貴銃士ストーリー:シャスポー

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第1話:憂鬱な雨

シャスポー忌々しい雨だな……。
う……頭が痛い……。
主人公【……シャスポー?】
【こんなところで何を?】
シャスポーわっ、〇〇……?
君の方こそ、こんな時間にどうしたの?
主人公【忘れ物を取りに来た】
【シャスポーを探しに来た】
シャスポーそう、だったんだ……。
僕は大丈夫だから、君は早く寮に戻って。
今夜は冷えるし、風邪をひいたら大変だ。
主人公【シャスポーも寮に戻ろう】
【談話室の暖炉で暖まろう】
シャスポーううん……。
僕は、もうしばらくここにいるよ。
今日は……静かな場所で、少し1人になりたいんだ。
シャスポーああ、心配しないでね。
大したことはないんだ。
ただ……この湿気のせいで、どうにも眠れなくて。
シャスポーしばらくしたら、僕も寮に戻るから───
タバティエールシャスポー、ここにいたのか。
いつの間にかいなくなってたから、探したんだぜ。
〇〇ちゃんが先に見つけてたんだな。
グラースなんだ、ピンピンしてるじゃないか。
面倒かけさせやがって。
タバティエールんなこと言って。
シャスポーが部屋からいなくなってるのに気づいて、
探しに行こうって言い始めたのはお前だろ?
グラース……うるさいぞ、タバティエール!
シャスポーう……大声を出すな。頭に響く……。
それに、僕は探しに来いなんて一言も頼んでない。
余計なお世話だ。
グラースなんだよ。今日の授業の内容がアレだったから、
変な気起こしてないか見に来てやったんだろうが。
グラースその様子だと……やっぱりまだ気にしてるんだろ?
ったく、あんな大昔のことなんざ、
とっとと乗り越えろよ。
タバティエールグラース、そういう言い方はよせ。
素直に言えばいいだろ? 心配だってさ。
グラース心配だと? そんなこと思ってねぇよ!
僕は、ただこいつが───
シャスポー───黙れ!
主人公【……!?】
【シャスポー……?】
シャスポー……あっ……ごめん。
〇〇に言ったんじゃないんだ。
シャスポーでも、今は……1人にさせてほしい。
タバティエール……今晩は、そっとしておいた方がよさそうだな。
グラース……面倒くさい奴。

主人公【今日の授業で、何かあった?】
【事情を聞かせてほしい】
タバティエールあー……悪いな。
〇〇ちゃんにも心配かけちまって。
タバティエール今日は、フランス史の授業があったんだ。
あいつに関わりが深い内容も含まれててね……。
グラースパリ・コミューン───血の一週間について、だ。

