日本編Ⅰ:第25話~第29話

コメント(0)

第25話:夢の神社を探して1

???──どういうことだ。
もう一度言ってみろ。
胴元……も、申し訳ございやせん。
鷲ヶ前組の貴銃士に邪魔されまして、このザマです。
???この不始末をどうするつもりだ。
胴元ど、どうか、挽回の機会をくだせぇ!
???……最後の機会だ。
今度こそ失敗は許されないぞ。
胴元も、もちろんです!
次は必ずや、ご期待に添うてみせますんで……!
???材料はこの自治区にいくらでも転がっているだろう。
絶望を与えよ。死に追い込め。
そして──
???この国に、災厄を解き放つのだ。
胴元仰せのままに……!

十手おはよう、〇〇君。
昨日は波乱の1日だったなぁ……。
主人公【たくさん観光もできた】
【美味しいものも満喫した】
十手そうだな。
昨日はキセル君の案内のおかげで、
だいぶ日本を知ることができた気がするよ。
十手まさか、本気の賭博を見ることになるとは、
思いもよらなかったけどな……。
主人公【今日はどうする?】
【今日の予定は決めた?】
十手そうだな……。
できれば、なんだが……。
十手今日は1日自由行動だから、今のうちに、
夢に出てきたあの神社を探したい……かな。
十手ほら、キセル君に目ぼしい神社を
教えてもらったことだし……。
主人公【手伝おう】
【一緒に探しに行く】
十手〇〇君も手伝ってくれるのか?
それはありがたい!
十手ただ……。
キセル君の情報によると、
この界隈だけでも5ヶ所ほどあるらしい。
十手かなり歩くことになるが、大丈夫かい?
主人公【もちろん】
【訓練で慣れてる】
十手ははは、頼もしいなぁ。
さすがは〇〇君だ。
……お言葉に甘えて付き合ってもらおうかな。

十手うーむ……色々回ってみたが、
どの神社も違ったな……。
十手もうこれで5つ目か……。
〇〇君、歩き疲れたんじゃないか?
ここらで休憩しよう。

2人は、神社の境内で休憩を取ることにした。
木陰には涼しい風が吹き、疲れた身体に心地いい。

十手……そうだ。
少しここで待っててくれないか。
さっきそこでいいものを見つけたんだ。
十手すぐに戻るよ!

しばらく待っていると、
十手は薄茶色の液体の中に
氷が浮いたカップを持って帰ってきた。

十手麦茶だよ。
近くの茶店で振る舞ってたんだ。
疲れた時には、これで喉を潤すに限る。
主人公【ありがとう】
【香ばしい匂いがする】
十手ああ、麦茶は焙煎した大麦を煎じて作る茶だからね。
身体にもよくて、
特に夏場の水分補給には重宝するんだ。
十手しかし……結局、ほぼ半日棒に振ってしまったなぁ。
せっかくの日本だというのに、
〇〇君にはすまないことをした……。
十手さっきの神社も、朱色の鳥居があって、
松の木があって……でも、どこか違うんだ。
十手うまく言えないけど、俺にはなんとなくわかるんだ。
あの夢の神社には、まだ辿りつけていない……。
主人公【まだ時間はあるし、大丈夫】
【絶対に見つけよう】
十手ありがとう、〇〇君。
だが俺は……。
十手…………。
十手なぁ、〇〇君。
少し聞いてくれるかい?
十手実は、その……神社探しとは、また別の話なんだが。
ほら、昨日キセル君に言われただろう。
十手どうにも、
あの時の言葉が引っかかってしまって……。

第26話:夢の神社を探して2

十手鉄砲を盗んだ少年を追いかけて建物に入る。
襖の向こうでは、博打が行われていた──

十手ええい、子供とはいえ、このような悪行許しておけぬ!
さっそく踏み込んで、彼を──
キセル悪行、なぁ。
十手、お前にはそう見えるのかい?
十手な、なに……?
キセル善悪ってもんは曖昧で、簡単に揺らいじまう。
何が善で何が悪か……決めつけるのは危険だぜ?
……もちろん、盗みをしたことは叱らねぇとだが。

