| スプリングフィールド | …………。 |
|---|---|
| 生徒1 | あの一。 もしかして、道に迷ってますか? |
| スプリングフィールド | ……! あ、……はい……。 |
| 生徒1 | どこに行きたいんですか? |
| スプリングフィールド | ええ、と……寮に……。 |
| 生徒2 | ああ、それならあっちです。 ここは中央棟なんで、そこを出てまっすぐです。 |
| 生徒1 | また困ったら声をかけてください、貴銃士様! |
| スプリングフィールド | ……ありがとうございます。 |
| スプリングフィールド | ……ふぅ。 |
| スプリングフィールド | (早く、どこに何があるか覚えないと……。 誰かに迷惑をかけるわけには、いかない……) |
| スプリングフィール | …………。 |
|---|---|
| ケンタッキー | おっ、スーちゃん。 ちょうどいいところに! |
| スプリングフィールド | え……? あ、ケンタッキー。 ペンシルヴァニアさんに、マスター……。 |
| ペンシルヴァニア | 今、〇〇にも話してたんだが……。 俺たち、ちょっとアメリカまで行ってくる。 |
| スプリングフィールド | アメリカに……? どうして……。 |
| ケンタッキー | もち、任務だよ。 アメリカに詳しい俺らが最適だって、 ラッセルの野郎に指名されたんだ。 |
| ペンシルヴァニア | スプリングは身体が弱いから……。 無理はできない……だろう? |
| スプリングフィールド | ……はい……。 |
| ケンタッキー | そーんな顔すんなって! すぐ帰ってくっからさ。 お土産、楽しみにしてろよ。 |
| スプリングフィールド | う、うん……。 |
| ケンタッキー | マスターもスーちゃんのこと、よろしくお願いします。 知っての通り、スーちゃんは身体弱いんで…… 無茶しないように見ててやってほしいんス! |
| 主人公 | 【了解】 【任せて】 |
| ペンシルヴァニア | では、マスター、スプリング……、 行ってくるよ。 |
| スプリングフィールド | …………。 |
| 主人公 | 【寂しくなるね】 【大丈夫?】 |
| スプリングフィールド | ……大丈夫、です。 |
| 主人公 | 【でも……】 【無理はしないで】 |
| スプリングフィールド | ……本当に、大丈夫ですから……。 |
| スプリングフィールド | マスターに迷惑は、かけません。 身体も問題ありません。 自分のことは、自分でやります。 |
| スプリングフィールド | あ……。 |
| スプリングフィールド | い、今の、お腹の音は、その─── |
| スプリングフィールド | す、すみません……。 森かどこかで、食べ物、見つけてきます……! |
| 主人公 | 【待って!】 【食堂に行こう】 |
| スプリングフィールド | え……? |
| スプリングフィールド | 人がいっぱいだ……。 |
|---|---|
| スプリングフィールド | ……あっ。あそこに、いるのは……。 |
| 在坂 | …………。 |
| スプリングフィールド | ……何をしているの? |
| 在坂 | 在坂は、食器を片付けている。 今日はカレーライスを食べた。 |
| スプリングフィールド | カレーライス……。 |
| 在坂 | これから食べるのか? なら、あそこで食券を買うといい。 |
| スプリングフィールド | 食券? |
| 在坂 | あの箱に金を入れると出てくる、紙きれのことだ。 |
| 在坂 | 『食堂のおばちゃん』にその紙を渡すと、 食べ物がもらえる。 |
| スプリングフィールド | そうなんだ……食べ物が……。 教えてくれて、ありがとう。 |
| 在坂 | 大したことはしていない。 ちなみに、今日のデザートはアップルパイだ。 さくさくしていて、在坂は気に入った。 |
| スプリングフィールド | アップルパイ……! |
| 在坂 | ……スプリングフィールド。 それは、在坂が初めて見る顔だ。 好きなのか? |
| スプリングフィールド | ……うん。たぶん……。 |
| 在坂 | なら、デザートも頼めばいいと在坂は思う。 |
| スプリングフィールド | ありがとう。……やってみるよ。 |
| スプリングフィールド | …………。 |
|---|
スプリングフィールドは、
湯気が上がるカレーライスと、
一切れのアップルパイをじっと見つめていた。
| 主人公 | 【食べないの?】 【召し上がれ?】 |
|---|---|
| スプリングフィールド | はい。 い、いただきます……。 |
| ??? | マスター! |
| マークス | ここにいたのか。 恭遠が呼んでるぞ。 |
| スプリングフィールド | …………。 |
| マークス | ……うん? もしかして、今、忙しいのか? |
| スプリングフィールド | いえ……。 マスター、行ってください。 僕は大丈夫ですので。 |
| マークス | そうか。 なら、行こう。マスター。 |
| スプリングフィールド | …………。 |
| マークス | なんだ? やはりマスターが必要なのか? |
| スプリングフィールド | いえ! そんなことはありません。 |
| マークス | だが、マスターもあんたを心配しているように見える。 |
| スプリングフィールド | いいから、行ってください。 僕はそんなに、頼りないです……か? |
| 主人公 | 【わかった】 【何かあったら呼んでほしい】 |
| スプリングフィールド | はい。 |
| マークス | じゃあ、行こう。 なんでも、補習に出てない奴がいるとかで─── |
| スプリングフィールド | …………。 |
| スプリングフィールド | いただきます……。 …………。 |
スプリングフィールドは、
アップルパイにフォークを刺す。
さくっと小気味良い音がした。
