貴銃士ストーリー:ペンシルヴァニア

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第1話:勝負の行方は

───ある日の士官学校にて。

ケンタッキーへへっ、どうだ!
スプリングフィールド本当にすごい……。
よくこれだけ捕まえたね……。
ケンタッキースーちゃんだって、諦めないで鍛えていけば……
……あっ、マスター! お疲れ様ッス!
主人公【大猟だね】
【狩りに行ってきたの?】
ケンタッキーそうなんっすよ!
しかも、今日はただの狩りじゃなくて……
実は、ペンシルヴァニアとの対決なんっす!
ケンタッキー任務の時に持っていく食料用に、燻製肉とか
塩漬け肉とか色々作ろうかと思いまして……
制限時間5時間で、全力の狩り勝負っす!
ケンタッキーあ、勝ち負けは、獲物の数じゃないっすよ?
狩るのが難しい獲物、絶品の獲物、鮮度……
色んなポイントを総合的に見て勝者を決めます。ッス!
スプリングフィールドそれで、5時間経ったんですけど……
ペンシルヴァニアさんがまだ戻ってこないので、
勝敗が決められないんです……。
主人公【どうしたんだろう】
【何かあったのかな】
ケンタッキーあいつに限って心配いらねーと思いますけどね。
これくらいの森で遭難するはずもないし、
まさか、獲物がデカすぎて時間食ってるとか……?
ケンタッキーいやいや、でも自分も負けてないっすよ!?
見てください、この見事な獲物たち!
この勝負、自分の勝ちで間違いなしっすね!

勝負の行方を見届けようと、〇〇も
2人とともにペンシルヴァニアを待つことにした。


───30分後。

スプリングフィールド……やっぱり、遅すぎないかな……?
ペンシルヴァニアさんは約束を破るような人じゃないと思うし……
何かあったのかも。
ケンタッキー確かに、森で絶対はねーからな……。
足滑らせたとか、一発で仕留められずに
大型の動物から反撃食らったとか……。
スプリングフィールド……この森って、グリズリーとかいるのかな。
もしいたら、いくらペンシルヴァニアさんでも……。
主人公【グリズリー?】
ケンタッキー北米にいるヒグマのことっす!
で、でも、イギリスにはいないはずで……。
ケンタッキーと、とにかく! 俺が探しに行ってきます!
マスターはスーちゃんとここで待機して───
???───ウォォォォーン!
スプリングフィールド……! 今のは……!?
主人公【犬の鳴き声?】
【遠吠え?】

〇〇たちが辺りを見回していると、
森へと繋がる藪がガサッと揺れた。

ケンタッキー……ペンシルヴァニア!
ペンシルヴァニア……よう、ただいま。
遅くなってすまない。
スプリングフィールドペンシルヴァニアさん!
よかった……無事だったんですね……。
ケンタッキー遅ぇよ! その割に大物は狩ってねぇみたいだし、
一体何して───って、なんだ? その尻尾。

ペンシルヴァニアが出てきた低い藪の部分から、
ゆらゆらと揺れる尻尾が覗いている。

ペンシルヴァニア……ああ、こいつか。
いやぁ……ついてくると言って聞かなくてな。

ペンシルヴァニアが苦笑する。
その後ろから、尻尾の主が顔を出した。

スプリングフィールド犬……?
にしては大きいし、なんだかワイルド……?
ケンタッキーうおっ、マジかよ!?
これオオカミじゃねぇか!!
ペンシルヴァニアああ、オオカミだ。
スプリングフィールドそんなあっさり言うことじゃないと思う……。

