大切な人が贈ってくれた林檎が、ほんのりしょっぱく感じるのはなぜだろう?
ひとつ新しいことを知るたびに、少しずつ仲間との絆が深まって、僕の世界も色づいていく。
手を伸ばした禁断の果実。甘くて苦い、蜜の味。
誰かを傷つける力でも、大切な人を守れるなら……。
悲しみも苦しみも、受け止めて歩き出すんだ。大切な仲間と一緒に。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──ある日の午後。
スプリングフィールド、ケンタッキー、マークスの3人は、
恭遠に頼まれて資料室へ探し物をしに来ていた。
マークス | ここが資料室か。初めて来るな。 |
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スプリングフィールド | 僕も……初めて来ました。 恭遠教官に頼まれた歴史の資料は…… あるとしたらこの辺りの棚でしょうか? |
ケンタッキー | おっ、見ろよこれ。教科書に載ってた素焼きの人形だ。 確か……ハニワっていうんだぜ。 なんか愛嬌ある顔しててイカしたオブジェだよな。 |
マークス | ……奇妙な人形だな。 俺にはあんたのセンスがよくわからない。 |
マークス | ん……? おい、ここを見てみろ。 床に四角形の切り込みのようなものが入っている。 落とし穴か……? |
ケンタッキー | ちげーよ。 それはトラップドアだ。 |
マークス | トラップだと!? マスターが触れたら危険だ。 おい、なんとかしろ! |
スプリングフィールド | あの、マークスさん……。 トラップドアというのは跳ね上げ扉のことで、罠ではないです。 なので、危険はありません。 |
マークス | そうなのか? ということは、これは扉で、下にさらにスペースがあるのか。 |
ケンタッキー | そうだと思うぜ。 ……あ、そういやスーちゃんの銃って、 トラップドア・スプリングフィールドって別名があんだよな。 |
スプリングフィールド | うん……。 蝶番式で開閉するブリーチロックの部分の動きが、 トラップドアに似てるから、そういう呼び方もあるんだ。 |
マークス | へぇ……。 それで、このドアはどうやって開けるんだ? |
スプリングフィールド | 開け方はわかりますけど……。 僕たちが勝手に開けてもいいんでしょうか? |
ケンタッキー | 鍵もかかってねーみたいだし、 ちょっと見てみるだけならいいんじゃね? 壊したりしなきゃ大丈夫だって! |
スプリングフィールド | それじゃあ……。 |
スプリングフィールドがドアを開けると、
そこには地下へと続く階段があった。
ケンタッキー | えっ……! 地下室じゃねーか! |
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マークス | 地下室か。 何かあった時にマスターの避難場所としていいかもしれないな。 中の様子を見ておこう。 |
ケンタッキー | 面白そうなモンもありそうだしな。 俺も行くぜ! |
スプリングフィールド | ええっ……2人とも……! |
ためらいなく階段を降りていくケンタッキーとマークスを、
スプリングフィールドは慌てて追いかけた。
マークス | それなりに広さがある。 置いてあるのは、古臭いものばかりだな。 |
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地下室には、地球儀や大きな地図、
額に入った絵、古い本などの資料がずらりと並んでいる。
スプリングフィールド | あまり使わない資料を置いている部屋……でしょうか。 少し奥も見てみましょう。 |
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ケンタッキー | (なんてことねぇ、ただの資料室って感じだな。 退屈だし、マークスをからかってみるか) |
ケンタッキー | ……なぁ、マークス。聞いたことあるか? イギリスで昔、地下室に住む殺人鬼がいてさ…… 夜な夜な人を引きずり込んでは、標本に── |
マークス | おい、ケンタッキー。 あんたの後ろに、何かがいるぞ。 |
ケンタッキー | はぁ? 何言って── |
振り返ったケンタッキーの目の前に、
人がパタッと倒れてくる。
ケンタッキー | ぎゃーーーっ!!! |
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ケンタッキー | ぎゃあああああ冷たい!! し、死んでる! マ、マジで殺人鬼が潜んで!? んの!? |
スプリングフィールド | ……ケンタッキー、よく見て。 ただの人体模型だよ。 ケンタッキーが動いた拍子に倒れてきたみたい。 |