多くの人でにぎわう食堂で、
スプリングフィールドは一人
アップルパイを口に運ぶ。
| スプリングフィール | …………? |
|---|---|
| スプリングフィールド | (……おかしいな。 アップルパイ、前はおいしいと思ったのに…… 今日は……味が、しない……?) |
| スプリングフィールド | (どうして、だろう……) |
| スプリングフィールド | ……ケホッ、コホッ……。 |
|---|---|
| スプリングフィールド | (……さっきの訓練で、少し無理したかな) |
| スプリングフィールド | (貧弱なこの身体が、 本当に、嫌になる……) |
| ??? | うわっ!? |
| スプリングフィールド | ……っ! すみませ……! |
スプリングフィールドは、ぶつかった相手に慌てて頭を下げる。
すると、目の前に白く綺麗な手が差し出された。
| シャルルヴィル | ううん、大丈夫だよ。 ごめんね、ちゃんと前見てなくて……。 君、怪我とかしてない? |
|---|---|
| スプリングフィールド | は、はい、大丈夫です……。 僕の方こそ、よそ見をしていてすみま─── |
| シャルルヴィル | ……あれ? 君、スプリングフィールドじゃない? |
| スプリングフィールド | え……? 確かに、僕はスプリングフィールド、ですが……。 |
| シャルルヴィル | やっぱり! ボク、君に会うのを楽しみにしてたんだ! |
| スプリングフィールド | ……? |
| シャルルヴィル | あ、あれ……? 君はボクに会いたいと思わなかった? |
| スプリングフィールド | えっと……。 あなた、は……? |
| シャルルヴィル | ああ、ボクがわからなかったのか。 ボクはシャルルヴィルだよ。 いわば、君のお兄さん……かな。 |
| シャルルヴィル | 君って、アメリカ独立戦争のあと、 ボクをモデルに作られたんだよね? アメリカ初の国産銃としてさ! |
| シャルルヴィル | 米英戦争……第二次独立戦争ともいうんだっけ。 そこから活躍して─── |
| スプリングフィールド | (……ああ、そういうことか) |
| スプリングフィールド | ……すみません。 僕は米英戦争のスプリングフィールドでは、ない……です。 |
| シャルルヴィル | え……? |
| スプリングフィールド | 僕は、もっと後─── 南北戦争の時代に作られました。 |
| スプリングフィールド | 同じ工廠で作られた最初期のモデルは、 フランスの銃をモデルにしていると聞いたことはありますが、 僕は……違います……。 |
| シャルルヴィル | ……本当だ。 よく見たら、フリントロック式じゃないね……。 その鷲が資料で見たことのあるマークだったから、つい……。 |
| スプリングフィールド | はい……。 |
| シャルルヴィル | ま、間違えちゃった……。 |
| スプリングフィールド | ご期待に沿えず、申し訳ありません……。 |
| シャルルヴィル | …………。 |
| スプリングフィールド | …………。 |
| シャルルヴィル | あー……、コホン。 ……で、でもさ、ボクの直系の弟じゃなくても、 弟の孫、とか、弟の弟の弟みたいなものじゃない? |
| スプリングフィールド | え……。 |
| シャルルヴィル | 細かいことは置いといて、仲良くしよう! ボク、弟が欲しかったから、 兄さんって呼んでもらえると嬉しいな。 |
| スプリングフィールド | ……!? |
| シャルルヴィル | ね、いいよね? ほら、呼んでみて! 「シャルル兄さん」って! |
| スプリングフィールド | ……シャルル、兄、さん……? |
| シャルルヴィル | ふふっ、ありがとう。 じゃあ、君のことはスプリング─── ううん、スフィーって呼ぼうかな? いい? |
| スプリングフィールド | スフィー……。 |
| シャルルヴィル | あっ、嫌だった? |
| スプリングフィールド | い、いえ……! ……嬉しい、です……。 |
| シャルルヴィル | そう、よかった。 |
| シャルルヴィル | ねぇ、スフィー。 スフィーは何が好き? |
| スプリングフィールド | ええっと……その……、 好きなもの、は特に……。 |
| シャルルヴィル | そっか。 じゃあ、趣味はなに? |
| スプリングフィールド | それも特にない、です……。 |
| シャルルヴィル | そっか……。 |
| スプリングフィールド | あの……。 …………すみません。 |
| シャルルヴィル | ううん! まだ会ったばかりだし、 うまく話せないこともあるよね。 ……ボクも人見知りするたちだからわかるよ。 |
| スプリングフィールド | シャルル、兄さん……。 |
| シャルルヴィル | そうだ! スフィーは甘いものは好き? スイーツとか、食べる? |
| スプリングフィールド | 甘い、もの……。 アップルパイなら、美味しいと感じます。 スイーツというのは……? |
| シャルルヴィル | えっ、もしかしてアップルパイしか食べたことない!? じゃあ、ボクのおすすめのマカロンを分けてあげる! |
| スプリングフィールド | は、はい……? |
| シャルルヴィル | すっごくおいしいから、 きっとスフィーも気に入るよ。 ボクの部屋にあるからおいで! |
シャルルヴィルはスプリングフィールドの
手を取ると、足取り軽く歩き出す。
| スプリングフィールド | ……! |
|---|---|
| シャルルヴィル | フォンダンショコラや、タルトタタンも食べようか。 今日はお祝いだよ。 君とボクが出会えたことの、ね♪ |
| スプリングフィールド | …………はい。 |
| シャルルヴィル | さぁ、部屋に行こう。 2人でティータイムを楽しまなくっちゃ! |
| スプリングフィールド | 楽しむ……。 |
