シャスポー | …………。 |
---|---|
タバティエール | シャスポー……大丈夫か? あまり頭痛が酷いなら医務室に……。 |
シャスポー | うるさいな。 僕を心配するなら喋りかけないでくれ。 それが1番の薬だってことは、お前ならわかるだろ。 |
恭遠 | おはよう。みんなそろってるか? 今日から新たに貴銃士特別クラスにやってきた、 3人を紹介する! |
恭遠 | ペンシルヴァニア、ケンタッキー、 そしてスプリングフィールドだ! では、1人ずつ挨拶を……。 |
ケンタッキー | あーっ! マスター!!! |
ケンタッキー | マスターじゃないっすか! もしかして自分たちのために見にきてくれたんすか!? |
主人公 | 【初日だからね】 【気になって】 |
ケンタッキー | ……くぅーっ!! お心遣い感謝っス! マジ感激っス!! |
ケンタッキー | 本当、アメリカではマジお世話になりました! 俺のこと貴銃士にしていただいてあざっす!! |
ケンタッキー | どうぞこれからよろしくお願いしまーっす!!! |
スプリングフィールド | ……よろしくお願いします……。 |
ペンシルヴァニア | はは……よろしく。 |
マークス&ライク・ツー | …………。 |
シャスポー&タバティエール | …………。 |
シャスポー | なんだい君は……突然そんな大声を……ッ! 頭が割れそうになったじゃないか!! |
シャスポー | 少しは頭痛で苦しんでいる人間の気持ちも 考えたらどうだい!? |
ケンタッキー | ああ? んだと偉そうに。 俺がマスターに挨拶してんだよ。 頭痛ぇなら黙って寝とけ、ホクロ! |
シャスポー | なっ、なんだって!? 古銃屈指の高性能さを誇るこの僕に、 なんて口の利き方をするんだ……! |
シャスポー | これだから民兵の銃は土臭くて嫌なんだよ。 君といたら〇〇に悪影響だ。 早く僕たちの前から消えてくれないか!? |
ケンタッキー | んだと……!? |
タバティエール | ま、まあまあ、落ち着けよシャスポー! |
ペンシルヴァニア | ケンタッキー、お前も落ち着くんだ……! |
ケンタッキー | るせぇ! 外野は黙ってろ! 俺は今コイツと話してんだよ! |
ケンタッキー | おい、お前シャスポーつったか? 民兵をバカにしやがったな。 ケンタッキー連隊は、俺のアツい魂そのものなんだよ! |
ケンタッキー | なんなら、今ここで決闘すっか? ケンタッキー連隊の名にかけて、狙撃の腕は譲らねぇ。 どこからでもその眉間ブチ抜いてやるぜ? あぁ!? |
シャスポー | ふん、そんな下手な挑発、 僕が乗るとでも思うのかい? くだらないね。 |
ケンタッキー | んなこと言って、 俺に負けるのが怖ぇんだろ? オラオラ! 来いよ! |
タバティエール | はぁ……こうなったら そう簡単には止まらないだろうなぁ……。 |
ペンシルヴァニア | ああ……。 |
主人公 | 【2人ともストップ!】 |
シャスポー | マスター!? でも、こいつが……! |
ケンタッキー | ういっす! さーせんっしたァ!! |
シャスポー | ……っ!? |
ケンタッキー | 自分、今日が初日だから、マスターにこれまでの お礼含めてしっかり挨拶しなきゃなんねーって思って いっぱいいっぱいになっちまって……。 |
ケンタッキー | ご無礼を働いちまいました! マジさーせんっした!! |
シャスポー | ま、まあ、君がそこまで謝るんだったら、 許してあげなくも……? |
ケンタッキー | は? なに勘違いしてんだ? てめぇには謝ってねえよ、クソホクロ。 |
シャスポー | はぁ!? 君、今なんて……!? |
ケンタッキー | 俺はマスターの前で怒っちまったことを お詫びさせていただいたんだ。 てめぇのことは許してねーからな!! |
シャスポー | 貴様……!! |
タバティエール | ダメだこりゃ……。 |
ペンシルヴァニア | お互い……苦労するな。 |
スプリングフィールド | …………。 |
