本シナリオはロードストーリー「アメリカ編」「オーストリア編」
「ベルギー編」後の出来事です。
先に上記のシナリオを読むことを推奨します。
──日ノ本。
桜國城の一室にて、ささやかな茶会が催されていた。
静謐な庭に、ししおどしの音が響き渡る──。
邑田 | 結構なお点前じゃの、桂。 |
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桂 | いや、なに。 粗野な軍人が見様見真似しているだけですよ。 |
在坂 | 在坂はそっちにある、柿の形の菓子が食べたい。 |
邑田 | おお、ならばわしの分までお食べ。 ほれ、ほれ。 |
在坂 | むぐ……今度は濃いお茶が欲しい……。 |
桂 | ははは。そう慌てずとも、おかわりはこちらに。 |
邑田 | ほっほっほ。流石じゃな。 |
邑田 | ……して。 今日も御簾の向こうの御方は、顔を見せてはくれぬのか。 |
一段上がった上座には御簾が下ろされている上、
屏風まで置かれており、中の様子を窺い知ることはできない。
しかし邑田も在坂も、人の気配をはっきりと感じていた。
??? | …………。 |
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桂 | ……邑田殿。 |
邑田 | この茶会、我らが召銃されてから……もう、6度目になるか。 多忙な幕僚長のそなたがこう何度も、わざわざ城で催すからには、 相応の理由があるのじゃろう? |
邑田 | いずれそなたが口を開く日がくるじゃろうと思っておったが、 このままではいつまでも、謎の茶飲み仲間が謎のままになるわ。 |
邑田 | 我らが御簾の奥の御仁について いい加減知りたいと思うのは、当然ではないか? のう、桂。 |
桂 | …………。 |
邑田 | 在坂とも茶会のあと、毎度話しておるのじゃ。 御簾の向こうには、どんな御方が座っているのか、とな。 |
在坂 | 見上げるような大男か── あるいは、桂よりももっと年嵩の爺か。 |
邑田 | ハッと身を引くような艶やかな女子かもしれぬ。 はたまた……年端も行かぬ幼な子やも? |
??? | …………。 |
在坂 | 在坂も人と顔を合わせるのは得意ではないから、無理は言えない。 だが……。 |
桂 | …………。 |
桂 | ……日が、落ちてきましたな。 今日はここらでお開きといたしましょう。 |
在坂 | …………。ああ。 |
邑田 | ちょうど、何やら騒がしい気配が近づいておるの。 |
葛城 | 桂幕僚長殿、貴銃士邑田殿、同じく在坂殿! 葛城輝彦、および貴銃士八九です。 ご報告がございまして……! |
桂 | うむ、続けてくれ。 |
葛城 | はっ! ただいま、世界連合軍イギリス支部より〇〇殿、 および貴銃士2名が到着したとの連絡が入りました。 |
葛城 | 我々は一足先に迎えに行って参ります。 本日の歓迎会、よろしくお願いいたします! |
邑田 | おお、そうじゃ。八九や、歓迎会の食事は期待しておるぞ。 もちろん、在坂が喜ぶ献立であろうな? |
八九 | うげ、プレッシャーかけんなよ……! |
桂 | ご苦労。案内を任せたぞ。よろしく頼む。 |
葛城 | はっ! それでは! |
邑田 | ……〇〇か。 はてさて、何が起こるやら。 |
在坂 | 何かが起こるといい、と在坂は思う。 |
邑田 | そうじゃの。 ……うむ、まことその通りじゃ。 |
邑田 | 狭間より覗くは悪鬼か光明か……楽しみなことよの。 ……ほっほっほ! |
その時、屏風の裏の気配が遠のいた。
かすかに布を引きずる音が聞こえる。
邑田 | …………。 |
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??? | ごほっ! こほ……っ! |
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??? | (……時間が、ない……) |
〇〇たちが日本に到着する数日前──
恭遠に呼び出され応接室に行くと、
そこではカールがティーカップを片手にくつろいでいた。