| スプリングフィールド | (僕みたいな出来損ないが、楽しむ……) |
| スプリングフィールド | (そんなことして、いいのかな……) |
| シャルルヴィル | ……うん? どうしたの? |
| スプリングフィールド | ……いえ……。 |
| スプリングフィールド | (……ううん。楽しんでみたい) |
| スプリングフィールド | ───よろしくお願いします。 |
| スプリングフィールド | (「シャルル兄さん」と、ティータイムを……) |
| スプリングフィールド | はぁ……はぁ……はぁ……。 |
|---|---|
| スプリングフィールド | (苦しい……胸が……) |
| スプリングフィールド | くっ……はぁ……はぁ……っ。 |
| スプリングフィールド | (息が……あがる……、で、でも……、 基礎訓練、だから……、頑張ら、ないと……) |
| 恭遠 | スプリングフィールド。 あと1周、頑張れるか? |
| スプリングフィールド | っ、はい……! |
| スプリングフィールド | (あと、1周……。 もう少しで、ゴールだ……。 苦しいけど……今日こそは、やる、ぞ……) |
| スプリングフィールド | はぁ……はぁ……はぁ……。 |
| スプリングフィールド | お、終わっ、た……。 はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。 |
| 恭遠 | すごいじゃないか、スプリングフィールド! ついにグラウンド10周を走り抜いたな! |
| スプリングフィールド | はぁ……はぁ……はぁ……。 |
| 主人公 | 【おめでとう!】 【ケンタッキーたちも喜ぶよ】 |
| スプリングフィールド | はぁ……はぁ……。 マ、マスター……。 |
| スプリングフィールド | そ、そうですね……。きっと、任務から、帰って、 きたら、ケンタッキーや、ペンシルヴァニアさんが、 褒めて……はぁ……はぁ……。 |
| 恭遠 | スプリングフィールド、無理をして話すな。 少し休んだらいい。 君は十分頑張ったんだ。 |
| スプリングフィールド | ……! はい……! |
| スプリングフィールド | (やった……。 僕は、頑張れたんだ……!) |
| シャスポー | よーし、ゴールだ! |
| スプリングフィールド | ……ん……? |
| シャスポー | ははっ。 このタイム、20周の最短記録なんじゃないか? |
| グラース | ふんっ。 僕はとっくの昔にゴールしてたけどな。 |
| シャスポー | おい、嘘をつくな! 君は19周しか走っていないだろう? 数を誤魔化そうとするなんて、最低な奴め! |
| グラース | ……チッ。 バレてたのか。 |
| スプリングフィールド | じゅ、19周……20周……!? |
| スプリングフィールド | (信じられない……。 あの人たちは、僕が10周走る間に、 その倍を走るんだ……) |
| スプリングフィールド | (しかも、まだまだあんなに元気で……。 ……僕の10周完走なんて、全然大したこと、ない) |
| スプリングフィールド | …………。 |
───その日の夜。
| スプリングフィールド | 疲れたな……早く休もう。 |
|---|---|
| ??? | Congratulations!! |
| スプリングフィールド | わあっ!? な、なに……!? |
| ケンタッキー | やったな、スーちゃん! |
| スプリングフィールド | ケンタッキーに、ジョージ……? それに、マスターまで。 |
| ケンタッキー | マスターから聞いたぜ! グラウンド10周完走できたんだってな! くーっ、俺が任務に行ってる間に! おめでとう! |
| スプリングフィールド | あ……。 |
| ジョージ | なかなか9周の壁を破れなかったもんな! 今日はスプリングの記念日だ! 朝まで祝っちゃおうぜっ☆ Yeah! |
| スプリングフィールド | …………。 |
| スプリングフィールド | 記念日、だなんて。 ……そんな風に、言ってもらえるほどのことじゃ……。 |
| ケンタッキー | ……? どうした? なんでしょげてんだよ? |
| スプリングフィールド | だって……10周なんて、僕以外のみんなは、 最初からできていたことなんだから……。 |
| ジョージ | ええっ! そんなことで落ち込んでるのか!? スプリングはスプリングじゃん! 人と比べたって、仕方ないだろー? |
| スプリングフィールド | でも……。 |
| ジョージ | すごいヤツを見上げてたら、キリないって。 オレ、スプリングより先に10周走れてたけど、 ドライゼとかには全然負けるぞ? |
| ジョージ | だからさ! 変に比べたりしないで、 ただスプリングにできることが増えたのを お祝いしようよ! |
| スプリングフィールド | ジョージ……。 |
| ケンタッキー | そのとーり。 俺たちは、毎日スーちゃんが頑張ってたのを知ってる。 その努力が結果に繋がったのって、すごくね? |
| スプリングフィールド | …………。 |
| スプリングフィールド | ……うぅ、う……。 |
| ケンタッキー | えっ!? ど、どーした、スーちゃん……!? |
| スプリングフィールド | なんか、胸が熱くて……。 目と鼻も痛いような……うぅ……。 |
| スプリングフィールド | どうしよう……。 僕、もしかして壊れちゃったのかな……。 |
震えるスプリングフィールドの肩を、
ジョージが優しく引き寄せる。
| ジョージ | スプリング! 大丈夫だって。 すげー嬉しい時って、 胸がジーンと熱くなるんだ。 |
|---|---|
| スプリングフィールド | 嬉しいと……? なら……この気持ちが、“嬉しい”……? |
| ジョージ | そう。 スプリングは今、HAPPYなんだ! |
