──桜國城、祈祷所にて。
??? | ──、──……。 |
---|---|
侍女 | 日美子様……日美子様っ! |
侍女 | 恐れながら申し上げます。 どうか、お食事を召し上がってください……! |
日美子 | 不要だと言ったはずです。 ……下げてください。 |
侍女 | しかし……少しでも召し上がってくださいませ。 近頃ほとんど何も口にされていないではありませんか! |
日美子 | ……大丈夫です。 |
日美子 | それよりも、報告を。 〇〇はどのような人物でしたか……? |
侍女 | はい……今夜は自衛軍主催の歓迎会に参加され、 皆様とゲームをされておいででした。 〇〇様は勝ちを譲っていらして……。 |
侍女 | 自衛軍の方々ともすでに打ち解けていらっしゃいます。 お1人になった在坂様にもお気遣いをされていました。 |
侍女 | それから、葛城二佐に── |
日美子 | ……っ! |
その時、日美子が手にしていた榊の葉が、ひらりと落ちる。
日美子 | これは……不吉の前触れ……。 |
---|
──翌日、〇〇たちは
自衛軍の巡回に同行していた。
葛城 | おはようございます!! |
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主人公 | 【おはようございます!】 【今日もよろしくお願いします!】 |
葛城 | 本日は丈下(たけした)通りの警邏の予定です。 三連休ということもあり、ご覧の通り── |
十手 | わぁ! 何かのお祭りかい!? すごい人出だ! |
グラース | へぇ、賑やかだな……! |
邑田 | いかん! あのような人混みに在坂が足を踏み入れるなど、まかりならぬ! |
十手 | ひゃあ! 派手な格好の人たちがいるよ……! |
八九 | あれは丈の子族って呼ばれてる陽キャ集団な。 |
グラース | 自由なファッションを楽しみ、路上でダンスか。 欲望に忠実でいいじゃねぇか。 |
葛城 | おっと! 少し離れていますが、秋ノ葉原から警備依頼が……。 移動いたしましょう! |
〇〇たちは秋ノ葉原に移動した。
ニャンカフェ店員 | ご主人様、ニャンカフェに寄っていきませんかニャ? |
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十手 | え!? 獣の耳が生えている……! |
八九 | 耳付きのカチューシャな。 このへんは、あの手のコンセプトカフェが多いんだよ。 あれは猫耳メイドカフェの呼び込みだ。 |
葛城 | 猫耳……カチューシャ……カフェ……。 |
グラース | こっちも欲に忠実……いや、欲望そのものが生きている……! 日本人、見直したぜ……! |
十手 | これは本屋かな? 同じような表紙の箱がたくさん並んでるね。 |
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八九 | あれは本じゃなくてゲームな。 パッケージが凝ってるだろ。 |
十手 | へぇ……! あっちの大きな貼り紙はなんだい? あれも、げぇむの広告だろうか? |
八九 | あっちは……まあ、小説だな。 |
十手 | 小説!? とても可愛い絵だけど……。 |
八九 | ラノベっつーんだけど……ま、話すと長いか。 さっきのゲームのノベライズとかもあるぞ。 |
十手 | のべ……? よくわからんが、いろんな種類の娯楽があるんだね。 |
邑田 | 八九や。あの愉快な箱のげぇむ、 そなたが気になっておるものではないかえ? |
在坂 | 八九はいつも部屋でゲームをしている。 気になるのなら買ってくればいいだろう。 |
八九 | いや、いらねぇよ。もう持ってるし……。 |
十手 | ええ、それはすごいね! かなりの人気商品みたいなのに! |
主人公 | 【やってみたいな!】 |
八九 | えっ……!? |
邑田 | 何か不都合があるのかえ? 〇〇と親交を深めるよりも大切な都合なのか? |
八九 | う……わ、わかった。 同じゲーム持ってる奴も呼ぶわ。 |
八九 | (〇〇って、 精神的にめちゃくちゃフットワーク軽いな……。 ま、馬鹿にしてこねぇ分うざくはねぇからいいけど ) |
──秋ノ葉原の巡回を終えた一同は、
北上して、大きな日本庭園にやってきた。
グラース | ふぅん、案外華やかなところだな。 悪くねぇ。 |
