シャスポー | 忌々しい雨だな……。 う……頭が痛い……。 |
---|---|
主人公 | 【……シャスポー?】 【こんなところで何を?】 |
シャスポー | わっ、〇〇……? 君の方こそ、こんな時間にどうしたの? |
主人公 | 【忘れ物を取りに来た】 【シャスポーを探しに来た】 |
シャスポー | そう、だったんだ……。 僕は大丈夫だから、君は早く寮に戻って。 今夜は冷えるし、風邪をひいたら大変だ。 |
主人公 | 【シャスポーも寮に戻ろう】 【談話室の暖炉で暖まろう】 |
シャスポー | ううん……。 僕は、もうしばらくここにいるよ。 今日は……静かな場所で、少し1人になりたいんだ。 |
シャスポー | ああ、心配しないでね。 大したことはないんだ。 ただ……この湿気のせいで、どうにも眠れなくて。 |
シャスポー | しばらくしたら、僕も寮に戻るから─── |
タバティエール | シャスポー、ここにいたのか。 いつの間にかいなくなってたから、探したんだぜ。 〇〇ちゃんが先に見つけてたんだな。 |
グラース | なんだ、ピンピンしてるじゃないか。 面倒かけさせやがって。 |
タバティエール | んなこと言って。 シャスポーが部屋からいなくなってるのに気づいて、 探しに行こうって言い始めたのはお前だろ? |
グラース | ……うるさいぞ、タバティエール! |
シャスポー | う……大声を出すな。頭に響く……。 それに、僕は探しに来いなんて一言も頼んでない。 余計なお世話だ。 |
グラース | なんだよ。今日の授業の内容がアレだったから、 変な気起こしてないか見に来てやったんだろうが。 |
グラース | その様子だと……やっぱりまだ気にしてるんだろ? ったく、あんな大昔のことなんざ、 とっとと乗り越えろよ。 |
タバティエール | グラース、そういう言い方はよせ。 素直に言えばいいだろ? 心配だってさ。 |
グラース | 心配だと? そんなこと思ってねぇよ! 僕は、ただこいつが─── |
シャスポー | ───黙れ! |
主人公 | 【……!?】 【シャスポー……?】 |
シャスポー | ……あっ……ごめん。 〇〇に言ったんじゃないんだ。 |
シャスポー | でも、今は……1人にさせてほしい。 |
タバティエール | ……今晩は、そっとしておいた方がよさそうだな。 |
グラース | ……面倒くさい奴。 |
主人公 | 【今日の授業で、何かあった?】 【事情を聞かせてほしい】 |
---|---|
タバティエール | あー……悪いな。 〇〇ちゃんにも心配かけちまって。 |
タバティエール | 今日は、フランス史の授業があったんだ。 あいつに関わりが深い内容も含まれててね……。 |
グラース | パリ・コミューン───血の一週間について、だ。 |
シャスポー | やあ、〇〇。 昨日は心配かけてごめんね。 |
---|---|
主人公 | 【気にしないで】 【頭痛は治った?】 |
シャスポー | ありがとう。 雨も止んだし、もう大丈夫だよ。 |
シャスポー | 心配をかけたお詫びに、 今日はテリーヌを作ってきたんだ。 |
シャスポー | 〇〇、君に食べてほしいな。 |
主人公 | 【テリーヌ……!】 【ありがとう!】 |
シャスポー | ふふっ、君に喜んでもらえて嬉しいな。 |
シャスポー | 今でこそ、テリーヌはフランスのビストロで 定番の料理になっているけれど……。 |
シャスポー | テリーヌっていうのは元々、 陶器や鋳鉄の容器の名前だったんだ。 形は、こんな風に長方形でね。 |
シャスポー | 料理のテリーヌは、この長方形の容器に具材を入れて、 形を整えたものなんだよ。 |
シャスポー | レバーやミンチ肉、フォアグラ、野菜や魚介…… いろんな具材で作るんだ。 |
主人公 | 【色々な具材が入ってるんだ】 【栄養もたくさん摂れそう】 |
シャスポー | その通りだよ、〇〇。 タンパク質が豊富だし、野菜も入れられるから、 具材次第で、かなりバランスがいい一品になるんだ。 |
シャスポー | それに……ほら。 こうして切った時の見た目の美しさもあって、 フランス中で親しまれるようになったんだ。 |
