日本編Ⅱ:第6話~第10話

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第6話:キセルの忠告

キセルの案内で、3人は小川のほとりにやってきた。
歌舞妓町の喧騒から離れた静かな場所で、周囲に人影はない。

キセル日ノ本じゃあ、大黒屋を潰した効果か、
あれ以降アウトレイジャーが派手に暴れたりはしてねェ。
キセルだが、ポツポツとあちこちに出没しててな、
自衛軍が対処してるって話だ。
ま、海外に比べりゃあずっと状況はマシだな。
キセルパチもんの結晶がアウトレイジャー出現の原因だとして、
日ノ本国内で作られてねェ限り、
外から入る量はたかが知れてる。
十手日ノ本でのアウトレイジャー出現が遅かったのは、
鎖国政策がいい方向に働いたからと見てよさそうだね。
キセルそれでも、将軍に自衛軍の桂のおっさん、葛城って若ェのと、
うちの若頭(カシラ)……4人も得体の知れねぇ結晶で
マスターになっちまってるわけだが。
キセル……いや、まだ全員がパチもんの結晶を使ったとは限らねぇか。
けど、本物の結晶は触れりゃあほぼ確実に死ぬような
危険なシロモノだからな。
キセル十中八九本物じゃねぇとして……
世界各国に安全なようで危険な結晶を斡旋してるやつがいる。
やれやれ、とんでもねェこった。
十手結晶の出処の人物、あるいは組織が、
その危険性を把握していたかも気になるな……。
十手安全に貴銃士のマスターになれる結晶を作ったつもりが、
そこには秘められた危険性があったのか……
それとも、知った上であちこちに流通させているのか。
キセル前者なら浅はかだがまだ救いはある。
問題は後者だった場合だな。
十手うん……。如何せん、まだわからないことだらけだね。
大黒屋が摘発されたあとも、
アウトレイジャーの出没が続いているというのも気がかりだよ。
キセルああ。誰がどうやったのかはわからねェが、
結晶を密輸入する、細いが確かな道ができちまってるんだろう。
キセル正直なところ、それが特に厄介だ。
主人公【どういうことでしょう?】
【水際対策を強化しても駄目ですか?】
キセル……幕府が敷いている鎖国体制は元々かなり厳重だ。
お前さんたちですら、入国するのは手間だっただろ?
それをかいくぐって継続的な密輸入が行われてるとなると──
キセル……国の中枢に、『ネズミ』がいる。
キセル少なくとも幕臣、下手すると老中──要するに、
あんたたちの国の役職でいうと大臣以上の人間が
この件に関わっている可能性が高ェんだ。
十手なんだって……!
キセルそういうわけで、カールが伝えてきた情報は今のところ、
この間の会合に参加した俺とイエヤスの間だけで留めてる。
グラース……ってことは、マスターたちにも伝えてねぇのか?
キセルおう。俺は伝えてもいいんじゃねぇかとも思ったんだが、
この情報がひとたび広まれば国中大混乱になりかねねェ。
キセルそれに、現状、傷を完全に消すくらいしか対処法はない。
が、国民に理由も明かさず貴銃士を消しちまうのも、
混乱の元になるし無理があるってもんだ。
キセルさらに言えば、この情報を知ること自体が危険だ。
マスターが精神的に不安定になって、
傷の悪化が早まる可能性があるって面でもな。
キセルネズミがどこに潜んでいるかわからない以上、
情報の扱いには最新の注意を払わなきゃなんねェ。
てめぇらも用心しろよ?
主人公【忠告ありがとうございます】
【気をつけます】
キセルっと、そろそろ歌舞妓町を出た方がいい頃合いだな。
門まで送っていくぜ。
せせらぎと柳の風情を楽しみつつのんびり行こうや。
グラース風情……か。
僕のすさんだ心にも風を運んでくれるかな。
キセル……ん?
鷲ヶ前組組員キセルの兄貴!
キセルおうおう、慌ててどうした?
鷲ヶ前組組員表通りの店で、客と店主がモメにモメちまって……!
酒の入った野次馬まで加わって大乱闘なんでさァ!
キセルそいつは人手が必要そうだな。
よし、すぐ行く。
〇〇たち、すまねェが……。
主人公【こちらは気にしないでください】
【ここまでありがとうございました】
十手歌舞妓町も2回目だし、自分たちだけで帰れるから大丈夫さ。
それより、早く行ってあげてくれ。
キセル助かるぜ。
じゃあ、またな!