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十手 | 前回は神社巡りをしていたから、この庭園には初めて来るよ! いやぁ、立派で風情あるいいところだ! |
邑田 | 七義園といってな、今は公園のようになっておる。 四季折々の花が咲き乱れる、風流な景観が人気じゃの。 |
在坂 | 在坂は、この池が好きだ。 どの庭園より大きな鯉がいる……おおっ! |
池のヌシのような大きな鯉が、ぱくぱくと口を開閉する。
主人公 | 【お腹が空いているのかも】 【大きい……!】 |
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在坂 | 大きいのはいいことだ。 ……在坂も、大きくなれたらいい。 |
在坂 | 在坂はここに来るといつも、鯉にエサをやることにしている。 |
邑田 | 今日も例に漏れずエサやりをするじゃろうと思って、 準備しておいたぞ。ほれ! |
在坂 | ……! さすが邑田だ。礼を言う。 |
嬉しそうに鯉にエサやりをする在坂を、
邑田は優しい目で見つめる。
主人公 | 【保護者みたいですね】 →邑田「」 【在坂さんが本当に大切なんですね】 →邑田「無論じゃ。」 |
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邑田 | 在坂はわしの後継銃でな。 あの子が使われてきた戦場は──。 |
邑田 | 敗走すら許されぬ、飢えと狂気が渦巻く悲惨なものじゃった。 多くの兵が、祖国に帰れぬままに死んでいく。 |
邑田 | そんな戦場で使われてきた在坂は、 自分自身に対してあまりに無頓着じゃ。 |
邑田 | くっ……爆弾でもって不意を突こうとは小賢しい……! 無事か、在坂……在坂!? |
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在坂 | ……う……。 |
邑田 | (子供を庇ったのか……!?) |
在坂 | 在坂は……問題ない。それより、この子を……。 |
邑田 | 在坂は、常人であればのたうち回るような大怪我をしようとも、 わずかに呻くばかりで泣き言ひとつ言わぬ。 己の身を顧みることがないのだ。 |
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邑田 | 在坂は……自分は幸福になってはならぬと思っている節がある。 じゃが、地獄のような戦場に身を置いた銃だからといって、 貴銃士としても未来永劫苦しむ必要はなかろう? |
邑田 | だから、わしは決めたのじゃ。 在坂を絶対に幸せにしてやろうとな。 |
邑田 | ……昨夜、そなたはあの子の瞳の深淵を垣間見た。 それでも避けぬ人間というのは珍しい。 |
邑田 | ……期待しておるぞ。 |
主人公 | 【……!】 【は、はい……!】 |
無線 | 『──葛城二佐! 貴銃士の皆様方と一緒でしょうか? 四ツ辻の廃墟付近で武装兵の目撃情報あり、 アウトレイジャーだと思われます!』 |
無線 | 『急ぎ、貴銃士の皆様とともに現場へ急行されたし!』 |
葛城 | なんと……了解! ただちに向かいます! |
十手 | 大変だ……! 急ごう!! |
葛城 | 状況は!? |
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自衛軍兵士1 | はっ! 通行人および周辺住人の避難は完了しております! |
邑田 | それは重畳。やりやすくなるわい。 |
在坂 | ああ。 |
八九 | 銃狙ってなるはやで始末するか。 |
アウトレイジャー | ウウウ……恨ミ……晴ラセ……。 |
グラース | ハッ、銃狙い? ちまちましたことしてねぇで、 絶対非道をどーんとかましてやればいい。 |
グラース | ──行くぞ! |
グラース | 絶対非道──心銃! |
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アウトレイジャー1 | グァァァア……! |
アウトレイジャー2 | 殺、ス……! |
邑田 | ……退避せよ! |
邑田、在坂、八九の3人が、アウトレイジャーへ向けて
一斉に銃を向け、弾丸を放つ。
しかし銃本体には当たらず、アウトレイジャーは止まらない。
十手 | 危ない! 絶対高貴……! |