シャスポー | 僕のテリーヌは、パリの星空をイメージして、 野菜を星型にしてみたんだけど、どう? |
主人公 | 【綺麗だね】 【美味しそう】 |
シャスポー | ふふっ♪ 今回は自信作だから、きっと美味しいよ。 |
シャスポー | それに、フランス生まれの高性能な僕が作るからには、 ただ美味しいだけじゃないよ。 エレガンスも込めてみたんだ。 |
主人公 | 【エレガンス……?】 |
シャスポー | フランスでは、jour de muguetっていって、 5月1日に大切な人へ鈴蘭を贈る習慣があるんだ。 |
シャスポー | 鈴蘭は、春や幸福を象徴する花なんだ。 だから、受け取った人には、 幸福が訪れるって言われてるんだよ。 |
シャスポー | 〇〇…… 君に、たくさんの幸せが訪れますように。 そんな願いを込めて、作ってみたんだ。 |
主人公 | 【…………】 |
シャスポー | どうしたの? マスター。 顔色がよくないみたいだけど……? |
シャスポー | もしかして、苦手な食材が入ってた? |
主人公 | 【大変申し上げにくいのですが……】 【その……鈴蘭には、ですね……】 |
グラース | ……ん? 何してんだ? |
シャスポー | グラース……。 〇〇との素敵なひとときを 邪魔しないでくれ。 |
グラース | ケチくせぇこと言うなよ。 お、なんだこれ、テリーヌか? うまそうだな。 |
グラース | 〇〇に食わせる前に、 僕が味見してやるよ。 |
シャスポー | あっ、おい! |
───パクッ!
主人公 | 【グラース!】 【ペッしなさい!】 |
---|---|
グラース | はぁ? なんだよ、〇〇、血相変えて。 |
グラース | んん……! これ美味いな。 もうひとロ─── |
主人公 | 【食べたら駄目!】 【毒が入ってる!】 |
シャスポー | なっ……毒!? そんなものを入れた覚えは……! |
主人公 | 【鈴蘭には毒がある!】 |
シャスポー | なんだって! そんな……僕としたことが……! |
グラース | はぁ!? なんでそんなもんが……って……! ぐっ……めまい、が……! |
シャスポー | おっ、おい、しっかりしろ! 早く吐き出すんだ! |
グラース | 吐き出すなんて……そんな、の、 僕のプライドが、許さ、ねぇ……! |
シャスポー | そんなこと言ってる場合か!? |
グラース | あれ……向こうに……花畑が、見える……。 |
シャスポー | グラース──────!! |
〇〇の治療を受けて
見事に回復したグラースだったが、
その後テリーヌを異様に警戒するようになったという。
※鈴蘭には強い毒があるので、
決して摂取しないでください。
タバティエール | よっ、〇〇ちゃん。 一緒に夕食でもどうだ? |
---|---|
シャスポー | もちろん、〇〇さえよければだけど……。 僕としては、君と一緒に食べられたら嬉しいな。 |
エルメ | やあ、マスター。少しいいかな? |
ドライゼ | 今度のドイツ軍派遣について、 少し話しておきたいことがあるのだが。 |
シャスポー | ……っ、君は……ドライゼ! |
ドライゼ | ああ……お前は、フランスのシャスポーだな。 俺に何か用だろうか。 |
シャスポー | 何か用、だって……? よくもぬけぬけと、そんなとぼけたことを言えるな! |
タバティエール | おい、シャスポー……! |
シャスポー | 土足でヴェルサイユ宮殿に乗り込んだ 野蛮なプロイセン銃の分際で、 僕の前に顔を出せる感性……理解に苦しむよ。 |
シャスポー | いや……君の祖国は、侵略したヴェルサイユ宮殿で 戴冠式をやるような国だったね。 |
シャスポー | そんな国で生まれた君だからこそ、 当然同じような感性を持っているというわけだ。 ……この、格下が! |
ドライゼ | …………。 |
ドライゼ | ……祖国に対する侮辱を、許すことはできない。 俺を格下だと侮るのであれば、 実戦をもって決着をつけることに異論はないな? |
シャスポー | 望むところだ。 僕が君に負けるとでも? |
エルメ | 決闘か……いいね。 銃はそうあるべきだよ。 |
タバティエール | おいおい、貴銃士同士で本気の実戦なんかしたら、 とんでもないことになるぞ……! |
