貴銃士ストーリー:スプリングフィールド

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第1話:味気ないアップルパイ

スプリングフィールド…………。
生徒1あの一。
もしかして、道に迷ってますか?
スプリングフィールド……!
あ、……はい……。
生徒1どこに行きたいんですか?
スプリングフィールドええ、と……寮に……。
生徒2ああ、それならあっちです。
ここは中央棟なんで、そこを出てまっすぐです。
生徒1また困ったら声をかけてください、貴銃士様!
スプリングフィールド……ありがとうございます。
スプリングフィールド……ふぅ。
スプリングフィールド(早く、どこに何があるか覚えないと……。
誰かに迷惑をかけるわけには、いかない……)

スプリングフィール…………。
ケンタッキーおっ、スーちゃん。
ちょうどいいところに!
スプリングフィールドえ……?
あ、ケンタッキー。
ペンシルヴァニアさんに、マスター……。
ペンシルヴァニア今、〇〇にも話してたんだが……。
俺たち、ちょっとアメリカまで行ってくる。
スプリングフィールドアメリカに……?
どうして……。
ケンタッキーもち、任務だよ。
アメリカに詳しい俺らが最適だって、
ラッセルの野郎に指名されたんだ。
ペンシルヴァニアスプリングは身体が弱いから……。
無理はできない……だろう?
スプリングフィールド……はい……。
ケンタッキーそーんな顔すんなって!
すぐ帰ってくっからさ。
お土産、楽しみにしてろよ。
スプリングフィールドう、うん……。
ケンタッキーマスターもスーちゃんのこと、よろしくお願いします。
知っての通り、スーちゃんは身体弱いんで……
無茶しないように見ててやってほしいんス!
主人公【了解】
【任せて】
ペンシルヴァニアでは、マスター、スプリング……、
行ってくるよ。
スプリングフィールド…………。
主人公【寂しくなるね】
【大丈夫?】
スプリングフィールド……大丈夫、です。
主人公【でも……】
【無理はしないで】
スプリングフィールド……本当に、大丈夫ですから……。
スプリングフィールドマスターに迷惑は、かけません。
身体も問題ありません。
自分のことは、自分でやります。
スプリングフィールドあ……。
スプリングフィールドい、今の、お腹の音は、その───
スプリングフィールドす、すみません……。
森かどこかで、食べ物、見つけてきます……!
主人公【待って!】
【食堂に行こう】
スプリングフィールドえ……?

スプリングフィールド人がいっぱいだ……。
スプリングフィールド……あっ。あそこに、いるのは……。
在坂…………。
スプリングフィールド……何をしているの?
在坂在坂は、食器を片付けている。
今日はカレーライスを食べた。
スプリングフィールドカレーライス……。
在坂これから食べるのか?
なら、あそこで食券を買うといい。
スプリングフィールド食券?
在坂あの箱に金を入れると出てくる、紙きれのことだ。
在坂『食堂のおばちゃん』にその紙を渡すと、
食べ物がもらえる。
スプリングフィールドそうなんだ……食べ物が……。
教えてくれて、ありがとう。
在坂大したことはしていない。
ちなみに、今日のデザートはアップルパイだ。
さくさくしていて、在坂は気に入った。
スプリングフィールドアップルパイ……!
在坂……スプリングフィールド。
それは、在坂が初めて見る顔だ。
好きなのか?
スプリングフィールド……うん。たぶん……。
在坂なら、デザートも頼めばいいと在坂は思う。
スプリングフィールドありがとう。……やってみるよ。

スプリングフィールド…………。

スプリングフィールドは、
湯気が上がるカレーライスと、
一切れのアップルパイをじっと見つめていた。

主人公【食べないの?】
【召し上がれ?】
スプリングフィールドはい。
い、いただきます……。
???マスター!
マークスここにいたのか。
恭遠が呼んでるぞ。
スプリングフィールド…………。
マークス……うん?
もしかして、今、忙しいのか?
スプリングフィールドいえ……。
マスター、行ってください。
僕は大丈夫ですので。
マークスそうか。
なら、行こう。マスター。
スプリングフィールド…………。
マークスなんだ?
やはりマスターが必要なのか?
スプリングフィールドいえ!
そんなことはありません。
マークスだが、マスターもあんたを心配しているように見える。
スプリングフィールドいいから、行ってください。
僕はそんなに、頼りないです……か?
主人公【わかった】
【何かあったら呼んでほしい】
スプリングフィールドはい。
マークスじゃあ、行こう。
なんでも、補習に出てない奴がいるとかで───
スプリングフィールド…………。
スプリングフィールドいただきます……。
…………。

スプリングフィールドは、
アップルパイにフォークを刺す。
さくっと小気味良い音がした。

多くの人でにぎわう食堂で、
スプリングフィールドは一人
アップルパイを口に運ぶ。

スプリングフィール…………?
スプリングフィールド(……おかしいな。
アップルパイ、前はおいしいと思ったのに……
今日は……味が、しない……?)
スプリングフィールド(どうして、だろう……)

第2話:“シャルル兄さん”

スプリングフィールド……ケホッ、コホッ……。
スプリングフィールド(……さっきの訓練で、少し無理したかな)
スプリングフィールド(貧弱なこの身体が、
本当に、嫌になる……)
???うわっ!?
スプリングフィールド……っ! すみませ……!