───実戦訓練中。
ジョージ | お、〇〇じゃん。どうしたんだ? 射撃の訓練? |
---|---|
主人公 | 【2人はなんの訓練中?】 |
ジョージ | 10分間に1発でも的のど真ん中に当てればOKっていう、 テスト形式の訓練なんだけどさ……。 |
ジョージ | たくさん撃てばどれかは当たるだろーって撃ちまくってるのに、 ぜーんぶ微妙にズレて真ん中に当たんないんだよなぁ。 むっずかしいなー! |
ジョージ | ケンタッキーもそう思うだろ? |
ケンタッキー | …………。 |
ジョージ | おーい、ケンタッキー? んん? そういえばケンタッキーはまだ1発も撃ってないぞ。 |
ジョージ | そろそろ10分経つけど大丈夫か……? 声かけた方がいいかな……? |
ケンタッキー | ───フッ。 |
小さく息を吐き、ケンタッキーが引き金を引く。
放たれた弾は、見事に的のど真ん中を撃ち抜き、
銃声が静まった瞬間に、10分経過のベルが鳴った。
ジョージ | おおーっ!! |
---|---|
ケンタッキー | うーっし、お疲れーっ!! |
主人公 | 【お見事】 【すごいね】 |
ケンタッキー | マスター! 見てたんスか!? うわーっ! あの! 俺の射撃スタイル、どうでしたか!? |
ケンタッキー | 自分、座右の銘は『ワンショット・ワンキル』で! 一撃必殺って意味なんスけど。 |
ケンタッキー | ずっと昔……アメリカ独立戦争の頃から、 自分はこのスタイルでやってきました! |
ケンタッキー | 自分、スナイパーっすから! 命中率はメチャ高にするのが、信条なんス! |
ケンタッキー | ブラウン・ベスみたいな、 数撃ちゃ当たるダセェ戦法の奴らとは違いますよ! |
ジョージ | なんだよ、ちぇっ! オレだって、一斉射撃すれば、どれかは当たるし! |
ケンタッキー | へっ。率で言えば話にならないけどな〜。 |
ジョージ | くそーっ! |
主人公 | 【仲がいいんだね】 【2人はどういう関係?】 |
ケンタッキー | まあ、戦友的な? ダチっす! スタイルはちげーけど、 同じ釜のメシ食った、同志的な感じっスかね? |
ジョージ | 食ったっけ? |
ケンタッキー | ばーか、ヒユヒョーゲンってヤツだよ! 俺ら、アメリカの独立戦争の時、 同じ陣営でもあったんス! |
ジョージ | ブラウン・ベス・マスケットは両方の陣営で使われたけど、 あいつ的にはフクザツなところでさ。 アメリカ側の記憶は、オレが持ってるんだ。 |
ケンタッキー | けっ! 同じ種類の銃でも、あいつはジョージと違って マジ頭固いクソダサ野郎でしたよ。 |
ケンタッキー | なーにが騎士道精神だっての。 俺たちスナイパーのこと、卑劣だって見下して……。 |
ケンタッキー | 自分がろくすっぽ当たんねぇからって 狙撃は騎士道に反するだとか言ってカッコつけやがる! マジでムカつくっす! |
ジョージ | ……ブラウンの悪口言うなよ。 |
ケンタッキー | ……あっ! い、いやでもその……! |
ケンタッキー | お前らが制圧射撃とかしてくれねーと、 俺ら弾込めの時間とかも取れねーし!? 別にジョージのことを否定してるわけじゃねーよ! |
ジョージ | いや、オレが怒ってるの、そこじゃないし……。 まあ、いいけど! |
ケンタッキー | あーっ! 待てっておい、そんな気にすんなよ! |
スプリングフィールド | ケンタッキー、ジョージ、演習終わったら集合……。 あれ? ジョージは、どこ? |
ケンタッキー | ちょっと色々あって……。 |
スプリングフィールド | 悪いことを言ったなら、謝った方が、いいよ……? |
ケンタッキー | うっ……! わ、わかったよ! 謝ってくる!! |
ケンタッキー | おーいっ! ジョージーっ! 止まれーっ! 止まってくれよーっ! |
ケンタッキー | …………。 |
---|---|
主人公 | 【ケンタッキー?】 【寝てる……? |