十手俺は、あの少年を悪だと決めつけてしまったが、
そうじゃなかった……。
十手彼は周りの大人に……
本当に悪に振り回されているだけの、
哀れな子供だったんだ。
十手小児(しょうに)は白き糸のごとし。
……まだ何色にも染まっていない真っ白な子供を、
黒く染めようとする不届き者がいる。
十手そういう輩から子供を守るのが、
大人たちの役目ってもんだ。
十手まして俺は、同心の志を引き継いだ十手──
江戸の人々を守り、真に正義を貫かなきゃならない。
十手俺は、あの少年を守ってやるべき立場だったのに、
なんにもできなかった……!
十手キセル君のおかげで事の次第が明らかになったが、
そうでなければ、俺は考えなしに賭場に突入していた。
情けないことこの上ないよ……。
十手俺が、前の持ち主みたいな本物の同心だったら、
あの子の事情も、たちどころに見破れたのかなぁ……。
十手俺は、立派な同心になりたくてやってきた。
でも……俺は正義を見失ってしまったのだろうか。
十手いや……本物の正義の心なんて、
最初から持ってなかったのかもしれないな。
十手しょせんは偽物の同心……ただの道具、十手鉄砲だ。
俺の考える正義は……本当の正義じゃなかったんだ。
十手……すまない。
湿っぽい話になってしまったな。
でも、〇〇君もそう思うんじゃないか?
十手御用だ御用だって騒いでも、
絶対高貴になれない、俺みたいな偽物じゃあ……。
主人公【偽物?】
十手あっ、いや……。
俺は、本物の同心っていうわけじゃないだろう?
十手それに、ちっとも絶対高貴になれやしない。
だから、本物の実力はないのかなって……。
十手でも、あんなに立派な貴銃士のキセル君だって
絶対高貴になれないっていうんだから、
俺はもう、何もわからなくなりそうだよ……。
主人公【絶対高貴には謎が多い】
【十手が悪いんじゃない】
十手はは……ありがとう、〇〇君。
十手しかし、同じく絶対高貴を使えない奇銃と言っても、
俺とキセル君はまるっきり違っていて、
凹んでしまうよ。
十手キセル君は元レジスタンスの貴銃士で、
絶対高貴の力をもって戦い、
革命戦争を勝利に導いた英雄たちの一員だ。
十手今は鷲ヶ前組若頭補佐として、
街の人に慕われ、信頼されていて……。
十手それに、腕っぷしに頼らずとも、
いざこざを収めることすらできる。
十手こうやって並べ連ねていると、
あんまりにも俺と違ってて、
自分が情けなくなるなぁ……。
主人公【これを見てほしい】
【ラッセル教官へのお土産なんだけど……】

〇〇は、赤く色づけされた、
木彫りの丸い置物を取り出す。

十手へ? これは……だるまか。
ラッセル教官が、君にこれを買うように頼んだのかい?
十手ラッセル教官がだるまを欲しがるとは、
なんだか意外だが……。
十手それで、このだるまがどうしたんだい?
主人公【だるまについて、いい話を聞いた】

土産物屋の店主ああ、それはだるまというんだよ。
面白い顔をしているだろ?
土産物屋の店主だるまっていうのはね、
達磨大師という立派なお坊さんが由来になってるんだ。
土産物屋の店主達磨大師は、9年もの間、壁に向かって座禅を続け、
手足が腐ってしまっても座禅をやめなかったそうだ。
土産物屋の店主だるまには、達磨大師の
困難や苦労にもくじけない思いが込められているんだよ。
土産物屋の店主それに──ほら。こうやって転がしても、
だるまはすぐ起き上がるんだ。
土産物屋の店主縁起物の、いいお土産だよ。

十手くじけない思い、か……。
十手ははっ、俺はすっかりくじけてしまっていたな……。
「石の上にも3年」「雨垂れ石を穿つ」とも言う。
十手まだ貴銃士になったばかりの俺が諦めてしまうのは、
時期尚早にも程があるというものだな。
十手……ありがとう、〇〇君。
おかげで元気が出てきたよ。

第27話:夢の神社を探して3

キセルよっ、お2人さん! 奇遇だな。
十手キセル君……!
キセル神社探しの首尾はどうだい?
……って、その様子じゃあ芳しくなかったみてェだな。
十手ああ……。
せっかく目ぼしいところを教えてもらったのに、
どこもなんだか違っていてね。
キセルそいつは残念だったな。
だが、日本を出るまで、まだ何日かあるんだろ?
それに、神社はまだまだたくさんある。
十手ああ。だから、時間がある時に
もう一度探してみようと思うんだ。
キセルそうかそうか! 頑張れよ!
キセルお、そうそう。
歩き疲れたってんなら、近くにいい銭湯があるぜ!
十手ほぉ、銭湯か!
露天風呂はあるかい?
キセルおう、露天風呂も蒸し風呂もある!
神社探しもいいが、せっかく日本に来たんだ。
いろんなもんを楽しんで帰れよ。
キセル旅先でしかできねェ体験ってのは──

──パァンッ!!

十手なっ!? 今のは、銃声……?
主人公【何かあったのかも!】
【行ってみよう!】
キセルチッ……嫌な予感がするぜ……。

一太う、ぐ……うぅぅう……!
アウトレイジャー壊、ス……殺ス……!
キセルありゃあ……一太じゃねェか!
十手それに、アウトレイジャー!?
日本にはいないんじゃなかったのか?

いないはずのアウトレイジャーの出没に
戸惑った次の瞬間、
それ以上に、頭を混乱させる光景が目に入った。

主人公【一太くんの手から血が……】
【あれは、薔薇の傷……?】
十手なっ……薔薇の傷だと……!?
ど、どういうことだ……!?
アウトレイジャー殺ス、殺ス……!
町民1きゃぁぁぁっ!
町民2たっ、助けてくれーっ!

