キセルの案内で、3人は小川のほとりにやってきた。
歌舞妓町の喧騒から離れた静かな場所で、周囲に人影はない。
キセル | 日ノ本じゃあ、大黒屋を潰した効果か、 あれ以降アウトレイジャーが派手に暴れたりはしてねェ。 |
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キセル | だが、ポツポツとあちこちに出没しててな、 自衛軍が対処してるって話だ。 ま、海外に比べりゃあずっと状況はマシだな。 |
キセル | パチもんの結晶がアウトレイジャー出現の原因だとして、 日ノ本国内で作られてねェ限り、 外から入る量はたかが知れてる。 |
十手 | 日ノ本でのアウトレイジャー出現が遅かったのは、 鎖国政策がいい方向に働いたからと見てよさそうだね。 |
キセル | それでも、将軍に自衛軍の桂のおっさん、葛城って若ェのと、 うちの若頭(カシラ)……4人も得体の知れねぇ結晶で マスターになっちまってるわけだが。 |
キセル | ……いや、まだ全員がパチもんの結晶を使ったとは限らねぇか。 けど、本物の結晶は触れりゃあほぼ確実に死ぬような 危険なシロモノだからな。 |
キセル | 十中八九本物じゃねぇとして…… 世界各国に安全なようで危険な結晶を斡旋してるやつがいる。 やれやれ、とんでもねェこった。 |
十手 | 結晶の出処の人物、あるいは組織が、 その危険性を把握していたかも気になるな……。 |
十手 | 安全に貴銃士のマスターになれる結晶を作ったつもりが、 そこには秘められた危険性があったのか…… それとも、知った上であちこちに流通させているのか。 |
キセル | 前者なら浅はかだがまだ救いはある。 問題は後者だった場合だな。 |
十手 | うん……。如何せん、まだわからないことだらけだね。 大黒屋が摘発されたあとも、 アウトレイジャーの出没が続いているというのも気がかりだよ。 |
キセル | ああ。誰がどうやったのかはわからねェが、 結晶を密輸入する、細いが確かな道ができちまってるんだろう。 |
キセル | 正直なところ、それが特に厄介だ。 |
主人公 | 【どういうことでしょう?】 【水際対策を強化しても駄目ですか?】 |
キセル | ……幕府が敷いている鎖国体制は元々かなり厳重だ。 お前さんたちですら、入国するのは手間だっただろ? それをかいくぐって継続的な密輸入が行われてるとなると── |
キセル | ……国の中枢に、『ネズミ』がいる。 |
キセル | 少なくとも幕臣、下手すると老中──要するに、 あんたたちの国の役職でいうと大臣以上の人間が この件に関わっている可能性が高ェんだ。 |
十手 | なんだって……! |
キセル | そういうわけで、カールが伝えてきた情報は今のところ、 この間の会合に参加した俺とイエヤスの間だけで留めてる。 |
グラース | ……ってことは、マスターたちにも伝えてねぇのか? |
キセル | おう。俺は伝えてもいいんじゃねぇかとも思ったんだが、 この情報がひとたび広まれば国中大混乱になりかねねェ。 |
キセル | それに、現状、傷を完全に消すくらいしか対処法はない。 が、国民に理由も明かさず貴銃士を消しちまうのも、 混乱の元になるし無理があるってもんだ。 |
キセル | さらに言えば、この情報を知ること自体が危険だ。 マスターが精神的に不安定になって、 傷の悪化が早まる可能性があるって面でもな。 |
キセル | ネズミがどこに潜んでいるかわからない以上、 情報の扱いには最新の注意を払わなきゃなんねェ。 てめぇらも用心しろよ? |
主人公 | 【忠告ありがとうございます】 【気をつけます】 |
キセル | っと、そろそろ歌舞妓町を出た方がいい頃合いだな。 門まで送っていくぜ。 せせらぎと柳の風情を楽しみつつのんびり行こうや。 |