ケンタッキー | ……ハッ! その声はマスターっすか!? マスターが来てたのに、気づかずすんません! |
ケンタッキー | 十手に教えてもらって、座禅ってのをしてたんす! メイソー? ってやつで、忍耐力を鍛えてるんすよ! |
ケンタッキー | なんか、どっかの偉いヒト……? が、 コレで精神鍛えて、もっと偉いヒトんなったらしくて、 俺もやってみよーって思ったんス! |
ケンタッキー | 座禅って、長時間じっと座ってなきゃいけないとか、 スナイパー的にマジ役立つ訓練だと思いません? |
主人公 | 【忍耐力が鍛えられそう】 【確かにスナイパー向きだと思う】 |
ケンタッキー | わかりますか!? あ、てかマスターもスナイパーっスもんね!? うわぁ、そりゃご存知っスよね! ね!! |
ケンタッキー | あのあの、ちょっと自分、語ってもいいっスか! いや、語らせてください…!!! |
ケンタッキー | スナイパーって、忍耐力がものを言うじゃないスか。 どんな環境、天候でも狙撃スポットに陣取って、 息を殺して狙撃のチャンスを待ち続ける……。 |
ケンタッキー | ターゲットが現れても、焦りは禁物。 ここぞという一瞬が訪れるのを待ち……見極める。 その間、マジ精神削られるっスよねー。 |
ケンタッキー | そして、今だ! って時に引き金を引く。 見事に狙撃に成功した時の興奮っつったら……! |
ケンタッキー | くあーっ! って、テンションマックスっすよね!!! |
ケンタッキー | いやぁ、わかってくれる同志がマスターとか、 マジ最高すぎて感動っす! |
ケンタッキー | ハ……ッ! 勝手に1人で盛り上がってすんません! 自分の狙撃への情熱、伝わったッスかね……? |
ケンタッキー | マスター! 自分、この狙撃の腕で、 絶対にマスターのお役に立つってお約束しますんで! |
ケンタッキーが強く〇〇の手を握る。
その時、彼の背後に人影が忍び寄った。
十手 | 雑念退散……ハァッ! |
---|---|
ケンタッキー | いってえーっ! |
十手 | ははは! どうだい、ケンタッキー君。 気合を入れ直してみたんだが。 |
ケンタッキー | ちょっ……十手! 叩くことねーだろ! ビックリしただろうが……! |
ケンタッキー | つーか、なんだよその棒。 |
十手 | これかい? これは警策(きょうさく)だよ。 邑田君に頼んで、日本から取り寄せてもらったんだ。 |
ケンタッキー | キョーサク? |
十手 | 座禅を組んでいるときに雑念が湧いたら、 こいつでビシッとね。 どうだい、雑念は消えたかな? |
ケンタッキー | 注意なら言葉でしろよっ! それに、マスターの手を握ったのは雑念じゃねーし! 親愛の印だろーが! |
十手 | だが、集中力を欠いていたのは事実だろう? 座禅に集中していなければ、意味がないよ。 |
ケンタッキー | ぐうっ! |
十手 | はっはっは。 まだまだ修行が足りないねぇ。 |
ケンタッキー | くそー。よーし、もう1回だ。 見ててくださいよ、マスター! すっげぇ集中力でレベルアップしてやりますんで! |
十手 | よしよし、その意気だ。 よかったら〇〇君も一緒にどうだい。 |
ケンタッキー | そうッス、マスターもやりましょう! 頭の中がスッキリするっすよ! |
主人公 | 【じゃあ、やってみる】 【よろしくお願いします!】 |
十手 | ああ、任せてくれ。 まずはこうやって足を組んで……。 |
ケンタッキー | あ、でもマスターのこと叩いたら承知しねーからな! 安心してください、オレがここで見張ってるっす。 |
十手 | セイッ! |
ケンタッキー | いでっ! おい、今のは雑念じゃねーだろ! |
マークス | 今日は実戦型の狙撃訓練か。 しかも、マスターと一緒とはな。 その、とても……嬉しい。気力がみなぎってくる。 |
---|---|
ケンタッキー | マスター、どうぞよろしくお願いしますっ! |
主人公 | 【2人とも、よろしく】 【頑張ろう】 |