第2話:危険なテリーヌ

シャスポーやあ、〇〇。
昨日は心配かけてごめんね。
主人公【気にしないで】
【頭痛は治った?】
シャスポーありがとう。
雨も止んだし、もう大丈夫だよ。
シャスポー心配をかけたお詫びに、
今日はテリーヌを作ってきたんだ。
シャスポー〇〇、君に食べてほしいな。
主人公【テリーヌ……!】
【ありがとう!】
シャスポーふふっ、君に喜んでもらえて嬉しいな。
シャスポー今でこそ、テリーヌはフランスのビストロで
定番の料理になっているけれど……。
シャスポーテリーヌっていうのは元々、
陶器や鋳鉄の容器の名前だったんだ。
形は、こんな風に長方形でね。
シャスポー料理のテリーヌは、この長方形の容器に具材を入れて、
形を整えたものなんだよ。
シャスポーレバーやミンチ肉、フォアグラ、野菜や魚介……
いろんな具材で作るんだ。
主人公【色々な具材が入ってるんだ】
【栄養もたくさん摂れそう】
シャスポーその通りだよ、〇〇。
タンパク質が豊富だし、野菜も入れられるから、
具材次第で、かなりバランスがいい一品になるんだ。
シャスポーそれに……ほら。
こうして切った時の見た目の美しさもあって、
フランス中で親しまれるようになったんだ。
シャスポー僕のテリーヌは、パリの星空をイメージして、
野菜を星型にしてみたんだけど、どう?
主人公【綺麗だね】
【美味しそう】
シャスポーふふっ♪
今回は自信作だから、きっと美味しいよ。
シャスポーそれに、フランス生まれの高性能な僕が作るからには、
ただ美味しいだけじゃないよ。
エレガンスも込めてみたんだ。
主人公【エレガンス……?】
シャスポーフランスでは、jour de muguetっていって、
5月1日に大切な人へ鈴蘭を贈る習慣があるんだ。
シャスポー鈴蘭は、春や幸福を象徴する花なんだ。
だから、受け取った人には、
幸福が訪れるって言われてるんだよ。
シャスポー〇〇……
君に、たくさんの幸せが訪れますように。
そんな願いを込めて、作ってみたんだ。
主人公【…………】
シャスポーどうしたの? マスター。
顔色がよくないみたいだけど……?
シャスポーもしかして、苦手な食材が入ってた?
主人公【大変申し上げにくいのですが……】
【その……鈴蘭には、ですね……】
グラース……ん? 何してんだ?
シャスポーグラース……。
〇〇との素敵なひとときを
邪魔しないでくれ。
グラースケチくせぇこと言うなよ。
お、なんだこれ、テリーヌか? うまそうだな。
グラース〇〇に食わせる前に、
僕が味見してやるよ。
シャスポーあっ、おい!

───パクッ!

主人公【グラース!】
【ペッしなさい!】
グラースはぁ? なんだよ、〇〇、血相変えて。
グラースんん……! これ美味いな。
もうひとロ───
主人公【食べたら駄目!】
【毒が入ってる!】
シャスポーなっ……毒!? そんなものを入れた覚えは……!
主人公【鈴蘭には毒がある!】
シャスポーなんだって! そんな……僕としたことが……!
グラースはぁ!? なんでそんなもんが……って……!
ぐっ……めまい、が……!
シャスポーおっ、おい、しっかりしろ!
早く吐き出すんだ!
グラース吐き出すなんて……そんな、の、
僕のプライドが、許さ、ねぇ……!
シャスポーそんなこと言ってる場合か!?
グラースあれ……向こうに……花畑が、見える……。
シャスポーグラース──────!!

〇〇の治療を受けて
見事に回復したグラースだったが、
その後テリーヌを異様に警戒するようになったという。

※鈴蘭には強い毒があるので、
決して摂取しないでください。

第3話:高貴なる決闘の行方

タバティエールよっ、〇〇ちゃん。
一緒に夕食でもどうだ?
シャスポーもちろん、〇〇さえよければだけど……。
僕としては、君と一緒に食べられたら嬉しいな。
エルメやあ、マスター。少しいいかな?
ドライゼ今度のドイツ軍派遣について、
少し話しておきたいことがあるのだが。
シャスポー……っ、君は……ドライゼ!
ドライゼああ……お前は、フランスのシャスポーだな。
俺に何か用だろうか。
シャスポー何か用、だって……?
よくもぬけぬけと、そんなとぼけたことを言えるな!
タバティエールおい、シャスポー……!
シャスポー土足でヴェルサイユ宮殿に乗り込んだ
野蛮なプロイセン銃の分際で、
僕の前に顔を出せる感性……理解に苦しむよ。
シャスポーいや……君の祖国は、侵略したヴェルサイユ宮殿で
戴冠式をやるような国だったね。
シャスポーそんな国で生まれた君だからこそ、
当然同じような感性を持っているというわけだ。
……この、格下が!
ドライゼ…………。
ドライゼ……祖国に対する侮辱を、許すことはできない。
俺を格下だと侮るのであれば、
実戦をもって決着をつけることに異論はないな?
シャスポー望むところだ。
僕が君に負けるとでも?
エルメ決闘か……いいね。
銃はそうあるべきだよ。
タバティエールおいおい、貴銃士同士で本気の実戦なんかしたら、
とんでもないことになるぞ……!
主人公【2人とも落ち着いて!】
【士官学校内での私闘は禁止!】
ドライゼしかし、マスター。
初対面の相手に向かっての失礼千万な言葉の数々、
祖国への侮辱……到底聞き捨てならない。
エルメそうだね。俺としても、
おとなしく引き下がることなんてできないよ。
何かしらの形で、決着をつけないと。
シャスポー〇〇、僕のことは心配いらないよ?
高性能な僕は、ドライゼなんかに絶対、
負けたりしないからね?
タバティエールいや、そういうことじゃなくてだな……。
主人公【とにかく、実戦はやめよう】
【違う方法で決着をつけよう】
ドライゼむ……決闘に替わる案があなたにあるというなら、
俺はそれでもかまわない。
お前はどうだ、シャスポー。
シャスポーああ。
どんな勝負だろうと、僕が勝つに決まっているからね。
受けて立つよ。