カール | やあ、君たち。ご機嫌はいかがかな。 |
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主人公 | 【カール!】 【いきなりどうしたの?】 |
恭遠 | ああ、実はカールから君たちに話があるそうでな。 |
カール | うん、ここは単刀直入に。 君たち、日本へ観光に行こうじゃないか! |
十手 | えっ!? 観光って……あの日本にかい!? |
カール | もちろん、その日本だ。 |
十手 | いや、だが……日本は世界連合と距離を置いていて、 鎖国状態じゃないか。桜國幕府の許可が出たとしても、 移動するのに往復で何日もかかるよ。 |
十手 | カール君といえども、かる~く「観光」だなんて 言えない国なのだと……カール君だけに……。 かるく……ぷぷっ! |
カール | おや、これは── |
カール | ナンディヤーネン! |
カールは何か合点がいったように頷くと、
十手の胸に向かって勢いよくチョップを繰り出した。
十手 | あいたっ! |
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主人公 | 【ナンディヤーネン?】 →カール「ん? こう習ったように思うんだが……。」 十手「え……? 習った?」 【つ、つまらなかった……?】 →十手「はうっ……! 俺の駄洒落の腕はまだまだか……。 これは修業が必要そうだ……。」 カール「む? 日本の流儀だと習った覚えがあるんだが、何か間違ったかなー。」 十手「どういうことだい?」 |
カール | レジスタンスにいたころ、日本出身の貴銃士に聞いたのさ。 誰かがボケたら、ナンディヤーネンと言ってビシッとはたくのが 日本のお約束なんだろう? |
十手 | ああ、そういうことか! 何か惜しい気がするけど、 カール君にツッコミをもらえるなんて感動だよ! ありがとうカール君! |
恭遠 | …………。 |
恭遠 | ははは、上手なツッコミだったな! ごほん。話を戻すぞ。 |
恭遠 | 実は、観光というのは建前で……。 日本の貴銃士・イエヤスから、来訪の要請が来ているんだ。 |
主人公 | 【イエヤスさんというと、あの……?】 【レジスタンスで活躍した貴銃士ですよね?】 |
カール | ああ。かつての将軍、徳川家康が使った由緒ある火縄銃さ。 革命戦争の際はレジスタンスのマスターに呼び出され、 僕らと共に世界帝府を打倒するために戦った仲間だ。 |
カール | 世界帝府の崩壊後、日本に返還されて…… 現在は日本の桜國幕府の将軍・桜國泰澄(やすずみ)を マスターとして、幕府重鎮を務めているといわれている。 |
十手 | 昔も今も将軍に仕えるなんて、凄い貴銃士なんだね……! |
カール | ふむ、そうだねー。 見た目は穏やかな好青年で、度量の広い貴銃士だったよ。 |
カール | それから、知略にも優れていたねー。 日本的な言い方をするなら、『狸』というやつかな。 |
主人公 | 【タヌキ?】 【可愛いということ?】 |
十手 | ええと……日本では、狐狸は人を化かすと言われていてね。 ずる賢くて一筋縄ではいかないという印象があるんだ。 |
十手 | これを人に対して比喩で使う時は……そうだなぁ。 優しく穏やかな好々爺(こうこうや)に見えても、 その実は油断できない策略家……という感じになるかな。 |
十手 | 彼の持ち主だった徳川家康も、 『狸爺』と評されることがあるね。 |
カール | まあ要するに、敵ならば厄介だが、 仲間ならば心強い相手ということさ。 |
カール | それはさておきだ。 僕が君の貴銃士になって間もない頃、 恭遠を通して、イエヤスから僕個人への来訪要請があったんだ。 |
カール | それで以前、僕は密かに日本を訪れた。 ……情報共有をするためにね。 |
カール | メンバーは、イエヤス、キセル、そして僕── 元レジスタンスの貴銃士たちだ。 僕はそこで、オーストリアの一件でわかったことを共有した。 |
カール | その中で、個人的に気になることができてね……。 日本へ行かなくてはならないんだ。 うん……絶対に。 |