ケンタッキー | (同じチームは、マスターの愛銃だったっていう イギリスのUL96A1か……。 スコープも当然装備な、ガチの狙撃銃ってわけか) |
ケンタッキー | (マークスって名前、 マスターがつけたって言ってたっけ。 marksman、狙撃手、か……) |
ケンタッキー | ……あんた、狙撃が得意分野らしいな? |
マークス | ああ、当然だ。 マスターのためなら、狙った獲物は絶対に外さない。 |
ケンタッキー | ……へぇ、言うじゃねぇか! それでこそスナイパーだよな。 だけど、俺の腕前だってお前に負けねーよ! |
マークス | そうか。そういえば、あんたもスナイパーだったな。 それで、このメンバーということか? |
ケンタッキー | そーゆーことだろ……っつーか、おい! 俺がスナイパーなの忘れるとかなんなんだよ! 誇り高きアメリカ、ケンタッキー連隊の狙撃銃だぞ! |
マークス | そうだったな。 外国の古い歴史は、まだよく覚えていない。 |
ケンタッキー | ふるっ……! |
マークス | あんたが狙撃に誇りを持っていることはわかった。 だが、俺も狙撃手として誇りを持っている。 1歩も譲るつもりはないからな。 |
ケンタッキー | ……ふん、上等だ。 お互いマスターにイイトコ見せよーぜ。 できるもんならな! |
マークス | 望むところだ。 |
その後……
〇〇とケンタッキー、マークスの
3人は、狙撃スポットを探して森を進んでいた。
マークス | ……ここが良さそうだ。 |
---|---|
ケンタッキー | は? 何言ってんだよお前。 ここからじゃ届くわけ─── |
マークス | 俺は届くぞ。 |
ケンタッキー | ……っ! |
マークス | 地図と地形を見る限り、この場所が最適だ。 ターゲットからの距離もあり、死角になっている。 俺の射程なら、こちらから一方的に狙撃が可能だ。 |
マークス | あんたは絶対高貴になれるんだから、 狙撃は俺に任せろ。 |
ケンタッキー | 待てよ、勝手に話進めんな! それじゃお前の訓練にしかならねーだろうが! 俺の狙撃の訓練はどーなるんだよ! |
マークス | 必要なのか? アウトレイジャーなしの通常戦を想定した訓練だ。 狙撃なら俺1人でまかなえる。 |
マークス | あんたの射程に合わせてターゲットに接近して、 万が一にもマスターの足を引っ張ったりしたら、 俺はあんたを許さねぇぞ。 |
ケンタッキー | ……っ!! |
マークス | テキザイテキショ、ってやつだろ。 ……いいじゃねぇか。 あんたは絶対高貴になれるんだから、それで十分だ。 |
ケンタッキー | …………。 |
ケンタッキー | (悔しいけど、こいつの言ってることは正しい。 俺は、この距離じゃターゲットを狙撃できねぇ! とりあえず挑戦だけはしてみるか……いや、ダメだろ) |
ケンタッキー | (そんなこと、狙撃手のすることじゃねぇ。 俺が原因で失敗したら、マスターに迷惑をかけちまう! それだけは絶対ダメだ……!) |
ケンタッキー | (……でも、なんか、すげぇモヤモヤする……) |
主人公 | 【……ケンタッキー?】 【大丈夫?】 |
ケンタッキー | ……! |
ケンタッキー | あ……えっと、こいつの作戦で大丈夫っす! 俺からもお墨つき出すっすよ! |
ケンタッキー | ターゲットから距離をとって、不意を突く! スナイパーの鉄則っすからね、全然問題ないっす! ……さっさとミッション終わらせて帰りましょ。 |
ケンタッキー | ……クソ……ッ。 |
---|---|
ケンタッキー | 俺はスナイパーだ。 なのに……狙撃で役立てないスナイパーなんて……。 |
ケンタッキー | ……俺が必要とされてんのは、絶対高貴だけなのか? 狙撃の腕は、誰も期待してねぇのか……? |
ケンタッキー | 俺は……俺じゃ、役に立てねーのかよ……。 |
ケンタッキー | …………。 はぁ……。 |
---|---|