主人公 | 【2人とも落ち着いて!】 【士官学校内での私闘は禁止!】 |
ドライゼ | しかし、マスター。 初対面の相手に向かっての失礼千万な言葉の数々、 祖国への侮辱……到底聞き捨てならない。 |
エルメ | そうだね。俺としても、 おとなしく引き下がることなんてできないよ。 何かしらの形で、決着をつけないと。 |
シャスポー | 〇〇、僕のことは心配いらないよ? 高性能な僕は、ドライゼなんかに絶対、 負けたりしないからね? |
タバティエール | いや、そういうことじゃなくてだな……。 |
主人公 | 【とにかく、実戦はやめよう】 【違う方法で決着をつけよう】 |
ドライゼ | む……決闘に替わる案があなたにあるというなら、 俺はそれでもかまわない。 お前はどうだ、シャスポー。 |
シャスポー | ああ。 どんな勝負だろうと、僕が勝つに決まっているからね。 受けて立つよ。 |
〜10分後〜
シャスポー | ───ドライゼ。 そろそろ、野蛮な本性を見せたらどうなんだい? |
---|---|
ドライゼ | なんの話だ? |
シャスポー | ふん! 君がババを持ってることはお見通しなんだ。 卑怯な小細工なんて、この僕には通用しないぞ! |
タバティエール | そりゃあな……2人でババ抜きやってて、 お前がババを持ってないんだったら、 ドライゼが持ってるわな。 |
エルメ | 小細工どころじゃないよね。 |
エルメ | 俺としては、ドライゼの野蛮な本性が 見てみたいけれど。 |
シャスポー | ちょっと、うるさいよ君たち! |
ドライゼ | 真剣勝負の邪魔をするな。 |
〜数分後〜
ドライゼ | ……上がりだ。 |
---|---|
シャスポー | なっ……!? あり得ない! なんで僕が負けるんだ……!? |
ドライゼ | 勝負は勝負だ。 潔く負けを認め、祖国への侮辱を撤回して謝罪しろ。 |
シャスポー | だ、黙れ! 僕が負けるなんて……そうだ! お前が何か姑息な手を使ったに決まっている! |
ドライゼ | くだらない言いがかりはよしてもらおう。 貴様の負けという揺るぎない事実すらも 正しく認識できないとは……哀れな男だ。 |
シャスポー | なんだと……!? とにかくもう1回だ! 今度こそ僕が勝つ! |
ドライゼ | 完璧かつ確実な戦略で叩き潰してやろう。 |
タバティエール | ドライゼ……もう1回に付き合ってやるのか……。 |
エルメ | ドライゼは面倒見がいいからね。 |
〜1時間後〜
シャスポー | くっ……! もう1回だ! |
---|---|
タバティエール | はぁ……これで何回目だよ。 |
エルメ | 俺、そろそろ部屋に戻ろうかな……。 |
───2人の決闘は深夜になっても終わらず、
翌朝まで続いたのだった。
シャスポー | ふぅ……今回の任務はこれでおしまいだね。 |
---|---|
グラース | 少し暗くなってきたな。もう帰還しようぜ。 |
タバティエール | そうだな。 〇〇ちゃんも、それでいい─── |
伝令兵 | ───連合軍より伝令です! |
伝令兵 | 親世界帝派による立てこもり事件が発生! 至急、市街地まで応援に向かってください! |
タバティエール | なんだって……!? |
主人公 | 【行こう!】 |
シャスポー | ……っ、待って、〇〇! |
アウトレイジャー | ……殺ス……! |
伝令兵 | なっ……アウトレイジャー!? |
シャスポー | タバティエール、〇〇を頼む! ここは僕が……! |
シャスポー | ───絶対高貴! |
アウトレイジャー | グァアァッ……! |
シャスポー | フン……この僕がいるんだ。 〇〇に手を出させるわけないだろう? |
主人公 | 【ありがとう】 【助かった】 |
グラース | ハッ、調子に乗るなよ、シャスポー。 僕ならあれくらいの敵、もっと早く倒せたさ。 |
シャスポー | どうせ君は口だけだろう? 今だって、僕の方が先にアウトレイジャーに気づいて、 いち早く倒したじゃないか。 |
グラース | それは、僕が譲ってやったからで─── |
タバティエール | おい、2人ともそこまでだ! 街の方から煙が上がってる! |
シャスポー | ……っ、急ぐぞ! |