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アウトレイジャー2 | ウグァァ……。 |
自衛軍兵士1 | アウトレイジャーの消滅を確認! 周辺への被害も軽微です! |
葛城 | ふぅ……なんとか無事に討伐が完了しましたね。 〇〇殿、グラース殿、十手殿、 助太刀いただきありがとうございます! |
葛城 | いやはや、さすが連合軍の精鋭と思わずにはいられない、 流れるような見事な戦闘でした! マスターと貴銃士の阿吽の呼吸……見習いたいものです! |
グラース | ははっ、そいつはどうも。 ……つーか、昨日も思ったけどよ、僕らは一応国賓だろ? 僕らだけに戦わせといて、お前らは呑気に観戦かよ。 |
邑田 | ……そなたのやる気がみなぎっておったからの。 見せ場を譲ってやっただけじゃ。 |
在坂 | それに、見ていただけではない。 |
グラース | ……銃で普通に撃って応戦したことを言ってんのか? あんな攻撃じゃ、大した足止めにもならねぇぞ。 アウトレイジャーに普通の攻撃がほぼ無意味だって知ってんだろ。 |
グラース | さくっと絶対非道で倒せばいいだろうに、 3人揃って普通に射撃し始めるから何事かと思ったぜ。 |
十手 | (確かに……アウトレイジャーが目前に迫っていたのに、 邑田君も在坂君も絶対非道を使おうとしなかった。 邑田君なら在坂君を守るために躊躇しなさそうなものだが……。) |
十手 | 八九君は前に、絶対非道を使えないと言っていたけれど…… 2人も使わなかったのは、マスターの薔薇の傷を気遣ってかい? 絶対非道を使うと、傷が一気に悪化してしまうからね。 |
邑田 | うむ、その通りじゃ。 わしらのマスターは〇〇と比べると、 だいぶ年を食っておるからのう。 |
邑田 | 老体にあまり負担をかけるものではなかろう? |
グラース | あー……負担かけすぎてぽっくり死なれたら困るしな。 でも、今なら十手がいるから平気だろ。 |
十手 | ああ、俺でよければいくらでも力になるよ! |
邑田 | ほっほっほ。覚えておくとしよう。 |
グラース | つーかよ……八九、お前、絶対非道使えねぇのかよ!? 元世界帝軍の貴銃士とか、非道の権化だろうが!? |
十手 | ちょっ、グラース君……!? |
八九 | いや……絶対非道って別に、 すげー非道なことしたら目覚めるってわけじゃねぇだろ。 |
十手 | はは……そうだね。 みんなの話だと、絶対に何かを成し遂げたいっていう ものすごく強い気持ちが引き金になるんだったかな。 |
八九 | そういうの、俺にはねぇしな。 なれなくても別に今んとこ不便もねぇから、 どうでもいいっていうか。 |
八九 | 絶対非道やら絶対高貴ほどスムーズにはいかなくても、 俺らの銃とか自衛軍の武器で アウトレイジャーには一応対処できてるしよ。 |
グラース | はぁ……? 信じらんねぇほど覇気のない奴だな……。 |
邑田 | こやつのことはよい。 それより〇〇、傷の具合は問題ないかえ? |
主人公 | 【これくらいなら大丈夫です】 【問題ありません】 |
邑田 | ならばよし。 そなたに負担をかけることになってすまぬな。 |
十手 | 〇〇君、治療が必要な時にはすぐに言ってくれよ。 |
葛城 | さて……アウトレイジャー討伐も終わりましたし、 そろそろ基地に戻りましょうか! |
葛城 | 今夜は八九殿のゲームで遊ぶ予定でしたね。 それまでは自由時間となっておりますので、 どこかへ行かれる際は小生へお声がけください! |
葛城 | 小生も仕事を終わらせて、 夜には八九殿のお部屋へお邪魔いたします! |
八九 | げっ、お前も来るのかよ。 |
葛城 | もちろんです! 八九殿とゲームを通して親睦を深めたいと 常々思っておりましたので。 |
八九 | あっそ……。 |
八九 | ……っと、あいつ今日は日勤のはずだよな。 |
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八九 | おーい、竹田。 ちょっといいか? |
竹田 | はい! おや、八九殿。少々お待ちください! |
竹田 | 八九殿! お待たせいたしました。 本日はどのようなご用件で……? |
八九 | ……昨日も思ったけど、 お前に真面目に話されると落ち着かねぇな。 |
竹田 | フフフ……しかし、公衆の面前で『豊田(ほうだ)氏~!』と いつものノリで声を掛けるわけにもいきませんので。 |