グラース | 風情……か。 僕のすさんだ心にも風を運んでくれるかな。 |
キセル | ……ん? |
鷲ヶ前組組員 | キセルの兄貴! |
キセル | おうおう、慌ててどうした? |
鷲ヶ前組組員 | 表通りの店で、客と店主がモメにモメちまって……! 酒の入った野次馬まで加わって大乱闘なんでさァ! |
キセル | そいつは人手が必要そうだな。 よし、すぐ行く。 〇〇たち、すまねェが……。 |
主人公 | 【こちらは気にしないでください】 【ここまでありがとうございました】 |
十手 | 歌舞妓町も2回目だし、自分たちだけで帰れるから大丈夫さ。 それより、早く行ってあげてくれ。 |
キセル | 助かるぜ。 じゃあ、またな! |
〇〇たちは、歌舞妓町を流れる川に沿って、
門を目指して歩き始めた。
グラース | はぁー……。 |
---|---|
十手 | グラース君、大丈夫かい? 元気を出してくれよ……! |
主人公 | 【どうしたの?】 【何かあった?】 |
十手 | 茶屋の看板娘のおひさちゃんが全く脈なしだったんだって。 グラース君の口説きに微塵もなびかず、彼氏さん一筋! |
グラース | はぁ……。 魅力的な人に出会って、同時に失恋も味わうなんて…… この世はなんて不条理なんだ。くぅっ……! |
グラース | もう、今日はふて寝したい気分だ。 お偉方との退屈な集まりなんてさっさと終わらせようぜ。 っていうか、門にはまだ着かないのか? |
十手 | うーむ……。 川沿いに歩いていけばそう遠くないと思ったんだが……。 |
主人公 | 【誰かに道を聞こう】 【案内板とかないかな】 |
十手 | 面目ない……! ええーっと……? |
周囲を見回した十手は、
柳の木の下に男性が佇んでいることに気づいた。
??? | うーん……むーん……。 よし、閃いた! |
---|---|
??? | 『川べりの 柳に風吹き きれいだな』 |
??? | いや、こっちの方がいいか? 『せせらぎの さらさら流れて きれいだな』 むむ……『夕まぐれ 綿雲ぽっかり きれいだな』も捨てがたい。 |
??? | うぅーん……。 |
十手 | 独り言……? あれは俳句かな……? |
主人公 | 【なんだか悩んでいるみたい】 【道を尋ねてもいいものか……】 |
〇〇たちが男性の様子を窺っていると、
彼が不意にくるりと振り返り、3人の方を見る。
??? | 君たち、俳句はたしなむかい? 今の句、どう思った? |
---|---|
十手 | えっ! えーと……。 |
十手 | (『川べりの 柳に風吹き きれいだな』 だっけ? うぅん……) |
グラース | 求めてるのは世辞か? それとも率直な意見? |
??? | それは勿論、率直な意見だ。 |
グラース | なら、遠慮なく言わせてもらうぜ。 ……ド下手。 |
十手 | グ、グラース君!? 初対面の人にそんな言い方は……! |
グラース | ハイクはよく知らねぇが、要するに短詩だろ? 見たままの安直な感想じゃ、詩とは言えねぇだろ。 なんの深みも美しさもない。 |
十手 | これじゃあ、率直というより辛辣だよ……! |
??? | …………。 |
十手 | (お、怒らせてしまったかも……! 喧嘩にならないように、この場をどうにか収めないと……!) |
??? | ……だよねぇ。 |
??? | いや、そう言ってもらいたかったのかもしれない。 私の中の小さな俳人も、 「こりゃちょっと違うんじゃないか?」と声を上げてる。 |
??? | しかし、どこをどうしたらいいのかわからないんだ! |
グラース | どこをどう? んなもんわかりきってる。 |
グラース | さっきも言ったけど、安直すぎる。 特に『きれいだな』なんて、最悪だぜ? まずはこれを直せ。 |