〜10分後〜


シャスポー───ドライゼ。
そろそろ、野蛮な本性を見せたらどうなんだい?
ドライゼなんの話だ?
シャスポーふん! 君がババを持ってることはお見通しなんだ。
卑怯な小細工なんて、この僕には通用しないぞ!
タバティエールそりゃあな……2人でババ抜きやってて、
お前がババを持ってないんだったら、
ドライゼが持ってるわな。
エルメ小細工どころじゃないよね。
エルメ俺としては、ドライゼの野蛮な本性が
見てみたいけれど。
シャスポーちょっと、うるさいよ君たち!
ドライゼ真剣勝負の邪魔をするな。

〜数分後〜

ドライゼ……上がりだ。
シャスポーなっ……!?
あり得ない! なんで僕が負けるんだ……!?
ドライゼ勝負は勝負だ。
潔く負けを認め、祖国への侮辱を撤回して謝罪しろ。
シャスポーだ、黙れ! 僕が負けるなんて……そうだ!
お前が何か姑息な手を使ったに決まっている!
ドライゼくだらない言いがかりはよしてもらおう。
貴様の負けという揺るぎない事実すらも
正しく認識できないとは……哀れな男だ。
シャスポーなんだと……!?
とにかくもう1回だ! 今度こそ僕が勝つ!
ドライゼ完璧かつ確実な戦略で叩き潰してやろう。
タバティエールドライゼ……もう1回に付き合ってやるのか……。
エルメドライゼは面倒見がいいからね。

〜1時間後〜

シャスポーくっ……! もう1回だ!
タバティエールはぁ……これで何回目だよ。
エルメ俺、そろそろ部屋に戻ろうかな……。

───2人の決闘は深夜になっても終わらず、
翌朝まで続いたのだった。

第4話:赤く燃ゆる街にて

シャスポーふぅ……今回の任務はこれでおしまいだね。
グラース少し暗くなってきたな。もう帰還しようぜ。
タバティエールそうだな。
〇〇ちゃんも、それでいい───
伝令兵───連合軍より伝令です!
伝令兵親世界帝派による立てこもり事件が発生!
至急、市街地まで応援に向かってください!
タバティエールなんだって……!?
主人公【行こう!】
シャスポー……っ、待って、〇〇!
アウトレイジャー……殺ス……!
伝令兵なっ……アウトレイジャー!?
シャスポータバティエール、〇〇を頼む!
ここは僕が……!
シャスポー───絶対高貴!
アウトレイジャーグァアァッ……!
シャスポーフン……この僕がいるんだ。
〇〇に手を出させるわけないだろう?
主人公【ありがとう】
【助かった】
グラースハッ、調子に乗るなよ、シャスポー。
僕ならあれくらいの敵、もっと早く倒せたさ。
シャスポーどうせ君は口だけだろう?
今だって、僕の方が先にアウトレイジャーに気づいて、
いち早く倒したじゃないか。
グラースそれは、僕が譲ってやったからで───
タバティエールおい、2人ともそこまでだ!
街の方から煙が上がってる!
シャスポー……っ、急ぐぞ!