スプリングフィールドは、ぶつかった相手に慌てて頭を下げる。
すると、目の前に白く綺麗な手が差し出された。

シャルルヴィルううん、大丈夫だよ。
ごめんね、ちゃんと前見てなくて……。
君、怪我とかしてない?
スプリングフィールドは、はい、大丈夫です……。
僕の方こそ、よそ見をしていてすみま───
シャルルヴィル……あれ?
君、スプリングフィールドじゃない?
スプリングフィールドえ……?
確かに、僕はスプリングフィールド、ですが……。
シャルルヴィルやっぱり!
ボク、君に会うのを楽しみにしてたんだ!
スプリングフィールド……?
シャルルヴィルあ、あれ……?
君はボクに会いたいと思わなかった?
スプリングフィールドえっと……。
あなた、は……?
シャルルヴィルああ、ボクがわからなかったのか。
ボクはシャルルヴィルだよ。
いわば、君のお兄さん……かな。
シャルルヴィル君って、アメリカ独立戦争のあと、
ボクをモデルに作られたんだよね?
アメリカ初の国産銃としてさ!
シャルルヴィル米英戦争……第二次独立戦争ともいうんだっけ。
そこから活躍して───
スプリングフィールド(……ああ、そういうことか)
スプリングフィールド……すみません。
僕は米英戦争のスプリングフィールドでは、ない……です。
シャルルヴィルえ……?
スプリングフィールド僕は、もっと後───
南北戦争の時代に作られました。
スプリングフィールド同じ工廠で作られた最初期のモデルは、
フランスの銃をモデルにしていると聞いたことはありますが、
僕は……違います……。
シャルルヴィル……本当だ。
よく見たら、フリントロック式じゃないね……。
その鷲が資料で見たことのあるマークだったから、つい……。
スプリングフィールドはい……。
シャルルヴィルま、間違えちゃった……。
スプリングフィールドご期待に沿えず、申し訳ありません……。
シャルルヴィル…………。
スプリングフィールド…………。
シャルルヴィルあー……、コホン。
……で、でもさ、ボクの直系の弟じゃなくても、
弟の孫、とか、弟の弟の弟みたいなものじゃない?
スプリングフィールドえ……。
シャルルヴィル細かいことは置いといて、仲良くしよう!
ボク、弟が欲しかったから、
兄さんって呼んでもらえると嬉しいな。
スプリングフィールド……!?
シャルルヴィルね、いいよね? ほら、呼んでみて!
「シャルル兄さん」って!
スプリングフィールド……シャルル、兄、さん……?
シャルルヴィルふふっ、ありがとう。
じゃあ、君のことはスプリング───
ううん、スフィーって呼ぼうかな? いい?
スプリングフィールドスフィー……。
シャルルヴィルあっ、嫌だった?
スプリングフィールドい、いえ……!
……嬉しい、です……。
シャルルヴィルそう、よかった。
シャルルヴィルねぇ、スフィー。
スフィーは何が好き?
スプリングフィールドええっと……その……、
好きなもの、は特に……。
シャルルヴィルそっか。
じゃあ、趣味はなに?
スプリングフィールドそれも特にない、です……。
シャルルヴィルそっか……。
スプリングフィールドあの……。
…………すみません。
シャルルヴィルううん! まだ会ったばかりだし、
うまく話せないこともあるよね。
……ボクも人見知りするたちだからわかるよ。
スプリングフィールドシャルル、兄さん……。
シャルルヴィルそうだ! スフィーは甘いものは好き?
スイーツとか、食べる?
スプリングフィールド甘い、もの……。
アップルパイなら、美味しいと感じます。
スイーツというのは……?
シャルルヴィルえっ、もしかしてアップルパイしか食べたことない!?
じゃあ、ボクのおすすめのマカロンを分けてあげる!
スプリングフィールドは、はい……?
シャルルヴィルすっごくおいしいから、
きっとスフィーも気に入るよ。
ボクの部屋にあるからおいで!

シャルルヴィルはスプリングフィールドの
手を取ると、足取り軽く歩き出す。

スプリングフィールド……!
シャルルヴィルフォンダンショコラや、タルトタタンも食べようか。
今日はお祝いだよ。
君とボクが出会えたことの、ね♪
スプリングフィールド…………はい。
シャルルヴィルさぁ、部屋に行こう。
2人でティータイムを楽しまなくっちゃ!
スプリングフィールド楽しむ……。
スプリングフィールド(僕みたいな出来損ないが、楽しむ……)
スプリングフィールド(そんなことして、いいのかな……)
シャルルヴィル……うん? どうしたの?
スプリングフィールド……いえ……。
スプリングフィールド(……ううん。楽しんでみたい)
スプリングフィールド───よろしくお願いします。
スプリングフィールド(「シャルル兄さん」と、ティータイムを……)