ケンタッキー | (俺、こんな人気のないトコに1人で来て、 何してんだ……? マークスの作戦は、客観的に見て正しかっただろ) |
ケンタッキー | (なのにウジウジ落ち込んでるとか、クソダセェ……! たぶん、マスターにも心配かけちまったし……) |
ペンシルヴァニア | ケンタッキー。 |
ケンタッキー | ……! お前……! |
ペンシルヴァニア | ……こんな場所で、物思いか? |
ケンタッキー | ……。何しに来たんだよ。 今、あんたと話す気分じゃねーんだ。 |
ケンタッキー | 俺が先にココ使ってんだから、あとで来いよ。 お得意の猟でもなんでもして時間潰してろ。 |
ペンシルヴァニア | 大事な用があるから来たんだ。 |
ケンタッキー | そうかよ、じゃあ俺が違うとこに移動─── |
ペンシルヴァニア | ……用があるのはここにじゃない。 お前に、用があるんだよ。 この間の訓練のことで……落ち込んでるんだろ? |
ケンタッキー | ……は? ち、ちげぇし! 勝手なこと言うんじゃねぇよ! なんの根拠があって、そんなこと……。 |
ペンシルヴァニア | ……マスターが、心配していた。 |
ケンタッキー | …………。 |
ケンタッキー | (あー……マスター……! なんでよりによって、こいつに話したんすか……) |
ケンタッキー | ああ、くそ。そーだよ! 落ち込んでるんだよ。笑いたきゃ笑え……! |
ペンシルヴァニア | ……何を笑うというんだ。 お前が真剣なのは、みんなわかってる。 |
ケンタッキー | …………。 |
ケンタッキー | 時代の変化には敵わねぇよ。 わかってんだ。俺が現代銃の奴らと比べると、 性能なんて全然比べ物にならないってことくらい。 |
ケンタッキー | でも、だからって絶対高貴だけ使えばいい、ってさ。 俺はスナイパーとして、命張ってやってきたんだ! |
ケンタッキー | 俺は……スナイパーなのに……っ! |
ペンシルヴァニア | その通りだ。 |
ケンタッキー | ああ? |
ペンシルヴァニア | その通り、お前はスナイパーだ。 スナイパーとして誇りを持っているからこそ、 絶対高貴に目覚めた。 |
ペンシルヴァニア | お前が誇り高いスナイパーだということを、 絶対高貴が証明しているんだ。 それは、性能の良し悪しとは違う次元の話だ。 |
ケンタッキー | それは……。 |
ペンシルヴァニア | 知恵とは、何に目をつぶるかを学ぶこと。 |
ケンタッキー | は? |
ペンシルヴァニア | 性能については、どうにもならない。 けど……お前の誇りは、 性能とは違うところにあるはずだ。 |
ケンタッキー | …………。 |
ペンシルヴァニア | お前の誇りを思い出せ。 |
ペンシルヴァニア | Oh、Kentucky、 the Hunters of Kentucky─── |
ケンタッキー | ……っ、その歌は……。 |
アメリカ市民1 | ♪〜Oh、Kentucky、 the Hunters of Kentucky─── |
---|---|
アメリカ市民2 | その歌……聴いたことがないな、 なんの歌だ? |
アメリカ市民1 | 知らないのかい? 有名だよ! ケンタッキー連隊っていうイカした奴らの歌さ。 |
アメリカ市民2 | ああ、その連隊の名前は聞いた気がするぞ。 街の噂か、親が話してたか……どっちだったかな? |
アメリカ市民1 | きっとどっちもだろうな。 ケンタッキー・ロングライフルを背負って、 イギリス兵どもをやっつけた英雄たちだ! |
アメリカ市民1 | なんでも、彼らは数百メートル先の敵を撃てたらしい。 遠く離れた場所から敵を倒せたおかげで、 アメリカ側の犠牲者は少なくて済んだってわけさ。 |
アメリカ市民2 | なぁ……あんたが背負っているその銃も もしかして、ケンタッキー・ライフルってやつか? |
アメリカ市民1 | そうだぜ! 特別に見せてやるよ! |
アメリカ市民2 | サンキュー! ……ん? これ、前に見たことがあるぞ。 ペンシルヴァニア・ライフルってやつじゃないかい? |