シャスポーなっ、これは……!
連合軍兵士貴銃士とマスター殿ですね!
報告します。
親世界帝派が、街の数か所に火を放ちました!
連合軍兵士立てこもり犯を逃がすため、
混乱を狙って放火したものと思われます!
グラース戦闘と被害の状況は?
連合軍兵士本隊が、武装した立てこもり犯と
銃撃戦になっています。
連合軍兵士火災家屋からの人命救助にも人員を割いているため、
押され気味になっているとのことです!
グラースアウトレイジャーがいないだけ、
不幸中の幸いってところか……。
タバティエール対人間の銃撃戦なら、
現代銃を持ってる兵士の方が適任だろう。
俺たちは───……シャスポー?
シャスポー…………。
シャスポー…………赤、い……。
シャスポー街が、燃えて……火が……。
タバティエールおい、シャスポー!
シャスポー……っ!
タバティエール俺たちは、救助や避難誘導を手伝おう。
もしアウトレイジャーが現れたら、その対処も。
シャスポー……ああ。

グラース街の西側へ避難しろ!
落ち着いて、転ばないように!
市民女性……助けてください!
息子がまだ家の中にいるんですっ!

女性の悲痛な声に振り返ると、
近くの家の2階から、子供の泣き声が聞こえる。

2階にはまだ火が回っていないが、
1階は激しく燃えており、
消防を待たなければ突入できそうにない。

子供ママー! ママー!
シャスポー……僕が助ける。
グラース待て!
あんな火の中に入るなんて無理だ!
タバティエールシャスポー、よせ!
消防隊を呼んでからじゃないと……!
シャスポー黙れ!
あの子は───僕が助けなきゃいけないんだ!

女性が持っていたパケツの水を頭からかぶると、
シャスポーは制止を振り切って、
火の中に突入していった。

主人公【シャスポー!】
グラースあの、馬鹿野郎……!

固唾を呑んで待つこと、しばらく───

シャスポー……行くぞ!

子供を抱きかかえたシャスポーが、
2階の窓を蹴破って飛び降りた。

子供ママ……!
市民女性ありがとうございます……ありがとうございます……!
タバティエールシャスポー……無茶しやがって……!
貴銃士は不死身じゃないんだぞ!
シャスポー…………僕は、違う。
グラース……?
シャスポー僕は、あの時とは違う……。
シャスポーふふ……僕に、救えた……。
僕は、もう、あの時とは違うんだ……。
タバティエールシャスポー……。

第5話:シャスポー談義

シャスポーやあ、〇〇。
シャスポー教室に忘れ物でもしたのかな?
それなら、寮まで一緒に戻ろう。
道すがら、お喋りしながら……ね?
主人公【今日はどんな日だった?】
【授業は楽しかった?】
シャスポーふふ……そうだね。
シャスポー今日は、銃にまつわる歴史の授業があってね。
その中で、僕───シャスポー銃も取り上げられたんだ。
シャスポーそれも当然だよね?
だって僕は、当時の銃の常識を塗り替えるくらい、
画期的で高性能で優れた銃だったんだから。
シャスポー後装式銃の先駆けという点で言えば、
確かにドライゼの功績が大きいけれど……。
僕の方が遥かに優れた性能を持っているんだ。
シャスポーだって、射程距離なんかは、
あいつの2倍くらいもあるんだよ?
シャスポー……ねぇ、〇〇。
君は僕について、どれくらい知ってる?
シャスポーもしよかったら、今日の授業で聞いた内容も含めて、
僕の歴史について説明させてもらえないかな。
シャスポー君には、僕のことをもっと知ってもらいたいんだ。
主人公【ぜひ、お願い】
【わかった】
シャスポーMerci!
シャスポー僕を作ったのは、
アントワーヌ・アルフォンス・シャスポー。
シャスポー……そう、僕の名前は、彼が由来なんだよ。
シャスポー19世紀半ば───ほとんどの国は、
ミニエー銃をはじめとする前装式ライフルを
主力装備にしていたんだ。
シャスポープロイセンでは、後装式ボルトアクション銃の
ドライゼが配備されていたけれど、前装式ライフルより
射程距離が短いから、あまり注目されていなかった。
シャスポーそんな中でも、アントワーヌは後装式銃に着目して、
試作を重ねていたんだ。
主人公【粘り強い人だったんだね】
【先見の明があったんだね】
シャスポーそうだね。
そのおかげで、僕───シャスポー銃は完成した。