第7話:樹下の詩人

〇〇たちは、歌舞妓町を流れる川に沿って、
門を目指して歩き始めた。

グラースはぁー……。
十手グラース君、大丈夫かい?
元気を出してくれよ……!
主人公【どうしたの?】
【何かあった?】
十手茶屋の看板娘のおひさちゃんが全く脈なしだったんだって。
グラース君の口説きに微塵もなびかず、彼氏さん一筋!
グラースはぁ……。
魅力的な人に出会って、同時に失恋も味わうなんて……
この世はなんて不条理なんだ。くぅっ……!
グラースもう、今日はふて寝したい気分だ。
お偉方との退屈な集まりなんてさっさと終わらせようぜ。
っていうか、門にはまだ着かないのか?
十手うーむ……。
川沿いに歩いていけばそう遠くないと思ったんだが……。
主人公【誰かに道を聞こう】
【案内板とかないかな】
十手面目ない……!
ええーっと……?

周囲を見回した十手は、
柳の木の下に男性が佇んでいることに気づいた。

???うーん……むーん……。
よし、閃いた!
???『川べりの 柳に風吹き きれいだな』
???いや、こっちの方がいいか?
『せせらぎの さらさら流れて きれいだな』
むむ……『夕まぐれ 綿雲ぽっかり きれいだな』も捨てがたい。
???うぅーん……。
十手独り言……? あれは俳句かな……?
主人公【なんだか悩んでいるみたい】
【道を尋ねてもいいものか……】

〇〇たちが男性の様子を窺っていると、
彼が不意にくるりと振り返り、3人の方を見る。

???君たち、俳句はたしなむかい?
今の句、どう思った?
十手えっ! えーと……。
十手(『川べりの 柳に風吹き きれいだな』
だっけ? うぅん……)
グラース求めてるのは世辞か?
それとも率直な意見?
???それは勿論、率直な意見だ。
グラースなら、遠慮なく言わせてもらうぜ。
……ド下手。
十手グ、グラース君!?
初対面の人にそんな言い方は……!
グラースハイクはよく知らねぇが、要するに短詩だろ?
見たままの安直な感想じゃ、詩とは言えねぇだろ。
なんの深みも美しさもない。
十手これじゃあ、率直というより辛辣だよ……!
???…………。
十手(お、怒らせてしまったかも……!
喧嘩にならないように、この場をどうにか収めないと……!)
???……だよねぇ。
???いや、そう言ってもらいたかったのかもしれない。
私の中の小さな俳人も、
「こりゃちょっと違うんじゃないか?」と声を上げてる。
???しかし、どこをどうしたらいいのかわからないんだ!
グラースどこをどう? んなもんわかりきってる。
グラースさっきも言ったけど、安直すぎる。
特に『きれいだな』なんて、最悪だぜ?
まずはこれを直せ。
???ほうほう!
グラースそれに、なんか重複してるのもなかったか?
あー、そうだ。せせらぎと、さらさら流れってやつ。
短詩で似たようなことばっかり書くのは無駄だしくどいだろ。
十手ははぁ……なるほど、確かに。
俳句ってのは世界で一番短い詩だと聞いたことがあるよ。
五七五の中で表現するんだから、重複はもったいないね。
主人公【全部合体させたらどうですか?】
【余分なところを全部削ったらどうなります?】
???よぉし、一丁考えてみよう!
???……『綿雲に 柳せせらぐ 夕まぐれ』
おおおお~~~っ! こいつはいいねぇ!
???いやあ、ありがとう!
おかげで、いい句ができたよ!
???あ、っと。
名乗りそこねてしまったなぁ。失敬。
鈴さん私のことは『鈴さん』とでも呼んでくれ。
みんなにはそう呼ばれてるもんでね。
鈴さんここいらでは見ない顔だね。
外から来た人かな、珍しいもんだ。
十手まあ、そんなところなんですが。
ちょっと困っていることがあって……。
主人公【実は……】

門の方向が合っているのかわからず困っていることを
〇〇が伝えようとした時だった。
通りの方から、悲鳴と怒号が聞こえてくる。

十手何事だろう……?
行ってみようか。

第8話:『柳の鈴』

3人と『鈴さん』が騒ぎの方へ駆けつけると、
そこでは2人の男が睨み合っていた。

男1てめぇ……人の女にちょっかい出しやがって!!
男2ああ? 何の話だ!
なんなんだてめぇはよ!
鈴さんちょいと、お2人さん。
色男が往来で大声出してどうしたってんだい?
男1&男2あぁ……?
鈴さんあんまり物騒なことはやめといた方が……。
男1うるせぇ!!
鈴さんうおっと!!