アメリカ市民1 | いーや! ケンタッキー・ライフルだ。 |
アメリカ市民2 | いや、絶対ペンシルヴァニア・ライフルだろう! |
アメリカ市民1 | うんにゃ、よく聞けよ! そもそも、ケンタッキー・ライフルってのはなぁ。 |
アメリカ市民1 | お前さんが言った通り、 ペンシルヴァニア・ライフルって名で呼ばれていたのさ。 |
アメリカ市民2 | なんだよ、やっぱりそうじゃないか! |
アメリカ市民1 | 話は最後まで聞けって! 確かに元はペンシルヴァニア・ライフルだった。 それがケンタッキー州に持ち込まれて改良されたんだ。 |
アメリカ市民1 | さらに! あのニューオーリンズの戦いでの ケンタッキー出身の民兵たちの大活躍だよ! あれ以降、ケンタッキー・ライフルと呼ばれてるんだ。 |
アメリカ市民2 | あ! さっきの歌ってもしかして。 |
アメリカ市民1 | おう。ニューオーリンズの戦いのことを歌ってるんだ。 あの横暴なイギリスが俺たちの国を再び侵略するのを 勇敢な民兵が食い止めた戦いさ! |
アメリカ市民1 | イギリス軍は8000人。 それを、1/4の2000人で打ち破ったんだぜ! |
アメリカ市民2 | Wow! 最高にクールじゃねえか! |
アメリカ市民1 | だろ〜? それで、ケンタッキー連隊と、 そいつらが使ってたケンタッキー・ライフルを 称える歌ができたってワケだ。 |
アメリカ市民1 | 俺はこの歌を口ずさんでると、なんだかこう、 やってやるぜ、って気になるんだ! |
アメリカ市民2 | うんうん! 俺たちもそのケンタッキー連隊の勝利を胸に、 自由で強いアメリカを築いていかないとな……! |
19世紀初頭、米英戦争の真っ只中にて───。
連隊長 | 状況を報告しろ。 |
---|---|
斥候 | ハッ! 敵陣の兵士は総勢およそ8000…… 戦闘準備を着々と整えております。 |
連隊長 | そうか……。 |
連隊長はしばし無言のまま遠くを見つめ、
すぐに連隊を招集するように伝える。
そして、開戦前夜の演説が始まった。
連隊長 | アメリカ側の数は2000……。 それも、我々民兵(ミリシア)を含めての数だ。 正規軍の数はもっと少ない……しかし! |
---|---|
連隊長 | 俺たちは腰抜けではない! 祖国アメリカのために立ちあがった誇り高き戦士だ! 二度とイギリスによる支配の鎖に繋がれてなるものか! |
連隊長 | 俺たちは、絶対に負けない。 俺たちには、自由と正義の旗がついている! そして、共に歩んできた、強い武器がある! |
民兵たちは、それぞれが手にしている
様々なケンタッキー・ライフルを握りしめた。
連隊長 | 我々はこのアメリカの大地で、 時に苦難を乗り越え、強く根を張り、生きてきた! その誇りを胸に、戦うぞ! |
---|---|
民兵たち | うおおーっ!!! |
連隊長 | 我らケンタッキー連隊の誇りにかけて、必ずや勝利を! |
民兵 | 必ず、勝利を! 俺たちが、アメリカの強さを知らしめてやる! |
───この戦いで、ケンタッキー連隊は勝利をあげ、
イギリス軍は死傷者約1500名という大きな痛手を被った。
一方、
アメリカ側の犠牲は60名だったと言われている───。
ペンシルヴァニア | ♪〜With our Kentucky rifles. |
---|
ペンシルヴァニアの歌声が止まり、
ケンタッキーは夢から覚めたかのように
ハッと目を見開き、前を向く。
ケンタッキー | ……そうだ。 俺はケンタッキー・ライフルだ。 |
---|---|
ケンタッキー | アメリカのために、多くの民兵たちと共に戦い、 俺自身の手で栄光ある勝利を掴み取った…… 誇り高き、最強のライフルだ……! |
ケンタッキー | くよくよすんのはやめだ! らしくねえ。 俺は俺の生き様を見せてやるだけだ! |
ケンタッキー | あんたにだって負けねーぞ、ペンシルヴァニア! |
ペンシルヴァニア | はは……勝ち負けはよくわからんが、 ケンタッキーが元気になってよかった。 |