ケンタッキー | えっ……? は、ははっ。そうだよな。殺人鬼なんているわけねぇし。 ……ビビらせやがって。 |
ケンタッキー | (なんで俺がビビる羽目に……! もう1回、やり直しだ……) |
ケンタッキー | おい、マークス。 |
マークス | なんだ。 あんた、前を見て歩かないと、棚にぶつかるぞ。 |
前を見たケンタッキーは、
目の前に並ぶ不気味な瓶詰めを見て飛び上がった。
ケンタッキー | ぎゃーーっ!! なんだよコレ!!! |
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マークス | うるさいな、あんた。 これは、ホルマリン漬けだ。教科書で見たことがある。 |
スプリングフィールド | 牛の眼球、寄生虫、蛙……いろいろあるんですね。 ケンタッキー、あんまりしがみつかないで……ちょっと苦しい。 |
ケンタッキー | ご、ごめん、スーちゃん! ほら、さっさと次行こう! |
マークス | 待て。 今度は骨だけのヤツがいる。 |
ケンタッキー | ハッ、そう何度も何度も驚くかよ。 これはただの骨格標本だろ。 |
スプリングフィールド | ううん……これはたぶん、本物の人骨でできた標本だと思う。 |
ケンタッキー | ……へっ!? |
マークス | 本物だと!? |
スプリングフィールド | はい。 本物の人骨を標本に使う場合があると聞いたことがありますが…… あの話は本当だったんですね。 |
ケンタッキー | うっ、嘘だろ……? |
スプリングフィールド | それに、士官学校の生徒が噂をしていました。 校内のどこかにある骨格標本が、夜な夜な動き出して── |
ケンタッキー | ぎゃーーーー!! 聞きたくねーっ!!! |
スプリングフィールド | ……ふふっ。 |
マークス | あんた……意外と楽しんでるな……? |
恭遠 | では、本日の授業を終了する。 今日の掃除当番は……グラースだな。頼んだぞ。 |
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グラース | チッ……。 なんでこの僕が掃除なんか……! |
グラース | あっ、そうだ。 そこの白っぽいお前……スプリングフィールドだっけ? |
スプリングフィールド | えっ……? 僕に何かご用でしょうか。 |
グラース | お前、暇だろ? 僕は先約があるから、代わりに掃除頼むぜ。 |
スプリングフィールド | ええっ……!? あの、えっと、僕もこのあと用事が……。 |
グラース | じゃあな。あとはよろしく。 |
スプリングフィールド | あ、…………。 |
カトラリー | …………むかつく。 |
スプリングフィールド | えっ……? 今、何か言いましたか……? |
カトラリー | あんたのことだけど? うじうじしてて、見ててむかつくって言ったんだよ。 |
スプリングフィールド | ご、ごめんなさい……。 |
カトラリー | あんたさ…… 軍用銃のくせに、そんなんでやっていけんの? |
スプリングフィールド | いつもいつも、 ケンタッキーとかペンシルヴァニアとかシャルルヴィルが、 あんたの代わりに喋ってやってるみたいだけどさ……。 |
カトラリー | おどおどして周りの反応窺ってばっかで、 オトモダチがいなきゃ、1人で何もできないとか…… 情けないお荷物だと思わないワケ? |
スプリングフィールド | ……わかってます。 |
カトラリー | ……えっ? |
スプリングフィールド | 僕は……ケンタッキーやペンシルヴァニアさん、 シャルル兄さんがいないと、ちゃんと会話もできない…… |
スプリングフィールド | 戦闘でもマスターを傷つけてしまう……。 僕は、お荷物です……。 |
カトラリー | ふ、ふぅん……。 |
カトラリー | (あ、あれ……見ててムカっときたから、 ちょっと煽るだけのつもりだったのに……) |
カトラリー | (こんな大真面目に真剣に落ち込むとか……!) |
スプリングフィールド | ……そうわかってるのに、僕はみんなの優しさに甘えてしまって。 僕には、本当は大した価値なんてないのに……。 |
スプリングフィールド | 軍用銃なのに、脆くて、貴銃士としての身体も弱いですし……。 一品物の銃の皆さんみたいに、 銃自体の価値が高いものでもありません。 |
スプリングフィールド | トレーニングをして、身体を鍛えたり…… できる限りのことはしてみてはいるんですが、 それでも、強い皆さんには遠く及ばなくて、情けなくて……。 |
カトラリー | …………。 |
カトラリー | え、えーっと、あのさ……。 僕……あんたの気持ち、少し……わかる、かも。 |
スプリングフィールド | えっ……? |
カトラリー | 僕、食器の仕込み銃だからさ。 軍用銃みたいに射程距離長くないし、殺傷能力だって低い。 |