突き飛ばそうとしてきた男の手を、鈴さんは間一髪かわした。

野次馬なんだ、また鈴さんがお人好しで喧嘩に首突っ込んでんのか!
鈴さん、ケガするなよ~!
グラース(……へぇ? さらっと躱した。あいつ、目がいいな。
ビビってもねぇし、度胸がある)
男1てめぇ、ちょこまか逃げ回りやがって……!

ムキになって掴みかかろうとする男の手を、
鈴さんはひらひらと避け、男は触れることすらできない。

グラースおい、避けるばっかりかよ。
さっさと取り押さえちまえばいいだろ。
鈴さんいやいや、避けるので精一杯さ。
わっ! おっとっと!

躓いたのが好機とばかりに男は鈴さんに殴りかかる。
しかしそれもするりと避けられ、
大振りな動きで拳を振るった男は、バランスを崩して倒れ込んだ。

男1うおわぁっ!
野次馬おおお~~!
鈴さんふぅ~、参った参った。
……ところで、お2人さん。
鈴さん何がきっかけでこんな喧嘩になっちまったんだ?
よかったら聞かせてくれよ。
男1あの野郎が、俺の女と2人で歩いてたんだ!
やけに仲よさそうにしやがってよぉ!
男2女だぁ?
俺は別に女なんざ……あっ。
男2その女ってのは、今日は……薄桃の着物を着ていた娘か?
髪が長くて色白のべっぴんだな?
男1おう、そうだ。
あいつは美人だと思う、うん。
男2ありゃ、俺の妹だよ!
男1へ……?
男2最近、いい恋人ができたってんで惚気話を聞きに
流行りの茶屋に行ったんだよ。
鈴さんははー!
じゃあ、お前さんの早とちりだったんだねぇ。
それにしても、お兄さん。妹さんは幸せ者だよぉ。
男2幸せ?
こんな粗忽な乱暴者が恋人でもか?
鈴さん確かに早とちりが過ぎちまったが、
彼女のことを大事に思ってるってのは間違いないだろ?
鈴さん彼女を責めるんじゃなく、男の方を問い詰めに来てるしな。
真っ直ぐなヤツじゃあないか。
男2……言われてみりゃあ、確かにそうか。
鈴さん誤解も解けたことだ。
一杯飲みに行ってみるってのはどうだい?

鈴さんに取り持たれて、
男たちは近くの居酒屋に入っていった。

十手すごいな、見事に喧嘩を収めてしまったよ。
野次馬おや。あんたら、鈴さんに会うのは初めてかい?
『柳の鈴』って呼ばれててね。時々ふらっと現れては、
ああやって困りごとを解決してくれるのさ。
野次馬拳も困り事も、ひらひらと柔らかくいなしちまう。
ああいうのが、本当の武士(もののふ)ってんだね!
俳句も下手で喧嘩も弱いけれどもね!
十手(喧嘩が弱い……?
けど、あれは……いや、言うのも野暮かな)
鈴さんそういや話の途中だったな。
お前さんたちも困りごとがあるんだって?
鈴さん俳句を見てもらった礼に、
茶でも飲みながらお悩み相談ってのはどうだい?
グラースいや。僕たちは先を急ぐんでね。
鈴さんおっと、そいつは残念!
それじゃ、日ノ本を楽しんでってくれよ。
主人公【行ってしまった】
【掴みどころのない人だったね】
十手……って、しまった!
門への道を聞きそびれてしまったな……。
葛城〇〇殿! 皆さん!
こちらにいらっしゃいましたか!
十手君たちは……!
八九門のところでって伝えてあっただろ。
時間になっても全然来ねーから迎えに来たぜ。
まったく……。
十手八九君! よくここがわかったね。
八九そこらの奴に聞いたらすぐわかったぜ。
外国からの観光客なんて珍しいからな。
お前ら、滅茶苦茶注目されてんぞ。
グラースふっ……僕の美しさのせいもあるだろうね。
主人公【迷ってしまって……すみません】
【ご面倒をおかけしました……】
葛城このあたりは道が入り組んでおりますからね。
小生もいまだに迷うことがありますよ!
葛城っと、失敬! まずは賓客の皆様にご挨拶をば!
葛城輝彦二佐、イギリスからの客人をお迎えにあがりました!