シャスポーちょうどその頃、後装式銃への風向きが
大きく変わる出来事があったんだ。
シャスポー〇〇なら、知ってるかな?
主人公【デンマーク戦争?】
【普墺戦争?】
シャスポー……そう。
さすが〇〇だね。
シャスポープロイセン軍は、前装式ライフルに射程距離では劣る
ドライゼ銃を配備していたのに、勝利を重ねた。
そのことで、各国は後装式銃の優位性を認識したんだ。
シャスポーフランスの軍部も、プロイセンの脅威に、
強い危機感を覚えたんだろうね……。
シャスポー試作品が完成したばかりだったシャスポー銃を、
急遽制式採用することにしたんだ。
シャスポー僕が初めて戦場で使われたのは、
そのあとすぐ……メンターナの戦いだった。
シャスポー結果は……ふふっ、言うまでもないよね。
シャスポーフランス軍の勝利の一報は、すぐに議会に届いて、
こう報告されたんだ。
シャスポー“Les Chassepots ont fait merveille!”
シャスポー銃の働きは驚異的でした! ってね。
シャスポー……おっと、そろそろ寮に着くね。
君といると楽しくて、
寮までの道のりがあっという間に感じるな。
シャスポーもっと一緒にいたいけど……
夜更かしはよくないね。それじゃあ、また明日。
〇〇……。

 

第6話:因縁の発端

シャスポーくっ……!
ドライゼの奴、一体なんなんだ!
タバティエールまあまあ、落ち着けってシャスポー。
シャスポー落ち着いてられるか!
僕が20kgのダンベルを使っていたら、
あいつは横で30kgのダンベルを使い始めたんだ!
シャスポーふん! あいつの魂胆なんて、僕にはお見通しだよ。
些細なことでも僕に勝るふりをして、
お粗末な射程距離のことを誤魔化そうとしているんだ!
タバティエールいや……ドライゼはいつも通りのトレーニングを
してただけだと思うがねぇ……。
シャスポータバティエール……!
お前、あいつの肩を持つのか!?
主人公【……荒れてるみたいだね】
【どうかした?】
タバティエールあー、〇〇ちゃん、気にしないでくれ。
シャスポーのこれは、いつものことだからさ。
タバティエール普段はもっと冷静なんだが、
相手がドライゼとなると……な。
主人公【どうしてそこまで目の敵に……?】
【理由を聞いても構わない?】
シャスポーそれは……
当然、あいつがプロイセンの銃だからだよ。
シャスポープロイセンが、フランスに何をしたか……!

シャスポー銃のデビュー戦となったメンターナの戦いで
フランス軍は見事に勝利を収めた。

それから数年……スペイン王位継承問題などで、
フランスとプロイセンの対立が高まり、
ついには宣戦布告へと至ったのだった───。

フランス軍兵士1プロイセンと戦争か……。
しかも、プロイセンだけじゃなくて、
ドイツ諸邦も参戦するらしいな。
フランス軍兵士2シュレースヴィヒ=ホルシュタインでの戦争に、
オーストリア帝国との戦争……
プロイセンは勝ち続きだ。気を引き締めないとな。
フランス軍兵士3そうだな……。
だが、こっちにはシャスポー銃がある!
フランス軍兵士3ミトラィユーズの配備も進んでるし、
歴戦の兵も含む約40万の常備兵がいるんだぞ。
勝利の女神は、俺たちに微笑むに違いない!
フランス軍兵士1……ああ、そうだな!