カトラリー | 暗記だから、卑怯な武器だって言う人もいるし……。 上手く喋れないし……。 |
カトラリー | …………。 |
スプリングフィールド | …………。 |
カトラリー | なんていうか……僕たちって、少し似てる……気がする。 だから……友達になる? |
スプリングフィールド | え……? |
カトラリー | い、嫌なら別にいいし! |
スプリングフィールド | い、嫌じゃないです! なってくれるんですか? 僕と、友達に……。 |
カトラリー | 僕の方はいいけど? |
カトラリー | ……ほら、ほうき貸しなよ。 あんたはバケツとモップの用意して。 僕が手伝ってあげるから、さっさと終わらせるよ。 |
スプリングフィールド | ……ありがとう、ございます。 |
カトラリー | その堅苦しい喋り方やめて。 |
スプリングフィールド | は……、うん。 カトラリー、って呼んでいい……? |
カトラリー | いいけど? 僕も、スプリングフィールドって呼ぶよ。 |
スプリングフィールド | うん……。なんだか、嬉しい。 |
──廊下にて。
ケンタッキーとペンシルヴァニアが、
扉の影から2人の様子を密かに見ていた。
ケンタッキー | おい……本当に大丈夫なのか? やっぱ、俺がスーちゃんを助けに行った方が……。 |
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ペンシルヴァニア | いや……。 スプリングフィールドに新しい友達ができるのはいいことだ。 俺たちが、それを邪魔するのはよくない。 |
ケンタッキー | そ、そうか……。 |
ケンタッキーはハラハラしながらも、
2人が一緒に掃除をする様子を静かに見守るのだった。
──ある日の家庭科の授業にて。
スプリングフィールドは、シャルルヴィル、シャスポーと共に
くまのぬいぐるみを作っていた。
シャルルヴィル | わー! スフィー、合わせ縫いが上手にできてるね。 目が細かくてすごく綺麗! 売り物みたいだよ~! |
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スプリングフィールド | ありがとうございます、シャルル兄さん。 |
シャルルヴィル | 目のビーズはこのあたりの色が似合いそうだね。 リボンは赤がいいかな? 黄色も似合うかも。 いくつか持ってきて合わせてみようか。 |
スプリングフィールド | はい……ありがとうございます。 |
シャスポー | あの……シャルルヴィル先輩。 もう少し静かにできないんですか? |
シャスポー | 手を動かす時間なのに、口の方がぺらぺらと……。 スプリングフィールドだって、 そう思っているんじゃないですか? |
シャルルヴィル | えっ? やだなぁ。 そんなわけないもん! |
シャルルヴィル | それにスフィーは、 ボクのとーっても可愛い弟分なんだから、 お兄さんとして世話を焼くのは当然でしょ? |
シャスポー | ……? 意味がよくわかりません。 弟は可愛くないし、世話を焼きたいとも思えない存在なので。 |
シャスポー | グラースは僕よりも性能がいいことを鼻にかけて、 夜遊びも酷くてとにかく高貴さがありませんし…… 弟やそれに近い関係だから可愛いというのは、理解に苦しみます。 |
シャルルヴィル | ええーっ? そういうものかなぁ? |
スプリングフィールド | ……僕、少し…… シャスポーさんの気持ちがわかるかもしれません。 |
シャスポー | えっ? 君、弟いたの? |
スプリングフィールド | はい……。 貴銃士にはなっていませんが、銃としての僕には弟がいます。 |
シャルルヴィル | へぇ~! どんな子なの!? |
スプリングフィールド | 弟は、セカンド・オーリンと呼ばれています。 兄にあたる僕が、ファースト・オーリンです。 |
スプリングフィールド | 元々僕は、A1861を改造した銃、A1865なのですが……。 構造的な欠陥があって、改造は……結果的に、失敗でした。 |
スプリングフィールド | その時の失敗を生かす形で、 同じ設計者によってA1863を改造して作られたのが、 A1866……弟の、セカンド・オーリンなんです。 |
スプリングフィールド | 改造で後装式にはなりましたが、 欠陥があり、脆くなってしまった僕と違って…… 弟は丈夫で、構造も後継の銃たちの参考になっているそうです。 |
シャスポー | ふぅん……つまり、元の銃も改造の構造も似てるから、 君とセカンド・オーリンは双子の兄弟みたいな関係ってことか。 |
スプリングフィールド | はい。双子でも性能は随分違うので……。 僕は、セカンド・オーリンが羨ましい……です。 |