ぎょっとする3人と、
飄々としているペンシルヴァニア。
さらに、藪からは数匹のオオカミが現れた。

主人公【1匹じゃなかった!?】
【まだ出てきた!】
ペンシルヴァニアもちろんだ。オオカミは群れで行動するからな。
ケンタッキーんな呑気に言ってる場合かよ!?
なんで狩りに行ったはずがオオカミ連れて来てんだ!?
ペンシルヴァニア狩りの途中で、
怪我をしているこいつを見つけてな。
ペンシルヴァニア応急処置をして獲物を分けてやったら、
どうやら仲間として認められたらしい。
ペンシルヴァニア集合時間だから帰ると言ったんだが、
群れごとついてきてしまった。
人は襲わないよう言い聞かせたから、大丈夫だろう。
スプリングフィールドそれなら、いい……のかな……?
ケンタッキーまぁ、害がないなら……?
オオカミは賢いしな。
ラッセル君たち! 何をしているんだ?
恭遠それは野犬か? それとも迷い犬だろうか。
随分と凛々しい顔をした犬たちだが……。
ペンシルヴァニアいや、犬ではなくオオカミだ。
ラッセルお、オオカミ!?
まさか、近くの動物園から連れて来たんじゃ……!?
ラッセル士官学校でオオカミは飼えないぞ!
すぐに元の場所に戻してきなさい!
ペンシルヴァニアそう言われても……
森で会って、皆がそのままついてきたんだが。
ラッセルも、森で……!?
恭遠いや、まさかそんなはずは……!
ケンタッキーなんだよ。
森にオオカミがいちゃおかしいのか?
恭遠……イギリスでは、
既に野生のオオカミは絶滅したはずなんだ。
それが生き延びていたとしたら……!
主人公【大発見では!?】
【然るべきところに報告しましょう!】
ラッセルああ、〇〇君の言う通りだ。
これは大変なことになってきたぞ……!
ラッセル私は世界連合の自然保護機関に連絡をしてくる。
貴重な発見かもしれない!
ペンシルヴァニア……なんだか大ごとになっているな。
ペンシルヴァニアああ、そうだ……ケンタッキー。
勝負の件だが、俺は少ししか獲物を持ち帰っていない。
ペンシルヴァニア獲物はオオカミに分けたし、
彼らの前で銃を使いたくなかったものでな。
ケンタッキーじゃあ……この勝負、俺の勝ちだな!
事情がどうでも、勝負は一発! 男に二言はなしだ!
ペンシルヴァニア……ああ。お前の勝ちだ、ケンタッキー。
ケンタッキーよっしゃあ〜〜〜〜っ!!!

───数日後。

ラッセルペンシルヴァニア君!
〇〇君も一緒か、ちょうどいい。
ラッセル先ほどペンシルヴァニア君宛てに、
世界連合の自然保護機関からお礼状が届いたよ。
ラッセルやはり彼らは、イギリスでは絶滅したと思われていた
オオカミで間違いないそうだ。
発見と保護をしたペンシルヴァニア君はお手柄だ!
ペンシルヴァニア……そうか。手紙はもらっておこう。
主人公【あっさりしてるね】
【嬉しくない?】
ペンシルヴァニアん……大騒ぎするほどのことじゃないからな。
生徒1なぁ、聞いたか。
貴銃士のペンシルヴァニアさんのこと。
絶滅したはずのオオカミを発見したって!
生徒2しかも、すっかり仲良くなってるんだぜ。
今朝もグラウンドにオオカミが遊びに来てた。
生徒3本人に聞いたんだけど、
最近は森でオオカミと一緒に狩りをしてるんだって!
本当にすごいね、ペンシルヴァニアさんって。
スプリングフィールドペンシルヴァニアさんとオオカミたちのこと、
みんなが話してるね……。
ケンタッキーくそぉっ!!!
狩りの勝負に勝ったのは俺なのに……!
結局あいつが美味しいところは全部持っていきやがる!
ケンタッキーやっぱり許さねぇぞ、
ペンシルヴァニアーッ!!!!

第2話:秘密の会合の始まり

───早朝、士官学校近くの森にて。
ドライゼは日課であるトレーニングの一環で、
腹筋に勤しんでいた。

ドライゼはっ、はっ……。
???おい、伏せろ!
ドライゼむっ!?