??? | ほうほう! |
グラース | それに、なんか重複してるのもなかったか? あー、そうだ。せせらぎと、さらさら流れってやつ。 短詩で似たようなことばっかり書くのは無駄だしくどいだろ。 |
十手 | ははぁ……なるほど、確かに。 俳句ってのは世界で一番短い詩だと聞いたことがあるよ。 五七五の中で表現するんだから、重複はもったいないね。 |
主人公 | 【全部合体させたらどうですか?】 【余分なところを全部削ったらどうなります?】 |
??? | よぉし、一丁考えてみよう! |
??? | ……『綿雲に 柳せせらぐ 夕まぐれ』 おおおお~~~っ! こいつはいいねぇ! |
??? | いやあ、ありがとう! おかげで、いい句ができたよ! |
??? | あ、っと。 名乗りそこねてしまったなぁ。失敬。 |
鈴さん | 私のことは『鈴さん』とでも呼んでくれ。 みんなにはそう呼ばれてるもんでね。 |
鈴さん | ここいらでは見ない顔だね。 外から来た人かな、珍しいもんだ。 |
十手 | まあ、そんなところなんですが。 ちょっと困っていることがあって……。 |
主人公 | 【実は……】 |
門の方向が合っているのかわからず困っていることを
〇〇が伝えようとした時だった。
通りの方から、悲鳴と怒号が聞こえてくる。
十手 | 何事だろう……? 行ってみようか。 |
---|
3人と『鈴さん』が騒ぎの方へ駆けつけると、
そこでは2人の男が睨み合っていた。
男1 | てめぇ……人の女にちょっかい出しやがって!! |
---|---|
男2 | ああ? 何の話だ! なんなんだてめぇはよ! |
鈴さん | ちょいと、お2人さん。 色男が往来で大声出してどうしたってんだい? |
男1&男2 | あぁ……? |
鈴さん | あんまり物騒なことはやめといた方が……。 |
男1 | うるせぇ!! |
鈴さん | うおっと!! |
突き飛ばそうとしてきた男の手を、鈴さんは間一髪かわした。
野次馬 | なんだ、また鈴さんがお人好しで喧嘩に首突っ込んでんのか! 鈴さん、ケガするなよ~! |
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グラース | (……へぇ? さらっと躱した。あいつ、目がいいな。 ビビってもねぇし、度胸がある) |
男1 | てめぇ、ちょこまか逃げ回りやがって……! |
ムキになって掴みかかろうとする男の手を、
鈴さんはひらひらと避け、男は触れることすらできない。
グラース | おい、避けるばっかりかよ。 さっさと取り押さえちまえばいいだろ。 |
---|---|
鈴さん | いやいや、避けるので精一杯さ。 わっ! おっとっと! |
躓いたのが好機とばかりに男は鈴さんに殴りかかる。
しかしそれもするりと避けられ、
大振りな動きで拳を振るった男は、バランスを崩して倒れ込んだ。
男1 | うおわぁっ! |
---|---|
野次馬 | おおお~~! |
鈴さん | ふぅ~、参った参った。 ……ところで、お2人さん。 |
鈴さん | 何がきっかけでこんな喧嘩になっちまったんだ? よかったら聞かせてくれよ。 |
男1 | あの野郎が、俺の女と2人で歩いてたんだ! やけに仲よさそうにしやがってよぉ! |
男2 | 女だぁ? 俺は別に女なんざ……あっ。 |
男2 | その女ってのは、今日は……薄桃の着物を着ていた娘か? 髪が長くて色白のべっぴんだな? |
男1 | おう、そうだ。 あいつは美人だと思う、うん。 |
男2 | ありゃ、俺の妹だよ! |
男1 | へ……? |
男2 | 最近、いい恋人ができたってんで惚気話を聞きに 流行りの茶屋に行ったんだよ。 |
鈴さん | ははー! じゃあ、お前さんの早とちりだったんだねぇ。 それにしても、お兄さん。妹さんは幸せ者だよぉ。 |