| ケンタッキー | なんだ、ホッとしたぜ。 うんうん、感動すると鼻とかツーンとして 涙が出るんだよな! |
| スプリングフィールド | HAPPY……これが……。 |
| 主人公 | 【10周完走、おめでとう】 【努力が実ったね】 |
| スプリングフィールド | マスター……。 |
| スプリングフィールド | ……はい。よかった、です。 完走できたことも、この気持ちを知られたことも……。 |
| スプリングフィールド | みんなに祝われたら、もっと、胸が熱くなって……。 僕、とても……嬉しい、です。 |
| ケンタッキー | なぁ、アウトレイジャーが出る森って、 本当にここなのかよ? さっきから微塵もそんな気配ねーけど? |
|---|---|
| ペンシルヴァニア | ……まぁ、そうすぐに見つかるものでもないだろう。 緑の美しさや空気のおいしさ…… そんなものを楽しみながら、のんびり探そう。 |
| ケンタッキー | はぁ? ピクニックじゃねーんだぞ!? そうっすよね、マスター! |
| 主人公 | 【警戒は続けよう】 【気を張りすぎるのもよくないかも】 |
| ケンタッキー | ええっ、マスター!? |
| ペンシルヴァニア | ふ……冗談だ。ケンタッキーやスプリングが、 気を抜くような間抜けな真似はしないと…… 俺は、知っているからな。 |
| ケンタッキー | 冗談かよ!? わかりづれぇポケすんなポケ!! |
| スプリングフィールド | (ピクニック……) |
| スプリングフィールド | (サンドイッチを持って、みんなで森を歩いて。 川で遊んで、お腹が空いたら食べて……) |
| スプリングフィールド | (楽しいだろうなぁ……) |
| スプリングフィールド | (───あ。また、胸が温かい) |
| ジョージ | そう。 スプリングは今、HAPPYなんだ! |
|---|
| スプリングフィールド | (これも、HAPPYなのかな?) |
|---|---|
| ケンタッキー | ……ん? どうしたスーちゃん。 |
| スプリングフィールド | あ……。 |
| ペンシルヴァニア | ……もしかして、気が抜けてた? |
| スプリングフィールド | …………。 |
| ケンタッキー | おいっ、ペンシルヴァニア! スーちゃんに限って、そんなことあるわけねーだろ! |
| スプリングフィールド | ───ッ! 何か、近づいてくる……! |
| アウトレイジャーたち | 目標、発見……。破壊……破、カイ……! |
| ペンシルヴァニア | ……向こうから出てきてくれたようだな。 |
| ケンタッキー | ああ、しかも団体さんでぞろぞろとな! |
| スプリングフィールド | マスター……! |
| 主人公 | 【絶対非道を使って!】 【絶対高貴で!】 |
| スプリングフィールド | ……そう、ですよね。 |
| ケンタッキー | この数だ。 スーちゃんも手助けしてくれよな。 頼りにしてるぜ! |
| スプリングフィールド | ……はい。 |
| ケンタッキー | んじゃ、さっさとやっちまうか! |
| スプリングフィールド | ……絶対、非道……。 |
|---|---|
| アウトレイジャーたち | グ、ギャ……アァァ……。 |
| スプリングフィールド | はぁ……はぁ……。 今ので全部……でしょうか……? |
| ペンシルヴァニア | ああ……そうみたいだな。 スプリングもケンタッキーもお疲れ様。 |
| スプリングフィールド | そう……。 よか……った……───ゲホッ。 |
| ケンタッキー | スーちゃん! 大丈夫かっ!? |
| スプリングフィールド | へい、き……。 マスターの傷のつらさに比べれば、 むしろ、こんな血、吐き足りない……ぐらい……。 |
| スプリングフィールド | ……ふふ。冗談、で─── カハッ……! |
| ケンタッキー | 何言ってるんだよ! マスター、早くスーちゃんを─── |
| スプリングフィールド | いいんだ、ケンタッキー……! |
| 主人公 | 【どうして?】 【治さないと!】 |
| スプリングフィールド | 僕は、マスターを傷つけたくなかった。 でも、傷つけてしまいました……。 僕なんかが戦って……ごめんなさい……。 |
| ペンシルヴァニア | ……スプリングは、 絶対非道になるのは……つらいか? |
| スプリングフィールド | ……はい。 |
| 主人公 | 【傷つくのは身体だけだから大丈夫】 【無理に絶対非道にならなくていいよ】 |
| スプリングフィールド | 戦いたくないわけじゃないんです……! ……マスターの力には、なりたい。 |
| スプリングフィールド | …………。 |
| スプリングフィールド | ……僕の銃を見てください。 たくさんの傷がついているでしょう? 過去の持ち主に刻まれた傷、です。 |
| ケンタッキー | スーちゃん……。 |
| スプリングフィールド | 傷つけられても痛いはずはありません。 銃に感覚はありませんから。 |
| スプリングフィールド | でも、僕はここに来て気づいたんです。 僕はこの傷で外側だけじゃなくて、 心も傷ついていたんだ───って。 |
| スプリングフィールド | ……銃である僕に心があるなんておかしいけど、 『心みたいな何か』がずっと……痛かった。 痛いんだと気づかないほど。 |
| スプリングフィールド | 身も心も、傷ついたら痛い……。 僕はこの痛みを、マスターには 感じてほしくない、です……。 |
| スプリングフィールド | けど、僕はこの脆弱な身体のせいで、 満足に絶対非道も使えない、から……。 ただ、いたずらにマスターを苦しめて、しまう……。 |
| スプリングフィールド | マスターは僕のことを救ってくれた人なのに……。 |
| スプリングフィールド | 僕は……。 |
| スプリングフィールド | 僕は、こんな自分が大嫌い、です。 |
