて美味いもんがいろいろ出るんだろうな!
ジョージオレ、前にフランス来た時は
ほとんど豪華な料理食べてないから、
すっげー楽しみ!
ライク・ツーあー……そういえば、そういう話してたな。

──ガタン!

???お待…………、…………様!
ライク・ツー……なんか騒がしいな。
主人公【どうしたんだろう?】
【様子を見てみよう】
ロシニョル家使用人ロジェ・ド・リリエンフェルト様!
当家のお客人に手荒な真似をされては困ります!
ロジェええい、どけ!
あいつらが関わっているに違いないんだっ!
ジョージあいつって……シャルルのマスターだよな?
ロジェ……! そこにいたか!

〇〇たちをギロリと睨んだロジェは、
10人ほどの私兵を引き連れていて、
一気に緊迫した空気が漂った。

ライク・ツー……これは、随分と穏やかじゃないな。
俺たちになんの用だ。
ライク・ツー変な真似をしようってんなら……
護衛としてきた以上、俺が相手になるけど?
ロジェの私兵……っ!
ロジェ妙な真似をしたのはお前たちの方だろう。
シャルルヴィルを一体どこへやった!?
ジョージへ? シャルル、どっか行っちまったのか?
ロジェとぼけるな!
お前たちが茶会とやらから帰ったあとすぐに、
シャルルヴィルが屋敷から消えた。
ロジェ突然の訪問に、突然の失踪。
これが無関係だと言うのか!?
ライク・ツー過保護だな。別にガキじゃねーんだから、
1人で散歩に行くくらいするだろ。
ロジェ今までシャルルヴィルが
私に黙って姿を消したことなど1度もなかった!
ロジェ今回だって部屋に見張りをつけていたのに──
主人公【見張り……?】
ライク・ツー……ふぅん。
軟禁してるかもって話、マジだったってわけか。
ロジェ……部外者には関係のないことだ。
当家の貴銃士を当家がどう扱おうと、
お前たちにとやかく言われる筋合いはない。
ロジェそれより、早くシャルルヴィルの居場所を吐いてもらおう。
さもないと、こちらにも考えがあるぞ。
ライク・ツーへぇ? どんな考えか、聞かせてもらおうか。
……俺とやり合う覚悟ができてんならな。

一触即発の空気のなか、
駆けてくる足音があった。

カトリーヌロジェ様、お待ちください!
ロジェ……カトリーヌ嬢。
カトリーヌ〇〇さんは、信頼の置ける方です。
何か大きな誤解があるのだと思います。
どうか矛を収めてくださいませんか?
主人公【シャルルヴィルを探しに行きます!】
【我々にも手伝わせてください!】
ロジェ殊勝なふりをして、
どさくさに紛れて逃げるつもりではないだろうな。
カトリーヌロジェ様!
ロジェ…………。
わかりました。カトリーヌ嬢に免じて、
この場は引くことにしましょう。
ロジェとにかく、
一刻でも早くシャルルヴィルを連れ戻すこと。
ロジェもしもシャルルヴィルが見つからなかったら……
フィルクレヴァート士官学校には、
当家から正式に厳重抗議を入れさせていただく。
主人公【わかりました】
【それで構いません】
ロジェ……ふん。
ライク・ツーチッ……なんだったんだよ、あいつ。
カトリーヌまさかロジェ様が、
あのように荒々しく踏み込んでくるなんて……。
一体どうしてしまわれたのでしょう。
カトリーヌ……いえ、それより、
今はシャルルヴィル様の捜索が優先ですね。
カトリーヌわたくしたちもお手伝いします。
主人公【ありがとうございます!】
ジョージシャルル……。
一体、どこに行っちまったんだ……?
主人公【ジョージ、それは?】
【壊れた羅針盤……?】
ジョージさっき、シャルルに渡されたんだ。
オレに持っててほしい、って……。
ブラウン・ベス…………。
ジョージ……っ!
ジョージそうか、これは……。
あの時“あいつ”が渡した……!