シャスポー | なっ、これは……! |
---|---|
連合軍兵士 | 貴銃士とマスター殿ですね! 報告します。 親世界帝派が、街の数か所に火を放ちました! |
連合軍兵士 | 立てこもり犯を逃がすため、 混乱を狙って放火したものと思われます! |
グラース | 戦闘と被害の状況は? |
連合軍兵士 | 本隊が、武装した立てこもり犯と 銃撃戦になっています。 |
連合軍兵士 | 火災家屋からの人命救助にも人員を割いているため、 押され気味になっているとのことです! |
グラース | アウトレイジャーがいないだけ、 不幸中の幸いってところか……。 |
タバティエール | 対人間の銃撃戦なら、 現代銃を持ってる兵士の方が適任だろう。 俺たちは───……シャスポー? |
シャスポー | …………。 |
シャスポー | …………赤、い……。 |
シャスポー | 街が、燃えて……火が……。 |
タバティエール | おい、シャスポー! |
シャスポー | ……っ! |
タバティエール | 俺たちは、救助や避難誘導を手伝おう。 もしアウトレイジャーが現れたら、その対処も。 |
シャスポー | ……ああ。 |
グラース | 街の西側へ避難しろ! 落ち着いて、転ばないように! |
---|---|
市民女性 | ……助けてください! 息子がまだ家の中にいるんですっ! |
女性の悲痛な声に振り返ると、
近くの家の2階から、子供の泣き声が聞こえる。
2階にはまだ火が回っていないが、
1階は激しく燃えており、
消防を待たなければ突入できそうにない。
子供 | ママー! ママー! |
---|---|
シャスポー | ……僕が助ける。 |
グラース | 待て! あんな火の中に入るなんて無理だ! |
タバティエール | シャスポー、よせ! 消防隊を呼んでからじゃないと……! |
シャスポー | 黙れ! あの子は───僕が助けなきゃいけないんだ! |
女性が持っていたパケツの水を頭からかぶると、
シャスポーは制止を振り切って、
火の中に突入していった。
主人公 | 【シャスポー!】 |
---|---|
グラース | あの、馬鹿野郎……! |
固唾を呑んで待つこと、しばらく───
シャスポー | ……行くぞ! |
---|
子供を抱きかかえたシャスポーが、
2階の窓を蹴破って飛び降りた。
子供 | ママ……! |
---|---|
市民女性 | ありがとうございます……ありがとうございます……! |
タバティエール | シャスポー……無茶しやがって……! 貴銃士は不死身じゃないんだぞ! |
シャスポー | …………僕は、違う。 |
グラース | ……? |
シャスポー | 僕は、あの時とは違う……。 |
シャスポー | ふふ……僕に、救えた……。 僕は、もう、あの時とは違うんだ……。 |
タバティエール | シャスポー……。 |
シャスポー | やあ、〇〇。 |
---|---|
シャスポー | 教室に忘れ物でもしたのかな? それなら、寮まで一緒に戻ろう。 道すがら、お喋りしながら……ね? |
主人公 | 【今日はどんな日だった?】 【授業は楽しかった?】 |
シャスポー | ふふ……そうだね。 |
シャスポー | 今日は、銃にまつわる歴史の授業があってね。 その中で、僕───シャスポー銃も取り上げられたんだ。 |
シャスポー | それも当然だよね? だって僕は、当時の銃の常識を塗り替えるくらい、 画期的で高性能で優れた銃だったんだから。 |
シャスポー | 後装式銃の先駆けという点で言えば、 確かにドライゼの功績が大きいけれど……。 僕の方が遥かに優れた性能を持っているんだ。 |
シャスポー | だって、射程距離なんかは、 あいつの2倍くらいもあるんだよ? |
シャスポー | ……ねぇ、〇〇。 君は僕について、どれくらい知ってる? |
シャスポー | もしよかったら、今日の授業で聞いた内容も含めて、 僕の歴史について説明させてもらえないかな。 |
シャスポー | 君には、僕のことをもっと知ってもらいたいんだ。 |
主人公 | 【ぜひ、お願い】 【わかった】 |
シャスポー | Merci! |
シャスポー | 僕を作ったのは、 アントワーヌ・アルフォンス・シャスポー。 |