| ケンタッキー | ……っ。 スーちゃん……。 |
| スプリングフィールド | 僕は、こんな自分が大嫌い、です。 |
|---|---|
| ケンタッキー | ……っ。 スーちゃん……。 |
| ケンタッキー | そ、そんなこと、言うなよ! 俺もペンシルヴァニアもマスターも! スーちゃんが大好きだぜ! |
| ペンシルヴァニア | ケンタッキーの言う通りだ。 俺たちが大好きなスプリングを…… 嫌わないでやってくれ。 |
| 主人公 | 【2人と同じ気持ちだ】 【大好きだよ】 |
| スプリングフィールド | マスター……。 |
| スプリングフィールド | どうして……。 僕はこんな身体なんだろう……。 |
| スプリングフィールド | 嫌いだ。 僕が……この脆くて弱い身体が……! |
| スプリングフィールド | 僕が、僕じゃなければ! そうすれば、マスターも、 最初の持ち主だったあの人も……。 |
| 主人公 | 【……何があったのか、聞いても?】 【……話してくれる?】 |
| スプリングフィールド | …………。 |
| スプリングフィールド | ……あまり、気持ちのいい話じゃないですけど、 いいですか? |
| ペンシルヴァニア | スプリング。 それは愚問……というヤツだな。 |
| スプリングフィールド | ……わかりました。 |
| スプリングフィールド | 始まりは、18世紀半ば─── アメリカのスプリングフィールドに 新たな工廠が誕生しました。 |
| スプリングフィールド | そこで最初に作られたのは……スプリングフィールドA1795。 独立戦争のあとに作られた、 アメリカ初の国産マスケット銃……です。 |
| スプリングフィールド | そこから、何度も改良を重ねられ…… たくさんのスプリングフィールド銃が生まれました。 A1816、A1840、A1861─── |
| スプリングフィールド | 最初のA1795が作られてからおよそ60年。 A1861が作られるようになった頃…… アメリカは南北戦争に突入しました。 |
| 子供1 | いっけー! ぼくたちの手で、勝利を勝ち取るんだー! バンバンバーン!! |
|---|---|
| 子供2 | うわぁ、やられたぁ……! |
| 子供3 | へへっ、おれたち アメリカ合衆国軍の勝利だぜー! |
| 北軍兵士 | おい、おまえら。 本物の銃を使って戦争ごっこをするなよ。 危ないじゃないか。 |
| 北軍兵士 | つーか、スプリングフィールドA1795なんて、 どっから持って来たんだ? 俺のじいさんが使ってた銃だぞ。 |
| 子供1 | へへっ! 物置で見つけたんだ。 かっこいいだろ! |
| 北軍兵士 | ああ、かっこいいな。 けど、俺の銃もかっこいいぜ? ほら、スプリングフィールドA1861だ。 |
| 子供3 | へっ? 何が違うんだ? おんなじに見えるぞ! |
| 北軍兵士 | ハハ。確かに似てるけど、シンプルで丈夫な もっといい銃になったんだ。こいつが俺やおまえたち、 そしてこの国の自由を守ってくれてるんだぜ。 |
| 子供1 | へ〜! ぼくも欲しいなぁ〜! |
| 子供2 | なー、けどさ。 戦ってる相手もアメリカ人だよな? |
| 北軍兵士 | ……! |
| 子供3 | なーなー。 なんで、アメリカ人同士で戦うんだ? |
| 北軍兵士 | それはな、俺たち北部のやりたいことに反対した南部7州が、 合衆国を脱退して新しい国を作ろうとしたからさ。 |
| 子供1 | ええっと、どういうこと……? |
| 北軍兵士 | わかりやすく言うと……そうだなぁ、 南部のヤツらは、アメリカ人をやめようとしたんだ。 それで、俺たちは……喧嘩をしている。 |
| 子供2 | 喧嘩で人が死ぬのか……? 父ちゃんも戦いに行くって言ってたけど、 ちゃんと生きて戻ってくるかな……? |
| 北軍兵士 | ……ああ。 俺たち合衆国は必ず勝つし、 お前の父さんも生きて戻ってくるさ。 |
| 北軍兵士 | 俺がこのスプリングフィールドA1861で 守ってやるしな! |
| 子供2 | そっか! にーちゃん、ありがとな! |
| スプリングフィールド | 南北戦争中にアメリカ陸軍─── 合衆国軍と海兵隊が使用したのが、 スプリングフィールドA1861だったんです。 |
|---|---|
| スプリングフィールド | A1861は、最終的に100万挺も製造されました。 特に合衆国軍で、 最も使われた銃……だと言われています。 |
| スプリングフィールド | スプリングフィールドA1861の評価は総じて 「エンフィールド銃より単純で、丈夫」 ……というものでした。 |
| スプリングフィールド | 単純で丈夫というのは、銃からすると、誉め言葉なんです。 構造が簡単だから、誤作動や整備の手間も少なく、 壊れにくいという意味なので……。 |
| スプリングフィールド | ……でも、僕は……。 |
| スプリングフィールド | 数で勝る合衆国が有利……そう思われていた 南北戦争は、連合国の優秀な兵や指揮官たちの前に 合衆国が苦戦し、戦況は泥沼と化していきました。 |
|---|
| 北軍兵士1 | ……くっ、また外した! なんで当たらねぇんだよっ! |
|---|---|
| 北軍兵士2 | 単純で丈夫─── 確かに、撃ちゃあ弾は跳んでいく、単純な銃だよな。 けど、当たらなきゃ意味ねぇだろ! |
| 北軍兵士1 | ちくしょう。 また弾を込めなきゃなんねぇ……。 くそっ、流れ弾なんて飛んでくるなよ? |
| 北軍兵士1 | うわっ!? 危ねえ! くそっ、立ち上がって装填しなきゃなんねぇなんて、 最悪だ……! |
| 北軍兵士1 | くそっ、こいつのせいで……! |
| 北軍兵士2 | ……おい、何やってるんだ!? ナイフで銃を切りつけたって、 弾が当たるわけじゃないだろ? |
| 北軍兵士1 | わ、わかってる。 ……そんなこと、わかってるさ。 |