常備兵を擁するという点でフランス軍は優位だったが、
プロイセン及びドイツ諸邦は、徴兵によって、
120万もの兵を動員できたとされている。

その一方、フランス軍が採用したシャスポー銃は、
プロイセンのドライゼ銃よりはるかに射程距離が長く、
当時の軍用銃の中で群を抜いた性能を誇っていた。

戦況はフランス優位との見方が強かったが───

射程距離が長い野砲の配備や、
スパイによる課報、近隣国への根回し、
鉄道の整備など……。

周到に戦争の準備を整えていたプロイセンを相手に、
フランス軍は大敗を喫したのだった───。


シャスポー…………。
シャスポーおまけに、プロイセンの奴らは
フランスを蹂躙するだけでは飽き足らず───
シャスポーヴェルサイユ宮殿で戴冠式を行ったんだ。
プロイセン国王が皇帝に即位し、
ドイツ帝国の誕生を宣言するための戴冠式をね……!
シャスポー占領した宮殿で戴冠式を行うなんて……
本当に、奴らのやり方の汚さといったら……!
シャスポーそれに、あのあとフランスが───
僕が辿った歴史のことを考えると、
プロイセンやドライゼのことを許すことはできない。
シャスポー……絶対に、ね。

第7話:罪と名前

シャスポーはぁ……また雨だ。昨日も今日も……!
イギリスはどうしてこう、
パッとしない天気ばかりなんだ……!
シャスポーうう……っ。
また、頭痛が……。くそっ……!
主人公【大丈夫?】
【顔色が悪い】
シャスポー〇〇!?
シャスポーいや……心配かけてごめんね。
少し休めば落ち着くから、大丈夫だよ。
シャスポー……ねぇ、〇〇。
シャスポー君のクラスでも、
歴史についての授業があるんだよね。
シャスポーそれなら……フランスについても、
もう色々と知っているのかな。
主人公【主要な出来事なら……】
【シャスポーほど詳しくないけれど】
シャスポー…………。
そっか……。
シャスポーきっと、君ももう、あのことを───
「血の一週間」のことを、知っているんだね……。
シャスポー……〇〇。
君には、僕から直接伝えておきたい。
僕の歴史と、罪のことを……。
シャスポー普仏戦争のあと……
プロイセンと和睦を進めようとする臨時政府と、
徹底抗戦や革命を訴えるパリ市民が対立したんだ。
シャスポー市民が蜂起したことで、
臨時政府はヴェルサイユへ避難し、
パリに自治政府「コミューン」が成立した。
シャスポーだけど……。
シャスポー態勢を立て直したヴェルサイユ臨時政府軍が、
パリ・コミューンへの攻撃を開始したんだ。
シャスポーコミューン側は敗戦を重ねていって……
ついには、臨時政府軍がパリに突入し、
激しい市街戦になった。
シャスポーおまけに、プロイセン軍に退路を断たれて……
市街戦が激化するなか、
優位に立った臨時政府軍は───虐殺を始めた。
シャスポーコミューン戦士も、市民も関係ない。
老若男女、たくさんの市民が殺された。
セーヌ川の水が、血で赤く染まるほどに……。
シャスポー……その虐殺で使われたのが、僕。
シャスポー銃なんだ。
シャスポー僕の性能は、ドライゼなんかよりずっと優れてる。
なのに、普仏戦争ではそれ以外の要因が大きすぎて、
大した活躍もできないまま負けてしまった……。
シャスポーシャスポー銃が最も活躍したのは、
「血の一週間」だと言う人もいるんだ。
数万人の死者を出した、あの出来事が……。
シャスポーグラースが言うように……あの時の僕は、
貴銃士ではなくて、ただの銃だった。
シャスポー使われるだけの存在だった僕に、
あの殺戮を止めることは、できるはずもなかった。
シャスポーでも……僕がパリの市民たちを殺めたという事実は
変わらないし、消えない。
シャスポー……僕は、「シャスポー」。
この名前と共に、
罪を背負っていかなくてはならないんだ……。
シャスポー今でもたまに夢に見る……
恐ろしい……轟々と燃え上がる炎に覆われた
パリの街を───
シャスポー愛しいパリの人たちが、路上にたくさん───
あ、赤い血が、川のように───
シャスポーそれは、全部、ぼ、僕のせいで───
僕が、パリの人たちを───……!
主人公【無理しないで】
【手が震えてる】
シャスポー……ッ!! ───触らないで!!
シャスポー僕に触ったら、君まで……っ!
シャスポー……あ、いや、ごめん……!
少し、びっくりしただけなんだ。
僕……思い出しただけで、こんなに……。
シャスポー情けないな。まだまだ、だよね……。
もっと強くなら、なきゃ……。