シャスポー | ……そう、僕の名前は、彼が由来なんだよ。 |
シャスポー | 19世紀半ば───ほとんどの国は、 ミニエー銃をはじめとする前装式ライフルを 主力装備にしていたんだ。 |
シャスポー | プロイセンでは、後装式ボルトアクション銃の ドライゼが配備されていたけれど、前装式ライフルより 射程距離が短いから、あまり注目されていなかった。 |
シャスポー | そんな中でも、アントワーヌは後装式銃に着目して、 試作を重ねていたんだ。 |
主人公 | 【粘り強い人だったんだね】 【先見の明があったんだね】 |
シャスポー | そうだね。 そのおかげで、僕───シャスポー銃は完成した。 |
シャスポー | ちょうどその頃、後装式銃への風向きが 大きく変わる出来事があったんだ。 |
---|---|
シャスポー | 〇〇なら、知ってるかな? |
主人公 | 【デンマーク戦争?】 【普墺戦争?】 |
シャスポー | ……そう。 さすが〇〇だね。 |
シャスポー | プロイセン軍は、前装式ライフルに射程距離では劣る ドライゼ銃を配備していたのに、勝利を重ねた。 そのことで、各国は後装式銃の優位性を認識したんだ。 |
シャスポー | フランスの軍部も、プロイセンの脅威に、 強い危機感を覚えたんだろうね……。 |
シャスポー | 試作品が完成したばかりだったシャスポー銃を、 急遽制式採用することにしたんだ。 |
シャスポー | 僕が初めて戦場で使われたのは、 そのあとすぐ……メンターナの戦いだった。 |
シャスポー | 結果は……ふふっ、言うまでもないよね。 |
シャスポー | フランス軍の勝利の一報は、すぐに議会に届いて、 こう報告されたんだ。 |
シャスポー | “Les Chassepots ont fait merveille!” シャスポー銃の働きは驚異的でした! ってね。 |
シャスポー | ……おっと、そろそろ寮に着くね。 君といると楽しくて、 寮までの道のりがあっという間に感じるな。 |
シャスポー | もっと一緒にいたいけど…… 夜更かしはよくないね。それじゃあ、また明日。 〇〇……。 |
シャスポー | くっ……! ドライゼの奴、一体なんなんだ! |
---|---|
タバティエール | まあまあ、落ち着けってシャスポー。 |
シャスポー | 落ち着いてられるか! 僕が20kgのダンベルを使っていたら、 あいつは横で30kgのダンベルを使い始めたんだ! |
シャスポー | ふん! あいつの魂胆なんて、僕にはお見通しだよ。 些細なことでも僕に勝るふりをして、 お粗末な射程距離のことを誤魔化そうとしているんだ! |
タバティエール | いや……ドライゼはいつも通りのトレーニングを してただけだと思うがねぇ……。 |
シャスポー | タバティエール……! お前、あいつの肩を持つのか!? |
主人公 | 【……荒れてるみたいだね】 【どうかした?】 |
タバティエール | あー、〇〇ちゃん、気にしないでくれ。 シャスポーのこれは、いつものことだからさ。 |
タバティエール | 普段はもっと冷静なんだが、 相手がドライゼとなると……な。 |
主人公 | 【どうしてそこまで目の敵に……?】 【理由を聞いても構わない?】 |
シャスポー | それは…… 当然、あいつがプロイセンの銃だからだよ。 |
シャスポー | プロイセンが、フランスに何をしたか……! |
シャスポー銃のデビュー戦となったメンターナの戦いで
フランス軍は見事に勝利を収めた。
それから数年……スペイン王位継承問題などで、
フランスとプロイセンの対立が高まり、
ついには宣戦布告へと至ったのだった───。
フランス軍兵士1 | プロイセンと戦争か……。 しかも、プロイセンだけじゃなくて、 ドイツ諸邦も参戦するらしいな。 |
---|---|
フランス軍兵士2 | シュレースヴィヒ=ホルシュタインでの戦争に、 オーストリア帝国との戦争…… プロイセンは勝ち続きだ。気を引き締めないとな。 |
フランス軍兵士3 | そうだな……。 だが、こっちにはシャスポー銃がある! |
フランス軍兵士3 | ミトラィユーズの配備も進んでるし、 歴戦の兵も含む約40万の常備兵がいるんだぞ。 勝利の女神は、俺たちに微笑むに違いない! |