第3話:幸せの記念日

スプリングフィールドはぁ……はぁ……はぁ……。
スプリングフィールド(苦しい……胸が……)
スプリングフィールドくっ……はぁ……はぁ……っ。
スプリングフィールド(息が……あがる……、で、でも……、
基礎訓練、だから……、頑張ら、ないと……)
恭遠スプリングフィールド。
あと1周、頑張れるか?
スプリングフィールドっ、はい……!
スプリングフィールド(あと、1周……。
もう少しで、ゴールだ……。
苦しいけど……今日こそは、やる、ぞ……)
スプリングフィールドはぁ……はぁ……はぁ……。
スプリングフィールドお、終わっ、た……。
はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。
恭遠すごいじゃないか、スプリングフィールド!
ついにグラウンド10周を走り抜いたな!
スプリングフィールドはぁ……はぁ……はぁ……。
主人公【おめでとう!】
【ケンタッキーたちも喜ぶよ】
スプリングフィールドはぁ……はぁ……。
マ、マスター……。
スプリングフィールドそ、そうですね……。きっと、任務から、帰って、
きたら、ケンタッキーや、ペンシルヴァニアさんが、
褒めて……はぁ……はぁ……。
恭遠スプリングフィールド、無理をして話すな。
少し休んだらいい。
君は十分頑張ったんだ。
スプリングフィールド……!
はい……!
スプリングフィールド(やった……。
僕は、頑張れたんだ……!)
シャスポーよーし、ゴールだ!
スプリングフィールド……ん……?
シャスポーははっ。
このタイム、20周の最短記録なんじゃないか?
グラースふんっ。
僕はとっくの昔にゴールしてたけどな。
シャスポーおい、嘘をつくな!
君は19周しか走っていないだろう?
数を誤魔化そうとするなんて、最低な奴め!
グラース……チッ。
バレてたのか。
スプリングフィールドじゅ、19周……20周……!?
スプリングフィールド(信じられない……。
あの人たちは、僕が10周走る間に、
その倍を走るんだ……)
スプリングフィールド(しかも、まだまだあんなに元気で……。
……僕の10周完走なんて、全然大したこと、ない)
スプリングフィールド…………。

───その日の夜。

スプリングフィールド疲れたな……早く休もう。
???Congratulations!!
スプリングフィールドわあっ!?
な、なに……!?
ケンタッキーやったな、スーちゃん!
スプリングフィールドケンタッキーに、ジョージ……?
それに、マスターまで。
ケンタッキーマスターから聞いたぜ!
グラウンド10周完走できたんだってな!
くーっ、俺が任務に行ってる間に! おめでとう!
スプリングフィールドあ……。
ジョージなかなか9周の壁を破れなかったもんな!
今日はスプリングの記念日だ!
朝まで祝っちゃおうぜっ☆ Yeah!
スプリングフィールド…………。
スプリングフィールド記念日、だなんて。
……そんな風に、言ってもらえるほどのことじゃ……。
ケンタッキー……?
どうした? なんでしょげてんだよ?
スプリングフィールドだって……10周なんて、僕以外のみんなは、
最初からできていたことなんだから……。
ジョージええっ! そんなことで落ち込んでるのか!?
スプリングはスプリングじゃん!
人と比べたって、仕方ないだろー?
スプリングフィールドでも……。
ジョージすごいヤツを見上げてたら、キリないって。
オレ、スプリングより先に10周走れてたけど、
ドライゼとかには全然負けるぞ?
ジョージだからさ! 変に比べたりしないで、
ただスプリングにできることが増えたのを
お祝いしようよ!
スプリングフィールドジョージ……。
ケンタッキーそのとーり。
俺たちは、毎日スーちゃんが頑張ってたのを知ってる。
その努力が結果に繋がったのって、すごくね?
スプリングフィールド…………。
スプリングフィールド……うぅ、う……。
ケンタッキーえっ!? ど、どーした、スーちゃん……!?
スプリングフィールドなんか、胸が熱くて……。
目と鼻も痛いような……うぅ……。
スプリングフィールドどうしよう……。
僕、もしかして壊れちゃったのかな……。

震えるスプリングフィールドの肩を、
ジョージが優しく引き寄せる。

ジョージスプリング! 大丈夫だって。
すげー嬉しい時って、
胸がジーンと熱くなるんだ。
スプリングフィールド嬉しいと……?
なら……この気持ちが、“嬉しい”……?
ジョージそう。
スプリングは今、HAPPYなんだ!
ケンタッキーなんだ、ホッとしたぜ。
うんうん、感動すると鼻とかツーンとして
涙が出るんだよな!
スプリングフィールドHAPPY……これが……。
主人公【10周完走、おめでとう】
【努力が実ったね】
スプリングフィールドマスター……。
スプリングフィールド……はい。よかった、です。
完走できたことも、この気持ちを知られたことも……。
スプリングフィールドみんなに祝われたら、もっと、胸が熱くなって……。
僕、とても……嬉しい、です。