第8話:2人の休日

───士官学校が休みの、とある日。

シャスポーやあ、〇〇。
今日は忙しいかな?
シャスポーもし、時間があれば……なんだけど、
僕と一緒に、街にお出かけしない?
主人公【いいよ】
【喜んで】
シャスポーふふ、ありがとう。
今日は僕が、〇〇を独り占めだね。
シャスポーねぇ、〇〇は、
どこか行きたいところはある?
シャスポー僕はまだ、近くの街のことをあまり知らないから……
君の好きなところに行けたら嬉しいな。
主人公【わかった】
【案内するよ】
シャスポーありがとう、〇〇。
シャスポー今度〇〇がフランスに行く時は、
僕も一緒に行って、
素敵なところをたくさん案内するね。
シャスポー僕のお気に入りのカフェに、
世界の至宝が集まる美術館や博物館、
活気あふれるマルシェ……。
シャスポー君も、きっと気に入ってくれるはずだよ。
シャスポー……おっと。あまりお喋りしていたら、
お出かけの準備の邪魔になってしまうね。
シャスポーそれじゃあ、〇〇。
準備ができたら、正門のところに来てね。

シャスポーへぇ……。
士官学校の近くにこんな場所があったとは、驚いたな。
シャスポー〇〇のおすすめなだけあって、
すごく素敵なカフェだね。
シャスポー〇〇は何を頼むの?
僕は……紅茶と、クイニーアマンをいただくよ。
シャスポー君は、クイニーアマンを食べたことはある?
フランスのブルターニュ地方の伝統的なお菓子で、
甘いだけじゃなく、少し塩気もあって美味しいんだ。
シャスポーふふっ、こっちのカフェでも食べられるものなんだね。
少しびっくりしたよ。
シャスポーこのカフェ、マカロンやカヌレも置いているし……
もしかしたら、ここの菓子職人は、
フランスのパティスリーで修行してきたのかもね。
シャスポー……ああ、ごめん。
君とこうして出かけられたのが嬉しくて、
つい、僕ばかり色々喋っていたね……。
シャスポー今度は、〇〇の番だよ。
最近のこととか……何か気になることがあれば、
なんでも言ってほしいな。
主人公【士官学校での暮らしはどう?】
【みんなと仲良くやれてる?】
シャスポーそうだね……。
シャスポー最初は、貴銃士が学校に通ったり訓練をしたりするの?
っていう戸惑いもあったけれど、
今はそれなりに楽しんでいるよ。
シャスポーまあ、貴銃士クラスに押し込められて、
見たくもない奴の顔をしょっちゅう
見なきゃならないのは腹立たしいけどね……。
シャスポー〇〇の方はどう?
君とはクラスが別だから……普段の生活について、
話を聞かせてほしいな。

シャスポー……わ、もうこんなに暗くなっていたんだ。
楽しい時間って、あっという間に過ぎてしまうね。
シャスポー〇〇、今日は本当にありがとう。
君のおかげで、すごく素敵な休日になったよ。
シャスポーねぇ、〇〇……
また今度、僕と一緒にお出かけしてくれる……?
主人公【いいよ】
【もちろん】
シャスポーふふっ、ありがとう、〇〇。
絶対、約束……だよ……?

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