男2 | 幸せ? こんな粗忽な乱暴者が恋人でもか? |
鈴さん | 確かに早とちりが過ぎちまったが、 彼女のことを大事に思ってるってのは間違いないだろ? |
鈴さん | 彼女を責めるんじゃなく、男の方を問い詰めに来てるしな。 真っ直ぐなヤツじゃあないか。 |
男2 | ……言われてみりゃあ、確かにそうか。 |
鈴さん | 誤解も解けたことだ。 一杯飲みに行ってみるってのはどうだい? |
鈴さんに取り持たれて、
男たちは近くの居酒屋に入っていった。
十手 | すごいな、見事に喧嘩を収めてしまったよ。 |
---|---|
野次馬 | おや。あんたら、鈴さんに会うのは初めてかい? 『柳の鈴』って呼ばれててね。時々ふらっと現れては、 ああやって困りごとを解決してくれるのさ。 |
野次馬 | 拳も困り事も、ひらひらと柔らかくいなしちまう。 ああいうのが、本当の武士(もののふ)ってんだね! 俳句も下手で喧嘩も弱いけれどもね! |
十手 | (喧嘩が弱い……? けど、あれは……いや、言うのも野暮かな) |
鈴さん | そういや話の途中だったな。 お前さんたちも困りごとがあるんだって? |
鈴さん | 俳句を見てもらった礼に、 茶でも飲みながらお悩み相談ってのはどうだい? |
グラース | いや。僕たちは先を急ぐんでね。 |
鈴さん | おっと、そいつは残念! それじゃ、日ノ本を楽しんでってくれよ。 |
主人公 | 【行ってしまった】 【掴みどころのない人だったね】 |
十手 | ……って、しまった! 門への道を聞きそびれてしまったな……。 |
葛城 | 〇〇殿! 皆さん! こちらにいらっしゃいましたか! |
十手 | 君たちは……! |
八九 | 門のところでって伝えてあっただろ。 時間になっても全然来ねーから迎えに来たぜ。 まったく……。 |
十手 | 八九君! よくここがわかったね。 |
八九 | そこらの奴に聞いたらすぐわかったぜ。 外国からの観光客なんて珍しいからな。 お前ら、滅茶苦茶注目されてんぞ。 |
グラース | ふっ……僕の美しさのせいもあるだろうね。 |
主人公 | 【迷ってしまって……すみません】 【ご面倒をおかけしました……】 |
葛城 | このあたりは道が入り組んでおりますからね。 小生もいまだに迷うことがありますよ! |
葛城 | っと、失敬! まずは賓客の皆様にご挨拶をば! 葛城輝彦二佐、イギリスからの客人をお迎えにあがりました! |
葛城 | 狭い車内で申し訳ございません。 改めて……葛城輝彦と申します。 |
---|---|
葛城 | 此度は皆様の滞在中のお世話を仰せつかりました! 八九殿のマスターも拝命しております! |
主人公 | 【〇〇です】 【お世話になります】 |
八九 | ……っす。久しぶり。 んで、そっちの新顔は……? |
八九 | (うわ……近くで見るとなんかキラキラしてんな……。 目に悪いぜ、ったく……) |
グラース | Bonjour♪ お会いできて光栄だよ。 僕は〇〇の貴銃士、グラース。 日本の魅力をたくさん教えてくれる? |
八九 | ほわっ……? イケメンは性格がクソくらいで丁度いいだろうが……!? |
十手 | だ、大丈夫だよ八九君! 今のグラース君は猫かぶってるだけだから! |
グラース | おい、十手!! |
十手 | あ、あはは……。 えーっと、改めて……俺は十手。 また会えて嬉しいよ。今回もよろしく! |
十手 | それにしても、葛城君はお若いのに二佐なんて立派だね。 |
十手の言葉に、〇〇も大きく頷いた。
葛城は世界連合軍の平均的な二佐の年齢よりも、
ずっと若いように見える。
葛城 | 小生にはもったいない待遇ですが、 実は八九殿のマスターになった際に、二階級特進いたしまして! |
---|---|