 

第9話:八九の事情

葛城狭い車内で申し訳ございません。
改めて……葛城輝彦と申します。
葛城此度は皆様の滞在中のお世話を仰せつかりました!
八九殿のマスターも拝命しております!
主人公【〇〇です】
【お世話になります】
八九……っす。久しぶり。
んで、そっちの新顔は……?
八九(うわ……近くで見るとなんかキラキラしてんな……。
目に悪いぜ、ったく……)
グラースBonjour♪ お会いできて光栄だよ。
僕は〇〇の貴銃士、グラース。
日本の魅力をたくさん教えてくれる?
八九ほわっ……?
イケメンは性格がクソくらいで丁度いいだろうが……!?
十手だ、大丈夫だよ八九君!
今のグラース君は猫かぶってるだけだから!
グラースおい、十手!!
十手あ、あはは……。
えーっと、改めて……俺は十手。
また会えて嬉しいよ。今回もよろしく!
十手それにしても、葛城君はお若いのに二佐なんて立派だね。

十手の言葉に、〇〇も大きく頷いた。
葛城は世界連合軍の平均的な二佐の年齢よりも、
ずっと若いように見える。

葛城小生にはもったいない待遇ですが、
実は八九殿のマスターになった際に、二階級特進いたしまして!
グラース……ゲホッ! 不吉すぎるだろ!?
葛城はは……!
しかし、貴銃士のマスターとしての任務に
命を賭ける覚悟はできておりますのでっ!
十手……!
八九はぁ……いちいち大げさだっつの。
葛城いえ、八九殿!
マスターとなった時から、この葛城輝彦、
この命は日ノ本と八九殿に捧げる覚悟で生きておりますよ!
八九……はぁ、あっそ。
八九まあ、あんま気にしないでくれ。
こいつ、ずーーーっとこういうやつなんだよ。
熱血馬鹿っつーかさ……。

八九が召銃されて間もない頃──
部屋に引きこもってゲームばかりしていた八九は、
騒音に悩まされていた。

葛城八九殿!!
おはようございます、八九殿!! 朝です!!!
八九……朝なのは知ってるっての。
葛城八九殿~~!! 起きていらっしゃいますか!?
葛城一尉です!
あ、いえ、二佐になったのでした!!
八九うるせぇ……こちとら徹夜でマップ探索してんだぞ。
ぶっ殺すぞ、カスが。
葛城爽やかな朝ですよ!! 散歩などいかがですか?
小生がお供いたします!!! 八九殿~~~~!!!!
八九……おい、いい加減にしろよ。
何度も言ってんだろ。うるせぇって。
八九毎朝毎朝来るなって言ってんのがわかんねぇのか?
葛城はっ! とはおっしゃいますが、しかしぜひ!
八九……チッ。
お前さ、自分がマスターだから撃たれねぇとでも?
八九やったことはねーけど……今ここで試してみるか?
在坂……とうっ。
八九うおっ!?
在坂八九は、また徹夜をしたのか。
目の下のクマが濃くなっている。
邑田やれやれ、嘆かわしい。
在坂が手加減をしてもなお、尻もちか。
鍛錬が足りんようじゃのう。
八九はぁ!? 不意打ちしといて、鍛錬もクソもあるか!
葛城邑田殿、在坂殿!
おはようございます!!
葛城ぜひとも、朝の散歩にいらっしゃいませんか!
基地内の山に景色のよいルートがあるのです!!
邑田よし、では付き合ってやるとするか。
ほれ、行くぞ八九!
在坂景色がいいなら、そこで朝食を食べるといい。
八九は……?
荷物増えるだろ、それ。
在坂問題ない。八九がすべて運べばいいだけだ。
八九は……!?
葛城小生も手伝います!!
さあ、参りましょう!!!