第4話:見えない傷

ケンタッキーなぁ、アウトレイジャーが出る森って、
本当にここなのかよ?
さっきから微塵もそんな気配ねーけど?
ペンシルヴァニア……まぁ、そうすぐに見つかるものでもないだろう。
緑の美しさや空気のおいしさ……
そんなものを楽しみながら、のんびり探そう。
ケンタッキーはぁ?
ピクニックじゃねーんだぞ!?
そうっすよね、マスター!
主人公【警戒は続けよう】
【気を張りすぎるのもよくないかも】
ケンタッキーええっ、マスター!?
ペンシルヴァニアふ……冗談だ。ケンタッキーやスプリングが、
気を抜くような間抜けな真似はしないと……
俺は、知っているからな。
ケンタッキー冗談かよ!?
わかりづれぇポケすんなポケ!!
スプリングフィールド(ピクニック……)
スプリングフィールド(サンドイッチを持って、みんなで森を歩いて。
川で遊んで、お腹が空いたら食べて……)
スプリングフィールド(楽しいだろうなぁ……)
スプリングフィールド(───あ。また、胸が温かい)

ジョージそう。
スプリングは今、HAPPYなんだ!

スプリングフィールド(これも、HAPPYなのかな?)
ケンタッキー……ん?
どうしたスーちゃん。
スプリングフィールドあ……。
ペンシルヴァニア……もしかして、気が抜けてた?
スプリングフィールド…………。
ケンタッキーおいっ、ペンシルヴァニア!
スーちゃんに限って、そんなことあるわけねーだろ!
スプリングフィールド───ッ! 何か、近づいてくる……!
アウトレイジャーたち目標、発見……。破壊……破、カイ……!
ペンシルヴァニア……向こうから出てきてくれたようだな。
ケンタッキーああ、しかも団体さんでぞろぞろとな!
スプリングフィールドマスター……!
主人公【絶対非道を使って!】
【絶対高貴で!】
スプリングフィールド……そう、ですよね。
ケンタッキーこの数だ。
スーちゃんも手助けしてくれよな。
頼りにしてるぜ!
スプリングフィールド……はい。
ケンタッキーんじゃ、さっさとやっちまうか!

スプリングフィールド……絶対、非道……。
アウトレイジャーたちグ、ギャ……アァァ……。
スプリングフィールドはぁ……はぁ……。
今ので全部……でしょうか……?
ペンシルヴァニアああ……そうみたいだな。
スプリングもケンタッキーもお疲れ様。
スプリングフィールドそう……。
よか……った……───ゲホッ。
ケンタッキースーちゃん!
大丈夫かっ!?
スプリングフィールドへい、き……。
マスターの傷のつらさに比べれば、
むしろ、こんな血、吐き足りない……ぐらい……。
スプリングフィールド……ふふ。冗談、で───
カハッ……!
ケンタッキー何言ってるんだよ!
マスター、早くスーちゃんを───
スプリングフィールドいいんだ、ケンタッキー……!
主人公【どうして?】
【治さないと!】
スプリングフィールド僕は、マスターを傷つけたくなかった。
でも、傷つけてしまいました……。
僕なんかが戦って……ごめんなさい……。
ペンシルヴァニア……スプリングは、
絶対非道になるのは……つらいか?
スプリングフィールド……はい。
主人公【傷つくのは身体だけだから大丈夫】
【無理に絶対非道にならなくていいよ】
スプリングフィールド戦いたくないわけじゃないんです……!
……マスターの力には、なりたい。
スプリングフィールド…………。
スプリングフィールド……僕の銃を見てください。
たくさんの傷がついているでしょう?
過去の持ち主に刻まれた傷、です。
ケンタッキースーちゃん……。
スプリングフィールド傷つけられても痛いはずはありません。
銃に感覚はありませんから。
スプリングフィールドでも、僕はここに来て気づいたんです。
僕はこの傷で外側だけじゃなくて、
心も傷ついていたんだ───って。
スプリングフィールド……銃である僕に心があるなんておかしいけど、
『心みたいな何か』がずっと……痛かった。
痛いんだと気づかないほど。
スプリングフィールド身も心も、傷ついたら痛い……。
僕はこの痛みを、マスターには
感じてほしくない、です……。
スプリングフィールドけど、僕はこの脆弱な身体のせいで、
満足に絶対非道も使えない、から……。
ただ、いたずらにマスターを苦しめて、しまう……。
スプリングフィールドマスターは僕のことを救ってくれた人なのに……。
スプリングフィールド僕は……。
スプリングフィールド僕は、こんな自分が大嫌い、です。
ケンタッキー……っ。
スーちゃん……。