グラース | ……ゲホッ! 不吉すぎるだろ!? |
葛城 | はは……! しかし、貴銃士のマスターとしての任務に 命を賭ける覚悟はできておりますのでっ! |
十手 | ……! |
八九 | はぁ……いちいち大げさだっつの。 |
葛城 | いえ、八九殿! マスターとなった時から、この葛城輝彦、 この命は日ノ本と八九殿に捧げる覚悟で生きておりますよ! |
八九 | ……はぁ、あっそ。 |
八九 | まあ、あんま気にしないでくれ。 こいつ、ずーーーっとこういうやつなんだよ。 熱血馬鹿っつーかさ……。 |
八九が召銃されて間もない頃──
部屋に引きこもってゲームばかりしていた八九は、
騒音に悩まされていた。
葛城 | 八九殿!! おはようございます、八九殿!! 朝です!!! |
---|---|
八九 | ……朝なのは知ってるっての。 |
葛城 | 八九殿~~!! 起きていらっしゃいますか!? 葛城一尉です! あ、いえ、二佐になったのでした!! |
八九 | うるせぇ……こちとら徹夜でマップ探索してんだぞ。 ぶっ殺すぞ、カスが。 |
葛城 | 爽やかな朝ですよ!! 散歩などいかがですか? 小生がお供いたします!!! 八九殿~~~~!!!! |
八九 | ……おい、いい加減にしろよ。 何度も言ってんだろ。うるせぇって。 |
八九 | 毎朝毎朝来るなって言ってんのがわかんねぇのか? |
葛城 | はっ! とはおっしゃいますが、しかしぜひ! |
八九 | ……チッ。 お前さ、自分がマスターだから撃たれねぇとでも? |
八九 | やったことはねーけど……今ここで試してみるか? |
在坂 | ……とうっ。 |
八九 | うおっ!? |
在坂 | 八九は、また徹夜をしたのか。 目の下のクマが濃くなっている。 |
邑田 | やれやれ、嘆かわしい。 在坂が手加減をしてもなお、尻もちか。 鍛錬が足りんようじゃのう。 |
八九 | はぁ!? 不意打ちしといて、鍛錬もクソもあるか! |
葛城 | 邑田殿、在坂殿! おはようございます!! |
葛城 | ぜひとも、朝の散歩にいらっしゃいませんか! 基地内の山に景色のよいルートがあるのです!! |
邑田 | よし、では付き合ってやるとするか。 ほれ、行くぞ八九! |
在坂 | 景色がいいなら、そこで朝食を食べるといい。 |
八九 | は……? 荷物増えるだろ、それ。 |
在坂 | 問題ない。八九がすべて運べばいいだけだ。 |
八九 | は……!? |
葛城 | 小生も手伝います!! さあ、参りましょう!!! |
八九 | ってことが毎日のようにあってな。 マジでしつこいんだわ、こいつ。 |
---|---|
葛城 | はっはっは! 懐かしい!! |
八九 | 正直、ぜってぇこんな奴とはやっていけねぇと思った。 |
葛城 | なんと! 小生は八九殿に一目お会いした時から、 こう、ビビッと感じるものがございましたよ!! |
八九 | キモいこと言うなって……。 |
十手 | ははは! マスターと貴銃士の仲がいいのはいいことだねぇ。 |
グラース | ……なあ。八九って、世界帝軍にも同じ種類の銃がいただろ。 自衛軍で目の敵にされてないのか? |
八九 | ……あー。 |
十手 | そうか、グラース君は知らないんだよね。 実は八九君は、その……。 |
主人公 | 【『その』八九だよ】 【世界帝軍にいた貴銃士本人だ】 |
グラース | はっ!? それ知ってて、自衛軍に置いてるってのか!? |
グラース | フランスじゃ絶対! 絶対にありえねぇ……! |
八九 | 俺だって信じられなかったけどよ……。 |
八九 | この国の平和を守るって、な、何言ってんだ!? 俺は世界帝の銃だったんだぞ? お前らにとっては「悪」だろ、どうせ!! |
---|---|
八九 | 俺を呼び覚ました本当の目的はなんだ!? 何企んでやがる! |