カール | というわけで僕と恭遠は行くのだが、 イエヤスは君たちにも興味を示しているのだよー。 どうだい、一緒に来ないかい? |
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十手 | そ、それは是非とも……! 〇〇君さえよければ……どうかな? |
主人公 | 【もちろん行きたい】 【イエヤスさんに会ってみたい】 |
十手 | ようし! そうこなくっちゃ。 で、カール君。出発はいつなんだい? |
カール | ああ、明日の朝だ。 |
十手 | あ、明日!!?? |
恭遠 | すまないな。 俺の都合もあって、急なスケジュールになってしまったんだ。 |
恭遠 | ちなみに……君の予定は公休という形で 調整可能なことを確認済みだ。 |
主人公 | 【既に手回しが……!】 【ありがとうございます!】 |
カール | では、決まりだ! 士官学校の貴銃士2名程度なら逗留許可が出るそうだから、 せっかくならもう1人呼びたまえ。 |
カール | 十手と僕は古銃だから、 薔薇の傷のバランスを取るには現代銃がいいかな。 |
カール | 諸々、よろしく頼むよー。 |
十手 | うーむ……急な話で頭が追いつかないけれど、 もう1人を早いところ決めないといけないね。 |
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主人公 | 【マークスは前回一緒に行けなかった】 →十手「はは、そうだったね。 荷物に入れて連れて行ってくれと言っていたのが なんだか懐かしいよ。」 【ライク・ツーはどう?】 →十手「うんうん。 ライク・ツー君が一緒だと心強いね。」 |
十手 | しかし……マークス君とライク・ツー君の2人は 今朝から健康診断でカサリステに泊まり込みだからなぁ。 |
主人公 | 【貴銃士の健康診断ってどんなことをするの?】 →十手「ああ、そういえばあまり話したことはなかったかな。」 【健診というよりしっかりした検査みたいだね】 →十手「その通りなんだよ。 最初は目新しくて面白かったんだが、 何度もとなると結構大変でね……。」 |
十手 | 血液検査をしたり、骨の写真を撮ったり……。 食事を控えないといけない時間もあるから、 検査までの段取りを間違うと厄介なんだ。 |
十手 | 妙な筒をくわえて息を吸ったり吐いたりもしたね。 あれで何がわかるのか、俺にはよくわからないが……。 それから、絶対高貴を使ってみたりすることもあるよ。 |
十手 | あれには少しばかり参ってしまうが、 貴銃士にはまだまだ謎が多いし、 いろいろ調べないといけないことがあるんだろうね。 |
主人公 | 【(貴銃士ドック……)】 【(検査入院みたいなものか……)】 |
十手 | というわけで、残念だけどあの2人は 明日の出発には到底間に合わないだろうなぁ……。 |
十手 | 現代銃の貴銃士も増えてきているし、 誰か1人だけ選ぶのも難しいものだね。 |
十手 | うーん、困った困った……。 |
グラース | …………。 |
十手 | あれは……グラース君? 珍しく、と言ってはなんだが、物憂げな顔だね……。 |
主人公 | 【どうしたの?】 【悩み事?】 |
グラース | ……〇〇。 空を眺めていたのさ。 僕の心は雨でも、空は澄んで綺麗だろう……。 |
グラース | ……なんだよ。 別に、なんでもないって。 |
十手 | (なんでもないわけがない……って言ったら、 余計に怒られそうだけど) |
主人公 | 【日本に興味ない?】 【任務に同行してほしい】 |
〇〇は、日本に一緒に行ってくれる
現代銃の貴銃士1人を急いで決めねばならないことを話した。
グラース | へぇ……日本行きの任務なぁ。 |
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十手 | せっかくだから、気分転換も兼ねてどうだい? |
グラース | 考えてもいいぜ。 どんな任務なのか聞かせろよ。 |
十手 | うん、実はさっきカール君が来ていてね── |
グラース | ふぅん……日本の幕府から正式に招待されてるのか。 それじゃあ、賓客扱い──VIPってわけだ。 |