| 北軍兵士1 | くそっ! |
| 北軍兵士1 | このポンコツが……。 今日もまともに命中しやがらねぇ……! |
|---|---|
| 北軍兵士1 | お前のせいで俺が足手まといに なっちまってるじゃねぇか! 合衆国軍が負けたらどうするっ!! |
| 北軍兵士1 | このっ! このっ! このっ! |
| 北軍兵士2 | あいつ、またやってるのか。 |
| 北軍兵士3 | なあ、なんであいつ。 ナイフで銃を傷つけてるんだ? |
| 北軍兵士2 | 自分の腕が悪いのを、 銃のせいにしてるんだよ。 |
| 北軍兵士3 | ああ、A1861は当てるのに腕がいるからなぁ。 訓練を受けたヤツならうまく当てるが、 俺ら一般兵にゃ、当たるか外れるかは運だ。 |
| 北軍兵士2 | 当たらなくてむしゃくしゃする気持ちも わからなくはないけどな。 特に、今は連合国軍に押されてるしさ。 |
| 北軍兵士2 | けど、銃に八つ当たりするのも筋違いってもんだ。 |
| 北軍兵士3 | おーい、銃を傷つけるなんてやめろ。 いい銃なんだから、もったいないだろ? |
| 北軍兵士1 | いい銃? 当たらないのにか? |
| 北軍兵士2 | ……銃のせいじゃない。 わかってるんだろ? |
| 北軍兵士1 | ……それ、は─── …………。 |
| 北軍兵士1 | ……くそっ! お前のせいだ! お前のせいだ! お前のせいで……! |
| 北軍兵士3 | やれやれ……。 |
| 北軍兵士1 | ……くそっ。 今日も当たらねぇ……! |
|---|---|
| 北軍兵士1 | しかも、弾切れか。 装填しないと……。 |
| 北軍兵士2 | 馬鹿っ! 今、立つな……! |
| 北軍兵士1 | え─── |
| 北軍兵士1 | うぎゃああ……っ!! |
| 北軍兵士2 | お、おい! しっかりしろ……っ!! |
| 北軍兵士1 | ……くそっ……、最後まで当たりゃしねぇ、 ふざけた、銃……が……。 俺は……こんな、とこ、で……。 |
| スプリングフィールド | こうして、僕の最初の持ち主は───死んだんです。 |
|---|---|
| スプリングフィールド | 彼のもとにいたのは、たったの1年でした。 僕の銃についた傷はほとんど、その1年間のものです。 |
| スプリングフィールド | ……それだけ、彼は僕を─── …………。 |
| スプリングフィールド | ……今、わかりました。 最近覚えていた、違和感の正体が……。 |
| スプリングフィールド | あの人の役に立てなかった、この僕が……。 |
| スプリングフィールド | みんなに優しくしてもらって、 嬉しく思ったり、幸せを感じたりしていることが…… よくないことのような気がするんです。 |
| ケンタッキー | スーちゃん……。 |
| スプリングフィールド | それに……あの時の僕は、 単純でも『丈夫』ではありました。 今の僕とは違って……ゲホッ。 |
| 主人公 | 【大丈夫!?】 【無理はしないで】 |
| スプリングフィールド | 平気、です……。 もう少しだけ、話をさせてください……。 |
| スプリングフィールド | 僕が何故、こんな身体になってしまったのか、を───。 |
| スプリングフィールド | 南北戦争が終わった頃、 銃の主流は後装式へと移っていきました……。 |
|---|
| 司令官1 | 連合国との戦いで騎兵隊が使った スペンサー銃の性能は素晴らしかったな。 |
|---|---|
| 司令官2 | ああ、後装式で装填が早く、取り回しもいい。 歩兵たちが使うにしても、地に伏せたまま 装填と発射を繰り返せるから、死傷者が少なくて済む。 |
| 司令官3 | プロイセンやフランスでは、 後装式の銃の配備が進んでいると聞く。 我々も後れをとるわけにはいかないぞ。 |
| 司令官1 | しかし、我々は南北戦争に大量の金を費やした。 新たなる後装式銃の開発に費やせる資金など……。 |
| 司令官2 | ───戦地から回収したA1861を使うのはどうだ!? あれを後装式に改造すればいい! |
| 司令官3 | なるほど。 改造ならコストも抑えられるかもしれない。 さっそく検討に入ろう。 |
| スプリングフィールド | そうして、スプリングフィールドA1861は、 スプリングフィールドA1865へと 改造されることになりました……。 |
|---|---|
| スプリングフィールド | 改造の結果は、大成功。 A1865は戦地で大いに活躍するだろうと 歓迎されました。 |
| スプリングフィールド | けれど……諸手を挙げて喜ばれたのは、 最初のうちだけでした……。 |
| 軍人1 | ……? おかしいな、弾が装填できないぞ? |
|---|---|
| 軍人2 | ああ、パーツに寿命が来たんだろ。 この前、第8連隊の銃も同じ状態になってた。 |
| 軍人3 | パーツの寿命? お前もか。 俺のA1865も、パーツがいかれちまってさ。 |
| 軍人1 | たった数ヶ月しか使ってないんだぞ? しかも、面倒な動作しなきゃ撃てないのを 我慢して使ってるってのに……。 |
| 軍人2 | そうだよな。 もっと使いやすい銃を支給してほしいぜ。 |
| 軍人3 | よし、上に嘆願書を出すか。 現状をわかってもらえれば、 きっと他の銃に変えてくれるだろう。 |
| 軍人1 | ああ、そうしよう。 こっちは命張って戦ってるんだ。 信頼できる銃じゃないとやってられないからな。 |
| 司令官1 | まさかA1865にあんな欠陥があるとはな。 |
|---|---|
| 司令官2 | やはり、急ごしらえの改造では、 無理があったか。 |
| 司令感3 | 使い方も一般兵には難しかったようだ……。 |
| 司令官1 | して、どうする。 あれだけ作ったA1865は? |
| 司令官2 | どうするも何も、 廃棄するしかないだろう。 |