八九ってことが毎日のようにあってな。
マジでしつこいんだわ、こいつ。
葛城はっはっは! 懐かしい!!
八九正直、ぜってぇこんな奴とはやっていけねぇと思った。
葛城なんと!
小生は八九殿に一目お会いした時から、
こう、ビビッと感じるものがございましたよ!!
八九キモいこと言うなって……。
十手ははは!
マスターと貴銃士の仲がいいのはいいことだねぇ。
グラース……なあ。八九って、世界帝軍にも同じ種類の銃がいただろ。
自衛軍で目の敵にされてないのか?
八九……あー。
十手そうか、グラース君は知らないんだよね。
実は八九君は、その……。
主人公【『その』八九だよ】
【世界帝軍にいた貴銃士本人だ】
グラースはっ!?
それ知ってて、自衛軍に置いてるってのか!?
グラースフランスじゃ絶対! 絶対にありえねぇ……!
八九俺だって信じられなかったけどよ……。

八九この国の平和を守るって、な、何言ってんだ!?
俺は世界帝の銃だったんだぞ?
お前らにとっては「悪」だろ、どうせ!!
八九俺を呼び覚ました本当の目的はなんだ!?
何企んでやがる!
幕府重鎮1……はっはっは。
血相を変えて何を言うかと思えば。
幕府重鎮1物を使うのは人。貴銃士も元は物なれば、
持ち主が変わればあり方も変わる。
……我らはそう判断したまでのこと。
幕府重鎮2その力、悪しきことに使わねばよい。
幕府重鎮1頼りにしておるぞ、八九、葛城。

八九ま、実際こうなってるんじゃしょうがないっつーか。
葛城貴銃士の召銃は、日美子様の予言によって決定されました。
表だって八九殿の召銃に反対する者はおりません。
グラースヒミコって?
葛城当代将軍である泰澄様の妹君であり、
桜國幕府の神子(みこ)様であります!
葛城神子というのは……桜國家に時折生まれる、
未来を視る力を持つ特別なお方です。
葛城祈りの最中や、あるいは眠っている際に、
夢の形で予言を授かるのだとか……。
グラースはぁ? そんなのアリかよ!
じゃあ未来のことがなんでもわかってるのか?
葛城いえ、知りたい未来を必ず知り得るわけではありません。
いつ、どんな予知が得られるのかは、
日美子様自身にもおわかりにならないのだと聞いております。
葛城特に、ご自身に関する予知は得られないのだとか。
ですが、日ノ本のためにそのお力を使っていらっしゃるのです!

第10話:葛城の覚悟

十手それはなんとも神秘的な話だなぁ。
俺も前回は夢のお告げに導かれたし……。
グラース今時予言って……この国の奴らは、本気で信じてるのかよ。
そんな不確かなものに基づいて、政治が動くこともあんのか?
葛城ええ。前回、〇〇殿と十手殿を
日ノ本にお招きしたのも、日美子様の予言があったからです。
『欧州にいる日本ゆかりの貴銃士に吉あり』と。
グラースマジかよ……。
そいつが適当なこと言ってたらどうするんだよ。
葛城日美子様に限って、そのようなことはありませんよ。
グラースお前、そいつに会ったことあるのか?
葛城いえ。日美子様は神子としての感覚を研ぎ澄ますため、
身を清め、世俗との接触を絶っておられます。
国民は誰もそのお姿を見たことはありません。
十手そうかぁ……。
でも、確かに俺たちが前回来た時には……。
主人公【十手が絶対高貴になれたね】
→十手「そうだね。少なくとも俺には吉があったかなぁ。
キセル君や八九君たちとも出会えたしね!」

【大黒屋の悪事を暴くことになった】

→十手「うん。
日ノ本にとっても一応、吉と言える結果になったかな。」
十手ああ、そうだ。
邑田君と在坂君は元気にしているかい?
八九あー、あいつらはあとで合流するぜ。
なんか、変な茶会に呼ばれててよ。
十手茶会?
八九さあ、詳しくは知らねぇ。
ってか、俺的にはこのまま別行動がいいんだけどな……。
葛城ははは! 八九殿は冗談が上手い!
お2人といつも睦まじくされているではないですか!
八九おまっ……あれが睦まじく見えてんのか?
マジだったら病院行け!
主人公【(……葛城さんの薔薇の傷……)】
【(二階級特進、か……)】
葛城どうされました、〇〇殿?