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グラース | ははっ、それなら僕が適任だろうな。 そういう場でのマナーは完璧だ。 |
十手 | 確かに! 心強いよ! |
グラース | それに、グラース銃は日本にもゆかりがあるしな。 |
十手 | え? グラース君はフランスの銃じゃ……? |
グラース | 日本の軍隊ってのは、かつてフランスを手本に近代化したんだぜ? グラース銃は日本で初めての制式銃の元になったはずだ。 |
十手 | ええ! そりゃすごい! |
グラース | (日本は諸外国との交流をほとんど断って鎖国状態だったよな。 フランスとは違って革命戦争の中心からも遠い。 現代銃への忌避感もそこまで強くねぇといいんだが) |
グラース | (……もしかすると、日本にもゆかりのある銃ってことで 歓迎されたりしてな) |
グラース | ……よし。行ってやるぜ。 |
十手 | おお! ありがとう、グラース君。 とても嬉しいよ! |
同行する貴銃士がグラースに決定したことを恭遠に伝えるため、
〇〇は1人、職員室へと向かった。
グラース | あー、楽しくなってきた! 日本旅行を満喫して、 モーガンにフられた鬱憤を晴らしてやるぜ! |
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十手 | ……え? |
グラース | 信じられるか? 彼女、僕の雰囲気が好みじゃないとか、 『シャスポーさんの方が好き!』だとか言うんだぜ!? |
グラース | 見る目がないにもほどがあるだろっ! |
十手 | そ、そんなことで落ち込んでいたのかい……? |
グラース | なんだよ、そんなことって。大問題だろ! |
十手 | ご、ごめん。 まあ、任務にやる気があるならよかった……のかな? |
ロンドンを出発した翌日──
〇〇、十手、グラース、カール、恭遠の5人は
日本の空港に降り立った。
恭遠 | では、事前に話していた通り、ここからは別行動だ。 くれぐれも気をつけて行動してくれ。 |
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グラース | ……なあ。 別行動ってのは聞いてるが、そっちはどこに行くんだ? 目的地も何も聞いてないぞ。 |
カール | ……僕たちは種子島に向かう。 このことは他言無用で頼むよ。 |
主人公 | 【タネガシマ?】 |
カール | そう、この日ノ本に初めて銃が伝来した場所だ。 |
カール | では、イエヤスによろしく伝えておいてくれ。 そちらは頼んだよ。 |
恭遠 | お、君たちの迎えの車が来ているみたいだ。 それじゃあ、また。 |
カールと恭遠と別れた3人は、
幕府の役人に迎えられ、城を目指して移動を始めた。
グラース | ここが日本か……! フジヤマはどれだ? 向こうに見える山か? でも、絵とは全然違うな。 |
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十手 | グラース君、このあたりから富士山は見えないと思うよ。 |
十手 | ええと……桜國幕府での会合は17時からか。 それまで結構時間があるね。 |
主人公 | 【また歌舞妓町に行ってみる?】 【キセルさんに挨拶に行こうか】 |
十手 | おお、それはいいね! キセル君は変わりないかな。久々に会えるのが楽しみだよ! |
グラース | なあ、ずっと聞こうと思ってたんだけど。 サクラグニ幕府ってなんなんだ? |
主人公 | 【どこから説明すればいいかな……】 【十手が詳しいはず】 |
十手 | うーむ……かいつまんで話そうか。 |
十手 | 黒船来航から始まる明治維新と大政奉還によって、 約260年続いた江戸時代が終わった──その十数年後。 |
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十手 | 外国との戦争が起きようとする中、 戦争は古来より征夷大将軍率いる『幕府』の役目である、 という運動を起こした一派がいたんだ。 |