スプリングフィールド | もし、彼が貴銃士として僕の前に現れたら……。 僕は、シャルル兄さんが僕にしてくれているみたいに 優しくできるかどうかわかりません……。 |
シャスポー | 別に、無理に可愛がる必要はないんじゃないか? 銃は基本的に、年下の方が性能がいい。 それで性格まで悪かったら、憎たらしいに決まってる。 |
シャルルヴィル | ちょ、ちょっとシャスポー……! ぬいぐるみに罪はないし、握りつぶしたらかわいそうだよ! |
シャスポー | あっ……あいつのことを考えたら、つい。 |
シャルルヴィル | でもさ、シャスポーだって、 なんだかんだグラースのこと可愛がってない? |
シャスポー | はぁっ? 僕がいつあいつのことを可愛がったと!? 夢が幻覚でも見たんじゃないですか? |
シャルルヴィル | あはは……シャスポーたちはこんな感じだけど、 スフィーの場合は、弟に実際会ってみたら可愛いかもしれないよ? |
スプリングフィールド | そう、でしょうか……? |
シャルルヴィル | だって、シャスポーとグラースみたいに 兄弟で多少性格が似るなら、 スフィーの弟はきっと優しくていい子だよ! |
シャスポー | ……ちょっと先輩。 それ、喧嘩売ってます? |
シャルルヴィル | えっ? 何が? |
シャスポー | わかりました。 先輩がそのつもりなら……ぬいぐるみをこうしてやりますっ! |
シャルルヴィル | やめて~~! ボクの力作なんだからっ!! |
スプリングフィールド | 僕の、弟……。 仲良くできたらいいな……。 |
恭遠 | この時間は、基礎体力増強のための訓練だ。 それぞれの基本装備を身に着けて、ランニングをしよう。 演習場15周を基本に、物足りなければ各自追加するように。開始! |
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スプリングフィールド | はぁっ、はぁ……! |
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スプリングフィールド | (息が、苦しい……!) |
恭遠 | スプリングフィールド! |
膝をついてしまったスプリングフィールドに、
恭遠が駆け寄って声をかける。
恭遠 | 大丈夫か? 息が苦しいか。 |
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スプリングフィールド | はぁ、……っ、す、すみません……! |
恭遠 | 続行は厳しそうだな……。 医務室に行くか? |
スプリングフィールド | い、いえ……少し休めば、大丈夫、です……。 |
恭遠 | そうか……。 とにかく、少し休むといい。 体調に異変があれば、すぐに知らせてくれ。 |
スプリングフィールド | (はぁ……。 これくらいでへばるなんて、情けないな……) |
ゴースト | ……なぁ、あんた……。 |
スプリングフィールド | うわっ……! |
スプリングフィールド | (この人は確か……ゴーストさん……? 気配がなくて、びっくりした……) |
ゴースト | ……驚かせてし……まったな。 俺は影が薄すぎる……から。 |
ゴースト | あんた……アメリカの スプリングフィールドA1865……だろ? |
スプリングフィールド | そ、そうですけど……。 |
ゴースト | あんたも大変……だな。 妙な改造をされたせいで、弱ってしも……まったんだろ? |
スプリングフィールド | …………。 |
ゴースト | 俺は、改造されたわけ……ではないけど、 革新的な弾薬を使おうとして、 上手くいか……ずに失敗した銃、だ。 |
スプリングフィールド | そ……そうなんですか……。 |
ゴースト | ふふ……俺たち、お仲間みたい……だな。 改造と開発の悲劇を背負った同士、だ……。 |
スナイダー | ……今、改造と言ったか? その話、俺にも聞かせろ。 |
ゴースト | ……あんたには、関係ない。 あんたは、改造して強くなった銃だろ……。 |
スナイダー | ああ……そうか。 おまえたちは、改造や開発がうまくいかなかった銃だな。 |
スナイダー | 手が加えられたのに弱体化するとは、哀れなものだ。 おまえたちみたいな例がいると、 エンフィールドが余計に改造される気をなくすだろう。 |
スプリングフィールド | エンフィールドさん……? 改造……? |
スナイダー | おまえたち、エンフィールドに近づくなよ。 |
ゴースト | なんなんだ、あいつ……。 すっと現れて、失礼なことばっかり言って去り……やがって。 |
ゴースト | 言われっ放しじゃむかつく……よな。 ……やり返そう。とりあえず……呪ったる。 あんたは何か、やり返したいことはない……のか? |
スプリングフィールド | やり返す、ですか……? |