突然かけられた鋭い声に、ドライゼは素早く反応する。
地面にさっと伏した次の瞬間、
何かが彼の頭上を猛烈な勢いで飛んで行った。

ドライゼ……! これは……。

飛んできたのはナイフで、
背後の木に突き刺さった切っ先は、
大きな蛇を木の幹に縫い留めている。

ペンシルヴァニア……すまない、驚かせた。
毒蛇があんたに飛び掛かろうとしていたんだが、
説明している時間がなくてだな……。
ドライゼ問題ない。むしろ礼を言う。
貴殿は、確かアメリカの……。
ペンシルヴァニアああ……俺はペンシルヴァニア。
アメリカの開拓民に使われた、前装式のライフルだ。
ペンシルヴァニア元は狩猟用の銃なんだが……独立戦争の時は、
民兵たちとともに戦いに加わった。
……以後、よろしく頼む。
ドライゼ先ほどの警告と助けに、心よりの感謝を申し上げる。
俺はドライゼ。世界連合軍ドイツ支部に所属している。
プロイセン生まれの後装式ボルトアクション銃だ。
ドライゼこちらこそ以後、よろしく。
ペンシルヴァニアプロイセン……ドイツか。
ドライゼ……? それが、何か?
ペンシルヴァニアいや……ペンシルヴァニア・ライフルは、元々、
ドイツ出身のガンマイスターに作られたんだ。
……縁があるな。
ドライゼふむ。祖国の技術が海を渡り、
貴殿のような名銃を生み出したというのは、
誇らしいことだ。
ペンシルヴァニアそう言ってもらえると嬉しい。
……ここでは何を?
ドライゼ日課としている訓練を行っていた。
この森の急斜面は筋肉を鍛えるのに好都合だ。
ドライゼしかし、毒蛇が現れるとは……。
今後は周囲にもっと気を配るとしよう。
貴殿はよく、あの距離から毒蛇に気づけたな。
ペンシルヴァニア俺は、森での暮らしが長いからな……。
狩りのことや、食べられる植物、危険なもの……
そういう知識は、身についているんだ。
ドライゼほう……貴殿がいれば、
山岳部における厳しい行軍でも、
大いに助かりそうだな。
ドライゼ……それはそうと、
助けてもらった件についてお礼をしたい。
よければ、感謝の印にヴルストを振舞っても?
ペンシルヴァニアヴルスト?
ドライゼドイツのソーセージだ。
滅多に手に入らない幻のヴルストを入手したのだが、
ごく少量しかなくてな。
ドライゼ大人数に振る舞うことはできず、かといって
この良い品を独り占めするというのも気が引ける。
そういうわけで、遠慮は無用だ。
ペンシルヴァニアそんな貴重なものを……いいのか?
ドライゼもちろんだ。貴殿は恩人だからな。
味は保証するぞ。
ペンシルヴァニアでは……遠慮なく、いただくとしよう。
ドライゼああ、そうしてくれ。
早速だが、鮮度の問題もあるし、今晩寮で落ち合おう。
このことは他言無用で頼む。
ペンシルヴァニアああ、了解した。
……それから、あんたさえよければ、
俺も狩りで手に入れた肉の燻製を持っていこう。
ドライゼ貴殿も自分で加工をするのか、素晴らしい。
実は俺もヴルストを自作するのだが、あれは奥深い。
同じように作っても、毎回微妙な差異ができる。
ペンシルヴァニア燻製も同じだ。
天候、気温、チップの燃え方……。
1度として同じものはできない。
ドライゼ貴殿とは話が合いそうだ。
今夜を楽しみにしている。
ペンシルヴァニアああ……じゃあ、後でな。

───後日。

ドライゼ…………。
ペンシルヴァニア…………。
生徒1なあなあ、最近、ドライゼ特別司令官と
ペンシルヴァニアさんが一緒に歩いてるとこ
ちょくちょく見かけないか?
生徒2確かに、この間も見かけたなー。
あのお2人、体格いいし、戦いに行くみたいな顔して
無言で歩いてるから、なんかすげー迫力あるよ……。
生徒1仲がいい……って感じでもないし、
一体なんなんだろうな……?
ケンタッキーあいつら、仲良かったっけ……?
グラース僕に聞くんじゃねぇ。
っていうか、あれのどこが仲良しなんだ?
ファイトクラブに行くみたいな顔してるだろ。
エルメあはは……ドライゼに限って、
ファイトクラブ通いはないと思うけどね。
エルメ俺も、あの2人のことが気になって、
ドライゼに探りを入れてみたんだけど……。

エルメやあ、ドライゼ。それにペンシルヴァニア。
ドライゼ……エルメ。
エルメ最近、君たちが連れ立って歩いてるのを見るけど、
いつの間に親しくなったんだい?
エルメそれとも……もしかして、何か隠し事……?
ペンシルヴァニア…………。
ドライゼ……ふっ。

エルメ……と、意味深な笑みで誤魔化されてしまったよ。
ドライゼが俺に隠し事をするなんてね。
そういう君は、何か聞かなかったのかい?
ケンタッキーお、俺は別に、あいつが何しようと関係ねーし!
グラースお前らが話してるのを聞いたら、
なーんか僕も気になってきちまった……。

ドライゼ……よく来た、ペンシルヴァニア。
誰にも見られていないな?
ペンシルヴァニアああ……もちろんだ。
いつも通り、細心の注意を払って来た。
ドライゼ……よし。
では、第14回「肉を食す会」を開始しよう。
今回はブルートヴルストを用意した。
ペンシルヴァニア美味そうだ。
……こちらのカモの燻製も、ほどよく脂が乗っていて、
いい出来栄えだと自負している。
ドライゼ素晴らしい……。
今回の会も、充実したものになりそうだな。
ペンシルヴァニアああ。さっそく乾杯といこう!