フランス軍兵士1 | ……ああ、そうだな! |
常備兵を擁するという点でフランス軍は優位だったが、
プロイセン及びドイツ諸邦は、徴兵によって、
120万もの兵を動員できたとされている。
その一方、フランス軍が採用したシャスポー銃は、
プロイセンのドライゼ銃よりはるかに射程距離が長く、
当時の軍用銃の中で群を抜いた性能を誇っていた。
戦況はフランス優位との見方が強かったが───
射程距離が長い野砲の配備や、
スパイによる課報、近隣国への根回し、
鉄道の整備など……。
周到に戦争の準備を整えていたプロイセンを相手に、
フランス軍は大敗を喫したのだった───。
シャスポー | …………。 |
---|---|
シャスポー | おまけに、プロイセンの奴らは フランスを蹂躙するだけでは飽き足らず─── |
シャスポー | ヴェルサイユ宮殿で戴冠式を行ったんだ。 プロイセン国王が皇帝に即位し、 ドイツ帝国の誕生を宣言するための戴冠式をね……! |
シャスポー | 占領した宮殿で戴冠式を行うなんて…… 本当に、奴らのやり方の汚さといったら……! |
シャスポー | それに、あのあとフランスが─── 僕が辿った歴史のことを考えると、 プロイセンやドライゼのことを許すことはできない。 |
シャスポー | ……絶対に、ね。 |
シャスポー | はぁ……また雨だ。昨日も今日も……! イギリスはどうしてこう、 パッとしない天気ばかりなんだ……! |
---|---|
シャスポー | うう……っ。 また、頭痛が……。くそっ……! |
主人公 | 【大丈夫?】 【顔色が悪い】 |
シャスポー | 〇〇!? |
シャスポー | いや……心配かけてごめんね。 少し休めば落ち着くから、大丈夫だよ。 |
シャスポー | ……ねぇ、〇〇。 |
シャスポー | 君のクラスでも、 歴史についての授業があるんだよね。 |
シャスポー | それなら……フランスについても、 もう色々と知っているのかな。 |
主人公 | 【主要な出来事なら……】 【シャスポーほど詳しくないけれど】 |
シャスポー | …………。 そっか……。 |
シャスポー | きっと、君ももう、あのことを─── 「血の一週間」のことを、知っているんだね……。 |
シャスポー | ……〇〇。 君には、僕から直接伝えておきたい。 僕の歴史と、罪のことを……。 |
シャスポー | 普仏戦争のあと…… プロイセンと和睦を進めようとする臨時政府と、 徹底抗戦や革命を訴えるパリ市民が対立したんだ。 |
シャスポー | 市民が蜂起したことで、 臨時政府はヴェルサイユへ避難し、 パリに自治政府「コミューン」が成立した。 |
シャスポー | だけど……。 |
シャスポー | 態勢を立て直したヴェルサイユ臨時政府軍が、 パリ・コミューンへの攻撃を開始したんだ。 |
シャスポー | コミューン側は敗戦を重ねていって…… ついには、臨時政府軍がパリに突入し、 激しい市街戦になった。 |
シャスポー | おまけに、プロイセン軍に退路を断たれて…… 市街戦が激化するなか、 優位に立った臨時政府軍は───虐殺を始めた。 |
シャスポー | コミューン戦士も、市民も関係ない。 老若男女、たくさんの市民が殺された。 セーヌ川の水が、血で赤く染まるほどに……。 |
シャスポー | ……その虐殺で使われたのが、僕。 シャスポー銃なんだ。 |
シャスポー | 僕の性能は、ドライゼなんかよりずっと優れてる。 なのに、普仏戦争ではそれ以外の要因が大きすぎて、 大した活躍もできないまま負けてしまった……。 |
シャスポー | シャスポー銃が最も活躍したのは、 「血の一週間」だと言う人もいるんだ。 数万人の死者を出した、あの出来事が……。 |
シャスポー | グラースが言うように……あの時の僕は、 貴銃士ではなくて、ただの銃だった。 |
シャスポー | 使われるだけの存在だった僕に、 あの殺戮を止めることは、できるはずもなかった。 |
シャスポー | でも……僕がパリの市民たちを殺めたという事実は 変わらないし、消えない。 |
シャスポー | ……僕は、「シャスポー」。 この名前と共に、 罪を背負っていかなくてはならないんだ……。 |