第5話:最初の持ち主

スプリングフィールド僕は、こんな自分が大嫌い、です。
ケンタッキー……っ。
スーちゃん……。
ケンタッキーそ、そんなこと、言うなよ!
俺もペンシルヴァニアもマスターも! スーちゃんが大好きだぜ!
ペンシルヴァニアケンタッキーの言う通りだ。
俺たちが大好きなスプリングを……
嫌わないでやってくれ。
主人公【2人と同じ気持ちだ】
【大好きだよ】
スプリングフィールドマスター……。
スプリングフィールドどうして……。
僕はこんな身体なんだろう……。
スプリングフィールド嫌いだ。
僕が……この脆くて弱い身体が……!
スプリングフィールド僕が、僕じゃなければ!
そうすれば、マスターも、
最初の持ち主だったあの人も……。
主人公【……何があったのか、聞いても?】
【……話してくれる?】
スプリングフィールド…………。
スプリングフィールド……あまり、気持ちのいい話じゃないですけど、
いいですか?
ペンシルヴァニアスプリング。
それは愚問……というヤツだな。
スプリングフィールド……わかりました。
スプリングフィールド始まりは、18世紀半ば───
アメリカのスプリングフィールドに
新たな工廠が誕生しました。
スプリングフィールドそこで最初に作られたのは……スプリングフィールドA1795。
独立戦争のあとに作られた、
アメリカ初の国産マスケット銃……です。
スプリングフィールドそこから、何度も改良を重ねられ……
たくさんのスプリングフィールド銃が生まれました。
A1816、A1840、A1861───
スプリングフィールド最初のA1795が作られてからおよそ60年。
A1861が作られるようになった頃……
アメリカは南北戦争に突入しました。

子供1いっけー!
ぼくたちの手で、勝利を勝ち取るんだー!
バンバンバーン!!
子供2うわぁ、やられたぁ……!
子供3へへっ、おれたち
アメリカ合衆国軍の勝利だぜー!
北軍兵士おい、おまえら。
本物の銃を使って戦争ごっこをするなよ。
危ないじゃないか。
北軍兵士つーか、スプリングフィールドA1795なんて、
どっから持って来たんだ?
俺のじいさんが使ってた銃だぞ。
子供1へへっ! 物置で見つけたんだ。
かっこいいだろ!
北軍兵士ああ、かっこいいな。
けど、俺の銃もかっこいいぜ?
ほら、スプリングフィールドA1861だ。
子供3へっ? 何が違うんだ?
おんなじに見えるぞ!
北軍兵士ハハ。確かに似てるけど、シンプルで丈夫な
もっといい銃になったんだ。こいつが俺やおまえたち、
そしてこの国の自由を守ってくれてるんだぜ。
子供1へ〜! ぼくも欲しいなぁ〜!
子供2なー、けどさ。
戦ってる相手もアメリカ人だよな?
北軍兵士……!
子供3なーなー。
なんで、アメリカ人同士で戦うんだ?
北軍兵士それはな、俺たち北部のやりたいことに反対した南部7州が、
合衆国を脱退して新しい国を作ろうとしたからさ。
子供1ええっと、どういうこと……?
北軍兵士わかりやすく言うと……そうだなぁ、
南部のヤツらは、アメリカ人をやめようとしたんだ。
それで、俺たちは……喧嘩をしている。
子供2喧嘩で人が死ぬのか……?
父ちゃんも戦いに行くって言ってたけど、
ちゃんと生きて戻ってくるかな……?
北軍兵士……ああ。
俺たち合衆国は必ず勝つし、
お前の父さんも生きて戻ってくるさ。
北軍兵士俺がこのスプリングフィールドA1861で
守ってやるしな!
子供2そっか!
にーちゃん、ありがとな!

スプリングフィールド南北戦争中にアメリカ陸軍───
合衆国軍と海兵隊が使用したのが、
スプリングフィールドA1861だったんです。
スプリングフィールドA1861は、最終的に100万挺も製造されました。
特に合衆国軍で、
最も使われた銃……だと言われています。
スプリングフィールドスプリングフィールドA1861の評価は総じて
「エンフィールド銃より単純で、丈夫」
……というものでした。
スプリングフィールド単純で丈夫というのは、銃からすると、誉め言葉なんです。
構造が簡単だから、誤作動や整備の手間も少なく、
壊れにくいという意味なので……。
スプリングフィールド……でも、僕は……。

 

第6話:刻まれた傷跡

スプリングフィールド数で勝る合衆国が有利……そう思われていた
南北戦争は、連合国の優秀な兵や指揮官たちの前に
合衆国が苦戦し、戦況は泥沼と化していきました。

北軍兵士1……くっ、また外した!
なんで当たらねぇんだよっ!
北軍兵士2単純で丈夫───
確かに、撃ちゃあ弾は跳んでいく、単純な銃だよな。
けど、当たらなきゃ意味ねぇだろ!
北軍兵士1ちくしょう。
また弾を込めなきゃなんねぇ……。
くそっ、流れ弾なんて飛んでくるなよ?
北軍兵士1うわっ!? 危ねえ!
くそっ、立ち上がって装填しなきゃなんねぇなんて、
最悪だ……!
北軍兵士1くそっ、こいつのせいで……!
北軍兵士2……おい、何やってるんだ!?
ナイフで銃を切りつけたって、
弾が当たるわけじゃないだろ?
北軍兵士1わ、わかってる。
……そんなこと、わかってるさ。
北軍兵士1くそっ!