ゴースト | やられたら嫌なことをやる、んだ……! |
スプリングフィールド | やられたら嫌なこと……。 |
ゴースト | ほら……なんかある、だろ……? やられて嫌だったことでもいい……。 |
スプリングフィールド | 少し、考えてみます。 やられて嫌だったこと……うーん……。 |
スプリングフィールド | ……あっ。 |
ゴースト | お。なんか思いついたか。 |
スプリングフィールド | はい……。以前、お腹が空いて、ふらふらで、限界で…… ゴミ捨て場で残飯を漁っていたら、 前の持ち主に「汚い」と言って蹴られて…… |
ゴースト | え…………。 |
スプリングフィールド | あと……殴られるのも、嫌でした。 あの時は、なんで毎日マスターが怒るのかも、 どうして胸のあたりが軋むのかもわからなかったけど……。 |
スプリングフィールド | 今なら、わかります。 あれはきっと、身体だけじゃなくて 心も傷ついていたからなんですね……。 |
ゴースト | (ど、どないしよ……。 なんか、触れたらあかんところに触れてしもうだ……) |
ゴースト | し、仕返しはなしにしよう……。 かわりに、なんか美味しいもん食べようか。 あんた、スパゲッティ好きか……? |
スプリングフィールド | はい、好きですが……。 でもまだ、授業が……? |
ゴースト | ふらっと消えるのは得意なん、だ。 任せとけ……。 |
ゴーストはスプリングフィールドを手招きし、
こっそり2人で食堂に向かったのだった。
スプリングフィールド、ベルガー、ミカエルの3人は、
人間的社会生活を学ぶため、予算15000UCで、
リストにある食材を購入する実習訓練へ出かけることになった。
〇〇、ペンシルヴァニア、ケンタッキー、
ローレンツの4人は、いざという時助けに入れるよう、
少し離れた場所から彼らを見守る役としてついていくのだった。
ケンタッキー | 予算15000UCでリストにある食材を買ってくるって…… スーちゃんは買い物の仕方を覚えたはずだから大丈夫だろうけど、 あっちの2人は大丈夫なのかよ……? |
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ケンタッキー | せめて、ライク・ツーとか十手とか、 1人くらいはまともな奴を入れといてほしかったぜ……。 |
ペンシルヴァニア | それでは訓練にならないだろう。 あの3人が力を合わせるからこそ……意味があるんじゃないか? |
ローレンツ | ああ、Mr.ペンシルヴァニアの言う通りだ。 あの3人の組み合わせだからこそ、 様々な実験要素があり、検証のしがいがある。 |
主人公 | 【実験じゃないんだけど……】 【ちょっと心配だな……】 |
〇〇とケンタッキーが心配していた矢先、
前方では、ベルガーが通りすがりの子供に目を付け、
キャンディを奪うという事件が発生していた。
ベルガー | ほーらほーら! 取り返してみろよぉ、ガキンチョ~! |
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子供 | うわぁぁぁん! 返してよー! |
ケンタッキー | うわっ、あいつ何やってんだ……! しょーもないことしやがって……! |
ペンシルヴァニア | ……まだ手を出すなよ、ケンタッキー。 これも訓練の一環だ。 できる限り、あの3人に対処させよう。 |
スプリングフィールド | ベ、ベルガーさん、それは駄目です……! 返してあげてください……! |
ベルガー | ブハハ! ギャハハハ! バーカバーカ! |
子供 | うえぇぇぇえええん!!! |
ミカエル | はぁ……聞くに堪えない騒音だ。 大音量で聞くならば、美しい旋律でないと……。 |
ケンタッキー | 全っっっ然対処できてねーじゃねぇか! |
ローレンツ | この程度のことは想定内だ。 俺に任せろ。 |
ローレンツ | ……ここだっ! |
ベルガー | ん? なんだぁ、石ころが飛んできた! |
ローレンツが投げた石が足元に当たったことで、
ベルガーの意識が子供から逸らされる。
スプリングフィールド | は、はい……! ごめんね、これ……。 |
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子供 | あ、ありがとう……! |
ケンタッキー | おおっ、スーちゃんがベルガーのアメを奪って、 素早く子供に返した! |
スプリングフィールド | つ、次は野菜を買わなきゃ……! ベルガーさん、行きますよ……! |
ローレンツ | ……この通り、うまく気をそらせば、 モルモット1号は誘導が可能だ。 さあ、観察を続行するぞ。 |
ミカエル | キャベツというのは、これのことじゃないのかい? 葉の重なりがよくこのような形になるものだ。 |