第3話:ぶつかり合う心

親世界帝派の一派による武装蜂起を鎮圧するため、
数名の貴銃士たちが現地へと派遣されていた。

ペンシルヴァニア…………。
ターゲットを確認。

親世界帝派1行くぞ、こっちだ。
親世界帝派1……うっ!
親世界帝派2狙撃……!? 一体どこからだ!?
親世界帝派2ぐぁっ……!
ペンシルヴァニア……よし。これでこちらは完了だ。
ケンタッキー、良い狙撃だった。さすがだな。
ケンタッキートーゼンだろ。
これくらい朝飯前だっつーの。
ケンタッキーんじゃ、さっさと次のポイントに移動しようぜ。
まだまだ残党がいるんだろ。

ケンタッキー……くっ!
ペンシルヴァニアケンタッキー!
親世界帝派3くそっ、仕留めそこなった……!
ペンシルヴァニアお前……。

潜んでいた親世界帝派の武装兵を、
ペンシルヴァニアが撃ち抜いて無力化する。

親世界帝派3う、ぐ……っ 。
ペンシルヴァニア大丈夫か、ケンタッキー!
ケンタッキー……るせー。平気だっての。
こんなの、かすり傷だ。
ペンシルヴァニア待っていろ……すぐに手当てをするから。
ケンタッキー包帯くらい自分で巻ける。
余計なことすんなよ。
ペンシルヴァニアここは戦場……無駄にする時間はない。
お前が自分で巻くより、俺がやった方が早いだろ。
それに……こんな時くらい、少しは頼ってくれ。
ケンタッキー……ペンシルヴァニア。
アウトレイジャー…………。殺、ス……。
ペンシルヴァニア……アウトレイジャー!
ケンタッキーチッ、こんな時に……!
ペンシルヴァニアケンタッキーは無理をするな。
ケンタッキーハッ、余計なお世話だっての!
俺はお前に世話されなきゃなんねーほど
弱くねぇんだよ!
ケンタッキー心銃……!
アウトレイジャー1ギャァ……!
アウトレイジャー2殺ス……。
アウトレイジャー3破壊、スル……。
ペンシルヴァニアお前たちの相手は俺だ。───心銃!
アウトレイジャーたちグァァアァア……!
アウトレイジャー4…………。
ペンシルヴァニアケンタッキー!!
ケンタッキー……っ!?
アウトレイジャー4殺……ス……。
ペンシルヴァニアケンタッキー、危ないっ!
ケンタッキーペンシルヴァニア!
ペンシルヴァニア俺の前から、失せろッ……!
アウトレイジャーギャァァ……!
ペンシルヴァニア大丈夫か、ケンタッキー。
ケンタッキーお前が大丈夫じゃねぇだろ!

ケンタッキーをかばったことで、
ペンシルヴァニアは肩に傷を負っていた。

ペンシルヴァニアこれくらい、なんてことはない。
敵はすべて始末した、今度こそ手当を───
ケンタッキーふざけんなよ!!
ペンシルヴァニアケンタッキー……?
ケンタッキー余計なことすんなよ!
いつもいつも兄貴面しやがって!
そういうのがイラつくんだよ!
ケンタッキー俺はお前に庇われるほど弱くねぇ!
なのに、お前が兄貴面して構うから、
俺は周りから半人前みたいに思われんだ!
ケンタッキーそういうの、心底ウンザリなんだよ!
もうこれ以上、俺に関わるな!
ペンシルヴァニア……!
ペンシルヴァニア…………。
すまなかった。
ペンシルヴァニア……助けを呼んでくる。
救急キットは渡しておくから、
自分で手当てするといい。
ケンタッキー…………。

第4話:噛み合わない歯車

───先日の任務からしばらく。
貴銃士たちと〇〇は、
新たな任務へ赴くことになった。

ラッセル……以上が今回のアウトレイジャー討伐作戦の概要だ。
今回の任務に参加するメンバーは、
〇〇君、マークス、ライク・ツー。
ラッセルそれから、ペンシルヴァニア君とケンタッキー君。
以上5名だ。
ペンシルヴァニア…………。
ケンタッキー……ふん。
ラッセル……?
途中、険しい道もある。
くれぐれも気をつけて行ってきてくれ。