北軍兵士1このポンコツが……。
今日もまともに命中しやがらねぇ……!
北軍兵士1お前のせいで俺が足手まといに
なっちまってるじゃねぇか!
合衆国軍が負けたらどうするっ!!
北軍兵士1このっ! このっ! このっ!
北軍兵士2あいつ、またやってるのか。
北軍兵士3なあ、なんであいつ。
ナイフで銃を傷つけてるんだ?
北軍兵士2自分の腕が悪いのを、
銃のせいにしてるんだよ。
北軍兵士3ああ、A1861は当てるのに腕がいるからなぁ。
訓練を受けたヤツならうまく当てるが、
俺ら一般兵にゃ、当たるか外れるかは運だ。
北軍兵士2当たらなくてむしゃくしゃする気持ちも
わからなくはないけどな。
特に、今は連合国軍に押されてるしさ。
北軍兵士2けど、銃に八つ当たりするのも筋違いってもんだ。
北軍兵士3おーい、銃を傷つけるなんてやめろ。
いい銃なんだから、もったいないだろ?
北軍兵士1いい銃?
当たらないのにか?
北軍兵士2……銃のせいじゃない。
わかってるんだろ?
北軍兵士1……それ、は───
…………。
北軍兵士1……くそっ!
お前のせいだ! お前のせいだ! お前のせいで……!
北軍兵士3やれやれ……。

北軍兵士1……くそっ。
今日も当たらねぇ……!
北軍兵士1しかも、弾切れか。
装填しないと……。
北軍兵士2馬鹿っ!
今、立つな……!
北軍兵士1え───
北軍兵士1うぎゃああ……っ!!
北軍兵士2お、おい!
しっかりしろ……っ!!
北軍兵士1……くそっ……、最後まで当たりゃしねぇ、
ふざけた、銃……が……。
俺は……こんな、とこ、で……。

スプリングフィールドこうして、僕の最初の持ち主は───死んだんです。
スプリングフィールド彼のもとにいたのは、たったの1年でした。
僕の銃についた傷はほとんど、その1年間のものです。
スプリングフィールド……それだけ、彼は僕を───
…………。
スプリングフィールド……今、わかりました。
最近覚えていた、違和感の正体が……。
スプリングフィールドあの人の役に立てなかった、この僕が……。
スプリングフィールドみんなに優しくしてもらって、
嬉しく思ったり、幸せを感じたりしていることが……
よくないことのような気がするんです。
ケンタッキースーちゃん……。
スプリングフィールドそれに……あの時の僕は、
単純でも『丈夫』ではありました。
今の僕とは違って……ゲホッ。
主人公【大丈夫!?】
【無理はしないで】
スプリングフィールド平気、です……。
もう少しだけ、話をさせてください……。
スプリングフィールド僕が何故、こんな身体になってしまったのか、を───。

第7話:寿命

スプリングフィールド南北戦争が終わった頃、
銃の主流は後装式へと移っていきました……。

司令官1連合国との戦いで騎兵隊が使った
スペンサー銃の性能は素晴らしかったな。
司令官2ああ、後装式で装填が早く、取り回しもいい。
歩兵たちが使うにしても、地に伏せたまま
装填と発射を繰り返せるから、死傷者が少なくて済む。
司令官3プロイセンやフランスでは、
後装式の銃の配備が進んでいると聞く。
我々も後れをとるわけにはいかないぞ。
司令官1しかし、我々は南北戦争に大量の金を費やした。
新たなる後装式銃の開発に費やせる資金など……。
司令官2───戦地から回収したA1861を使うのはどうだ!?
あれを後装式に改造すればいい!
司令官3なるほど。
改造ならコストも抑えられるかもしれない。
さっそく検討に入ろう。

スプリングフィールドそうして、スプリングフィールドA1861は、
スプリングフィールドA1865へと
改造されることになりました……。
スプリングフィールド改造の結果は、大成功。
A1865は戦地で大いに活躍するだろうと
歓迎されました。
スプリングフィールドけれど……諸手を挙げて喜ばれたのは、
最初のうちだけでした……。

軍人1……?
おかしいな、弾が装填できないぞ?
軍人2ああ、パーツに寿命が来たんだろ。
この前、第8連隊の銃も同じ状態になってた。
軍人3パーツの寿命? お前もか。
俺のA1865も、パーツがいかれちまってさ。
軍人1たった数ヶ月しか使ってないんだぞ?
しかも、面倒な動作しなきゃ撃てないのを
我慢して使ってるってのに……。
軍人2そうだよな。
もっと使いやすい銃を支給してほしいぜ。
軍人3よし、上に嘆願書を出すか。
現状をわかってもらえれば、
きっと他の銃に変えてくれるだろう。
軍人1ああ、そうしよう。
こっちは命張って戦ってるんだ。
信頼できる銃じゃないとやってられないからな。