幕府重鎮1 | ……はっはっは。 血相を変えて何を言うかと思えば。 |
幕府重鎮1 | 物を使うのは人。貴銃士も元は物なれば、 持ち主が変わればあり方も変わる。 ……我らはそう判断したまでのこと。 |
幕府重鎮2 | その力、悪しきことに使わねばよい。 |
幕府重鎮1 | 頼りにしておるぞ、八九、葛城。 |
八九 | ま、実際こうなってるんじゃしょうがないっつーか。 |
---|---|
葛城 | 貴銃士の召銃は、日美子様の予言によって決定されました。 表だって八九殿の召銃に反対する者はおりません。 |
グラース | ヒミコって? |
葛城 | 当代将軍である泰澄様の妹君であり、 桜國幕府の神子(みこ)様であります! |
葛城 | 神子というのは……桜國家に時折生まれる、 未来を視る力を持つ特別なお方です。 |
葛城 | 祈りの最中や、あるいは眠っている際に、 夢の形で予言を授かるのだとか……。 |
グラース | はぁ? そんなのアリかよ! じゃあ未来のことがなんでもわかってるのか? |
葛城 | いえ、知りたい未来を必ず知り得るわけではありません。 いつ、どんな予知が得られるのかは、 日美子様自身にもおわかりにならないのだと聞いております。 |
葛城 | 特に、ご自身に関する予知は得られないのだとか。 ですが、日ノ本のためにそのお力を使っていらっしゃるのです! |
十手 | それはなんとも神秘的な話だなぁ。 俺も前回は夢のお告げに導かれたし……。 |
---|---|
グラース | 今時予言って……この国の奴らは、本気で信じてるのかよ。 そんな不確かなものに基づいて、政治が動くこともあんのか? |
葛城 | ええ。前回、〇〇殿と十手殿を 日ノ本にお招きしたのも、日美子様の予言があったからです。 『欧州にいる日本ゆかりの貴銃士に吉あり』と。 |
グラース | マジかよ……。 そいつが適当なこと言ってたらどうするんだよ。 |
葛城 | 日美子様に限って、そのようなことはありませんよ。 |
グラース | お前、そいつに会ったことあるのか? |
葛城 | いえ。日美子様は神子としての感覚を研ぎ澄ますため、 身を清め、世俗との接触を絶っておられます。 国民は誰もそのお姿を見たことはありません。 |
十手 | そうかぁ……。 でも、確かに俺たちが前回来た時には……。 |
主人公 | 【十手が絶対高貴になれたね】 →十手「そうだね。少なくとも俺には吉があったかなぁ。 キセル君や八九君たちとも出会えたしね!」 【大黒屋の悪事を暴くことになった】 →十手「うん。 日ノ本にとっても一応、吉と言える結果になったかな。」 |
十手 | ああ、そうだ。 邑田君と在坂君は元気にしているかい? |
八九 | あー、あいつらはあとで合流するぜ。 なんか、変な茶会に呼ばれててよ。 |
十手 | 茶会? |
八九 | さあ、詳しくは知らねぇ。 ってか、俺的にはこのまま別行動がいいんだけどな……。 |
葛城 | ははは! 八九殿は冗談が上手い! お2人といつも睦まじくされているではないですか! |
八九 | おまっ……あれが睦まじく見えてんのか? マジだったら病院行け! |
主人公 | 【(……葛城さんの薔薇の傷……)】 【(二階級特進、か……)】 |
葛城 | どうされました、〇〇殿? |
〇〇は、先程のキセルの話を思い返す。
彼の言う通り、結晶が複数種類あることは、
迂闊に明かせば知った人を危険にしかねない情報だ。
しかし、薔薇の傷が悪化すると様々な悪影響が出ることは、
結晶に関する部分は伏せたままでも伝えられる。
それにこの情報は知っておいた方が、
適切に傷をコントロールできて安全につながるはずだ。
主人公 | 【少し、お話があります】 |
---|---|