ケンタッキー | ……チッ! そういうヨユーかました態度がまたムカつくんだよっ! |
ペンシルヴァニア | ……? 余裕をかます……? 俺がか? |
ケンタッキー | そういうトコが余計にムカつく……! つーか、ここでのんびり喋ってる場合じゃねぇ! |
ケンタッキー | とりあえず、マークスのやつを一発殴ってくる!! |
ケンタッキー | うおおおお〜っ! |
ペンシルヴァニア | 気をつけてな。 ……頑張れよ。 |
ケンタッキー | マスタ───ッ!!! ご心配おかけして、マジすんませんっしたぁ!!! |
---|---|
ケンタッキー | 自分……先日マスターとご一緒した訓練の時、 マークスに狙撃しなくていいって言われて、 正直めちゃくちゃヘコんで……。 |
ケンタッキー | マジドン底まで落ちてたんすけど、 あいつ……ペンシルヴァニアから、 自分の中にある誇りに性能は関係ねーだろって言われて……。 |
ケンタッキー | そん時、こう……ガツン! ってキたんすよね。 俺、そういう気持ちを忘れてたなって。 |
ケンタッキー | あいつに助けられたってのがちょっとばかし格好悪ィですけど、 でも、俺はもう大丈夫っス! ばっちり目が覚めましたんで! |
ケンタッキー | それでですね、 マスターにもすげぇ迷惑かけちまったんで、 今日は、お詫びの品を持ってきました……! |
ケンタッキー | 俺とおそろのTシャツなんすけど…… お納めください! |
主人公 | 【綺麗な色だ】 【凝ってるね】 |
ケンタッキー | お! わかってくれるんスか! さすがマスターっす! |
ケンタッキー | このシャツの布地、店で見た時、 マスターに絶対に似合うってビビッときたんスよ! あと、アシメの裾も俺的こだわりポイントでして……。 |
ケンタッキー | ファッションとか見た目って、 自分を表現するアートじゃないっすか。 |
ケンタッキー | なのでこのTシャツは、 自分なりにマスターの素晴らしさを表現してみたんス! |
ケンタッキー | ここの刺繍糸とか色にこだわってて! サテンステッチで仕上げてみたんッスけど……。 |
主人公 | 【もしかして、これって……】 【既製品じゃなくて手作り!?】 |
ケンタッキー | ……? はい! 当たり前じゃないッスか! |
ケンタッキー | マスターに差し上げるんすから、 この世に1つだけの、一品ものじゃねーと! |
ケンタッキー | あ、でもさすがに染色までは時間が取れなかったんで、 布だけは手作りじゃなくてすんません……! |
主人公 | 【ケンタッキーは器用だね】 【洋服を作るのが得意なの?】 |
ケンタッキー | 前から趣味でやってたんす。 なんつーか、自分で身につけるものとかも、 そのへんで売ってるのだと、イマイチで。 |
ケンタッキー | 納得いかねーというか、 ここ違うんだよなーってトコが出るじゃないっすか! だから、最初から自分で作った方が早いんすよ。 |
ケンタッキー | それに、好きなもん身につけてると、気分アガるんで、 マスターもどんどんお好きなように カスタマイズしちゃってくださいっす! |
ケンタッキー | んで、気に入ってもらえたら、 たくさん着てもらえると嬉しいっす……! |
主人公 | 【普段は制服だから着られないけれど……】 |
ケンタッキー | あっ! |
ケンタッキー | す、すんません。そうっスよね……。 自分、浮かれて忘れてたっス……! |
主人公 | 【でも、すごく嬉しい】 【外出許可を取った時に着てみるよ】 |
ケンタッキー | ……! はい……っ! |
ケンタッキー | あ、じゃあ俺もおそろの着てきます! マスターとおそろコーデとか、マジでアガるぜーっ! |
ケンタッキー | あ〜〜〜っ、楽しみっすね、マスター! どこ行きたいか、考えといてくださいねっ! |
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