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スプリングフィールド | そうですね。 でもこれ、名前が……あれ……? |
ペンシルヴァニア | 惜しいな……。 あれはキャベツではなく、レタスだ。 |
ケンタッキー | キャベツならすぐ隣の棚にあるだろ……! おーい、隣! 横! あーもう、店員さんに聞けば一発なのに……! |
ミカエル | ……いい曲を思いついた。 消えてしまわないうちに、メモをしておかないと。 |
ミカエル | ……ねぇ、そこの君。 僕は今から曲を書くから、机におなりよ。 ほら、四つん這いになって。 |
買い物客 | ええっ……!? つ、机……!? |
ローレンツ | 突然作曲を始めた上に、近くの客を捕まえて机になれとは……! さすがにこれは想定外だな。 |
スプリングフィールド | あの……これはいくらですか? |
店員 | ああ、それは800UCだよ。 |
ベルガー | ああ? 金取んのかよ。 だっりィな~! 寄越さねぇと撃つぞ!? |
店員 | ひっ、ひぃ……! |
ケンタッキー | ベルガーの野郎、今度は脅迫かよ……! |
スプリングフィールド | ミカエルさん、ベルガーさん、 や、やめてください……! |
ペンシルヴァニア | ……まずいな、ミカエルもベルガーも、 スプリングフィールドの話をまったく聞いていない……。 |
スプリングフィールド | 僕は、無力だ……。 1人じゃ、何もできない……。 |
ケンタッキー | どうします? マスター。 このままじゃまずいっすよ。 |
主人公 | 【もう少しだけ、見守ってみよう】 【スプリングフィールドならやれるかも】 |
スプリングフィールド | 話を……聞いてください!!! |
ミカエル | ん……今のフォルティシモ、いい音色だったね。 |
ケンタッキー | スーちゃん、よく言った! ファインプレーだぜ! |
ローレンツ | モルモット1号の方は……制御不能か。 仕方がない。最終作戦始動だ! |
ローレンツが右手に持ったスイッチを押すと、
スプリングフィールドの背中から、
白いネズミのぬいぐるみがついた紐が垂れる。
ベルガー | うおぉっ!? アルパチーノ!? どうしてここに!? |
---|
ベルガーが、スプリングフィールドの方に駆け出し、
しゃがみこんだ。
ベルガー | ……って、ありゃ? なんだよ、ぬいぐるみじゃねーか。 |
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ローレンツ | よし、アルパチーノに酷似したぬいぐるみを利用した装置により、 モルモット1号の行動をコントロールすることに成功した。 俺の仮説通りだ! |
スプリングフィールド | お2人とも……!! 話を、聞いてくれたんですね……? |
ローレンツ | あの2人が話を聞いていたわけではなさそうだが、 ひとまず危機は回避できたな。 |
八百屋の店主 | あんた、さっきからなんだか大変そうねぇ。 さっき買い物メモ落としたでしょ? こっちで用意しといたわよ。 |
ケンタッキー | おおっ! 八百屋のおばちゃんが女神に見える……! |
ペンシルヴァニア | 彼らは、星に愛されているな……。 |
スプリングフィールド | ありがとうございます……! こちらのお金で、足りますか……? |
八百屋の店主 | これで足りるよ。 はい、お釣りね。 |
奇跡的に買い物を完了することができた3人は、
士官学校へと無事帰還を果たしたのだった。
主人公 | 【お疲れ様】 【よく頑張りました】 |
---|---|
スプリングフィールド | マスター……! ありがとうございます……! |
ミカエル | ふふ……。 街の店に出かけるというのも、なかなか面白かったよ。 |
ベルガー | へへっ! 買い物してきてやったんだからよぉ、 コーラとポテチ1ダースずつな~! |
ローレンツ | Mr.ベルガー、ご苦労だった。 残念だがその予算はない。 今日の実験道具のために使い果たしてしまったからな。 |
ベルガー | はぁっ? ふっざけんなよクソメガネ!! |
ケンタッキー | ううっ、スーちゃん……! あんなめちゃくちゃなメンツでホントによく頑張ったな……! 今日は美味いモンいっぱい食おうぜ!! |
ペンシルヴァニア | 今日は本当によくやったな。スプリングフィールド。 |
スプリングフィールド | はい……! ありがとうございます。 |
スプリングフィールド | ミカエルさんと、ベルガーさんも……お疲れ様でした。 またお買い物、行きましょうね……! |
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