八九 | 二佐だしな。一応威厳とかいるわな。 |
竹田 | ええ、円滑な自衛軍生活のための擬態であります。 それで……? |
八九 | あー、本題忘れるとこだった。 この間出た新作のパーティーゲームあるだろ? あれで、今イギリスから来てる奴らが遊びてぇって言ってて。 |
竹田 | おおっ! ゲーム外交ですか! |
八九 | いや、そんな大層なもんじゃねぇよ。 単純に興味があるって感じだ。 |
八九 | それで、お前も参加頼めるか。 あいつらを俺1人で捌き切るのは大変そうだからよ……。 |
竹田 | 八九殿の頼みとあらば、 一肌どころか二肌三肌全部脱ぎ捨て助太刀いたしましょう! |
八九 | ……心意気はありがてぇけど裸芸はやめろよ? 絶対ドン引かれるからな?? |
自衛軍兵士1 | おや、八九殿! 珍しいですね、こちらまでいらっしゃるとは。 |
八九 | おう、ちょっと緊急の用事があってな。 |
自衛軍兵士1 | そうでしたか! そうそう、貸していただいたボードゲーム、 同室の皆とすっかりハマっております! |
自衛軍兵士1 | 今度ぜひ八九殿ともお手合わせしたいと、 皆で話しているのです。 |
八九 | おー。いいぜ。 気が向いた時でよければな。 |
自衛軍兵士1 | ありがとうございます! 楽しみにしております!! |
八九 | おう、じゃあな。 そんじゃ、竹田も今夜よろしく。 |
八九 | …………。 |
---|---|
八九 | (……なんつーか、のんびりしたもんだよな。 アウトレイジャーとか薔薇の傷とか、 考えなきゃなんねぇことはそれなりにあるけど……) |
八九 | (俺の日常は大体平穏で、 引っ張り出された時やら気が向いた時だけ訓練して、 あとはのんびりゲームしたりで好き勝手できてる) |
八九 | (別に特別やりたいこともねぇ。 なんとしても成し遂げたいなんて 強い思いを抱くような対象もねぇ) |
八九 | (面倒なことはしたくねぇし、必要性も感じねぇし…… 俺が絶対非道になれないのは納得感ありすぎるよな) |
八九 | ……ま、どうでもいいか。 |
八九 | ……っしゃ!! 俺の勝ちだな。 |
---|---|
在坂 | ……すごい連打だった。 在坂は八九を見直した。 |
グラース | ゆ、指がつっ、たぁ……! 不覚……この僕が負けるだなんて……。 |
主人公 | 【もう1回やろう!】 【次は負けない!】 |
八九 | まだやるのか? 俺はちょっと休憩。竹田、パスしていいか? |
竹田 | もちろんですとも。 皆さんのお相手を務めさせていただきましょう! |
葛城 | 竹田二佐、お手合わせよろしくお願いいたします! |
竹田 | 胸を借りるつもりでどーんと遠慮なくかかってきなさい! |
葛城 | はっ! |
八九 | ……オフラインで大人数のマルチとか、 することはねぇと思ってたけど……これはこれで悪くねぇな。 |
---|---|
主人公 | 【オフライン……マルチ……?】 →八九「あー……っと、こうやってリアルで集まって、 複数人でゲームをやんのが新鮮だって話だ。」 【普段はどうやって遊んでるの?】 →八九「普段はオンラインでマルチ…… つまり、こうやってリアルで集まるんじゃなくて、 通信だけ繋いでそれぞれの場所でゲームしてんだよ。」 |
八九 | 竹田みたいに、ネット環境があるゲーム仲間が何人かいてよ。 時間が合う時は、そいつらと一緒にプレイしたりもする。 |
十手 | むむ……? 実際に集まらなくても、一緒にげぇむができるのかい? |
八九 | そういうことだ。 詳細は機密な気がするから伏せとくけど、 軍関係だとそれなりに通信網が発達してるからな。 |
グラース | ……軍用の連絡網で遊んでんのか? ハハッ、お前、ちゃっかり強欲じゃねぇか! |
十手 | ああ、ええと、八九君。 グラース君のこれは褒め言葉でね……! |
八九 | そ、そうなのか……? そりゃどうも……? |
自衛軍兵士1 | ──葛城二佐はこちらにいらっしゃいますか? |
葛城 | おや? 提出した書類に何か不備でもあったのでしょうか……。 はい! 葛城二佐、在室しております! |
葛城は、呼びに来た兵士と何やら言葉を交わしてから
再び部屋へと戻ってくる。
主人公 | 【大丈夫ですか?】 【何かありましたか?】 |
---|---|