| 司令官3 | ああ。残念だが、そうするのが一番だろう。 使えない銃を大量に保有していても、 維持管理に無駄に金を食うだけだ。 |
| スプリングフィールド | 後装機構の可動パーツの寿命が短いこと、 作動が複雑なことが欠陥だと判断され、 軍のA1865は大量に廃棄されました。 |
|---|---|
| スプリングフィールド | その銃の一部は……やがて、 アメリカ国内の武器商人の元に渡りました。 |
| 武器商人 | ったく、 使えない銃ばっかり抱えちまって、 商売あがったりだよ。 |
|---|---|
| 武器商人 | このA1865が、今流行のグラース銃に 変わったりしないもんかねぇ? |
| 老人 | ……ちょいと、商人さん。 銃を1挺、売ってくださらんかね。 |
| 武器商人 | いらっしゃいませ! どのような銃をお探しですか? |
| 老人 | どのような……と言われても、 最近の銃には疎くてのう……。 |
| 武器商人 | (銃のことをろくに知らない、耄碌したジジイか。 こいつはいいカモが来たぞ……!) |
| 武器商人 | それでしたら…… この、A1865などいかがでしょう? |
| 老人 | ほうほう、 これはスプリングフィールド銃ですかな? わしでも知っている銃だ。 |
| 武器商人 | はい。 単純で丈夫と謳われたA1861を改良して作られた A1865という素晴らしい銃です! |
| 老人 | それは心強い。 若者たちから、優れた銃だと聞いたことがあるが…… さらに改良されたなら、さぞかしいい銃なんだろうね。 |
| 武器商人 | もちろんですとも! その中でもひときわ優良な逸品がこちらです! |
| 老人 | では、この銃をいただくとしようか。 |
| 武器商人 | まいどありー! |
| スプリングフィールド | こうして……僕は、武器商人に騙された 老人の手に渡ったんです。 |
| スプリングフィールド | けれど、老人は僕をほとんど使うことなく 病気で命を落とし…… 僕は長い間、物置で眠っていました。 |
| スプリングフィールド | ……時が経ち、脱獄囚であった 前の持ち主に渡るまで、ずっと……。 |
| スプリングフィールド | 僕は、思うんです。 もし始めから僕が後装式の銃だったら、 最初の持ち主は命を落とすことはなかった……と。 |
|---|---|
| ケンタッキー | そ、そんなこと言っても、しかたねーだろ!? |
| ペンシルヴァニア | 後装式だったらなんて……。 結果がわかっているからこそ、言えること……じゃないか? |
| スプリングフィールド | ……わかっています……。 でも、せめて……僕が改造されず、 丈夫なA1861のままだったら……。 |
| スプリングフィールド | こんな不完全な身体で絶対非道になって、 マスターを苦しめることもなかった……。 |
| スプリングフィールド | それに、A1861は、分類としては 今の僕よりはるかに「古銃」に近い。 |
| スプリングフィールド | だから、あのままだったら、もしかしたら絶対高貴に 目覚めることもできていたかもしれない……。 そうしたら、マスターを傷つけずに済むのに……! |
| スプリングフィールド | なんで、こうなんだろう……? 頼りなくて、何もかもが中途半端……。 僕は、どうしてこうなってしまったんだろう……。 |
| 主人公 | 【そんなこと言わないでほしい】 【スプリングフィールドは大切な貴銃士だ】 |
| スプリングフィールド | マスター……。 |
| スプリングフィールド | 胸が……熱くなるんです……。 そんな風に言ってもらえると、 嬉しいと思ってしまう……。 |
| スプリングフィールド | だからこそ、僕だって、 役に立ちたいのに……なのに……ゲホ、ゲホッ! |
| ケンタッキー | スーちゃん……! また血が……! |
| スプリングフィールド | 大、丈夫……です……。 ……すみません、さっき見かけた川で 顔を洗ってきます。 |
| ペンシルヴァニア | 無理をするな。 俺の肩を貸そう……ほら。 |
| スプリングフィールド | ありがとうございます。 ……でも、今は1人になりたいので。 |
| スプリングフィールド | 役に立たないくせに、 わがままばかりで、すみません……。 |
| ケンタッキー | スーちゃん……。 |
| スプリングフィール | …………。 |
|---|---|
| スプリングフィールド | (ダメだな、僕は。 みっともなく癇癪なんて起こしてしまった……) |
| スプリングフィールド | (前の持ち主のことも、僕の身体が弱いのも、 マスターやみんなにはなんの関係もないのに……) |
| スプリングフィールド | (勝手に話して、勝手に落ち込んで、 わがままを言って飛び出してきて……) |
| スプリングフィールド | でも、僕はマスターも、みんなのことも好きなんだ。 マスターやみんなを守りたい……。 |
| スプリングフィールド | ……うん。 こんな身体だけど、できるだけのことをしよう。 役に立てることを、見つけよう……。 |
| スプリングフィールド | (……そろそろ戻らないと) |
| 主人公 | 【ここにいたんだ】 【ごめんね、様子が気になって】 |
| スプリングフィールド | マ、マスター!? ど、どうして─── |
| スプリングフィールド | ……って、聞くまでもないですよね。 あなたのことだから、 僕を心配してくれたって……わかります。 |
| スプリングフィールド | ありがとうございます。 でも、ケンタッキーたちから離れてはダメです。 もし、まだアウトレイジャーの残党がいたら……。 |
| 主人公 | 【でも、心配で】 【2人が辺りの様子を確認しに行ってる】 |
| スプリングフィールド | そう……ですか。 ……だったら、僕と一緒の方が……? いや、でも……。 |