十手 | この運動を主導して世論をまとめ上げ、 天子様の任命を受けて新たな『将軍』となり 幕府を開いたのが、桜國義彦(よしひこ)だった。 |
十手 | 彼が今にまで続く桜國幕府の初代将軍というわけだ。 |
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グラース | へぇ、日本にもナポレオンみたいなヤツがいたんだな。 それに、ナポレオンよりもハッピーエンドだ。 |
グラース | 第三次世界大戦では激戦地からは外れて、 核兵器による国土壊滅も避けられたみたいだしな。 |
十手 | 地理的な条件が幸いしたのもあるだろうね。 それでも、世界帝府の圧政下に置かれたのは、 世界中の国々と同じだ。 |
十手 | 革命戦争後の大転換期の今は、世界各国と距離を置きつつ、 国力の回復に努めているんだって。 |
十手 | それを主導しているのが、 今の将軍・桜國泰澄様というわけさ。 |
十手 | 日本が距離以上に『遠い国』と言われるのは、 世界連合に加盟していないから。 |
十手 | 『世界連合軍日本支部』ではなくて、 『自衛軍』という独自の軍を持っているのも特色だね。 |
グラース | Merci. 日本のことはよくわかったぜ。 なあ、それよりもさ……。 |
グラースは窓の外を眺めて、眉間にぐっと皺を刻んだ。
グラース | 僕のイメージと違うぞ! そこらじゅうビルだらけじゃねぇか! |
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グラース | フジヤマも見えねぇしサムライもいない! これじゃ楽しい観光にならないぜ!? |
主人公 | 【現代的だよね】 【ロンドンのビジネス街と似てる】 |
十手 | ははは、心配ご無用! これからグラース君が想像しているような『日本』に行くよ。 |
──〇〇たちは、歌舞妓町自治区に到着した。
十手 | どうだい、グラース君! |
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グラース | Waouh……! これだよこれ! サムライがいっぱいいるぞ! あっ! あれがゲイシャ!? |
主人公 | 【やっと気分が上がってきたね】 【楽しそうで何より!】 |
十手 | うん、グラース君の期待に応えられてよかった! |
グラース | ……コホン。麗しき花々のようなマドモアゼルたち。 僕は初めて日ノ本に来たんだ。 何も知らない僕に、手取り足取り教えてくれると嬉しいな。 |
女郎1 | まあ! 異国のお兄さんだなんて珍しいわね。 ……あら? |
女郎1 | ねぇ……もしかして、十手さんじゃない? お久しぶりだねぇ! |
十手 | んん? |
女郎1 | そっちは……士官候補生さん! |
女郎2 | この間の大捕物、格好よかったって噂よぉ! おかげで大黒屋の悪事もわかったって話じゃないか。 ね、これからうちの見世で話しましょうよ! |
女郎2 | 歌舞妓町を守ってくれた立役者たちだもの。 美味しいお茶とお菓子くらいご馳走させてちょうだいな! |
十手 | いやいや、俺たちはただ、やるべきことをしただけで。 でも、そういう風に言ってもらえるのは嬉しいものだね。 |
主人公 | 【ありがとうございます】 |
女郎1 | もう、2人揃って謙虚すぎるわよぉ。 |
グラース | (な……僕を差し置いて、十手がモテている……!?) |
女郎1 | ね、今回はしばらく日本にいらっしゃるの? 遠慮なんてしなくていいから、 時間がある時にまた寄ってくれなくちゃ嫌なんだからね。 |
女郎2 | そうよ! ねぇ、いいでしょう? |
女郎たちに囲まれる十手と〇〇を、
グラースは愕然として見つめる。
グラース | 〇〇……お前は貴銃士たらしだと思ってたから、 そこまで驚きはねぇけど……。 |
---|---|
グラース | 十手……僕はどうやら、お前を見くびってたみたいだ。 やるじゃねぇか……! |
十手 | ええっ!? |
??? | よう、俺のシマで賑やかにやってくれてるじゃねェか! |