葛城 | それが……日美子様から、 自衛軍全体へ向けてお達しがあったそうなのです。 |
邑田 | ……新たな予言かえ? して、内容は。 |
葛城 | 『十分に用心せよ』……と。 |
グラース | ……それだけか? ずいぶんざっくりしてるな。 誰とかどことか何にとか、もうちょっと情報はねぇのかよ。 |
竹田 | ふむ……確かに今回はふわっとしたお言葉ですね。 おそらく、断片的にしか予知を得られなかったのでしょう。 |
竹田 | 神子のお力は万能ではありませぬから。 日美子様もきっと歯痒く感じながら警告を発せられたのかと……。 |
葛城 | 日美子様のお力は本物です。 皆様もこのお言葉を頭の片隅に置き、気をつけてお過ごしを。 不肖葛城も、皆様の安全のため尽力いたします! |
十手 | ああ。ありがとう、葛城君。 |
在坂 | …………在坂は、腹が減った。 |
十手 | そういえば俺も少し……って、もう0時じゃないか! 夢中で遊んでいたらあっという間だったなぁ。 |
十手 | 夜食が欲しいところだが、 明日の朝食まで我慢するしかないか……。 |
八九 | いや、コンビニに行けばなんかあると思うぜ。 おにぎりとか、もっと軽いのならスナックとか。 |
グラース | ……? こんな時間に開いてる店があるのか? |
八九 | 正門出てすぐのとこに、コンビニ…… あー……24時間営業の小売店がある。 |
八九 | 俺はカップ麺のストックがあるから行かねぇけど、 腹減ってて興味があるなら行ってみたらどうだ? |
主人公 | 【お腹が空いたから行ってみようかな】 【コンビニ……面白そう!】 |
葛城 | …………。 |
葛城 | ……! し、失礼しました! ええと、出かけられるのですよね。 では小生も同行いたします。 |
竹田 | 葛城二佐は眠いのでしょう。 自分が皆さんに同行するので、先に休みなさい。 |
葛城 | そういうわけには……。 |
邑田 | 半目になっておるではないか。 そなたは特例の特進があったとはいえ、 竹田と同じ二佐。過度の遠慮はいるまいよ。 |
葛城 | うう……面目ない……。 竹田二佐、よろしくお願いいたします……。 |
主人公 | 【おやすみなさい】 【また明日!】 |
邑田 | さて、わしと在坂も行くとしようかの。 こんびには目新しい商品が多く面白い。 在坂や、なんでも好きなものを選ぶとよいぞ。 |
在坂 | ああ。 |
部屋に残るグラースと八九、自室に戻って寝ることにした葛城、
買い物に行くその他の面々で一旦解散となる。
葛城は眠い目を擦りつつ自室に入り、ベッドに寝転がった。
葛城 | ……ふぅ。 |
---|---|
葛城 | (なんとも充実した1日だった……。 八九殿もなんだかんだ楽しそうにされていて……) |
心地よい疲労感に身を委ね、
葛城はすぐに寝息を立て始めたのだった──。
??? | …………。 |
---|
葛城が寝入ってしばらく──。
1つの人影がそっと音もなく侵入し、ベッド脇に歩を進める。
葛城 | ……っい、痛……!? |
---|
腕に鋭い痛みを感じて、葛城は目を覚ました。
何事かと周囲を見回し、部屋から出ていく人影を視界に捉える。
葛城 | 待て……ぐっ! |
---|---|
葛城 | なんだ……? 目眩が……。 うぐっ……。 |
激しい動悸と目眩、全身を蝕む苦痛。
尋常ではない異変に襲われ、葛城の額に脂汗がにじむ。
汗を拭おうと上げた手から
ポタポタと滴り落ちるのは……血だ。
葛城 | ……っ、薔薇の傷が……! |
---|---|
葛城 | あ、あああ……ぐあぁ……! |
グラース | おい、あいつらが買い物に行ってる間にもう1戦しようぜ。 お前相手に練習して上達してやる! |
---|---|
八九 | ……お前、顔の割に負けず嫌いだな。 |
グラース | はぁ……? なんだそれ。 |
八九 | ……なんでもないっす……。 |
八九 | んじゃ、始めるか。 1 on 1モードで、ステージは── |
八九 | ……っ、……? |
グラース | ……? おい、どうした? |
八九 | ……っ、くっ……。 なんだ……心臓が……!? |
葛城 | う……ぐ……さっきの輩は、どこだ……。 |
---|
軍刀を杖のようにして支えとし、
葛城はよろめきながら廊下を進む。
その時──八九の部屋から破壊音が響いた。
葛城 | ……っ!? |
---|---|
八九 | ウウゥ……。 |