ペンシルヴァニア…………。
ケンタッキー…………。
ライク・ツーおい、なんだよお前ら。
空気悪ィぞ。
ケンタッキー……別に。
ペンシルヴァニア…………。
マークスあんたも、あんまり調子が良くなさそうだ。
故障か? それとも、腹でも壊したか?
ペンシルヴァニアいや……特に問題ない。
マークスそうか。ならいいが。
不完全なコンディションで任務に参加して、
マスターにもしものことがあったら困るからな。
ペンシルヴァニアああ……。
主人公【2人とも、どうかした?】
【何かあった?】
ケンタッキー……いえ、なんでもないっす。
自分、ちょっと先の方を見てきます。
ライク・ツーおい、勝手に動くなっての。
ペンシルヴァニア……ライク・ツー、あいつなら先行しても大丈夫だ。
それに……俺のせいなんだ。
皆には、心配をかけてすまない。
マークス……?
よくわからんが、マスターに迷惑はかけるなよ。
ペンシルヴァニア……ああ。
ライク・ツーなんだよ、あいつら。
調子狂うな。

ペンシルヴァニア…………。
ペンシルヴァニアマスター……。
眠らなくていいのか。
ペンシルヴァニアケンタッキーが見張りをしているようだから、
あんたはしっかり休め。
ペンシルヴァニア…………。
主人公【何があった?】
【話を聞かせてほしい】
ペンシルヴァニア……大切な任務中にすまない。
実は……この間の任務で、
ケンタッキーに余計な世話を焼いてしまってな……。

ペンシルヴァニア───そういうわけで、あれから口もきいていない。
ペンシルヴァニア……俺はあの時ケンタッキーにはっきり言われるまで、
あいつに対抗心を持たれていても、
嫌われてはいないと思っていた……。
ペンシルヴァニアだが……それは思い違いだった。
ペンシルヴァニアケンタッキーが本気で俺を嫌っていることに
ずっと気づかず、俺は無神経な真似をしていた……。
そう思うと、どう接していいのかわからなくてな。
主人公【本気で嫌ってはいないと思う】
【勢いで言いすぎたのかも】
ペンシルヴァニアそう、だろうか……。
主人公【そういえば……】
【1つ聞いてもいいかな】
ペンシルヴァニア……ん? なんだ、マスター。
主人公【なぜライバル視されてるの?】
【ケンタッキーが対抗心を持つ理由は?】
ペンシルヴァニアそうだな……。
俺たちの歴史も、多少影響しているのかもしれない。
ペンシルヴァニア少し長い話になるが……
眠気が来るまで、話をさせてくれ。

第5話:ペンシルヴァニア・ライフル

───18世紀半ば、アメリカ大陸にて。

開拓民1バイソンだ、追い込め!
開拓民2よく狙え。
弾を無駄にするんじゃねぇぞ!
開拓民3わかってる。
お前らこそバイソンの下敷きになるなよ!
開拓民3……よし!
開拓民2仕留めたな。
鮮度が落ちないうちに、急いで下処理をするぞ!
少年すっげぇ……。
あんなにでかいパイソンを、一撃で仕留めた……!
少年なぁ、父さん!
俺ももっと狩りに参加したい。自分の銃が欲しい!
開拓民1おお、坊主も言うようになったな。
開拓民3お前の年なら、銃の練習を始めてもいい頃かもな。
あとでガンスミスのところに連れてってやるよ!
少年ほんとに!?
開拓民2おお、よかったな、坊主。
獲物もたんまり仕留めたことだ。
父ちゃんに頼んで、いいライフルを作ってもらえ。
少年やった! みんなの銃、格好いいよなぁ。
全部少しずつ違っててさ。
俺のもとびきり格好良くしてもらうんだ!
開拓民1大事なのは見た目の格好良さだけじゃねぇぞ?
ま、俺のペンシルヴァニア・ライフルもこの通り、
特製の装飾をしてもらってんだけどな!
少年じゃあ、一番大事なのは……?
開拓民1そりゃあもちろん、命中率だ。
火薬や弾丸は高くつくし、
何発も撃ってると、音で獲物が逃げちまう。
開拓民3その点、このペンシルヴァニア・ライフルは最高さ。
見てみろ、銃身が長くて、口径は小さいだろ?
それに、銃身の内部に溝が彫られてる。
開拓民3おかげで、命中率はかなりいいぞ。
こいつは、ドイツのイェーガーライフルが元になってるんだが、
改良されたもっといい銃なんだ。
開拓民2俺たちハンターはこいつのおかげで随分と助けられたもんさ。
坊主もしっかり銃の扱いを覚えて、一人前のハンターになれよ?
少年おう!