司令官1まさかA1865にあんな欠陥があるとはな。
司令官2やはり、急ごしらえの改造では、
無理があったか。
司令感3使い方も一般兵には難しかったようだ……。
司令官1して、どうする。
あれだけ作ったA1865は?
司令官2どうするも何も、
廃棄するしかないだろう。
司令官3ああ。残念だが、そうするのが一番だろう。
使えない銃を大量に保有していても、
維持管理に無駄に金を食うだけだ。

スプリングフィールド後装機構の可動パーツの寿命が短いこと、
作動が複雑なことが欠陥だと判断され、
軍のA1865は大量に廃棄されました。
スプリングフィールドその銃の一部は……やがて、
アメリカ国内の武器商人の元に渡りました。

武器商人ったく、
使えない銃ばっかり抱えちまって、
商売あがったりだよ。
武器商人このA1865が、今流行のグラース銃に
変わったりしないもんかねぇ?
老人……ちょいと、商人さん。
銃を1挺、売ってくださらんかね。
武器商人いらっしゃいませ!
どのような銃をお探しですか?
老人どのような……と言われても、
最近の銃には疎くてのう……。
武器商人(銃のことをろくに知らない、耄碌したジジイか。
こいつはいいカモが来たぞ……!)
武器商人それでしたら……
この、A1865などいかがでしょう?
老人ほうほう、
これはスプリングフィールド銃ですかな?
わしでも知っている銃だ。
武器商人はい。
単純で丈夫と謳われたA1861を改良して作られた
A1865という素晴らしい銃です!
老人それは心強い。
若者たちから、優れた銃だと聞いたことがあるが……
さらに改良されたなら、さぞかしいい銃なんだろうね。
武器商人もちろんですとも!
その中でもひときわ優良な逸品がこちらです!
老人では、この銃をいただくとしようか。
武器商人まいどありー!
スプリングフィールドこうして……僕は、武器商人に騙された
老人の手に渡ったんです。
スプリングフィールドけれど、老人は僕をほとんど使うことなく
病気で命を落とし……
僕は長い間、物置で眠っていました。
スプリングフィールド……時が経ち、脱獄囚であった
前の持ち主に渡るまで、ずっと……。

スプリングフィールド僕は、思うんです。
もし始めから僕が後装式の銃だったら、
最初の持ち主は命を落とすことはなかった……と。
ケンタッキーそ、そんなこと言っても、しかたねーだろ!?
ペンシルヴァニア後装式だったらなんて……。
結果がわかっているからこそ、言えること……じゃないか?
スプリングフィールド……わかっています……。
でも、せめて……僕が改造されず、
丈夫なA1861のままだったら……。
スプリングフィールドこんな不完全な身体で絶対非道になって、
マスターを苦しめることもなかった……。
スプリングフィールドそれに、A1861は、分類としては
今の僕よりはるかに「古銃」に近い。
スプリングフィールドだから、あのままだったら、もしかしたら絶対高貴に
目覚めることもできていたかもしれない……。
そうしたら、マスターを傷つけずに済むのに……!
スプリングフィールドなんで、こうなんだろう……?
頼りなくて、何もかもが中途半端……。
僕は、どうしてこうなってしまったんだろう……。
主人公【そんなこと言わないでほしい】
【スプリングフィールドは大切な貴銃士だ】
スプリングフィールドマスター……。
スプリングフィールド胸が……熱くなるんです……。
そんな風に言ってもらえると、
嬉しいと思ってしまう……。
スプリングフィールドだからこそ、僕だって、
役に立ちたいのに……なのに……ゲホ、ゲホッ!
ケンタッキースーちゃん……!
また血が……!
スプリングフィールド大、丈夫……です……。
……すみません、さっき見かけた川で
顔を洗ってきます。
ペンシルヴァニア無理をするな。
俺の肩を貸そう……ほら。
スプリングフィールドありがとうございます。
……でも、今は1人になりたいので。
スプリングフィールド役に立たないくせに、
わがままばかりで、すみません……。
ケンタッキースーちゃん……。