無秩序に発砲を繰り返すアウトレイジャーの凶行に、
歌舞妓町の住民達が悲鳴をあげて逃げ惑う。

十手まずい、とにかくどうにかしないと……!
キセル何か策はあるのか?
十手い、いや、何も……!
キセルははっ!
策はなくとも皆を助けようとする、その心意気やよし!
俺も手を貸すぜ!
キセルそれに──助っ人も来たみてェだ。
八九総員、戦闘準備!
自衛軍兵士たちはっ!
十手あれは八九君! それに自衛軍も……!
こいつはありがたい!
十手これでアウトレイジャーをお縄にできる!
だが……一太君を傷つけないようにしないと……!
キセルお前ならできるだろ? 十手!
十手ああ! やってやろうとも!

 

第28話:少年の傷1

アウトレイジャーグァァッ……!
八九……やったか?
十手いや、まだだ!
アウトレイジャーに普通の弾丸はなかなか効かない!
絶対高貴か絶対非道でないと……!
八九はぁっ!?
???……なれば、我らの出番かの?
八九邑田、在坂! 焼き芋食うのに忙しいから、
来ねぇとか言ってたじゃねーかよ!?
邑田ほっほっほ。少し気が変わったのじゃよ。
……さて、在坂。やろうか。
在坂……了解。
邑田&在坂──絶対非道。
アウトレイジャーウゥ……ッ!

絶対非道による攻撃を受けたアウトレイジャーは倒れ、
壊れた銃のみを残して消滅していった。

第29話:少年の傷2

一太うっ……!
十手おいっ! 大丈夫か……!?

アウトレイジャーが倒れた直後、一太もまた、
苦しそうなうめき声をあげて倒れてしまう。

十手おい! しっかりするんだ……!
十手……っ!
〇〇君、こっちに来てくれ……!
主人公【これは……!?】
【薔薇の傷が……!】

一太の右手にある薔薇の傷から、
茨のツタのように傷が伸び、
首筋にまで侵食している。

キセル薔薇の傷が、ここまで酷くなるだと……!?
八九うわ、ひっでぇなこれ……。
“あの人”のこと思い出すわ……。
キセル早く傷を治してやりてぇが……。
八九日本に、絶対高貴になれる貴銃士はいねーよ。
十手くそ……!
俺が絶対高貴になれたら、この子を助けられるのに!
八九……つーかよ、そもそも変じゃねぇか?
主人公【どうして薔薇の傷が……】
【アリノミウム結晶は希少なのに】
八九そうだ。街のガキが触れるようなところに、
あの結晶を置いとくバカなんざいねぇ。
八九ってことは……。
邑田……ふむ。誰ぞ、この童を利用した輩がおるか。
在坂そう考えるのが合理的だと、在坂は思う。
十手……一体誰が、こんなことを……。
キセル……自衛軍の兄さんたち。
この坊主のことは、鷲ヶ前組で預からせてもらう。
キセル事件を起こしたとはいえ、
こいつは誰も殺しちゃいねェ!
……まだ、うちの組の手に負える範疇だ。
邑田自治区内の出来事ゆえ、それでよかろう。
八九報告書とかめんどくせーし、
こっちとしても助かるぜ。
キセル話が早くて助かる。
この一件、徹底的に調べねェと──
鷲ヶ前組員1キセルの兄貴っ!
キセルおう、どうした?
鷲ヶ前組員1実は……。
キセル…………!
十手どうしたんだ? 何かあったのか?
キセル政の奴が……。
この坊主の父親が……店で死んだとよ。
十手なっ……!
キセル毒をあおったのか、血を吐いていたらしい……。
組のモンが駆けつけた時には、もう……。
八九……昨日見た限りじゃ、
とても死ぬようには見えなかったが……。
キセル殺しなのか、自分で毒を飲んだのかはわからねぇ。
だが……俺がもっとしっかり見てやってれば……!
キセル畜生っ……!

怒りと後悔を露わに、
キセルが拳を壁に叩きつける。

キセル一太……お前と政に何があったんだ……?
お前をこんな目に遭わせたのは、
どこのどいつなんだ……!?
一太う、ううっ……。
十手このままか、この子は長くは持たない……。
早く、絶対高貴で傷を癒してやらないと……。
十手…………。
十手俺は、八九君みたいに
隊を指揮して戦うこともできない。
キセル君みたいな立派な貴銃士でもない。
十手だが、俺が……!
俺が今、絶対高貴にならなきゃいけないんだ!
十手八九君、どうか〇〇君を頼む!
先に基地に帰っといてくれ!
主人公【十手!?】
【待って!】
八九行っちまった……。

コメントを書き込む


Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

まだコメントがありません。

×