ペンシルヴァニア開拓民の相棒として、ペンシルヴァニア・ライフルは
狩猟に使われていたんだが……
独立戦争が始まると、俺たちの役目は変化していった。

 

第6話:ライフルとマスケット

───アメリカ独立戦争の頃。

民兵1おい、射撃の訓練といこうじゃねぇか。
あの的に最初に当てたヤツには1杯おごるぜ!
若い民兵的って……なんだよ、酒瓶じゃねぇか。
まぁ、いいさ。たんまりおごってもらうからな。
若い民兵行くぜ……ここだッ!
若い民兵……あれっ!
民兵1ははは、下手くそ!
全然当たらねぇじゃねぇか。
若い民兵うるせぇな!
民兵2ブラウン・ベスを使ってるのか。
そいつは、弾込めは楽だが、
狙った的には中々当たらないぞー。
民兵2その銃の使い方はそうじゃないんだ。
ずらっと横1列に並んで、一斉に撃つんだよ。
そうしたら、向かってきた敵がバタバタ倒れる。
民兵2だが、まぁ、的を狙って撃つのには向かないな。
民兵3だな。この距離でも、ブラウン・ベスじゃあ
的にはなかなか当たんねぇよ。
若い民兵くそー!
わかってるなら先に言えよ!
民兵たちあっはっは!
狙撃手の男さて……俺は、この相棒で挑戦するとしようか。
民兵1お、新たな挑戦者だな!
使うのは……ペンシルヴァニア・ライフルか。
狙撃手の男……ふぅ……。
狙撃手の男…………。

放たれた弾丸は、正確に酒瓶の中央部を撃ち抜いた。

民兵たちおおー!
民兵1命中だ、やられたなー。
こんなスゴ腕がいるとは思わなかった!
民兵2ああ、見事なものだ。
やっぱり小さな的をきっちり狙うなら
ペンシルヴァニア・ライフルだなぁ!
若い民兵ずいぶん長い銃身だな。
……俺のブラウン・ベスと全然違う。
民兵2そりゃそうだ。さっき話しただろう。
そもそもの用途が違うんだよ。
民兵2ブラウン・ベスは、物資の豊富なイギリスの銃だ。
ずらっと兵隊を1列に並ばせて、一斉に発射する。
弾込めがしやすいから、それを繰り返せるんだ。
民兵2あとは銃剣で突撃して白兵戦に持ち込むってわけだ。
その戦法には取り回しやすいブラウン・ベスがいい。
狙撃手の男……だが、俺たちは物資が足りない。
だからこそ、ペンシルヴァニア・ライフルで戦う。
若い民兵どういうことだ?
狙撃手の男イギリス軍に正面からぶつかっていけば、
ブラウン・ベスの一斉射撃を喰らって手も足も出ない。
……だから俺たちは、奴らの急所を突く。
若い民兵急所?
狙撃手の男敵の司令官だ。指揮系統の頭を潰せば、
統率が乱れ、大軍も十分に力を発揮できない。
狙撃手の男だが……狙撃というのは一発勝負だ。
1発撃てば、こちらの潜んでいる場所が
おおよそ把握されるし、敵も身を潜めてしまう。
狙撃手の男2度目はなく、外せば狙撃手自身に命の危険がある。
だから、俺たちは1発にすべてを懸け、
一発必中にこだわるんだ。
若い民兵すげぇ……!
いいなぁ、俺も狙撃手になりてぇ!
民兵1やめとけやめとけ。
お前は忍耐力がなさそうだし向いてねぇよ。
それに、ペンシルヴァニア・ライフルにも弱点はある。
民兵1ブラウン・ベスより弾込めに時間がかかるから、
短時間で何発も撃つことはできないんだ。
民兵2要するに、使い分けが大事って話さ。
隊列を組むときにはブラウン・ベス、
狙撃をするときにはペンシルヴァニア・ライフルだ。
民兵2どちらか一方だけでは戦えない。
君のブラウン・ベス銃だって必要なんだよ。
俺たちが自由を勝ち取るためには!
若い民兵そうか……!
勝利のためには、俺も必要なんだな……!
狙撃手の男そういうことだ。
……ところで、1杯おごってもらえるというのは、
俺の聞き間違いだったか?
民兵1くそー、覚えてたかー!
若い民兵誤魔化そうとしてたのかよ!
民兵たちははははは!