シャスポー | 今でもたまに夢に見る…… 恐ろしい……轟々と燃え上がる炎に覆われた パリの街を─── |
シャスポー | 愛しいパリの人たちが、路上にたくさん─── あ、赤い血が、川のように─── |
シャスポー | それは、全部、ぼ、僕のせいで─── 僕が、パリの人たちを───……! |
主人公 | 【無理しないで】 【手が震えてる】 |
シャスポー | ……ッ!! ───触らないで!! |
シャスポー | 僕に触ったら、君まで……っ! |
シャスポー | ……あ、いや、ごめん……! 少し、びっくりしただけなんだ。 僕……思い出しただけで、こんなに……。 |
シャスポー | 情けないな。まだまだ、だよね……。 もっと強くなら、なきゃ……。 |
───士官学校が休みの、とある日。
シャスポー | やあ、〇〇。 今日は忙しいかな? |
---|---|
シャスポー | もし、時間があれば……なんだけど、 僕と一緒に、街にお出かけしない? |
主人公 | 【いいよ】 【喜んで】 |
シャスポー | ふふ、ありがとう。 今日は僕が、〇〇を独り占めだね。 |
シャスポー | ねぇ、〇〇は、 どこか行きたいところはある? |
シャスポー | 僕はまだ、近くの街のことをあまり知らないから…… 君の好きなところに行けたら嬉しいな。 |
主人公 | 【わかった】 【案内するよ】 |
シャスポー | ありがとう、〇〇。 |
シャスポー | 今度〇〇がフランスに行く時は、 僕も一緒に行って、 素敵なところをたくさん案内するね。 |
シャスポー | 僕のお気に入りのカフェに、 世界の至宝が集まる美術館や博物館、 活気あふれるマルシェ……。 |
シャスポー | 君も、きっと気に入ってくれるはずだよ。 |
シャスポー | ……おっと。あまりお喋りしていたら、 お出かけの準備の邪魔になってしまうね。 |
シャスポー | それじゃあ、〇〇。 準備ができたら、正門のところに来てね。 |
シャスポー | へぇ……。 士官学校の近くにこんな場所があったとは、驚いたな。 |
---|---|
シャスポー | 〇〇のおすすめなだけあって、 すごく素敵なカフェだね。 |
シャスポー | 〇〇は何を頼むの? 僕は……紅茶と、クイニーアマンをいただくよ。 |
シャスポー | 君は、クイニーアマンを食べたことはある? フランスのブルターニュ地方の伝統的なお菓子で、 甘いだけじゃなく、少し塩気もあって美味しいんだ。 |
シャスポー | ふふっ、こっちのカフェでも食べられるものなんだね。 少しびっくりしたよ。 |
シャスポー | このカフェ、マカロンやカヌレも置いているし…… もしかしたら、ここの菓子職人は、 フランスのパティスリーで修行してきたのかもね。 |
シャスポー | ……ああ、ごめん。 君とこうして出かけられたのが嬉しくて、 つい、僕ばかり色々喋っていたね……。 |
シャスポー | 今度は、〇〇の番だよ。 最近のこととか……何か気になることがあれば、 なんでも言ってほしいな。 |
主人公 | 【士官学校での暮らしはどう?】 【みんなと仲良くやれてる?】 |
シャスポー | そうだね……。 |
シャスポー | 最初は、貴銃士が学校に通ったり訓練をしたりするの? っていう戸惑いもあったけれど、 今はそれなりに楽しんでいるよ。 |
シャスポー | まあ、貴銃士クラスに押し込められて、 見たくもない奴の顔をしょっちゅう 見なきゃならないのは腹立たしいけどね……。 |
シャスポー | 〇〇の方はどう? 君とはクラスが別だから……普段の生活について、 話を聞かせてほしいな。 |
シャスポー | ……わ、もうこんなに暗くなっていたんだ。 楽しい時間って、あっという間に過ぎてしまうね。 |
---|---|
シャスポー | 〇〇、今日は本当にありがとう。 君のおかげで、すごく素敵な休日になったよ。 |
シャスポー | ねぇ、〇〇…… また今度、僕と一緒にお出かけしてくれる……? |
主人公 | 【いいよ】 【もちろん】 |
シャスポー | ふふっ、ありがとう、〇〇。 絶対、約束……だよ……? |
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