葛城 | そんな……八九、殿……!? |
グラース | ……っ、いきなりなんで……! おい、しっかりしろ! 呑み込まれんな! |
八九へ必死に声をかけるグラース。
しかし、八九は不気味な笑みを浮かべ──彼へ銃口を向けた。
グラース | クソッ……! |
---|---|
葛城 | ……! これが、〇〇殿が教えてくださった……。 |
葛城の脳裏に、〇〇たちの忠告がよぎる。
傷は、召銃している貴銃士が絶対非道を使う以外に、
マスターの肉体・精神的な健康状態によっても悪化し──
薔薇の傷が悪化しすぎると、
貴銃士がアウトレイジャー化してしまう恐れがあること。
そうなってしまった場合、対処法は非常に限られていること。
葛城 | (八九殿は絶対非道に目覚めていない。 そして、小生の部屋に侵入した不審者……。 あの曲者に小生はおそらく何かを注射された) |
---|---|
葛城 | (あれのせいで薔薇の傷が悪化し、八九殿がこんなことに……! 十手殿がいない以上、小生にできることは1つしかない……!) |
葛城 | 八九殿に、仲間殺しの汚名を着せてなるものか!! |
葛城は、杖代わりにしていた軍刀を掲げ、鞘を払った。
支えを失い膝を床につきながらも、
刀をしっかりと握りしめ──自らへとその切っ先を向ける。
葛城 | マスターの命が尽きれば、貴銃士は銃に戻る── そうでしたね、グラース殿。 |
---|---|
グラース | な……っ! 何してんだ、馬鹿野郎……! |
葛城は迷いなく、自らの腹部に刃を突き立てた。
八九 | ウ、グ……ァ……!? |
---|---|
グラース | チッ……! 絶対非道……! |
八九 | ウゥゥ……! |
グラース | おい! 誰か!! 急いで〇〇と十手を呼べ! 医者もだ!! |
自衛軍兵士たち | は、はい!! |
騒ぎを聞いて何事かと部屋から出てきた兵士たちは、
グラースの言葉を聞いて急いで駆けていった──。
在坂 | どうした、〇〇? |
---|---|
主人公 | 【……薔薇の傷が悪化し始めた】 【グラースが絶対非道を使った……?】 |
十手 | なんだって……? 自衛軍で何かあったのか……!? |
邑田 | 日美子様の予言が当たってしまったか……急いで戻るぞ! |
正門へ駆け込んだ〇〇たちは、
呼びに来た兵士たちと鉢合わせ、急いで現場へ向かう。
先程まで皆でゲームを楽しんでいた八九の部屋は大きく損壊し、
廊下では血まみれの葛城が青白い顔で倒れている。
グラースは八九を床に押さえこみ、動きを封じながら叫ぶ。
グラース | 十手! 絶対高貴でそいつの傷を治せ!! |
---|---|
十手 | これは……っ、合点承知だ、グラース君! |
十手 | ……絶対高貴! |
十手が放つ絶対高貴の光が葛城の薔薇の傷へ降り注ぎ、
首筋にまで蔦を伸ばしていた傷がみるみる治っていく。
やがて──跡形もなく薔薇の傷は消え去った。
八九 | あ……、俺、ハ……。 |
---|
八九の姿も空気に解けるように消え、
あとには1挺の銃だけが残された。
グラース | ギリ、間に合ったか……? |
---|---|
十手 | 最後の八九君には、八九君の意識があったと思う。 間に合ったはず……だ。 だが、葛城君が……。 |
駆けつけた軍医の指示で、青白い顔をした葛城が運ばれていく。
〇〇たちには、それを見守ることしかできない。
主人公 | 【一体何が……?】 【グラース、ここで何があったか教えて】 |
---|---|
グラース | ……僕にもよくわからねぇ。 普通に、ゲームの続きをしようとしてたんだ。 そしたらあいつがいきなり苦しみだして……。 |
グラース | 前触れも何もなかった。 本当にいきなりアウトレイジャー化が始まったんだ。 |
グラース | 八九が部屋のドアをぶち壊して廊下で暴れてる時に葛城が来て…… おかしくなっちまってる八九を見るなり、 自分のことをぶっ刺しやがった。 |
グラース | その前から葛城もフラフラだったし、 ほら、見てみろよ。 あいつの部屋からこっちまで、点々と血痕が続いてる。 |
主人公 | 【薔薇の傷が急激に悪化した……?】 【まさか、オーストリアで使われた毒……?】 |
十手 | ……! トルレ・シャフの手が、自衛軍にまで伸びているのか……? |
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