ペンシルヴァニア……俺は、アメリカ独立戦争で英雄と呼ばれた
ある狙撃手に使われていた。
ペンシルヴァニア彼は、必要とあらばどこにでも行き、どこにでも潜み、
飛び抜けた技術で敵の司令官を狙い撃った……。
ペンシルヴァニア……そんな英雄が使っていた
ペンシルヴァニア・ライフルだということで、
俺は歴史記念館に保存されていたんだ。
ペンシルヴァニアそして、アメリカ政府が選抜したマスターに召銃された。
……強いアメリカの象徴として。
ペンシルヴァニアケンタッキーも……同じように、
歴史記念館に保存されていて、
政府の主導で召銃されたんだが……。
ペンシルヴァニア召銃直後から、俺のことをライバル視していたな。
おそらく……気に食わなかったんだろう。
主人公【気に食わない……?】
【どのあたりが?】
ペンシルヴァニア銃というのは、基本的に、新しい方が性能がいい。
それは、マスターも知っているだろう。
ペンシルヴァニアだが俺は……性能という指標以上に、
英雄と呼ばれた狙撃手が使っていた銃として、
過分な評価を受けることになった……。
ペンシルヴァニアケンタッキーにしてみれば、
自分も負けず劣らず力があるのにと、
気に入らないだろう……。
ペンシルヴァニアライバル……いや、敵視するのも当然だ。
主人公【ケンタッキー本人に本心を聞こう】
【ケンタッキーとちゃんと話そう】
ペンシルヴァニア…………。
考えておこう。

第7話:言葉より大切なこと

───後日、士官学校にて。

ペンシルヴァニア……ああ、マスター。
主人公【ケンタッキーと話せた?】
ペンシルヴァニアいや、まだだ……。
ペンシルヴァニア…………。
だが、いつまでも避けているわけにはいかないな。
いい加減、きちんと話をしなければ……。
ペンシルヴァニアここでマスターに会ったのも、
大地の導きかもしれないな……。
……よし、ケンタッキーの部屋に行ってみる!

ペンシルヴァニアケンタッキー……!
話がある。
ペンシルヴァニア…………。
ケンタッキー……?

ペンシルヴァニア……いないか……。

邑田ケンタッキー?
在坂とわしがはんぱーぐ談義をしておる間は、
ここには来ておらんなぁ。

ライク・ツーケンタッキー?
いや、見てねぇけど。
……んだよ、まだ揉めてんのか?

ペンシルヴァニア士官学校のどこにもいない……。
森に狩りにでも行っているのか……?
一旦、部屋に戻るか……。

???ダメだ、あいつどこにもいねぇ。
???きっと……入れ違いになってるだけだよ。
ここで待ってれば、ちゃんと話せるはず。

ペンシルヴァニアが寮の自室で過ごしていると、
廊下から誰かの話し声が聞こえてくる。

ペンシルヴァニア(……? 部屋の前に誰かいるようだ……?)
ペンシルヴァニア……!
スプリングフィールド……あ。
ほら、ケンタッキー!
ペンシルヴァニアさんが来たよ。
ケンタッキー……ッ!
ペンシルヴァニアケンタッキー……!
ケンタッキーあ、えっと……。
ペンシルヴァニア……すまなかった。
ケンタッキー……ッ! だからなんでお前が謝んだよ!!
そういうところがムカつくんだよ!
スプリングフィールド……ケンタッキー。
ケンタッキーあー、えっと……。
だってよ、この前のは、その……。
ケンタッキー……俺の八つ当たり、で……
とにかく、どう考えたって俺が悪かっただろ!?
ペンシルヴァニア……だが、俺も謝るべきだろう。
俺はお前にあそこまで嫌われていると
少しも気づいていなくて……。
ペンシルヴァニアこれまで、無神経にお前のことを構い続けていた。
どんなに嫌だったことか……。もう話しかけないし、
近づかないから、これまでのことは許してほしい。
ケンタッキー…………。
……は?
ケンタッキーなんでそうなるんだよ!
あ、あんなの……勢いで言っちまっただけで!
ケンタッキーお、俺だって、
ちょっと言い過ぎたかなって、思って……。
ケンタッキー……お前がいなかったら俺は生まれてないわけだし、
感謝してる……でも、だからこそ、俺は……、
俺は、お前を超えたいって思ってんだ!
ペンシルヴァニア…………。
ケンタッキーとにかく、お前は今まで通りにしてればいーんだよ!
ペンシルヴァニア……ケンタッキー……。
ペンシルヴァニアなんと言えばいいのかわからない……が、
言葉よりも行動で示す方が有効なことが多いと、
以前マスターが言っていた……。