〇〇は、先程のキセルの話を思い返す。
彼の言う通り、結晶が複数種類あることは、
迂闊に明かせば知った人を危険にしかねない情報だ。

しかし、薔薇の傷が悪化すると様々な悪影響が出ることは、
結晶に関する部分は伏せたままでも伝えられる。

それにこの情報は知っておいた方が、
適切に傷をコントロールできて安全につながるはずだ。

主人公【少し、お話があります】
葛城む……?
何やら深刻そうなご様子ですね。
小生でよければもちろんお聞きしますよ!

──〇〇は、薔薇の傷が悪化しすぎると、
貴銃士がアウトレイジャーに変じてしまう可能性があると伝えた。

傷の状態は、マスターの精神・肉体の健康にも左右され、
貴銃士が絶対非道を使うと急速に悪化することも。

葛城ふむ、なるほど……。
桂幕僚長から海外で貴銃士がアウトレイジャー化したらしいと
話を伺ったことがありましたが、そういうことだったのですね。
葛城ですが、詳細な条件や過程については知りませんでした。
あまり大っぴらにできない話でしょうに、
教えていただきありがとうございます。
八九……俺たちも下手すると、
アウトレイジャーになりかねねぇってことか。
八九どうにか止める方法はあるのか?
十手まずは、傷が悪化しすぎないように注意することだね。
俺が日本にいる間は協力できるから、いつでも言ってくれ!
グラースもしも……アウトレイジャー化が始まっちまったら、
対処法は限られてる。
グラース1つ目……これが一番穏便な方法。
マスターの傷を絶対高貴で完治させて、消す。
そうすりゃまた召銃も可能だ。実例があるぜ。
グラースただ、取り返しがつくのは、まだ自我が少しでも残ってる状態の、
アウトレイジャーに堕ちきっていない時だけだと思う。
グラースお前らも感覚でわかるだろ?
アウトレイジャーと僕たち貴銃士は別物だって。
グラース僕たちが普段倒しているようなアウトレイジャーは……
もう、別の存在に変質しちまってる気がする。
ああなっちまったらマスターの傷を消そうが無駄かもな。
八九あー……なんとなくわかる気がするぜ。
あいつらは、破壊衝動に取り憑かれた怨念みてぇだしな。
差し詰め、生身の人間と怨霊くらい違いがあるってことか。
十手怨霊はどう頑張ったところで生きた人間には戻せない……。
なるほど、確かにその通りだね。
十手完全にアウトレイジャーになる時……
貴銃士としては、死んだも同然になってしまうのかもしれない。
グラースだから、まだ間に合う段階で……に限定されるが、
貴銃士を温存してぇけど絶対高貴を使える奴がそばにいない場合、
マスターを殺すってのも対処法の1つになる。
葛城……!
十手うーん……それは選択肢って言えるのかなぁ。
あっちゃあならないことだと思うんだが……。
グラース銃は壊さずに、貴銃士体に致命傷を与えて銃に戻すのもアリか?
けど、アウトレイジャーは本体を破壊するか、
絶対高貴か絶対非道を浴びせないと止まらねぇしな。
十手アウトレイジャーになりかけの状態だと、
貴銃士とは同じようにいかない可能性もあるね……。
グラースだからまあ、絶対高貴になれる奴がすぐそばにいないなら、
ほぼ詰みの状態だ。
対策は……とにかく、傷の状態に気を配るしかねぇ。
葛城……貴重な情報をありがとうございます。
十分に気を付けるようにいたします。
葛城そして、もしもの時にどう動くのか考え──
常に、覚悟をしておきます。
八九…………。
葛城おっと!
もうそろそろ到着しそうですね。
皆さん、支度をお願いいたします。
葛城あれが桜國城。
我が国の幕府の拠点です!
主人公【(将軍はどんな人なんだろう……!)】
【(イエヤスさんもいるのかな……?)】
グラースおい、固くなるにはまだ早いぜ?
それに、〇〇がマナー違反しそうになったら、
テーブルの下で足を蹴ってやるから安心しろよ。

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