葛城 | む……? 何やら深刻そうなご様子ですね。 小生でよければもちろんお聞きしますよ! |
──〇〇は、薔薇の傷が悪化しすぎると、
貴銃士がアウトレイジャーに変じてしまう可能性があると伝えた。
傷の状態は、マスターの精神・肉体の健康にも左右され、
貴銃士が絶対非道を使うと急速に悪化することも。
葛城 | ふむ、なるほど……。 桂幕僚長から海外で貴銃士がアウトレイジャー化したらしいと 話を伺ったことがありましたが、そういうことだったのですね。 |
---|---|
葛城 | ですが、詳細な条件や過程については知りませんでした。 あまり大っぴらにできない話でしょうに、 教えていただきありがとうございます。 |
八九 | ……俺たちも下手すると、 アウトレイジャーになりかねねぇってことか。 |
八九 | どうにか止める方法はあるのか? |
十手 | まずは、傷が悪化しすぎないように注意することだね。 俺が日本にいる間は協力できるから、いつでも言ってくれ! |
グラース | もしも……アウトレイジャー化が始まっちまったら、 対処法は限られてる。 |
グラース | 1つ目……これが一番穏便な方法。 マスターの傷を絶対高貴で完治させて、消す。 そうすりゃまた召銃も可能だ。実例があるぜ。 |
グラース | ただ、取り返しがつくのは、まだ自我が少しでも残ってる状態の、 アウトレイジャーに堕ちきっていない時だけだと思う。 |
グラース | お前らも感覚でわかるだろ? アウトレイジャーと僕たち貴銃士は別物だって。 |
グラース | 僕たちが普段倒しているようなアウトレイジャーは…… もう、別の存在に変質しちまってる気がする。 ああなっちまったらマスターの傷を消そうが無駄かもな。 |
八九 | あー……なんとなくわかる気がするぜ。 あいつらは、破壊衝動に取り憑かれた怨念みてぇだしな。 差し詰め、生身の人間と怨霊くらい違いがあるってことか。 |
十手 | 怨霊はどう頑張ったところで生きた人間には戻せない……。 なるほど、確かにその通りだね。 |
十手 | 完全にアウトレイジャーになる時…… 貴銃士としては、死んだも同然になってしまうのかもしれない。 |
グラース | だから、まだ間に合う段階で……に限定されるが、 貴銃士を温存してぇけど絶対高貴を使える奴がそばにいない場合、 マスターを殺すってのも対処法の1つになる。 |
葛城 | ……! |
十手 | うーん……それは選択肢って言えるのかなぁ。 あっちゃあならないことだと思うんだが……。 |
グラース | 銃は壊さずに、貴銃士体に致命傷を与えて銃に戻すのもアリか? けど、アウトレイジャーは本体を破壊するか、 絶対高貴か絶対非道を浴びせないと止まらねぇしな。 |
十手 | アウトレイジャーになりかけの状態だと、 貴銃士とは同じようにいかない可能性もあるね……。 |
グラース | だからまあ、絶対高貴になれる奴がすぐそばにいないなら、 ほぼ詰みの状態だ。 対策は……とにかく、傷の状態に気を配るしかねぇ。 |
葛城 | ……貴重な情報をありがとうございます。 十分に気を付けるようにいたします。 |
葛城 | そして、もしもの時にどう動くのか考え── 常に、覚悟をしておきます。 |
八九 | …………。 |
葛城 | おっと! もうそろそろ到着しそうですね。 皆さん、支度をお願いいたします。 |
葛城 | あれが桜國城。 我が国の幕府の拠点です! |
主人公 | 【(将軍はどんな人なんだろう……!)】 【(イエヤスさんもいるのかな……?)】 |
グラース | おい、固くなるにはまだ早いぜ? それに、〇〇がマナー違反しそうになったら、 テーブルの下で足を蹴ってやるから安心しろよ。 |
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