主人公 | 【この声は……!】 【キセルさん!】 |
キセル | 久しぶりだなァ、〇〇、十手! |
十手 | キセル君、早速会えて嬉しいよ! でも、俺たちがここにいるってなんでわかったんだい? |
キセル | お前らが来たことは門番が報告を上げてくれてな。 あとは歌舞妓町の皆に聞いて辿っていけばすぐってわけだ。 |
キセル | カールから話は聞いてるぜ? このあとはお偉いさんと会合だろ。 忙しいのに真っ先に顔見せに来てくれるとは、嬉しいもんだ! |
キセル | そういや、新顔もいるな。 俺ぁ鷲ヶ前(わしがさき)組のキセルだ。よろしくな。 |
グラース | Bonjour. 〇〇の貴銃士のグラースだ。よろしく。 |
キセルに誘われ、一行は近くの食事処で昼食をとる。
その後、前回も訪れた茶屋で団子を食べることになった。
主人公 | 【やっぱり美味しい!】 【お団子最高……!】 |
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グラース | おお、これがマッチャか……! ……んぐっ、苦……っ!? |
キセル | ははっ! いっぱい食えよ。 |
キセル | (……この傷がなァ……) |
キセルは、団子を持つ〇〇の手に刻まれている
薔薇の傷をじっと見つめた。
カール | ……やはり、アリノミウム結晶には本物と偽物があると思う。 レジスタンス時代、赤い石は触れると全身から血を吹き出して死ぬ 危険なものだという情報が入っていただろう? |
---|---|
キセル | おう。俺たち奇銃で世界帝軍に探りを入れてた時も、 そんな話を聞いたことがあったぜ。 |
カール | それなのに、今や世界のあちこちにマスターがいる。 これは明らかにおかしい。 おまけに、君たちが絶対高貴になれないのも異常だ。 |
カール | マスターになる際の死亡リスクをなくす代わりに、 不完全な召銃しかできない紛い物の結晶……。 |
カール | これが数多く流通していることからして、 人工的に作り出された結晶と考えるべきだろう。 本物と人工の結晶には、いくつかの決定的な違いがある。 |
カール | 人工のアリノミウム結晶を使って召銃を行った場合、 どういうわけか、いかなる古銃も絶対高貴にはなれないようだ。 |
イエヤス | 絶対高貴になれないとなると……。 |
カール | そう。マスターの薔薇の傷の悪化を食い止める手段がないんだ。 薔薇の傷の悪化は、マスターと貴銃士双方に悪影響を及ぼす。 その最終段階がおそらく……貴銃士のアウトレイジャー化だ。 |
キセル | ……あの話も通じねぇ、破壊と殺戮だけしか行動原理にねぇような アウトレイジャーどもは、貴銃士のなれの果てなのか。 |
キセル | そして、いずれ俺たちも……。 |
イエヤス&キセル | …………。 |
カール | そう悲観することはないが、油断もできないねー。 薔薇の傷が悪化する速度には、貴銃士自身の性質や精神状態、 マスターの健康状態が関わっていると考えられる。 |
カール | それから、絶対非道に寄っても著しく悪化する。 しかし君たちは古銃で、マスターを同じくする貴銃士はいない。 急速に傷が悪化することはないだろう。 |
カール | ……通常ならば。 |
カール | ただ……僕の例からもわかるように、 マスターが加害されると、状況は一変する。 だから、マスターの守りを固めることも重要だねー。 |
カール | そういうわけで、君たちが絶対高貴になれない理由は明確かつ、 君たちにはどうしようもないことだ。 気に病めば傷の養分になってしまうから、気にしないように。 |
カール | そうそう。僕が伝えた情報は他言無用で頼むよ。 知るだけでも危険性が増すのは間違いないからねー。 |
キセル | …………。 |
---|---|
十手 | キセル君? |
キセル | ……ん? 悪ィ、ボーッとしちまってたぜ。 |
キセル | さて、団子は食い終わったな。 少し場所を移すか。 |
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