| スプリングフィールド | 僕と2人きりなんて、 やっぱり危険な気がします。 |
| スプリングフィールド | もちろん、僕はマスターを精一杯守ります! |
| スプリングフィールド | ……でも、僕はひ弱で、 そのくせ絶対非道になれば、 マスターを傷つけて─── |
| 主人公 | 【頼りにしているよ】 【その考え方はよくない】 |
| スプリングフィールド | マスター……。 |
| スプリングフィールド | ……! 誰、ですか? |
| アウトレイジャー | 殺、ス……、壊、ス……。 皆、殺、シ……。 |
| スプリングフィールド | アウトレイジャー! やっぱり、まだ残党がいたんですね……! |
| スプリングフィールド | 危ない、マスター! |
| アウトレイジャー | 殺、ス……全、テ……。 |
| スプリングフィールド | マスター、下がってください! 僕がケンタッキーたちが来るまでの時間を稼ぎます! |
| 主人公 | 【わかった!】 【援護する!】 |
| スプリングフィールド | ───絶対非道。 |
| アウトレイジャー | ウゥ、ァアアッ! 殺ス……! |
| スプリングフィールド | こっちに……来るな……! |
| スプリングフィールド | くっ……。 |
| スプリングフィールド | (ケンタッキー……。 ペンシルヴァニアさん……。 早く、気づいて……!) |
| スプリングフィールド | (ああ……、マスターの顔色が悪い……! あんなに苦しそうに……。 僕の絶対非道が、負担をかけているんだ……) |
| スプリングフィールド | (早く絶対非道を解かないと……。 でも解いたら、アウトレイジャーが……) |
| スプリングフィールド | ……ゲホッ! |
| スプリングフィールド | (まずい……。僕の身体もそろそろ……。 このままじゃ、マスターが危ない……) |
|---|---|
| ??? | スプ……ールド……! |
| ??? | ……ター……? |
| スプリングフィールド | 今の声……! ペンシルヴァニアさん? ケンタッキー!? |
| スプリングフィールド | 2人とも、こっちに!!! |
| ペンシルヴァニア | ……いた! |
| ケンタッキー | 急ぐぞ! |
| スプリングフィールド | (2人が来るまで、あと数秒。それなら───!) |
スプリングフィールドは絶対非道を解き、
〇〇の方へと駆け寄る。
| スプリングフィールド | マスター……! |
|---|
スプリングフィールドは
アウトレイジャーの攻撃を遮るように
〇〇に覆い被さった。
| スプリングフィールド | 僕が、盾になります……! ケンタッキーたちが来るまでなら、 耐えられるはずだから……。 |
|---|---|
| スプリングフィールド | これが、一番…… あなたを、傷つけない……!! |
| アウトレイジャー | ウゥゥ……死ネ……! |
| スプリングフィールド | うっ……。 |
| 主人公 | 【駄目!】 【スプリングが壊れてしまう!】 |
| アウトレイジャー | 殺、ス……。…………。 |
| スプリングフィールド | 殺させなんて、しない……。 マスターは……、 僕、が……まも、る……。 |
| スプリングフィールド | ううっ……! |
| ペンシルヴァニア | スプリングフィールド……! |
| ケンタッキー | すまねぇ、遅くなっちまった! |
| スプリングフィールド | ペンシル、ヴァニア、さん……、 ケンタッ、キー……。 |
| ケンタッキー | お前らよくも……! おい、ペンシルヴァニア! あいつらブッ倒すぞ! |
| ペンシルヴァニア | ああ、わかってる。 |
| ケンタッキー&ペンシルヴァニア | 絶対高貴───心銃! |
| ケンタッキー | スーちゃんとマスターを傷つけた落とし前は、 きっちりつけてもらうからなぁ……! |
| ペンシルヴァニア | これ以上の蛮行は……許さない。 |
| アウトレイジャー | ギャアアア……ッ!! |
| ケンタッキー | スーちゃん! 大丈夫か! |
| スプリングフィールド | もう、だいじょうぶ、です……ね。 2人が、倒して……くれ、ました……。 僕、あなたの、役に立てた、で、しょ、う、か─── |
スプリングフィールドの身体が光に包まれ……
人の姿を失って銃のみになり、地面に落ちる。
| ケンタッキー | スーちゃん……! |
|---|
駆け寄ったケンタッキーが、
銃に戻ったスプリングフィールドを拾い上げた。
| ケンタッキー | お、おい、スーちゃん! スーちゃん!! スーちゃんッ!! |
|---|---|
| ペンシルヴァニア | 落ち着け、ケンタッキー。銃は無事だ。 マスターの傷を治療したら、早く士官学校へ戻ろう! |
| ケンタッキー | あ、ああ……、そうだな……。 銃が無事なら、マスターがまた召銃してくれる……。 |
| ケンタッキー | スーちゃん……無茶、しやがって……! |
| ペンシルヴァニア | マスター、大丈夫か? ……応急処置をする。 |
| 主人公 | 【ありがとう】 【急いで帰らないと】 |
| ケンタッキー | ……ったく! スーちゃんは頭固すぎるんだよ! もっと俺らを頼れってんだ!! |
| ケンタッキー | くそっ! こんな姿に……っ。 くそぉぉぉ……っ。 |
| ペンシルヴァニア | ケンタッキー……。 |
ケンタッキーは、スプリングフィールドの銃身を
いたわるようになでる。
| ケンタッキー | 今度ばかりはキッツーイ説教してやるからな。 覚悟しとけよ。 へばってる余裕なんてやらねぇからな。 |
|---|---|
| ケンタッキー | だから、また元気な姿を見せてくれ。 頼むよ、スーちゃん……。 |
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