そう言うと、ペンシルヴァニアは腕を広げ、
ケンタッキーを抱擁した。

ケンタッキーうおおぉっ!?!?
ペンシルヴァニア……言葉が、見つからない……。
ケンタッキー(だ、だからっていきなりハグかよ!?)
ペンシルヴァニア…………。
ケンタッキーおい、なんか言えって!
スプリングフィールドよ、よかったね。ケンタッキー。
じゃあ、僕は談話室にでもいるよ……それじゃ。
ケンタッキーうぉいっ! 待ってくれよスーちゃん!
ケンタッキーあー、もう、わかったから!
わぁったから放せっての!!

───翌日から再び、
ペンシルヴァニアに元気に張り合う
ケンタッキーの姿が見られるようになったのだった。

第8話:エーデルヴァイス

恭遠ペンシルヴァニアの姿がどこにもないんだが、
誰か、心当たりのある者はいないだろうか……?
マークスあいつ、いなかったのか。
そういえば最近見かけていない気がするな。
ライク・ツーお前、少しはマスター以外にも興味持てよ……。
十手俺は、特に心当たりはないなぁ……。
力になれず、申し訳ない。
恭遠そうか……。今日でもう3日になるから、
何か情報を得たかったんだが……どうしたものか。
ケンタッキーまたかよ……。
あいつがいねぇと張り合いがねぇ……。
ケンタッキーっていうか、今度は置き手紙もなしかよ。
主人公【どこに行ったんだろう】
【心配だ……】
ケンタッキー心配ないっすよ、マスター!
あいつがふらっといなくなるのはよくあることですし!
そのうち帰ってくるっすよ!

───それから数日経っても、
ペンシルヴァニアは行方不明のままだった。

なかなか寝付けず、〇〇は窓を開けて、
満天の星を見上げる。
その時だった。

???星の歌が聞こえるか、マスター?
主人公【……!?】
【ペンシルヴァニア!】

驚きで固まる〇〇を、
ペンシルヴァニアの腕が窓から外へと引っ張り出す。


〇〇を肩に担いだペンシルヴァニアは、
非常用はしごを使ってあっという間に
屋根まで上っていった。

主人公【今まで一体どこに?】
ペンシルヴァニア……アルプス山脈ってやつが見たくなって、
ちょっと見に行ってきた。
アメリカでのマスターが話していたのを思い出してな。
主人公【アルプス山脈!?】
【そんなところまでどうやって?】
ペンシルヴァニア徒歩とヒッチハイクだ。
親切な人たちとの出会いがたくさんあって……
道中目にする景色も興味深かった。
ペンシルヴァニアアルプス山脈には、
エーデルヴァイスという白い花が咲いていた。
これが絵葉書だ。
ペンシルヴァニア……今度マスターも行って、実際に見てみるといい。
主人公【急な失踪で大騒ぎになっていた】
【ケンタッキーも心配していた】
ペンシルヴァニア…………。

───翌朝。
ペンシルヴァニアの姿は、再び消えていた。

スプリングフィールドペンシルヴァニアさん、まだ戻ってこないなんて……。
シャルルヴィルほんとに自由人なんだね……。
ボクからすると、ちょっと羨ましいけど……。
ケンタッキーマスター! これ見てほしいっす!
ケンタッキー朝起きたら、枕元にぺったんこの白い花が
置いてあったんすけど!
なんすかね、これ?
シャルルヴィルそれは……エーデルヴァイスの押し花だね。
本で見たことがあるよ。アルプス地方に咲く花だって。
主人公【たぶん、ペンシルヴァニアだ】
ケンタッキーへっ?

昨夜、ペンシルヴァニアがやってきたこと、
アルプス山脈まで行ってきたと話していたことを、
〇〇はケンタッキーに伝えた。

ケンタッキーはぁ〜〜〜っ!?
マスターにだけ会って出てったんスか!?
信じられねぇ、あいつ……!
ケンタッキー今度会ったら、ただじゃおかねぇ!
早く帰ってこい馬鹿野郎〜〜〜っ!!

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