第10話:羅針盤 3

シャルルヴィル……ね、見てよ、ベスくん。
ブラウン・ベスだから、その呼び方!
俺は認めないって言ってるだろ。
シャルルヴィルあはは、ごめんごめん。
でもこの呼び方で馴染んじゃってさ。
ブラウン・ベスはぁ……ったく。
んで、何を見ろって?
シャルルヴィルほら、向こうに小さく橋が見えるのわかる?
ノルドール橋っていって、
景色がすごくいいところなんだ。
ブラウン・ベスへぇ……。

少し目を細めたブラウン・ベスは、
懐から見慣れないものを取り出した。

ブラウン・ベスここからだと、南東の方角か。
シャルルヴィルねぇ、この間から気になってたんだけど、
ベスくんが持ってるそれって何?
ブラウン・ベスこれか? 羅針盤だよ。
城の倉庫で埃かぶってたのを見つけたんだ。
シャルルヴィルらしんばん? それって、貴重なものなの?
ブラウン・ベスさぁな。
貴重かどうかは知らねぇけど……格好いいだろ。
シャルルヴィルえっ、そんな理由で持ってきたの?
ブラウン・ベス……? ああ。
シャルルヴィル……ふふっ、あはははっ!
ベスくんって、たまに変なことするよね。
ブラウン・ベスそうか……?
羅針盤は今でも使える実用的なものだぞ。
シャルルヴィルえっ、そうなの?
ブラウン・ベスああ。……見てみろ。
この針が、いつどこにいても北を指すようになってる。
方位磁針とも呼ぶらしい。
ブラウン・ベスこれがあれば、進むべき方角を
正確に知ることができるんだ。
旅に欠かせないアイテムらしい。……すごいだろ?
シャルルヴィルへぇ……!
人は、これを持って旅に出るんだね。
シャルルヴィル旅、かぁ……。
ブラウン・ベスシャルルは、どこか行きたいところでもあるのか?
シャルルヴィルボクは……ここじゃないどこかに行きたい、かな。
シャルルヴィルどこか遠く、うんと遠く……
名前も聞いたことがなくて、
誰もボクのことなんて知らない場所。
シャルルヴィル小さな鞄に最低限の荷物だけ入れて、
行き先も目的も決めないで旅に出たいな。
シャルルヴィル「リリエンフェルト家の貴銃士シャルルヴィル様」
なんかじゃなくて……ただのシャルルヴィルとして。
シャルルヴィルそしたら……自由になれるのかな。
ブラウン・ベス自由、か……。
シャルルヴィル不思議だよね。
シャルルヴィル貴銃士として呼び覚まされて、人の身体を得て。
動いたり、話したり、美味しいお菓子を食べたり。
シャルルヴィルいろんなことができるようになったはずなのに──
シャルルヴィル……ただの銃だったときの方が、
こんなふうに雁字搦めじゃなかった気がするよ。
ジョージシャルル……。
シャルルヴィルただの銃には、誰も期待しない。
ただの銃には、救いを求めない。
シャルルヴィルただの銃には……自分の理想を押しつけない。
シャルルヴィル…………。
シャルルヴィル……ごめん。
なんか変な話になっちゃったね。
シャルルヴィル冗談……っていうか、こんなのただの絵空事だよ。
ボクはリリエンフェルト家から離れられないし、
貴銃士シャルルヴィルだから。
ブラウン・ベス…………。
ブラウン・ベス……なぁ。
これ、おまえにやるよ。
シャルルヴィルえっ!?
でもこれ、ベスくんの大切なものでしょ?
いつも持ち歩いてて、気に入ってるんじゃ……。
ブラウン・ベスいいよ、やる。
ブラウン・ベスどうしても息が詰まったら、
これでも使ってどっかへ逃げちまえ。
ブラウン・ベスヘラヘラフランス野郎には、
それくらいがお似合いだ。
シャルルヴィルヘラヘラフランス野郎って……酷いなぁ、もう。
シャルルヴィルでも……ありがとう。
いつか旅に出る時……
自由になりたくなった時に、使わせてもらうね。
ブラウン・ベス……おう。

ジョージこの羅針盤は、やっぱりあの時の……!
ジョージでも、じゃあなんであいつは……。
いなくなったってことは、
旅に出たんじゃないのか……?
シャルルヴィルうん、いいんだ。
ボクにはもう、必要のないものだから。
ジョージに持っていてもらいたいんだ。
ジョージ壊れてるからいらない……ってのは、
シャルルの場合違う気がする。
ジョージ……!
必要ないって、まさか……。
ジョージあいつ、自由になることを諦めちまったんじゃ……。
だとしたら……!
ジョージ……っ!
主人公【ジョージ!?】
【どうしたの!?】
ジョージ〇〇、緊急事態だ!
早くシャルルを見つけないと……手遅れになるっ!

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