第8話:僕にできること

スプリングフィール…………。
スプリングフィールド(ダメだな、僕は。
みっともなく癇癪なんて起こしてしまった……)
スプリングフィールド(前の持ち主のことも、僕の身体が弱いのも、
マスターやみんなにはなんの関係もないのに……)
スプリングフィールド(勝手に話して、勝手に落ち込んで、
わがままを言って飛び出してきて……)
スプリングフィールドでも、僕はマスターも、みんなのことも好きなんだ。
マスターやみんなを守りたい……。
スプリングフィールド……うん。
こんな身体だけど、できるだけのことをしよう。
役に立てることを、見つけよう……。
スプリングフィールド(……そろそろ戻らないと)
主人公【ここにいたんだ】
【ごめんね、様子が気になって】
スプリングフィールドマ、マスター!?
ど、どうして───
スプリングフィールド……って、聞くまでもないですよね。
あなたのことだから、
僕を心配してくれたって……わかります。
スプリングフィールドありがとうございます。
でも、ケンタッキーたちから離れてはダメです。
もし、まだアウトレイジャーの残党がいたら……。
主人公【でも、心配で】
【2人が辺りの様子を確認しに行ってる】
スプリングフィールドそう……ですか。
……だったら、僕と一緒の方が……?
いや、でも……。
スプリングフィールド僕と2人きりなんて、
やっぱり危険な気がします。
スプリングフィールドもちろん、僕はマスターを精一杯守ります!
スプリングフィールド……でも、僕はひ弱で、
そのくせ絶対非道になれば、
マスターを傷つけて───
主人公【頼りにしているよ】
【その考え方はよくない】
スプリングフィールドマスター……。
スプリングフィールド……! 誰、ですか?
アウトレイジャー殺、ス……、壊、ス……。
皆、殺、シ……。
スプリングフィールドアウトレイジャー!
やっぱり、まだ残党がいたんですね……!
スプリングフィールド危ない、マスター!
アウトレイジャー殺、ス……全、テ……。
スプリングフィールドマスター、下がってください!
僕がケンタッキーたちが来るまでの時間を稼ぎます!
主人公【わかった!】
【援護する!】
スプリングフィールド───絶対非道。
アウトレイジャーウゥ、ァアアッ! 殺ス……!
スプリングフィールドこっちに……来るな……!
スプリングフィールドくっ……。
スプリングフィールド(ケンタッキー……。
ペンシルヴァニアさん……。
早く、気づいて……!)
スプリングフィールド(ああ……、マスターの顔色が悪い……!
あんなに苦しそうに……。
僕の絶対非道が、負担をかけているんだ……)
スプリングフィールド(早く絶対非道を解かないと……。
でも解いたら、アウトレイジャーが……)
スプリングフィールド……ゲホッ!

スプリングフィールド(まずい……。僕の身体もそろそろ……。
このままじゃ、マスターが危ない……)
???スプ……ールド……!
???……ター……?
スプリングフィールド今の声……!
ペンシルヴァニアさん? ケンタッキー!?
スプリングフィールド2人とも、こっちに!!!
ペンシルヴァニア……いた!
ケンタッキー急ぐぞ!
スプリングフィールド(2人が来るまで、あと数秒。それなら───!)

スプリングフィールドは絶対非道を解き、
〇〇の方へと駆け寄る。

スプリングフィールドマスター……!

スプリングフィールドは
アウトレイジャーの攻撃を遮るように
〇〇に覆い被さった。

スプリングフィールド僕が、盾になります……!
ケンタッキーたちが来るまでなら、
耐えられるはずだから……。
スプリングフィールドこれが、一番……
あなたを、傷つけない……!!
アウトレイジャーウゥゥ……死ネ……!
スプリングフィールドうっ……。
主人公【駄目!】
【スプリングが壊れてしまう!】
アウトレイジャー殺、ス……。…………。
スプリングフィールド殺させなんて、しない……。
マスターは……、
僕、が……まも、る……。
スプリングフィールドううっ……!
ペンシルヴァニアスプリングフィールド……!
ケンタッキーすまねぇ、遅くなっちまった!
スプリングフィールドペンシル、ヴァニア、さん……、
ケンタッ、キー……。
ケンタッキーお前らよくも……!
おい、ペンシルヴァニア! あいつらブッ倒すぞ!
ペンシルヴァニアああ、わかってる。
ケンタッキー&ペンシルヴァニア絶対高貴───心銃!
ケンタッキースーちゃんとマスターを傷つけた落とし前は、
きっちりつけてもらうからなぁ……!
ペンシルヴァニアこれ以上の蛮行は……許さない。
アウトレイジャーギャアアア……ッ!!
ケンタッキースーちゃん! 大丈夫か!
スプリングフィールドもう、だいじょうぶ、です……ね。
2人が、倒して……くれ、ました……。
僕、あなたの、役に立てた、で、しょ、う、か───

スプリングフィールドの身体が光に包まれ……
人の姿を失って銃のみになり、地面に落ちる。

ケンタッキースーちゃん……!

駆け寄ったケンタッキーが、
銃に戻ったスプリングフィールドを拾い上げた。

ケンタッキーお、おい、スーちゃん!
スーちゃん!! スーちゃんッ!!
ペンシルヴァニア落ち着け、ケンタッキー。銃は無事だ。
マスターの傷を治療したら、早く士官学校へ戻ろう!
ケンタッキーあ、ああ……、そうだな……。
銃が無事なら、マスターがまた召銃してくれる……。
ケンタッキースーちゃん……無茶、しやがって……!
ペンシルヴァニアマスター、大丈夫か?
……応急処置をする。
主人公【ありがとう】
【急いで帰らないと】
ケンタッキー……ったく! スーちゃんは頭固すぎるんだよ!
もっと俺らを頼れってんだ!!
ケンタッキーくそっ! こんな姿に……っ。
くそぉぉぉ……っ。
ペンシルヴァニアケンタッキー……。

ケンタッキーは、スプリングフィールドの銃身を
いたわるようになでる。

ケンタッキー今度ばかりはキッツーイ説教してやるからな。
覚悟しとけよ。
へばってる余裕なんてやらねぇからな。
ケンタッキーだから、また元気な姿を見せてくれ。
頼むよ、スーちゃん……。

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